JP7000109B2 - 回転電機及びこれを備えた電動機車両 - Google Patents

回転電機及びこれを備えた電動機車両 Download PDF

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Description

本発明は回転電機及びこれを備えた電動機車両に関する。
一般に永久磁石を使用する回転電機は、永久磁石の残留磁束をトルク発生に活用することでコイルに流れる電流を低減し、小型化及び高効率化できるようにしている。永久磁石を貫く磁力線にはコイルと鎖交するいわゆる電機子鎖交磁束があり、電機子鎖交磁束はトルク発生に寄与する。一方、永久磁石を貫く磁力線の中にはコイルと鎖交しない漏洩磁束があり、漏洩磁束はトルク発生に寄与しない。そのため、回転電機の小型化及び高効率化をするためには、この漏洩磁束を低減し、永久磁石の残留磁束を有効活用する構造が必要となる。
回転子に永久磁石を使用する場合、回転子の回転に伴う遠心力が永久磁石に働き、この永久磁石による遠心力荷重を機械的に支持するための構成が回転子に要求される。特に、永久磁石を回転子コアの中に埋め込んだ埋込磁石同期回転電機の場合、永久磁石の遠心力荷重を機械的に支持するためのブリッジが必要となる。ブリッジは、一般には回転子コアと一体で構成されているため磁束が通りやすい。
永久磁石を貫く磁力線の一部は、永久磁石とブリッジのみを短絡した漏洩磁束となる。ブリッジを通る漏洩磁束は、ブリッジの比透磁率が1に近づきブリッジが磁気飽和するまで発生する。このため、ブリッジを通る漏洩磁束を低減するには、ブリッジの幅を狭めて磁気飽和しやすくする必要がある。しかしながら、この場合、機械的支持をするための十分な強度を得るのが難しいという問題があった。
回転子に磁石を使用しない同期回転機においても同様の課題がある。同期回転機の場合、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差を大きくするため、フラックスバリアを設けることがある。特にシンクロナスリラクタンスモータ等では、フラックスバリアを設けることでコアが分離するため、遠心力荷重を機械的に支持するためのブリッジが必要となる。一般にブリッジを通る磁束量が増えるとd軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差が小さくなり、モータのトルクは小さくなる。モータトルクの不足分を補うためには電流を増やす必要があり、回転電機の小型化及び高効率化が難しいという問題があった。
従来、回転子のブリッジからの漏洩磁束を低減する構造として、例えば特許文献1に示すように、磁束の漏洩経路となるブリッジの一部を非磁性体で構成して漏洩磁束を低減する技術が開示されている。
また、例えば特許文献2に示すように、磁極中心線と、回転子の回転軸心からブリッジまでを結ぶ直線とのなす角よりも、磁極中心線とブリッジの連結方向を通る直線とのなす角を小さくし、ブリッジに働く応力を軽減する技術が開示されている。
さらに、例えば特許文献3には、ブリッジを長くすることにより、ブリッジを通る永久磁石からの磁束経路を長くして漏洩磁束を低減する技術が開示されている。
さらにまた、特許文献4には、ブリッジの強度を向上する技術として、ボンド磁石の射出成形に伴うロータコアの変形を抑制するために、磁石スロットの外周面に対して法線方向にブリッジを延ばした技術が開示されている。
特開平9―163648号公報 特開2013-236418号公報 特開2011-97783号公報 特開2014-57392号公報
特許文献1に開示されている構造では、非磁性体は磁性体に比べて磁束を通しにくいため、十分な機械強度を得るためにブリッジ幅を広げても、ブリッジからの漏洩磁束を低減することができる。しかしながら、回転子コアと非磁性体のそれぞれにおいて別加工が必要であり、さらには両者を組み合わせる工程が増えるため、製作コストがアップする課題があった。
また、特許文献2に記載の技術においては、特に、ブリッジの連結方向と磁極中心線とを平行に形成することにより、ブリッジに作用する遠心力の向きが連結方向になり、ブリッジには引張応力が主に作用し、曲げ応力は小さくなるとされている。この考え方は回転子コアを剛体として扱うことを仮定している。しかしながら、実際の回転子コアは弾性変形するため、回転子コアの弾性変形に伴うブリッジの変形モードが変化する場合、必ずしも前記構造により曲げ応力を軽減することができない。特に、回転数が大きい場合や、外周側の回転子コアの径方向厚みが小さい場合、回転子コアは遠心作用により弾性変形しやすく、ブリッジに大きな曲げ応力が作用し、機械強度が不足するといった課題があった。
また、特許文献4に記載の技術においては、内側スロットと外側スロットとにボンド磁石を射出成型する際に、内側スロットと外側スロットに均一な圧力が発生する。このため、磁石スロット外周面とブリッジを垂直に交わらせることにより、ブリッジには圧縮と引張応力が主に作用し、曲げ応力は小さくなると考えられる。一方で、回転子に遠心力が作用する場合、遠心力は回転中心から放射状に作用する力であるため、内側スロットと外側スロットにあるそれぞれの永久磁石に作用する遠心力は向きも大きさも異なり、磁石スロット外周面とブリッジとが垂直に交わった構造では、ブリッジに曲げ応力が発生する。このため、漏洩磁束を低減するためにブリッジを細めると機械強度が不足するといった課題があった。
さらに、特許文献3に記載の技術においては、外周側の回転子コアとブリッジの接点よりも回転子内径側に永久磁石を埋め込み、これによりブリッジを長くしている。ブリッジを長くすることにより、永久磁石からの磁束経路を長くでき、漏洩磁束を低減している。しかしながら、永久磁石を回転子内径側に埋め込むことにより、外周側の回転子コア質量が増加し、ブリッジにはたらく遠心力荷重が増大する。このためブリッジ幅は広げる必要があり、ブリッジを長くしてもブリッジ幅が広がった分だけ漏洩磁束が増加するといった課題があった。
以上より、ブリッジからの漏洩磁束を低減する構造として、従来、ブリッジを非磁性体で置き換える構造、ブリッジを長くする構造およびブリッジの傾きを限定する構造が提案されているものの、ブリッジを非磁性体で置き換えるとコストアップの課題があり、またブリッジを長くする構造は、コア荷重の増加によりブリッジ幅が広がり漏洩磁束が増加する課題があった。さらには、ブリッジの傾きを限定する構造では回転子コアが剛体であることが仮定されており、実際の回転子コアの弾性を考慮した漏洩磁束低減構造はこれまで提案されていなかった。
上記事情を鑑み、本発明の目的は、回転子コアの弾性によるブリッジ周りの変形モードを考慮し、これによりブリッジ幅を狭め、ブリッジからの漏洩磁束を低減できる回転電機を提供することにある。
前記課題を解決するために本発明の特徴とするところは、固定子と、磁性体で構成された回転子コアを備える回転子と、前記回転子に固定されたシャフトとを備えた回転電機において、前記回転子コアには磁極1極あたり少なくとも1つの磁石挿入孔が周方向に設けられると共に、前記磁石挿入孔に対して内周側に配置されたコア領域Aと、前記磁石挿入孔に対して外周側に配置されたコア領域Bとが設けられ、前記磁石挿入孔には永久磁石が挿入され、前記コア領域Aと前記コア領域Bとは、磁極中心から周方向に離れた第一ブリッジ及び第二ブリッジの少なくとも2本のブリッジにより機械的に連結され、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Aとの接続部間の距離をL1とし、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Bとの接続部間の距離をL2としたとき、L2<L1の関係を満足し、磁極中心側であって前記第一ブリッジと前記コア領域Bの内周面とでなす角をθ1とし、前記第二ブリッジと前記コア領域Bの内周面とでなす角をθ2としたとき、θ1>90°、θ2>90°の関係を満足し、前記コア領域Bの周方向端部は内周側と外周側にあり、いずれか長い方の端部間を結ぶ距離をL3としたとき、L2<L3の関係を満足することで、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Bとの接続部の周方向両側に、前記コア領域Bが存在するようにしたことにある。
本発明によれば、ブリッジからの漏洩磁束を低減できる回転電機を提供することができる。
本発明の第1実施例に係る回転電機の回転軸に平行な平面での断面図である。 本発明の第1実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第1実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での部分断面図である。 本発明の第2実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第2実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第1実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での部分断面図である。 第一ブリッジ及び第二ブリッジに発生する応力を計算するための片持梁モデルを示す図である。 比較例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第1実施例に係る回転子に作用する力と曲げモーメントの変化を示す図である。 比較例と本実施例の構造における遠心力荷重に対する応力分布を比較した1磁極あたりの応力解析結果を示す図である。 本発明の第3実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第3実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第4実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第5実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第5実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第6実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第7実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。 本発明の第8実施例に係る回転電機を搭載した電動機車両の概略図である。
以下、本発明の実施例を図面に従い詳細に説明する。本発明においては複数の実施例を提案しているが、下記はあくまでも実施例に過ぎず、本発明の実施態様が下記具体的態様に限定されることを意図する趣旨ではない。
図1~10を用いて、本発明の第1実施例に係る回転電機を説明する。図1は本発明の第1実施例に係る回転電機の回転軸に平行な平面での断面図である。図2は本発明の第1実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。
図1において、回転電機1は、固定子10と、固定子10の径方向内側に回転可能に支持された回転子20と、回転子20に固定されたシャフト90と、固定子10及び回転子20を覆うフレーム15から構成されている。回転子20は固定子10に対してギャップ100を介して回転可能に支持されている。固定子10には、固定子スロットに巻装された固定子巻線11が備えられている。
図2において、回転子20は回転軸心Xを中心に回転する。以下では断りのない限り、「内周側」「外周側」という言葉は、それぞれ回転軸心Xに対して距離が近い側を「内周側」、遠い側を「外周側」と定義する。また「径方向」は回転軸心Xと垂直に交わる直線方向と定義し、「周方向」は回転軸心Xまわりの回転方向と定義する。
図2に示すように、回転子20は、磁性体である回転子コア30と、回転子コア30を貫通し、回転子20の回転軸であるシャフト90から構成される。また、回転子20は、偶数個(図2では8個)の磁極を有している。各磁極は少なくとも1つの空孔40を有している。回転子コア30は空孔40に対して内周側に配置されたコア領域Aと、空孔40に対して外周側に配置されたコア領域Bを有している。各磁極のコア領域Aとコア領域Bとは、磁極中心Cを挟んで磁極中心Cから周方向に離れた第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の少なくとも2本のブリッジにより機械的に連結されている。空孔40は、第一ブリッジ51、第二ブリッジ52、コア領域A及びコア領域Bによって形成されている。
回転子コア30の材料としては、回転子コア30に発生する渦電流損失を低減するために、電気的絶縁体でラミネーションされた積層鋼鈑を使用することが望ましいが、材料費や加工費を低減するためにソリッドの磁性体を使用しても良い。回転子コア30は、シャフト90に対して接着、溶接、圧入、焼き嵌め等の方法を用いて固定される。回転子コア30をソリッドの磁性体で構成する場合は、回転子コア30とシャフト90を一体成型しても良い。また、図2では空孔40の断面形状を略台形としているが、コア領域Aとコア領域Bを分割する空孔であれば、その形状は例えば略三角形や略円弧形状でも良い。
以下、本実施例の構造を図3で説明する。図3は本発明の第1実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での部分断面図である。
第一ブリッジ51と第二ブリッジ52は磁極中心C(図2)を挟んで離間されており、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52のコア領域Aとの接続部102間の距離をL1とし、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52のコア領域Bとの接続部101間の距離をL2とすると、本実施例の構造は距離L1よりも距離L2の方が短い。すなわちL2<L1の関係式が成り立つ。
さらに、第一ブリッジ51と、コア領域Bの内周側の空孔40との境界面(以下、内周面と呼称する)とで、磁極中心C側でなす角をθ1とし、第二ブリッジ52とコア領域Bの内周面とで、磁極中心C側でなす角をθ2とすると、角θ1及び角θ2は鈍角である。すなわちθ1>90°、θ2>90°の関係式が成り立つ。
加えて、コア領域Bの周方向端部間を結ぶ距離をL3とすると、距離L3よりも距離L2の方が短い。すなわちL2<L3の関係式が成り立つ。
図2及び図3ではコア領域Aの形状を略正八角形としているが、前記の関係を満たしていれば、例えば円形や図4、図5に示すような略歯車形状でも良い。なお、図4、図5の詳細については後述する。
また、コア領域Bの形状としては、コア領域Bの周方向端部は内周側と外周側の何れか一方が長くても良く、距離L3はコア領域Bの周方向端部の内周側または外周側のいずれか長い方の端部間を結ぶ距離であると定義する。図2~5において、第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52は、径方向幅が一定の略長方形としているが、例えば円弧状でもよく、また径方向幅が一定でない形状でも良い。
次に本実施例の作用について説明する。回転子20が回転すると、回転子コア30には各部分で遠心力が働く。遠心力が働くと、コア領域Bはコア領域Aから離間しようとするため、コア領域Aとコア領域Bを機械的に接続する第一ブリッジ51と第二ブリッジ52には、略径方向の引張力が作用する。回転子コア30が剛体であると仮定できれば、コア領域A、コア領域B、第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52の変形は無視できるので、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52には、各磁極の磁極中心C方向に引張力のみが作用する。従来技術では回転子コア30が剛体であると仮定していたため、各ブリッジに作用する力としては、この磁極中心C方向の引張力のみを考慮すれば良かった。
しかしながら、実際の回転子コア30の応力分布を厳密に評価するには、回転子コア30が剛体であるという仮定は適切ではなく、コア材料の弾性を考慮する必要がある。
コア領域Bが遠心力を受けると、コア領域Bは回転軸心Xから離れようとするが、同時に第一ブリッジ51と第二ブリッジ52との接続部101は第一ブリッジ51と第二ブリッジ52による内径方向の張力を受ける。このため、コア領域Bは接続部101が内径側に寄り、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の接続部101間のコア領域Bが外周側に寄った弓形の変形をする。このコア領域Bの変形により、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52には、引張力、剪断力及び曲げモーメントが作用する。第一ブリッジ51と第二ブリッジ52に作用する力と曲げモーメントを図6に示す。
図6は本発明の第1実施例に係る回転子20の回転軸に垂直な平面での部分断面図である。図6では、部分断面図に、第一ブリッジ51に作用する力とモーメントを接続部101支点として描いた。
まず、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52にはコア領域Bの遠心作用による力F1が働く。力F1はコア領域Bが剛体と仮定しても発生する力であり、各磁極において磁極中心Cに平行である。本実施例では第一ブリッジ51と第二ブリッジ52はL2<L1かつθ1>90°、θ2>90°であるから、力F1は第一ブリッジ51と第二ブリッジ52それぞれに対して、引張力T1成分と剪断力Q成分に分解できる。回転子コア30の弾性を考慮すると、コア領域Bの弓形の変形に伴い、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52には、距離L2を縮めるような力F2が働く。力F1と同様に、力F2は引張力T2成分と剪断力P成分に分解できる。また、コア領域Bは接続部101を軸に曲がりながら弓形の変形をするため、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52には曲げモーメントMが働く。
図6では、磁極中心Cよりも左に位置する第一ブリッジ51の接続部101には反時計回りの曲げモーメントMが働き、磁極中心Cよりも右に位置する第二ブリッジ52の接続部101には時計回りの曲げモーメントMが働く。したがって、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52のそれぞれには、引張力T1とT2、剪断力PとQ、及び曲げモーメントMが作用する。
第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52に発生する応力について説明する。コア領域Aは回転子20の内周側に位置しており、各極で一体につながった構造をしているため、コア領域Bと比較して変形量は少ない。このため、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52は、コア領域Aとの接続部102を固定端、コア領域Bとの接続部101を自由端とした片持梁に見立てることができる。
図7は第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52に発生する応力を計算するための片持梁モデルを示す図である。第一ブリッジ51または第二ブリッジ52の接続部101から接続部102までの長さ、すなわち梁の長さをLと定義し、第一ブリッジ51または第二ブリッジ52に作用する種々の力と曲げモーメントが図7に示すように作用すると仮定する。この時、接続部101には大きさMの曲げモーメントが発生し、接続部102には-(P-Q)L+Mの曲げモーメントが発生し、曲げ応力分布は、接続部101から接続部102にかけて線形に変化する。加えて、梁の全領域で引張力T1+T2が発生する。したがって、第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52の接続部101側では、式1で表される局所応力σ1が発生する。
σ1= M/Z+(T1+T2)/S・・・(式1)
ここで、Zは第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52の断面係数、Sは第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52の断面積である。また、接続部102側では、式2で表される局所応力σ2が発生する。
σ2=|(P-Q)L-M|/Z+(T1+T2)/S・・・(式2)
図8に比較例を示す。図8は比較例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図を示す。
図8比較例の構造では、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52がL2=L1であり、θ1=90°、θ2=90°であることから、剪断力Qと引張力T2はほぼ0である一方で、剪断力Pと引張力T1は大きい。またL2=L3の場合、コア領域Bが弓形に変形する際の曲げモーメントMは大きかった。このため、局所応力は、曲げモーメントMが大きい場合は式1で表される接続部101側で大きくなり、剪断力Pが大きい場合は式2で表される接続部102側で大きくなりやすかった。
一方、本実施例の回転子構造では、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52をL2<L1とし、かつθ1>90°、θ2>90°とすることで、力F1及び力F2の張力成分及び剪断力成分の割合を変化させることができる。
具体的には、比較例の構造と比較して、引張力T1と剪断力Pは小さくなり、引張力T2と剪断力Qは大きくなる。また、L2<L3とすると、接続部101の周方向両側にコア領域Bが存在するようになる。接続部101の周方向磁極中心C側のコア35と周方向q軸側のコア36にはそれぞれ遠心力が働き、それぞれのコアが接続部101につくる曲げモーメントの回転方向は逆になる。このためL2<L3とすると、曲げモーメントMは小さくなる。またL2<L3とすると、L2=L3の場合と比較してL2が短くなる分、コア領域Bの弓形のたわみも減少するため、力F2が小さくなり、引張力T2と剪断力Pは小さくなる。
以上、本実施例の回転子構造とそれによる力と曲げモーメントの変化を図9に示す。図9は本発明の第1実施例に係る回転子に作用する力と曲げモーメントの変化を示す図である。
L2<L1かつθ1>90°、θ2>90°とすると、式2の(P-Q)Lの項が小さくなるため、接続部102側の局所応力を低減できる。またL2<L3とすると、曲げモーメントMと引張力T2が小さくなるため、式1の値が小さくなり、接続部101側の局所応力を低減できる。さらに、個々の効果だけでなく、L2<L1かつθ1>90°、θ2>90°とL2<L3を組み合わせることで、接続部101または接続部102の一方に応力が集中しない条件、すなわち式1の曲げモーメント成分Mと式2の曲げモーメント成分(P-Q)L-Mが等しくなる条件式3を満たす解を得ることができる。
2M=(P-Q)L・・・(式3)
これにより、本実施例では、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52に働く曲げ応力を低減できるので、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の径方向幅を狭めることができる。そして、本実施例では、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52からの漏洩磁束を低減することができる。
また、本実施例では、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52からの漏洩磁束が低減できるため、同じモータトルクを出す従来構造と比較して、電流低減による高効率化ができる。もしくは従来構造と同電流量の場合、本実施例では、同体格とするとd軸インダクタンス低減によるリラクタンストルク増加によりモータトルクが増加し、同じモータトルクとすると回転電機の小型化が可能である。
なお、本実施例は、式3を必ず成立させることを保証するものではなく、本実施例の構造を適用することにより、曲げモーメントM、剪断力P及び剪断力Qをバランスさせ、式3の左辺と右辺の値を近づけることができることを特徴としている。
次に応力解析の結果について図10を用いて説明する。図10は比較例と本実施例の構造における遠心力荷重に対する応力分布を比較した1磁極あたりの応力解析結果を示す図である。
本応力解析では、比較例の構造と本実施例の構造において、回転子コア30は同一の材料物性を用い、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の短手方向幅は等しくし、またコア領域Aとコア領域Bの形状は同一とし、等しい回転数で回転させた場合の応力分布を比較した。
解析の結果、比較例の構造の局所応力最大値を1と規格化したとき、本実施例の構造の局所応力最大値は0.45まで低減した。以上の解析から、本実施例の構造を適用することにより、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52に発生する応力を低減し、ブリッジ部を細めることができることが確認できる。
以上説明したように、本実施例では、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52のコア領域Aとの接続部102間の距離をL1とし、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52のコア領域Bとの接続部101間の距離をL2としたとき、L2<L1の関係を満足し、磁極中心C側であって第一ブリッジ51とコア領域Bの内周面とでなす角をθ1とし、第二ブリッジ52とコア領域Bの内周面とでなす角をθ2としたとき、θ1>90°、θ2>90°の関係を満足し、コア領域Bの周方向端部間を結ぶ距離をL3としたとき、L2<L3の関係を満足するようにしている。
本実施例では前記のように構成することにより、ブリッジからの漏洩磁束を低減した回転電機を提供することができる。
なお、本実施例ではコア領域Aの形状を略正八角形としているが、式1~3の関係を満たしていれば、円形もしくは、その他の多角形であっても良い。
また、本実施例では第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の2本のブリッジを設けるようにしているが、磁極中心Cに位置する空孔40に別のブリッジを設けるようにしても良い。
次に回転子コアの形状を変えた例について、図4及び図5を用いて説明する。
図4及び図5は本発明の第2実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。第1実施例と重複する事項については説明を省略する。
図4に示す構成では、複数設けたコア領域Bの隣合うコア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コア32を設けている。
コア領域Aの最外周に位置するq軸コア32は磁束を通すため、q軸インダクタンスが大きくなり、リラクタンストルクを活用することができる。第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の径方向幅が広い従来構造では、q軸コア32の幅が狭くなり、リラクタンストルクを十分に活用できなかった。
一方、本実施例の構造では第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の径方向幅を狭くできるので、q軸コア32の幅を広げることができる。さらに第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の漏洩磁束低減効果として、d軸インダクタンスは低減する。このため、本実施例では、リラクタンストルクを増加させ、モータトルクを増大させることができる。
また、図5に示すように、コア領域B及び空孔40が径方向に重なるように構成しても良い。図5において、コア領域Aの径方向外周側には、径方向に重なるように複数の空孔40a、40bが形成されている。また、空孔40a、40bの径方向外周側には、径方向に重なるように複数のコア領域B1、B2が形成されている。さらに、図4と同様に、複数設けたコア領域Bの隣合うコア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コア32を設けている。
さらにまた、第一ブリッジ51(51a、51b)及び第二ブリッジ52(52a、52b)が径方向に多段に配置されている。加えて、接続部101(101a、101b)及び接続部102(102a、102b)も多段に形成されている。
図5においては、第一ブリッジ51bと第二ブリッジ52bは磁極中心Cを挟んで離間されており、第一ブリッジ51bと第二ブリッジ52bのコア領域B1との接続部102b間の距離をL1とし、第一ブリッジ51bと第二ブリッジ52bのコア領域B2との接続部101b間の距離をL2とすると、本実施例の構造は距離L1よりも距離L2の方が短い。すなわちL2<L1の関係式が成り立つ。
さらに、第一ブリッジ51bと、コア領域B2の内周側の空孔40bとの境界面(以下、内周面と呼称する)とで、磁極中心C側でなす角をθ1とし、第二ブリッジ52bとコア領域B2の内周面とで、磁極中心C側でなす角をθ2とすると、角θ1及び角θ2は鈍角である。すなわちθ1>90°、θ2>90°の関係式が成り立つ。
加えて、コア領域B2の周方向端部間を結ぶ距離をL3とすると、距離L3よりも距離L2の方が短い。すなわちL2<L3の関係式が成り立つ。
本実施例において、距離L1、L2、L3および角θ1、θ2の定義は前記の定義のみによらず、磁極中心Cを挟んで離間された第一ブリッジ51aと第二ブリッジ52aのコア領域Aとの接続部102a間の距離をL1とし、第一ブリッジ51aと第二ブリッジ52aのコア領域B1との接続部101a間の距離をL2とし、コア領域B1の周方向端部間を結ぶ距離をL3とし、第一ブリッジ51aと、コア領域B1の内周側の空孔40aとの境界面(以下、内周面と呼称する)とで、磁極中心C側でなす角をθ1とし、第二ブリッジ52aとコア領域B1の内周面とで、磁極中心C側でなす角をθ2としてもよい。コア領域B1の形状としては、コア領域B1の周方向端部は内周側と外周側の何れか一方が長くても良く、距離L3はコア領域B1の周方向端部の内周側または外周側のいずれか長い方の端部間を結ぶ距離であると定義する。この場合、ここで定義した距離L1、L2、L3および角θ1、θ2について、L2<L1、θ1>90°、θ2>90°、L2<L3の関係式が成り立つ。
同様に、いずれのコア領域Bおよび空孔40においても、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52を有する場合、距離L1、L2、L3および角θ1、θ2を定義できる。少なくとも1つのコア領域Bおよび空孔40において、L2<L1、θ1>90°、θ2>90°、L2<L3の関係式が成り立っていれば、本実施例の効果を得ることができる。
図5に示すような径方向に第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52が多段に配置された構造は、一般にシンクロナスリラクタンスモータとして用いられている。従来構造では、コアを多段にし、d軸リラクタンスとq軸リラクタンスの差を大きくすることにより、リラクタンストルクを活用しようとしていたが、コアを多段にすることでブリッジの数が増えるか、または、ブリッジの周方向幅が広くなっていた。これにより、d軸リラクタンスとq軸リラクタンスの差を十分に大きくすることができなかった。
一方、本実施例の構造では、第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52の周方向幅を狭めることが可能であるため、d軸リラクタンスとq軸リラクタンスの差を大きくすることができ、リラクタンストルクを活用することができる。これにより、モータの大トルク化や高効率化、小型化が可能となる。
次に本発明の第3実施例について、図11及び図12を用いて説明する。図11及び図12は本発明の第3実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。第1実施例及び第2実施例と重複する事項については説明を省略する。
図11及び図12において、各磁極には少なくとも1つの磁石挿入孔45が形成されている。磁石挿入孔45には、磁極を形成するための永久磁石70が収容されている。
回転子コア30は磁石挿入孔45に対して内周側に配置されたコア領域Aと、磁石挿入孔45に対して外周側に配置されたコア領域Bを有している。各磁極のコア領域Aとコア領域Bとは、磁極中心Cを挟んで磁極中心Cから周方向に離れた第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の少なくとも2本のブリッジにより機械的に連結されている。
永久磁石70の材質には制約はなく、フェライト系、ネオジム系、サマリウムコバルト系などを例とする、いずれの材料を使用しても良い。また、本実施例では矩形状の永久磁石を用いているが、円弧形状の永久磁石であっても構わない。さらに、磁石挿入孔45にボンド磁石を射出成型するようにしても良い。また、永久磁石70を回転軸方向に分割積層した構造でも良い。
各磁極は1つの永久磁石70で構成されている。また、図12に示しように、q軸が通るコア領域Aの最外周に位置する部分には、q軸コア32を設けるようにしても良い。このq軸コア32は磁束を通すため、q軸インダクタンスが大きくなり、リラクタンストルクを活用することができる。
第3実施例は、第1実施例及び第2実施例と同様に、L2<L1及びL2<L3の関係式が成り立つ。さらに、第一ブリッジ51とコア領域Bの内周側の磁石挿入孔45との境界面(以下、内周面と呼称する)とで、磁極中心C側でなす角をθ1とし、第二ブリッジ52とコア領域Bの内周面とで、磁極中心C側でなす角をθ2とすると、角θ1及び角θ2は鈍角である。すなわちθ1>90°、θ2>90°の関係式が成り立つ。
また、コア領域Bの形状としては、コア領域Bの周方向端部は内周側と外周側の何れか一方を長く形成しても良く、距離L3はコア領域Bの周方向端部の内周側または外周側の何れか長い方の端部間を結ぶ距離であると定義する。第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52は、径方向幅が一定の略長方形としているが、例えば円弧状でも良く、また径方向幅が一定でない形状でも良い。
第3実施例の回転電機の場合、回転子20が回転すると、回転子コア30だけでなく永久磁石70の各部分においても遠心力が働く。永久磁石70はコア領域Bをコア領域Aと離間させようとしてコア領域Bに荷重をかける。このため、永久磁石70の遠心作用は、コア領域Bの遠心力の増加とみなすことができ、基本的には第1実施例と同様の応力分布となる。
したがって、第3実施例の構造においても、式1及び式2を低減し、かつ式3に近づくように曲げモーメントM、剪断力P及び剪断力Qをバランスさせることにより、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52に働く曲げ応力を低減することができる。これにより第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の径方向幅を狭めることができ、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52からの漏洩磁束を低減することができる。
また、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52からの漏洩磁束が低減できるため、同じモータトルクを出す従来構造と比較して、永久磁石量の低減による低コスト化や、電流低減による高効率化ができる。もしくは従来構造と同永久磁石量、同電流量の場合、同体格とすると永久磁石70の電機子鎖交磁束の増加によるマグネットトルク増加と、d軸インダクタンス低減によるリラクタンストルク増加によりモータトルクが増加し、同じモータトルクとすると回転電機の小型化が可能である。
また、永久磁石70の電機子鎖交磁束の増加により、誘導起電力が向上し、力率が向上する。
特に、略直方体形状の永久磁石70を、その短軸が磁極中心C上の直線と略平行となるように配置することにより、永久磁石量を削減でき、またはこれによるコストの低減が可能となる。従来は永久磁石量を削減すると、マグネットトルクが減少するため、モータトルク低下または電流増加に伴う効率低下が免れなかった。
しかしながら、本実施例の構造では、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52からの漏洩磁束を低減できるため、永久磁石量を削減しても従来構造と比較して、電機子鎖交磁束を増加させることができる。このため、マグネットトルクの増加によるモータトルクの増加または電流低減による効率向上が可能である。
一般に電機子鎖交磁束が増えるとコア領域Bは広い範囲で磁気飽和してしまい、これによりq軸インダクタンスが低下する恐れがある。一方、本実施例で示すような永久磁石70の配置である場合、永久磁石70がコア領域Aの内周側深くまでは埋め込まれていないため、コア領域Aを通る磁束のパスが形成されやすく、q軸インダクタンスを増やすことが可能となる。このため、コア領域Bが広範囲で磁気飽和しても、リラクタンストルクが低下しない。
したがって、小型化によりコア領域Bが磁気飽和しやすくなってもリラクタンストルク、ひいてはモータトルクが低下しないため、回転電機1の高トルク密度化及び高出力密度化が可能である。
次に本発明の第4実施例について、図13を用いて説明する。図13は本発明の第4実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。第1実施例から第3実施例と重複する事項については説明を省略する。
図13に示すように、コア領域B及び磁石挿入孔45が径方向に重なるように構成されている。また、コア領域Aの径方向外周側には、径方向に重なるように複数の磁石挿入孔45a、45bが形成されている。また、磁石挿入孔45a、45bの径方向外周側には、径方向に重なるように複数のコア領域B1、B2が形成されている。磁石挿入孔45a、45bには永久磁石70a、70bが挿入されている。本実施例では、磁極は複数の永久磁石70a、70bにより構成されている。さらに、複数設けたコア領域Bの隣合うコア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コア32を設けている。
さらにまた、第一ブリッジ51(51a、51b)及び第二ブリッジ52(52a、52b)が径方向に多段に配置されている。加えて、接続部101(101a、101b)及び接続部102(102a、102b)も多段に形成されている。
第4実施例においては、第一ブリッジ51bと第二ブリッジ52bは磁極中心Cを挟んで離間されており、第一ブリッジ51bと第二ブリッジ52bのコア領域B1との接続部102b間の距離をL1とし、第一ブリッジ51bと第二ブリッジ52bのコア領域B2との接続部101b間の距離をL2とすると、本実施例の構造は距離L1よりも距離L2の方が短い。すなわちL2<L1の関係式が成り立つ。
さらに、第一ブリッジ51bと、コア領域B2の内周側の磁石挿入孔45bとの境界面(以下、内周面と呼称する)とで、磁極中心C側でなす角をθ1とし、第二ブリッジ52bとコア領域B2の内周面とで、磁極中心C側でなす角をθ2とすると、角θ1及び角θ2は鈍角である。すなわちθ1>90°、θ2>90°の関係式が成り立つ。
加えて、コア領域B2の周方向端部間を結ぶ距離をL3とすると、距離L3よりも距離L2の方が短い。すなわちL2<L3の関係式が成り立つ。
本実施例において、距離L1、L2、L3および角θ1、θ2の定義は前記の定義のみによらず、磁極中心Cを挟んで離間された第一ブリッジ51aと第二ブリッジ52aのコア領域Aとの接続部102a間の距離をL1とし、第一ブリッジ51aと第二ブリッジ52aのコア領域B1との接続部101a間の距離をL2とし、コア領域B1の周方向端部間を結ぶ距離をL3とし、第一ブリッジ51aと、コア領域B1の内周側の磁石挿入孔45aとの境界面(以下、内周面と呼称する)とで、磁極中心C側でなす角をθ1とし、第二ブリッジ52aとコア領域B1の内周面とで、磁極中心C側でなす角をθ2としてもよい。コア領域B1の形状としては、コア領域B1の周方向端部は内周側と外周側の何れか一方が長くても良く、距離L3はコア領域B1の周方向端部の内周側または外周側のいずれか長い方の端部間を結ぶ距離であると定義する。この場合、ここで定義した距離L1、L2、L3および角θ1、θ2について、L2<L1、θ1>90°、θ2>90°、L2<L3の関係式が成り立つ。
同様に、いずれのコア領域Bおよび磁石挿入孔45においても、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52を有する場合、距離L1、L2、L3および角θ1、θ2を定義できる。少なくとも1つのコア領域Bおよび磁石挿入孔45において、L2<L1、θ1>90°、θ2>90°、L2<L3の関係式が成り立っていれば、本実施例の効果を得ることができる。
図13に示すような径方向に第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52が多段に配置された構造は、一般にシンクロナスリラクタンスモータとして用いられている。従来構造では、コアを多段にし、d軸リラクタンスとq軸リラクタンスの差を大きくすることにより、リラクタンストルクを活用しようとしていたが、コアを多段にすることでブリッジの数が増えるか、または、ブリッジの周方向幅が広くなっていた。これにより、d軸リラクタンスとq軸リラクタンスの差を十分に大きくすることができなかった。
一方、本実施例の構造では、第一ブリッジ51及び第二ブリッジ52の周方向幅を狭めることが可能であるため、d軸リラクタンスとq軸リラクタンスの差を大きくすることができ、リラクタンストルクを活用することができる。これにより、モータの大トルク化や高効率化、小型化が可能となる。
さらに、図13に示す構成では、複数設けたコア領域Bの隣合うコア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コア32を設けている。
コア領域Aの最外周に位置するq軸コア32は磁束を通すため、q軸インダクタンスが大きくなり、リラクタンストルクを活用することができる。第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の径方向幅が広い従来構造では、q軸コア32の幅が狭くなり、リラクタンストルクを十分に活用できなかった。
一方、本実施例の構造では第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の径方向幅を狭くできるので、q軸コア32の幅を広げることができる。さらに第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の漏洩磁束低減効果として、d軸インダクタンスは低減する。このため、本実施例では、リラクタンストルクを増加させ、モータトルクを増大させることができる。
次に本発明の第5実施例について、図14及び図15を用いて説明する。図14及び図15は本発明の第5実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。第1実施例から第4実施例と重複する事項については説明を省略する。
図14及び図15において、本実施例では、磁極一極に対し、永久磁石70(70c、70d)が複数個に分割して配置されている。図14においては、永久磁石70c、70dが外周側に向かって開くようにV字型に配置されている。図15においては、永久磁石70c、70d、70eが外周側に向かって開くようにU字型に配置されている。
永久磁石70を用いる場合、渦電流による熱損失が問題となる。特に回転子を高速回転させる場合、磁石に加わる変動磁場の周波数が増加し、それに伴い熱損失も増加する。この渦電流による発熱損失を低減するために、本実施例では磁石挿入孔45に挿入される永久磁石70(70c、70d)(図15では永久磁石70c、70d、70e)を複数個に分割して配置している。
本実施例においても、第1実施例から第4実施例と同様、L2<L1、L2<L3の関係式、及びθ1>90°、θ2>90°の関係式が成り立つ。
また、複数設けたコア領域Bの隣合うコア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コア32を設けている。
本実施例の作用効果については、第1実施例から第4実施例と同様である。
次に本発明の第6実施例について、図16を用いて説明する。図16本発明の第6実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。第1実施例から第5実施例と重複する事項については説明を省略する。
図16において、各磁極の磁石挿入孔45の磁極中心Cには、少なくとも1つのブリッジ60を有する。ブリッジ60により磁石挿入孔45は分割され、少なくとも一方の磁石挿入孔45には永久磁石70が収容されている。図16では全ての磁石挿入孔45に永久磁石70が収容されているが、磁石挿入孔45は永久磁石70が収容されていない空孔40でもよく、全ての磁石挿入孔45が空孔40であってもよい。
本実施例では、磁極中心Cにブリッジ60を有することで、コア領域Bをコア領域Aに機械的に支持する部分が、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52に加えて、ブリッジ60の3つのブリッジとなる。
第一ブリッジ51と第二ブリッジ52は磁極中心Cから周方向に離間した位置にあり、これにより曲げ応力が発生していたのに対して、ブリッジ60は磁極中心Cに位置しているため、ブリッジ60にはほとんど曲げ応力が発生せず、引張応力のみ発生する。このため、コア領域Bの遠心力をブリッジ60で主に支持し、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52を補助的に使用することで、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の周方向幅の合計より、ブリッジ60を含めた3つのブリッジの周方向幅の合計の方が小さくでき、ブリッジからの漏洩磁束を低減することができる。
本実施例においても、第1実施例から第5実施例と同様、L2<L1、L2<L3の関係式、及びθ1>90°、θ2>90°の関係式が成り立つ。
また、複数設けたコア領域Bの隣合うコア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コア32を設けている。
本実施例の作用効果については、第1実施例から第5実施例と同様である。
次に本発明の第7実施例について、図17を用いて説明する。図17本発明の第7実施例に係る回転子の回転軸に垂直な平面での断面図である。第1実施例から第6実施例と重複する事項については説明を省略する。
図17において、本実施例では、コア領域Aとコア領域Bの最外周を機械的に接合する第三ブリッジ53を設けている。
これにより、回転子20が回転した際の回転子20表面上の空気の流れが滑らかになるため、空気摩擦による機械損失が低減し、効率を向上することができる。また、回転子20による風切音が低減するため、モータ騒音を低減することができる。さらに、回転子20の回転が加減速し、コア領域Bに周方向の慣性力が作用した際に、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の2つのブリッジ、または、第一ブリッジ51、第二ブリッジ52、ブリッジ60の3つのブリッジのみの場合にはブリッジが屈曲する恐れがあるが、第三ブリッジ53を有する場合は、第三ブリッジ53の弾性力でコア領域Bを支持できるため、他のブリッジが屈曲するリスクを軽減できる。
本実施例においても、第1実施例から第6実施例と同様、L2<L1、L2<L3の関係式、及びθ1>90°、θ2>90°の関係式が成り立つ。
また、複数設けたコア領域Bの隣合うコア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コア32を設けている。
本実施例の作用効果については、第1実施例から第6実施例と同様である。
次に本発明の第8実施例について、図18を用いて説明する。図18本発明の第8実施例に係る回転電機を搭載した電動機車両の概略図である。第1実施例から第7実施例と重複する事項については説明を省略する。
電動機車両の一例として、鉄道車両や高速車両がある。図18において、電動機車両200は、ギア210、車輪220、車軸230及び回転電機1を備えた台車240を備えている。回転電機1はギア210を介して車軸230に接続された車輪220を駆動する。なお、本実施例では、回転電機1は2基搭載して例で説明しているが、1基または3基以上の複数であっても良い。
本実施例の回転電機1の回転子20は、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52に発生する曲げ応力を低減でき、第一ブリッジ51と第二ブリッジ52の機械強度に余裕が生じるため、回転電機1を高速回転に対応させることができる。
このため、本実施例の回転電機1は鉄道または高速車両等の電動機車両200に適用することができる。また、電動機車両200に用いる回転電機1は高効率化または小型化できる。本実施例では、高効率な回転電機1を電動機車両200に適用することにより、回転電機1で消費される電力が低減できるため、これに伴う電動機車両200の消費電力量の低減効果を得ることができる。
また、本実施例では、小型な回転電機1を適用することで、電動機車両200の床下スペースを拡大することができ、電動機車両200の床下レイアウトの自由度を向上することができる。
また、本実施例では、電動機車両200を軽量化することができる。
1 回転電機
10 固定子
11 固定子巻線
15 フレーム
20 回転子
30 回転子コア
32 q軸コア
35 磁極中心C側のコア
36 q軸側のコア
40 空孔
40a 空孔
40b 空孔
45 磁石挿入孔
45a 磁石挿入孔
45b 磁石挿入孔
51 第一ブリッジ
51a 第一ブリッジ
51b 第一ブリッジ
52 第二ブリッジ
52a 第二ブリッジ
52b 第二ブリッジ
53 第三ブリッジ
60 ブリッジ
70 永久磁石
70a 永久磁石
70b 永久磁石
70c 永久磁石
70d 永久磁石
70e 永久磁石
90 シャフト
100 ギャップ
101 接続部
101a 接続部
101b 接続部
102 接続部
102a 接続部
102b 接続部
200 電動機車両
210 ギア
220 車輪
230 車軸
240 台車

Claims (12)

  1. 固定子と、磁性体で構成された回転子コアを備える回転子と、前記回転子に固定されたシャフトとを備えた回転電機において、
    前記回転子コアには磁極1極あたり少なくとも1つの磁石挿入孔が周方向に設けられると共に、前記磁石挿入孔に対して内周側に配置されたコア領域Aと、前記磁石挿入孔に対して外周側に配置されたコア領域Bとが設けられ、
    前記磁石挿入孔には永久磁石が挿入され、
    前記コア領域Aと前記コア領域Bとは、磁極中心から周方向に離れた第一ブリッジ及び第二ブリッジの少なくとも2本のブリッジにより機械的に連結され、
    前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Aとの接続部間の距離をL1とし、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Bとの接続部間の距離をL2としたとき、L2<L1の関係を満足し、
    磁極中心側であって前記第一ブリッジと前記コア領域Bの内周面とでなす角をθ1とし、前記第二ブリッジと前記コア領域Bの内周面とでなす角をθ2としたとき、θ1>90°、θ2>90°の関係を満足し、
    前記コア領域Bの周方向端部は内周側と外周側にあり、いずれか長い方の端部間を結ぶ距離をL3としたとき、L2<L3の関係を満足することで、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Bとの接続部の周方向両側に、前記コア領域Bが存在することを特徴とする回転電機。
  2. 固定子と、磁性体で構成された回転子コアを備える回転子と、前記回転子に固定されたシャフトとを備えた回転電機において、
    前記回転子コアには磁極1極あたり少なくとも1つの磁石挿入孔が周方向に設けられると共に、前記磁石挿入孔に対して内周側に配置されたコア領域Aと、前記磁石挿入孔に対して外周側に配置されたコア領域Bとが設けられ、
    前記磁石挿入孔には永久磁石が挿入され、
    前記コア領域Aと前記コア領域Bとは、磁極中心から周方向に離れた第一ブリッジ及び第二ブリッジの少なくとも2本のブリッジにより機械的に連結され、
    前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Aとの接続部であって、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの径方向幅を形成する2つの周方向端部のうち、前記磁石挿入孔を形成する周方向端部とは反対側の周方向端部をそれぞれ結ぶ距離をL1とし、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの前記コア領域Bとの接続部であって、前記第一ブリッジと前記第二ブリッジの径方向幅を形成する2つの周方向端部のうち、前記磁石挿入孔を形成する周方向端部とは反対側の周方向端部をそれぞれ結ぶ距離をL2としたとき、L2<L1の関係を満足し、
    磁極中心側であって前記第一ブリッジと前記コア領域Bの内周面とでなす角をθ1とし、前記第二ブリッジと前記コア領域Bの内周面とでなす角をθ2としたとき、θ1>90°、θ2>90°の関係を満足し、
    前記コア領域Bの周方向端部は内周側と外周側にあり、いずれか長い方の端部間を結ぶ距離をL3としたとき、L2<L3の関係を満足することを特徴とする回転電機。
  3. 請求項において、
    前記磁石挿入孔の磁極中心にブリッジを設けたことを特徴とする回転電機。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項において、
    前記永久磁石は略直方体形状であり、前記永久磁石の短軸が磁極中心線と略平行であることを特徴とする回転電機。
  5. 請求項1、3、4の何れか1項において、
    前記コア領域A及び前記コア領域Bの最外周面をむすぶ第三ブリッジを有することを特徴とする回転電機。
  6. 請求項1又は2において、
    前記コア領域Bを複数設け、隣合う前記コア領域B同士の間に、径方向の外周側に突出した複数のq軸コアを設けたことを特徴とする回転電機。
  7. 請求項1又は2において、
    前記磁石挿入孔は、径方向に重なるように複数設けたことを特徴とする回転電機。
  8. 請求項6において、
    前記コア領域Bは、径方向に重なるように複数設けたことを特徴とする回転電機。
  9. 請求項7又は8において、
    前記第一ブリッジ及び前記第二ブリッジは、径方向に多段に設けたことを特徴とする回転電機。
  10. 請求項において、
    記永久磁石は複数に分割されていることを特徴とする回転電機。
  11. 請求項10において、
    前記永久磁石は外周側に向かって開くようにV字型もしくはU字型に配置されたことを特徴とする回転電機。
  12. 回転電機と、車輪と、ギアと、台車を備え、前記回転電機は前記ギアを介して前記車輪を駆動する電動機車両において、
    前記回転電機は、請求項1乃至11の何れか1項を備えたことを特徴とする電動機車両。
JP2017201635A 2017-10-18 2017-10-18 回転電機及びこれを備えた電動機車両 Active JP7000109B2 (ja)

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