JP6998176B2 - 正極活物質、正極及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
Li、Mn及びM(但し、MはCo及びNiのうちの1以上)を含むスピネル型構造を有する複合酸化物であって、
上述した複合酸化物を備えた作用極とリチウム金属の対極とを備えた評価セルを用いた20℃の温度環境下0.1Cのレートでの充放電において、複合酸化物あたりの容量がq[mAhg-1]のときとq+5[mAhg-1]のときとの、容量Qの差分の電圧Vの差分に対する比を示す、下記式(1)から算出されるdQ/dV[Ahg-1V-1]の値が、充放電に用いる電位範囲の全範囲で-3<dQ/dV<3を満たすものである。
dQ/dV=(Q(q+5)-Q(q))/(V(q+5)-V(q))・・・式(1)
上述した正極活物質を含有する正極と、
負極活物質を含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
dQ/dV=(Q(q+5)-Q(q))/(V(q+5)-V(q))・・・式(1)
(1)200mLの三角フラスコにボールフィルタを入れ、窒素ガスを3L/分で5分間置換する。
(2)三角フラスコ中にKI(100g/L)溶液10mLと、HCl(塩酸[試薬特級]と蒸留水とを体積比で1:1に混合したもの)に20mL加える。
(3)正極活物質100mgを±0.1mgで量り取る。
(4)正極活物質を三角フラスコに移し入れ、栓をして回転子で撹拌しながら70℃で加熱して溶解させる。
(5)流水で三角フラスコを冷却後、残存酸素を除いた蒸留水を80mL加える。
(6)0.05mol/Lのチオ硫酸ナトリウムで溶液が褐色から薄い黄色になるまで素早く滴定する。
(7)デンプン溶液を0.5mL加えて紫色に呈色させる。
(8)続けて0.05mol/Lのチオ硫酸ナトリウムで滴定し、紫色が消えたところを終点とし、下記式(2)~(4)に基づいて遷移金属イオンの平均酸化数を算出する。
Men++(n-2)I- → Me2++1/2(n-2)I2 ・・・式(2)
I2+2S2O3 → 2I-+S4O6 2- ・・・式(3)
平均酸化数=I2(mol)/Me(mol)+2 ・・・式(4)
この工程では、正極活物質の原料を調製する。原料は、上述した正極活物質の所望の組成に応じて加える物質及びその量を選択すればよい。原料組成は、例えば、基本組成式LixMyMn2-yOz(但し、MはCo及びNiのうちの1以上であり、x,y,zは、0.9≦x≦1、0<y≦1、3.7≦z≦4.0を満たす。)の正極活物質が得られるように、Li、M及びMnを混合すればよい。このとき、原料中のリチウムのモル数Mol(Li)と遷移金属元素Me(MeはM及びMn)の総モル数Mol(Me)との比であるMol(Li)/Mol(Me)の値が0.90以上1.00以下となるように混合することが好ましく、0.95以上0.99以下となるように混合することがより好ましい。また、原料中のMのモル数Mol(M)とMnのモル数Mol(Mn)との比であるMol(M)/Mol(Mn)の値が3/17~7/13であることが好ましく、1/3であることがより好ましい。遷移金属の原料は、共沈法によって合成することが好ましい。金属元素を原子レベルで均一に混合させることができ、より好適な性能が得られるからである。共沈法では、遷移金属イオンを一粒子中に共存させた前駆体を作製し、これにリチウム塩を混合するものとしてもよい。共沈法により金属イオンが均一に分布した前駆体を得る際、水溶液中に不活性ガスを通気させることにより溶存酸素を除去することが好ましい。前駆体およびリチウム塩は、水酸化物、炭酸塩、クエン酸塩などとしてもよく、原子レベルで元素が均一に混合した難溶性塩が好ましい。錯化剤を用いれば、より高密度の前駆体を作製することも可能である。前駆体の原料は、塩基性水溶液を用いて前駆体を形成できるものであればよいが、溶解度の高い金属塩が好ましい。例えば、ニッケル源として、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル等を用いることができる。コバルト源として、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト等を用いることができる。また、マンガン源として、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、酸化マンガン、炭酸マンガン等を用いることができる。前駆体と混合するリチウム塩としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム等を用いることができる。
この工程では、上記得られた原料を焼成処理する。焼成処理では、原料を700℃以上1100℃以下、好ましくは700℃以上900℃以下、より好ましくは750℃以上850℃以下の温度範囲で焼成する。900℃以下で焼成した場合には、焼成によるLiの消失がほとんどなく、原料のMol(Li)/Mol(Me)が焼成後にも維持される。焼成時間は、例えば、5時間以上24時間以下の範囲としてもよい。焼成雰囲気は、空気雰囲気などの酸化性雰囲気でもアルゴン雰囲気などの不活性雰囲気でもよいが、不活性雰囲気が好ましい。不活性雰囲気で焼成すれば、例えば900℃以下のような低温でも、結晶構造中に酸素欠損を生じさせることができると考えられる。また、不活性雰囲気で焼成すれば、遷移金属イオンの平均酸化数をより好ましい範囲とし、格子定数をより好ましい範囲とすることができると考えられる。このような処理を経て、本開示の正極活物質を得ることができる。
[実験例1]
(1)原料調製工程
あらかじめ不活性ガスを通気させて溶存酸素を取り除いたイオン交換水に、硫酸ニッケルと硫酸マンガンとをNi、Mnの各元素が0.25:0.75のモル比になるように溶解させ、これら金属元素の合計モル濃度が2mol/Lとなるように混合水溶液を調整した。一方、同様に溶存酸素を取り除いたイオン交換水を用いて2mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.352mol/Lアンモニア水をそれぞれ調整した。溶存酸素を取り除いたイオン交換水を槽内温度50℃に設定された反応槽に入れ、800rpmで撹拌させた状態で、そこに水酸化ナトリウム水溶液を滴下して液温25℃を基準としたときにpHが12となるように調整した。反応槽に混合水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水をpH12に制御しつつ加え、共沈生成物の複合水酸化物を得た。水酸化ナトリウム水溶液のみ適宜加えてpHを12に保ち、2時間撹拌を継続した。その後、60℃で12時間静止することで複合水酸化物を粒子成長させた。反応終了後、複合水酸化物をろ過、水洗して取り出し、120℃のオーブン内で一晩乾燥させて複合水酸化物の粉末試料を得た。得られた複合水酸化物粉末(前駆体)と水酸化リチウム粉末(リチウム塩)とを、Mol(Li)/Mol(Me)の値が1.05となるように混合した。この混合粉末を6MPaの圧力で直径2cm、厚さ5mm程度のペレットに加圧成型した。
ペレットを、空気雰囲気の電気炉中1000℃の温度まで10℃/minで昇温し、1000℃で12時間焼成後、自然放冷で700℃まで冷却させ、その温度で72時間アニールさせた。焼成後ヒーターの電源を切り、自然放冷した。約8時間後、炉内温度が100℃以下になっていることを確認してペレットを取り出した。こうして、高結晶性の正極活物質を合成した。これを実験例1の正極活物質とした。
実験例1の焼成工程において、ペレットをアルゴン雰囲気の電気炉中1000℃の温度まで10℃/minで昇温し、1000℃で12時間焼成後自然放冷することで正極活物質を合成した。それ以外は実験例1と同様とした。
実験例1の原料調製工程において、硫酸ニッケルに代えて硫酸コバルトを用い、硫酸コバルトと硫酸マンガンとをCo、Mnの各元素が0.5:0.5のモル比になるようにイオン交換水に溶解させた。それ以外は実験例1と同様とした。
実験例1の原料調製工程において、前駆体とリチウム塩とをMol(Li)/Mol(Me)の値が0.95となるように混合した。また、焼成工程において、ペレットをアルゴン雰囲気の電気炉中850℃の温度まで10℃/minで昇温し、850℃で16時間焼成後自然放冷することで正極活物質を合成した。それ以外は実験例1と同様とした。
実験例4の原料調製工程において、前駆体とリチウム塩とをMol(Li)/Mol(Me)の値が0.97となるように混合した。また、焼成工程において、焼成条件を800℃12時間とした。それ以外は実験例4と同様とした。
実験例4の原料調製工程において、前駆体とリチウム塩とをMol(Li)/Mol(Me)の値が0.99となるように混合した。また、焼成工程において、焼成条件を750℃12時間とした。それ以外は実験例4と同様とした。
実験例4の正極活物質に、以下のようにリン酸リチウムを被覆した。10gの正極活物質(ペレットを解砕したもの)を含んだ1Lのイオン交換水に、水酸化リチウムを0.48g、NH4H2PO4を0.44g、3対1のモル比となるように溶解させた。この水溶液を50℃で24時間撹拌させ、ロータリーエバポレータで乾燥させたあと空気中450℃で加熱処理を施した。正極活物質表面のリン量の定量をICP-AESで行ったところ、リン酸リチウムの被覆量は正極活物質のモル数に対して6mol%であった。
実験例7のリン酸リチウムを被覆する工程において、水酸化リチウムを1.79g、NH4H2PO4を1.64gとした。それ以外は実験例7と同様とした。リン酸リチウムの被覆量は正極活物質のモル数に対して19mol%であった。
実験例7のリン酸リチウムを被覆する工程において、水酸化リチウムを2.76g、NH4H2PO4を2.52gとした。それ以外は実験例7と同様とした。リン酸リチウムの被覆量は正極活物質のモル数に対して39mol%であった。
実験例1の正極活物質に、実験例8と同様にリン酸リチウムを被覆した。リン酸リチウムの被覆量は正極活物質のモル数に対して18mol%であった。
正極活物質の化学組成は、以下のように同定した。まず、正極活物質について、ICP-AESを用いて組成分析を行い、正極活物質中のリチウム量及び遷移金属量を求めた。次に、ヨウ素を用いた酸化還元滴定により、遷移金属元素Meの平均酸化数を求めた。こうして求めたリチウム量、遷移金属量、遷移金属の平均酸化数、及び、リチウムの酸化数1から、電荷のバランスがとれるように酸素の量を決定した。
(1)200mLの三角フラスコにボールフィルタを入れ、窒素ガスを3L/分で5分間置換した。
(2)三角フラスコ中にKI(100g/L)溶液10mLと、HCl(塩酸[試薬特級]と蒸留水とを体積比で1:1に混合したもの)に20mL加えた。
(3)正極活物質100mgを±0.1mgで量り取った。
(4)正極活物質を三角フラスコに移し入れ、栓をして回転子で撹拌しながら70℃で加熱して溶解させた。
(5)流水で三角フラスコを冷却後、残存酸素を除いた蒸留水を80mL加えた。
(6)0.05mol/Lのチオ硫酸ナトリウムで溶液が褐色から薄い黄色になるまで素早く滴定した。
(7)デンプン溶液を0.5mL加えて紫色に呈色させた。
(8)続けて0.05mol/Lのチオ硫酸ナトリウムで滴定し、紫色が消えたところを終点とし、下記式(2)~(4)に基づいて遷移金属イオンの平均酸化数を算出した。
Men++(n-2)I- → Me2++1/2(n-2)I2 ・・・式(2)
I2+2S2O3 → 2I-+S4O6 2- ・・・式(3)
平均酸化数=I2(mol)/Me(mol)+2 ・・・式(4)
得られた正極活物質について、粉末X線回折測定を行った。測定は放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用したX線回折装置(UltimaIV、リガク)を用いて行った。X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流40mAに設定して測定を行った。また、測定は5°/minの走査速度で行い10°から100°(2θ)の角度範囲で記録した。構造解析ソフト(Rietan-FP)を用いて分析したところ、正極活物質は、空間群Fd3mの立方晶であることがわかった。また、空間群Fd3mの立方晶で指数付けし、最小二乗法で格子定数を算出したところ、8.168Åであった。
得られた正極活物質を85質量%、導電材としてカーボンブラックを10質量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5質量%含む正極合材に、分散材としてN-メチル-2-ピロリドンを適量添加、分散することでスラリー状合材とした。このスラリー状合材を15μm厚のアルミニウム箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させて、塗工電極を作製した。
上記手法で作製した塗工電極を2.05cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。この電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に非水電解液を含浸させたポリエチレン製セパレータを挟んで二極式評価セルを作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を30/40/30の体積比で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
上記二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、0.1Cのレートで5.0-3.0Vの範囲で充放電試験を行った。そして、複合酸化物あたり5[mAhg-1]の容量間隔で、下記(1)に基づいてdQ/dVの値を算出した。そして、dQ/dVの最大値(dQ/dV)max、および最小値(dQ/dV)minを求めた。なお、dQ/dVは、充電時には正の値を示し、放電時には負の値を示した。
dQ/dV=(Q(q+5)-Q(q))/(V(q+5)-V(q))・・・式(1)
上記手法で作製した塗工電極を120mm幅×100mm長の形状に切り出して正極シートとした。一方、負極活物質として黒鉛を用い、活物質を95質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5質量%混合し、正極と同様にスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10 μm厚の銅箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後塗布シートをロールプレスに通して高密度化させ、122mm幅×102mm長の形状に切り出して負極シートとした。得られた正極シートと負極シートを25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで対向させ、積層型電極体を作製した。この電極体をアルミラミネート型袋に封入し、非水電解液を含侵させた後に密閉してリチウム二次電池を作製した。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を30/40/30の体積比で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
上記リチウムイオン二次電池を用い、-30℃において電池容量の70%(SOC=70%)に調整した後に、種々の電流値で電流を流し、2秒後の電池電圧を測定した。流した電流と電圧を直線補間し、2秒後の電圧が3.0Vになる時の電流値を求め、その電流と電圧の積から出力パワーを求めた。
実験例1~4の充放電曲線を図2~5に、dQ/dV曲線を図6~9に示した。また、実験例1~10について、化学組成、格子定数、(dQ/dV)max、(dQ/dV)min、低温出力特性を表1に示した。なお、表1において、低温出力特性は、実験例1の出力パワーの値を1として規格化した出力パワーの値とした。
Claims (6)
- Li、Mn及びM(但し、MはNi)を含むスピネル型構造を有する複合酸化物であって、
基本組成式Li x M y Mn 2-y O z (但し、x,y,zは、0.9≦x≦1、0<y≦1、3.7≦z≦4.0を満たす。)で表され、
前記複合酸化物を備えた作用極とリチウム金属の対極とを備えた評価セルを用いた20℃の温度環境下0.1Cのレートでの充放電において、前記複合酸化物あたりの容量がq[mAhg-1]のときとq+5[mAhg-1]のときとの、容量Qの差分の電圧Vの差分に対する比を示す、下記式(1)から算出されるdQ/dV[Ahg-1V-1]の値が、充放電に用いる電位範囲の全範囲で-3<dQ/dV<3を満たす、
正極活物質。
dQ/dV=(Q(q+5)-Q(q))/(V(q+5)-V(q))・・・式(1) - 前記xは、0.95≦x≦0.99を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
- Li、Mn及びM(但し、MはCo及びNiのうちの1以上)を含むスピネル型構造を有する複合酸化物であって、
格子定数が8.20Å以上であり、
前記複合酸化物を備えた作用極とリチウム金属の対極とを備えた評価セルを用いた20℃の温度環境下0.1Cのレートでの充放電において、前記複合酸化物あたりの容量がq[mAhg -1 ]のときとq+5[mAhg -1 ]のときとの、容量Qの差分の電圧Vの差分に対する比を示す、下記式(1)から算出されるdQ/dV[Ahg -1 V -1 ]の値が、充放電に用いる電位範囲の全範囲で-3<dQ/dV<3を満たす、
正極活物質。
dQ/dV=(Q(q+5)-Q(q))/(V(q+5)-V(q))・・・式(1) - 表面にリン酸リチウムが被覆されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の正極活物質。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の正極活物質を含有する、正極。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の正極活物質を含有する正極と、
負極活物質を含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えた、リチウム二次電池。
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