JP7135433B2 - リチウムニッケル複合酸化物の製造方法 - Google Patents

リチウムニッケル複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法に関する。
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が要求されている。また、ハイブリット自動車をはじめとする電気自動車用の電池として、高出力の二次電池の開発も要求されている。このような要求を満たす非水系電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。
リチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、負極および正極の活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウム複合酸化物、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として期待され、実用化が進んでいる。リチウムコバルト複合酸化物を用いた電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発がこれまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物は、原料に高価なコバルト化合物を用いるため、このリチウムコバルト複合酸化物を用いる電池の容量あたりの単価は、ニッケル水素電池より大幅に高くなり、適用可能な用途はかなり限定されている。
このため、携帯機器用の小型二次電池や、電力貯蔵用や電気自動車用などの大型二次電池について、正極材料のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を可能とすることに対する期待は大きく、その実現は、工業的に大きな意義があるといえる。
リチウムイオン二次電池用活物質の新たなる材料としては、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物を挙げることができる。このリチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物よりも低い電気化学ポテンシャルを示すため、電解液の酸化による分解が問題になりにくく、より高容量が期待でき、コバルト系と同様に高い電池電圧を示すことから、開発が盛んに行われている。
しかし、リチウム以外の金属を純粋にニッケルのみで合成したリチウムニッケル複合酸化物を正極材料として用いたリチウムイオン二次電池は、コバルト系の正極材料を用いたリチウムイオン二次電池と比較してサイクル特性が劣り、また高温環境下での使用や保存により、比較的電池性能を損ないやすいという欠点を有している。このため、ニッケルの一部をコバルトやアルミニウムで置換したリチウムニッケル複合酸化物が一般的に知られている。
リチウムニッケル複合酸化物の製造方法については従来から各種提案がなされており、ニッケル複合水酸化物またはニッケル複合酸化物と、リチウム化合物との混合物を焼成後、水洗することでリチウムニッケル複合酸化物を製造する方法などが提案されている。
例えば特許文献1には、Ni塩とM塩の混合水溶液にアルカリ溶液を加えて、NiとMの水酸化物を共沈させ、得られた沈殿物を濾過、水洗、乾燥して、ニッケル複合水酸化物:Ni1-x(OH)を得る晶析工程と、
得られたニッケル複合水酸化物:Ni1-x(OH)とリチウム化合物とを、NiとMとの合計に対するLiのモル比:Li/(Ni+M)が1.00~1.15となるように混合し、さらに該混合物を、700℃以上1000℃以下の温度で焼成して、前記リチウムニッケル複合酸化物を得る焼成工程と、
得られたリチウムニッケル複合酸化物を水洗処理する水洗工程と、を有することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法が開示されている。
また、特許文献1には、前記晶析工程の後、前記焼成工程の前に、該晶析工程で得られたニッケル複合水酸化物:Ni1-x(OH)を、大気雰囲気中、800℃未満の温度で、1時間以上の焙焼を行って複合酸化物を得る酸化焙焼工程を有することも開示されている。
特開2012-119093号公報
ところで、製造したリチウムニッケル複合酸化物は、その粒子表面に余剰のリチウムや、リチウム化合物等のリチウム成分が析出している場合がある。そして、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面へのリチウム成分の析出量が過度に多い場合、該リチウムニッケル複合酸化物を正極材料に用いてリチウムイオン二次電池を製造すると、該リチウム成分が電解液と反応する恐れがある。近年では特に、リチウムイオン二次電池について、安定した性能を発揮することが求められることから、リチウムニッケル複合酸化物について、表面のリチウム成分の析出物の量を抑制することが求められている。
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、粒子表面へのリチウム成分の析出を抑制することができるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物とを含む原料混合物を焼成炉で焼成する焼成工程を有し、
前記焼成工程において、前記原料混合物を450℃以上650℃以下の温度域で焼成する際、450℃以上650℃以下の温度域で焼成する時間をTとした場合、0.5T以上の時間、酸素分圧が500hPa以上1013.25hPa以下の雰囲気となるように、
前記焼成炉内の水分率および酸素濃度に基づいて前記焼成炉内の酸素分圧を算出し、前記焼成炉の排気量および酸素供給量から選択された1以上を調整することで前記焼成炉内の酸素分圧を制御するリチウムニッケル複合酸化物の製造方法を提供する。
本発明の一態様によれば、粒子表面へのリチウム成分の析出を抑制することができるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法を提供することができる。
実施例1~実施例5における炉内の各ゾーンに対する酸素供給量の比の説明図。 実施例、および比較例における炉内の各ゾーンの酸素分圧の説明図。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[リチウムニッケル複合酸化物の製造方法]
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法の一構成例について説明する。
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物とを含む原料混合物を焼成する焼成工程を有することができる。そして、係る焼成工程において、上記原料混合物を450℃以上650℃以下の温度域で焼成する際、450℃以上650℃以下の温度域で焼成する時間をTとした場合、0.5T以上の時間、酸素分圧が500hPa以上1013.25hPa以下の雰囲気とすることができる。
本発明の発明者らは、粒子表面へのリチウム成分の析出を抑制することができるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法について鋭意検討を行った。その結果、水酸化リチウムとニッケル複合化合物とを含む原料混合物を焼成し、リチウムニッケル複合酸化物を生成する際の、所定の温度域における酸素分圧を制御することで、粒子表面へのリチウム成分の析出を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の発明者らの検討によれば、原料混合物を焼成してリチウムニッケル複合酸化物を生成する際、水酸化リチウムの融点である462℃よりも少し低い温度から、水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物との反応が進行する。また、650℃に至るまでに、水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物との反応はほぼ完了し、650℃よりも高い温度域では生成したリチウムニッケル複合酸化物の結晶成長が主に進行する。そして、水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物とが反応し、リチウムニッケル複合酸化物を生成する反応が主に進行する450℃以上650℃以下の温度域において、雰囲気中の酸素分圧を十分に高めることで、上記反応を特に促進できる。このため、450℃以上650℃以下の温度域で原料混合物を焼成する際の雰囲気中の酸素分圧を制御することで、余剰のリチウムの発生を抑制し、得られるリチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に、余剰のリチウムや、リチウム化合物等のリチウム成分が析出することを抑制できることを見出した。
そこで、さらに検討を進めた結果、既述の焼成工程において、原料混合物を450℃以上650℃以下の温度域で焼成する際、酸素分圧が500hPa以上の雰囲気とすることが好ましく、酸素分圧が600hPa以上の雰囲気とすることがより好ましい。これは、450℃以上650℃以下の温度域において、酸素分圧を500hPa以上の雰囲気とすることで、既述のように水酸化リチウムとニッケル複合化合物との反応を特に促進することができ、余剰リチウムの析出を抑制できるからである。
焼成工程において原料混合物を450℃以上650℃以下の温度域で焼成する際の雰囲気の酸素分圧の上限値は特に限定されるものではないが、大気圧以下、すなわち1013.25hPa以下とすることができる。これは、酸素分圧を大気圧よりも高くしようとすると、耐圧仕様の焼成炉を用いる必要があり、また多くの酸素を供給する必要がありコストが高くなるためである。
焼成工程において、原料混合物を450℃以上650℃以下の温度域で焼成する際、酸素分圧が500hPa以上の雰囲気とする場合において、450℃以上650℃以下の温度で焼成する時間(焼成時間)T全てにおいて、雰囲気中の酸素分圧が500hPa以上であることが好ましい。
ただし、上記焼成時間Tのうち極短時間、酸素分圧が上記下限値、すなわち500hPaを切っても大きな影響はない。このため、450℃以上650℃以下の温度域で原料混合物を焼成する時間をTとした場合、450℃以上650℃以下の温度域で、かつ酸素分圧が上記所定の値以上、例えば500hPa以上の雰囲気中に原料混合物を配置する時間は、合計で例えば0.5T以上であることが好ましく、0.75T以上であることがより好ましく、0.9T以上であることがさらに好ましい。焼成工程において、450℃以上650℃以下の温度域で、かつ酸素分圧が上記所定の値以上、例えば500hPa以上の雰囲気中に原料混合物を配置する時間の上限は特に限定されるものではなく、例えば1T以下とすることができる。
なお、焼成工程においては、原料混合物を焼成することで水蒸気が発生していることから、雰囲気中の酸素以外の成分としては、例えば原料混合物由来の水蒸気や、大気由来の窒素等が挙げられる。そして、炉内の雰囲気は主に酸素と、水蒸気とにより構成されるため、焼成工程における雰囲気の酸素分圧は、雰囲気中の酸素と水蒸気(水)とのうちの酸素分圧とすることもできる。
焼成工程において、450℃未満、もしくは650℃よりも高温の温度域で焼成する際の雰囲気は特に限定されるものではなく、上述の450℃以上650℃以下の温度域の場合と同様の雰囲気とすることもできる。ただし、本発明の発明者らの検討によれば、450℃未満、もしくは650℃よりも高い温度では、焼成時の雰囲気中の酸素分圧は、得られるリチウムニッケル複合酸化物の粒子表面へのリチウム成分の析出に関して大きな影響を与えるものではない。このため、例えば450℃未満、もしくは650℃よりも高温の温度域については、酸素分圧を450℃以上650℃以下の温度域の場合よりも低く、例えば500hPa未満とすることもできる。
そこで、原料混合物を焼成する炉内において、450℃以上650℃以下となる領域を第1領域とし、450℃未満、もしくは650℃よりも高くなる領域を第2領域とした場合に、第1領域に対する酸素の供給量が、第2領域に対する酸素の供給量よりも多いことが好ましい。
第1領域においては、ここまで説明したように雰囲気中の酸素分圧が所定の範囲にあることが好ましいことから、第1領域に対する酸素の供給量は、該領域の酸素分圧が所望の範囲に入るように制御することが好ましい。一方、温度域が450℃未満、もしくは650℃よりも高温の第2領域においては、酸素分圧は特に限定されない。このため、第1領域に対する酸素の供給量よりも、第2領域に対する酸素の供給量が少なくなるようにすることが、焼成工程における酸素の使用量を抑制する観点から好ましい。このように温度域が450℃未満、もしくは650℃よりも高温となる第2領域に対する酸素の供給量を、第1領域に対する酸素の供給量よりも少なくすることで、上述のように例えば第2領域の一部、または全体について酸素分圧を第1領域の酸素分圧よりも低くすることもできる。
ただし、第2領域のうち650℃よりも高温の領域では、例えば製造するリチウムニッケル複合酸化物についてより高い性能を得るため、結晶成長を促進し、リチウムの欠損の発生を特に抑制できるように酸素供給量、酸素分圧を調整することが好ましい。具体的には650℃よりも高温の領域では、例えば酸素分圧は500hPa以上とすることが好ましい。従って、650℃よりも高温の温度域に対しては、酸素分圧が500hPa以上となるように酸素供給量を調整することが好ましい。特に、例えば650℃よりも高く800℃以下の温度域において、酸素分圧を500hPa以上とすることがより好ましい。なお、650℃よりも高温の領域の酸素分圧を500hPa以上とする場合においても係る温度域での酸素分圧は大気圧以下、すなわち1013.25hPa以下とすることが好ましい。
焼成工程において用いる焼成炉の種類は特に限定されるものではなく、各種焼成炉を用いることができる。例えばバッチ炉を用いて焼成工程を実施する場合には、炉内の原料混合物を配置した領域の温度域が450℃以上650℃以下にある際に、該原料混合物を配置した領域の雰囲気について、酸素分圧が既述の範囲となるように酸素を供給することが好ましい。
なお、バッチ炉のように、原料混合物を炉内に配置してから昇温する場合、昇温し、原料混合物を配置した領域が450℃以上650℃以下になった場合、係る領域を第1領域、もしくは第1の温度領域と呼ぶことができる。また、十分に昇温しておらず、原料混合物を配置した領域が450℃未満、もしくはさらに昇温して650℃よりも高温になった場合、原料混合物を配置した領域が第2領域、また第2の温度領域ともいえる。このため、バッチ炉を用いた場合でも、上述のように第1領域に対する酸素の供給量が、第2領域に対する酸素の供給量よりも多くなるように制御することが好ましい。
また、工業的には連続的に製造する必要があることから、連続炉を用いることが一般的である。具体的には例えばローラーハースキルン等を用いることができる。このように連続炉を用いて焼成工程を実施する場合には、原料混合物の搬送経路上で、450℃以上650℃以下の温度域にある領域(第1領域)に対して、酸素分圧が既述の範囲となるように酸素を供給することができる。
この場合は、原料混合物の搬送経路上で、450℃以上650℃以下となる領域を第1領域、450℃未満、もしくは650℃よりも高温の領域を第2領域とすることができる。そして、既述のように、第1領域に対する酸素の供給量が、第2領域に対する酸素の供給量よりも多いことが好ましい。
焼成炉に原料混合物を供給、配置する際の条件は特に限定されるものではない。ただし、例えば坩堝や匣鉢などの容器内に原料混合物を入れる等し、原料混合物を一定の厚みに堆積してから焼成炉に供給する場合、供給する原料混合物の厚みが過度に厚くならないように調整することが好ましい。これは、焼成炉に供給する際の原料混合物の厚みが過度に厚くならないように調整することで、原料混合物の厚さ方向の温度を特に均一にすることができ、反応を均一に進行させることができるからである。例えば、焼成炉に供給する際、堆積した原料混合物の厚さは150mm以下とすることが好ましく、120mm以下とすることがより好ましい。なお、焼成炉に供給する際、堆積した原料混合物の厚さの下限値は特に限定されないが、生産性等の観点から20mm以上とすることが好ましい。
以上に本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法の焼成工程について説明したが、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、上述の焼成工程以外にも任意の工程を有することができる。以下に任意の工程について説明する。
本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、例えば原料となるニッケル複合化合物を製造する、ニッケル複合化合物生成工程をさらに有することもできる。
ニッケル複合化合物生成工程の具体的な手順は、用いるニッケル複合化合物にあわせて選択することができ、特に限定されるものではない。
ニッケル複合化合物として、例えばニッケル複合水酸化物、およびニッケル複合酸化物から選択された1種類以上を用いることができる。このため、ニッケル複合化合物生成工程は、例えばニッケル複合水酸化物を生成するニッケル複合水酸化物生成ステップを有することができる。また、ニッケル複合化合物生成工程は、例えばニッケル複合水酸化物生成ステップと、ニッケル複合水酸化物を焙焼し、ニッケル複合酸化物とする焙焼ステップとを有することもできる。
ニッケル複合水酸化物生成ステップにおける具体的な条件は特に限定されるものではなく、目的とする組成等に応じて任意に選択できる。ただし、組成が均一であり、適度な粒径である粒子が得られるため、ニッケル複合水酸化物生成ステップでは、共沈法によりニッケル複合水酸化物を生成するステップであることが好ましい。
なお例えば、ニッケル複合水酸化物生成ステップでは、Ni(1-y-z)(OH)2+α(式中、Mは、CoおよびMnから選択される少なくとも1種、Nは、AlおよびTiから選択される少なくとも1種であり、0.005≦y≦0.35、0.005≦z≦0.8、-0.2≦α≦0.2である。)で表されるニッケル複合水酸化物を生成することができる。
上記式中、yは0.01≦y≦0.20を満たすことがより好ましく、0.03≦y≦0.19を満たすことがさらに好ましい。
また、上記式中、zは0.01≦z≦0.1を満たすことがより好ましく、0.02≦z≦0.06を満たすことがさらに好ましい。
また、Niの割合を示す(1-y-z)は、0.80≦1-y-z≦0.95を満たすことが好ましい。
焙焼ステップを実施する場合、その条件についても特に限定されないが、例えば、ニッケル複合水酸化物生成ステップで得られたニッケル複合水酸化物を水洗、乾燥後、得られた生成物を酸素含有雰囲気中で焙焼するステップとすることができる。焙焼ステップにおける焙焼温度は特に限定されないが、例えば105℃以上800℃以下であることが好ましく、500℃以上700℃以下であることがより好ましい。また、酸素含有雰囲気についても特に限定されないが、例えば大気(空気)雰囲気、もしくは空気気流を用いることができる。
焙焼ステップを実施することで、ニッケル複合水酸化物からニッケル複合酸化物を得ることができる。焙焼に用いる設備は、特に限定されるものではなく、ニッケル複合水酸化物を酸素含有ガス雰囲気中で加熱できるものであればよく、ガス発生がない電気炉などが好適に用いられる。
また、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、さらに、水酸化リチウムと、既述のニッケル複合化合物とを混合し、原料混合物を調製する混合工程を有することもできる。
混合工程で、水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物との混合割合は特に限定されるものではなく、目的とするリチウムニッケル複合酸化物の組成に応じて選択することができる。なお、焼成工程での焼成前後で組成はほとんど変化しないため、得ようとするリチウムニッケル複合酸化物の組成から、ニッケル複合化合物と混合する水酸化リチウムの量を容易に決定することができる。
混合方法としては、通常用いられる方法でよく、一般的な混合機を使用することができ、シェーカーミキサー、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができ、ニッケル複合化合物の形骸が破壊されない程度に、十分に混合されればよい。
混合工程で得られた原料混合物は、既述の焼成工程に供することができる。
また、焼成工程の後、水洗工程を実施することもできる。
すなわち、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、例えば得られたリチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に付着した余剰のリチウムや、リチウム化合物等のリチウム成分をさらに低減、除去するため、水洗工程を実施することもできる。
水洗工程では、例えば焼成工程で得られたリチウムニッケル複合酸化物を純水に投入してスラリーとし、所定時間撹拌した後、水と分離、濾過、乾燥することができる。
ここまで、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法について説明したが、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により製造するリチウムニッケル複合酸化物の組成については特に限定されるものではなく、任意の組成とすることができる。
ただし、一般式:LiNi(1-y-z)2+β(式中、Mは、CoおよびMnから選択される少なくとも1種、Nは、AlおよびTiから選択される少なくとも1種であり、0.95≦x≦1.15、0.005≦y≦0.35、0.005≦z≦0.8、-0.2≦β≦0.2である。)で表されるリチウムニッケル複合酸化物であることが好ましい。
上記式中、yは0.01≦y≦0.20を満たすことがより好ましく、0.03≦y≦0.19を満たすことがさらに好ましい。
また、上記式中、zは0.01≦z≦0.1を満たすことがより好ましく、0.02≦z≦0.06を満たすことがさらに好ましい。
Niの割合を示す(1-y-z)は、0.80≦1-y-z≦0.95を満たすことが好ましい。
リチウムニッケル複合酸化物としては、各種組成の複合酸化物が提案されているが、上記一般式で表されるリチウムニッケル複合酸化物は、電池特性に優れている点で好ましく、さらに、本実施形態に係るリチウムニッケル複合酸化物の製造方法を適用することにより、工業的規模での量産工程においても、優れた充放電特性を安定して備える正極活物質を得ることが可能となる。
ここで、一般式のM元素は、Coおよび/またはMnであり、yを上記範囲とすることで、リチウム二次電池の正極材料に用いられた際の電池容量の低下を抑制しながらサイクル特性を向上させることができる。
また、一般式のN元素は、Alおよび/またはTiであり、zを上記範囲とすることで、リチウム二次電池の正極材料に用いられた際の電池容量の低下を抑制しながら熱安定性を向上させることができる。
以上に本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法について説明したが、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法においては、所定の温度域において十分な酸素分圧を有する雰囲気下で原料混合物の焼成を行っている。このため、原料混合物をに含まれる水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物との反応を十分に促進し、得られるリチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に余剰のリチウムや、リチウム化合物等のリチウム成分が析出することを抑制できる。
[非水系電解質二次電池]
既述のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により得られるリチウムニッケル複合酸化物は、既述のように、非水系電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池の正極材料として好適に用いることができる。そこで、非水系電解質二次電池の一構成例について説明する。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、既述のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により得られたリチウムニッケル複合酸化物を正極材料として用いた正極を有することができる。
まず、本実施形態の非水系電解質二次電池の構造の構成例を説明する。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、正極材料に既述のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により得られたリチウムニッケル複合酸化物を用いたこと以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質的に同様の構造を備えることができる。
具体的には、本実施形態の非水系電解質二次電池は、例えばケースと、このケース内に収容された正極、負極、非水系電解液およびセパレータを備えた構造を有することができる。
より具体的にいえば、セパレータを介して正極と負極とを積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させることができる。そして、正極の正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および負極の負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、それぞれ集電用リードなどを用いて接続し、ケースに密閉した構造を有することができる。
なお、本実施形態の非水系電解質二次電池の構造は、上記例に限定されないのはいうまでもなく、またその外形も筒形や積層形など、種々の形状を採用することができる。
各部材の構成例について以下に説明する。
(正極)
まず正極について説明する。
正極は、シート状の部材であり、例えば、既述のリチウムニッケル複合酸化物を正極材料、すなわち正極活物質として含有する正極合材ペーストを、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布乾燥して形成できる。なお、正極は、使用する電池にあわせて適宜処理される。例えば、目的とする電池に応じて適当な大きさに形成する裁断処理や、電極密度を高めるためにロールプレスなどによる加圧圧縮処理等を行うこともできる。
上述の正極合材ペーストは、正極合材に、溶剤を添加、混練して形成することができる。そして、正極合材は、粉末状になっている正極活物質と、導電材と、結着剤とを混合して形成できる。
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。導電材の材料は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛などの黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、正極活物質をつなぎ止める役割を果たすものである。係る正極合材に使用される結着剤は特に限定されないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸等から選択された1種類以上を用いることができる。
なお、正極合材には活性炭などを添加することもできる。正極合材に活性炭などを添加することによって、正極の電気二重層容量を増加させることができる。
溶剤は、結着剤を溶解して正極活物質、導電材、および活性炭等を結着剤中に分散させる働きを有する。溶剤は特に限定されないが、例えばN-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
また、正極合材ペースト中における各物質の混合比は特に限定されるものではなく、例えば一般の非水系電解質二次電池の正極の場合と同様にすることができる。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下とすることができる。
(負極)
負極は、銅などの金属箔集電体の表面に、負極合材ペーストを塗布し、乾燥して形成されたシート状の部材である。
負極は、負極合材ペーストを構成する成分やその配合、集電体の素材等は異なるものの、実質的に上述の正極と同様の方法によって形成され、正極と同様に必要に応じて各種処理が行われる。
負極合材ペーストは、負極活物質と結着剤とを混合した負極合材に、適当な溶剤を加えてペースト状にすることができる。
負極活物質としては例えば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質や、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
吸蔵物質は特に限定されないが、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体等から選択された1種類以上を用いることができる。
係る吸蔵物質を負極活物質に採用した場合には、正極同様に、結着剤として、PVDF等の含フッ素樹脂を用いることができ、負極活物質を結着剤中に分散させる溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解液を保持する機能を有している。
セパレータの材料としては、例えばポリエチレンや、ポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されない。
(非水系電解液)
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート;また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート;さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物;エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物;リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
なお、非水系電解液は、電池特性改善のため、ラジカル捕捉剤、界面活性剤、難燃剤などを含んでいてもよい。
ここでは液体の非水系電解質を用いた例を用いて説明したが、本実施形態の非水系電解質二次電池は係る形態に限定されるものではなく、例えば固体の非水系電解質を用いた二次電池、すなわち全固体電池とすることもできる。全固体電池とする場合、正極活物質に既述のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により得られたリチウムニッケル複合酸化物を用いる点以外は必要に応じて変更することができる。
本実施形態の非水系電解質二次電池は、既述のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により得られたリチウムニッケル複合酸化物を正極材料として用いた正極を備えている。このため、電池特性や、安定性が優れた非水系電解質二次電池とすることができる。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順により、リチウムニッケル複合酸化物を製造した。
まず、ニッケル複合化合物として用いたニッケル複合酸化物を以下のニッケル複合水酸化物生成ステップと、焙焼ステップとを有するニッケル複合化合物生成工程を実施することで生成した。
ニッケル複合水酸化物としてNi0.88Co0.09Al0.03(OH)を共沈法により生成した(ニッケル複合水酸化物生成ステップ)。
ニッケル複合水酸化物生成ステップで生成したニッケル複合水酸化物粒子を水洗、乾燥後、大気雰囲気下(酸素:21容量%)、700℃で酸化焙焼を行った(焙焼ステップ)。
焙焼ステップにおいて、ニッケル複合水酸化物を焙焼することで、ニッケル複合水酸化物に含まれていた水分を除去し、Ni0.88Co0.09Al0.03Oで表されるニッケル複合酸化物に転換して回収した。
次に、以下の混合工程を実施し、焼成工程に供する原料混合物を調製した(混合工程)。
混合工程では、リチウム化合物と、ニッケル複合酸化物粒子とを、混合物中の原子数の比がLi/Meが1.030となるように秤量、混合して原料混合物を調製した。なお、ここでのMeはLi以外の金属の合計の原子数を意味しており、Ni、Co、Alの合計となる。
なお、リチウム化合物としては、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)を真空乾燥による無水化処理に供し、得られた無水水酸化リチウムを用いた。
そして、混合工程で得られた原料混合物を内寸が280mm(L)×280mm(W)×90mm(H)の焼成容器に、原料混合物の厚さが90mmとなるように装入し、これを連続式の焼成炉であるローラーハースキルンを用いて、焼成した(焼成工程)。
ローラーハースキルンは、焼成容器の搬送方向上流側から、下流側に向かって徐々に温度が高くなるように設定されており、24のゾーンに分割されている。そして、焼成容器の搬送方向の最上流側からゾーンごとに1ゾーン、2ゾーン・・・24ゾーンとした場合、1ゾーンから21ゾーンで加熱が行われ、7ゾーンから11ゾーンの間が450℃以上650℃以下に加熱、焼成される領域に当たる。なお、以下、用いたローラーハースキルンの7ゾーンから11ゾーンを第1領域、1ゾーン~6ゾーン、12ゾーン~21ゾーンを第2領域とも呼ぶ。
本実施例では、第1領域に対して、第2領域よりも酸素を多く供給し、かつ炉の入り口側、すなわち1ゾーンから5ゾーンまでで排気を行い、第1領域の酸素分圧を800hPa以上920hPa以下とした。なお、第2領域についても第1領域よりは少ないが酸素を供給しており、1ゾーンに供給した酸素量を1とした場合の各ゾーンに対する酸素供給量の比(酸素供給比)をプロットし、線分で結んだ図を図1に示す。なお、図1では1ゾーンから13ゾーンまでについてのみ示しているが、14ゾーンから24ゾーンについても図1に示した1ゾーン等よりも少ないものの一定の酸素を供給した。
各ゾーンの雰囲気は主に、原料混合物を焼成した際に生じる水分、及び各ゾーンに供給された酸素から構成されている。このため、各ゾーンの酸素分圧の算出に当たってはまず、JIS Z 8852:2013排ガス中のダスト濃度の測定方法に記載の「排ガス中の水分量の測定」により炉内の各ゾーンの水分率を、ジルコニア式の酸素濃度計で酸素濃度をそれぞれ測定した。そして、測定した水分率、及び酸素濃度から各ゾーンの酸素分圧を算出した。1ゾーン~12ゾーンの酸素分圧を図2に示す。
以上の焼成工程終了後、以下の水洗工程を実施する前に、得られたリチウムニッケル複合酸化物について、比表面積、及び表面に析出した余剰のリチウムや、リチウム化合物等のリチウム成分の、リチウムニッケル複合酸化物に占める質量割合である余剰リチウムの評価を行った。
なお、比表面積は全自動比表面積測定装置(マウンテック社製 型式:Macsorb HM model-1220により評価を行った。
また、リチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に析出した余剰のリチウムや、リチウム化合物等のリチウム成分の量は、リチウムニッケル複合酸化物を水に添加した際に、水に溶出してくるリチウムを滴定することにより評価した。具体的には、得られたリチウムニッケル複合酸化物に純水を加えて撹拌後、ろ過したろ液のpHを測定しながら塩酸を加えていくことにより出現する中和点から溶出するリチウムの化合物状態を評価して算出した。
なお、上述の滴定は第2中和点まで測定した。第2中和点までに塩酸で中和されたアルカリ分を、水酸化リチウム(LiOH)および炭酸リチウム(LiCO)に由来するリチウム量(Li)として、第2中和点までに滴下した塩酸の量、及び塩酸の濃度から、ろ液内のリチウム量を算出した。
そして、ろ液を調製する際に用いたリチウムニッケル複合酸化物の試料の量で、算出したろ液内のリチウム量を割り、単位を質量%に換算して余剰リチウムを求めた。
結果を表1に示す。
得られたリチウムニッケル複合酸化物を、質量比で水1に対し0.75となるように、純水に投入してスラリーとし、30分間の撹拌後、濾過、乾燥することで水洗してリチウムニッケル複合酸化物を得た。水洗後に得られたリチウムニッケル複合酸化物についても、再度表面に析出した余剰のリチウムや、リチウム化合物等のリチウム成分の質量割合である余剰リチウムについて評価を行った。結果を表1に示す。
なお、水洗後にLi0.99Ni0.88Co0.09Al0.03で表されるリチウムニッケル複合酸化物が得られた。
[実施例2、3]
焼成工程において、排気量を調整することで、第1領域の酸素分圧が、実施例2は750hPa以上850hPa以下、実施例3は650hPa以上700hPa以下とした点以外は、実施例1と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物を製造し、評価を行った。
1ゾーン~12ゾーンの酸素分圧を図2に、評価結果を表1に示す。
なお、実施例2、3においても、水洗後にLi0.99Ni0.88Co0.09Al0.03で表されるリチウムニッケル複合酸化物が得られた。
[実施例4]
以下の点以外は実施例1と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物を製造し、評価を行った。
ニッケル複合水酸化物としてNi0.82Co0.15Al0.03(OH)を共沈法により生成し(ニッケル複合水酸化物生成ステップ)、該ニッケル複合水酸化物を焙焼ステップに供した点。
焼成工程において、排気量を調整することで、第1領域の酸素分圧を480hPa以上790hPa以下とした点。
なお、上記ニッケル複合水酸化物を用いたことで、焙焼ステップ後にはNi0.82Co0.15Al0.03Oで表されるニッケル複合酸化物が得られた。また、混合ステップでは、実施例1と同様に、Li/Meが1.030となるように、リチウム化合物である無水水酸化リチウムと、ニッケル複合酸化物粒子とを秤量、混合した。
1ゾーン~12ゾーンの酸素分圧を図2に、評価結果を表1に示す。
なお、実施例4では第1領域の酸素分圧は、480hPa以上790hPa以下となっており、500hPa以上となっているのは450℃以上650℃以下の温度域で焼成している時間をTとした場合、0.75Tであった。また、600hPa以上となっているのは450℃以上650℃以下の温度域で焼成している時間をTとした場合、0.45Tであった。
また、水洗後にLi0.99Ni0.82Co0.15Al0.03で表されるリチウムニッケル複合酸化物が得られた。
[実施例5]
以下の点以外は実施例と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物を製造し、評価を行った。
ニッケル複合水酸化物としてNi0.91Co0.045Al0.045(OH)を共沈法により生成し(ニッケル複合水酸化物生成ステップ)、該ニッケル複合水酸化物を焙焼ステップに供した点。
焼成工程において、排気量を調整することで、第1領域の酸素分圧が800hPa以上880hPa以下とした点。
なお、上記ニッケル複合水酸化物を用いたことで、焙焼ステップ後にはNi0.91Co0.045Al0.045Oで表されるニッケル複合酸化物が得られた。また、混合ステップでは、実施例1と同様に、Li/Meが1.030となるように、リチウム化合物である無水水酸化リチウムと、ニッケル複合酸化物粒子とを秤量、混合した。
1ゾーン~12ゾーンの酸素分圧を図2に、評価結果を表1に示す。
なお、水洗後にLi0.98Ni0.91Co0.045Al0.045で表されるリチウムニッケル複合酸化物が得られた。
[比較例1]
焼成工程において、第1領域、第2領域共に同じ酸素量を供給し、全ゾーンから均一に排気を行った点以外は、実施例1と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物を製造し、評価を行った。
なお、比較例1では第1領域の酸素分圧は、450hPa以上630hPa以下となった。なお、500hPa以上となっているのは450℃以上650℃以下の温度域で焼成している焼成時間Tの半分未満であった。
1ゾーン~12ゾーンの酸素分圧を図2に、評価結果を表1に示す。
Figure 0007135433000001
表1に示した結果によると、水洗工程の前、後に関わらず、原料混合物を450℃以上650℃以下の温度域で焼成する際、450℃以上650℃以下の温度域で焼成する時間をTとした場合、0.5T以上の時間、酸素分圧が500hPa以上1013.25hPa以下の雰囲気とすることで、得られるリチウムニッケル複合酸化物の粒子の表面に析出するリチウム成分を抑制できることが確認できた。
また、実施例1~実施例5では水洗工程前のリチウムニッケル複合酸化物の比表面積が、比較例1よりも小さいことが確認できた。従って、係る結果からもリチウムニッケル複合酸化物の粒子表面へのリチウム成分の付着を、比較例1よりも抑制できていることが確認できた。

Claims (4)

  1. 水酸化リチウムと、ニッケル複合化合物とを含む原料混合物を焼成炉で焼成する焼成工程を有し、
    前記焼成工程において、前記原料混合物を450℃以上650℃以下の温度域で焼成する際、450℃以上650℃以下の温度域で焼成する時間をTとした場合、0.5T以上の時間、酸素分圧が500hPa以上1013.25hPa以下の雰囲気となるように、
    前記焼成炉内の水分率および酸素濃度に基づいて前記焼成炉内の酸素分圧を算出し、前記焼成炉の排気量および酸素供給量から選択された1以上を調整することで前記焼成炉内の酸素分圧を制御するリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
  2. 前記原料混合物を焼成する前記焼成炉内において、
    450℃以上650℃以下となる領域を第1領域とし、
    450℃未満、もしくは650℃よりも高くなる領域を第2領域とした場合に、
    前記第1領域に対する酸素の供給量が、前記第2領域に対する酸素の供給量よりも多い、請求項1に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
  3. 前記第1領域の酸素分圧が500hPa以上920hPa以下である請求項2に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
  4. 前記第1領域に対して、前記第2領域よりも酸素を多く供給し、かつ前記焼成炉の入り口側で排気を行う請求項2または請求項3に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
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