JP2018129286A - 活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法 - Google Patents

活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法 Download PDF

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健 宇山
和彦 向
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和彦 向
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尊夫 井上
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Abstract

【課題】作動電圧が高く充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくい活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法を提供する。【解決手段】この活物質は、リチウム二次電池に用いられるものであって、基本組成式LiCoxMn2-xO4(0.25≦x≦1)で示され、六角形の{111}面が8面、四角形の{100}面が6面で構成される切頂八面体の粒子形態であり、FeKα線を用い2θ=15〜150°、0.014°/stepの条件で測定したX線回折パターンにおいて、111回折線の半値幅が0.12°以下であるものである。【選択図】図1

Description

本明細書で開示する発明である本開示は活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法に関する。
従来、リチウム二次電池の正極活物質としては、Li2CoMn38で示され800℃で3日間焼成されることにより固相法で作製されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この活物質では、高電位で作動し、高エネルギー密度化を図ることができるとしている。また、正極活物質としては、LiNi0.5Mn1.54で示され、硝酸塩水溶液を乾燥し700℃で焼成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この活物質では、高電位での充放電特性が優れた正極材を提供することができるとしている。また、正極活物質としては、(Li0.91Mn0.09)Mn24で示され酸素ガスの気流中で8000〜20000℃のプラズマ内で気化されて作製され平均粒子径が400nm以下であるものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この活物質では、新規な製造方法を提供することができるとしている。
特開2000−67860号公報 特開2001−185148号公報 特開2016−162672号公報
上述のように、リチウム二次電池の正極活物質は、高い作動電圧と高いサイクル特性が求められている。しかしながら、上述の特許文献1、2の活物質では、良好な粒子形態や結晶性をとるには不十分であった。また、特許文献3の活物質では、LiサイトにMnが置換されており、容量が低下する問題があった。このように、作動電圧が高く充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくい活物質が求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、作動電圧が高く充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくい活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、スピネル型結晶構造の金属サイトにCoを置換し、切頂八面体の結晶構造を有するものとしたところ、作動電圧が高く充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくい活物質を提供することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する活物質は、
リチウム二次電池に用いられる活物質であって、
基本組成式LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)で示され、六角形の{111}面が8面、四角形の{100}面が6面で構成される切頂八面体の粒子形態であり、FeKα線を用い2θ=15〜150°、0.014°/stepの条件で測定したX線回折パターンにおいて、111回折線の半値幅が0.12°以下であるものである。
また、本明細書で開示するリチウム二次電池は、
上述した活物質を含む正極と、
リチウムを吸蔵放出する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
また、本明細書で開示する活物質の製造方法は、
リチウム二次電池に用いられる活物質の製造方法であって、
基本組成式LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)となる原料を850℃以上の温度で焼成する1段階目焼成処理と、前記第1段階目焼成後に850℃よりも低い温度で(n−1)回(nは2以上)焼成するn段階目焼成処理とを行う焼成工程、
を含むものである。
本開示では、作動電圧が高く充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくい活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。活物質の高電位化にはスピネル型結晶構造の金属サイトにCoを置換することが有効であり、LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)の組成領域においてCoが酸化還元反応に寄与するため、作動電圧を高めることができる。また、サイクル特性の向上には、粒子形態及び結晶性の制御することによって高電位領域で発生する電解液との副反応を抑制することが肝要である。この活物質では、切頂八面体形態でその結晶性も高いため、高電位領域で発生する電解液との副反応を抑えることができると推察される。更に、充放電サイクル特性の向上には、上記に加え、活物質の充放電による格子体積変化が小さいことが望ましい。これは、繰り返しサイクルによる結晶構造の崩壊や、電極中の活物質と導電材などとの間の剥離を防止することができるためである。
活物質粒子1の一例を示す説明図。 全固体型のリチウム二次電池10の構造の一例を示す説明図。 リチウム二次電池20の構成の一例を示す模式図。 実験例1の充放電曲線。 実験例1〜6の活物質のX線回折パターン。 実験例1,5,6のSEM画像。 実験例7〜9の各活物質の単極での充放電曲線。 実験例7、9のリチウムイオン二次電池の充放電曲線。 実験例7〜9のリチウムイオン二次電池の0℃でのサイクル性能。 実験例7〜9のリチウムイオン二次電池の60℃でのサイクル性能。 実験例1〜5のDSC測定結果。 Co量XとDSCピーク温度及びエンタルピーとの関係図。 DSC測定後の実験例1〜5の活物質のX線回折パターン。
(活物質)
本開示の活物質は、リチウムを吸蔵放出し、リチウム二次電池に用いられるものであり、正極活物質としてもよい。この活物質は、基本組成式LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)で示されるものである。この基本組成式において、xは、例えば、0.5以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.9以上であることが更に好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。xが1.0に近いほど、充放電による体積変化率をより小さくすることができ、サイクル特性をより高めることができる。また、自己発熱の熱量をより低減するなど、熱的安定性をより高めることができる。一方、xが0.5や0.25などでは、放電容量をより高めることができる。また、Coを置換すると、活物質の結晶粒子を、正八面体の6つの頂点が切り子面となった形状である切頂八面体の粒子形態とすることができる。
この活物質は、六角形の{111}面が8面、四角形の{100}面が6面で構成される切頂八面体の粒子形態を有する。図1は、活物質粒子1の一例を示す説明図である。この活物質粒子1は、切頂八面体の粒子であり、六角形面2を8面と、四角形面3を6面有している。この活物質は、粒子形態において{111}面、{100}面が発達しファセット(結晶体の小面)が表れている状態では、例えば、電解液を用いたリチウム二次電池において、活物質へのLiイオンの挿入脱離能を損なわず、電解液との接触界面を最小限に抑えることによって、高電位領域で起こる電解液との副反応を抑制し反応抵抗の上昇を防ぐことができる。このため電極特性の低下を防ぐことができると考えられる。この活物質粒子1は、走査型電子顕微鏡による観察から得られる粒子形態において、六角形面2と四角形面3とが稜共有する辺の長さをLa、六角形面2と六角形面2とが稜共有する辺の長さをLbとしたとき、La/Lbが0.6以上2以下であることが好ましい。この範囲では、粒子形態が良好であり、例えば、電解液を有するリチウム二次電池に用いられたときに、高電位領域で発生する電解液との副反応などを抑えることができる。この稜辺比La/Lbは走査型電子顕微鏡により観察した粒子100個の稜辺を計測した平均値とする。また、活物質の切頂八面体構造において、粒子形態パラメータαは、1.8以上2.2以下であることが好ましい。この粒子形態パラメータαがこの範囲では、充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくい。
この活物質は、粒子径が1μm以上10μm以下の範囲にあることが好ましい。粒子径が1μm以上では、表面積の増加をより抑制することができ、例えば電解液を用いたリチウム二次電池において電解液との副反応の発生などをより抑制することができる。また、粒子径が10μm以下では、活物質へのLiイオンの挿入脱離能の低下をより抑制でき好ましい。この粒子径は、2μm以上5μm以下の範囲にあることがより好ましい。粒子径は、走査型電子顕微鏡により観察した値とする。また、この活物質は、粒子径が2μm以上の粒子において、切頂八面体の粒子数が全体の50%以上を占めていることが好ましい。この活物質において、一部に切頂八面体の形状でない粒子を含んでいてもよい。なお、この活物質は、すべての粒子が切頂八面体の形状を有していることが最も好ましい。
この活物質は、FeKα線を用い2θ=15〜150°、0.014°/stepの条件で測定したX線回折パターンにおいて、111回折線の半値幅が0.12°以下であるものである。この半値幅の範囲では、活物質の結晶性が高く、良好である。この半値幅は、例えば、0.115°以下であることが好ましく、0.112°以下であることがより好ましい。また、この半値幅は、0.092°以上であるものとしてもよいし、0.100°以上であるものとしてもよい。
この活物質は、FeKα線を用い2θ=15〜150°、0.014°/stepの条件で測定したX線回折パターンにおいて、充電前の格子定数をad(Å)、Li基準電位で5.4Vまで充電した後の格子定数をac(Å)としたときの体積変化率(%)が数式(1)を満たすことが好ましい。この体積変化率が6.0%以下の範囲では、活物質粒子が充放電した際の体積変化がより小さく、好ましい。この体積変化率は、より小さい方が好ましく、4.5%以下がより好ましく、3.0%以下が更に好ましく、2.0%以下が特に好ましい。充放電による活物質の体積変化率がより小さければ、電極の体積変化も小さく、導電材との剥離などをより抑制でき、充放電のサイクル特性をより高めることができる。
(活物質の製造方法)
本開示の活物質の製造方法は、基本組成式LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)となる原料を850℃以上の温度で焼成する1段階目焼成処理と、第1段階目焼成後に850℃よりも低い温度で(n−1)回(nは2以上)焼成するn段階目焼成処理とを行う焼成工程を含む。この焼成工程では、1段階目焼成処理により結晶粒子の成長を促すことができ、2段階目以降の焼成処理により結晶粒子の組成を1段階目の比較的高温の焼成では結晶粒子の成長を促進させ粒子形態を{111}面と{100}面が発達した切頂八面体を形成させることができる。更に、次の2段階目以降のより低い温度での焼成では、1段階目の焼成で副生成した結晶などを、切頂八面体形状を有する主結晶に取り込ませることができ、目的の組成により近づけることができる。
この工程で用いる原料は、例えば、Li,Co,Mnの水酸化物、酸化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩などのほか、シュウ酸塩などを用いるものとしてもよい。この原料は、化学量論比で基本組成式LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)となるように配合すればよい。原料は混合したのち、そのまま焼成してもよいし、加圧成形して焼成するものとしてもよい。この焼成処理は、酸化雰囲気で行うものとし、例えば、酸素や空気を流通させて加熱するものとしてもよい。
この焼成工程では、1段階目焼成処理を850℃以上1000℃以下の温度範囲で行うものとしてもよい。この焼成温度は、950℃以下であることが好ましく、925℃以下であることがより好ましい。また、この焼成温度は、875℃以上で行うことがより好ましい。また、焼成工程では、1段階目焼成温度より低い温度で2段階目焼成処理を行い、2段階目焼成温度よりも低い温度で3段階目焼成処理を行うことがより好ましい。2段階目焼成処理は、650℃以上750℃以下の範囲で行うものとしてもよい。また、3段階目焼成処理は、550℃以上650℃未満の範囲で行うものとしてもよい。このような焼成処理は、2以上の多段階で行うことが好ましいが、処理の煩雑さを考慮すると3段階程度が好ましい。また、焼成工程では、n段階目焼成処理を1段階目焼成処理よりも長い時間で行うことが好ましい。例えば、1段階目焼成処理は、4時間以上24時間以下の範囲で行うものとしてもよい。また、2段階目以降の焼成処理は、8時間以上24時間以下の範囲で行うことが好ましい。このような焼成工程を経ることで、上述した活物質を得ることができる。
(リチウム二次電池)
本開示のリチウム二次電池は、上述した活物質を含む正極と、リチウムを吸蔵放出する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものである。特に、正極の活物質の体積変化率がより小さいため、このリチウム二次電池は、イオン伝導媒体が固体電解質である全固体型リチウム二次電池であることがより好ましい。全固体型リチウム二次電池では、正極と固体電解質界面、負極と固体電解質界面の接触性が電池性能に大きく影響を及ぼすことが知られており、充放電中の活物質の体積変化が小さいことは高性能な全固体電池を作製するうえでは重要な要件である。そのため、体積変化の少ない本開示の活物質を全固体電池に用いる意義が高い。
正極は、集電体と、集電体に隣接して設けられた活物質層とを有するものとしてもよい。活物質層は、上述した活物質を含み、そのほか、導電材や結着材などを含むものとしてもよい。活物質層には、活物質粒子が60体積%以上98体積%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。活物質粒子は、電池容量の観点からは、より多く活物質層に含まれることが好ましく、70体積%以上がより好ましく、85体積%以上が更に好ましい。この正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
負極は、集電体と、集電体に隣接して設けられた活物質層とを有するものとしてもよい。活物質層は、活物質のほか導電材や結着材などを含むものとしてもよい。この負極の活物質層は、正極と同様であり、活物質粒子がより多く含まれることが好ましく、活物質粒子が60体積%以上98体積%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。この負極は、負極活物質と集電体とを密着させて形成したものとしてもよいし、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素質材料は、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。複合酸化物としては、例えば、リチウムチタン複合酸化物やリチウムバナジウム複合酸化物などが挙げられる。負極活物質としては、このうち、リチウムチタン複合酸化物、特に無歪負極活物質であるLi4Ti512を用いることが負極の体積変化をより抑制することができ、好ましい。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
このリチウム二次電池において、固体電解質としては、例えば、無機固体電解質や、高分子固体電解質などが挙げられる。固体電解質は、以下の組成や構造に限定されるものではなくLiイオンが移動可能であるものであればよい。以下に例示する化合物を基本骨格とするものであれば、一部置換体や組成比が異なっても使用可能である。無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LISICONと呼ばれるLi14Zn(GeO44、硫化物のLi3.25Ge0.250.754、ペロブスカイト型のLa0.5Li0.5TiO3、(La2/3Li3x1/3-2x)TiO3(□:原子空孔)、ガーネット型のLi7La3Zr212、NASICON型と呼ばれるLiTi2(PO43、Li1.30.3Ti1.7(PO34(M=Sc,Al)、ガラスセラミックスである80Li2S・20P25(mol%)組成のガラスから得られたLi7311、さらに硫化物系で高い導電率を持つ物質であるLi10Ge2PS2、ガラス系無機固体電解質ではLi2S−SiS2、Li2S−SiS2−LiI、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li2S−SiS2−Li4SiO4、Li2S−P25、Li3PO4−Li4SiO4、Li3BO4−Li4SiO4、そしてSiO2、GeO2、B23、P25をガラス系物質としてLi2Oを網目修飾物質とするものなどが挙げられ、チオリシコン固体電解質としてLi2S−GeS2系、Li2S−GeS2−ZnS系、Li2S−Ga22系、Li2S−GeS2−Ga23系、Li2S−GeS2−P25系、Li2S−GeS2−SbS5系、Li2S−GeS2−Al23系、Li2S−SiS2系、Li2S−P25系、Li2S−Al23系、LiS−SiS2−Al23系、Li2S−SiS2−P25系などが挙げられる。
高分子固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)とアルカリ金属の錯体があり、ポリマーであればPEOに限定されるものではなくリチウム塩を溶解するポリマー材料のユニット構造を例示すると、Polyether系のPEO、PPO:poly(propylene oxide)、Polyamine系のPEI:poly(ethylene imine)、PAN:poly(acrylo nitrile)、Polysulfide系のPAS:poly(alkylene sulfide)などが挙げられる。またリチウム塩としてはLiTFSI:(LiN(SO2CF32)、LiPEI:(COCF2SO2NLi)n、LiPPI:(COCF(CF3OCF2CF2SO2NLi))nが挙げられる。また、PVdF(PolyVinylidene DiFluoride)やPAN、HFP(Hexafluoropropylene)などを利用したゲルポリマー電解質などが挙げられる。また、有機イオン性プラスチック電解質としては、プラスチッククリスタル相を有するものなどが挙げられる。プラスチッククリスタル相の代表的な分子としては、Tetrachloromethane、Cyclohexane、Succinonitrile等が挙げられ、これらプラスチッククリスタル相にTf2N:(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、LiBF4を添加する、または脂肪族4級アンモニウムとパーフルオロアニオンからなるプラスチッククリスタル相を有する塩の組み合わせであってもよい。イオン液体とガラス成分を分子レベルで混合した有機・無機ハイブリッド型イオンゲル、すなわちセルロースを利用した有機ホウ素系イオンゲル電解質、アミロースを用いた有機ホウ素系イオンゲル電解質、シクロデキストリンから誘導したホウ素多置換型マクロサイクルなどが挙げられる。
このリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、こうした電池を複数直列に接続して電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。このリチウム二次電池の構造は、特に限定されないが、例えば図2に示す構造が挙げられる。図2は、全固体型リチウム二次電池10の構造の一例を示す説明図である。この全固体型リチウム二次電池は、固体電解質層11と、この固体電解質層11の片面に形成された正極活物質層13と、この固体電解質層11のもう片面に形成された負極活物質層16とを有する。正極活物質層13の表面には、集電体14が形成されており、負極活物質層16の表面には、集電体17が形成されている。正極12は、正極活物質層13及び集電体14を含み、負極15は、負極活物質層16及び集電体17を含む。正極活物質層13には、上述した切頂八面体の複合酸化物の活物質粒子1を含む。
以上説明した本実施形態の活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法では、作動電圧が高く充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくいものを提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。活物質の高電位化にはスピネル型結晶構造の金属サイトにCoを置換することが有効であり、LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)の組成領域においてCoが酸化還元反応に寄与するため、作動電圧を高めることができる。また、この活物質は、充放電による格子体積変化が小さいため、充放電サイクル特性を向上することができる。これは、繰り返しサイクルによる結晶構造の崩壊や、電極中の活物質と導電材などとの間の剥離を防止することができるためであると推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、電池は、全固体型リチウム二次電池を主として説明したが、特にこれに限定されない。例えば、リチウム二次電池は、イオン伝導媒体として支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを備えたものとしてもよい。この活物質では、切頂八面体形態でその結晶性も高いため、高電位領域で発生する電解液との副反応を抑えることができると推察される。このため、このリチウム二次電池では、充放電のサイクル特性をより高めることができる。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなどのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。
このリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウム二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
図3は、電解液を用いた本開示のリチウム二次電池20の一例を示す模式図である。このリチウム二次電池20は、集電体21に正極合材層22を形成した正極シート23と、集電体24の表面に負極合材層27を形成した負極シート28と、正極シート23と負極シート28との間に設けられたセパレータ29と、正極シート23と負極シート28の間を満たすイオン伝導媒体30とを備えたものである。このリチウム二次電池20では、正極シート23と負極シート28との間にセパレータ29を挟み、これらを捲回して円筒ケース32に挿入し、正極シート23に接続された正極端子34と負極シートに接続された負極端子36とを配設して形成されている。この正極合材層22には、上述した活物質粒子1が含まれている。このリチウム二次電池20においても、作動電圧が高く充放電サイクルを繰り返しても容量劣化しにくい効果が得られる。
以下には、本開示のリチウム二次電池を具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例1〜4、7〜9が実施例に相当し、実験例5、6が比較例に相当する。
(実験例1)
「正極活物質の作製」
LiOH・H2O(和光純薬工業製)とCoO(高純度化学製)とMnO2(高純度化学製)を原料として、基本組成式LiCoxMn2-x4(x=1)となる化学量論比で乾式混合した約5gの粉末を錠剤成形機により20MPaで直径20mm、厚さ5mmに圧粉成型した。得られた成形体を横型電気炉を用い酸素気流中で900℃、12時間焼成し(1段階目焼成)、その後700℃として24時間焼成し(2段階目焼成)、更に600℃として24時間焼成(3段階目焼成)することによって組成式LiCoMnO4で示される活物質を作製した。
(実験例2〜4)
上記基本組成式のx=0.75、0.50、0.25とした以外は実験例1と同様の工程を経て、得られた活物質をそれぞれ実験例2〜4の活物質とした。
(実験例5,6)
上記基本組成式のx=0とした以外は実験例1と同様の工程を経て、得られた活物質を実験例5の活物質とした。また、1段階目焼成を800℃で行った以外は実験例1と同様の工程を経て、得られた活物質を実験例6の活物質とした。
(X線回折測定)
粉末X線回折(XRD)測定により、実験例1〜6の活物質の結晶構造及び結晶性を評価した。粉末X線回折測定は、粉末X線回折測定装置(Bruker AXS製D8 Advance)を用い、FeKα線を用いて2θ=15〜150°、0.014°/stepの条件で行った。得られたすべての回折ピークを用いて格子定数を算出し、活物質の結晶性は、2θ=24°付近に現れる111回折線の半値幅(°)から評価した。また、充電前の格子定数ad(Å)と、5.4Vで充電したのちの格子定数ac(Å)を回折線から求め、(ad3−ac3)/ac3×100の式から、充電による活物質の体積変化率
(%)を求めた。
(走査型電子顕微鏡観察)
走査型電子顕微鏡(SEM、Hitachi製S−3600N)を用いて観察を行い、活物質粉体の粒子形態を評価した。
(二極セルの作製)
正極活物質として上記の方法で作製した粉末を用い、導電材としてカーボンブラック(デンカ製)、結着剤としてポリフッ化ビニリデンフルオライド(クレハ化学工業製、KFポリマー#1120)を用いて、それぞれ質量比が88:6:6になるように混合し、適宜N−メチル−2−ピロリドン(ナカライテスク製)を添加して、スラリー状のペーストを作製した。その後、ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体に均一に塗布し、120℃、24時間以上真空乾燥することによって正極シートを作製した。得られた正極シートを直径16mmに切り抜き、これを正極とした。二極式セルは、上記正極を作用極とし、Li箔を対極とし、この作用極と対極との間にセパレータ(東燃ゼネラル石油製)を介し、電解液を満たすことによって作製した。電解液は、EC:EMCを体積比で3:7で混合した溶媒(キシダ化学製)に1MのLiPF6を溶解したものを用いた。
(電気化学特性効果)
作製した二極式セルを用いて、サイクル特性を評価した。温度25℃で0.3mAで充電上限電圧5.4V、放電下限電圧3.0Vとする充放電サイクル試験を行い、15サイクル後の放電容量維持率を確認した。
(リチウムイオン二次電池の作製)
実験例1で作製したLiCoMnO4を正極活物質とし、Li[Li1/3Ti5/3]O4を負極活物質に用いたリチウムイオン二次電池を作製した。正極活物質の質量は3.5g、負極活物質の質量は3.225gとした。電解液は1MのLiPF6を含むEC+EMC(体積比で3:7)を使用した。得られた電池を実験例7とした。また、上記実験例7のリチウムイオン二次電池において、電解液を1MのLiPF6を含むPC+EMC(体積比で3:7)としたリチウムイオン二次電池を作製した(実験例8)。また、上記実験例7のリチウムイオン二次電池において、負極活物質を人造黒鉛(OMAC2)としたリチウムイオン二次電池を作製した(実験例9)
(結果と考察)
表1に、実験例1〜6の組成式、焼成条件、初回放電容量(mAh/g)、15サイクル後の放電容量維持率(%)、充電前の格子定数ad(Å)、5.4Vでの充電後の格子定数ac(Å)、数式(1)の左辺により求められる体積変化率(%)、X線回折による{111}面の回折線の半値幅(°)をまとめて示す。図4は、実験例1の充放電曲線である。図4に示すように、実験例1は、Coを含むことによる酸化還元反応によって、4.8V付近に高電位で作動することが確認された。図5は、実験例1〜6の活物質のX線回折パターンである。すべての回折線は、スピネル型構造に帰属された。実験例1〜4の活物質では、{111}面の回折線の半値幅(°)は、0.120以下を示した。
図6は、実験例1,5,6のSEM画像である。実験例1では、活物質の結晶粒子は、粒子径2〜5μmの範囲内にあり、多面体構造をしていた。その内、六角形の{111}面が8面、四角形の{100}面が6面で構成された切頂八面体の粒子が数多く観察された。粒子径が2μm以上の粒子において、切頂八面体の粒子数は、全体の50%以上を占めているとカウントされた。また、Coを含まない実験例5では、活物質の結晶粒子は、粒子径2〜5μmであり、六角形の{111}面が8面で構成された正八面体の粒子が数多く確認された。粒子径が2μm以上の粒子において、正八面体の粒子数は、全体の80%以上を占めているとカウントされた。また、焼成温度が低い実験例6では、活物質の結晶粒子は、粒子径1〜2μmの範囲内であり、ファセット(結晶体の小面)が不明慮な形態であった。これより、第1段目の焼成温度が800℃ではファセットが不明慮な粒子形態であり、第1段目の焼成温度が900℃では正八面形状の多面体形態をとることが分かった。さらに、Coを置換することによって、粒子の形態が正八面体から切頂八面体へと変化することがわかった。また、実験例1〜4のSEM画像でみられる切頂八面体のうち100個の粒子について、四角形面と六角形面とが稜共有する辺の長さをLaとし、六角形面と六角形面とが稜共有する辺の長さをLbとしたときのLa/Lbを計測したところ、0.6以上2以下を満たした。活物質粒子の形態が、この範囲を満たすものとすると、詳しくは後述するが、より良好な充放電特性を得られるものと推察された。
図7は、実験例7〜9の各活物質の単極での充放電曲線である。この充放電曲線は、実験例7〜8の正極活物質(LiCoMnO4)、実験例7,8の負極活物質(Li[Li1/3Ti5/3]O4)、実験例9の負極活物質(人造黒鉛)のいずれかを含む作用極と、Li金属からなる対極とを有する二極セルを用いて充放電した結果である。LiCoMnO4では4.8V、Li[Li1/3Ti5/3]O4では1.5V、人造黒鉛では、0.3V近傍がLi基準電位における作動電圧であった。図8は、実験例7、9のリチウムイオン二次電池の充放電曲線である。なお、電解液を変更した実験例8でも充放電曲線には影響がなく、実験例7と同様の結果が得られた。また、図9は、実験例7〜9のリチウムイオン二次電池を0℃で200サイクル、充放電した場合のサイクル性能である。図9に示すように、負極に人造黒鉛を用いた場合に比して、Li[Li1/3Ti5/3]O4を用いた方がサイクル性能は優れていることが分かった。また、電解液にEC+EMCを用いた実験例7と電解液にPC+EMCを用いた実験例8とでは、PCを用いた実験例8では低温での容量は少なかったが、サイクル性能に電解液は影響ないことがわかった。図10は、実験例7〜9のリチウムイオン二次電池を60℃で500サイクル、充放電した場合のサイクル性能である。実験例9の電池ではサイクルと共に容量減少が起きたが、実験例7,8の電池の容量減少は実験例9に比して良好であった。また、0℃のサイクル性能と同様に、PCを用いた実験例8では高温での容量が小さかったが、実験例7,8とでは容量維持率には影響はなかった。このように、高電位な正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池では、Li[Li1/3Ti5/3]O4を負極活物質に用いることがより好ましいことがわかった。
本開示の高電位で作動する正極活物質(LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1))においては、サイクル特性の向上には粒子形態や結晶性の制御が重要である。これは、高電位領域では粒子と電解液との接触界面において、電解液の分解による副反応が生じることによって、反応抵抗が上昇するなど、電極特性の劣化が生じるためである。このため、粒子と電解液との接触面積を最小限にする必要がある。即ち、ミクロンサイズでファセットを持つ形態の粒子が望ましい。例えば、1000℃以上などで作製した特許文献3のような、ナノメートルオーダーの粒子では、電解液との接触面積が非常に大きくなるため、電解液との副反応が多く発生してしまうおそれがある。900℃で1段階目の焼成を行った実験例1〜5の粉末X線回折の半値幅は0.12°以下であり、1段階目を800℃で焼成した実験例6の0.121°と比べて小さかった。これは一般的に、焼成温度が高いと粒成長が促進されるとともに、結晶性が向上するためであると考えられる。これより、900℃近傍で焼成した正極活物質においては、結晶性が高く良好な粒子サイズを有すると考えられる。さらに、充放電サイクル特性の向上には、充放電による正極活物質の体積変化が小さいことが望ましい。これは、充放電による結晶構造の崩壊や正極活物質と導電材との剥離を防ぐことができるためである。この正極活物質の体積変化率は、より小さいことが望ましく、6%以下が好ましく、特に好ましくは3%以下である。表1に示すように、実験例1〜4の体積変化率は、4.5%以下であり、特に実験例1,2では、3.0%以下であった。これは、実験例5,6や他のスピネル構造を有する正極活物質(例えばLiNi0.5Mn1.54では体積変化率7.1%)と比べても非常に小さかった。このような充放電による体積変化が非常に小さいという特徴を有するため、実験例1〜4の正極活物質を含む正極と、無歪特性を持つ負極活物質Li[Li1/3Ti5/3]O4を負極とするリチウムイオン二次電池は、特にサイクル特性がよいと考えられる。また、これら正極と負極の間に固体電解質を備えた、全固体型リチウム二次電池においては、更にサイクル特性が良いと推察された。これは全固体型リチウム二次電池では、正極と固体電解質界面、負極と固体電解質界面の接触性が電池性能に大きく影響を及ぼすことが知られており、充放電中の活物質の体積変化が小さいことは高性能な全固体電池を作製するうえでは重要な要件であるからである。
次に、この活物質粒子が切頂八面体形態をとる理由を以下に説明する。今回のように十分高温で時間をかけ焼成を行った場合、平衡状態で最も安定(表面エネルギーが最小)となる粒子形態となる。このときウルフの定理より、ある結晶面の表面エネルギーγiは粒子の中心から結晶面に下した垂線の足の長さhiに比例する(数式(2))。一方、粒子の形態は各面の成長速度により決定され、{111}面と{100}面とがファセットとなる場合はその粒子形態パラメータαは{111}面と{100}面の成長速度V{111}とV{100}を用いて、数式(3)で表される。ここで、αは1以上3以下の値をとり、α=1では正六面体、1<α<1.5では切頂六面体、α=1.5では立方八面体、1.5<α<3では切頂八面体、α=3では正八面体の形態をとる。本開示でみられる切頂八面体はαが1.8以上2.2以下の値であった。今回のような、平衡状態となる場合、結晶面の成長速度は表面エネルギーと比例するため、数式(4)の関係を有する。よって、数式(3)と数式(4)との関係から数式(5)が成り立つ。切頂八面体において、四角形面と六角形面とが稜共有する辺の長さをLaとし、六角形面と六角形面とが稜共有する辺の長さをLbとすると、数式(6)、(7)が成り立つ。これらの関係より、αが1.8以上2.2以下を満たすLa/Lbの範囲は、0.6以上2以下の範囲となる。このように、活物質粒子は、La/Lbが0.6以上2以下の範囲を満たすことが好ましい。
上述した実験例1〜4の製造方法により複数段階の焼成を経て作製された正極活物質は、スピネル型の結晶構造を持ち、Liは4配位サイトに位置し、Co,Mnは6配位サイトに位置するものと推察された。スピネル系材料では、4配位位置に存在するLiのみが電気化学反応に寄与するため、実験例1〜4については、4配位位置に遷移金属がほとんど存在しないことから、容量低下をより抑制することができるものと推察された。また、多段階の固相反応によれば、1段階目の900℃の焼成では粒成長を促進させ粒子形態を{111}面と{100}面が発達した切頂八面体を形成させることができ、更に次の2段、3段階目の700℃、600℃の焼成では、1段階目の焼成で副生成した結晶などを、切頂八面体形状を有する主結晶に取り込ませることができ、目的の組成により近づけることができるものと推察された。
(熱的安定性評価)
次に、実験例1〜5の正極活物質の熱的安定性について評価した。熱的安定性は、充電後の正極活物質を電解液存在下で示差走査熱量(DSC)測定を行うことにより評価した。上記作製した二極セルを用いて、温度25℃、0.3mAで充電上限電圧5.4Vの定電流充電によって電気化学的に正極活物質からLiを脱離させた。その後、この二極セルをグローブボックス内で解体し、電極を炭酸ジエチルで洗浄した。洗浄した電極の正極活物質を含む電極合材をアルミニウム集電体から剥ぎ取った。この粉末の中の活物質が5.0mg、電解液が2.6μLになるような割合で両者を共にDSCパンに封入した。空のDSCパンを参照試料とし、走査速度5.0℃/分でDSC測定を行った。DSC測定は、示差走査熱量測定装置(Rigaku社製Thermo plus2)を用いた。
(結果と考察)
図11は、実験例1〜5のDSC測定結果である。なお、このy軸は活物質1gあたりの熱量である。図12は、LiCoxMn2-x4におけるCo量xとDSCピーク温度及びエンタルピーとの関係図である。図13は、DSC測定後の実験例1〜5の活物質のX線回折パターンである。また、表2に、実験例1〜5の組成式、ピーク1〜3のピークトップ温度Tp(℃)、ピーク1〜3のエンタルピー変化量△H(J/g)をまとめて示す。表2、図11に示すように、実験例5(x=0)では、ピーク1のピークトップが200℃、ピーク2のピークトップが250℃、ピーク3のピークトップが300℃あたりで観測された。一方、実験例1〜4では、これら3本のピークトップは、低温側にシフトすると共に、ピーク3については、LiCoxMn2-x4におけるxの増加に伴いピーク強度が低下した。得られたDSCプロファイルの各ピークをガウス関数でフィッティングして、ピークトップ温度Tpとエンタルピー変化量△Hを算出した。その結果を表2にまとめた。図12及び表2に示すように、ピーク1,2のエンタルピー変化量△Hは、xの値によらずほぼ一定であったのに対し、ピーク3のエンタルピー変化量△Hは、xの増加に伴い大きく減少した。これにより、50℃〜350℃の範囲における総△Hは、xの増加に伴い徐々に減少した。総△Hは、セルが高温に曝された際の発熱量に相当するため、xの増加に伴い蓄電デバイスの安全性が高くなることが明らかとなった。
このxの増加に伴うエンタルピー変化量△Hの減少の要因を調べるため、DSC測定後の活物質のX線回折測定を行った。X線回折測定は、上述した測定条件に準じて行った。図13に示すように、x=0、即ち、実験例5では、MnCO3がほぼ単相で存在した。この炭酸塩は、電解液の成分と活物質とが加熱により反応したものであると推察された。また、x≧0.25の範囲では、xの増加に伴いMnCO3が徐々に減少し、代わりにCoCO3が徐々に増加した。更に、CoOやCoも少量存在した。これらの生成物の標準生成エンタルピー△fHは、△fH(MnCO3)=−894.1kJ/mol、△fH(CoCO3)=−713kJ/mol、△fH(CoO)=−237.94kJ/mol、△fH(Co)=0kJ/molである。△Hは生成系の標準生成エンタルピー(△f0(生成系))から反応系の標準生成エンタルピー(△f0(反応系))を引いたものである。即ち、△H=(△f0(生成系))−(△f0(反応系))と定義される。従って、△f0(反応系)がxによらず一定と仮定すると、標準生成エンタルピー△fHが負に大きいほどエンタルピー変化量△Hは小さくなる。したがって、加熱したのちの最終生成物がMnCO3からCoCO3やCoO、Coに変化することによって、エンタルピー変化量△Hは小さくなると考えられる。上記測定結果においても、この関係を有するものと推察され、xの増加によって総△Hが徐々に小さくなり、熱的安定性も向上したのではないかと考えられた。
なお、本明細書で開示した活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法は、上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本明細書で開示した活物質、リチウム二次電池及び活物質の製造方法は、二次電池の技術分野に利用可能である。
1 活物質粒子、2 六角形面、3 四角形面、10 全固体型リチウム二次電池、11 固体電解質層、12 正極、13 正極活物質層、14 集電体、15 負極、16 負極活物質層、17 集電体、20 リチウム二次電池、21 集電体、22 正極合材層、23 正極シート、24 集電体、27 負極合材層、28 負極シート、29 セパレータ、30 イオン伝導媒体、32 円筒ケース、34 正極端子、36 負極端子。

Claims (8)

  1. リチウム二次電池に用いられる活物質であって、
    基本組成式LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)で示され、六角形の{111}面が8面、四角形の{100}面が6面で構成される切頂八面体の粒子形態であり、FeKα線を用い2θ=15〜150°、0.014°/stepの条件で測定したX線回折パターンにおいて、111回折線の半値幅が0.12°以下である、
    活物質。
  2. 前記X線回折パターンにおいて、充電前の格子定数をad(Å)、Li基準電位で5.4Vまで充電した後の格子定数をac(Å)としたとき、数式(1)を満たす、請求項1に記載の活物質。
  3. 走査型電子顕微鏡による観察から得られる粒子形態において、六角形面と四角形面とが稜共有する辺の長さをLa、六角形面と六角形面とが稜共有する辺の長さをLbとしたとき、La/Lbが0.6以上2以下である、請求項1又は2に記載の活物質。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の活物質を含む正極と、
    リチウムを吸蔵放出する負極と、
    前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えたリチウム二次電池。
  5. 前記イオン伝導媒体が固体電解質であり、全固体型である、請求項4に記載のリチウム二次電池。
  6. リチウム二次電池に用いられる活物質の製造方法であって、
    基本組成式LiCoxMn2-x4(0.25≦x≦1)となる原料を850℃以上の温度で焼成する1段階目焼成処理と、前記第1段階目焼成後に850℃よりも低い温度で(n−1)回(nは2以上)焼成するn段階目焼成処理とを行う焼成工程、
    を含む活物質の製造方法。
  7. 前記焼成工程では、前記原料を850℃以上の温度で焼成する1段階目焼成処理と、650℃以上750℃以下の範囲で焼成する2段階目焼成処理と、550℃以上650℃未満の範囲で焼成する3段階目焼成処理とを行う、請求項6に記載の活物質の製造方法。
  8. 前記焼成工程では、前記n段階目焼成処理を前記1段階目焼成処理よりも長い時間で行う、請求項6又は7に記載の活物質の製造方法。
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