JP2013020702A - 電解液及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

電解液及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池において、電解液の酸化還元分解による劣化を抑制する。
【解決手段】電解液中にγ−ブチロラクトンを添加したことで、活性化処理時や高温貯蔵時に正極表面で有機溶媒が酸化されるより先に添加剤が酸化されて被膜を形成すると考えられ、容量回復率が増大するとともに、内部抵抗の上昇が抑制される。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に用いられる電解液と、その電解液を用いたリチウムイオン二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型軽量でかつ高容量の二次電池が必要とされている。現在、この要求に応える高容量二次電池としては、正極材料としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)、負極材料として炭素系材料、を用いたリチウムイオン二次電池が商品化されている。このようなリチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高く、小型化および軽量化が図れることから、幅広い分野で電源としての使用が注目されている。しかしながら、LiCoO2は希金属であるCoを原料として製造されるため、今後、資源不足が深刻化すると予想される。さらに、Coは高価であり、価格変動も大きいため、安価で供給の安定している正極材料の開発が望まれていた。
そこで、構成元素の価格が安価で、供給が安定しているマンガン(Mn)を基本組成に含むリチウムマンガン酸化物系の複合酸化物の使用が有望視されている。その中でも、4価のマンガンイオンのみを含み、充放電の際にマンガン溶出の原因となる3価のマンガンイオンを含まないLi2MnO3という物質が注目されている。Li2MnO3は、今まで充放電不可能と考えられてきたが、最近の研究では4.8Vまで充電することにより充放電可能なことが見出されてきている。しかしながらLi2MnO3は、充放電特性に関してさらなる改善が必要である。
充放電特性の改善のため、Li2MnO3とLiMeO2(Meは遷移金属元素)との固溶体であるxLi2MnO3・(1-x)LiMeO2(0<x≦1)の開発が盛んである。なお、Li2MnO3は、一般式Li(Li0.33Mn0.67)O2とも書き表すことが可能であり、LiMeO2と同じ結晶構造に属するとされている。そのため、xLi2MnO3・(1-x)LiMeO2は、Li1.33-yMn0.67-zMey+zO2(0≦y<0.33、0≦z<0.67)とも記載される場合がある。
ところが4価のマンガンイオンを含むリチウムマンガン酸化物系の複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、使用に先立って充電することで正極活物質を活性化させる必要がある。この活性化工程では、リチウムマンガン酸化物系の正極活物質からリチウムイオンが放出されるとともに酸素が脱離し、その酸素によって電解液等が酸化分解するという現象があった。また高温貯蔵試験において充電状態で貯蔵しても、正極表面において電解液等が分解するという現象があった。このように電解液等が酸化分解すると、電極表面に絶縁被膜が形成され、内部抵抗が高くなることによって、貯蔵後の充放電容量が低下するという問題があった。
また負極活物質として黒鉛などの炭素材料を用いたリチウムイオン二次電池では、電解液中の有機溶媒が充電時に負極表面で還元分解し、SEI(Solid Electrolyte Interface)と称される絶縁被膜が負極の表面に形成される。このSEIは、LiF、LiCO3などを主成分とし、これらは不可逆物質であり充放電に利用可能なリチウム量が減少して不可逆容量となってしまう。
そこで例えば特許文献1には、リチウムイオン二次電池の電解液に、ハロゲン化環状炭酸エステルと共にγ−ブチロラクトンを0.5質量%以上添加することが記載され、γ−ブチロラクトンの添加によって、ジビニルスルホンを用いることなく、高温保存時における電池の膨れ変形を抑制できることが記載されている。
また例えば特許文献2には、リチウムイオン二次電池の電解液に5〜15体積%のγ−ブチロラクトンと、ハロゲン化トルエンとを添加することで、過充電特性が優れ、高温特性も向上することが記載されている。
さらに例えば特許文献3には、リチウムイオン二次電池の電解液に1〜50体積%のγ−ブチロラクトンと、湿潤性活性剤とを添加することが記載されている。湿潤性活性剤を添加することでγ−ブチロラクトンの粘性を低くすることができ、寿命特性及び安全性が向上する。
特開2008−192391号公報 特開2006−108100号公報 特開2006−108092号公報
しかしながら上記した特許文献1-3には、活性化処理によって酸素が発生するような正極活物質を用いたものはなく、このような正極活物質を用いた正極表面における電解液等の分解を抑制することは困難であった。また負極活物質も黒鉛などの炭素材料を用いているので、SEIの生成による劣化が避けられない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、活性化処理が必要であるけれども高容量を発現する正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池において、貯蔵後の充放電容量の低下を抑制することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本発明の電解液の特徴は、リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を有する正極をもつリチウムイオン二次電池に用いられる電解液であって、
溶媒又は液体分散媒と、溶媒又は液体分散媒に溶解又は分散した電解質と、溶媒又は液体分散媒に溶解した添加剤と、を含み、添加剤は、含酸素複素環と、含酸素複素環を構成する酸素原子に隣接した炭素原子に形成されたカルボニル基と、を含む化合物からなることにある。
また本発明のリチウムイオン二次電池の特徴は、本発明の電解液と、リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を有する正極と、負極と、よりなることにある。
本発明の電解液は、溶媒又は液体分散媒と、溶媒又は液体分散媒に溶解又は分散した電解質と、溶媒又は液体分散媒に溶解した添加剤とを含み、添加剤は、含酸素複素環と、含酸素複素環を構成する酸素原子に隣接した炭素原子に形成されたカルボニル基と、を含む化合物からなる。
この添加剤は、HOMOの絶対値が電解液として一般に使用されている有機溶媒より小さく、酸化されやすい。したがって活性化処理時及び高温貯蔵時には、添加剤が有機溶媒よりも優先的に酸化され、有機溶媒の酸化を抑制するとともに、層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質上に安定した被膜を形成すると考えられる。
さらにこの添加剤は、電解液として一般に使用されている有機溶媒よりLUMOの絶対値が小さく、還元されやすい。したがって充電時には負極表面で有機溶媒より先に還元される。そのため有機溶媒の還元が抑制され、その結果、過剰なSEIの生成が抑制されると考えられる。
すなわち、含酸素複素環と、含酸素複素環を構成する酸素原子に隣接した炭素原子に形成されたカルボニル基と、を含む化合物からなる添加剤を含む電解液とすることで、リチウムイオン二次電池の貯蔵特性が向上し、容量回復率が増大するとともに貯蔵時の抵抗上昇も抑制される結果、リチウムイオン二次電池の貯蔵特性が向上する。
本発明の電解液は、溶媒又は液体分散媒と、溶媒又は液体分散媒に溶解又は分散した電解質と、溶媒又は液体分散媒に溶解した添加剤とを含んでいる。
溶媒又は液体分散媒としては、一般に有機溶媒が用いられる。有機溶媒は特に限定されるものではないが、負荷特性の点からは鎖状エステルを含んでいることが好ましい。そのような鎖状エステルとしては、たとえば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートに代表される鎖状のカーボネートや、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの有機溶媒が挙げられる。これらの鎖状エステルは、単独でもあるいは二種以上を混合して用いてもよく、特に、低温特性の改善のためには、上記鎖状エステルが全有機溶媒中の50体積%以上を占めることが好ましく、特に鎖状エステルが全有機溶媒中の65体積%以上を占めることが好ましい。
ただし、有機溶媒としては、上記鎖状エステルのみで構成するよりも、放電容量の向上をはかるために、上記鎖状エステルに誘電率の高い(誘電率:30以上)エステルを混合して用いることが好ましい。このようなエステルの具体例としては、たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートに代表される環状のカーボネートや、エチレングリコールサルファイトなどが挙げられ、特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状構造のエステルが好ましい。そのような誘電率の高いエステルは、放電容量の点から、全有機溶媒中10体積%以上、特に20体積%以上含有されることが好ましい。また、負荷特性の点からは、40体積%以下が好ましく、30体積%以下がより好ましい。
電解質としては、有機溶媒に溶解した非水電解質が一般的であるが、液体分散媒が分散したゲル状の固体電解質も用いることができる。場合によっては、液体分散媒として水を含むことも可能である。
有機溶媒に溶解する電解質としては、たとえば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(n≧2)などが単独でまたは二種以上混合して用いられる。中でも、良好な充放電特性が得られるLiPF6やLiC4F9SO3などが好ましく用いられる。
電解液中における電解質の濃度は、特に限定されるものではないが、0.3〜1.7mol/dm3、特に0.4〜1.5mol/dm3程度が好ましい。
また、電池の安全性や貯蔵特性を向上させるために、電解液に芳香族化合物を含有させてもよい。芳香族化合物としては、シクロヘキシルベンゼンやt−ブチルベンゼンなどのアルキル基を有するベンゼン類、ビフェニル、あるいはフルオロベンゼン類が好ましく用いられる。
含酸素複素環と、含酸素複素環を構成する酸素原子に隣接した炭素原子に形成されたカルボニル基と、を含む化合物(添加剤)としては、例えば五員環のγ−ブチロラクトン、置換基をもつγ−ブチロラクトン、六員環のδ−バレロラクトン及び置換基をもつδ−バレロラクトン及びα−ピロンの中から選ばれる少なくとも一種から選択することができる。四員環以下のラクトン類は、構造安定性に不安があるため使用できない。また七員環以上のラクトン類は、立体障害が懸念されるため使用できない。
置換基をもつγ−ブチロラクトンの置換基としては、アルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン基などがあり、例えばアルキル基をもつγ−ブチロラクトンとしては、メチル−γ−ブチロラクトン(γ−ペンタノラクトン)、エチル−γ−ヘキサノラクトン(γ−カプロラクトン)などが例示される。
また置換基をもつδ−バレロラクトンの置換基としては、アルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン基などがあり、例えばアルキル基をもつδ−バレロラクトンとしては、メチル−δ−バレロラクトン(δ−ヘキサノラクトン)、エチル−δ−バレロラクトン(δ−ヘプタノラクトン)などが例示される。
アルキル基の炭素数が多くなると有機溶媒に溶解しにくくなるので、置換基をもたないγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンから選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
なお、この添加剤は、有機溶媒に溶解する必要があり、溶解度を超えて添加することも避けるべきである。電解液中における添加剤の添加量は、添加剤及び有機溶媒の種類によって異なるが、0.1質量%以上、5質量%未満の範囲とすることが望ましい。添加剤が0.1質量%未満では添加した効果の発現が困難となり、5質量%以上になると効果が低下するとともにリチウムイオン二次電池の内部抵抗が上昇するため好ましくない。
なお、添加剤と有機溶媒のHOMOとLUMOのエネルギー計算値を表1に示す。計算法はAM1に基づいて行った。
Figure 2013020702
添加剤は、有機溶媒に比べてHOMOの絶対値が小さく、LUMOの絶対値も小さいので、充電時に正極上で酸化されやすく、負極上で還元されやすいことがわかる。
本発明の電解液は、上記した有機溶媒と、含酸素複素環と、含酸素複素環を構成する酸素原子に隣接した炭素原子に形成されたカルボニル基と、を含む化合物からなる添加剤とを含むこと以外は、従来と同様の構成とすることができ、電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものとすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、主として、正極、負極および本発明の電解液を備える。また、一般のリチウムイオン二次電池と同様に、正極と負極の間に挟装されるセパレータを備える。
正極は、リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を含むものである。この正極活物質は、組成式:xLi2M1O3・(1-x)LiM2O2(0≦x≦1)であって、M1は4価のMnを必須とする一種以上の金属元素、M2は4価のMnを必須とする二種以上の金属元素)で表されるリチウムマンガン系酸化物を基本組成とする。なお、言うまでもなく、不可避的に生じるLi、M1、M2またはO(酸素)の欠損により、上記組成式からわずかにずれた複合酸化物をも含む。4価に満たないMnの存在により、得られる複合酸化物全体のMnの平均酸化数としては3.8〜4価まで許容される。M1及びM2における4価のMn以外の金属元素としては、Cr、Fe、Co、Ni、Al、Mgの群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
この正極活物質は、少なくとも、Mnを必須とする一種以上の金属元素を含む金属化合物原料と、水酸化リチウムを含み他の化合物を実質的に含まず目的の複合酸化物に含まれるLiの理論組成を超えるLiを含む溶融塩原料とを混合して原料混合物を調製する原料混合物調製工程と、原料混合物を溶融して溶融塩原料の融点以上で反応させる溶融反応工程と、を行うことで製造することができる。水酸化リチウムの溶融塩を用いることで、Liおよび4価のMnを含み層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物が主生成物として合成される。
そして、原料混合物を水酸化リチウムの融点以上の高温とし、溶融塩中で原料混合物を反応させることにより、微粒子状の複合酸化物が得られる。これは、溶融塩中で原料混合物がアルカリ融解して均一に混合されるためである。また、実質的に水酸化リチウムのみからなる溶融塩中で反応させることで、反応温度が高温であっても結晶成長は抑制され、一次粒子がナノオーダーの複合酸化物が得られる。
4価のMnを供給する金属化合物原料として、Mnを必須とする一種以上の金属元素を含む酸化物、水酸化物および金属塩から選ばれる一種以上の金属化合物を用いる。この金属化合物は、金属化合物原料に必須である。具体的には、二酸化マンガン(MnO2)、三酸化二マンガン(Mn2O3)、一酸化マンガン(MnO)、四三酸化マンガン(Mn3O4)水酸化マンガン(Mn(OH)2)、オキシ水酸化マンガン(MnOOH)、これらの酸化物、水酸化物または金属塩のMnの一部がCr、Fe、Co、Ni、Al、Mgなどで置換された金属化合物などが挙げられる。これらのうちの一種あるいは二種以上を必須の金属化合物として用いればよい。なかでも、MnO2は、入手が容易であるとともに、比較的高純度のものが入手しやすいため好ましい。
ここで、金属化合物のMnは、必ずしも4価である必要はなく、4価以下のMnであってもよい。これは、高酸化状態で反応が進むため、2価や3価のMnであっても4価になるためである。Mnを置換する遷移元素についても同様である。
Mnの一部を置換する金属元素を含む化合物としては、酸化物、水酸化物および金属塩から選ばれる一種以上の第二の金属化合物を使用すればよい。第二の金属化合物の具体例としては、酸化コバルト(CoO、Co3O4)、硝酸コバルト(Co(NO3)2・6H2O)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、酸化ニッケル(NiO)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・6H2O)、硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)、酸化銅(CuO)、硝酸銅(Cu(NO3)2・3H2O)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などが挙げられる。これらのうちの一種あるいは二種以上を第二の金属化合物として用いればよい。
溶融反応工程は、原料混合物を溶融して反応させる工程である。反応温度は溶融反応工程における原料混合物の温度であり、溶融塩原料の融点以上であればよいが、500℃未満では溶融塩の反応活性が不十分であり4価のMnを含む所望の複合酸化物を選択率よく製造することが困難である。また、反応温度が550℃以上であれば、結晶性の高い複合酸化物が得られる。反応温度の上限は、水酸化リチウムの分解温度未満であり、900℃以下さらには850℃以下が望ましい。Mnを供給する金属化合物として二酸化マンガンを使用するのであれば、反応温度は500〜700℃さらには550〜650℃が望ましい。反応温度が高すぎると、溶融塩の分解反応が起こるため望ましくない。この反応温度で30分以上さらに望ましくは1〜6時間保持すれば、原料混合物は十分に反応する。
また、溶融反応工程を酸素含有雰囲気、たとえば大気中、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを含むガス雰囲気中で行うと、4価のMnを含む複合酸化物が単相で得られやすい。酸素ガスを含有する雰囲気であれば、酸素ガス濃度を20〜100体積%さらには50〜100体積%とするのがよい。なお、酸素濃度を高くするほど、合成される複合酸化物の粒子径は小さくなる傾向にある。
上記製造方法で得られる複合酸化物の構造は、層状岩塩構造である。層状岩塩構造を主体とすることは、X線回折(XRD)、電子線回折などにより確認することができる。また、高分解能の透過電子顕微鏡(TEM)を用いた高分解能像で、層状構造を観察可能である。得られる複合酸化物を組成式で表すのであれば、xLi2M1O3・(1-x)LM2O2(0≦x≦1であって、M1は4価のMnを必須とする金属元素、M2は4価のMnを必須とする金属元素である。なお、Liは、原子比で60%以下さらには45%以下が水素元素(H)に置換されてもよい。また、M1はほとんどが4価のMnであるのが好ましいが、50%未満さらには80%未満が他の金属元素で置換されていてもよい。
M1およびM2を構成する4価のMn以外の金属元素としては、電極材料とした場合の充放電可能な容量の観点から、Ni、Al、Co、Fe、Mg、Tiから選ばれるのが好ましい。なお、言うまでもなく、不可避的に生じるLi、M1、M2またはO(酸素)の欠損により、上記組成式からわずかにずれた複合酸化物をも含む。したがって、M1の平均酸化数およびM2に含まれるMnの平均酸化数は3.8〜4価まで許容される。
具体的には、Li2MnO3、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn0.5O2、または、これらのうちの2種以上を含む固溶体が挙げられる。Mn、Ni、Coの一部は、他の金属元素で置換されていてもよい。得られる複合酸化物全体としては、例示した酸化物を基本組成とすればよく、不可避的に生じる金属元素または酸素の欠損により、上記組成式から僅かに外れていてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、集電体と、集電体上に結着された活物質層とを有する。活物質層は、上記した結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質と、導電助剤、バインダー樹脂、及び必要に応じ適量の有機溶剤を加えて混合しスラリーにしたものを、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法で集電体上に塗布し、バインダー樹脂を硬化させることによって作製することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池の負極は、負極活物質である金属リチウムをシート状にして、あるいはシート状にしたものをニッケル、ステンレス等の集電体網に圧着して形成することができる。金属リチウムのかわりに、リチウム合金またはリチウム化合物をも用いることができる。また、正極同様、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質とバインダー樹脂とからなる負極を使用してもよい。負極活物質としては、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。バインダー樹脂としては、正極同様、含フッ素樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
また負極活物質として、SiOx(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物からなる粉末を用いることも好ましい。SiOxは熱処理されると、SiとSiO2とに分解することが知られている。これは不均化反応といい、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。また、Si相を覆うSiO2相が電解液の分解を抑制する働きをもつ。しかし負極活物質としてケイ素酸化物のみを用いた場合には、サイクル特性が不十分となる場合があるので、そのような場合にはケイ素酸化物と黒鉛などの炭素材料とを併用することが望ましい。
また、正極及び負極に用いられるバインダー樹脂および導電助材にも特に限定はなく、一般のリチウムイオン二次電池で使用可能なものであればよい。導電助材は、電極の電気伝導性を確保するためのものであり、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛などの炭素物質粉状体の1種または2種以上を混合したものを用いることができる。バインダー樹脂は、正極活物質および導電助材を繋ぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などを用いることができる。
正極及び負極に用いられる集電体は、金属製のメッシュや金属箔を用いることができる。たとえば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属材料または導電性樹脂からなる多孔性または無孔の導電性基板が挙げられる。多孔性導電性基板としては、たとえば、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布などの繊維群成形体、などが挙げられる。無孔の導電性基板としては、たとえば、箔、シート、フィルムなどが挙げられる。電極合材層形成用組成物の塗布方法としては、ドクターブレード、バーコーターなどの従来から公知の方法を用いればよい。
スラリーに用いられる粘度調整のための有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
セパレータとしては、強度が充分でしかも電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、5〜50μmの厚さで、ポリプロピレン製、ポリエチレン製、プロピレンとエチレンとの共重合体などポリオレフィン製の微孔性フィルムや不織布などが好ましく用いられる。
以上の構成要素によって構成されるリチウムイオン二次電池の形状は円筒型、積層型、コイン型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極と負極との間にセパレータを挟装させ電極体とする。そして正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集電用リードなどで接続し、この電極体に本発明の電解液を含浸させ電池ケースに密閉し、リチウムイオン二次電池が完成する。
リチウムイオン二次電池を使用する場合には、はじめに充電を行い、正極活物質を活性化させる。ただし、層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を用いる場合には、初回の充電時にリチウムイオンが放出されるとともに酸素が発生する。そのため、電池ケースを密閉する前に充電を行うのが望ましい。
以上説明した本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯電話、パソコン等の通信機器、情報関連機器の分野の他、自動車の分野においても好適に利用できる。たとえば、このリチウムイオン二次電池を車両に搭載すれば、リチウムイオン二次電池を電気自動車用の電源として使用できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
<リチウムイオン二次電池用正極の作製>
溶融塩原料として0.20molの水酸化リチウム一水和物LiOH・H2O(8.4g)と、金属化合物原料として0.02molの二酸化マンガンMnO2(1.74g)と、を混合して原料混合物を調製した。このとき、目的生成物がLi2MnO3であることから、二酸化マンガンのMnが全てLi2MnO3に供給されたと仮定して、(目的生成物のLi)/(溶融塩原料のLi)は、0.04mol/0.2mol=0.2であった。
原料混合物を坩堝にいれて、700℃の電気炉内に移し、真空中700℃で2時間加熱した。このとき原料混合物は融解して溶融塩となり、黒色の生成物が沈殿していた。
次に、溶融塩の入った坩堝を電気炉内で室温まで冷却後、電気炉から取り出した。溶融塩が十分に冷却されて固体化した後、坩堝ごと200mLのイオン交換水に浸し、攪拌することで、固体化した溶融塩を水に溶解した。黒色の生成物は水に不溶性であるため、水は黒色の懸濁液となった。黒色の懸濁液を濾過すると、透明な濾液と、濾紙上に黒色固体の濾物と、が得られた。得られた濾物をさらにアセトンを用いて十分に洗浄しながら濾過した。洗浄後の黒色固体を120℃で12時間、真空乾燥した後、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。
得られた黒色粉末についてCuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。XRDによれば、得られた黒色粉末は層状岩塩構造であることがわかった。また、発光分光分析(ICP)および酸化還元滴定によるMnの平均価数分析から、得られた黒色粉末の組成はLi2MnO3であると確認された。
なお、Mnの価数評価は、次のように行った。0.05gの試料を三角フラスコに取り、シュウ酸ナトリウム溶液(1%)40mLを正確に加え、さらにH2SO4を50mL加えて窒素ガス雰囲気中90℃水浴中で試料を溶解した。この溶液に、過マンガン酸カリウム(0.1N)を滴定し、微紅色にかわる終点(滴定量:V1)まで行った。別のフラスコに、シュウ酸ナトリウム溶液(1%)20mLを正確に取り、上記と同様に過マンガン酸カリウム(0.1N)を終点まで滴定した(滴定量:V2)。V1およびV2から下記の式により、高価数のMnがMn2+に還元された時のシュウ酸の消費量を酸素量(活性酸素量)として算出した。
活性酸素量(%)=[(2×V2-V1)×0.00080/試料量]×100そして、試料中のMn量(ICP測定値)と活性酸素量からMnの平均価数を算出した。
得られた正極活物質、導電助剤としてのアセチレンブラック、バインダー樹脂としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を質量比で88:6:6の割合で混合した。次いで、このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、アルミニウム箔上に正極活物質を形成着した。その後、120℃で12時間以上真空乾燥し、電極(正極:30×25mm)とした。
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
先ずSiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiOx粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
得られたSiOx粉末48質量部に、導電助剤としての黒鉛粉末34.4質量部と、ケッチェンブラック(KB)粉末2.6質量部と、バインダー樹脂としてのポリアクリル酸を混合し、スラリーを調製した。スラリー中の各成分の組成比は固形分として、SiOx粉末:黒鉛粉末:ケッチェンブラック:ポリアミドイミド=42:40:3:15である。このスラリーを、厚さ20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に負極活物質層を形成した。
その後、80℃で20分間乾燥し、負極活物質層から有機溶媒を揮発させて除去した。乾燥後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを200℃で2時間加熱硬化させて、活物質層の厚さが15μm程度の電極(負極:31×26mm)を形成した。
なお、負極としてリチウムがドーピングされている負極を用いてもよい。
<リチウムイオン二次電池の作製>
エチレンカーボネートと、ジエチルカーボネートとを3:7(体積比)で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解するとともに、γ−ブチロラクトンを1重量%となるように添加して溶解させた非水電解液を調製した。
そして正極および負極の間に、セパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを挟装して電極体とした。この電極体をラミネートフィルムで包み込み、周囲を熱融着させてフィルム外装電池を作製した。最後の一辺を熱融着封止する前に上記の非水電解液を注入し、電極体に含浸させた。その後に、0.2Cで4.5VまでCCCV充電(定電流定電圧充電)を行い正極活物質を活性化させた。
<試験>
(容量回復率の算出)
上記のリチウムイオン二次電池を80℃で5日間貯蔵する高温貯蔵試験を行い、高温貯蔵試験前の1C放電容量と、高温貯蔵後に放電させSOC100%充電後の1C放電容量とをそれぞれ測定して、次式から容量回復率を算出した。
容量回復率=100×(貯蔵後放電させSOC100%充電後の1C放電容量)/(貯蔵前1C放電容量)
結果を表1に示す。
(内部抵抗上昇率の算出)
上記のリチウムイオン二次電池を80℃で5日間貯蔵する高温貯蔵試験を行い、高温貯蔵試験前後の電池内部抵抗をそれぞれ測定して、次式から内部抵抗上昇率を算出した。
内部抵抗上昇率=100×(貯蔵後抵抗値−貯蔵前抵抗値)/(貯蔵前抵抗値)
結果を表1に示す。
[比較例1]
非水電解液にγ−ブチロラクトンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。このリチウムイオン二次電池を用いたこと以外は実施例1と同様にして、容量回復率と内部抵抗上昇率を算出した。それぞれの結果を表2に示す。
<評価>
Figure 2013020702
表2から明らかなように、実施例1のリチウムイオン二次電池は比較例1のリチウムイオン二次電池に比べて保存容量と回復容量が増大するとともに、内部抵抗上昇率が減少している。これは、非水電解液中にγ−ブチロラクトンを含むことによる効果であることが明らかである。

Claims (6)

  1. リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を有する正極をもつリチウムイオン二次電池に用いられる電解液であって、
    溶媒又は液体分散媒と、該溶媒又は液体分散媒に溶解又は分散した電解質と、該溶媒又は液体分散媒に溶解した添加剤とを含み、
    該添加剤は、含酸素複素環と、該含酸素複素環を構成する酸素原子に隣接した炭素原子に形成されたカルボニル基と、を含む化合物からなることを特徴とする電解液。
  2. 前記添加剤はγ−ブチロラクトン、置換基をもつγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、置換基をもつδ−バレロラクトン及びα−ピロンの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の電解液。
  3. 前記添加剤はγ−ブチロラクトンであり、前記電解液中に0.1質量%以上、5質量%未満の範囲で添加されている請求項1に記載の電解液。
  4. 前記リチウムマンガン系酸化物はLi2MnO3である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解液。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電解液と、リチウム(Li)元素および4価のマンガン(Mn)元素を含み結晶構造が層状岩塩構造に属するリチウムマンガン系酸化物からなる正極活物質を有する正極と、負極と、よりなることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  6. 前記負極は、SiOx(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物からなる負極活物質を含む請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
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