JP6994151B2 - 非水電解液二次電池用セパレータ - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解液二次電池用のセパレータに関する。
近年、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
非水電解液二次電池は、典型的には、正極、負極、および当該正負極を絶縁するセパレータを含む電極体と、非水電解液とが電池ケースに収容された構成を有する。セパレータとしては通常、多孔性シートが用いられる。
電池特性を向上させるために、セパレータの親水性および疎水性を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1~7参照)。
なかでも、特許文献1~3には、セパレータにおいて親水性の部分と疎水性の部分とを混在させることが記載されている。
特許文献4には、セパレータの少なくとも一方の主表面および内部表面に耐熱性無機層を設け、この耐熱性無機層上に疎水性層を形成することが記載されている。
特開平06-076807号公報 特開2000-138050号公報 特開2011-159434号公報 特開2017-084779号公報 特開2009-146756号公報 国際公開2016/002637号 特開平08-050890号公報
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、従来のセパレータを非水電解液二次電池に用いた場合には、セパレータへの非水電解液の含浸性に改善の余地があることが見出された。
そこで本発明の目的は、非水電解液二次電池に用いられるセパレータであって、非水電解液の含浸性の高いセパレータを提供することにある。
ここに開示される非水電解液二次電池用セパレータは、多孔性基材と、前記多孔性基材の一対の主表面上および内部表面上に形成された第1のコート層と、前記多孔性基材の少なくとも一方の主表面の上であってかつ前記第1のコート層上に形成された第2のコート層と、を備える。前記第1のコート層は、前記多孔性基材よりも高い親水性を有する。前記第2のコート層は、前記多孔性基材よりも高い疎水性を有する。前記非水電解液二次電池用セパレータの厚さ方向の中央領域において、前記非水電解液二次電池用セパレータの内部表面の親水性は、前記第2のコート層の親水性よりも高い。
このような構成によれば、セパレータの内部領域にある親水性の高い第1のコート層によって、セパレータの内部領域へ流入した非水電解液が保持され易くなっており、一方で、表層部の疎水性の高い第2のコート層によって、流入した非水電解液が、セパレータの内部領域に追いやられ易くなっており、かつセパレータの外部へと流出し難くなっている。したがって、このような構成によれば、非水電解液二次電池に用いられるセパレータであって、非水電解液の含浸性の高いセパレータが提供される。
ここに開示される非水電解液二次電池用セパレータの好ましい一態様においては、前記第1のコート層が、Al(OH)、AlOH、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む。
このような構成によれば、前記第1のコート層に特に高い親水性を付与することができ、前記非水電解液二次電池用セパレータへの非水電解液の含浸性が非常に高くなる。
ここに開示される非水電解液二次電池用セパレータの好ましい一態様においては、前記第1のコート層が、Al(OH)を含む。
このような構成によれば、前記非水電解液二次電池用セパレータへの非水電解液の含浸性が特に高くなる。
ここに開示される非水電解液二次電池用セパレータの好ましい一態様においては、前記第2のコート層が、前記多孔性基材の両方の主表面の上であってかつ前記第1のコート層上に形成されている。
このような構成によれば、前記非水電解液二次電池用セパレータへの非水電解液の含浸性がより高くなる。
ここに開示される非水電解液二次電池用セパレータの好ましい一態様においては、前記第2のコート層が、Nb、Y、およびCeOからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む。
このような構成によれば、前記第2のコート層に特に高い疎水性を付与することができ、前記非水電解液二次電池用セパレータへの非水電解液の含浸性が非常に高くなる。
ここに開示される非水電解液二次電池用セパレータの好ましい一態様においては、前記第2のコート層が、Nbを含む。
このような構成によれば、前記非水電解液二次電池用セパレータへの非水電解液の含浸性が特に高くなる。
ここに開示される非水電解液二次電池用セパレータの好ましい一態様においては、非水電解液二次電池用セパレータがリチウムイオン二次電池用である。
このような構成によれば、非水電解液の含浸性向上効果が顕著に高い。
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータを模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータに用いられる多孔性基材を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータを用いたリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータを用いたリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない非水電解液二次電池用セパレータの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン二次電池等のいわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。
図1は、本実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータを模式的に示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータに用いられる多孔性基材を模式的に示す断面図である。
図示されるように、非水電解液二次電池用セパレータ70は、多孔性基材10を備える。
多孔性基材10は、多数の貫通孔12を有する。多孔性基材10は、一対の主表面14A,14Bを有する。貫通孔12は、非水電解液が多孔性基材10を通って移動できるように、多孔性基材の主表面14Aと主表面14Bとを連通させている。多孔性基材10は、多孔性であり貫通孔12を有するため、内部表面16を有する。
図示例では、貫通孔12は、一対の主表面14A,14Bに垂直に形成されているが、貫通孔12の形状は、多孔性基材の主表面14Aと主表面14Bとを連通させている限りこれに限られない。例えば貫通孔12同士がつながって、貫通孔12がネットワーク状に形成されていてもよい。
多孔性基材10として、例えばポリオレフィン、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔性シートまたはフィルムを用いることができる。多孔性基材10として好適には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の多孔性シートまたはフィルムである。多孔性シートまたはフィルムは、単層構造であってもよく、二層以上の積層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。
多孔性基材10の厚さは、非水電解液二次電池の正極と負極とを絶縁できる限り特に制限はなく、例えば10μm以上40μm以下であり、好ましくは15μm以上30μm以下である。
図1に示すように、セパレータ70は、多孔性基材10の一対の主表面14A,14B上および内部表面16上に形成された第1のコート層80を備える。
第1のコート層80は、多孔性基材10よりも高い親水性を有する。
第1のコート層80の形成方法には特に制限はなく、第1のコート層80は、例えば、ディッピング法により多孔性基材10に親水性処理を施すことにより形成することができる。具体的に例えば、多孔性基材10を、多孔性基材10よりも高い親水性を有する化合物を含有するコーティング液に浸漬後、多孔性基材10を当該コーティング液から引き上げて乾燥することにより形成することができる。ディッピング法によれば、多孔性基材10の主表面14A,14Bおよび内部表面16に当該コーティング液が付着するため、効率よく多孔性基材10の一対の主表面14A,14B上および内部表面16上に第1のコート層80を形成することができる。
なお、当該コーティング液は、溶媒または分散媒を含有し、バインダ成分(例、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ゴム系バインダ、アクリル系バインダ、ポリビニルアルコール等)、粘度調整剤等をさらに含有していてもよい。
よって好適には、第1のコート層80は、多孔性基材10よりも高い親水性を有する化合物を含有する。これにより第1のコート層80の親水性を多孔性基材10よりも容易に高くすることができる。第1のコート層80に特に高い親水性を付与することができ、セパレータ70への非水電解液の含浸性が非常に高くなることから、当該化合物は、好適には、Al(OH)、AlOH、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である。セパレータ70の非水電解液の含浸性が特に高くなることから、当該化合物は、より好適には、Al(OH)である。
また、第1のコート層80は、上記のバインダ成分、粘度調整剤等を含有していてもよい。
第1のコート層80は、多孔性基材10の全表面に形成されていてもよい。よって、第1のコート層80は、多孔性基材10の側面にも形成されていてもよい。
第1のコート層80の厚さは、多孔性基材10の貫通孔12を閉塞せずに非水電解液が通過可能であるような厚さである限り特に制限はない。第1のコート層80の厚さは、例えば1nm以上50nm以下であり、好ましくは2nm以上20nm以下である。
図1に示すように、セパレータ70は、多孔性基材10の主表面14Aの上であってかつ第1のコート層80上に形成された第2のコート層90Aと、多孔性基材10の主表面14Bの上であってかつ第1のコート層80上に形成された第2のコート層90Bとを備えている。
第2のコート層90A,90Bは、多孔性基材10よりも高い疎水性を有する。
なお、図示例では、多孔性基材10の一対の主表面14A,14Bの両方に、第2のコート層90A,90Bがそれぞれ形成されている。しかしながら、多孔性基材の主表面14B上には第2のコート層90Bが形成されず、多孔性基材の主表面14Aのみに第2のコート層90Aが形成されている構成であってもよく、逆に、多孔性基材の主表面14A上には第2のコート層90Aが形成されず、多孔性基材の主表面14Bのみに第2のコート層90Bが形成されている構成であってもよい。
非水電解液の含浸性がより高いことから、第2のコート層90A,90Bが、多孔性基材10の両方の主表面14A,14Bの上であってかつ第1のコート層80上にそれぞれ形成されていることが好ましい。
なお、図示例においては、多孔性基材の主表面14A側および第2のコート層90A側は、正極側を意図しており、多孔性基材の主表面14B側および第2のコート層90B側は、負極側を意図している。
第2のコート層90A,90Bの形成方法には特に制限はなく、第2のコート層90A,90Bは、例えば、第1のコート層80が形成された多孔性基材10の表面に、疎水性処理を施すことにより形成することができる。具体的に例えば、第1のコート層80が形成された多孔性基材10の表面に、多孔性基材10よりも高い疎水性を有する化合物を含有する塗工液を、公知の塗工方法(例えば、グラビアコーター法、バーコーター法、ダイコーター法)により塗工した後、乾燥することにより形成することができる。
当該疎水性処理には、多孔性基材10の貫通孔12内に、第2のコート層90A,90Bを構成する成分が流入し難い(好適には流入しない)方法が適宜選択される。よって、多孔性基材10の主表面上に位置する第1のコート層80の上に塗工液を塗工する方法が好ましい。
なお、当該塗工液は、溶媒または分散媒を含有し、バインダ成分(例、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ゴム系バインダ、アクリル系バインダ、ポリビニルアルコール等)、粘度調整剤等をさらに含有していてもよい。
よって好適には、第2のコート層90A,90Bは、多孔性基材10よりも高い疎水性を有する化合物を含有する。これにより第2のコート層90A,90Bの疎水性を多孔性基材10よりも容易に高くすることができる。第2のコート層90A,90Bに特に高い疎水性を付与することができ、セパレータ70への非水電解液の含浸性が非常に高くなることから、当該化合物は、好適には、Nb、Y、およびCeOからなる群より選ばれる少なくとも一種である。セパレータ70への非水電解液の含浸性が特に高くなることから、当該化合物は、より好適には、Nbである。
第2のコート層90A,90Bは、上記のバインダ成分、粘度調整剤等を含有していてもよい。
第2のコート層90A,90Bの厚さに特に制限はない。第2のコート層90A,90Bの厚さは、例えば1nm以上50nm以下であり、好ましくは2nm以上20nm以下である。
なお、本明細書でいう親水性の高い/低い、疎水性の高い/低いは、公知方法(例えば、接触角測定)に従い評価することができる。
上述のように本実施形態に係るセパレータ70においては、多孔性基材10の主表面14A,14Bに、第2のコート層90A,90Bが形成されている。
一方、多孔性基材10の内部表面16は親水性の高い第1のコート層80で覆われており、実質的に、多孔性基材10の内部表面16上にある第1のコート層80の上には、第2のコート層が形成されていない(なお、「実質的に、多孔性基材10の内部表面16にある第1のコート層80上には、第2のコート層が形成されていない」とは、製造上の理由等から、多孔性基材10の貫通孔12にわずかに第2のコート層が形成される成分が浸入して、貫通孔12の開口部近傍において第2のコート層が形成されていること、および多孔性基材10の内部表面に、親水性を損なわない程度にごく微量だけ第2のコート層が形成されていることは許容されることを意味する)。すなわち、セパレータ70の内部表面においては、第1のコート層80が露出している。
よって、本実施形態に係るセパレータ70は、セパレータ70の厚さ方向の中央領域において、セパレータ70の内部表面の親水性が、第2のコート層90A,90Bの親水性よりも高いという特徴を備える。
(なお、セパレータ70の内部表面の親水性と、第2のコート層90A,90Bの親水性については、それぞれセパレータ70の内部表面全体の親水性と、第2のコート層90A,90B全体の親水性とを比較する。)
なお、本明細書において、セパレータ70の厚さ方向の中央領域は、セパレータ70の厚さ方向の中心をその中心とする領域であって、セパレータ70の厚さ方向において、セパレータ70の厚さの50%、好ましくは75%、より好ましくは90%の寸法を有する領域のことである。
上述のように、本実施形態に係るセパレータ70では、多孔性基材10の内部表面16は親水性の高い第1のコート層80で覆われているために、セパレータ70の内部領域の親水性がセパレータ70を構成する多孔性基材10よりも高くなっている。その一方で、多孔性基材の主表面14A,14Bには、疎水性の高い第2のコート層90A,90Bが形成されているため、セパレータ70の表層部の疎水性がセパレータ70を構成する多孔性基材10よりも高くなっている(セパレータ70の表層部の親水性がセパレータ70を構成する多孔性基材10よりも低くなっている)。
そのため、親水性の高い第1のコート層80によってセパレータ70の内部領域へ流入した非水電解液が保持され易くなっており、一方で、疎水性の高い第2のコート層90A,90Bによって、流入した非水電解液が、セパレータ70の内部領域に追いやられ易くなっており、かつセパレータ70の外部へと流出し難くなっている。このため、本実施形態に係るセパレータ70を用いた非水電解液二次電池は、従来のセパレータを用いた非水電解液二次電池に比べてセパレータ70への非水電解液の含浸性が非常に高いものとなる。
セパレータへの非水電解液の含浸性が非常に高いことは、非水電解液二次電池の製造時に非水電解液を電極体に含浸させるのに必要な時間を短縮することができるため、製造面において有利である。また、セパレータへの非水電解液の含浸性が非常に高いことは、充放電時に電極体から非水電解液が過度に流出することを抑制できるため、電池特性の面において有利である。
本実施形態に係るセパレータ70は、非水電解液二次電池用であり、非水電解液の含浸性向上効果が顕著に高いことから、好ましくはリチウムイオン二次電池用である。
以下、セパレータ70を用いた非水電解液二次電池としてのリチウムイオン二次電池の構成例について説明する。
図3は、セパレータ70を用いたリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。図4は、セパレータ70を用いたリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
図3に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解質(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型のリチウムイオン二次電池100である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36が設けられている。また、電池ケース30には、非水電解質を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
捲回電極体20は、図3および図4に示すように、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された正極シート50と、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成された負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。なお、捲回電極体20の捲回軸方向(上記長手方向に直交するシート幅方向をいう。)の両端から外方にはみ出すように形成された正極活物質層非形成部分52a(即ち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)と負極活物質層非形成部分62a(即ち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)には、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
正極シート50および負極シート60には、従来のリチウムイオン二次電池に用いられているものと同様のものを特に制限なく使用することができる。典型的な一態様を以下に示す。
正極シート50を構成する正極集電体52としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質層54に含まれる正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(例、LiFePO等)等が挙げられる。正極活物質層54は、活物質以外の成分、例えば導電材やバインダ等を含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(例、グラファイト等)の炭素材料を好適に使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
負極シート60を構成する負極集電体62としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質層64に含まれる負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。負極活物質層64は、活物質以外の成分、例えばバインダや増粘剤等を含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
セパレータ70については、上述の通りである。
非水電解液は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、モノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、モノフルオロメチルジフルオロメチルカーボネート(F-DMC)、トリフルオロジメチルカーボネート(TFDMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩(好ましくはLiPF)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
なお、上記非水電解液は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、例えば、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物、ビニレンカーボネート(VC)等の被膜形成剤;分散剤;増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
以上のようにして構成されるリチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
なお、一例として扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明した。しかしながら、リチウムイオン二次電池は、積層型電極体を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、リチウムイオン二次電池は、円筒形リチウムイオン二次電池として構成することもできる。
また、公知方法に従い、セパレータ70を用いて、リチウムイオン二次電池以外の非水電解液二次電池を構成することもできる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<セパレータA1~A8およぶB1~B8の作製>
多孔性基材として、PE単層の多孔性シートを用意した。
コート層Aを形成する場合、多孔性シートを、表1に示す化合物を含有するコーティング液に浸漬し、引き上げた後乾燥した。なお、コーティング液には、表1に示す化合物と、ポリフッ化ビニリデンと、N-メチルピロリドンとを15:20:65の質量比で含有するものを用いた。この処理により、多孔性シート全体(外部表面および内部表面)にコート層Aが形成され、形成されたコート層Aの厚さは5nmであった。
コート層B1および/またはコート層B2を形成する場合、多孔性シートの表面に、表1に示す化合物を含有する塗工液を、グラビアコーターにより塗布した後乾燥した。なお、塗工液には、表1に示す化合物と、ポリフッ化ビニリデンと、N-メチルピロリドンとを15:20:65の質量比で含有するものを用いた。この処理により、セパレータの主表面のみにコート層B1および/またはB2が形成され、形成されたコート層B1およびB2の厚さはそれぞれ、5nmであった。なお、コート層B1はリチウムイオン二次電池を構築した際にセパレータの正極側となる面に形成し、コート層B2はリチウムイオン二次電池を構築した際にセパレータの負極側となる面に形成した。
ここで、コート層A、ならびにコート層B1および/またはコート層B2を形成する場合、コート層Aをまず形成し、次いで、コート層B1および/またはコート層B2を形成した。
なお、Al(OH)、AlOH、およびAlは、多孔性シートよりも親水性の高い化合物であり、Nb、Y、およびCeOは、多孔性シートよりも疎水性の高い化合物である。
このようにして、親水性処理および/または疎水性処理がなされたセパレータA1~A8およびB2~B8を得た。また、PE単層の多孔性シートをそのままセパレータB1とした。
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(LNCM)と、導電材としてのABと、バインダとしてのPVDFとを、LNCM:AB:PVDF=94:3:3の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に帯状に塗布し、乾燥してプレス処理することにより正極を作製した。
また、負極活物質としての球状化黒鉛(C)と、増粘剤としてのCMCと、バインダとしてのSBRとを、C:CMC:SBR=98:1:1の質量比でイオン交換水と混合して、負極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストを、厚さ10μmの銅箔の両面に帯状に塗布し、乾燥してプレス処理することにより負極を作製した。
作製した、正極と負極とセパレータとを、セパレータが正負極間に介在するように積層し、捲回させて捲回電極体を得た。
作製した捲回電極体を電池ケースに収容した。続いて、20℃の温度環境下で電池ケースの開口部から非水電解液を注入して、容量が5Ahの角型リチウムイオン二次電池を作製した。なお、非水電解質には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
<接触角評価>
作製したセパレータに、上記のリチウムイオン二次電池の作製に用いた非水電解液を滴下して、接触角(°)を測定した。結果を表1に示す。
<含浸時間測定>
上記のリチウムイオン二次電池について、注入した非水電解液の60質量%が捲回電極体に含浸されるまでの時間を、含浸時間として求めた。
具体的には、上記のリチウムイオン二次電池の電池ケース内に非水電解液を注入する前に、捲回電極体の重量を測定した。次いで、20℃の温度環境下でリチウムイオン二次電池の電池ケース内に非水電解液を注入し、捲回電極体に非水電解液を含浸させた後、捲回電極体を非水電解液より引き上げた。そして、捲回電極体の重量を再び測定した。非水電解液含浸前後での捲回電極体の重量の差を計算することにより、捲回電極体に含浸した非水電解液の重量(含浸量)を求めた。この含浸量を非水電解液の注入量で除した数値の百分率を含浸割合(%)とし、含浸割合が60%になる時間を含浸時間(h)として求めた。結果を表1に示す。
Figure 0006994151000001
セパレータB1は、コート層を設けなかった(即ち、未処理の)セパレータである。
未処理のセパレータB1に対し、親水性のコート層Aを設けたセパレータB2では、含浸時間が短縮された。これはセパレータB2の全体(主表面および内部表面)で親水性が高くなり、非水電解液の保持性が向上したためである。しかしながら、短縮された含浸時間は短かった。
疎水性のコート層Aを設けたセパレータB3では、含浸時間がやや長くなった。これは、セパレータB3の全体(主表面および内部表面)で疎水性が高くなり、非水電解液の保持性が低下したためである。
疎水性のコート層B1および/または疎水性のコート層B2を設けたセパレータB4~B6では、含浸時間がやや長くなった。これは、セパレータB4~B6の表面の疎水性が高くなったためである。
疎水性のコート層Aと親水性のコート層B1を設けたセパレータB7では、含浸時間に変化はなかった。これはセパレータB7の主表面は親水性であるものの、セパレータB7の内部表面が疎水性であるために、非水電解液の保持性が向上しなかったためである。
疎水性化合物と親水性化合物の両方を含有するコート層Aを設けたセパレータB8では、含浸時間に変化はなかった。これはセパレータB8の全体(主表面および内部表面)で疎水性部分と親水性部分が混在するために、非水電解液の保持性が向上しなかったためである。
一方、親水性のコート層Aおよび疎水性のコート層B1および/またはB2を設けたセパレータA1~A8では、含浸時間が大幅に短縮された。これは、セパレータ内部の親水性が高く、かつセパレータ表面の疎水性が高いため、非水電解液がセパレータ内部へ追いやられ易く、かつセパレータ内部で保持され易く、かつセパレータ外部へと流出しにくいためである。
セパレータA1~A8の比較より、疎水性のコート層B1およびB2の両方を設ける方が、含浸時間をより短縮できることがわかる。また、コート層A1が含有する親水性の化合物について、Al(OH)>AlOH>Alの順に含浸性向上効果が高かった。これは、化合物の親水性の高さの順に一致する。また、コート層B1およびB2が含有する疎水性の化合物について、Nb>CeO>Yの順に含浸性向上効果が高かった。これは、化合物の疎水性の高さの順に一致する。
以上のことから、本実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、非水電解液の含浸性が高いことがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 多孔性基材
12 貫通孔
14A,14B 主表面
16 内部表面
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
80 第1のコート層
90A,90B 第2のコート層
100 リチウムイオン二次電池

Claims (7)

  1. 多孔性基材と、
    前記多孔性基材の一対の主表面上および内部表面上に形成された第1のコート層と、
    前記多孔性基材の少なくとも一方の主表面の上であってかつ前記第1のコート層上に形成された第2のコート層と、
    を備える非水電解液二次電池用セパレータであって、
    前記第1のコート層は、前記多孔性基材よりも非水電解液との低い接触角を有し、
    前記第2のコート層は、前記多孔性基材よりも非水電解液との高い接触角を有し、
    前記非水電解液二次電池用セパレータの厚さ方向の中央領域において、前記非水電解液二次電池用セパレータの内部表面の非水電解液との接触角が、前記第2のコート層の非水電解液との接触角よりも低く
    前記接触角の測定に用いる非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF を1.0mol/Lの濃度で溶解させたものである、
    非水電解液二次電池用セパレータ。
  2. 前記第1のコート層が、Al(OH)、AlOH、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む、請求項1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
  3. 前記第1のコート層が、Al(OH)を含む、請求項1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
  4. 前記第2のコート層が、前記多孔性基材の両方の主表面の上であってかつ前記第1のコート層上に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
  5. 前記第2のコート層が、Nb、Y、およびCeOからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
  6. 前記第2のコート層が、Nbを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
  7. リチウムイオン二次電池用である、請求項1~6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
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