JP6988186B2 - 防カビ剤、防カビ樹脂フィルム、防カビ積層フィルム及び防カビ包装体 - Google Patents
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Description
[1].下記一般式(2)で表される化合物又はその塩を有効成分とする、防カビ剤。
[3].前記o2が1である、[1]又は[2]に記載の防カビ剤。
[4].前記n2が0又は1である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の防カビ剤。
[5].[1]〜[4]のいずれか一項に記載の防カビ剤と、樹脂と、を含む、防カビ樹脂フィルム。
[6].前記樹脂として、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤及びオレフィン系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、前記防カビ樹脂フィルムが接着性を有する、[5]に記載の防カビ樹脂フィルム。
[7].前記一般式(2)で表される化合物又はその塩を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤をさらに含む、[5]又は[6]に記載の防カビ樹脂フィルム。
[8].前記その他の防カビ剤が、下記一般式(9)で表される化合物又はその塩である、[7]に記載の防カビ樹脂フィルム。
[10].前記第1樹脂層が低密度ポリエチレンを含む、[9]に記載の防カビ積層フィルム。
[11].前記第2樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以下である、[9]又は[10]に記載の防カビ積層フィルム。
[12].前記第2樹脂層がポリエステル、ナイロン及びポリプロピレンからなる群より選択される1種又は2種以上を含む、[9]〜[11]のいずれか一項に記載の防カビ積層フィルム。
[13].[9]〜[12]のいずれか一項に記載の防カビ積層フィルムを用いて得られた防カビ包装体であって、前記第1樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記防カビ樹脂フィルムが前記第2樹脂層よりも前記収容空間側に配置されている、防カビ包装体。
本発明の防カビ剤は、下記一般式(2)で表される化合物又はその塩を有効成分とする。
本発明の防カビ剤は、目的とする保存対象物と共存させることで、この保存対象物におけるカビの増殖を抑制する。なお、本明細書において、後述するような「カビの発生」とは、対象物において、カビが目視確認できない状態から、目視確認できる程度にまで増殖することを意味する。
一般式(2)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)」と称することがある)は、防カビ性を有する。
一般式(2)中、R21及びR22は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。
R21及びR22における前記アルキル基として、より具体的には、メチル基(−CH3)、エチル基(−CH2CH3)、n−プロピル基(−CH2CH2CH3)、イソプロピル基(−CH(CH3)2)が挙げられる。
m2が2以上(すなわち、2又は3)である場合、複数個(すなわち、2個又は3個)のR21は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、m2が2以上である場合、R21はすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、m2が2である場合、一般式「−C(=O)−R21」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、m2が3である場合、一般式「−C(=O)−R21」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
n2が2以上(すなわち、2、3又は4)である場合、複数個(すなわち、2個、3個又は4個)のR22は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、n2が2以上である場合、R22はすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、n2が2である場合、R22が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、n2が3である場合、R22が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
一般式(2)−1A中、n211は0〜5の整数であり、一般式(2)中のn2と同様のものである。
一般式(2)−1A中、o211は1〜3の整数であり、一般式(2)中のo2と同様のものである。ただしn211+o211は5以下である。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、n221は0〜4の整数であり、5とはならない点以外は、一般式(2)中のn2と同様のものである。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、o221は1〜3の整数であり、一般式(2)中のo2と同様のものである。ただしn221+o221は4以下である。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、n231は0〜3の整数であり、4及び5とはならない点以外は、一般式(2)中のn2と同様のものである。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、o231は1〜3の整数であり、一般式(2)中のo2と同様のものである。ただしn231+o231は3以下である。
一般式(2)−0中、m202は1〜3の整数であり、一般式(2)中のm2と同様のものである。
一般式(2)−0中、o202は1〜3の整数であり、一般式(2)中のo2と同様のものである。
一般式(2)−1a中、m212は1〜3の整数であり、一般式(2)中のm2と同様のものである。
一般式(2)−1a中、o212は1〜3の整数であり、一般式(2)中のo2と同様のものである。ただしm212+o212は5以下である。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、m222は1〜3の整数であり、一般式(2)中のm2と同様のものである。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、o222は1〜3の整数であり、一般式(2)中のo2と同様のものである。ただしm222+o222は4以下である。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、m232は1又は2であり、3とはならない点以外は、一般式(2)中のm2と同様のものである。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、o232は1又は2であり、3とはならない点以外は、一般式(2)中のo2と同様のものである。ただしm232+o232は3以下である。
一般式(2)−1α中、m213は1〜3の整数であり、一般式(2)中のm2と同様のものである。
一般式(2)−1α中、n213は0〜4の整数であり、一般式(2)中のn2と同様のものである。ただしm213+n213は5以下である。
一般式(2)−2α〜一般式(2)−2γ中、m223は1〜3の整数であり、一般式(2)中のo2と同様のものである。
一般式(2)−2α〜一般式(2)−2γ中、n223は0〜3の整数であり、4とはならない点以外は、一般式(2)中のn2と同様のものである。ただしm223+n223は4以下である。
一般式(2)−3α〜一般式(2)−3γ中、m233は1〜3の整数であり、一般式(2)中のm2と同様のものである。
一般式(2)−3α〜一般式(2)−3γ中、n233は0〜2の整数であり、3及び4とはならない点以外は、一般式(2)中のn2と同様のものである。ただしm233+n233は3以下である。
例えば、化合物(2)において、m2は1又は2であり、n2は0〜4の整数であり且つo2は1又は2であることが好ましく、m2は1又は2であり、n2は0〜3の整数であり、且つo2は1又は2であることがより好ましく、m2は1又は2であり、n2は0〜2の整数であり、且つo2は1又は2であることがさらに好ましく、m2は1であり、n2は0又は1であり、且つo2は1であることが特に好ましい。
化合物(2)の塩は、防カビ性を有する。
化合物(2)の塩としては、例えば、化合物(2)中の水酸基(−OH)がアニオン(−O−)となったもの(本明細書においては、「化合物(2)由来のアニオン」と称することがある)と、カチオンと、で形成された塩が挙げられる。
ただし、化合物(2)の塩は分子全体として電気的に中性、すなわち、化合物(2)一分子中のカチオンの価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
例えば、本発明の防カビ剤は、有効成分として、化合物(2)のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(2)の塩のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(2)及び化合物(2)の塩を、それぞれ1種又は2種以上含んでいてもよい。
化合物(2)及びその塩でにおいのあるものは、香料として使用可能なものが好ましい。このような化合物(2)及びその塩としては、例えば、食品添加物の天然香料に分類されるものが挙げられる。
化合物(2)は、例えば、下記一般式(201)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(201)」と称することがある)と、下記一般式(202)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(202)」と称することがある)と、を反応させ、化合物(2)を得る工程(本明細書においては、「化合物(2)製造工程」と称することがある)を有する製造方法で、製造できる。
化合物(2)製造工程においては、例えば、化合物(201)中の水酸基(−OH)等、使用原料中の目的外の反応が進行する可能性のある基については、あらかじめ保護基で保護しておいてから、反応を行い、反応終了後に脱保護を行うことで、化合物(2)を得てもよい。
化合物(2)は、反応終了後に必要に応じて後処理を行った後、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
化合物(2)の塩は、金属アルコキシドの通常の製造方法を適用することで、製造できる。例えば、化合物(2)のナトリウム塩(ナトリウムアルコキシド)の場合には、単離された状態の化合物(2)、又は上述の化合物(2)の製造方法における、取り出し前の化合物(2)に対して、金属ナトリウムや水素化ナトリウム等を作用させることで、化合物(2)の塩を得る工程を有する製造方法等により、化合物(2)の塩を製造できる。単離された状態の化合物(2)としては、市販品を用いてもよい。
得られた化合物(2)の塩は、化合物(2)の場合と同様の手法で、その構造を確認できる。
防カビ剤における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
例えば、化合物(2)又はその塩は、常温及び常圧下において、固形状及び液状のいずれであってもよく、後述する防カビ樹脂フィルムの種類に応じて、適宜適した性状のものを選択すればよい。そして、化合物(2)又はその塩は、例えば、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。すなわち、前記その他の成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
好ましい前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
なお、溶媒を含有する本発明の防カビ剤は、そのまま、後述する防カビ樹脂フィルムを形成するための樹脂組成物として用いることができる。
ただし、通常は、本発明の防カビ剤において、前記溶媒以外の成分(すなわち、化合物(2)、化合物(2)の塩、及び前記溶媒以外のその他の成分)の合計含有量に対する、前記溶媒以外のその他の成分の含有量の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、2質量%以下、1質量%以下等のいずれかであってもよい。
これらのうち、ペニシリウム属に属する微生物としては、例えば、アオカビ、白カビ等が挙げられる。アスペルギルス属に属する微生物としては、例えば、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)等が挙げられる。クラドスポリウム属に属する微生物としては、例えば、クロカワカビ等が挙げられる。フザリウム属に属する微生物としては、例えば、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)等が挙げられる。アルテルナリア属に属する微生物としては、例えば、アルテルナリア テヌイス(Alternaria tenuis)等が挙げられる。リゾプス属に属する微生物としては、例えば、リゾプス ニグリカンス(Rhizopus nigricans)等が挙げられる。ボトリチス属に属する微生物としては、例えば、ボトリチス シネレア(Botrytis cinerea)等が挙げられる。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
本発明の防カビ樹脂フィルムは、前記化合物(2)又はその塩を有効成分とする防カビ剤と、樹脂と、を含む。
本発明の防カビ樹脂フィルムは、前記防カビ剤を含んでいることにより、優れた防カビ性を有する。
例えば、化合物(2)又はその塩として、揮発性を有するものを用いた場合には、この成分は、防カビ樹脂フィルムの外部へ、気体状となって移行可能である。
後述するような複数層からなる防カビ樹脂フィルムは、例えば、1層(単層)の防カビ樹脂フィルムを複数枚作製し、これらを貼り合わせることで、製造できる。
前記樹脂は、前記防カビ樹脂フィルムにおいて、フィルムの形状を維持するために必要な成分である。前記樹脂は、このような機能を有するものであれば、特に限定されないが、接着性樹脂(本明細書においては「接着剤」と称することがある)であることが好ましい。前記樹脂として、接着性樹脂(接着剤)を用いることで、防カビ樹脂フィルムを、接着性を有するもの(すなわち、接着性防カビ樹脂フィルム)とすることができ、例えば、別途接着剤層を設けることなく、後述する防カビ積層フィルムを構成できる。
例えば、前記樹脂として、接着性を有しない非接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、非接着性樹脂及び接着性樹脂を、それぞれ1種又は2種以上用いてもよい。
前記防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物は、前記防カビ剤及び前記樹脂以外に、その他の成分を含んでいてもよい。
防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物において、前記その他の成分は1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
好ましい前記その他の成分としては、例えば、化合物(2)又はその塩を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤が挙げられる。
すなわち、好ましい前記防カビ樹脂フィルムとしては、例えば、化合物(2)又はその塩を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤をさらに含むものが挙げられる。
前記防カビ樹脂フィルムは、このように、その他の防カビ剤をさらに含むことにより、その他の防カビ剤を含まない場合よりも、防カビ性が顕著に高くなる相乗効果を示す場合がある。
前記その他の防カビ剤は、公知のものであってもよいし、新規のものであってもよい。
すなわち、より好ましい前記防カビ樹脂フィルムとしては、例えば、防カビ剤として、化合物(9)又はその塩をさらに含むものが挙げられる。
m9が2以上(すなわち、2又は3)である場合、複数個(すなわち、2個又は3個)のX9は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、m9が2以上である場合、X9はすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、m9が2である場合、一般式「−O−X9−OH」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、m9が3である場合、一般式「−O−X9−OH」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
n9が2以上(すなわち、2、3、4又は5)である場合、複数個(すなわち、2個、3個、4個又は5個)のR9は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、n9が2以上である場合、R9はすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、n9が2である場合、R9が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、n9が3である場合、R9が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
また、n9が4である場合、R9が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している4個の炭素原子のうち、1個の炭素原子は、残りの3個の炭素原子のいずれとも互いに隣接していないことが好ましい。
例えば、化合物(9)において、m9は1又は2であり且つn9は0〜4の整数であることが好ましく、m9は1又は2であり且つn9は0〜3の整数であることがより好ましく、m9は1又は2であり且つn9は0〜2の整数であることがさらに好ましく、m9は1であり且つn9は0又は1であることが特に好ましい。
ただし、化合物(9)の塩は分子全体として電気的に中性、すなわち、化合物(9)一分子中のカチオンの価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
例えば、前記防カビ樹脂フィルムは、前記その他の防カビ剤として、化合物(9)のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(9)の塩のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(9)及び化合物(9)の塩を、それぞれ1種又は2種以上含んでいてもよい。
化合物(9)及びその塩でにおいのあるものは、香料として使用可能なものが好ましい。このような化合物(9)及びその塩としては、例えば、食品添加物の天然香料に分類されるものが挙げられる。
Lgとしては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アルキルスルホニルオキシ基;フルオロアルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
化合物(9)製造工程においては、例えば、化合物(902)中の水酸基(−OH)等、使用原料中の目的外の反応が進行する可能性のある基については、あらかじめ保護基で保護しておいてから、反応を行い、反応終了後に脱保護を行うことで、化合物(9)を得てもよい。
化合物(901)は、ナトリウムアルコキシドの通常の製造方法を適用することで、製造できる。例えば、原料として対応するフェノール化合物、すなわち、化合物(901)において、式「−O−Na+」で表される基が式「−OH」で表される基に置き換えられた化合物を用いて、金属ナトリウムや水素化ナトリウム等を作用させることで、化合物(901)が得られる。
化合物(902)は、原料として対応するアルコール、すなわち、一般式「HO−X9−OH(X9は上記と同じである。)」で表される化合物や、その一方の水酸基が保護基で保護された化合物を用いて、Lgを導入する方法で製造できる。保護基を用いた場合には、保護基は適したタイミングで除けば(脱保護すれば)よい。ただし、ここに示す化合物(902)の製造方法は一例である。
化合物(9)は、反応終了後に必要に応じて後処理を行った後、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
化合物(9)の塩は、化合物(9)の場合と同様に、取り出して用いてもよいし、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
得られた化合物(9)の塩は、化合物(9)の場合と同様の手法で、その構造を確認できる。
前記防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物における前記その他の成分としては、前記その他の防カビ剤以外にも、例えば、硬化剤、架橋剤等が挙げられる。これらは前記樹脂に対して作用するものである。
樹脂組成物における前記溶媒としては、例えば、本発明の防カビ剤が含有していてもよいものとして先に説明した溶媒と同様のものが挙げられる。
防カビ樹脂フィルムを用いて、例えば、袋状等の包装体を作製する場合には、防カビ樹脂フィルムの厚さは、0.5〜15μmであることが好ましく、1〜12μmであることがより好ましく、1.3〜10μmであることが特に好ましく、例えば、1.3〜7.5μm等であってもよい。
防カビ樹脂フィルムが複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい防カビ樹脂フィルムの厚さとなるようにするとよい。
本発明の防カビ積層フィルムは、上述の本発明の防カビ樹脂フィルムと、第1樹脂層と、第2樹脂層と、を備え、前記防カビ樹脂フィルムが、前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層と、の間に配置され、前記第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以上のものである。
本発明の防カビ積層フィルムは、前記防カビ樹脂フィルムを用いていることで、優れた防カビ性を有し、目的物を収容して保存するための包装体の製造に好適である。
したがって、例えば、第1樹脂層11が防カビ積層フィルム1の一方の最も外側の層となる場合には、第1樹脂層11は保存対象物と接触する層となる。
このように、第1樹脂層11は、防カビ樹脂フィルム12の保存対象物との接触を防止し、これにより、防カビ樹脂フィルム12から保存対象物への防カビ剤の過剰な移行を抑制する。
また、第1樹脂層11の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
第1樹脂層11が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第1樹脂層11の厚さとなるようにするとよい。
第2樹脂層13は、防カビ樹脂フィルム12を保護する機能を有する。
第2樹脂層13の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、化合物(2)又はその塩について、防カビ樹脂フィルム12の内部から第2樹脂層13への移行と、第2樹脂層13を介したその外部(防カビ積層フィルム1の第2樹脂層13側の外部)への移行とが、効果的に抑制される。したがって、防カビ樹脂フィルム12の内部から保存対象物側へ移行する化合物(2)又はその塩の量を、長期間、適切な水準で維持できるため、防カビ積層フィルム1は、より優れた防カビ効果を発現する。また、例えば、防カビ積層フィルム1を用いて作製された袋状の包装体に目的物を収容して、封止した場合には、この包装体の外部への化合物(2)又はその塩の移行が抑制され、目的物の保存時に、化合物(2)又はその塩の使用を全く又はほとんど想起させず、官能上好ましい。
さらに、第2樹脂層13の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、第2樹脂層13を介したその外部(防カビ積層フィルム1の第2樹脂層13側の外部)から内部への、酸素ガスの移行が効果的に抑制される。したがって、品質を劣化させずに目的物を保存できる効果がより高くなる。
また、第2樹脂層13の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
第2樹脂層13が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第2樹脂層13の厚さとなるようにするとよい。
前記その他の層は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
本発明の防カビ積層フィルムが、前記その他の層を備えている場合、その他の層を、第2樹脂層の防カビ樹脂フィルムを備えている側とは反対側に備えていることが好ましい。
例えば、第1樹脂層及び第2樹脂層のいずれか一方の表面(片面)に前記樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、防カビ樹脂フィルムを形成することで、第1樹脂層又は第2樹脂層と、防カビ樹脂フィルムと、が積層されてなる中間積層体を形成する。このときの防カビ樹脂フィルムの形成方法は、先に説明した防カビ樹脂フィルムの製造方法と同じである。
前記中間積層体と第2樹脂層又は第1樹脂層との貼り合わせは、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
まず、剥離処理面を有する剥離フィルムの前記剥離処理面に、前記樹脂組成物を用いて、防カビ樹脂フィルムを形成する。このときの防カビ樹脂フィルムの形成方法は、先に説明した防カビ樹脂フィルムの製造方法と同じである。形成済みの防カビ樹脂フィルムは、剥離フィルムを備えていない側の表面に、さらに同様に剥離フィルムを備えたものとしてもよい。
本発明の防カビ包装体は、上述の本発明の防カビ積層フィルムを用いて得られた防カビ包装体であって、前記第1樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記防カビ樹脂フィルムが前記第2樹脂層よりも前記収容空間側に配置されているものである。
本発明の防カビ包装体は、前記防カビ積層フィルム(防カビ樹脂フィルム)を用いていることで、優れた防カビ性を有し、目的物の保存中に収容空間内において、カビの増殖を顕著に抑制する。
ここに示す防カビ包装体10は、図1に示す防カビ積層フィルム1を用いて形成されたものである。防カビ包装体10は、一対の防カビ積層フィルム1,1の第1樹脂層11,11同士の一部が接着され、形成されている収容空間Sを有しており、防カビ樹脂フィルム12が第2樹脂層13よりも収容空間S側に配置されて、概略構成されている。すなわち、一対の防カビ積層フィルム1,1は、これらの第1樹脂層11,11同士が対向するように配置されている。
防カビ包装体10の収容空間Sには、目的とする保存対象物(図示略)が収容される。
また、防カビ包装体10においては、第1樹脂層11により、収容空間S内の保存対象物と防カビ樹脂フィルム12との接触が防止され、防カビ樹脂フィルム12から保存対象物への防カビ剤の過剰な移行が抑制される。
また、防カビ包装体10を用い、化合物(2)又はその塩の種類を調節することで、保存後の使用時における保存対象物を、化合物(2)又はその塩(防カビ剤)の使用を全く又はほとんど想起させないような、官能上好ましいものとすることもできる。
例えば、図2に示す防カビ包装体10は、一対の同じ種類の防カビ積層フィルム1,1を用いたものであるが、本発明の防カビ包装体は、一対の異なる種類の防カビ積層フィルム用いたものであってもよい。
また、本発明の防カビ包装体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、防カビ積層フィルム以外のその他の構成を備えていてもよい。前記その他の構成は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
第1樹脂層同士の接着は、例えば、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
[実施例1]
以下に示す手順により、図1に示す構成の防カビ積層フィルムを製造した。
(防カビ樹脂フィルムの製造)
主剤(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A620」、固形分50質量%、酢酸エチル50質量%)(6質量部)、硬化剤(三井化学株式会社製「タケネート(登録商標) A10」、固形分75質量%、酢酸エチル25質量%)(1質量部)、及び酢酸エチル(6質量部)を混合して、ポリウレタン系接着剤を調製した。得られたポリウレタン系接着剤において、溶媒(酢酸エチル)の合計含有量は71.2質量%である。
次いで、p−ヒドロキシアセトフェノン(4’−ヒドロキシアセトフェノン、2質量部)を、上記で得られたポリウレタン系接着剤の全量と混合し、溶媒以外の成分の合計含有量に対するp−ヒドロキシアセトフェノンの含有量の割合が35質量%である樹脂組成物を得た。
次いで、PETフィルム(厚さ25μm)の一方の表面に、マルチコーターを用いて、上記で得られた樹脂組成物を塗工し、80℃で乾燥させることで、p−ヒドロキシアセトフェノンの含有量が35質量%である防カビ樹脂フィルム(厚さ4μm)をPETフィルム上に形成した。なお、樹脂組成物の塗工時には、グラビアロールの深さを80μmとした。
さらに、上記で得られた防カビ樹脂フィルムのPETフィルムが設けられている側とは反対側の表面に、LDPEフィルム(厚さ25μm)を貼り合わせることにより、PETフィルム、防カビ樹脂フィルム及びLDPEフィルムがこの順に積層されてなる、透明な防カビ積層フィルムを得た。
[比較例1]
p−ヒドロキシアセトフェノンを用いずに樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を用いて、p−ヒドロキシアセトフェノンの含有量が35質量%である防カビ樹脂フィルム(厚さ4μm)に代えて、p−ヒドロキシアセトフェノンの含有量が0質量%である樹脂フィルム(厚さ4μm)を形成した点以外は、実施例1と同じ方法で、透明な積層フィルムを得た。
[試験例1]
(イチゴに対する防カビ効果の確認)
樹脂組成物の塗工後、48時間が経過して、上述の防カビ樹脂フィルムのエージングが終了後(以下、本明細書においては、この状態を「製造直後」と称する)の、実施例1の防カビ積層フィルムとして、大きさが15cm×15cmのものを2枚用意した。そして、直ちに大気下において、これら防カビ積層フィルムの間に、2個の完熟イチゴを挟んだ状態で、これらフィルムの周辺部同士を重ね合せ、熱ラミネートした。以上により、実施例1の防カビ積層フィルムから作製された透明な袋(包装体)の内部に、上述の2個のイチゴが収容され、密封されたサンプルを作製した。このようなサンプルを合計で24個作製した。
同様に、比較例1の積層フィルムを用いて、24個のサンプルを作製した。
その結果、カビ発生率(%)は、実施例1の防カビ積層フィルムを用いた場合には12%であり、比較例1の積層フィルムを用いた場合には70%であった。
(餅に対する防カビ効果の確認)
袋(包装体)の内部に収容、密封するものとして、2個の完熟イチゴに代えて、30gの1個の餅を用いた点以外は、試験例1の場合と同じ方法でサンプルを作製した。サンプル数は1個とした。
次いで、得られたサンプルを、25℃で静置保存し、この間、密封されている餅を袋越しに目視観察して、餅にカビが発生するまでの日数(カビ発生日数)を確認した。
その結果、カビ発生日数は、実施例1の防カビ積層フィルムを用いた場合には5日であり、比較例1の積層フィルムを用いた場合には3日であった。
(トマトに対する防カビ効果の確認)
袋(包装体)の内部に収容、密封するものとして、2個の完熟イチゴに代えて、1個の完熟トマトを用いた点以外は、試験例1の場合と同じ方法でサンプルを作製した。サンプル数は1個とした。
次いで、得られたサンプルを、25℃で2日間静置保存した後、袋(包装体)からトマトを取り出し、このトマトを目視観察して、カビの発生の有無を確認した。
その結果、実施例1の防カビ積層フィルムを用いた場合には、トマトにカビが全く発生していなかったのに対し、比較例1の積層フィルムを用いた場合には、トマトの「へた」の複数個所にカビが発生していた。
(ショウガに対する防カビ効果の確認)
袋(包装体)の内部に収容、密封するものとして、2個の完熟イチゴに代えて、100gの1個のショウガを用いた点以外は、試験例1の場合と同じ方法でサンプルを作製した。サンプル数は8個とした。なお、ショウガはすべて、刃物による切断で生じた切り口を有するものとした。
その結果、カビ発生率(%)は、実施例1の防カビ積層フィルムを用いた場合には25%であり、比較例1の積層フィルムを用いた場合には100%であった。実施例1の防カビ積層フィルムを用いた場合、比較例1の積層フィルムを用いた場合、のいずれにおいても、カビはおもにショウガの切り口に発生していた。
(培地における防カビ効果の確認)
直径10cmの滅菌済みのシャーレ上に、滅菌培地を作製した。培地としては、ポテトデキストロース寒天培地を用いた。
次いで、培地上の3箇所に、ボトリチス菌を植菌した。
次いで、2個の完熟イチゴに代えて、この植菌済み培地をシャーレごと、袋(包装体)の内部に収容、密封した点以外は、試験例1の場合と同じ方法でサンプルを作製した。サンプル数は1個とした。
次いで、得られたサンプルを、25℃で1日間静置保存した後、袋(包装体)からシャーレを取り出し、培地を目視観察して、カビの発生の有無を確認した。
その結果、実施例1の防カビ積層フィルムを用いた場合には、培地上でのカビの増殖が認められなかったのに対し、比較例1の積層フィルムを用いた場合には、培地上でのカビの増殖が明確に認められた。
10・・・防カビ包装体
11・・・第1樹脂層
12・・・防カビ樹脂フィルム
13・・・第2樹脂層
S・・・防カビ包装体の収容空間
Claims (8)
- 防カビ剤と、樹脂と、を含む、防カビ樹脂フィルムであって、
前記防カビ剤が、下記一般式(2)−1A−0で表される化合物及びその塩、並びに、下記一般式(2)−1A−1で表される化合物及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分とし、
前記防カビ樹脂フィルムが、前記樹脂として、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤及びオレフィン系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、前記防カビ樹脂フィルムが接着性を有する、防カビ樹脂フィルム。
- 前記一般式(2)−1A−0で表される化合物及びその塩、並びに、前記一般式(2)−1A−1で表される化合物及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤をさらに含む、請求項1に記載の防カビ樹脂フィルム。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の防カビ樹脂フィルムと、第1樹脂層と、第2樹脂層と、を備え、
前記防カビ樹脂フィルムが、前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層と、の間に配置され、
前記第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以上である、防カビ積層フィルム。 - 前記第1樹脂層が低密度ポリエチレンを含む、請求項4に記載の防カビ積層フィルム。
- 前記第2樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量が、3000cm3/m2・atm・day以下である、請求項4又は5に記載の防カビ積層フィルム。
- 前記第2樹脂層がポリエステル、ナイロン及びポリプロピレンからなる群より選択される1種又は2種以上を含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の防カビ積層フィルム。
- 請求項4〜7のいずれか一項に記載の防カビ積層フィルムを用いて得られた防カビ包装体であって、
前記第1樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、
前記防カビ樹脂フィルムが前記第2樹脂層よりも前記収容空間側に配置されている、防カビ包装体。
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