JP2021109380A - 多層フィルム及び包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】防カビ性を十分に担保し得る多層フィルムと、前記多層フィルムを用いて得られた包装体の提供。【解決手段】第1樹脂層11と、添加剤を含む第2樹脂層12と、第3樹脂層13と、がこの順に積層されており、25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]が、2.0以上である、多層フィルム1。【選択図】図1

Description

本発明は、多層フィルム及び包装体に関する。
目的物を収容して保存するために、種々の保存用の包装体が用いられている。例えば、保存対象物が食品等の経口摂取されるものである場合には、この対象物を、良好な品質を維持しながら保存できることが求められ、このような目的を達成するための包装体が開示されている(特許文献1参照)。
一方で、包装体を衛生的に製造し、取り扱っても、保存対象物を包装体に収容するときに、この保存対象物などの、包装体の収容部へ接触するものに付着しているカビや菌等が、包装体の収容空間内に取り込まれることがある。保存対象物を衛生的に保存したい場合には、このようなカビや菌等の混入は大きな問題となる。
保存対象物を収容するときに、この保存対象物に付着しているカビや菌等の収容空間内への混入を抑制するためには、例えば、加熱処理、薬品処理、紫外線照射処理等のカビや菌等を死滅させる処理を行った後の保存対象物を、包装体へ収容することが考えられる。しかし、保存対象物が、上述のような経口摂取されるものである場合など、その種類によっては、これらの処理を行うことができない場合もあり、この方法は汎用性があるとはいえない。したがって、保存中の包装体の収容空間内で、問題点を生じない程度にカビや菌等の増殖を抑制することが、より現実的で重要であり、そのためには、例えば、包装体に防カビ性や抗菌性等を付与することが考えられる。
特開平9−252718号公報
しかし、特許文献1に開示されている多層フィルムを用いた袋状等の包装体(本明細書においては、防カビ性が十分に担保されないという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、防カビ性を十分に担保し得る多層フィルムと、前記多層フィルムを用いて得られた包装体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].第1樹脂層と、添加剤を含む第2樹脂層と、第3樹脂層と、がこの順に積層されており、25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]が、1.5以上である、多層フィルム。
[2].前記第3樹脂層が、防曇剤を含む、[1]に記載の多層フィルム。
[3].前記第1樹脂層の軟化温度が、前記第3樹脂層の軟化温度よりも高い、[1]又は[2]に記載の多層フィルム。
[4].前記第1樹脂層が、延伸されている、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[5].前記第1樹脂層が、二軸延伸されている、[4]に記載の多層フィルム。
[6].前記第1樹脂層が、ポリエステルまたはポリオレフィンを含む、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[7].前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである、[6]に記載の多層フィルム。
[8].前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、[6]に記載の多層フィルム。
[9].前記第3樹脂層が、ポリオレフィンを含む、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[10].前記第2樹脂層が、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤、オレフィン系接着剤及びエポキシ系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、前記第2樹脂層が接着性を有する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[11].前記添加剤は、防カビ剤または抗菌剤である、[1]〜[10]のいずれか一項の記載の多層フィルム。
[12].前記防カビ剤が、下記一般式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその塩を有効成分とする、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
Figure 2021109380
(式中、Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり;nは0〜5の整数であり、ただしm+nは6以下であり、nが2以上である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく;R21及びR22は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり、mが2以上である場合、複数個のR21は互いに同一でも異なっていてもよく;nは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、複数個のR22は互いに同一でも異なっていてもよく;oは1〜3の整数であり、ただしm+n+oは6以下である。)
[13].前記一般式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその塩を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤をさらに含む、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[14].前記その他の防カビ剤が、下記一般式(9)で表される化合物又はその塩である、[13]に記載の多層フィルム。
Figure 2021109380
(式中、Xは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり;Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり、mが2以上である場合、複数個のXは互いに同一でも異なっていてもよく;nは0〜5の整数であり、ただしm+nは6以下であり、nが2以上である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。)
[15].前記防曇剤が、非イオン系界面活性剤である、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[16].[1]〜[15]のいずれか一項に記載の多層フィルムを用いて得られた包装体であって、前記第3樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記第2樹脂層が前記第1樹脂層よりも前記収容空間側に配置されている、包装体。
本発明によれば、防カビ性を十分に担保し得る多層フィルムと、前記多層フィルムを用いて得られた包装体を提供することができる。
本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の包装体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
<<多層フィルム>>
本発明の多層フィルムは、第1樹脂層と、添加剤を含む第2樹脂層と、第3樹脂層と、がこの順に積層されており、25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]が、1.5以上である。
本発明の多層フィルムは、防カビ性を十分に担保することができる。
図1は、本発明の多層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
ここに示す多層フィルム1は、第1樹脂層11と、第2樹脂層12と、第3樹脂層13とを備え、第2樹脂層12が、第1樹脂層11と、第3樹脂層13と、の間に配置されて、概略構成されている。すなわち、多層フィルム1は、第1樹脂層11と、第2樹脂層12と、第3樹脂層13と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、第1樹脂層11の露出面が一方の表面となり、第3樹脂層13の露出面が他方の表面となるように構成されている。
多層フィルム1は、25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]は、1.5以上であり、1.6以上50以下であることが好ましく、1.7以上40以下であることがより好ましい。
25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]が上記下限値以上であることにより、第2樹脂層12に含まれる添加剤を外部よりも内容物側に多く放出させることができる。また、25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]が上記上限値以下であることにより、第2樹脂層12に含まれる添加剤を保存対象物側に徐々に放出させることができる。
多層フィルム1においては、第1樹脂層11の軟化温度が、第3樹脂層13の軟化温度よりも高いことが好ましい。
第1樹脂層11の軟化温度を、第3樹脂層13の軟化温度よりも高くすることにより、第3樹脂層13同士を熱溶着させた際に、第1樹脂層11が一緒に溶けてしまうことを防止することができる。
<第1樹脂層>
第1樹脂層11は、多層フィルム1を用いて目的物を保存するときに、第2樹脂層12よりも、この保存対象物側とは反対側に配置される層である。例えば、多層フィルム1を用いて作製されたピロー包装体においては、第2樹脂層12が第1樹脂層11よりも、この包装体の収容空間側に配置される。
第1樹脂層11の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、5000cm/m・atm・day以下であることが好ましく、4500cm/m・atm・day以下であることがより好ましく、4000cm/m・atm・day以下であることが特に好ましい。
第1樹脂層11の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、前記添加剤について、第2樹脂層12の内部から第1樹脂層11への移行と、第1樹脂層11を介したその外部(多層フィルム1の第1樹脂層11側の外部)への移行とが、効果的に抑制される。したがって、第2樹脂層12の内部から保存対象物側へ移行する前記添加剤の量を、長期間、適切な水準で維持できるため、多層フィルム1は、より優れた添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)を発現する。また、例えば、多層フィルム1を用いて作製されたピロー包装体に目的物を収容して、封止した場合には、この包装体の外部への前記添加剤の移行が抑制され、目的物の保存時に、前記添加剤の使用を全く又はほとんど想起させず、官能上好ましい。
さらに、第1樹脂層11の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、第1樹脂層11を介したその外部(多層フィルム1の第1樹脂層11側の外部)から内部への、酸素ガスの移行が効果的に抑制される。したがって、品質を劣化させずに目的物を保存できる効果がより高くなる。
一方、第1樹脂層11の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量の下限値は、特に限定されず、例えば、50cm/m・atm・day、500cm/m・atm・day、及び1000cm/m・atm・dayのいずれかとすることができるが、これらは一例である。
第1樹脂層11の前記酸素ガス透過量は、いずれもJIS K7126Bに準拠して測定された値である。
第1樹脂層11の軟化温度は、60℃以上240℃以下であることが好ましく、80℃以上220℃以下であることがより好ましく、90℃以上210℃以下であることが好ましい。
第1樹脂層11の軟化温度が上記範囲内であることにより、多層フィルム1の耐熱性を向上させることができる。
第1樹脂層11は、延伸されていることが好ましい。第1樹脂層11が延伸されていることにより、伸びにくくすることができ、意匠性を担保することができる。
第1樹脂層11は、二軸延伸されていることがより好ましい第1樹脂層11が二軸延伸されていることにより、より安価な材料を使用することができ、また伸びの異方性を低減させることができる。
第1樹脂層11の構成材料は、上述の酸素ガス透過量の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリビニル等が挙げられる。
また、第1樹脂層11の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
第1樹脂層11の構成材料は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第1樹脂層11は、ポリエステルまたはポリオレフィンを含むことが好ましい。第1樹脂層11がポリエステルまたはポリオレフィンを含むことにより、安価な材料で製造することができ、また低吸湿性を担保することができる。
第1樹脂層11がポリエステルまたはポリオレフィンを含有する場合の、第1樹脂層11のポリエステルまたはポリオレフィンの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
第1樹脂層11に含まれるポリエステルとしては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
第1樹脂層11に含まれるポリオレフィンとしては、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンは、ポリオレフィンの中でも汎用樹脂であるため、低コスト化が可能である。
第1樹脂層11は、上記以外の樹脂や、添加剤等を含んでいてもよい。これらは1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
第1樹脂層11は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第1樹脂層11が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
第1樹脂層11の厚さは、特に限定されないが、2〜100μmであることが好ましく、5〜70μmであることがより好ましく、8〜40μmであることが特に好ましい。第1樹脂層11の厚さが前記下限値以上であることで、第1樹脂層11の強度がより向上するとともに、第1樹脂層11の前記酸素ガス透過量を小さくした場合と同様の効果がより顕著に得られる。また、第1樹脂層11の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
第1樹脂層11が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第1樹脂層11の厚さとなるようにするとよい。
<第2樹脂層>
第2樹脂層12は、添加剤を含む。
第2樹脂層12においては、含まれている添加剤が、第2樹脂層12の内部から外部に徐々に移行することで、添加剤の特性(例えば、防カビ性や抗菌性等)を発現する。
例えば、添加剤として、揮発性を有するものを用いた場合には、この成分は、第2樹脂層12の外部へ、気体状となって移行可能である。
第2樹脂層12は、前記添加剤、樹脂等の、第2樹脂層12を構成するための成分を含有する樹脂組成物を用いて製造できる。より具体的には、前記樹脂組成物を、第2樹脂層12の形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで、第2樹脂層12が得られる。
後述するような複数層からなる第2樹脂層12は、例えば、1層(単層)の第2樹脂層12を複数枚作製し、これらを貼り合わせることで、製造できる。
前記樹脂組成物は、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、マルチコーター等の各種コーターを用いて、塗工できる。
[樹脂]
樹脂は、第2樹脂層12において、フィルムの形状を維持するために必要な成分である。前記樹脂は、このような機能を有するものであれば、特に限定されないが、接着性樹脂(本明細書においては「接着剤」と称することがある)であることが好ましい。前記樹脂として、接着性樹脂(接着剤)を用いることで、第2樹脂層12を、接着性を有するもの(すなわち、接着性第2樹脂層)とすることができ、例えば、別途接着剤層を設けることなく、多層フィルムを構成できる。
好ましい前記接着性樹脂としては、例えば、ポリウレタン等のウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する接着性樹脂);アクリル共重合樹脂等のアクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する接着性樹脂)、チタネート系樹脂(チタン酸エステルを用いて得られた接着性樹脂)、イミン系樹脂(エチレンイミンを用いて得られた接着性樹脂)、スチレン・ブタジエン共重合体等のブタジエン系樹脂(モノマー成分としてブタジエンを用いて得られた接着性樹脂)、ポリ酢酸ビニル等のポリエステル系樹脂(エステル結合を有する接着性樹脂)、イソブテン・無水マレイン酸共重合樹脂等のオレフィン系樹脂(モノマー成分としてオレフィンを用いて得られた接着性樹脂)、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
第2樹脂層12において、前記樹脂は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記樹脂として、接着性を有しない非接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、非接着性樹脂及び接着性樹脂を、それぞれ1種又は2種以上用いてもよい。
第2樹脂層12は、前記樹脂として、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤、オレフィン系接着剤及びエポキシ系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、接着性を有するものが好ましい。
[添加剤]
前記添加剤は、防カビ剤または抗菌剤であることが好ましい。
前記添加剤が防カビ剤または抗菌剤であることにより、第2樹脂層12が優れた防カビ性または抗菌性を有する。
前記防カビ剤は、下記一般式(1)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)」と称することがある)若しくは下記一般式(2)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)」と称することがある)又はその塩を有効成分とすることが好ましい。
Figure 2021109380
(式中、Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり;nは0〜5の整数であり、ただしm+nは6以下であり、nが2以上である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく;R21及びR22は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり、mが2以上である場合、複数個のR21は互いに同一でも異なっていてもよく;nは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、複数個のR22は互いに同一でも異なっていてもよく;oは1〜3の整数であり、ただしm+n+oは6以下である。)
<化合物(1)>
一般式(1)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)」と称することがある)は、防カビ性を有する。
一般式(1)中、Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、このようなアルキル基として、より具体的には、メチル基(−CH)、エチル基(−CHCH)、n−プロピル基(−CHCHCH)、イソプロピル基(−CH(CH)が挙げられる。
一般式(1)中、mは1〜3の整数であり、化合物(1)1分子中のカルボキシ基(−C(=O)−OH)の数を示す。
化合物(1)においては、mの値によらず、カルボキシ基のベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、mが2である場合、カルボキシ基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、mが3である場合、カルボキシ基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
一般式(1)中、nは0〜5の整数であり、化合物(1)1分子中のRの数を示す。ただしm+nは6以下である。
が2以上(すなわち、2、3、4又は5)である場合、複数個(すなわち、2個、3個、4個又は5個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、nが2以上である場合、Rはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
化合物(1)においては、nの値によらず、Rのベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、nが2である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、nが3である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
また、nが4である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している4個の炭素原子のうち、1個の炭素原子は、残りの3個の炭素原子のいずれとも互いに隣接していないことが好ましい。
ベンゼン環骨格におけるRとカルボキシ基との相対的な結合位置の関係は、特に限定されず、例えば、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれであってもよい。
が1である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−1Aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−1A」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じであり、n11は0〜5の整数である。)
一般式(1)−1A中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−1A中、n11は0〜5の整数であり、一般式(1)中のnと同様のものである。
が2である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−2Aで表される化合物、下記一般式(1)−2Bで表される化合物、及び下記一般式(1)−2Cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−2A」、「化合物(1)−2B」、「化合物(1)−2C」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じであり、n12は0〜4の整数である。)
一般式(1)−2A〜一般式(1)−2C中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−2A〜一般式(1)−2C中、n12は0〜4の整数であり、5とはならない点以外は、一般式(1)中のnと同様のものである。
が3である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−3Aで表される化合物、下記一般式(1)−3Bで表される化合物、及び下記一般式(1)−3Cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−3A」、「化合物(1)−3B」、「化合物(1)−3C」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じであり、n13は0〜3の整数である。)
一般式(1)−3A〜一般式(1)−3C中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−3A〜一般式(1)−3C中、n13は0〜3の整数であり、4及び5とはならない点以外は、一般式(1)中のnと同様のものである。
化合物(1)において、mは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。このような化合物(1)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
が0である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−0で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−0」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、m10は1〜3の整数である。)
一般式(1)−0中、m10は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
が1である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−1aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−1a」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じであり、m11は1〜3の整数である。)
一般式(1)−1a中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−1a中、m11は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
が2である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−2aで表される化合物、下記一般式(1)−2bで表される化合物、及び下記一般式(1)−2cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−2a」、「化合物(1)−2b」、「化合物(1)−2c」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じであり、m12は1〜3の整数である。)
一般式(1)−2a〜一般式(1)−2c中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−2A〜一般式(1)−2C中、m12は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
が3である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−3aで表される化合物、下記一般式(1)−3bで表される化合物、及び下記一般式(1)−3cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−3a」、「化合物(1)−3b」、「化合物(1)−3c」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じであり、m13は1〜3の整数である。)
一般式(1)−3a〜一般式(1)−3c中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−3A〜一般式(1)−3C中、m13は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
が4である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−4aで表される化合物、下記一般式(1)−4bで表される化合物、及び下記一般式(1)−4cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−4a」、「化合物(1)−4b」、「化合物(1)−4c」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じであり、m14は1又は2である。)
一般式(1)−4a〜一般式(1)−4c中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−4a〜一般式(1)−4c中、m14は1又は2であり、3とはならない点以外は、一般式(1)中のmと同様のものである。
が5である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−5aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−5a」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じである。)
一般式(1)−5a中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
一般式(1)−5aで表される化合物は、一般式(1)中のmが1である場合の化合物(1)に相当する。
化合物(1)において、nは0〜4の整数であることが好ましく、0〜3の整数であることがより好ましく、0〜2の整数であることがさらに好ましく、0又は1であることが特に好ましい。このような化合物(1)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
化合物(1)において、m及びnはともに、上述の好ましいいずれかの数値であることが好ましい。
例えば、化合物(1)において、mは1又は2であり且つnは0〜4の整数であることが好ましく、mは1又は2であり且つnは0〜3の整数であることがより好ましく、mは1又は2であり且つnは0〜2の整数であることがさらに好ましく、mは1であり且つnは0又は1であることが特に好ましい。
化合物(1)のうち、例えば、下記式(1)−1A−0で表される化合物(すなわち、安息香酸、本明細書においては「化合物(1)−1A−0」と称することもある)、及び下記一般式(1)−1A−1で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−1A−1」と称することがある)は、特に優れた防カビ性を有する。
Figure 2021109380
(式中、Rは上記と同じである。)
<化合物(1)の塩>
化合物(1)の塩は、防カビ性を有する。
化合物(1)の塩としては、例えば、化合物(1)中のカルボキシ基(−C(=O)−OH)がアニオン(カルボキシラートアニオン、−C(=O)−O)となったもの(本明細書においては、「化合物(1)由来のアニオン」と称することがある)と、カチオンと、で形成された塩が挙げられる。
化合物(1)の塩を形成している前記カチオンの価数は特に限定されず、1(1価)でもよいし2(2価)以上でもよい。通常、前記カチオンがp価(pは1以上の整数である)である場合、化合物(1)の塩を形成している前記カチオンの個数は1以上であり、化合物(1)由来のアニオンの個数はp以下である。
上記のように、一分子の化合物(1)の塩を構成するカチオンは、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これらカチオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、化合物(1)の塩は分子全体として電気的に中性、すなわち、化合物(1)一分子中のカチオンの価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
化合物(1)由来のアニオンと共に化合物(1)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されず、無機カチオン及び有機カチオンのいずれであってもよい。
前記カチオンのうち、無機カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、バリウムイオン(Ba2+)等のアルカリ土類金属のイオン;アルミニウムイオン(Al3+)、亜鉛イオン(Zn2+)、スズイオン(Sn2+、Sn4+)等の典型金属のイオン;銅イオン(Cu、Cu2+)、鉄イオン(Fe2+、Fe3+)、マンガンイオン、ニッケルイオン等の遷移金属のイオン;アンモニウムイオン(NH )等の非金属のイオン等が挙げられる。
前記カチオンのうち、有機カチオンとしては、例えば、アミン化合物由来のカチオン、第4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
前記アミン化合物由来のカチオンとしては、例えば、第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンがプロトン化されたカチオンが挙げられる。
前記第4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、1個の窒素原子に4個の一価の炭化水素基が結合したカチオンが挙げられる。
前記カチオンは、下記一般式(11)で表されるカチオンであることが好ましい。
Figure 2021109380
(式中、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、複数個のZは互いに同一でも異なっていてもよく、2個以上のZがアルキル基である場合、これらアルキル基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
一般式(11)中、Zは、水素原子、アルキル基又はアリール基である。
一般式(11)中、複数個(すなわち4個)のZは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個のZはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
における前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
における直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
における直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、例えば、1〜8、1〜5及び1〜3のいずれかであってもよいが、これら一例である。
における環状の前記アルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、このようなアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
における環状の前記アルキル基の炭素数は、例えば、3〜8及び3〜6のいずれかであってもよいが、これら一例である。
2個以上(すなわち、2個、3個又は4個)のZが前記アルキル基である場合、これら2個以上のアルキル基は相互に結合して、これらアルキル基が結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。この場合の2個以上のアルキル基の互いの結合位置は特に限定されず、形成される前記環は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
における前記アリール基は、炭素数が6〜20であることが好ましく、このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基や、Zにおける前記アルキル基で置換されたものも挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6〜20であることが好ましい。
化合物(1)の塩のうち、例えば、化合物(1)−1A−0の塩(すなわち安息香酸塩)、及び化合物(1)−1A−1の塩は、特に優れた防カビ性を有する。
前記防カビ剤において、有効成分は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記防カビ剤は、有効成分として、化合物(1)のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(1)の塩のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(1)及び化合物(1)の塩を、それぞれ1種又は2種以上含んでいてもよい。
化合物(1)及びその塩は、食品添加物として使用可能なものが好ましい。ここで「食品添加物」とは、日本国厚生労働省が平成25年3月12日現在、その使用を認めているものを意味する。
化合物(1)及びその塩は、揮発性を有していてもよい。化合物(1)及びその塩で揮発性を有するものは、常温で気体となることで、後述する包装体の収容空間内において継続的に作用するのに有利であり、包装体において、優れた防カビ効果をより長時間維持できる。
化合物(1)及びその塩の分子量は、揮発し易いという点においては、300以下であることが好ましく、例えば、250以下、200以下及び150以下等のいずれかであってもよいが、これらは一例である。なお、化合物(1)及びその塩の分子量の下限値は、特に限定されない。
化合物(1)及びその塩は、無臭のもの又はにおいの弱いものが好ましい。このような化合物(1)及びその塩は、保存対象物に付着したとしても、保存対象物の使用時に、その存在を全く又はほとんど想起させないため、官能上好ましい。
化合物(1)及びその塩でにおいのあるものは、香料として使用可能なものが好ましい。このような化合物(1)及びその塩としては、例えば、食品添加物の天然香料に分類されるものが挙げられる。
化合物(1)及びその塩のうち、安息香酸及び安息香酸ナトリウム以外の化合物が、防カビ性を有することは、従来知られていない。
化合物(1)及びその塩としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法によって製造したものを用いてもよい。
<化合物(1)の製造方法>
化合物(1)は、例えば、下記一般式(101)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(101)」と称することがある)を酸化して、化合物(1)を得る工程(本明細書においては、「化合物(1)製造工程」と称することがある)を有する製造方法で、製造できる。
Figure 2021109380
(式中、R、m及びnは、上記と同じである。)
化合物(1)製造工程での酸化反応は、公知の方法で行うことができ、反応条件は、使用原料の種類に応じて適宜選択すればよい。
化合物(1)製造工程においては、化合物(101)の酸化反応の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、目的物である化合物(1)を取り出すことができる。すなわち、反応終了後、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(1)を取り出すことができる。また、取り出した化合物(1)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
化合物(101)の酸化反応時には、例えば、R等の目的外の部位が酸化されることにより、副生成物が生じ得る。しかし、このような副生成物は、上述の後処理又は化合物(1)の取り出し時において、化合物(1)と分離して取り除くことが可能である。
化合物(1)は、反応終了後に必要に応じて後処理を行った後、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
得られた化合物(1)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV−VIS吸収スペクトル)等、公知の手法で、その構造を確認できる。
<化合物(1)の塩の製造方法>
化合物(1)の塩は、化合物(1)に対して、カルボン酸をカルボン酸塩に変換する公知の方法を適用することで製造できる。
例えば、単離された状態の化合物(1)、又は上述の化合物(1)の製造方法における、取り出し前の化合物(1)に対して、塩基を作用させて反応(中和反応)を行うことにより、化合物(1)の塩を得る工程を有する製造方法等により、化合物(1)の塩を製造できる。単離された状態の化合物(1)としては、市販品を用いてもよい。
前記塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム等の、化合物(1)の塩を形成するカチオンとなる金属の水酸化物;前記金属の炭酸塩;第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン等のアミン化合物;アンモニア;テトラn−ブチルアンモニウムフルオライド等のハロゲン化第4級アンモニウム等が挙げられる。
また、化合物(1)の塩は、目的外の化合物(1)の塩を、目的とする化合物(1)の塩となるように、塩交換することでも製造できる。
化合物(1)の塩は、化合物(1)の場合と同様に、取り出して用いてもよいし、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
得られた化合物(1)の塩は、化合物(1)の場合と同様の手法で、その構造を確認できる。
前記防カビ剤は、化合物(1)又はその塩以外に、その他の成分を含有していてもよい。
防カビ剤における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
例えば、化合物(1)又はその塩は、常温及び常圧下において、固形状及び液状のいずれであってもよく、後述する防カビ樹脂フィルムの種類に応じて、適宜適した性状のものを選択すればよい。そして、化合物(1)又はその塩は、例えば、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。すなわち、前記その他の成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
前記溶媒は、化合物(1)又はその塩の種類に応じて適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。
好ましい前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル(カルボン酸エステル);メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
前記防カビ剤において、前記溶媒は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、2種以上の溶媒を併用する場合、有機溶媒のみを2種以上併用して、有機溶媒のみの混合溶媒を用いてもよいし、1種又は2種以上の有機溶媒と水とを併用して、水性混合溶媒を用いてもよい。
前記防カビ剤が前記溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、10〜90質量%とすることができるが、これは一例に過ぎない。
なお、溶媒を含有する前記防カビ剤は、そのまま、後述する防カビ樹脂フィルムを形成するための樹脂組成物として用いることができる。
前記防カビ剤が前記溶媒以外のその他の成分を含有する場合、前記その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、その他の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
ただし、通常は、前記防カビ剤において、前記溶媒以外の成分(すなわち、化合物(1)、化合物(1)の塩、及び前記溶媒以外のその他の成分)の合計含有量に対する、前記溶媒以外のその他の成分の含有量の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、2質量%以下、1質量%以下等のいずれかであってもよい。
前記防カビ剤の使用によって、増殖抑制効果(防カビ効果)が認められる微生物(カビ)は、一概に特定範囲のものに限定されるものではないが、防カビ効果が高いものとしては、ペニシリウム(Penicillium)属に属する微生物、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物、クラドスポリウム(Cladosporium)属に属する微生物、フザリウム(Fusarium)属に属する微生物、アルテルナリア(Alternaria)属に属する微生物、リゾプス(Rhizopus)属に属する微生物、ボトリチス(Botrytis)属に属する微生物等が挙げられる。
これらのうち、ペニシリウム属に属する微生物としては、例えば、アオカビ、白カビ等が挙げられる。アスペルギルス属に属する微生物としては、例えば、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)等が挙げられる。クラドスポリウム属に属する微生物としては、例えば、クロカワカビ等が挙げられる。フザリウム属に属する微生物としては、例えば、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)等が挙げられる。アルテルナリア属に属する微生物としては、例えば、アルテルナリア テヌイス(Alternaria tenuis)等が挙げられる。リゾプス属に属する微生物としては、例えば、リゾプス ニグリカンス(Rhizopus nigricans)等が挙げられる。ボトリチス属に属する微生物としては、例えば、ボトリチス シネレア(Botrytis cinerea)等が挙げられる。
前記防カビ剤のうち、2種以上の成分を含有するものは、これらの成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
配合時の温度、及び配合時間は、各成分が劣化しない限り特に限定されない。配合時の温度は、例えば、5〜50℃とすることができ、配合時間は、例えば、5〜60分とすることができるが、これらは一例である。
<化合物(2)>
一般式(2)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)」と称することがある)は、防カビ性を有する。
一般式(2)中、R21及びR22は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。
21及びR22における前記アルキル基として、より具体的には、メチル基(−CH)、エチル基(−CHCH)、n−プロピル基(−CHCHCH)、イソプロピル基(−CH(CH)が挙げられる。
一般式(2)中、mは1〜3の整数であり、化合物(2)1分子中の一般式「−C(=O)−R21(式中、R21は上記と同じである。)」で表される基の数を示す。
が2以上(すなわち、2又は3)である場合、複数個(すなわち、2個又は3個)のR21は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、mが2以上である場合、R21はすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
化合物(2)においては、mの値によらず、一般式「−C(=O)−R21」で表される基のベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、mが2である場合、一般式「−C(=O)−R21」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、mが3である場合、一般式「−C(=O)−R21」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
一般式(2)中、nは0〜4の整数であり、化合物(2)1分子中のR22の数を示す。
が2以上(すなわち、2、3又は4)である場合、複数個(すなわち、2個、3個又は4個)のR22は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、nが2以上である場合、R22はすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
化合物(2)においては、nの値によらず、R22のベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、nが2である場合、R22が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、nが3である場合、R22が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
一般式(2)中、oは1〜3の整数であり、化合物(2)1分子中の水酸基(−OH)の数を示す。ただしm+n+oは6以下である。
ベンゼン環骨格における、一般式「−C(=O)−R21」で表される基と、R22と、水酸基と、の相対的な結合位置の関係は、特に限定されない。例えば、一般式「−C(=O)−R21」で表される基と、R22と、水酸基と、から選択される2種の基の、相対的な結合位置の関係は、例えば、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれであってもよい。ただし、ベンゼン環骨格における、一般式「−C(=O)−R21」で表される基と、水酸基と、の相対的な結合位置の関係は、パラ位であることが好ましい。
が1である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−1Aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)−1A」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、n211は0〜5の整数であり、o211は1〜3の整数であり、ただしn211+o211は5以下である。)
一般式(2)−1A中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−1A中、n211は0〜5の整数であり、一般式(2)中のnと同様のものである。
一般式(2)−1A中、o211は1〜3の整数であり、一般式(2)中のoと同様のものである。ただしn211+o211は5以下である。
が2である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−2Aで表される化合物、下記一般式(2)−2Bで表される化合物、及び下記一般式(2)−2Cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(2)−2A」、「化合物(2)−2B」、「化合物(2)−2C」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、n221は0〜4の整数であり、o221は1〜3の整数であり、ただしn221+o221は4以下である。)
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、n221は0〜4の整数であり、5とはならない点以外は、一般式(2)中のnと同様のものである。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、o221は1〜3の整数であり、一般式(2)中のoと同様のものである。ただしn221+o221は4以下である。
が3である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−3Aで表される化合物、下記一般式(2)−3Bで表される化合物、及び下記一般式(2)−3Cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(2)−3A」、「化合物(2)−3B」、「化合物(2)−3C」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、n231は0〜3の整数であり、o231は1〜3の整数であり、ただしn231+o231は3以下である。)
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、n231は0〜3の整数であり、4及び5とはならない点以外は、一般式(2)中のnと同様のものである。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、o231は1〜3の整数であり、一般式(2)中のoと同様のものである。ただしn231+o231は3以下である。
化合物(2)において、mは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。このような化合物(2)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
が0である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−0で表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)−0」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21は上記と同じであり、m202は1〜3の整数であり、o202は1〜3の整数である。)
一般式(2)−0中、R21は、一般式(2)中のR21と同じである。
一般式(2)−0中、m202は1〜3の整数であり、一般式(2)中のmと同様のものである。
一般式(2)−0中、o202は1〜3の整数であり、一般式(2)中のoと同様のものである。
が1である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−1aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)−1a」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、m212は1〜3の整数であり、o212は1〜3の整数であり、ただしm212+o212は5以下である。)
一般式(2)−1a中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−1a中、m212は1〜3の整数であり、一般式(2)中のmと同様のものである。
一般式(2)−1a中、o212は1〜3の整数であり、一般式(2)中のoと同様のものである。ただしm212+o212は5以下である。
が2である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−2aで表される化合物、下記一般式(2)−2bで表される化合物、及び下記一般式(2)−2cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(2)−2a」、「化合物(2)−2b」、「化合物(2)−2c」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、m222は1〜3の整数であり、o222は1〜3の整数であり、ただしm222+o222は4以下である。)
一般式(2)−2a〜一般式(2)−2c中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、m222は1〜3の整数であり、一般式(2)中のmと同様のものである。
一般式(2)−2A〜一般式(2)−2C中、o222は1〜3の整数であり、一般式(2)中のoと同様のものである。ただしm222+o222は4以下である。
が3である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−3aで表される化合物、下記一般式(2)−3bで表される化合物、及び下記一般式(2)−3cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(2)−3a」、「化合物(2)−3b」、「化合物(2)−3c」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、m232は1又は2であり、o232は1又は2であり、ただしm232+o232は3以下である。)
一般式(2)−3a〜一般式(2)−3c中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、m232は1又は2であり、3とはならない点以外は、一般式(2)中のmと同様のものである。
一般式(2)−3A〜一般式(2)−3C中、o232は1又は2であり、3とはならない点以外は、一般式(2)中のoと同様のものである。ただしm232+o232は3以下である。
が4である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−4aで表される化合物、下記一般式(2)−4bで表される化合物、及び下記一般式(2)−4cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(2)−4a」、「化合物(2)−4b」、「化合物(2)−4c」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じである。)
一般式(2)−4a〜一般式(2)−4c中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
化合物(2)において、nは0〜3の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが特に好ましい。このような化合物(2)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
が1である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−1αで表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)−1α」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、m213は1〜3の整数であり、n213は0〜4の整数であり、ただしm213+n213は5以下である。)
一般式(2)−1α中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−1α中、m213は1〜3の整数であり、一般式(2)中のmと同様のものである。
一般式(2)−1α中、n213は0〜4の整数であり、一般式(2)中のnと同様のものである。ただしm213+n213は5以下である。
が2である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−2αで表される化合物、下記一般式(2)−2βで表される化合物、及び下記一般式(2)−2γで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(2)−2α」、「化合物(2)−2β」、「化合物(2)−2γ」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、m223は1〜3の整数であり、n223は0〜3の整数であり、ただしm223+n223は4以下である。)
一般式(2)−2α〜一般式(2)−2γ中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−2α〜一般式(2)−2γ中、m223は1〜3の整数であり、一般式(2)中のoと同様のものである。
一般式(2)−2α〜一般式(2)−2γ中、n223は0〜3の整数であり、4とはならない点以外は、一般式(2)中のnと同様のものである。ただしm223+n223は4以下である。
が3である場合の化合物(2)としては、下記一般式(2)−3αで表される化合物、下記一般式(2)−3βで表される化合物、及び下記一般式(2)−3γで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(2)−3α」、「化合物(2)−3β」、「化合物(2)−3γ」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じであり、m233は1〜3の整数であり、n233は0〜2の整数であり、ただしm233+n233は3以下である。)
一般式(2)−3α〜一般式(2)−3γ中、R21及びR22は、一般式(2)中のR21及びR22と同じである。
一般式(2)−3α〜一般式(2)−3γ中、m233は1〜3の整数であり、一般式(2)中のmと同様のものである。
一般式(2)−3α〜一般式(2)−3γ中、n233は0〜2の整数であり、3及び4とはならない点以外は、一般式(2)中のnと同様のものである。ただしm233+n233は3以下である。
化合物(2)において、oは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。このような化合物(2)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
化合物(2)において、m、n及びoはいずれも、上述の好ましいいずれかの数値であることが好ましい。
例えば、化合物(2)において、mは1又は2であり、nは0〜4の整数であり且つoは1又は2であることが好ましく、mは1又は2であり、nは0〜3の整数であり、且つoは1又は2であることがより好ましく、mは1又は2であり、nは0〜2の整数であり、且つoは1又は2であることがさらに好ましく、mは1であり、nは0又は1であり、且つoは1であることが特に好ましい。
化合物(2)で特に好ましいものとしては、例えば、下記一般式(2)−1A−0で表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)−1A−0」と称することがある)、及び下記一般式(2)−1A−1で表される化合物(本明細書においては、「化合物(2)−1A−1」と称することがある)が挙げられ、化合物(2)−1A−0が最も好ましい。
Figure 2021109380
(式中、R21及びR22は上記と同じである。)
<化合物(2)の塩>
化合物(2)の塩は、防カビ性を有する。
化合物(2)の塩としては、例えば、化合物(2)中の水酸基(−OH)がアニオン(−O)となったもの(本明細書においては、「化合物(2)由来のアニオン」と称することがある)と、カチオンと、で形成された塩が挙げられる。
化合物(2)の塩を形成している前記カチオンの価数は特に限定されず、1(1価)でもよいし2(2価)以上でもよい。通常、前記カチオンがp価(pは1以上の整数である)である場合、化合物(2)の塩を形成している前記カチオンの個数は1以上であり、化合物(2)由来のアニオンの個数はp以下である。
上記のように、一分子の化合物(2)の塩を構成するカチオンは、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これらカチオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、化合物(2)の塩は分子全体として電気的に中性、すなわち、化合物(2)一分子中のカチオンの価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
化合物(2)由来のアニオンと共に化合物(2)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されず、無機カチオン及び有機カチオンのいずれであってもよい。
前記カチオンのうち、無機カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、バリウムイオン(Ba2+)等のアルカリ土類金属のイオン;アルミニウムイオン(Al3+)、亜鉛イオン(Zn2+)、スズイオン(Sn2+、Sn4+)等の典型金属のイオン;銅イオン(Cu、Cu2+)、鉄イオン(Fe2+、Fe3+)、マンガンイオン、ニッケルイオン等の遷移金属のイオン;アンモニウムイオン(NH )等の非金属のイオン等が挙げられる。
化合物(2)の塩のうち、例えば、化合物(2)−1A−0の塩、及び化合物(2)−1A−1の塩は、特に優れた防カビ性を有する。
前記防カビ剤において、有効成分は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記防カビ剤は、有効成分として、化合物(2)のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(2)の塩のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(2)及び化合物(2)の塩を、それぞれ1種又は2種以上含んでいてもよい。
化合物(2)及びその塩は、食品添加物として使用可能なものが好ましい。ここで「食品添加物」とは、日本国厚生労働省が平成25年3月12日現在、その使用を認めているものを意味する。
化合物(2)及びその塩は、揮発性を有していてもよい。化合物(2)及びその塩で揮発性を有するものは、常温で気体となることで、後述する包装体の収容空間内において継続的に作用するのに有利であり、包装体において、優れた防カビ効果をより長時間維持できる。
化合物(2)及びその塩の分子量は、揮発し易いという点においては、300以下であることが好ましく、例えば、250以下、200以下及び150以下等のいずれかであってもよいが、これらは一例である。なお、化合物(2)及びその塩の分子量の下限値は、特に限定されない。
化合物(2)及びその塩は、無臭のもの又はにおいの弱いものが好ましい。このような化合物(2)及びその塩は、保存対象物に付着したとしても、保存対象物の使用時に、その存在を全く又はほとんど想起させないため、官能上好ましい。
化合物(2)及びその塩でにおいのあるものは、香料として使用可能なものが好ましい。このような化合物(2)及びその塩としては、例えば、食品添加物の天然香料に分類されるものが挙げられる。
化合物(2)及びその塩としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法によって製造したものを用いてもよい。
<化合物(2)の製造方法>
化合物(2)は、例えば、下記一般式(201)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(201)」と称することがある)と、下記一般式(202)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(202)」と称することがある)と、を反応させ、化合物(2)を得る工程(本明細書においては、「化合物(2)製造工程」と称することがある)を有する製造方法で、製造できる。
Figure 2021109380
(式中、R21、R22、m、n及びoは、上記と同じである。)
化合物(2)製造工程での反応は、公知の方法で行うことができ、反応条件は、使用原料の種類に応じて適宜選択すればよい。
化合物(2)製造工程での反応は、塩化アルミニウム(AlCl)等のルイス酸を触媒量以上の量だけ用いて行うことが好ましい。
化合物(2)製造工程においては、例えば、化合物(201)中の水酸基(−OH)等、使用原料中の目的外の反応が進行する可能性のある基については、あらかじめ保護基で保護しておいてから、反応を行い、反応終了後に脱保護を行うことで、化合物(2)を得てもよい。
化合物(2)製造工程においては、化合物(201)及び化合物(202)の反応の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、目的物である化合物(2)を取り出すことができる。すなわち、反応終了後、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(2)を取り出すことができる。また、取り出した化合物(2)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
化合物(2)は、反応終了後に必要に応じて後処理を行った後、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
なお、上述の製造方法は、化合物(2)の製造方法の一例に過ぎない。そして、化合物(2)の種類によっては、他の製造方法も適用できる。例えば、R22がメチル基である化合物(2)を製造する場合には、化合物(202)に代えて無水酢酸((CHCO)O)を用いて反応を行ってもよい。
得られた化合物(2)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV−VIS吸収スペクトル)等、公知の手法で、その構造を確認できる。
<化合物(2)の塩の製造方法>
化合物(2)の塩は、金属アルコキシドの通常の製造方法を適用することで、製造できる。例えば、化合物(2)のナトリウム塩(ナトリウムアルコキシド)の場合には、単離された状態の化合物(2)、又は上述の化合物(2)の製造方法における、取り出し前の化合物(2)に対して、金属ナトリウムや水素化ナトリウム等を作用させることで、化合物(2)の塩を得る工程を有する製造方法等により、化合物(2)の塩を製造できる。単離された状態の化合物(2)としては、市販品を用いてもよい。
化合物(2)の塩は、化合物(2)の場合と同様に、取り出して用いてもよいし、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
得られた化合物(2)の塩は、化合物(2)の場合と同様の手法で、その構造を確認できる。
前記防カビ剤は、化合物(2)又はその塩以外に、その他の成分を含有していてもよい。
防カビ剤における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
例えば、化合物(2)又はその塩は、常温及び常圧下において、固形状及び液状のいずれであってもよく、後述する防カビ樹脂フィルムの種類に応じて、適宜適した性状のものを選択すればよい。そして、化合物(2)又はその塩は、例えば、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。すなわち、前記その他の成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
前記溶媒は、化合物(2)又はその塩の種類に応じて適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。
好ましい前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル(カルボン酸エステル);メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
前記防カビ剤において、前記溶媒は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、2種以上の溶媒を併用する場合、有機溶媒のみを2種以上併用して、有機溶媒のみの混合溶媒を用いてもよいし、1種又は2種以上の有機溶媒と水とを併用して、水性混合溶媒を用いてもよい。
前記防カビ剤が前記溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、10〜90質量%とすることができるが、これは一例に過ぎない。
なお、溶媒を含有する前記防カビ剤は、そのまま、後述する防カビ樹脂フィルムを形成するための樹脂組成物として用いることができる。
前記防カビ剤が前記溶媒以外のその他の成分を含有する場合、前記その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、その他の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
ただし、通常は、前記防カビ剤において、前記溶媒以外の成分(すなわち、化合物(2)、化合物(2)の塩、及び前記溶媒以外のその他の成分)の合計含有量に対する、前記溶媒以外のその他の成分の含有量の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、2質量%以下、1質量%以下等のいずれかであってもよい。
前記防カビ剤の使用によって、増殖抑制効果(防カビ効果)が認められる微生物(カビ)は、一概に特定範囲のものに限定されるものではないが、防カビ効果が高いものとしては、ペニシリウム(Penicillium)属に属する微生物、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物、クラドスポリウム(Cladosporium)属に属する微生物、フザリウム(Fusarium)属に属する微生物、アルテルナリア(Alternaria)属に属する微生物、リゾプス(Rhizopus)属に属する微生物、ボトリチス(Botrytis)属に属する微生物等が挙げられる。
これらのうち、ペニシリウム属に属する微生物としては、例えば、アオカビ、白カビ等が挙げられる。アスペルギルス属に属する微生物としては、例えば、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)等が挙げられる。クラドスポリウム属に属する微生物としては、例えば、クロカワカビ等が挙げられる。フザリウム属に属する微生物としては、例えば、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)等が挙げられる。アルテルナリア属に属する微生物としては、例えば、アルテルナリア テヌイス(Alternaria tenuis)等が挙げられる。リゾプス属に属する微生物としては、例えば、リゾプス ニグリカンス(Rhizopus nigricans)等が挙げられる。ボトリチス属に属する微生物としては、例えば、ボトリチス シネレア(Botrytis cinerea)等が挙げられる。
前記防カビ剤のうち、2種以上の成分を含有するものは、これらの成分を配合することで得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
配合時の温度、及び配合時間は、各成分が劣化しない限り特に限定されない。配合時の温度は、例えば、5〜50℃とすることができ、配合時間は、例えば、5〜60分とすることができるが、これらは一例である。
<その他の防カビ剤>
前記防カビ剤としては、例えば、化合物(1)若しくは(2)又はその塩を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤も挙げられる。
すなわち、好ましい第2樹脂層12としては、例えば、化合物(1)若しくは(2)又はその塩を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤をさらに含むものが挙げられる。
第2樹脂層12は、このように、その他の防カビ剤をさらに含むことにより、その他の防カビ剤を含まない場合よりも、防カビ性が顕著に高くなる相乗効果を示す場合がある。
前記その他の防カビ剤は、特に限定されず、例えば、併用する化合物(1)若しくは(2)又はその塩の種類等に応じて、適宜選択できる。
前記その他の防カビ剤は、公知のものであってもよいし、新規のものであってもよい。
<化合物(9)>
なかでも、好ましい前記その他の防カビ剤としては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(9)」と称することがある)又はその塩が挙げられる。
すなわち、より好ましい第2樹脂層12としては、例えば、防カビ剤として、化合物(9)又はその塩をさらに含むものが挙げられる。
Figure 2021109380
(式中、Xは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり;Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり、mが2以上である場合、複数個のXは互いに同一でも異なっていてもよく;nは0〜5の整数であり、ただしm+nは6以下であり、nが2以上である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。)
一般式(9)中、Xは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、このようなアルキレン基として、より具体的には、メチレン基(−CH−)、エチレン基(−CHCH−)、プロピレン基(−CH(CH)CH−、メチルエチレン基)、トリメチレン基(−CHCHCH−)が挙げられる。
一般式(9)中、Rは、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、一般式(2)中のR21と同様のものである。
一般式(9)中、mは1〜3の整数であり、化合物(9)1分子中の一般式「−O−X−OH(式中、Xは上記と同じである。)」で表される基の数を示す。
が2以上(すなわち、2又は3)である場合、複数個(すなわち、2個又は3個)のXは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、mが2以上である場合、Xはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
の値によらず、一般式「−O−X−OH」で表される基の、ベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、mが2である場合、一般式「−O−X−OH」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、mが3である場合、一般式「−O−X−OH」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
化合物(9)において、mは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。このような化合物(9)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
一般式(9)中、nは0〜5の整数であり、化合物(9)1分子中のRの数を示す。ただしm+nは6以下である。
が2以上(すなわち、2、3、4又は5)である場合、複数個(すなわち、2個、3個、4個又は5個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、nが2以上である場合、Rはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
の値によらず、Rのベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、nが2である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、nが3である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
また、nが4である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している4個の炭素原子のうち、1個の炭素原子は、残りの3個の炭素原子のいずれとも互いに隣接していないことが好ましい。
ベンゼン環骨格におけるRと一般式「−O−X−OH」で表される基との相対的な結合位置の関係は、特に限定されず、例えば、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれであってもよい。
化合物(9)において、nは0〜4の整数であることが好ましく、0〜3の整数であることがより好ましく、0〜2の整数であることがさらに好ましく、0又は1であることが特に好ましい。このような化合物(9)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
化合物(9)において、m及びnはともに、上述の好ましいいずれかの数値であることが好ましい。
例えば、化合物(9)において、mは1又は2であり且つnは0〜4の整数であることが好ましく、mは1又は2であり且つnは0〜3の整数であることがより好ましく、mは1又は2であり且つnは0〜2の整数であることがさらに好ましく、mは1であり且つnは0又は1であることが特に好ましい。
化合物(9)の塩としては、例えば、化合物(9)中の一般式「−O−X−OH」で表される基がアニオン(すなわち、一般式「−O−X−O」で表される基(式中、Xは上記と同じである。))となったもの(本明細書においては、「化合物(9)由来のアニオン」と称することがある)と、カチオンと、で形成された塩が挙げられる。
化合物(9)の塩を形成している前記カチオンの価数は特に限定されず、1(1価)でもよいし2(2価)以上でもよい。通常、前記カチオンがp価(pは1以上の整数である)である場合、化合物(9)の塩を形成している前記カチオンの個数は1以上であり、化合物(9)由来のアニオンの個数はp以下である。
上記のように、一分子の化合物(9)の塩を構成するカチオンは、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これらカチオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、化合物(9)の塩は分子全体として電気的に中性、すなわち、化合物(9)一分子中のカチオンの価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
化合物(9)由来のアニオンと共に化合物(9)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されず、無機カチオン及び有機カチオンのいずれであってもよい。
前記カチオンのうち、無機カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、バリウムイオン(Ba2+)等のアルカリ土類金属のイオン;アルミニウムイオン(Al3+)、亜鉛イオン(Zn2+)、スズイオン(Sn2+、Sn4+)等の典型金属のイオン;銅イオン(Cu、Cu2+)、鉄イオン(Fe2+、Fe3+)、マンガンイオン、ニッケルイオン等の遷移金属のイオン;アンモニウムイオン(NH )等の非金属のイオン等が挙げられる。
第2樹脂層12において、化合物(9)又はその塩は、いずれも1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、第2樹脂層12は、前記その他の防カビ剤として、化合物(9)のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(9)の塩のみを1種又は2種以上含んでいてもよいし、化合物(9)及び化合物(9)の塩を、それぞれ1種又は2種以上含んでいてもよい。
化合物(9)及びその塩は、食品添加物として使用可能なものが好ましい。ここで「食品添加物」とは、日本国厚生労働省が平成25年3月12日現在、その使用を認めているものを意味する。
化合物(9)及びその塩は、揮発性を有するものが好ましい。化合物(9)及びその塩で揮発性を有するものは、常温で液体から気体となることで、後述する包装体の収容空間内において継続的に作用するのに有利であり、包装体において、優れた防カビ効果をより長時間維持できる。
化合物(9)及びその塩の分子量は、揮発し易いという点においては、300以下であることが好ましく、例えば、250以下、200以下及び150以下等のいずれかとすることができるが、これらは一例である。なお、化合物(9)及びその塩の分子量の下限値は、特に限定されない。
化合物(9)及びその塩は、無臭のもの又はにおいの弱いものが好ましい。このような化合物(9)及びその塩は、保存対象物に付着したとしても、保存対象物の使用時に、その存在を全く又はほとんど想起させないため、官能上好ましい。
化合物(9)及びその塩でにおいのあるものは、香料として使用可能なものが好ましい。このような化合物(9)及びその塩としては、例えば、食品添加物の天然香料に分類されるものが挙げられる。
このように、食品添加物して使用可能であり、揮発性を有し、無臭であるか又はにおいの弱い化合物(9)又はその塩としては、例えば、下記式で表される2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
Figure 2021109380
化合物(9)及びその塩としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法によって製造したものを用いてもよい。
化合物(9)は、例えば、下記一般式(901)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(901)」と称することがある)と、下記一般式(902)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(902)」と称することがある)と、を反応させ、化合物(9)を得る工程(本明細書においては、「化合物(9)製造工程」と称することがある)を有する製造方法で、製造できる。
Figure 2021109380
(式中、X、R、m及びnは、上記と同じであり;Lgは離脱基である。)
化合物(9)製造工程での反応は、公知の方法で行うことができ、反応条件は、使用原料の種類に応じて適宜選択すればよい。
Lgとしては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アルキルスルホニルオキシ基;フルオロアルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
化合物(9)製造工程においては、例えば、化合物(902)中の水酸基(−OH)等、使用原料中の目的外の反応が進行する可能性のある基については、あらかじめ保護基で保護しておいてから、反応を行い、反応終了後に脱保護を行うことで、化合物(9)を得てもよい。
化合物(901)は、ナトリウムアルコキシドの通常の製造方法を適用することで、製造できる。例えば、原料として対応するフェノール化合物、すなわち、化合物(901)において、式「−ONa」で表される基が式「−OH」で表される基に置き換えられた化合物を用いて、金属ナトリウムや水素化ナトリウム等を作用させることで、化合物(901)が得られる。
化合物(902)は、原料として対応するアルコール、すなわち、一般式「HO−X−OH(Xは上記と同じである。)」で表される化合物や、その一方の水酸基が保護基で保護された化合物を用いて、Lgを導入する方法で製造できる。保護基を用いた場合には、保護基は適したタイミングで除けば(脱保護すれば)よい。ただし、ここに示す化合物(902)の製造方法は一例である。
化合物(9)製造工程においては、化合物(901)及び化合物(902)の反応の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、目的物である化合物(9)を取り出すことができる。すなわち、反応終了後、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(9)を取り出すことができる。また、取り出した化合物(9)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
化合物(9)は、反応終了後に必要に応じて後処理を行った後、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
得られた化合物(9)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV−VIS吸収スペクトル)等、公知の手法で、その構造を確認できる。
化合物(9)の塩は、金属アルコキシドの通常の製造方法を適用することで、製造できる。例えば、化合物(9)のナトリウム塩(ナトリウムアルコキシド)の場合には、単離された状態の化合物(9)、又は上述の化合物(9)の製造方法における、取り出し前の化合物(9)に対して、上述の化合物(901)の製造の場合と同様の方法を適用することで、目的物が得られる。単離された状態の化合物(9)としては、市販品を用いてもよい。
化合物(9)の塩は、化合物(9)の場合と同様に、取り出して用いてもよいし、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
得られた化合物(9)の塩は、化合物(9)の場合と同様の手法で、その構造を確認できる。
化合物(9)又はその塩の使用によって、増殖抑制効果(防カビ効果)が認められる微生物(カビ)は、一概に特定範囲のものに限定されるものではないが、防カビ効果が高いものとしては、上述の化合物(2)又はその塩を有効成分とする防カビ剤が高い防カビ効果を示すものと、同様のものが挙げられる。
<抗菌剤>
前記抗菌剤は、銀・銅・亜鉛等を使用した金属イオン系無機抗菌剤、酸化チタン等を使用した光触媒系無機抗菌剤、カルボン酸・エステル等を使用した有機合成系抗菌剤、茶カテキン・アリルカラシ油等を使用した天然物系抗菌剤等を有効成分とすることが好ましい。
[その他の成分]
第2樹脂層12及び前記樹脂組成物は、前記添加剤と、前記樹脂と、のいずれにも該当しない、その他の成分を含んでいてもよい。
第2樹脂層12及び前記樹脂組成物における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
第2樹脂層12及び前記樹脂組成物において、前記その他の成分は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
(硬化剤、架橋剤)
第2樹脂層12及び前記樹脂組成物は、その樹脂成分を硬化剤、架橋剤により硬化・架橋したものであってもよい。
第2樹脂層12の添加剤の合計含有量(換言すると、前記樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、添加剤の合計含有量の割合)は、1〜30質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。添加剤の合計含有量が前記下限値以上であることで、添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)がより高くなる。また、添加剤の合計含有量が前記上限値以下であることで、第2樹脂層12において、添加剤が高い均一性でより安定して保持される。
第2樹脂層12の前記樹脂の含有量(換言すると、前記樹脂組成物における、すべての成分の合計含有量に対する、前記樹脂の含有量の割合)は、70〜99質量%であることが好ましく、75〜98質量%であることがより好ましく、80〜97質量%であることが特に好ましい。前記樹脂の含有量が前記下限値以上であることで、第2樹脂層12において、添加剤が高い均一性でより安定して保持される。また、前記樹脂の含有量が前記上限値以下であることで、第2樹脂層12の添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)がより向上する。
第2樹脂層12の、前記その他の成分の含有量(換言すると、前記樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記その他の成分の含有量の割合)は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
第2樹脂層12は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第2樹脂層12が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
なお、本明細書においては、第2樹脂層12の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
第2樹脂層12の厚さは、用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
第2樹脂層12を用いて、例えば、ピロー包装体を作製する場合には、第2樹脂層12の厚さは、0.5〜15μmであることが好ましく、1〜12μmであることがより好ましく、1.3〜10μmであることが特に好ましく、例えば、1.3〜5.0μm等であってもよい。
第2樹脂層12が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第2樹脂層12の厚さとなるようにするとよい。
<第3樹脂層>
第3樹脂層13は、多層フィルム1を用いて目的物を保存するときに、第2樹脂層12よりもこの保存対象物側に配置される層である。例えば、多層フィルム1を用いて作製されたピロー包装体においては、第3樹脂層13が第2樹脂層12よりも、この包装体の収容空間側に配置される。
したがって、例えば、第3樹脂層13が多層フィルム1の一方の最も外側の層となる場合には、第3樹脂層13は保存対象物と接触する層となる。
このように、第3樹脂層13は、第2樹脂層12の保存対象物との接触を防止し、これにより、第2樹脂層12から保存対象物への添加剤の過剰な移行を抑制する。
第3樹脂層13の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm/m・atm・day以上であることが好ましく、3000〜10000cm/m・atm・dayであることがより好ましく、3000〜8000cm/m・atm・dayであることがさらに好ましく、3000〜6000cm/m・atm・dayであることが特に好ましい。第3樹脂層13の前記酸素ガス透過量が前記下限値以上であることで、第2樹脂層12の内部から第3樹脂層13側へ移行した添加剤が、第3樹脂層13を介してその外部(多層フィルム1の第3樹脂層13側の外部)へ容易に移行する。これにより、多層フィルム1は、優れた添加剤の特性(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)を発現する。
第3樹脂層13の前記酸素ガス透過量は、いずれもJIS K7126Bに準拠して測定された値である。
第3樹脂層13の軟化温度は、40℃以上180℃以下であることが好ましく、50℃以上160℃以下であることがより好ましく60℃以上150℃以下であることが好ましい。
第3樹脂層13の軟化温度が上記範囲内であることにより、第3樹脂層13同士を容易に接着することができる。
第3樹脂層13は、延伸されていてもよいし、延伸されていなくてもよいが、延伸されていないことが好ましい。第3樹脂層13が延伸されていないことにより、第3樹脂層13同士を容易に接着することができる。なお、ヒートシールを有する場合は、延伸されたフィルムを使用することもできる。
第3樹脂層13の構成材料は、上述の酸素ガス透過量の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、好ましいものとしては、ポリオレフィンが挙げられる。第3樹脂層13の構成材料がポリオレフィンであることにより、第3樹脂層13同士を容易に接着することができる。
前記ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセンLLDPE)、ポリプロピレン等が挙げられる。
また、第3樹脂層13の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
第3樹脂層13の構成材料は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第3樹脂層13は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでいてもよい。第3樹脂層13の低密度ポリエチレンを含む場合、その含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
第3樹脂層13は、防曇剤を含んでいてもよい。
防曇とは、曇りを防ぐ技術・機能であり、視界確保が重要な、建材・車両・浴室などに用いられるガラス類や、レンズ・メガネなどの透明材料、また、鏡などの材料に活用されている。これら固体の表面(内部)においては“結露”が発生し、その微妙な水滴で光が散乱することで“曇り”が発生する。
多層フィルムの一方の最も外側の層に防曇剤がコートされていると、その多層フィルムの一方の最も外側の層同士をシールしてピロー包装体を作製するときに、シール部の防曇剤が悪影響を及ぼし、防曇コートされていない場合よりも高温のシール温度が必要となったり、シール部のシワが潰せなくなったり、シールの重ね合わせ部に隙間が生じたりするという不具体が生じる。一方、本実施形態の多層フィルム1では、第3樹脂層13が多層フィルム1の一方の最も外側の層となる場合であっても、第3樹脂層13が防曇剤を含む(第3樹脂層全体に防曇剤が分散しており、シール部に防曇剤が集中していない)ことにより、上記のような不具合が生じない。
また、第3樹脂層13が防曇剤を含むことにより、水滴が生成される前に水膜化して光の散乱を低減し、多層フィルム1の曇りを防ぐことができる。その結果、保存対象物の鮮度等の状態を外部から明瞭に目視することができる。
防曇剤は、非イオン系界面活性剤であることが好ましい。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド等を挙げることができる。これらの中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えばその構成脂肪酸の70質量%以上が炭素数12〜18、好ましくは炭素数12〜16の飽和及び/又は不飽和脂肪酸、より好ましくは飽和脂肪酸である。また、重縮合度(重縮合度に分布がある場合は最も多い成分の重縮合度)が4〜20、且つモノエステルが50mol%以上のものが好ましい。
具体的な構成脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギジン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノレイン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ヒドロキンデカン酸等が挙げられる。さらに具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸の単独又は2種以上を全構成脂肪酸の70質量%以上含有するものが好ましく、残りはカプリン酸やカプリル酸等の炭素数10以下及び/又はステアリン酸やアラキジン酸等の炭素数18以上の飽和脂肪酸を、或いはミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンセスキオレート、ジグリセリンセスキラウレート、ジグリセリンセスキステアレート、ジグリセリンセスキパルミテート、ジグリセリンセスキベヘネート、ジグリセリンジオレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンジベヘネート、トリグリセリンオレート、トリグリセリンラウレート、テトラグリセリンオレート、テトラグリセリンステアレート、ヘキサグリセリンラウレート、ヘキサグリセリンオレート、デガグリセリンオレート、デカグリセリンラウレート等が挙げられる。これらのうち、デカグリセリンラウレートは、防曇性が高く樹脂との相溶性も高いので好ましい。
非イオン性界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、それ以外の非イオン性界面活性剤との併用であってもよい。併用する非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールオレイン酸エステル、ポリエチレングリコールラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリルエーテル等が挙げられる。
第3樹脂層13の防曇剤の含有量は、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜7質量%であることがより好ましく、0.4〜5質量%であることがさらに好ましい。防曇剤の合計含有量が前記下限値以上であることで、防曇剤の効果がより高くなる。また、防曇剤の合計含有量が前記上限値以下であることで、第3樹脂層13において、防曇剤が高い均一性でより安定して保持される。
第3樹脂層13は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第3樹脂層13が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
第3樹脂層13が複数層からなる場合の例としては、第3樹脂層13は、ホモポリマーであるポリプロピレンを含む第3A樹脂層と、ランダムコポリマーであるポリプロピレンを含む第3B樹脂層とを備え、第3樹脂層13において、第2樹脂層12側から、第3A樹脂層と、第3B樹脂層と、がこの順に積層されており、第3B樹脂層が、前記防曇剤を含んでいることが好ましい。第3A樹脂層の軟化温度は、第3B樹脂層の軟化温度よりも高いため、第3B樹脂層同士を熱溶着させた際に、第3A樹脂層が一緒に溶けてしまうことを防止することができる。
第3樹脂層13は、さらに低密度ポリエチレンを含む第3C樹脂層を備え、第3樹脂層13において、第2樹脂層12側から、第3A樹脂層と、第3B樹脂層と、第3C樹脂層と、がこの順に積層されており、第3B樹脂層が、前記防曇剤を含んでいることが好ましい。第3B樹脂層に含まれるポリプロピレンは脆いため、さらに低密度ポリエチレンを含む第3C樹脂層を備えることにより、多層フィルム1の強度を向上させることができる。
第3樹脂層13の厚さは、特に限定されないが、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、15〜100μmであることが特に好ましい。第3樹脂層13の厚さが前記下限値以上であることで、第3樹脂層13の強度がより向上するとともに、第2樹脂層12から保存対象物への添加剤の過剰な移行がより抑制される。また、第3樹脂層13の厚さが前記上限値以下であることで、多層フィルム1の添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)がより向上する。
第3樹脂層13が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第3樹脂層13の厚さとなるようにするとよい。
例えば、第3樹脂層13が、前記第3A樹脂層、第3B樹脂層及び第3C樹脂層を備えている場合、第3A樹脂層の厚さは、0.8〜34μmであることが好ましく、第3B樹脂層の厚さは、2.5〜100μmであることが好ましく、第3C樹脂層の厚さは、1.5〜68μmであることが好ましい。前記第3A樹脂層、第3B樹脂層及び第3C樹脂層の厚さが上記範囲内であることにより、第3B樹脂層同士を熱溶着させた際に、第3A樹脂層が一緒に溶けてしまうことを防止することができ、多層フィルム1の強度を向上させることができる。
<その他の層>
多層フィルム1は、本発明の効果を損なわない範囲内において、第1樹脂層11、第2樹脂層12及び第3樹脂層13以外に、さらにその他の層を備えていてもよい。
前記その他の層は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
ただし、多層フィルム1は、第1樹脂層11、第2樹脂層12及び第3樹脂層13が、この順に互いに直接接触して積層されているものが好ましい。このように、第1樹脂層11と第2樹脂層12との間、第2樹脂層12と第3樹脂層13との間に、いずれも前記その他の層を備えていないことにより、多層フィルム1は、添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)にさらに優れたものとなる。
また、多層フィルム1は、第3樹脂層13の第2樹脂層12を備えている側とは反対側には、前記その他の層を備えていないことが好ましい。このように、第3樹脂層13が多層フィルム1の一方の最も外側の層となっていることにより、多層フィルム1は、添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)にさらに優れたものとなる。
多層フィルム1が、前記その他の層を備えている場合、その他の層を、第1樹脂層11の第2樹脂層12を備えている側とは反対側に備えていることが好ましい。
多層フィルム1は、上述の第2樹脂層12用の樹脂組成物を用い、多層積層フィルムの公知の製造方法を適用することで製造できる。
例えば、第1樹脂層11及び第3樹脂層13のいずれか一方の表面(片面)に前記樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、第2樹脂層12を形成することで、第1樹脂層11又は第3樹脂層13と、第2樹脂層12と、が積層されてなる中間積層体を形成する。このときの第2樹脂層12の形成方法は、先に説明した第2樹脂層12の製造方法と同じである。
次いで、前記中間積層体における第2樹脂層12の露出面(第1樹脂層11又は第3樹脂層13が設けられていない表面)と、第1樹脂層11及び第3樹脂層13のいずれか他方の表面(片面)と、を貼り合わせることで、多層フィルムを形成する。ここで、「第1樹脂層11及び第3樹脂層13のいずれか他方」とは、前記中間積層体において第2樹脂層12に積層されているものが第1樹脂層11である場合には第3樹脂層13のことを意味し、前記中間積層体において第2樹脂層12に積層されているものが第3樹脂層13である場合には第1樹脂層11のことを意味する。
前記中間積層体と第1樹脂層11又は第3樹脂層13との貼り合わせは、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
以上により、多層フィルム1が得られるが、第1樹脂層11、第2樹脂層12及び第3樹脂層13以外に、さらにその他の層を備えてなる多層フィルム1を製造する場合には、上述の製造方法において、前記その他の層が目的の積層位置に配置されるよう、適切なタイミングで、前記その他の層を形成する工程を追加して行ってもよいし、多層構成のフィルム同士を貼り合わせて製造するようにしてもよい。
ここまでは、多層フィルム1の製造方法として、前記樹脂組成物を用いて、第2樹脂層12と前記中間積層体の形成を同時に行う工程を有するものについて説明した。
ただし、多層フィルムの製造方法としては、他のものも挙げられ、例えば、あらかじめ形成済みの第2樹脂層12を用いて、前記中間積層体を形成する工程を有する製造方法も挙げられる。
このように、あらかじめ形成済みの第2樹脂層12を用いる場合には、例えば、以下のように多層フィルムを製造すればよい。
まず、剥離処理面を有する剥離フィルムの前記剥離処理面に、前記樹脂組成物を用いて、第2樹脂層12を形成する。このときの第2樹脂層12の形成方法は、先に説明した第2樹脂層12の製造方法と同じである。形成済みの第2樹脂層12は、剥離フィルムを備えていない側の表面に、さらに同様に剥離フィルムを備えたものとしてもよい。
次いで、適切なタイミングで剥離フィルムを取り除き、第2樹脂層12の一方の表面に第1樹脂層11を貼り合わせ、第2樹脂層12の他方の表面に第3樹脂層13を貼り合わせることで、多層フィルム1を形成する。第2樹脂層12と第1樹脂層11との貼り合わせと、第2樹脂層12と第13樹脂層13との貼り合わせは、いずれか一方を先に行い、他方を後で行って、順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
<<包装体>>
本発明の包装体は、上述の本発明の多層フィルムを用いて得られた包装体であって、前記第3樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記第2樹脂層が前記第1樹脂層よりも前記収容空間側に配置されているものである。
本発明の包装体は、前記多層フィルム(第2樹脂層)を用いていることで、優れた添加剤の特性(例えば、防カビ性または抗菌性等)を有し、目的物の保存中に収容空間内において、カビや菌等の増殖を顕著に抑制する。
図2は、本発明の包装体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す包装体10は、図1に示す多層フィルム1を用いて形成されたものである。包装体10は、一対の多層フィルム1,1の第3樹脂層13,13同士の一部が接着され、形成されている収容空間Sを有しており、第2樹脂層12が第1樹脂層11よりも収容空間S側に配置されて、概略構成されている。すなわち、一対の多層フィルム1,1は、これらの第3樹脂層13,13同士が対向するように配置されている。
包装体10の収容空間Sには、目的とする保存対象物(図示略)が収容される。
包装体10においては、第2樹脂層12の内部から第3樹脂層13を介して収容空間S内へ、添加剤が容易に移行する。これにより、包装体10は、収容空間S内の添加剤の濃度を適切な水準で一定期間維持でき、優れた添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)を発現する。
また、包装体10においては、第3樹脂層13により、収容空間S内の保存対象物と第2樹脂層12との接触が防止され、第2樹脂層12から保存対象物への添加剤の過剰な移行が抑制される。
さらに、包装体10においては、先に多層フィルムにおいて説明したとおり、第1樹脂層11の構成を調節することで、添加剤の効果(例えば、防カビ効果、抗菌効果等)の持続性をより高めることが可能である。
また、包装体10を用い、添加剤の種類を調節することで、保存後の使用時における保存対象物を、添加剤(例えば、防カビ剤、抗菌剤等)の使用を想起させにくいような、官能上好ましいものとすることもできる。
ここまでは、本発明の包装体として、図1に示す多層フィルム1を用いたものについて説明したが、本発明の包装体は、本発明の他の実施形態の多層フィルムを用いて形成されたものであってもよい。
本発明の包装体は、上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、図2に示す包装体10は、一対の同じ種類の多層フィルム1,1を用いたものであるが、本発明の包装体は、一対の異なる種類の多層フィルム用いたものであってもよい。
また、本発明の包装体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、多層フィルム以外のその他の構成を備えていてもよい。前記その他の構成は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
本発明の包装体は、本発明の多層フィルムを用いて、収容空間を有するように、第3樹脂層13同士の一部を接着することで製造できる。
第3樹脂層13同士の接着は、例えば、公知のヒートシール法等を適用することで、行うことができる。
本発明の多層フィルムを用いて包装体を作製することにより、防カビ性を十分に担保することができる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
<多層フィルムの製造>
[実施例1]
以下に示す手順により、多層フィルムを製造した。
(第1及び第2樹脂層の製造)
主剤(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標)A626」、固形分60質量%、酢酸エチル40質量%)(8質量部)、硬化剤(三井化学株式会社製「タケネート(登録商標) A50」、固形分75質量%、酢酸エチル25質量%)(1質量部)、及び酢酸エチル(9.5質量部)を混合して、ポリウレタン系接着剤を調製した。得られたポリウレタン系接着剤において、溶媒(酢酸エチル)の合計含有量は70質量%である。
次いで、安息香酸(0.5質量部)及びp−ヒドロキシアセトフェノン(0.5質量部)を、上記で得られたポリウレタン系接着剤の全量と混合し、溶媒以外の成分の合計含有量に対する安息香酸及びp−ヒドロキシアセトフェノンの含有量の割合が15質量%である樹脂組成物を得た。
次いで、第1樹脂層(二軸延伸ポリプロピレン、フタムラ化学社製、品番:AF642、厚さ20μm)の一方の表面に、マルチコーターを用いて、上記で得られた樹脂組成物を塗工し、80℃で乾燥させることで、安息香酸及びp−ヒドロキシアセトフェノンの含有量が15質量%である第2樹脂層(厚さ4μm)を第1樹脂層上に形成した。なお、樹脂組成物の塗工時には、グラビアロールの深さを110μmとした。
(第3樹脂層の製造)
第3樹脂層に含まれる樹脂として、未延伸ポリプロピレンを用意した。
第3樹脂層に含まれる樹脂に、防曇剤(理研ビタミン社製、品番:PAR−380)を添加した。その際、前記樹脂層中の防曇剤の含有量が2質量%となるように調整した。
前記樹脂層を押出成形して第3樹脂層(厚さ30μm)を得た。
(多層フィルムの製造)
さらに、上記で得られた第2樹脂層の第1樹脂層が設けられている側とは反対側の表面に、上記で得られた第3樹脂層を貼り合わせることにより、第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層がこの順に積層されてなる、透明な多層フィルムを得た。
なお、JIS K7126Bに準拠して測定した、第3樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量は、5000cm/m・atm・dayであり、第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量は、2000cm/m・atm・dayであった。
[実施例2]
以下に示す手順により、多層フィルムを製造した。
(第1及び第2樹脂層の製造)
実施例1と同様にして、第1及び第2樹脂層を得た。
(第3樹脂層の製造)
第3A樹脂層に含まれる樹脂として、ホモポリマーであるポリプロピレン(プライムポリマー社製、品番:E111G)を用意した。
第3B樹脂層に含まれる樹脂として、ランダムコポリマーであるポリプロピレン(プライムポリマー社製、品番:B241)を用意した。
第3C樹脂層に含まれる樹脂として、低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、品番:F522)を用意した。
第3B樹脂層に含まれる樹脂に、防曇剤(理研ビタミン社製、品番:PAR−380)を添加した。その際、前記樹脂層中の防曇剤の含有量が3質量%となるように調整した。
第3A樹脂層と、第3B樹脂層と、第3C樹脂層とを、この順番で共押出成形して第3樹脂層(厚さ30μm)を得た。各層の厚さは、第3A樹脂層が4μm、第3B樹脂層が12μm、第3C樹脂層が8μmであった。
(多層フィルムの製造)
さらに、上記で得られた第2樹脂層の第1樹脂層が設けられている側とは反対側の表面に、上記で得られた第3樹脂層の第3A樹脂層側の表面を貼り合わせることにより、第1樹脂層、第2樹脂層、第3A樹脂層、第3B樹脂層、第3C樹脂層がこの順に積層されてなる、透明な多層フィルムを得た。
なお、JIS K7126Bに準拠して測定した、第3樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量は、5500cm/m・atm・dayであり、第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量は、2000cm/m・atm・dayであった。
[実施例3]
以下に示す手順により、多層フィルムを製造した。
(第1及び第2樹脂層の製造)
実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
次いで、第1樹脂層(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、東洋紡社製、品番:E5100、厚さ12μm)の一方の表面に、マルチコーターを用いて、上記で得られた樹脂組成物を塗工し、80℃で乾燥させることで、安息香酸及びp−ヒドロキシアセトフェノンの含有量が15質量%である第2樹脂層(厚さ4μm)を第1樹脂層上に形成した。なお、樹脂組成物の塗工時には、グラビアロールの深さを110μmとした。
(多層フィルムの製造)
さらに、上記で得られた第2樹脂層の第1樹脂層が設けられている側とは反対側の表面に、第3樹脂層(直鎖状低密度ポリエチレン、東洋紡社製、品番:L4102、厚さ30μm)を貼り合わせ、さらに、第3樹脂層の第2樹脂層が設けられている側とは反対側の表面に、防曇剤(理研ビタミン社製、品番:リケマールA、厚さ0.03μm)をコートすることにより、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、防曇コートがこの順に積層されてなる、透明な多層フィルムを得た。
なお、JIS K7126Bに準拠して測定した、前記第3樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量は、6000cm/m・atm・dayであり、前記第1樹脂層の25℃、65%RHの雰囲気下における酸素ガス透過量は、200cm/m・atm・dayであった。
[比較例1]
以下に示す手順により、多層フィルムを製造した。
(第1及び第2樹脂層の製造)
実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
次いで、第1樹脂層(直鎖状低密度ポリエチレン、東洋紡社製、品番:L4102、厚さ30μm)の一方の表面に、マルチコーターを用いて、上記で得られた樹脂組成物を塗工し、80℃で乾燥させることで、安息香酸及びp−ヒドロキシアセトフェノンの含有量が15質量%である第2樹脂層(厚さ4μm)を第1樹脂層上に形成した。なお、樹脂組成物の塗工時には、グラビアロールの深さを110μmとした。
(多層フィルムの製造)
さらに、上記で得られた第2樹脂層の第1樹脂層が設けられている側とは反対側の表面に、第3樹脂層(直鎖状低密度ポリエチレン、東洋紡社製、品番:L4102、厚さ30μm)を貼り合わせ、さらに、第3樹脂層の第2樹脂層が設けられている側とは反対側の表面に、防曇剤(理研ビタミン社製、品番:リケマールA、厚さ0.03μm)をコートすることにより、第1樹脂層、第2樹脂層、第3樹脂層、防曇コートがこの順に積層されてなる、透明な多層フィルムを得た。
<包装体の評価>
実施例1〜3及び比較例1の多層フィルムにおいて、第3樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、第2樹脂層が第1樹脂層よりも収容空間側に配置されている包装体を作製した。
JIS K7126Bに記載の方法に準拠して、第1樹脂層と第3樹脂層の酸素ガス透過量(cm/m・atm・day)を測定した。
動的粘弾性測定(DMA)により、第1樹脂層と第3樹脂層の軟化温度(℃)を測定した。
<防カビ性の評価>
実施例1〜3及び比較例1の多層フィルムにおいて、第3樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、第2樹脂層が第1樹脂層よりも収容空間側に配置されており、かつ中に5個のミカン(重量平均:約110g)を入れた包装体を5つ作製した。
作成したミカン包装体を、30℃、湿度60%下に14日間保管し、その後のカビ発生数を目視にて確認した。
◎:カビ発生数が0個
〇:カビ発生数が平均1個以内
×:カビ発生数が平均1個超
各包装体について、表1に示す各不具合の有無(有:NG、無:OK)を目視で評価した。結果を表1に示す。
Figure 2021109380
表1に示すように、実施例1〜3の多層フィルムは、25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]が、1.5以上であるため、前記透過量の比が1.0である比較例1の多層フィルムよりも十分に防カビ性が担保されていることが確認された。
また、実施例1及び2の多層フィルムは、実施例3や比較例1とは異なり、第3樹脂層の第2樹脂層が設けられている側とは反対側の表面に防曇剤をコートせず、第3樹脂層自体が防曇剤を含むものとしため、包装体を作製する際、裁断不良によりパック間が切り離されなかったり、シール部のシワが潰せなかったり、シールの重ね合わせ部に隙間が生じるといった不具合が解消されていることが確認された。
本発明は、防カビ性を十分に担保し得る多層フィルムと、前記多層フィルムを用いて得られた包装体を提供することができる。
1・・・多層フィルム
10・・・包装体
11・・・第1樹脂層
12・・・第2樹脂層
13・・・第3樹脂層
S・・・包装体の収容空間

Claims (16)

  1. 第1樹脂層と、
    添加剤を含む第2樹脂層と、
    第3樹脂層と、
    がこの順に積層されており、
    25℃、65%RHの雰囲気下における、[前記第3樹脂層の酸素ガス透過量]/[前記第1樹脂層の酸素ガス透過量]が、1.5以上である、多層フィルム。
  2. 前記第3樹脂層が、防曇剤を含む、請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記第1樹脂層の軟化温度が、前記第3樹脂層の軟化温度よりも高い、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
  4. 前記第1樹脂層が、延伸されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
  5. 前記第1樹脂層が、二軸延伸されている、請求項4に記載の多層フィルム。
  6. 前記第1樹脂層が、ポリエステルまたはポリオレフィンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
  7. 前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである、請求項6に記載の多層フィルム。
  8. 前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、請求項6に記載の多層フィルム。
  9. 前記第3樹脂層が、ポリオレフィンを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層フィルム。
  10. 前記第2樹脂層が、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤、オレフィン系接着剤及びエポキシ系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、
    前記第2樹脂層が接着性を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の多層フィルム。
  11. 前記添加剤は、防カビ剤または抗菌剤である、請求項1〜10のいずれか一項の記載の多層フィルム。
  12. 前記防カビ剤が、下記一般式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその塩を有効成分とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の多層フィルム。
    Figure 2021109380
    (式中、Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり;nは0〜5の整数であり、ただしm+nは6以下であり、nが2以上である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく;
    21及びR22は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり、mが2以上である場合、複数個のR21は互いに同一でも異なっていてもよく;nは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、複数個のR22は互いに同一でも異なっていてもよく;oは1〜3の整数であり、ただしm+n+oは6以下である。)
  13. 前記一般式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその塩を有効成分とする防カビ剤とは異なる、その他の防カビ剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の多層フィルム。
  14. 前記その他の防カビ剤が、下記一般式(9)で表される化合物又はその塩である、請求項13に記載の多層フィルム。
    Figure 2021109380
    (式中、Xは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり;Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり、mが2以上である場合、複数個のXは互いに同一でも異なっていてもよく;nは0〜5の整数であり、ただしm+nは6以下であり、nが2以上である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。)
  15. 前記防曇剤が、非イオン系界面活性剤である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の多層フィルム。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の多層フィルムを用いて得られた包装体であって、
    前記第3樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、
    前記第2樹脂層が前記第1樹脂層よりも前記収容空間側に配置されている、包装体。
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