以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を前後方向に移動させるとともに、左右方向に移動するキャリッジ20に搭載されたインクヘッド50からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよい。金属製やゴム製等のシートであってもよい。また、布帛であってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は、キャリッジ20と、ヘッド移動装置30と、搬送装置40と、インクヘッド50と、クリーニングユニット60と、制御装置200とを備えている。
ヘッド移動装置30は、ガイドレール31と、ベルト32と、左右のプーリ33aおよび33bと、スキャンモータ34とを備えている。ガイドレール31には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール31は、左右方向に延びている。ガイドレール31は、キャリッジ20の左右方向への移動をガイドする。ベルト32は、キャリッジ20に固定されている。ベルト32は、無端状のベルトである。ベルト32は、ガイドレール31の左側に設けられたプーリ33aおよび右側に設けられたプーリ33bに巻き掛けられている。右側のプーリ33bにはスキャンモータ34が取り付けられている。スキャンモータ34は、制御装置200と電気的に接続されている。スキャンモータ34は、制御装置200によって制御される。スキャンモータ34が駆動するとプーリ33bが回転し、ベルト32が走行する。それにより、キャリッジ20がガイドレール31に沿って左右方向に移動する。
キャリッジ20の下方には、プラテン15が配置されている。プラテン15は、左右方向に延びている。プラテン15は、記録媒体5が載置される部材である。プラテン15上の記録媒体5は、搬送装置40によって前後方向に移動される。搬送装置40は、ピンチローラ41と、グリットローラ42と、フィードモータ43とを備えている。ピンチローラ41はプラテン15の上方に設けられ、記録媒体5を上から押下する。ピンチローラ41は、キャリッジ20より後方に配置されている。プラテン15には、グリットローラ42が設けられている。グリットローラ42は、ピンチローラ41の下方に配置されている。グリットローラ42は、ピンチローラ41と対向する位置に設けられている。グリットローラ42は、フィードモータ43に連結されている。グリットローラ42は、フィードモータ43の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ43は、制御装置200と電気的に接続されている。フィードモータ43は、制御装置200によって制御される。ピンチローラ41とグリットローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ42が回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
図2は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。図2に示すように、キャリッジ20は、複数のインクヘッド50を下面に保持している。複数のインクヘッド50は、キャリッジ20において左右方向に並んで配置されている。各インクヘッド50は、インクを吐出するノズル51が複数形成されたノズル面52を有している。ノズル51は、インクが吐出される微細な孔である。各インクヘッド50のノズル面52において、複数のノズル51は前後方向に並んでノズル列を形成している。ノズル面52は、ここでは、インクヘッド50の下面である。なお、ここでは、全てのインクヘッド50が前後方向に関して揃った位置に配置されているが、一部のインクヘッド50がずれて配置されていてもよい。また、インクヘッド50の数は限定されない。
複数のインクヘッド50の内部には、それぞれ、圧電素子を備えたアクチュエータが設けられている。アクチュエータは、ノズル51ごとに設けられている。各アクチュエータが駆動することによって、各ノズル51はインクを吐出する。各アクチュエータは、ノズル51と連通しインクが貯留される圧力室と、圧力室に接する圧電素子とを備えている。圧電素子に印加される電圧を変化させると圧電素子は膨張・収縮し、その変位によって圧力室の体積が変化する。この圧力室の体積の変化によってインクがノズル51から吐出される。複数のアクチュエータは、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
複数のインクヘッド50は、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。インクヘッド50のノズル51からは、当該インクヘッド50に接続されたインクカートリッジに貯留されたインクが吐出される。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
図1に示すように、キャリッジ20およびキャリッジ20に搭載されたインクヘッド50は、印刷時には、プラテン15に載置された記録媒体5の上方に位置している。印刷中、インクヘッド50は、ヘッド移動装置30によってプラテン15上を左右方向に移動される。以下では、このプラテン15上のインクヘッド50の位置を印刷位置P1と称する。印刷位置P1は、印刷時にインクヘッド50が配置される位置であり、左右方向に幅を有している。その幅は、記録媒体5の左右方向の幅よりも広い。
図1に示すように、クリーニングユニット60は、プリンタ10の右端部付近に設けられている。クリーニングユニット60は、インクヘッド50をクリーニングするユニットである。図3は、クリーニングユニット60の正面図である。図3に示すように、クリーニングユニット60は、複数のキャップ70と、キャップ移動装置80と、複数の吸引ポンプ90と、ワイパー機構100とを備えている。
図1に示すように、ヘッド移動装置30は、キャリッジ20をクリーニングユニット60の上方に移動させることができるように構成されている。以下では、このクリーニングユニット60の上方のキャリッジ20の位置を待機位置P2と称することとする。ヘッド移動装置30は、インクヘッド50を、この待機位置P2と、プラテン15上の印刷位置P1とに移動させる。待機位置P2は、ここでは、ガイドレール31に係合してキャリッジ20が移動する範囲の右端に設定されている。待機位置P2は、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。詳しくは後述するが、待機位置P2では、インクヘッド50に対し、クリーニングユニット60によって適時にクリーニングが行われる。
キャップ70は、インクヘッド50のノズル面52に装着可能に構成されている。待機位置P2は、インクヘッド50に対してキャップ70が着脱可能なインクヘッド50の位置である。キャップ70は、キャリッジ20が待機位置P2に配置されている場合に、インクヘッド50に装着されうる。図3に示すように、キャップ70は、キャリッジ20が待機位置P2に配置されたときのインクヘッド50の下方に配置されている。キャップ70は、インクヘッド50の数と同数設けられており、複数のキャップ70は、それぞれ1つのインクヘッド50に装着可能に対応している。各キャップ70は、上部が開口した有底の箱状の形状を有している。各キャップ70は、例えば、ゴム等によって形成されている。各キャップ70の上部の開口は、装着時には、各インクヘッド50の外周部に嵌るように構成されている。各キャップ70の上部の開口の形状は、各インクヘッド50の外周部の形状に対応している。なお、ここでは、キャップ70は、複数のインクヘッド50のそれぞれに対応するようにインクヘッド50と同数設けられたが、同数でなくてもよい。例えば、2つ以上のインクヘッド50に対して1つのキャップ70が設けられてもよい。また、キャップ70自体では1つであって、内部に仕切りが設けられていてもよい。
キャップ移動装置80は、キャップ70をインクヘッド50に装着し、または離間させる部材である。キャップ移動装置80は、キャップ70を上下方向に移動可能に支持している。キャップ移動装置80は、キャップ70を上昇させることにより、キャップ70をインクヘッド50に装着する。また、キャップ70を下降させることにより、キャップ70をインクヘッド50から離間する。キャップ移動装置80は、支持部材81と、ボールねじ機構82と、駆動モータ83とを備えている。支持部材81は、複数のキャップ70を下方から支持している。複数のキャップ70は、支持部材81の上面に固定されている。支持部材81は、ボールねじ機構82によって上下方向に移動可能に支持されている。ボールねじ機構82は、支持部材81を下方から支持している。ボールねじ機構82は、駆動モータ83に接続されている。ボールねじ機構82は、駆動モータ83が駆動することにより、支持部材81を上下方向に移動させる。複数のキャップ70は、キャップ移動装置80により一斉に上下移動される。なお、本実施形態では、キャップ移動装置80は、キャップ70を上下方向に移動させてインクヘッド50に装着したが、例えば、斜めにスライドさせて装着するように構成されていてもよい。
複数の吸引ポンプ90は、複数のキャップ70にそれぞれ接続されている。吸引ポンプ90は、キャップ70の数と同数設けられており、複数の吸引ポンプ90は、それぞれ1つのキャップ70に接続されている。吸引ポンプ90は、キャップ70に溜まったインクを吸引する部材である。吸引ポンプ90は、例えば、チューブポンプである。複数の吸引ポンプ90は、それぞれ、チューブ等を介して、キャップ70の底部に接続されている。キャップ70がインクヘッド50に装着された状態で吸引ポンプ90が駆動されると、インクヘッド50のノズル51からインク等が吸い出される。吸引ポンプ90に吸引されたインクは、図示しないチューブ等を介して図示しない廃液タンクに廃棄される。
ワイパー機構100は、印刷位置P1と待機位置P2との間に設けられている。また、インクヘッド50の下方に設けられている。ワイパー機構100は、インクヘッド50のノズル面52を拭ってクリーニングする機構である。ワイパー機構100は、ワイパー101と、回転軸102と、洗浄液槽103と、回転モータ104とを備えている。ワイパー101は、インクヘッド50のノズル面52を拭う部材である。ワイパー101は、前後方向に延びる平板状の部材である。ワイパー101の前後方向の長さは、インクヘッド50の前後方向の長さよりも長く構成されている。ワイパー101は、例えば、ゴムで形成されている。ワイパー101の一端は回転軸102に接続されている。ワイパー101は、回転軸102を中心に回転可能に構成されている。回転軸102は、前後方向に延びている。ワイパー101が、回転軸102から遠い方の端部を上にするような回転位置(以下、ワイピング位置と呼ぶ。)に配置されるとき、当該端部は、インクヘッド50のノズル面52よりもわずかに高い位置に位置する。そこで、ワイパー101をワイピング位置に配置しつつ、キャリッジ20を走行させると、ワイパー101によりインクヘッド50のノズル面52を拭うことができる。一方、ワイパー101は、回転軸102から遠い方の端部を下にするような回転位置(以下、洗浄位置と呼ぶ。)に配置されるとき、回転軸102の下方に設置された洗浄液槽103中の洗浄液に浸漬される。ワイパー101は、回転モータ104によって回転されている。回転モータ104は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
図1に示すように、プリンタ10の右端部には、操作パネル220が設けられている。操作パネル220には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル220の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置200が収容されている。図4は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図4に示すように、制御装置200は、スキャンモータ34と、フィードモータ43と、インクヘッド50と、キャップ移動装置80の駆動モータ83と、吸引ポンプ90と、ワイパー機構100の回転モータ104と、操作パネル220とにそれぞれ電気的に接続されており、それらを制御可能に構成されている。また、制御装置200は、後述する外部コンピュータC1と電気的に接続されている。制御装置200は、データ取得部201と、印刷制御部202と、フラッシング制御部203と、吸引制御部204と、キャッピング制御部205と、ワイピング制御部206とを備えている。
制御装置200の構成は特に限定されない。制御装置200は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。
図4に示すように、データ取得部201は、印刷データを保管する装置としての外部コンピュータC1に接続されている。データ取得部201は、外部コンピュータC1から印刷データが逐次転送される部位である。外部コンピュータC1は、プリンタ10に印刷させる印刷データを保管している。プリンタ10は、データ取得部201が外部コンピュータC1から逐次取得した印刷データに基づいて印刷を実行する。
印刷制御部202は、各部を制御して印刷を行わせる部位である。印刷制御部202の制御は、データ取得部201に転送される印刷データに基づいている。印刷制御部202は、ヘッド移動装置30を制御してインクヘッド50を印刷位置P1に配置するとともに、記録媒体5に対してインクヘッド50のノズル51からインクを吐出させて印刷を行うように設定されている。印刷動作の詳細については後述する。
フラッシング制御部203は、各部を制御して、印刷の途中または印刷待機中にフラッシングを行わせる部位である。フラッシングは、記録媒体5上以外の場所でインクを吐出して、ノズル51内のインクを更新する作業である。ここでは、インクは、待機位置P2において吐出される。フラッシング制御部203は、印刷開始前と印刷の途中とにフラッシングを行う。フラッシング制御部203は、印刷前のフラッシングでは、インクヘッド50に装着されたキャップ70に対してインクを吐出させる。フラッシング制御部203は、印刷途中のフラッシングでは、ヘッド移動装置30を制御して印刷中の所定の間隔でインクヘッド50を待機位置P2に移動させ、キャップ70に対してインクを吐出させる。印刷途中のフラッシングは、例えば、キャリッジ20が所定の回数だけ左右方向に移動するごとに行われる(以下、この左右方向に移動のことをパスとも称する。)。ただし、印刷途中のフラッシングの頻度は、パス数に基づくものに限定されず、例えば、インクの吐出量や時間に基づくものであってもよい。このとき、インクはインクヘッド50に装着されていない状態のキャップ70に対して吐出される。また、1回のフラッシングにおいて吐出されるインクの吐出回数は、予め設定されている。なお、以下では適宜、フラッシングにおける1回のインクの吐出を1ショットと呼ぶことがある。
吸引制御部204は、各部を制御して、吸引または空吸引を行わせる部位である。吸引は、キャップ70がインクヘッド50に装着された状態で吸引ポンプ90を駆動させる作業である。吸引は、インクヘッド50のノズル51内のインクを排出する作業である。一方、空吸引は、キャップ70がインクヘッド50に装着されていない状態で吸引ポンプ90を駆動させる作業である。空吸引は、キャップ70に溜まったインクを排出する作業である。吸引制御部204は、適宜に吸引を行うとともに、印刷途中のフラッシングによってキャップ70に溜まったインクを排出するために、所定のショット数ごとに空吸引を行うように設定されている。
図4に示すように、吸引制御部204は、吸引条件記憶部204aと、吸引時間記憶部204bと、調整値記憶部204cとを備えている。吸引条件記憶部204aは、空吸引を実行すべきインクのショット数を記憶している。吸引制御部204は、フラッシングにおいて、ショット数が吸引条件記憶部204aに設定された回数に達するたびに空吸引を実行する。上記ショット数は、1ショットにつき排出されるインクの量に基づき、キャップ70内に貯留できるインクの最大許容量を超えないように設定されている。吸引時間記憶部204bは、1回の空吸引において吸引ポンプ90がインクを吸引する時間を記憶している。この空吸引の時間は、少なくとも上記所定の回数のショットでキャップ70内に吐出されるインクを全て排出できる時間に設定されている。
また、吸引制御部204は、印刷終了時にも空吸引を行うように設定されている。この印刷終了時の空吸引は、印刷の終盤においてキャップ70内に溜まるインクを排出するために行うものである。調整値記憶部204cは、この印刷終了時の空吸引を開始するタイミングについての調整値を記憶している。印刷終了時の空吸引については、後述する。
キャッピング制御部205は、各部を制御してキャップ70をインクヘッド50に対して着脱させる部位である。キャッピング制御部205は、印刷終了後にインクヘッド50を待機位置P2に移動させるとともに、キャップ移動装置80を動作させて、キャップ70をインクヘッド50に装着する。また、キャッピング制御部205は、印刷開始前にキャップ移動装置80を動作させて、キャップ70をインクヘッド50から離間する。
ワイピング制御部206は、各部を制御してワイピングを行わせる部位である。ワイピングは、ワイパー機構100によってインクヘッド50のノズル面52を拭う作業である。ワイピング制御部206は、印刷途中のフラッシングを行うためにキャリッジ20が待機位置P2に戻ってくる際にワイピングを行う。ワイピング制御部206は、その他、手動のワイピング指示があったときなどに適宜ワイピングを実行する。ワイピングにおいては、ワイピング制御部206は、回転モータ104を駆動させてワイパー101を洗浄位置からワイピング位置に回転移動させるとともに、ヘッド移動装置30を制御してキャリッジ20を走行させる。
以下では、適宜に従来の方法と比較しながら、本実施形態に係るプリンタ10の印刷動作および印刷終了後の動作について説明する。図5は、従来の方法に係る印刷動作および印刷終了後の動作を表す模式図である。図6は、本実施形態に係る印刷動作および印刷終了後の動作を表す模式図である。図5および図6に示されるように、また、以下で説明するように、従来の方法、本実施形態のいずれにおいても、プリンタは印刷途中のフラッシングおよび空吸引を実行するように設定されている。ただし、従来の方法と本実施形態とでは、印刷終了時の空吸引の方法が相違している。なお、下記の説明では、印刷途中のフラッシングは1パスごとに行われることとし、吸引条件記憶部204aが記憶する空吸引を開始するショット数はNであるとする。Nは、例えば、5000ショット程度に設定されているとよい。また、1回のフラッシングにおけるショット数は特に限定されないが、例えば、20ショット程度であるとよい。
図6に示すように、ステップS01において、プリンタ10には、外部コンピュータC1から印刷データの一部が転送される。本実施形態では、この後、印刷データは逐次プリンタ10に転送される。プリンタ10は、転送された印刷データを順次実行する。ステップS01は、図5の場合も同じである。
続くステップS02では、印刷とフラッシングとがセットで実行される。ステップS02では、1パス印刷が行われるたびに、フラッシングが実行される。印刷においては、印刷制御部202は、インクヘッド50を印刷位置P1に移動させるとともに、印刷位置P1の中で左右方向に移動させる。そして、インクヘッド50の移動にタイミングを合わせながら記録媒体5に対してインクを吐出させる。この動作により1ライン分の印刷が完成する。その後、記録媒体5は搬送装置40によって前方に搬送される。画像の印刷は、この1ライン分の印刷と記録媒体5の搬送とを繰り返すことによって完了する。フラッシングにおいては、インクヘッド50は待機位置P2に移動され、キャップ70内にインクを吐出する。このフラッシングによってノズル51およびインクの状態が良好に保たれ、印刷品質が保たれる。図6では、ステップS02が複数回反復されている。このステップS02の反復は、図5においても同じである。
図6に示すように、ステップS03では、積算のショット数FLが、空吸引を開始するショット数Nに達したかどうかが判定される。積算のショット数FLは、フラッシングが行われるたびに、1回のフラッシングにおけるショット数(例えば、20ショット)だけ増加する。ステップS03がNOの場合(積算のショット数FLが、空吸引を開始するショット数Nに達していない場合)、ステップS04において、引き続きショット数がモニタリングされる。ショット数のモニタリングの間隔は、例えば、0.1秒程度である。ステップS03がYESの場合(積算のショット数FLが、空吸引を開始するショット数Nに達した場合)、ステップはステップS05の空吸引に進む。
ステップS05では、空吸引が実行される。空吸引は、吸引時間記憶部204bに記憶された時間だけ継続される。この空吸引により、キャップ70内のインクの量は、キャップ70の最大許容インク量を超えないように抑えられる。なお、ステップS05の実行にかかわらず、ステップS02の反復は継続されており、吸引時間記憶部204bに記憶された時間が経過するまでは、空吸引とフラッシングが同時進行する。ステップS05に続くステップS06では、積算のショット数FLが「0」にリセットされる。そして、積算のショット数FLが「0」にリセットされた後に、ステップS04に戻り、ショット数が再びモニタリングされる。ステップS05、S06は、ステップS03において積算のショット数FLが吸引条件記憶部204aに記憶された回数Nに達するたびに反復される。このステップS03〜S06は、図5の場合も同じである。
上記したステップS02およびS03〜S06の間にも、印刷データは逐次、外部コンピュータC1から転送されている。そして、図6のステップS01Aにおいて、印刷データの転送が終了する。つまり、印刷データの全てが転送され終わる。図6のステップS07に示されるように、最後に転送された印刷データに係る印刷が終了すると、印刷作業が終了する。ステップS07における印刷終了は、図5の場合も同じである。なお、ステップS01Aにおいては、印刷データの転送が終了したことを示す信号が外部コンピュータC1からプリンタ10に送信されてもよい。
図5に示された従来の方法によれば、ステップS07の終了時、多くの場合に、キャップ70内にはある程度の量のインクが溜まっている。これは、最後の空吸引から印刷終了までの間に、さらにフラッシングが行われるためである。例えば、最後の空吸引から第1の回数フラッシングされたときに印刷が終了した場合、おおむね上記第1の回数に対応する量のインクがキャップ70内に溜まっている。なお、印刷終了時にキャップ70内に溜まっているインクの量は、印刷データに依存し、一定ではない。例えば、最後の空吸引から第1の回数フラッシングされたときに印刷が終了した場合と、最後の空吸引から第1の回数とは異なる第2の回数フラッシングされたときに印刷が終了した場合とでは、印刷終了時にキャップ70内に溜まっているインクの量は相違する。
図5に示されるように、従来の方法による場合、ステップS07の終了後にステップS08の空吸引(終了時)が実行される。この終了時の空吸引も、例えば、吸引時間記憶部204bに記憶された時間だけ継続される。この間、キャリッジ20は、待機位置P2以外の場所で待機している。そして、ステップS08が終了すると、ステップS09において積算のショット数FLがリセットされ、さらにその後、ステップS10において、インクヘッド50にキャップ70が装着される。
このように、従来の方法による場合、ステップS07の印刷終了からステップS10のキャッピングまでの間に、ステップS08の空吸引を待つ時間が発生する。印刷を連続的に行う場合、このステップS08の待ち時間は、生産性の悪化に繋がりうる。例えば、吸引ポンプ90にチューブポンプを使用した場合などには、上記待ち時間は、数十秒にも達することがある。
そこで、本実施形態に係る吸引制御部204は、印刷中に吸引ポンプ90の動作を開始させ、印刷終了時に合わせて吸引ポンプ90を停止させるように設定されている。より詳しくは、吸引制御部204は、印刷データが全てデータ取得部201に転送され終わったタイミング(ここでは、図6のステップS01A終了時)に合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させ、印刷終了時に合わせて吸引ポンプ90を停止させるように設定されている。
ここで、本実施形態では、「印刷データが全てデータ取得部201に転送され終わったタイミングに合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させる」とは、厳密に同時を意味せず、調整値を介してタイミングを合わせることを意味している。具体的には、本実施形態に係る吸引制御部204は、印刷データが全てデータ取得部201に転送されてから吸引ポンプ90の動作を開始させるまでにフラッシング制御部203がキャップ70に対してインクを吐出させる回数(即ち、フラッシングの回数)を記憶する調整値記憶部204cを備え、印刷データが全てデータ取得部201に転送されてからさらに調整値記憶部204cに記憶された回数だけフラッシングが行われた後に吸引ポンプ90の動作を開始させるように設定されている。本実施形態では、調整値記憶部204cが記憶する調整値は、フラッシングの回数である。
図6に示されるように、本実施形態に係るプリンタ10は、ステップS01Aにおける最後の印刷データ転送を受け、ステップS02Aの印刷およびフラッシングを、調整値記憶部204cに記憶された回数だけ反復する。そして、ステップS02Aの終了後、空吸引(終了時)のステップS08を開始する。残りの印刷およびフラッシングは、ステップS02Bにおいて、ステップS08と平行して実施されている。ステップS08の空吸引は、ここでは、印刷が終了する(ステップS07)時点、または、吸引時間記憶部204bに記憶された空吸引の継続時間が経過する時点のうちのいずれか遅い方まで継続される。ステップS08が完了すると、図5と同様に、ステップS09において、積算のショット数FLがリセットされる。その後、図5と同様に、ステップS10において、キャップ70がインクヘッド50に装着される。ステップS10において、キャッピング制御部205は、吸引ポンプ90の停止後にインクヘッド50を待機位置P2に移動させるとともに、キャップ移動装置80を動作させて、キャップ70をインクヘッド50に装着する。
このように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、印刷終了時の空吸引を印刷終了前に予め開始し、印刷終了時に合わせて終了させることにより、印刷終了時の空吸引を待つ時間をなくすか、または削減できる。なお、「印刷終了時の空吸引を印刷終了時に合わせて終了させる」とは、両者の終了のタイミングを厳密に一致させることまでは意味しない。両者の終了のタイミングについて、不一致の許容範囲は、例えば、200msec〜300msec程度であるが、インクの粘度などにより、許容範囲は異なりうる。また、この許容範囲において、両者のうちのどちらが先に終了してもよい。
さらに、本実施形態に係るプリンタ10では、印刷データが全てデータ取得部201に転送され終わったタイミングに合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させることにより、吸引ポンプ90を不必要に早くから駆動させることを抑制している。データ取得部201が最後の印刷データを取得したということは、印刷が終盤に差し掛かっていることを示しており、印刷終了までの時間がもうそれほど長くないことを示している。印刷データが全てデータ取得部201に転送され終わったタイミングは、吸引ポンプ90を駆動開始させるのに適度なタイミングの1つと考えられ、それに合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させれば、不必要に早くから吸引ポンプ90を駆動させる必要がない。逆に、印刷終了時の空吸引の完了の方が印刷終了より遅れたとしても、その遅れはわずかである。
また、印刷データが全てデータ取得部201に転送され終わったタイミングに合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させる方法は簡易であり、動作のために制御装置200が行う処理の負荷が少ない。
さらに、本実施形態のように、印刷データの転送終了から吸引ポンプ90の駆動開始までのタイミングに関して調整値を設定しうるように構成されていれば、印刷終了のタイミングと空吸引の完了のタイミングとを合わせることがより容易である。なお、本実施形態では、調整値記憶部204cが記憶する調整値は、フラッシングの回数であったが、例えば、時間などであってもよい。また、調整値は「0」に設定されていてもよい。
なお、本実施形態では、吸引制御部204は、印刷データが全てデータ取得部201に転送され終わったタイミングに合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させているが、印刷データのうちの所定量がデータ取得部201に転送され終わったタイミングに合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させてもよい。例えば、印刷データが全て転送され終わったタイミングに合わせて吸引ポンプ90の動作を開始させたのでは、印刷終了時の空吸引の完了が印刷終了よりも遅くなるような場合に、上記方法を適用するとよい。このような方法によっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第2実施形態)
ここに開示する技術は、他の実施形態によっても実施できる。第2実施形態は、空吸引の時間と印刷終了の推定時間とに基づいて印刷終了時の空吸引を開始するタイミングを決定する実施形態である。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通の部材には同じ符号を用いるものとし、重複する説明は省略または簡略化する。図7は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図7に示すように、本実施形態に係る制御装置200は、データ記憶部210と演算部211とを備えている。
データ記憶部210は、印刷データを記憶する部位である。データ記憶部210は、例えば、外部コンピュータC1からデータ取得部201に転送された印刷データを一時的に記憶するように構成されている。外部コンピュータC1からデータ取得部201への印刷データの転送は、一括であっても何回かに分けてであってもよい。
演算部211は、データ記憶部210に記憶された印刷データに基づいて印刷終了時を推定する部位である。演算部211は、例えば、印刷データが分割されて転送される場合、最後の印刷データを取得して印刷データの残量が確定した時点で、印刷終了時間の推定が可能な状態となる。演算部211は、例えば、印刷データの残量から印刷終了までのパス数を演算する。そして、残りのパス数と1パスに要する時間とに基づいて、印刷終了時間を推定する。
本実施形態に係る吸引制御部204は、演算部211によって推定された印刷終了時から吸引時間記憶部204bに記憶されたインク吸引時間を差し引いた時点に合わせて、吸引ポンプ90の動作を開始させる。このような構成によれば、印刷の終了のタイミングと印刷終了時の空吸引の完了のタイミングとを精度よく一致させることができ、空吸引の無駄が少ない。
以上、いくつかの好適な実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、ヘッド移動装置30によりキャリッジ20およびキャリッジ20に搭載されたインクヘッド50が印刷位置P1と待機位置P2とに移動されたが、インクヘッド50と印刷位置P1および待機位置P2との位置関係は相対的なものであり、インクヘッド50が移動される形態に限定されない。
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、例えば、プリント・アンド・カット装置などのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。