以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を前後方向に移動させるとともに、左右方向に移動するキャリッジ20に搭載された吐出ヘッド70からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよい。金属製やゴム製等のシートであってもよい。また、布帛であってもよい。
図1に示すように、プリンタ10は、キャリッジ20と、キャリッジ移動装置30と、記録媒体5を搬送する搬送装置40とを備えている。キャリッジ移動装置30は、ガイドレール31と、ベルト32と、左右のプーリ33aおよび33bと、キャリッジモータ34とを備えている。ガイドレール31には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール31は、左右方向に延びている。ガイドレール31は、キャリッジ20の左右方向への移動をガイドする。ベルト32は、キャリッジ20に固定されている。ベルト32は、無端状のベルトである。ベルト32は、ガイドレール31の右側に設けられたプーリ33aおよび左側に設けられたプーリ33bに巻き掛けられている。右側のプーリ33aにはキャリッジモータ34が取り付けられている。キャリッジモータ34は、制御装置200と電気的に接続されている。キャリッジモータ34は、制御装置200によって制御される。キャリッジモータ34が駆動するとプーリ33aが回転し、ベルト32が走行する。それにより、キャリッジ20がガイドレール31に沿って左右方向に移動する。
キャリッジ20の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、左右方向に延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12上の記録媒体5は、搬送装置40によって前後方向に移動される。搬送装置40は、ピンチローラ41と、グリットローラ42と、フィードモータ43とを備えている。ピンチローラ41はプラテン12の上方に設けられ、記録媒体5を上から押下する。ピンチローラ41は、キャリッジ20より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ42が設けられている。グリットローラ42は、ピンチローラ41の下方に配置されている。グリットローラ42は、ピンチローラ41と対向する位置に設けられている。グリットローラ42は、フィードモータ43に連結されている。グリットローラ42は、フィードモータ43の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ43は、制御装置200と電気的に接続されている。フィードモータ43は、制御装置200によって制御される。ピンチローラ41とグリットローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ42が回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
キャリッジ20には、吐出ヘッド70が搭載されている。図2は、吐出ヘッド70を含むインク吐出装置50の構成を示す模式図である。本実施形態では、複数の種類のインクが使用されるが、図2では、1つのインクに係るインク吐出装置50を図示している。図2に示すように、インク吐出装置50は、インク容器60と、吐出ヘッド70と、インク流路80と、送液ポンプ90と、ダンパ100と、分岐流路110と、バルブ120とを備えている。インク吐出装置50は、さらに、インクの吐出を安定的に行うために吐出ヘッド70等の保全を行う構成を備えている。図2に示すように、インク吐出装置50は、保全機構としてのワイピング装置130およびキャッピング装置140を備えている。
インク容器60には、インクが収容されている。インク容器60は、ここでは、インクを収容可能なタンクである。インク容器60は、例えば、プラスチックで形成されている。図2に示すように、インク容器60は、底部61と、側壁部62と、天面部63とを備えている。底部61、側壁部62、および天面部63によって、インク容器60は、有底有蓋の容器に構成されている。底部61、側壁部62、および天面部63は、インク容器60の内部空間60aを構成している。インクは、内部空間60aに収容されている。底部61には、インクが流出する供給ポート64が設けられている。天面部63には、開口部65が設けられている。開口部65によって、内部空間60aは大気開放されている。開口部65は、インクを内部空間60aに注ぎ足す際の流入口の役割も担っている。
インク容器60の天面部63には、さらに、インクが帰還する帰還ポート66が設けられている。帰還ポート66には、分岐流路110が接続されている。この詳細については後述する。
1つのインク容器60には、例えば、プロセスカラーインクおよび特色インクのうちの1つのインクが貯留されている。インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
吐出ヘッド70は、インクを吐出する部材である。吐出ヘッド70は、キャリッジ20に設けられている。図3は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。図3に示すように、キャリッジ20の下面には、複数の吐出ヘッド70が設けられている。複数の吐出ヘッド70は、キャリッジ20において左右方向に並んで配置されている。複数の吐出ヘッド70は、それぞれ、複数のノズル71を備えている。複数のノズル71は、吐出ヘッド70の下面に形成されている。ノズル71は、インクが吐出される微細な孔である。吐出ヘッド70の下面は、それぞれ、複数のノズル71が形成されたノズル面70aを構成している。ノズル面70aにおいて、複数のノズル71は前後方向に並んでノズル列を形成している。ここでは、ノズル列は、1つの吐出ヘッド70につき2列形成されている。ただし、吐出ヘッド70およびノズル71の配置は上記したものに限定されるわけではない。
図4は、ノズル71周辺の部分断面図である。図4に示すように、ノズル71の近傍には、ケース72と、振動板73と、アクチュエータ74とが設けられている。ケース72は、中空に形成されている。ケース72は、ここでは、上下に配置された2つの部分に仕切られている。ケース72の上方の部分と下方の部分との間には、開口72aが設けられている。ケース72の開口72aよりも下方の部分は、圧力室72bを構成している。ノズル71は、圧力室72bの下壁を上下方向に貫通している。圧力室72bには、インクが収容されている。インク吐出時には、圧力室72bに収容されているインクがノズル71から吐出される。
振動板73は、開口72aを塞ぐように取り付けられている。振動板73はケース72とともに、圧力室72bを区画している。振動板73は、圧力室72bの内側および外側に弾性変形可能な部材である。振動板73は、圧力室72bの容積を増加および減少させるように変形可能に構成されている。振動板73は、典型的には樹脂フィルムである。
圧力室72bの側壁には、インクが流入するインク流入口72cが形成されている。ただし、インク流入口72cは圧力室72bとつながっていればよく、インク流入口72cの位置は何ら限定されない。圧力室72bには、インク流入口72cを通じてインクが供給される。
振動板73の圧力室72bと反対側の面には、アクチュエータ74が当接している。アクチュエータ74は、振動板73を介して、圧力室72bの体積を増減させるように駆動する。これにより、圧力室72bの体積が変化し、圧力室72bの体積の変化によってノズル71からインクが吐出される。アクチュエータ74は、例えば、圧電材料と導電層とが交互に積層された積層体の圧電素子である。アクチュエータ74は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。アクチュエータ74は、制御装置200からの駆動信号を受けると膨張または収縮し、振動板73を圧力室72bの外側または内側に弾性変形させる。
図2に示すように、インク流路80は、インク容器60と吐出ヘッド70とを接続している。インク流路80は、インク容器60に接続された上流側端部81と、吐出ヘッド70に接続された下流側端部82とを有している。インクは、インク流路80を通ってインク容器60から吐出ヘッド70に供給される。インク流路80の材質は限定されないが、例えば、可撓性のチューブによって構成されている。
送液ポンプ90は、インク流路80に設けられている。送液ポンプ90は、駆動時にはインク容器60から吐出ヘッド70に向かう方向にインクを送るように構成されている。送液ポンプ90は、ここでは、チューブポンプである。ただし、送液ポンプ90の種類は限定されず、例えば、ダイヤフラムポンプなどであってもよい。送液ポンプ90は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
ダンパ100は、インク流路80、より詳しくは、送液ポンプ90と吐出ヘッド70との間に設けられている。ダンパ100は、インクが一時的に貯留される貯留室101を備え、インクの圧力変動を緩和している。また、ダンパ100には、貯留室101内のインクの圧力を検出するセンサ102が設けられている。制御装置200は、センサ102が検出する貯留室101内のインクの圧力に基づいて送液ポンプ90の動作を制御している。ここでは、センサ102は、貯留室101内のインクの圧力に応じて伸縮するダンパ膜103を利用して貯留室101内の圧力を検出している。ダンパ膜103は、貯留室101の一面を構成している。ダンパ膜103は、貯留室101内のインクの圧力に応じて、貯留室101の外部側に膨らみ、または内部側に収縮する。センサ102は、直接に、またはダンパ膜103に当接する他の部材を介して、ダンパ膜103が所定の位置よりも内部側に位置しているかどうかを検出する。センサ102は、それにより、貯留室101内のインクの圧力が所定の圧力を下回っているかどうかを検出する。センサ102は、例えば、フォトセンサである。センサ102は、ここでは、貯留室101内のインクの圧力が所定圧力を下回ると信号を発するように構成されている。制御装置200は、センサ102に接続され、センサ102からの信号を受信している。
ただし、センサ102が貯留室101内のインクの圧力を検出する方式は特に限定されない。センサ102は、例えば、インクの圧力を直接測定する圧力センサであってもよい。
制御装置200は、センサ102から信号を受け取ると、送液ポンプ90を駆動させる。送液ポンプ90の駆動により貯留室101内の圧力が所定の圧力以上になると、センサ102は、信号を停止する。制御装置200は、センサ102からの信号が途切れると、送液ポンプ90を停止させる。この制御により、消費されたインクに対応する量のインクが吐出ヘッド70に供給される。
分岐流路110は、インク流路80に接続されている。分岐流路110の一端である第1端部111は、インク流路80のうち送液ポンプ90よりも吐出ヘッド70側の部分(以下、下流部分80aとも呼ぶ)に接続されている。インク流路80の下流部分80aには接続部83が設けられ、分岐流路110の第1端部111は、接続部83に接続されている。分岐流路110は、例えば、可撓性のチューブである。ただし、分岐流路110の材質等は特に限定されない。
分岐流路110は、インク容器60の帰還ポート66に接続されている。分岐流路110の他方の端部である第2端部112は、ここでは、帰還ポート66を通ってインク容器60の内部に挿入されている。第2端部112は、開放された端部である。第2端部112は、インク容器60の内部空間60aに対して開放されている。内部空間60aは大気開放されているため、第2端部112も大気開放されている。
バルブ120は、分岐流路110に設けられている。バルブ120は、分岐流路110を開閉可能に構成されている。バルブ120は、例えば、ソレノイドバルブである。しかし、バルブ120の種類等は限定されない。バルブ120は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
図1に示すように、プラテン12の右方には、ワイピング装置130が設けられている。ワイピング装置130は、吐出ヘッド70のノズル71およびノズル面70aを払拭するワイピング動作を行う。ワイピング装置130は、ワイパー131と、ワイパー移動機構132とを備えている。ワイピング装置130は、ワイパー移動機構132でワイパー131を移動させることによって、ワイパー131に吐出ヘッド70のノズル71およびノズル面70aを払拭させる。
ワイパー131は、平板状に構成されている。ワイパー131は、ここでは、平面部が前後方向を向くように設けられている。ワイパー131は、例えば、ゴムによって形成されている。ワイパー131の上端は、吐出ヘッド70のノズル面70aよりもわずかに高い位置に設定されている。そこで、吐出ヘッド70がワイパー131の移動経路に位置している状態で、ワイパー移動機構132がワイパー131を移動させると、ワイパー131は、吐出ヘッド70のノズル71およびノズル面70aを払拭する。
ワイパー移動機構132は、ワイパー131を前後方向に移動させるように構成されている。ワイパー移動機構132は、ワイパーホルダ133と、ガイドレール134と、ワイピングモータ135(図5参照)と、図示しないベルトとを備えている。ワイパーホルダ133は、ワイパー131を略鉛直に保持するとともに、ガイドレール134に摺動可能に係合している。ガイドレール134は、前後方向に延びている。ベルトは、ワイパーホルダ133に固定されている。ワイピングモータ135は、ベルトを前後方向に走行させる。ワイパーホルダ133は、このベルトの駆動によって前後方向に移動される。それに伴って、ワイパー131が前後方向に移動する。ワイピングモータ135は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
なお、ワイパー移動機構は、吐出ヘッドとワイパーとの間の位置関係を変化させる機構であれば足り、それ以上限定されない。ワイパー移動機構は、ワイパーではなく、吐出ヘッドを移動させてもよく、両者を移動させてもよい。例えば、ワイピング時のワイパーと吐出ヘッドとの相対移動は、キャリッジ移動装置によるキャリッジの移動によって行われてもよい。その場合には、キャリッジ移動装置は、ワイパー移動機構の一部に相当する。
図1に示すように、キャリッジ20の可動範囲の右端には、ホームポジションP1が設定されている。ホームポジションP1は、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。ホームポジションP1におけるキャリッジ20の下方には、キャッピング装置140が配置されている。図2に示すように、キャッピング装置140は、キャップ141と、キャップ移動機構142と、廃液流路143と、廃液タンク144とを備えている。
キャップ141は、複数の吐出ヘッド70を下方から覆うように、キャリッジ20の下面に当接される。また、キャリッジ20から離間される。キャップ141は、上面が開口した容器状の形状を有している。キャップ141は、ゴム等によって形成されている。キャップ141がキャリッジ20の下面に当接することにより、複数の吐出ヘッド70は、キャップ141に覆われる。
キャップ141は、キャップ移動機構142によって支持されている。キャップ移動機構142は、キャップ141をキャリッジ20の下面に装着し、または離間させる。キャップ移動機構142は、キャップ141を下方から支持して上下方向に移動させる。それにより、キャップ141は、吐出ヘッド70を覆い、または吐出ヘッド70を露出させる。キャップ移動機構142は、キャッピングモータ145(図5参照)を備えている。キャッピングモータ145は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
キャップ141の底面には、廃液流路143の一端が接続されている。廃液流路143の他端は、廃液タンク144に接続されている。廃液タンク144は、キャップ141に排出されたインクが廃棄される容器である。廃液流路143は、キャップ141と廃液タンク144とを接続している。廃液流路143も、例えば、可撓性のチューブである。なお、廃液流路143には、インクを廃液タンク144に送る送液ポンプが設けられていてもよい。
図1に示すように、プリンタ10の右端部には、操作パネル240が設けられている。操作パネル240には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル240は、制御装置200と接続されている。
図5は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図5に示すように、制御装置200は、キャリッジモータ34と、フィードモータ43と、吐出ヘッド70のアクチュエータ74と、送液ポンプ90と、バルブ120と、ワイパー移動機構132のワイピングモータ135と、キャップ移動機構142のキャッピングモータ145と、操作パネル240とにそれぞれ電気的に接続され、それらを制御可能に構成されている。また、制御装置200は、ダンパ100に設けられたセンサ102に電気的に接続され、センサ102からの信号を受信している。
制御装置200の構成は特に限定されない。制御装置200は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置200は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
図5に示すように、制御装置200は、インク吐出装置50の保全に係る制御部として、排出制御部210と、ワイピング制御部220と、キャッピング制御部230とを備えている。制御装置200は、印刷動作を制御する制御部、インク吐出装置50の保全に係る他の制御部、またはその他の制御部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
排出制御部210は、ノズル71からのインクの排出、より詳しくは、いわゆる加圧クリーニングの動作を制御する。加圧クリーニングは、送液ポンプ90でインクを吐出ヘッド70に供給することによって、吐出ヘッド70のノズル71からインクを排出する動作である。加圧クリーニングにより、例えば、吐出ヘッド70内の空気がインクとともに排出される。加圧クリーニングは、ノズルからインクを吸引する吸引クリーニングに比べて、例えば、キャップと吐出ヘッドとを密着させる必要がない、吸引用の減圧ポンプを備える必要がない等のメリットがある。
排出制御部210は、加圧クリーニングにおけるインク排出の動作を制御する。排出制御部210は、インクを排出するために、送液ポンプ90およびバルブ120の動作を制御する。図5に示すように、排出制御部210は、第1排出制御部211と、第2排出制御部212と、第3排出制御部213と、第4排出制御部214と、第5排出制御部215とを備えている。
加圧クリーニングにおいて、第1排出制御部211は、送液ポンプ90を駆動させ、ノズル71からインクを排出させる。これにより、インクの排出が開始される。第2排出制御部212は、第1排出制御部211が送液ポンプ90を駆動させた後に送液ポンプ90を停止させる。第1排出制御部211が送液ポンプ90を駆動させてから、第2排出制御部212が送液ポンプ90を停止させるまでが、インクの排出プロセスである。第3排出制御部213は、第1排出制御部211が送液ポンプ90を駆動させる前にバルブ120を閉鎖する。言い換えれば、第1排出制御部211による送液ポンプ90の駆動は、バルブ120が閉鎖された状態で行われる。第4排出制御部214は、第2排出制御部212が送液ポンプ90を停止させた後にバルブ120を開放する。第5排出制御部215は、第4排出制御部214がバルブ120を開放した後に、バルブ120を再び閉鎖する。加圧クリーニングにおける各部の動きの詳細については後述する。
ワイピング制御部220は、加圧クリーニングにおけるワイピング動作を制御する。ワイピング制御部220は、ワイパー移動機構132を制御してワイパー131を前後方向に走行させ、ワイパー131によって吐出ヘッド70のノズル71およびノズル面70aを払拭する。ワイピング制御部220は、ここでは、第4排出制御部214がバルブ120を開放した後、所定の時間が経過後に、吐出ヘッド70のノズル71およびノズル面70aを払拭する。なお、ワイピング制御部220は、必要に応じて実施される他のワイピング動作(加圧クリーニング時のワイピング以外のワイピング)を制御する制御部を備えていてもよい。
キャッピング制御部230は、プリンタ10のキャッピング動作を制御する。キャッピング制御部230は、加圧クリーニングが終了した後、キャップ移動機構142を制御して、キャップ141に吐出ヘッド70を覆わせる。その他、キャッピング制御部230は、吐出ヘッド70からインクが吐出または排出されていないとき、また、吐出ヘッド70に対してワイピングが行われていないとき、基本的にキャップ141に吐出ヘッド70を覆わせる。
以下では、本実施形態に係る加圧クリーニングのプロセスについて、適宜従来のプロセスと比較しながら説明する。図6は、本実施形態に係る加圧クリーニングのプロセスの一例を示すフローチャートである。図6に示すように、加圧クリーニングのステップS01では、バルブ120が閉鎖される。ただし、バルブ120は、前回の加圧クリーニングの終了までに第5排出制御部215によって閉鎖されている。従って、その後、バルブ120が開放されていない限り、ステップS01は省略されてもよい。言い換えると、バルブ120は、第3排出制御部213または第5排出制御部215によって閉鎖され、少なくともステップS02の前までには閉鎖された状態となっている。バルブ120を閉鎖するのは、第3排出制御部213であっても、第5排出制御部215であってもよい。これにより、インクが分岐流路110を通ってインク流路80からインク容器60に帰還する経路が閉鎖される。
続くステップS02では、送液ポンプ90が駆動される。これにより、インクは吐出ヘッド70の側に送られる。インクは、送液ポンプ90による加圧によってノズル71から排出される。ステップS02により、インク流路80の下流部分80aに存在するインクは加圧される。ノズル71からインクが排出されている状態でも、吐出ヘッド70内部のインク流路が非常に狭く、流路抵抗が大きいため、インク流路80の下流部分80aに存在するインクは加圧される。ノズル71から排出されたインクは、キャップ141によって受けられ、廃液タンク144に廃棄される。
ステップS03では、送液ポンプ90が停止される。ステップS03は、ここでは、ステップS02の開始から予め定められた時間が経過した時点で行われる。上記時間は、インクの排出時間である。上記時間は、気泡の排出結果などを考慮して適宜に定められてよい。
ステップS04では、バルブ120が開放される。バルブ120を開放することによって、インク流路80の下流部分80aに存在する加圧されたインクは、分岐流路110の第2端部112から放出される。第2端部112は、開放端である。これにより、インク流路80の下流部分80aの内部の圧力が低下する。
従来のインク吐出装置は、一端がインク流路に接続され他端が開放された分岐流路、および、分岐流路に設けられたバルブを備えていなかった。従って、インク流路の送液ポンプよりも下流部分の圧力は、ノズルからインクが排出されることによってゆっくりと低下していた。インクは、送液ポンプと吐出ヘッドとの間が加圧されている間は、ノズルから排出され続ける。ノズルから液体が排出されることによって送液ポンプと吐出ヘッドとの間の圧力が下がると液体の排出は止まる。ただし、その間は待ち時間となる。一般的に、吐出ヘッド内の流路は非常に狭く、インクの排出速度は遅いため、上記待ち時間は長い時間となっていた。また、キャップによって受けられ、廃液タンクに廃棄されるインクの量も多かった。
それに対し、本実施形態に係るインク吐出装置50は、インク流路80の下流部分80aに第1端部111が接続され、第2端部112が開放された分岐流路110を備えている。インク吐出装置50は、さらに、分岐流路110に設けられ、分岐流路110を開閉可能なバルブ120を備えている。そのため、送液ポンプ90の停止後、バルブ120を開放することにより、インク流路80の下流部分80a内の圧力が低下する。それにより、ノズル71からのインクの排出が迅速に止まる。そこで、本実施形態に係る液体吐出装置50によれば、加圧クリーニング後の待ち時間を低減することができる。また、キャップ141によって受けられ、廃液タンク144に廃棄されるインクの量を減らすことができる。
本実施形態では、分岐流路110の第2端部112は、インク容器60に接続されている。そのため、第2端部112から放出されるインクは、インク容器60に再び収容される。よって、かかる構成によれば、加圧クリーニングによって廃棄されるインクの量を減らすことができる。
さらに、本実施形態では、インク容器60の内部空間60aは、大気開放されている。よって、分岐流路110の第2端部112も大気開放されている。そのため、インク流路80の下流部分80aのインクがスムーズに第2端部112から放出される。なお、第2端部112は、内部空間60a内のインクに浸っていてもよい。
ステップS05では、インクの排出が止まったノズル71およびノズル面70aに対してワイピングが行われる。ステップS05によって、ノズル71およびノズル面70aに付着したインクが除去される。ステップS05は、ステップS04の後、所定の時間が経過した後に行われる。上記時間は、例えば、予め測定しておいたインクの排出が止まるまでの時間に基づいて設定されるとよい。
ステップS06では、バルブ120が閉鎖される。ステップS07では、アクチュエータ74を駆動させてインクを吐出するフラッシングが行われる。フラッシングにより、吐出ヘッド70の内部は負圧となる。これにより、ノズル71からのインクの垂れが抑制される。ステップS07の終了によって、加圧クリーニングは終了する。加圧クリーニングの終了後は、吐出ヘッド70にキャップ141が被せられる。
(変形例)
加圧クリーニングは、いくつかの変形例によっても実施することができる。以下に説明する変形例は、加圧クリーニングのプロセスの一部と、そのようなプロセスを実現する制御装置の構成とを除いて、最初に説明した実施形態と同様である。そこで、以下の変形例の説明では、最初の実施形態と共通の機能を果たす部材には最初の実施形態と同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。
図7は、加圧クリーニングのプロセスの1つの変形例を示すフローチャートである。図7では、図6と共通するステップには、同じステップ番号を付している。また、図8は、この変形例に係るプリンタ10のブロック図である。図8に示すように、本変形例では、ワイピング制御部220は、第1ワイピング制御部221と、第2ワイピング制御部222とを備えている。第1ワイピング制御部221は、第2排出制御部212が送液ポンプ90を停止させた後であって第4排出制御部214がバルブ120を開放する前に、ワイピング装置130にノズル71を払拭させる。また、第2ワイピング制御部222は、第4排出制御部214がバルブ120を開放した後に、再びワイピング装置130にノズル71を払拭させる。
図7に示すように、本変形例では、送液ポンプ90を停止させるステップS03と、バルブ120が開放されるステップS04との間に、ステップS03Aが挿入されている。ステップS03Aでは、ノズル71およびノズル面70aに対してワイピングが行われる。このワイピングは、比較的速い速度でワイパー131を移動させて行われる。以下、このワイパー131の移動速度を第1速度と言う。第1ワイピング制御部221は、第1速度でワイパー131を移動させてノズル71を払拭する。
ステップS03Aの最初のワイピングでは、多くの場合、インクの拭き残りが発生する。この段階では、まだインクが下流部分80aの残圧によってノズル71から排出されている。また、ステップS03Aにおけるワイパー131の速度である第1速度は、比較的速い。ワイピングでは、一般的に、ワイパーの移動速度が遅い方がインク残りが少ない。そのため、ステップS03Aの後も、少量のインクがノズル面70aに残っている。
図7に示すように、本変形例では、図6と同様に、ステップS05においてワイピングが行われる。ただし、本変形例では、ステップS05のワイピングは、2回目のワイピングである。このワイピングは、比較的遅い速度でワイパー131を移動させて行われる。以下、このワイパー131の移動速度を第2速度と言う。第2ワイピング制御部222は、第1速度よりも遅い第2速度でワイパー131を移動させてノズル71を払拭する。
ステップS05の2回目のワイピングでは、拭き残りをできるだけ残さないようにインクが除去される。本願発明者の知見によれば、1回よりも複数回のワイピングを行った方がインクの拭き残しを少なくできる。さらに、本願発明者の知見によれば、1回目のワイピング(ここでは、ステップS03A)においてインクの拭き残しが少しあった方が、2回目のワイピング(ここでは、ステップS05)におけるインクの拭き残しが少なくなる。1回目のワイピングにおける残留インクは、2回目のワイピングにおいてワイパー131をノズル面70a上で滑りやすくする。その結果、2回目のワイピングにおけるインクの拭き残しが少なくなる。本変形例では、そのために、ステップS04でバルブ120が開放される前に、ステップS03Aにおいて1回目のワイピングを行っている。
さらに、本実施形態では、1回目のワイピングにおけるワイパー131の速度である第1速度は、2回目のワイピングにおけるワイパー131の速度である第2速度よりも速く設定されている。これにより、1回目のワイピングにおいて、より確実にインクをノズル面70aに残留させることができる。
以上、好適ないくつかの実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、インク容器60は、内部空間60aが大気開放された容器であったが、密閉容器であってもよい。インク容器は、例えば、一部または全部が、可撓性を有し変形可能に構成された密閉容器であってもよい。図9は、インク容器の他の実施形態を模式的に示す断面図である。図9のインク容器160は、パウチである。インク容器160の内部空間160aは、可撓性を有するパウチ素材161によって構成されている。内部空間160aは、内部空間160aを構成する区画部材としてのパウチ素材161によって密閉空間に構成されている。ただし、内部空間160aを構成する区画部材は、パウチ素材161だけによって構成されていなくともよく、変形不能な素材を含んでいてもよい。つまり、区画部材の一部だけが可撓性を有していてもよい。
図9に示したインク容器160によれば、内部空間160aの容積は、内部空間160a内の圧力と外部の圧力に応じて変動する。そこで、かかるインク容器160は、内部空間が大気開放されたインク容器と同じような挙動をする。即ち、本実施形態では、かかるインク容器160の構成により、インク流路80から流れてきたインクが第2端部112からスムーズに放出される。かつ、インク容器160は密閉されているため、例えば、空気に晒されることによるインクの劣化を抑制することができる。
ただし、密閉型のインク容器は、内部空間の容積が変動可能なものに限定されない。内部空間の容積が変動不能な密閉型のインク容器では、内部空間の圧力は負圧になっているが、それでも分岐流路からのインクを受け入れることは可能である。よって、内部空間の容積が変動不能な密閉型のインク容器に対しても、ここに開示する技術を適用することができる。
さらに、上記した実施形態では、分岐流路110の第2端部112は、インク容器60に接続されたが、他の場所に配置されてもよい。例えば、分岐流路110の第2端部112は、廃液タンク144に挿入されていてもよい。
また、上記した実施形態では、送液ポンプ90の駆動開始(図6では、ステップS02)は、バルブ120の閉鎖(図6では、ステップS01)の後に行われたが、そうでなくてもよい。例えば、送液ポンプ90の駆動開始とバルブ120の閉鎖とは同時に行われてもよい。送液ポンプ90の駆動開始の方が、バルブ120の閉鎖より少し前でもよい。同様に、上記した実施形態では、バルブ120の開放(図6では、ステップS04)は、送液ポンプ90の停止(図6では、ステップS03)の後に行われたが、そうでなくてもよい。例えば、送液ポンプ90の停止とバルブ120の開放とは同時に行われてもよい。バルブ120の開放の方が、送液ポンプ90の停止より少し前でもよい。第3排出制御部213によるバルブ120の閉鎖は、少なくとも、第2排出制御部212が送液ポンプ90を停止させる前であればよい。第4排出制御部214によるバルブ120の開放は、少なくとも、第1排出制御部211が送液ポンプ90を駆動させた後であってかつ第3排出制御部213がバルブ120を閉鎖した後であればよい。
ただし、送液ポンプ90が駆動される前にバルブ120を閉鎖する制御によれば、送液ポンプ90の駆動とともに加圧クリーニングが開始されるため、加圧クリーニングに要する時間が節減できる。また、送液ポンプ90が停止された後にバルブ120を開放する制御によれば、インク排出とインク流路80内の減圧との中間的な状態の時間が発生しないため、インク流路80内を効率よく減圧できる。
上記した実施形態では、バルブ120は、バルブ120の開放から予め定められた時間が経過した後に行われるワイピングのさらに後に閉鎖された。しかし、バルブ120が閉鎖されるタイミングは、バルブ120の開放からの時間に基づいて定められなくてもよい。バルブ120が閉鎖されるタイミングは、例えば、ダンパ100に設けられたセンサ102の出力に基づいて定められてもよい。その場合、バルブ120は、例えば、センサ102が検出する圧力が所定の圧力を下回ったタイミングに基づいて閉鎖されてもよい。このような制御によれば、まだインクがノズル71から排出されているにもかかわらずバルブ120を閉鎖してしまうことや、インク流路80内が過度に負圧になってしまうことを抑制することができる。例えば、インク容器60が吐出ヘッド70よりも低い位置に配置されている場合には、バルブ120の開放により、インク流路80内が負圧になることがあり得る。そのような場合に、かかるバルブ120の閉鎖タイミングの設定は有効である。
なお、インク吐出装置の構成は、上記したものに限定されない。インク吐出装置には、他の部材、例えば、バルブや循環流路などが適宜に追加されてもよく、一部の部材が削除されてもよい。
上記した実施形態では、液体はインクであったが、これには限定されない。液体吐出装置が吐出する液体は、例えば樹脂材料や、溶質と溶媒とを含む各種液状組成物(例えば洗浄液)などであってもよい。また、上記した実施形態では、液体吐出装置は、プリンタに搭載される吐出ヘッドおよびその制御装置であったが、これには限定されない。液体吐出装置は、例えば、液体を吐出する種々の製造装置や、マイクロピペットなどの計測器具などに搭載することができ、各種用途で使用可能である。