JP6985166B2 - 放熱性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
そこで、電子機器においては、半導体素子や電子回路において生じた熱を放熱し、電子機器等の温度上昇を抑えるために、半導体素子をセラミック等からなる基材等の放熱体と接着剤によって接合する技術が知られている。このような接合に用いられる放熱性樹脂組成物は、樹脂材料中に金属酸化物等の熱伝導性を有するフィラーが分散されている。
また、完全に硬化した場合であっても、特許文献1のようなエポキシ樹脂では硬化後の樹脂の弾性率が高いため、硬化後の工程で割れてしまうことがあり、接着信頼性に劣るという問題があった。更に、硬化後の弾性率を低くするために特許文献2のようなシリコーン変性エポキシ樹脂を用いた場合であっても、シランガスの発生によって半導体素子が汚染されてしまうという問題があった。
以下に本発明を詳述する。
エポキシ樹脂が柔軟骨格を有することで、硬化後の樹脂の弾性率が低くなり、後の工程で樹脂が割れ難くなるため接着信頼性を向上させることができる。また、柔軟骨格を有するエポキシ樹脂は、硬化前後での体積変化が小さいため、硬化の際の体積変化による応力で被着体が損傷することを抑えることもできる。なおここで柔軟骨格とは、アルキル鎖やシロキサン等の分子が動きやすい構造をもつ骨格のことを指す。
ポリテトラメチレングリコール変性エポキシ樹脂の重量平均分子量を上記範囲とすることで、硬化後の樹脂をより柔軟なものとすることができる。
上記重量平均分子量のより好ましい下限は230、より好ましい上限は2500である。
金属酸化物粒子は、熱伝導性フィラーとして働き、金属酸化物粒子を含有することで得られる樹脂組成物に放熱性を付与することができる。上記金属酸化物粒子を構成する金属酸化物は、一般的に熱伝導性フィラーとして用いられるものであれば特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化インジウムスズ等が挙げられる。なかでも、熱伝導性に優れることから酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化マグネシウムであることが好ましい。
上記柔軟骨格を有するエポキシ樹脂と上記金属酸化物粒子とカチオン硬化剤を組み合わせることで、放熱性と接着信頼性に優れ、硬化工程を短縮することができる放熱性樹脂組成物とすることができる。
従来の熱硬化型の放熱性樹脂組成物は、大量に含まれる熱伝導性フィラーが樹脂と硬化剤との反応を妨げることによって、硬化に時間がかかっていた。しかし、本発明の放熱性樹脂組成物では、柔軟骨格を有するエポキシ樹脂とカチオン硬化剤を組み合わせることによって、たとえ大量の熱伝導性フィラーを配合した場合であっても、確実に放熱性樹脂組成物を硬化させることができる。また、本発明の放熱性樹脂組成物は、柔軟骨格を有するエポキシ樹脂とカチオン硬化剤を組み合わせることで200℃程度の熱を短時間加えるだけで、加熱を止めた後も徐々に硬化が進行していく性質(熱トリガー効果)を持っている。そのため、硬化工程にかかる時間を短くして製造工程の自由度を高めることができるとともに、徐々に硬化することによって、硬化の際の収縮が抑えられるため、放熱性樹脂組成物の収縮による被着体の破損を抑えることができる。更に、上述のように柔軟骨格を有するエポキシ樹脂を用いることで、硬化後の放熱性樹脂組成物に柔軟性を持たせて接着信頼性を向上させることができる。
上記発熱量を有するカチオン硬化剤は反応の活性が高いことからより確実に樹脂を硬化させることができる。上記発熱量の好ましい下限は8mW、より好ましい下限は9mWである。上記発熱量の上限は特に限定されないが、上記柔軟骨格を有するエポキシ樹脂の熱分解の観点から40mWであることが好ましい。なお、上記発熱量は、示差走査熱量計を用いて、毎分10℃の速度で昇温しながら測定を行った際の発熱ピークの高さによって求めることができる。
カチオン硬化剤の含有量が上記範囲であることで、樹脂をより確実に硬化させることができる。ここで樹脂とは、上記柔軟骨格を有するエポキシ樹脂と上記他の樹脂を合わせたものを指す。上記樹脂100重量部に対する上記カチオン硬化剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は20重量部である。
なお、上記カチオン硬化剤の好ましい含有量は通常用いられるカチオン硬化剤の量と比べて格段に多い。一般的な樹脂に上記の量のカチオン硬化剤を用いると硬化反応に伴う反応熱によって樹脂が焼け焦げてしまう。しかし、本発明では熱伝導性フィラーとして金属酸化物粒子を大量に含有することによって硬化反応が抑えられることから硬化性と反応熱が適度にバランスする。
上記導電性粒子は、熱伝導性フィラーとして働き、導電性粒子を含有することで得られる樹脂組成物に放熱性を付与することができる。上記導電性粒子を構成する金属は、一般的に電気伝導性フィラーとして用いられるものであれば特に限定されず、例えば、金、銀、銅、ニッケル等、あるいは金、銀、銅、ニッケル等で被覆された微粒子が挙げられる。
(エポキシ樹脂)
・四日市合成社製、エポゴーセーPT、柔軟骨格を有するエポキシ樹脂、分子量870
・四日市合成社製、エポゴーセーLA−EP、柔軟骨格を有するエポキシ樹脂、分子量252
・四日市合成社製、エポゴーセーPT高分子グレード、柔軟骨格を有するエポキシ樹脂、分子量2140
・三菱ケミカル社製、jER828、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量380
(カチオン硬化剤)
・三新化学社製、SI−B3A、発熱量:6.8mW
・三新化学社製、SI−B3、発熱量:9.0mW
・三新化学社製、SI−100、発熱量:5.0mW
(熱伝導性フィラー)
・昭和電工社製、AS−40、酸化アルミニウム、体積平均粒子径12μm
・アドマテックス社製、AO−502、酸化アルミニウム、体積平均粒子径0.7μm
表1に記載のエポキシ樹脂、カチオン硬化剤及び熱伝導性フィラーを表1に記載の分量配合し、真空装置付遊星攪拌機で5分間攪拌、混合することで放熱性樹脂組成物を得た。
実施例、比較例で得られた放熱性樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
得られた放熱性樹脂組成物を30mm×30mmのPTFEフィルム上に厚みが1.0mmとなるように塗布し、110℃30分間加熱し、硬化させた。硬化後の放熱性樹脂組成物について、動的粘弾性測定装置(DVA−200、アイティー計測制御社製)を用い、引張・圧縮モード、角周波数1Hzの条件で測定を行うことで、25℃での貯蔵弾性率を測定した。なお、比較例1、2では、硬化反応の熱によって樹脂が焼け焦げてしまい評価を行うことができなかった。また、比較例4では、樹脂が硬化しなかったため評価を行うことができなかった。
得られた放熱性樹脂組成物を20mm×20mmのガラス板上に厚みが1mmとなるように塗布した。次いで、放熱性樹脂組成物を塗布したガラス板を立ててガラス板の1辺がホットプレートに接触するようにし、200℃で1分間加熱した。加熱後、放熱性樹脂組成物が塗布されたガラス板を40℃に保ち、6時間後に加熱した辺から対向する辺の方向へ放熱性樹脂組成物が硬化した長さを測定した。硬化の有無は、直径2mmの円筒形の棒を10gの力で押したときに凹部ができるかどうかで判定した。なお、比較例1、2では、硬化反応の熱によって樹脂が焼け焦げてしまい正常な硬化を行うことができなかった。また、比較例4では樹脂が硬化しなかったため、評価を行うことが出来なかった。
得られた放熱性樹脂組成物を10mm×10mmの銅板上に厚み100μmとなるように塗布した。次いで、銅板の放熱性樹脂組成物を塗布した面上にさらに10mm×10mmの銅板を張り合わせた。その後、放熱性組樹脂成物を含んだ銅板を110℃30分間加熱し、放熱性組樹脂成物を硬化させた。硬化後の放熱性樹脂組成物を含んだ銅板について熱流計法(HFM法)により熱伝導率を測定することで放熱性を評価した。なお、比較例1、2では、硬化反応の熱によって樹脂が焼け焦げてしまったため、評価を行うことが出来なかった。また、比較例4では樹脂が硬化しなかったため、評価を行うことが出来なかった。
Claims (7)
- 柔軟骨格を有するエポキシ樹脂と、金属酸化物粒子と、カチオン硬化剤とを含有する放熱性樹脂組成物であって、
前記カチオン硬化剤は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と前記カチオン硬化剤を重量比で100対0.1の割合で混合した混合物を示差走査熱量計を用いて25℃から10℃/minの昇温速度で測定したときの発熱量が6mW以上であり、
前記柔軟骨格を有するエポキシ樹脂は、ポリテトラメチレングリコール変性エポキシ樹脂であり、
前記カチオン硬化剤は、下記式(2)で表されるカチオン硬化剤である
ことを特徴とする放熱性樹脂組成物。
- ポリテトラメチレングリコール変性エポキシ樹脂の重量平均分子量が200以上3000以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の放熱性樹脂組成物。
- 金属酸化物粒子が酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の放熱性樹脂組成物。
- 金属酸化物粒子の含有量が80重量%以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の放熱性樹脂組成物。
- カチオン硬化剤の含有量が樹脂100重量部に対して5重量部以上25重量部以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の放熱性樹脂組成物。
- 半導体の実装に用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の放熱性樹脂組成物。
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