以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本開示に係る画像形成装置201を示す概略図である。画像形成装置本体(以下、装置本体とする)201Aには、シートに画像を形成する画像形成部201Bが搭載され、装置本体201Aの上方には画像読取装置202が略水平に設置されている。画像読取装置202と装置本体201Aとの間に、シート排出用の排出空間Sが形成されている。
装置本体201Aの下部には、シートPを収納する給送カセット1と、給送カセット1からシートPを給送する給送ユニット13と、をそれぞれ備える複数のシート給送装置230が配置されている。記録媒体として用いられるシートPには、普通紙及び厚紙等の紙の他、コート紙等の特殊紙、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、布、及び封筒等が含まれる。各給送ユニット13は、給送カセット1からシートPを送り出すピックアップローラ8と、ピックアップローラ8から送り出されたシートPを分離しながら搬送するフィードローラ9及びリタードローラ10と、を備える。
画像形成手段としての画像形成部201Bは、4ドラムフルカラー方式の電子写真ユニットである。即ち、画像形成部201Bは、レーザスキャナ210と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を形成する4個のプロセスカートリッジPY,PM,PC,PKを備える。各プロセスカートリッジPY〜PKは、感光体である感光ドラム212、帯電手段である帯電器213、現像手段である現像器214を備えている。また、画像形成部201Bは、プロセスカートリッジPY〜PKの上方に配された中間転写ユニット201Cと、定着部220とを備えている。中間転写ユニット201Cの上方には、現像器214にトナーを供給するためのトナーカートリッジ215が装着されている。
中間転写ユニット201Cは、駆動ローラ216a及びテンションローラ216bに巻き掛けられた中間転写ベルト216を備えている。中間転写ベルト216の内側には、各感光ドラム212に対向した位置で中間転写ベルト216に当接する一次転写ローラ219が設けられている。中間転写ベルト216は、不図示の駆動部により駆動される駆動ローラ216aによって図中反時計回り方向に回転し、感光ドラム212に担持された負極性のトナー像は一次転写ローラ219により順次中間転写ベルト216に多重転写される。
中間転写ユニット201Cの駆動ローラ216aと対向する位置には、中間転写ベルト216に担持されたカラー画像をシートPに転写する二次転写ローラ217が設けられている。二次転写ローラ217の上方に定着部220が配置され、定着部220の上方には第1排出ローラ対225a、第2排出ローラ対225b及び両面反転部201Dが配置されている。両面反転部201Dは、正逆転可能な反転ローラ対222及び一面に画像が形成されたシートを再度、画像形成部201Bに搬送する再搬送通路R等が設けられている。また、画像形成装置201には、画像形成動作及びシート給送動作等を制御する制御手段として、制御部260が搭載されている。
次に、画像形成装置201の画像形成動作について説明する。原稿の画像情報は画像読取装置202によって読み取られ、制御部260によって画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部201Bのレーザスキャナ210に伝送される。画像形成部201Bでは、帯電器213によって表面が所定の極性・電位に一様に帯電させられた感光ドラム212にレーザスキャナ210からのレーザ光が照射され、ドラムの回転に伴ってドラム表面が露光される。これにより、各プロセスカートリッジPY〜PKの感光ドラム212の表面に、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの単色画像に対応する静電潜像が形成される。これら静電潜像は、現像器214から供給される各色トナーにより現像されて可視化された後、一次転写ローラ219に印加される一次転写バイアスにより、感光ドラム212から中間転写ベルト216へと互いに重ね合わせて一次転写される。
このようなトナー像形成動作に並行して、いずれかのシート給送装置230,250からレジストレーションローラ対240へ向けて1枚ずつシートPが給送される。レジストレーションローラ対240は、シートPの斜行を補正した後、画像形成部201Bによるトナー像形成の進捗に合わせてシートPを二次転写ローラ217へ向けて送り出す。二次転写ローラ217と中間転写ベルト216との間に形成される転写部(二次転写部)において、二次転写ローラ217に印加される二次転写バイアスにより、シートPに対してフルカラーのトナー像が一括して二次転写される。トナー像が転写されたシートPは、定着部220に搬送され、定着部220において付与される熱及び圧力によって各色のトナーが溶融混色することで、トナー像はシートPにカラー画像として定着する。
この後、シートPは、定着部220の下流に設けられた第1排出ローラ対225a又は第2排出ローラ対225bによって排出空間Sに排出され、排出空間Sの底部に配置された積載部223に積載される。シートPの両面に画像を形成する際は、第1面に画像が形成されたシートPが反転ローラ対222により反転した状態で再搬送通路Rに搬送され、再度、画像形成部201Bに搬送される。そして、画像形成部201Bによって第2面に画像を形成されたシートPは、第1排出ローラ対225a又は第2排出ローラ対225bによって積載部223に排出される。
なお、以上の画像形成部201Bは画像形成手段の一例であり、感光体に形成したトナー像をシートに直接転写する直接転写方式の電子写真ユニットを用いてもよく、インクジェット方式やオフセット印刷方式の画像形成手段を用いてもよい。
次に、第1の実施形態(実施例1)に係るシート給送装置について説明する。本実施例に係るシート給送装置230は、図1に示すように、画像形成装置201の装置本体201Aに組み付けられている。即ち、給送ユニット13は装置本体201Aの枠体に支持され、給送カセット1は装置本体201Aに対して引出可能に挿入されている。
図2に示すように、シートPが積載されるシート積載手段としての給送カセット1は、カセット本体1aに対して回動軸3を中心にして上下方向(鉛直方向)に回動可能なシート積載部2を備えている。シート積載部2の下方にはカセット本体1aに回動可能に支持されたアーム板4が配置され、アーム板4がリフタモータM1(図3参照)に駆動されて回動軸5を中心にして回動することで、シート積載部2が昇降する。なお、シート給送装置230にはシート積載部2に積載されたシートPの最上位シートの高さを検知可能な高さ検知センサが設けられている。シートPを給送する場合、高さ検知センサの検知信号に基づいて、最上位シートが所定の高さ(給送ユニット13が最上位シートに当接して給送動作を実行可能となる高さ)となるまでリフタモータM1が駆動される。
シート積載部2の載置面である上面2aには、ピックアップローラ8に対向する位置に、摩擦部材6が設けられている。即ち、ピックアップローラ8が最上位シートに当接した状態で、ピックアップローラ8との間にシートPを挟む位置に摩擦部材6が配置されている。
給送ユニット13は、上述した通り、ピックアップローラ8、フィードローラ9、及びリタードローラ10を備える。ピックアップローラ8及びフィードローラ9は、給送モータM2(図3参照)のような駆動手段から駆動力を伝達されることで、シート搬送方向D1に沿って回転する。リタードローラ10は、フィードローラ9に圧接された状態で、回転しない軸に対してトルクリミッタを介して取り付けられている。フィードローラ9及びリタードローラ10が圧接する部分は、シートPを1枚ずつ分離しながら搬送する分離ニップ部を構成している。
ピックアップローラ8は、保持部材であるローラホルダ18によって回転可能に保持される。ローラホルダ18は、フィードローラ9の軸を中心にして揺動可能な状態で、装置本体の枠体に固定された給送フレーム19によって支持されている。ピックアップローラ8は、ローラホルダ18及びピックアップローラ8等の自重、又は、これらの自重とローラホルダ18を下方に付勢する図示しないバネ等の付勢力により、所定の高さまで上昇した最上位シートの上面に圧接する。
シートPの給送を行う際は、シート積載部2の上昇によりシートPがピックアップローラ8に当接した状態で、給送モータM2から供給される駆動力によりピックアップローラ8及びフィードローラ9が回転駆動される。これにより、最上位シートがピックアップローラ8によって分離ニップ部へ向けて送り出され、フィードローラ9及びリタードローラ10によって他のシートから分離された状態で画像形成部201Bへ向けて搬送される。
分離ニップ部においてシートが分離される仕組みを説明する。フィードローラ9には給送モータM2の駆動がギヤ列等の駆動伝達機構により伝達されて、シート搬送方向D1に沿った回転方向に回転する。ここで、分離ニップ部にシートPが入り込んでいない状態で、フィードローラ9とリタードローラ10との間の摩擦力によりリタードローラ10に入力されるトルクをTaとする。また、分離ニップ部に1枚だけのシートPが進入している状態で、シートPと各ローラとの摩擦により、シートPを介してフィードローラ9からリタードローラ10に入力されるトルクをTbとする。このとき、リタードローラ10のトルクリミッタの許容トルクTtlは、次の条件(1)、(2)を満たすように設定されている。
Ta>Ttl ・・・(1)
Tb>Ttl ・・・(2)
これらの条件を満たすとき、トルクリミッタは過負荷によって空転し、リタードローラ10はフィードローラ9に連れ回ってシート搬送方向D1に沿った回転方向に回転する。従って、1枚のみのシートPが分離ニップ部に進入したときは、シートPはシート搬送方向D1に搬送される。
これに対し、2枚以上のシートPが分離ニップ部に進入した状態で、フィードローラ9から複数のシートPを介してトルクリミッタに入力されるトルクをTcとすると、通常、Tcの大きさはシート間の摩擦力によって制限される。シート間の摩擦力は、シートの材質(例えば表面処理の有無)や雰囲気(例えば湿度)に影響を受けるが、トルクリミッタの許容トルクは、通常の条件下で次の条件(3)を満たすように設定される。
Tc<Ttl ・・・(3)
この条件を満たすとき、トルクリミッタは空転せず、リタードローラ10はフィードローラ9に連れ回らずに停止したままとなる。そして、最上位シートがフィードローラ9によってシート搬送方向D1に搬送される一方で、最上位シートの下に重なるシートはリタードローラ10によって制止されて最上位シートに対して滑るため、シートPの重送が防がれる。
次に、シート積載部2に取り付けられている摩擦部材6について説明する。摩擦部材6は、給送カセット1から最後に給送されるシート、つまりシート積載部2の上面2aに接触しているシート(以下、最終シートとする)に対して、シート搬送方向D1とは逆方向の摩擦力を与える。摩擦部材6は、シート積載部2に複数枚のシートPが積載され、かつピックアップローラ8が最上位シートに当接した状態で、次の条件(4)が満たされるように構成される。
Fa>Fb ・・・(4)
ただし、Faは最終シートが摩擦部材6から受ける摩擦力(最大静止摩擦力)であり、Fbは最終シートがその上に重なるシートから受ける摩擦力(最大静止摩擦力)である。
この条件を満たすとき、最終シートが摩擦部材6に対して静止している状態で、その上に重なるシートがピックアップローラ8からFbより大きな接線力を受けることで最終シートに対して滑ることになる。即ち、摩擦部材6は、最終シートがその上に積載されたシートと共にピックアップローラ8によって給送されることを防ぎ、シート給送装置の耐重送性能、つまりシートの重送を防ぐ能力を向上させることができる。
なお、ピックアップローラ8及び摩擦部材6は、いずれもシートPの表面に面接触可能な弾性材料(ソフトマテリアル)によって構成される。ピックアップローラ8は、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やポリウレタン等の材料で形成され、摩擦部材6は、例えばポリウレタン樹脂やコルク等の材料で形成されている。
(スティックスリップ)
ここで、最終シートの給送を行う場合に、摩擦部材6と最終シートとの接触面で生じることのあるスティックスリップ現象について説明する。スティックスリップ現象が生じた場合、シート及びピックアップローラ8が振動し、その振動がシート給送装置230のフレーム等で増幅されることで異音となることがある。
スティックスリップ現象は、一般的に、摺動する物体間の静止摩擦係数が大きいほど起こりやすい。また、物体間の相対移動速度(本実施例の場合はシート搬送速度)が低速であるほど、スティック状態が長くなり静止摩擦力が大きくなるため、スティックスリップ現象が起こりやすいことが知られている。例えば、村木正芳(2007)『図解 トライボロジー 摩擦の科学と潤滑技術』日刊工業新聞社参照。
従って、シートを給送する際のシート搬送速度(給送速度)を高速に設定することは、スティックスリップ現象の発生防止に有効である。しかし、給送速度を増加させる場合、耐重送性能の低下に留意する必要がある。この理由は以下の通りである。複数枚が重なった状態(重送状態)で分離ニップ部に到達したシートは、フィードローラ9及びリタードローラ10の作用によって分離される。ここで、給送速度が大きい程、フィードローラ9の回転速度、及びシートが分離ニップ部に存在しない状態でフィードローラ9に連れ回るリタードローラ10の回転速度が大きくなる。そのため、重送状態のシートが分離ニップ部に到達した際に、リタードローラ10に働く慣性力によってリタードローラ10が即座に回転を停止することができず、シートを重送状態のままで通過させてしまう場合がある。そして、分離ニップ部の下流側の搬送部材(例えば、図1の搬送ローラ対14)に重送状態のシートが到達したり、次のシート給送動作の開始時のシート位置がずれたりすると、ジャム(紙詰まり)等の搬送異常の原因となる。
そこで、給送速度が比較的低速に設定される給送モードと、給送速度が比較的高速に設定される給送モードとを、シート積載部2に積載されたシートの残量に応じて切替えることが考えられる。本実施例では、特にシート積載部2に積載されたシートが1枚のみである場合(最終シートの給送を行う場合)に、複数枚のシートが積載されている場合に比べて給送速度が大きくなるように構成される。最終シートについてはシートを分離する必要がないため、最終シートの給送速度を上げることで、耐重送性能を下げることなくスティックスリップ現象を防ぎ、異音の発生を低減することができる。以下、本実施例におけるシート給送動作の制御方法について説明する。
図2及び図3に示すように、シート給送装置230には、シート積載手段に積載されたシートの量を検知する検知手段としてのシート残量検知センサ11が設けられている。シート残量検知センサ11は画像形成装置201に搭載された制御部260に接続され、制御部260は、シート残量検知センサ11の検知結果に基づいてリフタモータM1及び給送モータM2の駆動状態を制御する。制御部260は、シート給送装置を制御する制御手段の一例であり、制御プログラム及びシートの属性等の情報を格納する記憶部としてのメモリ262と、メモリ262からプログラムを読出して実行するCPU(中央演算装置)261とを含む。
シート残量検知センサ11は、シート積載部2に積載されたシートに向けて超音波を発信する発信部11aと、発信部11aに対向して配置された受信部11bとで構成される。シート残量検知センサ11は、発信部11aが発信した超音波を受信部11bで受信し、その強度を測定する。超音波はシートを介して伝播する過程で減衰するため、シート積載部2に多数のシートが積載されている場合、発信部11aが発信した超音波の強度に対する受信部11bで受信した超音波の強度の減衰の程度が大きくなる。シート積載部2に少数のシートが積載されている場合、又はシートが積載されていない場合、減衰の程度は小さくなる。このことから、シート残量検知センサ11は発信部11aと受信部11bとの間に積載されたシートの量を検知可能であり、特に、シート積載部2に積載されたシートが最終シートか否か(シートが1枚のみか複数枚か)を検知可能である。
制御部260は、シート残量検知センサ11からの検知信号を受信し、その検知信号に基づいて、今回のシート給送動作によって給送するシートが最終シートかどうかを判断する。そして、制御部260は、最終シートを給送する際に、最終シート以外のシートを給送する際の給送速度(第1の速度)より速い給送速度(第2の速度)で最終シートが搬送されるように、給送モータM2によるピックアップローラ8の駆動速度を変更する。なお、最終シートの給送速度は、最終シートと摩擦部材6との間でスティックスリップ現象を発生させないように設定される速度であり、これについては後で詳細に説明する。
ここで、最終シートの給送速度を、先行するシートの給送速度に比べて大きく設定する場合に、先行シートと最終シートとのシート間距離を適切に保つ方法について説明する。図4は、縦軸にシートの先端及び後端、つまりシートの搬送方向における下流端及び上流端の位置を、横軸に時間を示している。最終シート以外のシートを給送する場合、給送速度はV1であり、先行するシートとの給送間隔はΔt0であるものとする。また、最終シートの給送速度はV2であるものとする。ただし、給送間隔とは、あるシートがピックアップローラ8によって給送を開始され、その先端が給送カセット1の先端セット位置から移動を始めてから、後続するシートの先端が先端セット位置から移動を始めるまでの時間間隔である。V1、V2は
V1<V2 ・・・(5)
の関係を満たし、給送速度V2でシートを搬送した場合には最終シートと摩擦部材6の接触面におけるスティックスリップ現象は発生しないものとする。
ここで、今回給送されるシート(第2のシート)が最終シートであるか否かに関わらず、先行するシート(第1のシート)が転写部に進入してから今回のシートが転写部に進入するまでの時間間隔が一定(Δt0)となることが好ましい。また、転写部におけるシートの搬送速度は、最終シートであるか否かに関わらず、一定(V1)となることが好ましい。これは、可能な限り均質な条件で画像形成を行うことで、シート間で画像の濃度ムラ等の影響が現われることを避けるためである。
最終シート以外のシートを給送する場合(破線参照)、先行するシートの給送が時刻t0に速度V1で開始された後、時刻t0からΔt0の時間(第1の時間)が経過した時刻t1に速度V1でシートの給送が開始される。この場合、速度V1でシートの搬送を継続することにより、転写部におけるシート同士の時間間隔(Δt0)及びシート搬送速度(V1)が一定に保たれる。
一方、シート残量検知センサ11によって今回給送するシートが最終シートであることが検知された場合、給送速度の設定がV1からV2に切り替わると共に、最終シートの給送が開始される前に待ち時間Δt1が挿入される。即ち、先行するシートの給送が時刻t0に開始されてから、Δt2(=Δt0+Δt1)の時間(第2の時間)が経過した時刻t2に最終シートの給送が開始される。速度V2で給送されたシートは、シート先端が転写部に進入する時刻t3に搬送速度をV1に切り替えられる。これにより、最終シートについても、先行するシートに対してΔt0の時間間隔で、かつ先行するシートと同じシート搬送速度(V1)で転写部に送り込まれる。
次に、前述したシートと摩擦部材6の間でスティックスリップが発生しない速度V2の決定方法を説明する。実験等の検討から、シート給送装置に関して、スティックスリップ現象の発生有無を左右する要素は、主に給送フレーム19の剛性と、ピックアップローラ8を保持するローラホルダ18の減衰係数であることが分かった。給送フレーム19の剛性は、例えば、構造解析ソフトを用い、給送時を想定した力を加えた際のフレームの変形量から計算する等の方法で算出する。ここで減衰係数は、物体を自由振動させた際に、振動の隣り合う山の振幅の比を対数で表したものと定義する。言い換えると、減衰係数は物体の振動がどの程度減衰しやすいかを表す係数である。ローラホルダ18の減衰係数は、例えば、ハンマリング試験等を行うことで算出できる。
図5は縦軸にローラホルダ18の減衰係数、横軸に給送フレーム19の剛性を示しており、あるシート給送装置の給送フレーム19の剛性K、ローラホルダ18の減衰係数Cをグラフ上にプロットしたものが星印である。また、前述のように、シートの給送速度もスティックスリップ現象の発生有無に影響を与える。そこで、任意の給送速度Va,Vb,Vcに対し、スティックスリップが発生する領域としない領域を分ける境界線を、シート給送装置の質量、剛性、減衰係数、及び摩擦部材の摩擦係数の情報から算出すると、図5に示す曲線を描く。ただし、Va<Vb<Vcである。
ここで、あるシート給送装置についての剛性K及び減衰係数Cのプロット(星印)は、Vb境界線より右上、かつVa境界線より左下の領域に位置している。すなわち、このシート給送装置で最終シートを搬送する場合、搬送速度がVaであればスティックスリップが発生する可能性があり、搬送速度がVb以上であればスティックスリップは発生しないことが分かる。従って、シートの給送速度V1,V2を一律でVaに設定すると最終シートでスティックスリップが発生する場合であっても、最終シートの給送速度V2を速度Vbに設定することで、スティックスリップの発生を抑制することができる。速度V1、V2に関して、生産性が毎分45枚に設定された機種で、例えばV1=200[mm/s]、V2=300[mm/s]と設定されている。当然のことながら、シート給送装置の構成(グラフ上のプロット位置)及び要求される生産性に応じて、V1及びV2の値は適宜変更される。
(給送タスクの制御)
次に、本実施例における給送タスクの制御方法について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。画像形成装置に画像の出力を要求する信号(画像形成ジョブ)が入力されると、制御部260は、画像形成ジョブの実行に必要なシートを給送するためにシートの給送タスクを開始する。まず、制御部260は、シート残量検知センサ11によって今回給送するシートが最終シートであるか否かを検知する(S10)。シートが最終シートではない場合(S10のNO)、シートを速度V1で1枚給送する(S11)。その後、給送タスクが終了かどうかを判定し(S12)、終了であれば動作を停止し(S12のYES)、未完了であれば次のシートについての処理を開始する(S12のNO)。
一方、シート残量検知センサ11の検知結果に基づいて、今回給送するシートが最終シートであると判断した場合(S10のYES)、制御部260は、1枚前のシートの給送が開始された時刻t0からΔt2の時間が経過するまで待機する(S13のNO)。そして、経過時間がΔt2を超えると(S13のYES)、給送速度をV2に変更して最終シートを搬送する(S14)。その後、給送タスクが終了かどうかを判定し(S12)、終了であれば動作を停止し(S12のYES)、未完了であれば次のシートについての処理を開始する(S12のNO)。
このように、本実施例では、シート残量検知センサ11の検知結果に基づいて、第1の速度(V1)でシートを給送する第1給送モード(S11)と、第1の速度より大きい第2の速度(V2)でシートを給送する第2給送モード(S14)とが切替わる。即ち、シート積載部2に第1の量のシートが積載されている場合、第1給送モードが実行され、シート積載部2に第1の量より少ない第2の量のシートが積載されている場合、第2給送モードが実行される。これにより、最終シートを給送する際のスティックスリップ現象による異音の発生を低減することができる。また、シート積載部2に多数のシートが積載された状態でシートを給送する場合の給送速度を抑えて、耐重送性能を確保することができる。
また、本実施例では、第1給送モードでシートを給送する場合の給送間隔Δt0(第1の時間)に比べて、第2給送モードでシートを給送する場合の給送間隔Δt2(第2の時間)が長くなるように設定される(図4参照)。これにより、給送速度V1,V2の差が給送開始時刻の差(Δt1)によって相殺され、転写部におけるシート間隔を、画像形成部201Bが安定して高品位の画像を形成するのに適した略一定の間隔(Δt0)に保つことができる。
[変形例]
上記実施例1ではシートの給送速度を図4に示すチャートに沿って制御しているが、異なる方法で給送速度を制御することも可能である。その例を図7(a)、(b)に示す。図7(a)に示す例では、最終シートを給送する場合、先行するシートの給送開始時刻t0からΔt0の時間が経過した時刻t1に速度V2で最終シートの給送を開始する。その後、Δt5の時間が経過した時刻t5からシートの搬送を一時停止させ、時刻t1からΔt6の時間が経過した時刻t6に速度V1でシートの搬送を再開する。また、図7(b)の例では、最終シートを給送する場合、時刻t1に速度V2でシートの給送を開始してからΔt5の時間が経過した時刻t5にシートの搬送速度をV3に減速した後、最終シートの先端が転写部に到達する時刻t3に搬送速度をV1に切替える。ただし、速度V1,V2,V3は、次の式(6)を満たすものとする。
V2>V1>V3 ・・・(6)
図7(a)、(b)のいずれの例においても、最終シートの先端が所定位置(ここでは転写部)に到達するまでの間にシートの搬送速度が切り替えられて、速度V1より小さな状態(速度がゼロの場合を含む)となる期間が設けられている。このように、実施例1のように最終シートの給送開始を遅らせる方法に代えて、最終シートの搬送速度を途中で減速する方法を用いても、所定位置におけるシートの間隔や搬送速度を一定に保つことが可能となる。なお、本実施例は転写部(二次転写部)におけるシートの間隔が一定になるように制御されるが、画像形成装置の他の部位にシートを給送するシート給送装置の場合には、シート間隔を一定に保つ目的位置(所定位置)が置き換わる。例えば、画像読取装置202(図1参照)において原稿となるシートを給送するシート給送装置の場合、読取ユニットによってシートが走査される読取位置におけるシートの間隔及び搬送速度が一定であることが好ましい。
また、上記実施例1では最終シートの搬送速度を大きくすることでスティックスリップ現象の発生を抑制しているが、物体同士の接触面に生じる荷重を低減することもスティックスリップ現象の抑制に有効であることが知られている。そこで、図8に示すように、最終シートを給送する場合のピックアップローラ8とシートの当接圧P2を、最終シート以外のシートを給送する場合の当接圧P1に比べて小さくする方法を用いてもよい(S11b,S13b)。この場合、例えばリフタモータM1によってアーム板4(図2参照)の角度を制御することにより、ピックアップローラ8とシートの当接圧を調節可能である。アーム板4は当接圧を調節可能な調節手段の一例であり、ローラホルダ18を揺動させるカム機構やソレノイドを配置してもよい。
最終シートについての当接圧P2を小さく設定することで、最終シートと摩擦部材6との間に発生する摩擦力が低減され、スティックスリップ現象の発生が抑制される。一方、最終シート以外のシートを給送する場合の当接圧P1は、ピックアップローラ8がシートを確実に給送できるように、P1より大きな値に設定される。なお、図8に示す例では最終シートを給送する際の当接圧P2が一定に保たれるが、給送動作の途中で当接圧をP1からP2に低下させてもよい。また、当接圧を小さくする形態として、最終シートが分離ニップ部に到達した後にピックアップローラ8をシートから離間させる等の方法により、当接圧をゼロにしてもよいものとする。
上記実施例1におけるピックアップローラ8はシート積載手段からシートを給送する給送手段の一例であり、例えば、ピックアップローラ8を省略して、フィードローラ9がシート積載部2に積載されたシートに直接当接して給送する構成としてもよい。このような場合であっても、シートの残量に応じて給送モードを切替え、かつシート給送装置の構成に応じて給送速度を適切に設定することで、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、実施例1では、リタードローラ10に駆動力を伝達しない構成としているが、シートPを戻す方向(シート搬送方向D1に逆らう方向)の駆動力が入力されるようにリタードローラ10を駆動源に接続してもよい(図2参照)。また、ローラ部材に代えてパッド部材を分離部材として用いて、フィードローラ9によって搬送されるシートを他のシートから分離する構成としてもよい。
次に、第2の実施形態(実施例2)について説明する。図9(a)、(b)は、本実施例に係るシート給送装置230の構成を説明するための概略図である。本実施例に係るシート給送装置230について、実施例1と共通する要素には実施例1と同じ符号を付して説明を省略する。
本実施例において、摩擦部材6は昇降可能な中板等ではなく、画像形成装置の装置本体に着脱可能な給送カセット1に直接設けられている。即ち、摩擦部材6は、シートの載置面である、カセット本体1aの底部1bに設けられ、給送カセット1に収納されたシートPを挟んで給送ユニット13のピックアップローラ8に対向するように配置されている。給送ユニット13のピックアップローラ8は、上下方向に、つまりカセット本体1aの底部1bに接近及び離間するように揺動可能なローラホルダ18に支持されており、付勢部材であるバネ16の付勢力によって下方へ向けて付勢されている。ピックアップローラ8によって給送カセット1から送り出されたシートPは、実施例1と同様に、フィードローラ9及びリタードローラ10の間の分離ニップ部を介して、1枚ずつ画像形成部へ向けて搬送される。
図9(a)は給送カセット1に積載可能な最大量のシートが積載された状態(満載状態)を表し、図9(b)は給送カセット1に少数のシートが積載された状態を表している。シートの積載量が少ない場合(図9(b))、満載状態に比べてバネ16の付勢力が減少するため、ピックアップローラ8とシートPの当接圧が低下する。従って、本実施例では、給送カセット1に積載されたシートの量が減少する程、シート間に発生する摩擦力が小さくなり、給送速度を上昇させたとしても重送が発生する可能性は小さく抑えられる。そこで、本実施例では、最終シートを給送する場合だけでなく、給送カセット1に積載されたシートの量が所定量以下である場合に給送速度を増加させる構成とする。
シート給送装置230には、シートの量を検知する検知手段としてシート残量検知センサ11Bが配置されている。シート残量検知センサ11Bは、発信部11aと受信部11bとを有する超音波センサであり、受信部11bが検出した超音波の減衰の程度から給送カセット1に積載されたシート量を検知可能である。シート残量検知センサ11Bは、画像形成装置201の制御部260(図3参照)に接続され、制御部260はシート残量検知センサ11Bの検知信号に基づいてシート給送装置230の動作を制御する。
以下、本実施例における給送タスクの制御方法を、図10に示すフローチャートを用いて説明する。シートの給送タスクを開始すると、制御部260はシート残量検知センサ11によってシート残量を検知する。シートが一定枚数(所定枚数)以下ではない場合(S20のNO)、速度V1でシートを1枚給送する(S21)。その後、給送タスクが終了かどうかを判定し(S22)、終了であれば動作を停止する(S22のYES)、未完了であれば次のシートについての処理を開始する(S22のNO)。
シート残量が一定以下である場合(S20のYES)、制御部260は、1枚前のシートの給送が開始された時刻t0からΔt2の時間が経過したかを判定する(S23)。そして、経過時間がΔt2を超えると(S23のYES)、給送速度をV2に変更してシートを1枚給送する(S24)。その後、給送タスクが終了かどうかを判定し(S22)、終了であれば動作を停止する(S22のYES)、未完了であれば次のシートについての処理を開始する(S22のNO)。給送速度がV2に切替わった後は、シート残量が一定以下の状態が続くため、給送タスクが継続する限りは速度V2でシートの給送が行われる。なお、Δt2の設定は実施例1と同様であり、給送速度がV1からV2に切替わっても転写部におけるシート間隔が保たれるように設定される(図4参照)。また、実施例1の変形例と同様に、給送速度の切替えに伴って給送間隔を変える方法に代えて、シート搬送の途中で搬送速度を減速することでシート間隔を保つようにしてもよい。
このように、本実施例においても、シート残量検知センサ11Bの検知結果に基づいて、第1給送モード(S21)と第2給送モード(S24)とが切替わる。これにより、シート積載部2に第1の量のシートが積載された状態では給送速度が低速(V1)に設定され、第2の量のシートが積載された状態では給送速度が高速(V2)に設定される。即ち、シート積載量が多い場合の耐重送性能を確保する一方で、最終シートを給送する際のスティックスリップ現象による異音の発生を低減することができる。
次に、第3の実施形態(実施例3)について説明する。上記実施例1,2では、スティックスリップ現象による異音の発生を低減可能な第2給送モードとして、給送速度を第1給送モードより高速に設定する方法を用いている。本実施例では、第2給送モードにおいて給送手段に伝達される駆動力が、第1給送モードに比べて小さくなるように構成することで異音の発生を低減する。シート積載量の検知結果に基づいて給送モードを切替える点は実施例1と同様であり、以下、実施例1と共通する要素には実施例1と同じ符号を付して説明を省略する。
図11は、本実施例に係るシート給送装置230の構成を説明するための概略図である。シート給送装置230は、シート積載手段としての給送カセット1と、給送手段としてのピックアップローラ8を含む給送ユニット13と、を備える。給送カセット1のシート積載部2には、ピックアップローラ8に対向する位置に摩擦部材6が配置されている。また、シート給送装置230には、シート積載部2に積載されたシートの量を検知可能な検知手段として、発信部11a及び受信部11bを有する超音波センサ等のシート残量検知センサ11が設けられている。
ここで、本実施例では、フィードローラ9及びリタードローラ10の下流に配置された搬送ローラ対14にシートが到達したことを検知するシート検知手段として、シート検知センサ15が配置されている。図12に示すように、シート検知センサ15は、シート残量検知センサ11と共に制御部260に接続されている。制御部260は、これらのセンサからの検知信号に基づいてリフタモータM1、給送モータM2、及び搬送ローラ対14を駆動する搬送モータM3の駆動状態を制御する。
前述した通り、最終シートを搬送する際、シートと摩擦部材6との接触面においてスティックスリップ現象が発生する場合があり、その振動がシート給送装置230のフレーム等で増幅されることで異音が生じる。ここで、あるローラ又はその近傍でスティックスリップ現象を起因とする振動が発生した場合、ローラに入力される駆動力を弱めることで振動を抑制できることが知られている。これは、駆動を弱めることで、駆動源からローラに到る駆動力の伝達経路における部材間のガタ(遊び)の影響が大きくなり、ローラを保持する構成の見かけ上の剛性が変化するためである。言い換えると、ローラに対して周期的な外力が加わったとしても、ローラの変位がガタによって吸収されるため、異音として感知されない程度に振動の伝播を抑制することが可能となる。
本実施例の場合、図11に示すように、給送モータM2の駆動力はギヤ列又はベルト伝動機構等の駆動伝達部17を介してフィードローラ9の駆動軸9Aに入力される。さらに、駆動軸9Aの回転は、ローラホルダ18に保持されたアイドラギヤ等の伝達部材を介してピックアップローラ8に伝達される。従って、給送モータM2が出力するトルクを低減することにより、ピックアップローラ8に加わる振動を、給送モータM2から駆動伝達部17及び駆動軸9Aを介してピックアップローラ8に到る駆動伝達経路において吸収させやすくなる。
ところで、ピックアップローラ8等、シートを搬送するためのローラの駆動力を弱めると、シート搬送能力が低下して不送りが発生する懸念がある。そのため、制御部260は、シート残量検知センサ11からの検知信号に基づいて、最終シートを給送する場合にピックアップローラ8の駆動力を弱める制御を行う。
以下、本実施例における給送タスクの制御方法について、図13のフローチャートに沿って説明する。シートの給送タスクを開始すると、制御部260は給送モータM2の駆動を開始し(S30)、シート残量検知センサ11によって今回給送するシートが最終シートであるか否かを判断する(S31)。シートが最終シートではない場合(S31のNO)、通常の制御で給送モータM2と搬送モータM3を駆動しシートPを搬送する(S32〜S34)。この場合、シートが搬送ローラ対14に到達したことがシート検知センサ15によって検知(S32)されても、給送モータM2によるピックアップローラ8の駆動は継続される。そして、次のシートを送り出さないように、シートの後端がピックアップローラ8を通過する前の適当なタイミングで給送モータM2が停止される(S33,S34)。給送モータM2の停止タイミングは、例えば給送カセット1に積載されたシートのサイズ情報及びシートの給送速度から算出される。その後、給送タスクが終了か否かを判定し、終了であれば動作を終了し(S35のYES)、未完了であれば次のシートについての処理を開始する(S35のNO)。
一方、今回給送するシートが最終シートである場合(S31のYES)、制御部260はシート検知センサ15からの検知信号に基づいてシートが搬送ローラ対14に到達するまで待機する(S36のNO)。シートが搬送ローラ対14に到達したと判断すると(S36のYES)、制御部260は給送モータM2の駆動を停止する(S37)。このとき、搬送モータM3による搬送ローラ対14の駆動は継続されており、シートは搬送ローラ対14によって引き続き画像形成部へ向けて搬送される。その後、給送タスクが終了か否かを判定し、終了であれば動作を終了し(S35のYES)、未完了であれば次のシートについての処理を開始する(S35のNO)。
このように本実施例では、シート残量検知センサ11の検知結果に基づいて、第1給送モード(S32〜S34)と、第1給送モードに比べてピックアップローラ8に伝わる駆動力が弱くなるように制御される第2給送モード(S36〜S37)とが切替わる。これにより、最終シートを給送する場合に、スティックスリップ現象による異音の発生を低減することができる。また、最終シート以外のシートについては、一定の駆動力でピックアップローラ8の駆動を継続することで、不送り等を防いでシートを確実に搬送することができる。
また、本実施例では、ピックアップローラ8より下流の搬送ローラ対14にシートが到達した時点で、ピックアップローラ8の駆動が停止される。言い換えると、第2給送モードにおいて、給送手段より下流の搬送手段にシートが到達した状態で、給送手段に伝達される駆動力がゼロとなるまで弱められる。これにより、シートと摩擦部材6の接触面で振動が発生したとしても、シート給送装置230の給送フレーム19等に伝わるまでに十分に減衰させることができ、異音の発生をより効果的に抑制することができる。
[変形例]
本実施例では、第2給送モードにおいてピックアップローラ8の駆動を切る(駆動力をゼロにする)制御を行っている。しかしながら、第2給送モードにおける給送モータM2の出力トルク(第2のトルク)を、第1給送モードにおける給送モータM2の出力トルク(第1のトルク)より小さく設定してもよい。このような制御を実現する方法としては、例えば給送モータM2としてDCモータを用いると共に、第2給送モードにおいてモータの巻線に流れる電流の最大値を、第1給送モードにおける電流の最大値より小さくなるように制限すればよい。また、本実施例ではシートが搬送ローラ対14へ到着したか否かをシート検知センサ15を用いて判断しているが、例えば、給送モータM2による給送ユニット13の駆動開始からの経過時間によって搬送ローラ対14へのシートの到着を判断してもよい。
[その他の実施形態]
以上の各実施例では、画像形成装置201の装置本体201Aに対して着脱可能な給送カセットを有するシート給送装置230(図1参照)について説明したが、他のシート給送装置に本技術を適用してもよい。画像形成装置201の側面に設けられた手差し給送装置250は、このようなシート給送装置の一例である。手差し給送装置250は、装置本体201Aの側面に開閉可能に設けられた手差しトレイ20(シート積載手段)を有し、手差しトレイ20にユーザがセットしたシートを給送ユニット130によって1枚ずつ分離して給送する。また、画像読取装置202において原稿となるシートを給送する原稿給送装置はシート給送装置の他の例である。
また、上記各実施例では超音波センサを用いているが、シート積載手段に積載されたシートの量、特に、シート積載手段に積載されたシートが1枚のみか複数であるかを検知可能であれば、他の検知手段を用いてもよい。例えば、図14に示すように、レーザードップラー速度計301によってシート積載部2に直接支持されているシートの変位を検出する構成が利用可能である。この場合、ピックアップローラ8による給送動作が開始された時点で、レーザードップラー速度計301の検知信号により、制御部260は給送が開始されたシートが最終シートか否かを判断して給送モードを決定することが可能となる。なお、最終シートの移動を検知するセンサとして、例えばシートに接触して回転するコロ部材の回転を検知する接触式のセンサを用いてもよい。
さらに他の検知手段として、図15(a)、(b)に示すセンサ302aを用いてもよい。この構成では、シートの積載量に応じてローラホルダ18の揺動角度が変化する構成において、給送フレーム19に取付けられたセンサ302aがローラホルダ18に取付けられたフラグ302bを検知するように構成される。制御部260は、センサ302aの検知信号から、給送カセット1に積載されたシートの上面が所定高さより高いか低いか、つまりシートの残量が所定量より多いか少ないかを判断可能である。
図15(a)、(b)に示した例では超音波センサと異なりシートが1枚であるか否かを正確に検知することは難しいが、実施例2のように、シートが所定枚数以下である場合に第2給送モードを実行する構成で採用することができる。所定数枚の例としては、超音波センサを用いる場合であれば数枚程度、また図15に示したセンサであれば、例えば厚さ3mm相当のシート(厚紙であれば6枚程度、薄紙で60枚程度)と設定できる。なお、スティックスリップ現象の起こりやすさや異音の生じ易さを考慮して、装置の構成に応じて所定枚数は変更可能である。
また、第2給送モードにおいてスティックスリップ現象による異音の発生を低減する方法として、上記各実施例及びその変形例で説明したものは、組み合わせて用いてもよい。例えば、第2給送モードにおける給送速度を第1給送モードに比べて高速に設定すると共に、第2給送モードではシートが搬送ローラ対14に到達した際にピックアップローラ8の駆動を切る設定としてもよい。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。