以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本発明の実施形態にかかる運転席用エアバッグ装置100の概要を例示する図である。図1(a)は運転席用エアバッグ装置100の稼動前の車両を例示した図である。以降、図1その他の図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Back)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Left)、R(Right)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(up)、D(down)で例示する。
本実施形態では、運転席用エアバッグ装置100を、左ハンドル車における運転席用(前列左側の座席102)のものとして実施している。以下では、前列右側の座席102を想定して説明を行うため、例えば車幅方向車外側(以下、車外側)とは車両左側を意味し、車幅方向内側(以下、車内側)とは車両右側を意味する。
運転席用エアバッグ装置100のエアバッグクッション(以下、クッション104(図1(b)参照))は、折畳みや巻回等された状態で、座席102の着座位置の前方にて、ステアリングホイール(後述する異形ステアリングホイール106)の中央のハブ108の内部に収容されている。このとき、クッション104は、ガスを供給するインフレータ112(図2(a)参照)とともに、エアバッグモジュール105(図2(a)参照)を形成して収容されている。ハブ108は、エアバッグモジュール105を収容するモジュール収容部109、およびカバー110等を含んで構成されている。
本実施形態にてクッション104を設置する異形ステアリングホイール106は、乗員の操作を電気的な信号に変換してホイールに伝える構成のものを想定している。異形ステアリングホイール106は、円環以外の形状のリム114を備えていて、従来の円環状のリムを備えたステアリングホイールとは形状が異なっている。リム114は、乗員が把持する部位であり、中央のハブ108を中心にして回転させる操作を受け付けるが、従来の円環状のリムとは異なり、大きな角度で回転させる操作は不要であるため、左右の手で持ち代える必要が無い。そのため、リム114はハブ108の左右および下方にのみ存在する形状になっていて、ハブ108の上方の範囲が一部省略された形状になっている。
異形ステアリングホイール106は、ハブ108の上側の一部の範囲が省略された形状を有するものの一例である。異形ステアリング106の他の例としては、ハブの上方に位置する部位がハブの左右に位置する部位に比べてハブ側に近づいた形状のものや、ハブの左右にのみリム(グリップ)が存在するものなども含めることができる。
なお、ハブ108の上側とは、異形ステアリングホイール106を時計に見立てて、ハブ108の中心に時計の針の軸が有るとした場合の3時と9時とを結ぶ直線よりも上側という意味である。異形ステアリングホイール106の上部は、車両前側に傾いて設置されることもある。そのため、異形ステアリングホイール106の上下方向は、異形ステアリングホイール106を時計に見立てたときの12時と6時とを結ぶ方向であり、現実の鉛直方向とは一致しないことがある。また、異形ステアリングホイール106の左右方向は、異形ステアリングホイール106を時計に見立てたときの3時または9時の方向である。
図1(b)は運転席用エアバッグ装置100のクッション104の膨張展開後の車両を例示した図である。クッション104は、インフレータ112(図2(a)参照)からのガスによってカバー110(図1(a)参照)を開裂しながら膨張を開始し、座席102の着座位置の前方に袋状に膨張展開し、前方へ移動しようとする乗員の上半身や頭部を拘束する。クッション104は、着座位置側から見て円形で、その表面を構成する複数のパネルを重ねて縫製または接着することによって形成されている。
図2は、図1(b)の膨張展開時のクッション104を各方向から例示した図である。図2(a)は、図1(b)のクッション104を車外側のやや上方から見て例示している。図2(a)では、クッション104を構成するパネルの一部を切り欠いて、内部のインフレータ112を露出させている。
本実施形態におけるクッション104は、異形ステアリングホイール106側(図1(a)参照)から乗員側(車両後方側)に向かって径の広がった、円錐台に近い形状になっている。そして、クッション104は、特徴的な部位として、上端面150にポケット152が形成されている。ポケット152は、後述するように、クッション104が乗員138(図6(b)参照)の頭部140に下方から膨張展開した際に、頭部140の押上げおよび後屈を防ぐための部位である。
インフレータ112は、ガスを供給する装置であって、本実施例ではディスク型(円盤型)のものを採用している。インフレータ112は、ガス排出口116の形成された一部がリアパネル122からクッション104内に挿入されていて、不図示のセンサから送られる衝撃の検知信号に起因して稼働し、クッション104にガスを供給する。インフレータ112は、複数のスタッドボルト118が設けられている。スタッドボルト118は、クッション104のリアパネル122を貫通し、上述した異形ステアリングホイール106(図1(a)参照)のハブ108の内部に締結される。このスタッドボルト118の締結によって、クッション104もハブ108の内部に固定されている。
なお現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ112としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
図2(b)は、図2(a)のクッション104を車幅方向左側から例示した図である。クッション104は複数のパネルから形成されていて、乗員側に位置するフロントパネル120、異形ステアリングホイール106側(図1(a)参照)に位置するリアパネル122、およびこれらフロントパネル120とリアパネル122とをつないでクッション104の側部を構成しているサイドパネル124とを含んでいる。
膨張展開したクッション104は、円錐台に沿った形状でありつつも、全体的にやや傾斜した形状になっている。具体的には、フロントパネル120の高さ方向の中央P1が、リアパネル122の高さ方向の中央P2から水平に延ばした仮想線L1に対して上方に位置するように、傾斜した形状になっている。また、クッション104が膨張展開したとき、フロントパネル120はほぼ鉛直に延びるよう配置されているが、リアパネル122は上部が車両前側(図2(b)中左側)に倒れるよう傾斜して配置されている。これによって、車両前後方向において、膨張展開したクッション104の上部104aの幅W1は、クッション104の下部104bの幅W2に比べて厚い構成となっている。
図2(c)は、図2(a)のクッション104を上方から例示した図である。クッション104は、上方から見ると、ほぼ左右対称な円錐台の形状になっている。ポケット152は、クッション104の上端120a面の中央にて、車両前後方向に延びる谷間のような構成となっている。
図3は、図2(a)のクッション104を構成する各パネルを例示した図である。図3では、各パネルを平面上に広げた状態で例示している。図3(a)は、図2(a)のフロントパネル120を例示した図である。フロントパネル120は、円形であって、クッション104の膨張展開時には運転席に着座した乗員の上半身の前方に膨張展開し、乗員を拘束する乗員拘束面を形成する。
図3(b)は、図2(a)のリアパネル122を例示した図である。リアパネル122は、円形であって、クッション104の膨張展開時には異形ステアリングホイール106(図1(a)参照)から反力を得る反力面を形成する。当該クッション104は乗員側に広がる円錐台状に膨張展開するため、リアパネル122はフロントパネル120(図3(a)参照)よりも面積が狭い構成となっている。
リアパネル122の中央のやや下側には、インフレータ112(図2(a)参照)を挿入しハブ108の内部に固定される固定領域128が形成されている。固定領域128の上方の左右2箇所には、クッションからガスを排出する2つのベントホール126a、126bが開けられている。この位置に設けられたベントホール126a、126bであれば、クッション104の膨張展開時において乗員の存在しない方向にガスを排出することが可能である。
図3(c)は、図2(b)のサイドパネル124を例示した図である。サイドパネル124は、平面上に広げた状態において、弧を描く帯状になっている。2つの弧130、132のうち、大径側の弧130はフロントパネル120の縁に縫製によって接合され、小径側の弧132はリアパネル122の縁に縫製によって接合される。サイドパネル124の長手方向の両端136a、136bには、それぞれ矩形に突出したポケット形成部154a、154bが設けられている。
図4は、図3(c)のサイドパネル124のクッション104(図2(a)参照)形成時の様子を例示した図である。サイドパネル124は、クッション104を形成するときにおいて、その長手方向の中央がクッション104の下部に位置し、長手方向の両端136a、136bがクッション104の上部にて互いに接合される。このとき、ポケット形成部154a、154bは、互いの縁で縫い合わされ、クッション104の内部側に窪んだポケット152(図6(a)参照)を形成する。
サイドパネルの2つの弧130、132それぞれは、フロントパネル120の縁の全周と、リアパネル122の縁の全周とに接合される。これによって、クッション104は、フロントパネル120とリアパネル122との間の全体にわたってサイドパネル124が介在する構成となる。したがって、クッション104には、リアパネル122とフロントパネル120とが直接に縫製される箇所は存在しない。また、クッション104には、計3枚のパネルが重なって同時に縫製される箇所も存在していない。これらの構成によって、クッション104を袋状に効率よく縫製し製造することが可能になっている。
図5は、図2(b)のクッション104と座席102に着座した乗員138とを例示した図である。図5は、クッション104および乗員138を車幅方向左側から見て例示している。
本実施例では、図2(b)を参照して説明したように、膨張展開したクッション104の上部104aは、クッション104の下部104bに比べて、車両前後方向に厚い構成となっている。特に、膨張展開したクッション104は、車幅方向から見たとき、サイドパネル124とフロントパネル120との境界L2が上方へ延びるような姿勢で設置されている。緊急時において車両前方に移動しようとする乗員138は、クッション104の上部104aから早期に接触する。そして、クッション104の上部104aは、その厚みをもって乗員138の頭部140からの荷重を吸収する。
図2(b)を参照して説明したように、クッション104の下部104bの車両前後方向の幅W2は、上部104aの幅W1に比べて、やや小さい。一般の車両では、ステアリングホイールは車両前側に約20°から25°程度の角度で傾斜していて、ステアリングホイールと乗員138との間の空間は、下方の腹部142側に向かって車両前後方向に狭くなっている。本実施例のクッション104であれば、下部104bに向かうほど車両前後方向の幅は減少していくため、下部104bが異形ステアリングホイール106と腹部142との狭い空間に入り込みやすくなっている。
上記構成によれば、クッション104の下部104bが異形ステアリングホイール106と腹部142とによって挟まれることで、クッション104の姿勢が崩れ難くなっている。またそれによって、クッション104の上部104aの、乗員138の頭部140に対する拘束性能も向上する構成となっている。特に、クッション104の姿勢が安定することで、乗員138の頭部140の前屈や後屈など、身体に負担を与えやすい頭部140の動きを防ぐことが可能になる。
上述したように、本実施例のクッション104は、乗員拘束面となるフロントパネル120の面積が広く、異形ステアリングホイール106から反力を得るリアパネル122の面積が狭い構成となっている。異形ステアリングホイール106は、従来の円形のステアリングホイールに比べて、エアバッグクッションとの接触範囲が狭い。リアパネル122は、異形ステアリングホイール106に接触しない部分を省くよう、異形ステアリングホイール106に応じた寸法に設定することができる。これによって、リアパネル122を構成する材料の使用量を減らしたり、クッション104のガス容量を抑えたりすることが可能になり、コスト削減に資することができる。
本実施形態のクッション104は、小径のリアパネル122を採用することで、ガス容量が50リットルから60リットルの範囲内に設定することができる。これによって、クッション104を構成するパネルの量が抑えられるため、クッション104はより小さな収容形態に折り畳み等することができ、収容空間の限られた異形ステアリングホイール106にも容易に取り付けることが可能になる。
上記範囲内のガス容量であれば、高出力インフレータは不要であり、インフレータ112(図2(a)参照)としてなるべく小型かつ低廉なものを採用可能になっている。例えば、インフレータ112には、出力が200kPaから230kPaの範囲のものを採用することができる。この出力のインフレータ112であれば、小型かつ低廉であり、軽量化やコスト削減の点で有益である。また、クッション104のガス容量を抑えることは、クッション104の膨張が完了するまでにかかる時間を早めるため、乗員拘束性能の向上にもつながる。
本実施形態では、膨張展開したクッション104のフロントパネル120の上端120aは、成人男性の頭部重心の±100mmの範囲内の高さに位置するよう設定している。例えば、図5の乗員138は、平均的な米国成人男性の50%に適合する体格を模した試験用のダミー人形AM50(50th percentile 男性相当で身長175cm、体重78kg)を想定したものである。クッション104のフロントパネル120の上端120aは、このAM50の頭部重心P3の±100mmの範囲内の高さに位置するよう設定している。
乗員138の頭部140は、フロントパネル120に対して顎や額などから接触すると、前屈や後屈などの回転動作を引き起こすおそれがある。前述したように、頭部140の前屈や後屈は、人体の構造上、身体に負担を与えやすい。本実施形態のクッション104は、頭部重心P3の位置からフロントパネル120を接触させ、頭部140を過度に動かすことなく拘束し、身体への負担を減らすことを可能にしている。
図6は、図5のクッション104を拡大して例示した図である。図6(a)は、クッション104のポケット152を透過して例示している。前述したように、ポケット152は、クッション104が乗員138(図6(b)参照)の頭部140に対して下方から膨張展開した際に、頭部140の後屈を防ぐための部位である。
本実施形態では、クッション104のうち、乗員拘束面はフロントパネル120によって形成され、上端面150を含むクッション104の側部をサイドパネル124によって形成されている。上端面150は、フロントパネル120の上端120aから連続して車両前方に延びている面である。ポケット152は、上端面150に、下方に向かって矩形に窪むよう形成されている。
図6(b)は、図6(a)のクッション104と乗員138との関係を例示した図である。図6(b)の乗員138は、頭部140の前側下方からクッション104が膨張展開してきた場合を想定して描いている。
異形ステアリングホイール106に代表されるように、近年開発が進んでいる新たなステアリングホイールには、従来のような円形でないものも多く、リム114のうちハブ108の上側の部位がハブ108側に近づいた形状になっているものの他、ハブの左右にのみリムが存在しているものなど、様々なデザインが存在する。これらの円形以外の新たなステアリングホイールは、リムのうちハブの上側の部位が無い、または上側の部位の寸法が省略等されているため、従来のステアリングホイールに比べて、乗員138は頭部140を前方に出すことができる。このように、乗員138が頭部140を前方に出したとき等の、乗員138が座席102(図5参照)に対して非正規の着座位置にいたとき(通称、アウトオブポジション)、万が一にも緊急事態が生じると、クッション104は乗員138の頭部140に対して下方から膨張展開する場合がある。特に、ハブ108のカバー110(図1(a)参照)の開き方等によって、クッション104の後方上側に向かう挙動が強まることもある。これらの場合、従来のクッションでは、乗員138の頭部140を押し上げて後屈させ、身体に負担を与えるおそれがある。
本実施形態のクッション104では、上端面150にポケット152が形成されている。そのため、クッション104は、仮に乗員138の頭部140に対して下方から膨張展開した場合、乗員138の頭部140をポケット152に入れることができ、これによって頭部140の押し上げを抑えて後屈を防ぐことができる。このように、当該運転席用エアバッグ装置100であれば、ポケット152を利用して乗員138の身体への負担を減らしつつ、乗員138をフロントパネル120で拘束することが可能になっている。
特に、クッション104は、上述した異形ステアリングホイール106と組み合わせて実施することで、ポケット152による乗員138の身体への負担の低減効果を好適に活用することが可能である。当然ながら、クッション104は、従来のステアリングホイールに実施することもでき、その場合においてもポケット152の機能を有効に利用することが可能である。
図6(a)に例示するにように、ポケット152の下端は、ハブ108の上端の高さ(水平線L3参照)に対して±100mmの範囲内に位置するよう設定すると好適である。ハブ108の上端とは、より詳しく言えば、ハブ108のカバー110(図1(a)参照)のうち乗員側である意匠面の上端である。この構成であれば、乗員138の頭部140が異形ステアリングホイール106の上側近くにあった場合でも、頭部140がポケット152の底に接触することを防止できる。
以上のように、本実施形態によれば、膨張展開時の安全面に配慮しつつ乗員138を十全に拘束することが可能な運転席用エアバッグ装置100を実現することができる。
(変形例)
以下、上述した各構成要素の変形例について説明する。図7から図11の各図では既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
図7は、図2(a)のクッション104の第1変形例(クッション200)および第2変形例(クッション220)を例示した図である。図7(a)は、図6(a)に対応して、クッション200を例示している。クッション200は、下方に三角形状に窪んだポケット202が形成されている。ポケット202は、直角三角形に近い形状で、フロントパネル120側が深く、リアパネル122側に向かって次第に浅くなっている。
図7(b)は、図7(a)のクッション200を構成するサイドパネル204を例示した図である。図7(b)は、図3(c)に対応して、サイドパネル204を例示している。サイドパネル204は、長手方向の両端136a、136bに、三角形状に突出したポケット形成部206a、206bが設けられている。ポケット202(図7(a)参照)は、ポケット形成部206a、206bの縁を互いに接続することで形成可能である。これら構成のクッション200によっても、図6(b)のクッション104と同様に、乗員138の頭部140を収容し、頭部140の後屈を防ぐことが可能である。
図7(c)は、図6(a)に対応して、クッション220を例示している。クッション220もまた、下方に三角形状に窪んだポケット222が形成されている。ポケット222は、直角三角形に近い形状で、リアパネル122側が深く、フロントパネル120側に向かって次第に浅くなっている。
図7(d)は、図7(c)のクッション220を構成するサイドパネル224を例示した図である。図7(d)は、図3(c)に対応して、サイドパネル224を例示している。サイドパネル224のポケット形成部226a、226bは、図7(b)のポケット形成部206a、206bとは逆向きの三角形状に突出している。ポケット222(図7(d)参照)は、ポケット形成部226a、226bの縁を互いに接続することで形成可能である。これら構成のクッション222によっても、図6(b)のクッション104と同様に、乗員138の頭部140を収容し、頭部140の後屈を防ぐことが可能である。
図8は、図2(a)のクッション104の第3変形例(クッション240)を例示した図である。図8(a)は、図6(a)に対応して、クッション240を例示している。クッション240は、内部にテザー242を備えている点で、上記各クッションと構成が異なっている。
テザー242は、帯状の部材であって、クッション240の内部にて、一端がポケット222の下端に接続され、他端が他の箇所、例えばリアパネル122の上側の箇所等に接続される。
図8(b)は、図8(a)のクッション240を構成するサイドパネル246を例示した図である。図8(b)は、図3(c)に対応して、サイドパネル246を例示している。テザー242は、片側のポケット形成部226bのうち、ポケット222(図8(a)参照)の底となる部位に接合されている。このとき、テザー242の長さは、クッション240の膨張展開時に緊張する長さに設定されている。
テザー242によれば、クッション240の膨張展開時に、ポケット222の下端をクッション240の内側に引っ張ることができ、上端面150から下方に窪んだポケット22を好適に形成することが可能になる。なお、テザー242は、ポケット222以外の他のポケットとも好適に組み合わせて実施することが可能である。
図9は、図2(a)のクッション104の第4変形例(クッション260)を例示した図である。図9(a)は、図2(a)に対応して、クッション260を例示している。クッション260は、フロントパネル262およびリアパネル264の2枚のパネル部材で構成されている点、すなわちサイドパネルを省略している点で、上記各クッションと構成が異なっている。クッション260においても、ポケット266およびテザー242が備わっている。
図9(b)は、図9(a)のフロントパネル262を例示した図である。フロントパネル262は、主要な部位が円形に形成されつつ、上部にポケット形成部268aを有している。図9(c)は、図9(a)のリアパネル264を例示した図である。リアパネル264もまた、円形に形成されつつ、上部にポケット形成部268bを有している。ポケット形成部の先端には、テザー242が接続されている。図9(a)のクッション260は、これらフロントパネル262の縁とリアパネル264の縁とを接合することで形成することができる。
これら構成のクッション(図9(a)参照)においても、上端面となる箇所にポケット266を形成し、このポケット266を利用して乗員138(図6(b)参照)の頭部140の後屈を防ぎつつ、乗員138を好適に拘束することが可能である。
図10は、図2(a)のクッション104の第5変形例(クッション280)を例示した図である。図10(a)は、図2(a)に対応して、クッション280を例示している。クッション280は、サイドパネル282から独立したポケット284を備えている点で、上記各クッションと構成が異なっている。
図10(b)は、図10(a)のポケット284を単独で例示した図である。ポケット284は、入口部分を補強するパッチ部材286と、パッチ部材286から下方に袋状に延びているポケット本体288とで構成されている。
図10(c)は、図10(b)のポケット284の分解図である。パッチ部材286は、スリット290を有する帯状の部材として形成されている。ポケット本体288は、2枚のパネル部材を縫製する等して、袋状に形成されている。そして、パッチ部材286のスリット290にポケット本体288を挿入し、ポケット本体288の入口部分とパッチ部材286とを縫製することで、図10(b)のポケット284を形成することができる。
これら構成のクッション280(図10(a))においても、上端面150にポケット284を形成し、このポケット284を利用して乗員138(図6(b)参照)の頭部140の後屈を防ぎつつ、乗員138を好適に拘束することが可能である。
図11は、図2(a)のクッション104の第6変形例(クッション300)を例示した図である。図11(a)は、図2(a)に対応して、クッション300を例示している。クッション300は、ポケット302が、サイドパネル308によって形成された上端面150から、乗員拘束面であるフロントパネル304の上部にまでわたって形成されている点で、上記各クッションと構成が異なっている。
ポケット302は、上端面150から下方に窪みつつ、フロントパネル304の上部にまでわたるよう後方に連続している。ポケット302によって、フロントパネル304の上部は切り欠かれた状態となっている。
図11(b)は、図3(a)に対応して、フロントパネル304を例示している。フロントパネル304は、上部に切欠き312を有している。この切欠き312が、ポケット302(図11(a)参照)の車両後側の入口となる。
図11(c)は、図3(c)に対応して、サイドパネル308を例示している。サイドパネル308の長手方向の両端は、所定の範囲がポケット形成部314a、314bとなっている。ポケット形成部314a、314bの縁316a、316bは、切欠き312の縁に縫製等される。これによって、ポケット形成部314a、314bは、ポケット302(図11(a))の内壁を形成する。
これらのように、図11(a)のクッション300は、ポケット302がフロントパネル304にまでわたって形成されているため、ポケット302に乗員138(図6(b)参照)の頭部140が入りやすくなっている。
図12は、図2(a)のクッション104の第7変形例(クッション320)および第8変形例(クッション340)を例示した図である。図12(a)は、図2(a)に対応して、クッション320を例示している。クッション320は、フロントパネル304に第1のパッチ310を設けている点で、上記各クッションと構成が異なっている。
パッチ310は、クッション320の各パネル部材と同じ基布などから形成された布状の部材であり、ポケット302をまたいでフロントパネル304に縫製等によって張られている。クッション320は、パッチ310を設けることで、ポケット302が過度に開くこと、およびフロントパネル304のたわみが防止でき、乗員拘束力を保つことが可能になっている。
図12(a)は、図2(a)に対応して、クッション340を例示している。クッション340は、上端面150を形成しているサイドパネル308に第2のパッチ342を設けている。パッチ342もまた、クッション340の各パネル部材と同じ基布などから形成された布状の部材であり、ポケット302をまたいでサイドパネル308に縫製等によって張られている。クッション340は、パッチ342を設けることで、ポケット302が過度に開くこと、およびフロントパネル304のたわみが防止でき、乗員拘束力を保つことが可能になっている。
図13は、図2(a)のクッション104の第9変形例(クッション360)を例示した図である。図13(a)は、図2(a)に対応して、クッション360を例示している。クッション360は、ポケット302の内部の後壁が、フロントパネル362の突出部364(図13(b)参照)によって形成されている点で、上記各クッションと構成が異なっている。
図13(b)は、図3(a)に対応して、フロントパネル362を例示している。フロントパネル362は、上部に突出部364を有している。この突出部364は、フロントパネル362の円形部分366の車両前側に折り返され、ポケット302(図13(a)参照)の後壁となる。
図14は、図13(a)のクッション360を分解した図である。図14では、図4に対応して、図11(c)のサイドパネル308を湾曲させて例示している。また、フロントパネル262の円径部分366は、透過した状態で例示している。
上述したように、フロントパネル362の突出部364は、円径部分366の車両前側に折り返される。そして、突出部364には、サイドパネル308のポケット形成部314a、314bの縁316a、316bが接続される。このとき、突出部364は、先端368が円形部分366の中央に縫製等される。これによって、突出部364は、ポケット302(図13(a))の後壁を形成する。
上記構成によれば、突出部364の幅の増減によって、ポケット302の幅も変更できるため、ポケット302を目的の寸法に形成しやすくなる。また、突出部364の先端368が円形部分366に接続されているため、クッション360の膨張展開時にポケット302(図13(a)参照)の後側を下端をクッション360の内側に引っ張ることができ、上端面150から下方に窪んだポケット302を好適に形成することが可能になる。
図15は、図2(a)のクッション104の第10変形例(クッション380)を例示した図である。図15(a)は、図2(a)に対応して、クッション380を例示している。クッション380は、ポケット302の内壁にベントホール382a、382bを有している点で、上記各クッションと構成が異なっている。
図15(b)は、図4に対応して、図15(a)のサイドパネル384を例示した図である。ベントホール382a、382bは、サイドパネル384のポケット形成部154a、154bに設けられている。ベントホール382a、382bは、クッション380が通常の膨張展開をした場合には、ポケット302(図15(a)参照)の内壁同士が接触し合うことでガスの排出が抑えられる。そして、乗員138(図6(b)参照)の頭部140がポケット302に進入すると、ベントホール382a、382bは開放されてガスを排出する。これによって、ポケット302の周辺の剛性が適度に下がるため、乗員138の頭部140に与え得る負担をより減らすことが可能となる。
図16は、図2(a)のクッション104の第11変形例(クッション400)を例示した図である。図16(a)は、図2(a)に対応して、クッション400を例示している。クッション400は、ポケット302に第1のシーム402を有している点で、上記各クッションと構成が異なっている。
図16(b)は、図16(a)のクッション400の断面図である。シーム402は、破断可能な糸を用いて形成された縫製である。ポケット302は、シーム402が破断することで開く。
図16(c)は、図16(b)のシーム402の破断前の状態を例示した図である。シーム402は、クッション400の膨張圧がある程度に高まるまで、ポケット302を塞いでいる。すなわち、シーム402には、破断時まで、クッション400のポケット302の周辺へのガスの充てんを抑える働きがある。
シーム402の働きによって、クッション400のうちポケット302の周辺は膨張展開が完了するタイミングが遅れる。この構成によれば、乗員138(図6(b)参照)が頭部140を前方に出していたとき等において、頭部140に対してクッション400が下方から接触するまでに時間的な余裕が生まれ、その間にフロントパネル304(図16(a)参照)によって乗員138を車両後方に押し戻するなどすることができ、頭部140の押上げおよび後屈を防ぐことが可能になる。
図17は、図2(a)のクッション104の第12変形例(クッション420)を例示した図である。図17(a)は、図2(a)に対応して、クッション420を例示している。クッション420は、ポケット302に第2のシーム422a、422bを有している。
図17(b)は、図17(a)のクッション420のB−B断面図である。シーム422a、422bは、破断可能な糸を用いて形成された縫製である。ポケット302は、シーム422a、422bが破断することで開く。
図17(c)は、図17(b)のシーム422a、422bの破断前の状態を例示した図である。シーム422a、422bは、クッション420の膨張圧がある程度に高まるまで、ポケット302の両脇にてポケット302の内壁と上端面150とを縫製によって繋ぎ合わせている。シーム422a、422bもまた、破断時まで、クッション420のうちポケット302の周辺へのガスの充てんを抑える働きがある。
シーム422a、422bの働きによって、クッション420のうちポケット302の周辺は膨張展開が完了するタイミングが遅れる。この構成によっても、乗員138(図6(b)参照)が頭部140を前方に出していたとき等において、頭部140に対してクッション420が下方から接触するまでに時間的な余裕が生まれ、その間にフロントパネル304(図17(a)参照)によって乗員138を車両後方に押し戻するなどすることができ、頭部140の押上げおよび後屈を防ぐことが可能になる。
なお、図17(c)では、ポケット302の両脇にシーム422a、422bそれぞれが設けられた構成となっているが、ポケット302の脇の一方にのみシーム(例えばシーム422a)を設けた構成によっても、クッション420のうちポケット302の周辺へのガスの充てんを抑えて膨張展開のタイミングを遅らせることが可能である。
図18は、図2(a)のクッション104の第13変形例(クッション440)および第14変形例(クッション460)を例示した図である。図18(a)は、図2(a)に対応して、クッション440を例示している。クッション440は、乗員拘束面であるフロントパネル444にのみポケット442の入口(切欠き446)が形成されている点で、上記各クッションと構成が異なっている。
ポケット442は、フロントパネル444の上部に形成されていて、車両前方に向かって窪んだ構成となっている。ポケット442は、図10(a)のポケット284のように、フロントパネル444等とは別部品として形成してもよいし、サイドパネル448に所定のポケット形成部を設けてフロントパネル444の切欠き446に形成してもよい。
上記構成によっても、フロントパネル444が乗員138(図6(b)参照)の頭部140に下方から膨張展開した場合に、頭部140をポケット442に収容することができ、これによって頭部140の押し上げを抑えることが可能となる。したがって、クッション440においても、頭部140の後屈を防いで身体への負担を減らしつつ、乗員138を好適に拘束することができる。
図18(b)は、図2(a)に対応して、クッション460を例示している。クッション460は、フロントパネル304に第3のパッチ462を設けている。
パッチ462は、クッション440の各パネル部材と同じ基布などから形成された布状の部材であり、ポケット442をまたいでフロントパネル444に縫製等によって張られている。クッション460は、パッチ462を設けることで、ポケット442が過度に開くこと、およびフロントパネル444のたわみが防がれ、乗員拘束力を保つことが可能になっている。
図19は、図2(a)のエアバッグモジュール105の第1変形例(エアバッグモジュール500)である。図19(a)は、図2(a)に対応して、エアバッグモジュール500を例示している。エアバッグモジュール500は、クッション300の上部に帯状のストラップ502を備えていることで、図2(a)のエアバッグモジュール105と構成が異なっている。
ストラップ502は、帯状の部材であって、膨張展開したクッション300の上部に車両前後方向にかけ渡されている。ストラップ502は、前端側502a(図19(c)参照)がインフレータ112のスタッドボルト118に接続されていて、後端側502bが自由端になっている。ストラップ502は、クッション300と同じ材質の基布から形成することができるが、他の布状の素材から形成することも可能である。
図19(b)は、図19(a)のエアバッグモジュール500の異形ステアリングホイール106(図1(a)参照)への収容時の形態(収容形態)を例示した斜視図である。収容形態のエアバッグモジュール500では、クッション300が巻回や折畳み等によって小さくまとめられている。ストラップ502は、前端側502aがスタッドボルト118に留められている。そして、ストラップの後端側502bは、クッション300の上側から後側をわたってクッション300の下側に到達した状態になっている。
図19(c)は、図19(b)のエアバッグモジュール500を側方から見た概略図である。ストラップ502の後端側502bは、クッション300の下方で折り畳んでまとめられている。このストラップ502の後端側502bは、エアバッグモジュール500を異形ステアリングホイール106(図1(a)参照)のモジュール収容部(図示省略)に収容させたときに、クッション300とモジュール収容部の内壁との間に挟ませることができる。
図20は、図19(a)のエアバッグモジュール500と乗員138との関係を例示した図である。図20(a)は、図6(b)に対応して、エアバッグモジュール500を例示している。エアバッグモジュール500では、乗員138が頭部140を前方に出していたとき等において、クッション300の上部にストラップ502がかけ渡されているため、乗員138はストラップ502に直接的に接触する。このとき、ストラップ502の前端側502aはインフレータ112(図19(a))のスタッドボルト118に固定されている一方で、ストラップ502の後端側502bは乗員138の胸部等とクッション300とに挟まれて動き難くなる。そのため、ストラップ502は、前端側502aと後端側502bとが固定された状態となり、下方から膨張展開しようとするクッション300を押さえつける。
図20(b)は、図20(b)のエアバッグモジュール500および乗員138を車両前方から見た図である。上述したように、ストラップ502は、乗員138とエアバッグクッション300とに挟まれて動き難くなり、クッション300を下方に押さえつける。これによって、クッション300は、例えばストラップ502を左右に避けるようにして膨張する。
上記構成によれば、クッション300の乗員138の頭部140に向かう展開挙動を抑える、またはクッション300が頭部140に接触したときの荷重を抑えることができるため、頭部140の押上げおよび後屈を好適に防ぐことが可能になる。
なお、ストラップ502には、乗員138とクッション300とで挟ませやすくするために、摩擦抵抗を高める加工を施すことが可能である。例えば、ストラップ502の乗員側の面にシリコンコートを施すことでも、ストラップ502の摩擦抵抗を高めることが可能である。
図21は、図19(b)のストラップの第1変形例(ストラップ520)および第2変形例(ストラップ540)である。図21(a)に例示するストラップ520は、後端側520bが、折り畳まれたクッション300の隙間に挿入して留められている。この構成によっても、収容形態のエアバッグモジュール500は、ストラップ520の後端側520bがクッション300の上側から後側をわたってクッション300の下側に到達した状態を保つことができる。
図21(b)に例示するストラップ540は、後端側540bが、折り畳まれたクッション300の隙間に挿入され、そしてクッション300とインフレータ112とに挟まれるようにして留められている。この構成によっても、収容形態のエアバッグモジュール500は、ストラップ540の後端側540bがクッション300の上側から後側をわたってクッション300の下側に到達した状態を保つことができる。
図22は、図19(a)のストラップ502の第3変形例(ストラップ560)である。図22(a)は、ストラップ560の概要を例示している。ストラップ560は、後端側560bの所定箇所に、クッション300(図22(b)参照)の膨張圧で破断可能な脆弱部562が形成されている。脆弱部562は、例えば細かなスリットを破線状に設けることなどによって実施可能である。
図22(b)は、図19(c)に対応して、ストラップ560を例示した図である。ストラップ560の後端側560bは、クッション300の下側をわたってインフレータ112(図19(a)参照)のスタッドボルト118に接続されている。そして、クッション300が膨張展開を開始すると、ストラップ560の脆弱部562は破断し、後端側560bの所定範囲は自由端の状態となる。この構成によっても、クッション300が膨張展開したとき、ストラップ560をクッション300の上部にかけ渡すことができる。
なお、上述した各ストラップにおいて、各前端側は、クッション300の車両前側に接続させて固定することも可能である。また、図22(b)のストラップ560の後端側は、クッション300の下側に接続させて固定することも可能である。また、各ストラップは、クッション300以外にも、前述した各クッションと組み合わせて実施することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。