本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド(A)と、9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物(B1)が結合した修飾セルロースナノ繊維(B)とを含む。
[ポリアミド(A)]
ポリアミド(A)は、特に制限されず、慣用のポリアミドを利用でき、例えば、脂肪族、脂環族及び/又は芳香族モノマーなどで形成してもよい。
脂肪族モノマーとしては、脂肪族骨格を有していればよく、例えば、脂肪族ジアミン[例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−20アルキレンジアミン(好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C4−12アルキレンジアミン、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C6−9アルキレンジアミン)など];脂肪族ジカルボン酸[例えば、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸などの直鎖状又は分岐鎖状C2−18アルカン−ジカルボン酸(好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C4−10アルカン−ジカルボン酸、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C4−8アルカン−ジカルボン酸)など];ラクタム[例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどの4〜13員環(好ましくは7〜13員環)のラクタムなど];脂肪族アミノカルボン酸[例えば、6−アミノヘキサン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノC2−20アルキル−カルボン酸(好ましくはアミノC3−16アルキル−カルボン酸、さらに好ましくはアミノC5−11アルキル−カルボン酸)など]などが例示できる。
脂環族モノマーとしては、脂環骨格(シクロアルカン骨格)を有していればよく、例えば、脂環族ジアミン[例えば、ジアミノシクロアルカン、ジ(アミノアルキル)シクロアルカン(例えば、ジアミノメチルシクロアルカンなど)など];脂環族ジカルボン酸(例えば、シクロアルカンジカルボン酸など);脂環族アミノカルボン酸(例えば、アミノシクロアルカンカルボン酸など)などが例示できる。
芳香族モノマーとしては、芳香環骨格を有していればよく、例えば、芳香族(又は芳香脂肪族)ジアミン[例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンなどのジアミノアレーン、m−キシリレンジアミンなどのジ(アミノアルキル)アレーンなど];芳香族(又は芳香脂肪族)ジカルボン酸[例えば、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボキシアレーンなど];芳香族アミノカルボン酸(例えば、アミノ安息香酸などのアミノアリールカルボン酸など)などが例示できる。
ポリアミドは、これらのモノマーを単独で又は2種以上組み合わせて重合することにより得ることができる。ポリアミドは、単一のモノマー(単一のジアミン及びジカルボン酸、あるいは単一のラクタム及び/又はアミノカルボン酸)で形成されたホモポリアミドであってもよく、複数のモノマーが共重合したコポリアミドであってもよい。代表的なポリアミド樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミド、芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
脂肪族ポリアミドは、脂肪族モノマー単位で形成されていればよく、例えば、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミド(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612など);ラクタム及び/又はラクタムに対応する脂肪族アミノカルボン酸のホモポリアミド(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など);複数の脂肪族モノマーの共重合体(例えば、コポリアミド6/66、コポリアミド6/11、コポリアミド66/12など)などが例示できる。
脂環族ポリアミドは、少なくとも脂環族モノマー単位を有していればよく、脂肪族モノマーと脂環族モノマーとを組み合わせて形成されていてもよい。例えば、脂環族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミド(例えば、ジアミノメチルシクロヘキサンとアジピン酸との重合体など)などが例示できる。
芳香族ポリアミドは、少なくとも芳香族モノマー単位を有していればよく、例えば、芳香族モノマー及び脂肪族(又は脂環族)モノマーから形成される半芳香族ポリアミドと、芳香族モノマーで形成され、脂肪族及び脂環族骨格を含まない全芳香族ポリアミドとに分けられる。
半芳香族ポリアミドとしては、例えば、芳香族(又は芳香脂肪族)ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのホモポリアミド(例えば、ポリアミドMXD6(m−キシリレンジアミンとアジピン酸との重合体)など);脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのホモポリアミド[例えば、ポリアミド6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド9T(ノナメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド10T(デカメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド12T(ドデカメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミドM5T(2−メチルペンタメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミドM8T(2-メチルオクタメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体)、ポリアミド6I(ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との重合体)、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体など];少なくとも脂肪族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸を含む共重合体(例えば、コポリアミド6T/66、コポリアミド6T/M5T、コポリアミド6T/6I、コポリアミド6T/6I/6、コポリアミド6T/6I/66など)などが例示できる。
全芳香族ポリアミドとしては、例えば、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのホモポリアミド(例えば、m−フェニレンジアミンとイソフタル酸との重合体、p−フェニレンジアミンとテレフタル酸との重合体など)などが挙げられる。
ポリアミドは、N−アルコキシメチル基を有するポリアミド、不飽和高級脂肪酸の二量体であるダイマー酸を重合成分とする重合脂肪酸系ポリアミド樹脂などであってもよい。これらのポリアミドは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
ポリアミドは、結晶性又は非晶性であってもよく、透明性ポリアミド(非晶性透明ポリアミド)であってもよい。ポリアミド樹脂としては、成形品の機械的特性の観点からは、通常、結晶性樹脂を用いる場合が多い。
ポリアミドは、溶融粘度が溶融温度に大きく依存し、かつ分解温度が融点に近いため、溶融流動性が低く(溶融粘度が高く)、成形性が低い樹脂である。そのため、修飾セルロースナノ繊維(B)の存在によって、繊維を含むポリアミドであっても溶融流動性を向上できる意義は大きい。
ポリアミドの融点は150〜400℃程度の範囲から選択でき、例えば160〜350℃、好ましくは170〜300℃、さらに好ましくは180〜280℃(特に190〜250℃)程度であってもよい。
ポリアミドの数平均分子量は、例えば0.7×104〜100×104(好ましくは1×104〜75×104、さらに好ましくは2×104〜50×104)程度であってもよく、3×104〜100×104(例えば、5×104〜50×104)程度であってもよい。分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)などの慣用の方法を利用して測定でき、ポリスチレン換算の分子量として評価してもよい。
ポリアミドの代表的な例としては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、コポリアミド6/66などの脂肪族ポリアミド樹脂、ジアミノメチルシクロヘキサンとアジピン酸との重合体などの脂環族ポリアミド樹脂、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6Iなどの芳香族ポリアミド樹脂などが例示できる。これらのポリアミドのうち、脂肪族ポリアミドが汎用され、繰り返し単位の炭素数が少なくとも4〜12(好ましくは6〜11程度、さらに好ましくは6〜9、特に少なくとも6)のアルキレン基を有する脂肪族モノマーを含む脂肪族ポリアミドが好ましい。
[修飾セルロースナノ繊維(B)]
(フルオレン化合物(B1))
9,9−位にアリール基を有するフルオレン化合物(B1)は、修飾セルロースナノ繊維(B)を構成する官能基として、セルロースナノ繊維をポリアミド中に均一に分散させるための相溶化剤又は分散剤として機能するとともに、前記ポリアミド(A)の可塑剤としても機能する。すなわち、フルオレン化合物(B1)は、ポリアミド(A)との間の化学的相互作用のためか、ポリアミド(A)の溶融成形性を向上できる。
このようなフルオレン化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物であればよく、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物であってもよい。
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン環)、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環[例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(例えば、1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環など]、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環など)が例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6−10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
フルオレンの9位に置換する2つの環Zは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環(特にベンゼン環)などが好ましい。
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
X1で表されるヘテロ原子含有官能基としては、ヘテロ原子として、酸素、イオウ及び窒素原子から選択された少なくとも一種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1〜3個、好ましくは1又は2個であってもよい。
前記官能基としては、例えば、基−[(OA)m1−Y1](式中、Y1はヒドロキシル基、グリシジルオキシ基、アミノ基、N置換アミノ基又はメルカプト基であり、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数である)、基−(CH2)m2−COOR3(式中、R3は水素原子又はアルキル基であり、m2は0以上の整数である)などが挙げられる。
基−[(OA)m1−Y1]において、Y1のN置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC1−4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
アルキレン基Aには、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2−3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などの分岐鎖状C3−6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3−4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。
オキシアルキレン基(OA)の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm1は、0又は1以上の整数(例えば0〜15、好ましくは0〜10程度)の範囲から選択でき、例えば、0〜8(例えば1〜8)、好ましくは0〜5(例えば1〜5)、さらに好ましくは0〜4(例えば1〜4)、特に0〜3(例えば1〜3)程度であってもよく、通常、0〜2(例えば0又は1)であってもよい。なお、m1が2以上である場合、アルキレン基Aの種類は、同一又は異なっていてもよい。また、アルキレン基Aの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
基−(CH2)m2−COOR3において、R3で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基である。メチレン基の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm2は0又は1以上の整数(例えば1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2程度)であってもよい。m2は、通常、0又は1〜2であってもよい。
これらのうち、基X1は、基−[(OA)m1−Y1](式中、Aはアルキレン基、Y1はヒドロキシル基又はグリシジルオキシ基、m1は0以上の整数である)が好ましく、Y1がグリシジルオキシ基である基−[(OA)m1−Y1][式中、Aはエチレン基などのC2−6アルキレン基(例えばC2−4アルキレン基、特にC2−3アルキレン基)、Y1はグリシジルオキシ基、m1は0〜5の整数(例えば0又は1)である]が特に好ましい。
前記式(1)において、環Zに置換した基X1の個数を示すn1は、0以上であり、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1又は2(特に1)であってもよい。なお、置換数n1は、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
基X1は、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2−,3−,4−位(特に、3−位及び/又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係(特にn1が1である場合、2,6−位の関係)で基X1が置換している場合が多い。また、n1が2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基Xの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの4−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、基X1の置換位置は、2−,3−,2’−,3’−,4’−位のいずれであってもよく、通常、2−,3’−,4’−位、好ましくは2−,4’−位(特に、2−位)に置換していてもよい。
前記式(1)において、置換基R2としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
これらの置換基R2のうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基R2としては、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)が好ましい。なお、置換基R2がアリール基であるとき、置換基R2は、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基R2の種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
置換基R2の係数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば0〜2)の整数、さらに好ましくは0又は1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基R2がメチル基であってもよい。
置換基R1としては、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。
これらの置換基R1のうち、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(特に、メチル基などのC1−3アルキル基)、カルボキシル基又はC1−2アルコキシ−カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0〜4(例えば0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基R1の種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基R1の種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基R1の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
これらのうち、好ましいフルオレン化合物としては、基X1が、基−[(OA)m1−Y1](式中、Y1がヒドロキシル基を示す)である場合、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−フェニル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−12アリール)フルオレンなどが挙げられる。
基X1が、基−[(OA)m1−Y1](式中、Y1がグリシジルオキシ基を示す)である場合の好ましいフルオレン化合物としては、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(2−グリシジルオキシエトキシ)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(4−フェニル−3−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(4−フェニル−3−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(グリシジルオキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ)C6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(2−グリシジルオキシエトキシ))フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシ)C6−10アリール)フルオレンなどが例示できる。
これらのフルオレン化合物(B1)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
(セルロースナノ繊維)
修飾セルロースナノ繊維(B)を構成するセルロースナノ繊維(又はセルロースナノファイバー)は、セルロース(セルロース原料)をナノオーダーまで微細化(又はミクロフィブリル化)したセルロース繊維や、微生物由来のナノメータサイズのセルロース繊維である。前記セルロースナノ繊維としては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースナノ繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースナノ繊維のうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維由来のパルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースナノ繊維などが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ないことからパルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
セルロースナノ繊維(又は原料セルロースナノ繊維)の平均繊維径及び平均繊維長は、修飾セルロースナノ繊維の平均繊維径及び平均繊維長が、後述する範囲となるように選択できる。セルロースナノ繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、後述する修飾セルロースナノ繊維の範囲と同一であってもよく、通常、略同一である。
セルロースナノ繊維は、結晶性の高いセルロース(又はセルロース繊維)であってもよく、セルロースの結晶化度は、例えば40〜100%(例えば50〜100%)、好ましくは60〜95%、さらに好ましくは70〜90%(特に75〜90%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上であってもよい。また、セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。
(修飾セルロースナノ繊維(B)及びその製造方法)
修飾セルロースナノ繊維(又は変性セルロースナノ繊維)(B)は、前記セルロースナノ繊維と前記フルオレン化合物(B1)とが結合したセルロース誘導体である。
修飾セルロースナノ繊維(B)の化学修飾(又は結合)の形態は、特に限定されず、例えば、フルオレン化合物(B1)が前記式(1)で表されるフルオレン化合物の場合、フルオレン化合物(B1)の反応性基(ヘテロ原子含有官能基)の種類に応じて適宜選択できる。具体的には、前記式(1)において、Y1がヒドロキシル基である場合、セルロースナノ繊維のヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と前記式(1)で表されるフルオレン化合物のヒドロキシル基とのエーテル結合及び/又はエステル結合であってもよく、Y1がグリシジルオキシ基である場合、セルロースナノ繊維のヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と前記式(1)で表されるフルオレン化合物のグリシジル基とのエーテル結合及び/又はエステル結合であってもよい。なお、セルロースナノ繊維のカルボキシル基はパルプなどの製造過程で形成される場合がある。
修飾セルロースナノ繊維(B)は、所定の触媒の存在下、原料セルロースナノ繊維と前記フルオレン化合物(B1)とを反応させて製造してもよく、ポリアミド(A)中において、原料セルロースナノ繊維と前記フルオレン化合物(B1)とを混錬する過程で反応させて製造してもよい。
原料セルロースナノ繊維の割合は、フルオレン化合物(B1)の反応性基に応じて選択できるが、例えば、フルオレン化合物(B1)100重量部に対して、0.1〜500重量部(例えば1〜300重量部)程度の範囲から選択でき、例えば5〜200重量部(特に10〜150重量部)程度であってもよい。
触媒を使用する場合、触媒もフルオレン化合物の反応性基に応じて選択でき、反応性基がヒドロキシル基の場合、酸触媒を利用してもよい。酸触媒としては、ブレンステッド酸、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸、固体酸[例えば、ヘテロポリ酸(タングステン系ヘテロポリ酸、モリブデン系ヘテロポリ酸など)、陽イオン交換樹脂(スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、スルホン酸基を有する含フッ素陽イオン交換樹脂、カルボン酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂など)]などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
反応性基がグリシジル基の場合、塩基触媒を利用してもよい。塩基触媒は、無機塩基及び有機塩基のいずれであってもよく、無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩などが例示できる。有機塩基としては、三級アミン類、例えば、トリアルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、アルカノールアミン(トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなど)、複素環式アミン(モルホリンなど)、ヘキサメチレンテトラミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などが挙げられる。これらの塩基触媒も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒の使用量は、触媒の種類に応じて選択できるが、原料セルロースナノ繊維100重量部に対して、例えば、0.01〜100重量部程度の範囲から適当に選択でき、通常、0.01〜20重量部(例えば0.1〜18重量部)、好ましくは0.5〜18重量部(例えば1〜17重量部)、さらに好ましくは3〜15重量部(特に5〜15重量部)程度であってもよい。
触媒を用いる場合、反応は有機溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、有機溶媒の存在下で行われる。この有機溶媒は原料セルロースナノ繊維に含浸していてもよいが、原料セルロースナノ繊維を有機溶媒に分散させた分散系で反応させる場合が多い。原料セルロースナノ繊維を有機溶媒に分散させた分散系で、原料セルロースナノ繊維と前記フルオレン化合物(B1)とを反応させると、均一に反応させることができる。このような方法で得られた修飾セルロースナノ繊維(B)は、取り扱い性及び分散性が高い。
原料セルロースナノ繊維(特に、ミクロフィブリル化した繊維、平均繊維径がナノメーターサイズのナノ繊維)を乾燥すると、繊維が絡み合って再分散できなくなる場合がある。そのため、通常、原料セルロースナノ繊維は水含浸又は水分散液として市販されている場合が多い。このような水分散液では、水分散液の水を有機溶媒に置換する慣用の溶媒置換法、例えば、原料セルロースナノ繊維の水分散液に水溶性溶媒を添加混合し、原料セルロースナノ繊維を分離(又は溶媒を除去)した後、さらに有機溶媒を添加混合する操作を繰り返す方法などにより、原料セルロースナノ繊維が有機溶媒に分散した分散液を調製できる。なお、沸点が水よりも高い水溶性有機溶媒を用いる場合、水を蒸留(共沸蒸留を含む)により除去することにより溶媒置換できる。
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノールなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−4アルカンジオール)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、カルビトール類(エチルカルビトールなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
なお、水溶性有機溶媒を用いて溶媒置換したセルロース含有分散液において、水溶性有機溶媒は、前記と同様にして、非水溶性有機溶媒に溶媒置換することもできる。非水溶性有機溶媒としては、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、ニトリル類(ベンゾニトリルなど)、セロソルブアセテート類、カルビトールアセテート類、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンなど)などが例示できる。これらの非水溶性有機溶媒も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性溶媒、特に非プロトン性極性溶媒(例えば、エーテル類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類など)が好ましい。
有機溶媒(例えば、非プロトン性極性溶媒)の溶解度パラメーター(SP値、(cal/cm)2)は8〜15(例えば、8.5〜15)程度であってもよく、通常、9〜14.5(例えば、10〜14.5)程度であってもよい。
分散液中の原料セルロースナノ繊維の固形分濃度は、例えば、0.01〜30重量%(例えば、0.1〜20重量%)、好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは3〜12重量%(例えば、5〜10重量%)程度であってもよい。固形分濃度が低すぎると、反応効率が低下する虞がある。
触媒を用いる場合、反応は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下又は常圧下で行う場合が多い。反応温度は、溶媒の沸点などにより適宜選択でき、例えば、50〜200℃(例えば、70〜170℃)、好ましくは80〜150℃(例えば、100〜130℃)程度であってもよい。なお、反応は溶媒の還流下で行ってもよい。また、反応時間は、特に限定されず、例えば、10分〜48時間(例えば、30分〜24時間)程度である。さらに、反応は、空気中又は不活性ガス(窒素、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下、攪拌しながら行うことができる。
なお、反応は、反応系を撹拌しながら行ってもよく、原料セルロース繊維として、ナノメータサイズではない繊維を使用し、セルロースに機械的剪断力を作用させながら行い、セルロースを微細化した修飾セルロースナノ繊維を得てもよい。さらに、反応終了後に解繊して修飾セルロース繊維を微細化してもよい。
触媒を用いた反応により生成した修飾セルロースナノ繊維(B)は、慣用の方法(例えば、遠心分離、濾過、濃縮、抽出など)により分離精製してもよい。例えば、少なくとも前記フルオレン化合物(B1)を溶解可能な溶媒を反応混合物に添加し、前記遠心分離、濾過、抽出などの分離法(慣用の方法)で未反応フルオレン化合物を除去し、分離精製してもよい。なお、前記分離操作は複数回(例えば、2〜5回程度)行うことができる。さらに、分離精製した修飾セルロースを加熱下又は減圧下或いは常圧下で乾燥することにより、粉末状の形態を有する修飾セルロース繊維を得ることができる。
なお、未反応フルオレン化合物を前記分離方法などにより繰り返し除去して精製した修飾セルロースを、ラマン分析などの方法により分析すると、セルロースに由来するピークとフルオレン化合物に由来するピークとが存在し、セルロースにフルオレン化合物が結合していることが確認できる。
一方、ポリアミド中での混錬によって修飾セルロースナノ繊維を製造する場合は、後述するポリアミド組成物の調製によって、修飾セルロースナノ繊維が得られる。
(修飾セルロースナノ繊維(B)の特性)
触媒を用いて得られた修飾セルロースナノ繊維(B)は、通常、粉末状の形態を有しており、取り扱い性に優れる。また、前記フルオレン化合物(B1)の修飾割合(結合量)が、比較的少なくても、修飾セルロースナノ繊維(B)は粉末状の形態を有していてもよい。
セルロースナノ繊維に結合したフルオレン化合物(B1)の割合(修飾率)は、修飾セルロースナノ繊維(B)の総量に対して0.01〜25重量%(例えば1〜20重量%)程度の範囲から選択できる。特に、フルオレン化合物(B1)の基X1が基−[(OA)m1−Y1](式中、Y1がヒドロキシル基を示す)である場合、前記修飾率は、修飾セルロースナノ繊維(B)の総量に対して0.01〜20重量%程度の範囲から選択でき、例えば0.05〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%(例えば0.3〜7重量%)、さらに好ましくは0.5〜5重量%(特に0.7〜3重量%)程度であってもよい。また、フルオレン化合物(B1)の基X1が基−[(OA)m1−Y1](式中、Y1がグリシジルオキシ基を示す)である場合、前記修飾率は0.01〜25重量%程度(例えば0.1〜20重量%)、好ましくは1〜18重量%(例えば3〜15重量%)、さらに好ましくは5〜17重量%(特に10〜13重量%)程度であってもよい。
修飾率が大きすぎると、水性溶媒に対する分散性、低線熱膨張係数などの特性が低下する虞があり、逆に小さすぎると、粉体状の形態を形成できなくなり、取り扱い性が低下し易くなったり、ポリアミド組成物中でのポリアミドとの分散性(又は混和性)が低下する虞がある。修飾率は、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
修飾セルロースナノ繊維(B)の平均繊維径は、例えば1〜1000nm(例えば3〜800nm)、好ましくは5〜500nm(例えば7〜300nm)、さらに好ましくは10〜200nm(特に20〜100nm)程度であってもよい。平均繊維径が大きすぎると、ポリアミド組成物の強度などの特性が低下する虞がある。なお、セルロースナノ繊維の最大繊維径は、例えば3〜1000nm(例えば5〜900nm)、好ましくは10〜700nm(例えば50〜500nm)、さらに好ましくは70〜400nm(特に100〜300nm)程度であってもよい。なお、セルロースナノ繊維は、繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでいない場合が多い。
修飾セルロースナノ繊維(B)の平均繊維長は、例えば0.01〜500μm(例えば0.1〜400μm)程度の範囲から選択でき、通常1μm以上(例えば5〜300μm)、好ましくは10μm以上(例えば20〜200μm)、さらに好ましくは30μm以上(特に50〜150μm)であってもよい。平均繊維長が短すぎると、ポリアミド組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に長すぎると、ポリアミド組成物中での分散性が低下する虞がある。
修飾セルロースナノ繊維(B)の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上(例えば5〜10000程度)、好ましくは10以上(例えば10〜5000程度)、さらに好ましくは20以上(例えば20〜3000程度)、特に50以上(例えば50〜2000程度)であってもよく、100以上(例えば100〜1000程度)、さらには200以上(例えば200〜800程度)であってもよい。また、アスペクト比が小さすぎると、樹脂に対する補強効果が低下し、アスペクト比が大きすぎると、均一な分散が困難となり、繊維が分解(又は損傷)し易くなるおそれがある。
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、修飾セルロースナノ繊維(B)(又は原料セルロースナノ繊維)の平均繊維径、平均繊維長及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
修飾セルロースナノ繊維(B)は、前記フルオレン化合物(B1)の修飾により疎水性が向上するためか、水分含有量が少ない。すなわち、水分含有量は、温度25℃、湿度60%の条件下、1昼夜放置したとき、0〜7重量%(例えば0〜5重量%)、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%程度であってもよい。なお、水分含有量は、近赤外線分析計などを用いて測定できる。
修飾セルロースナノ繊維(B)の嵩密度(見掛密度)は、温度25℃、湿度60%の条件下において、JIS K7365−1999に準拠して測定したとき、例えば0.01〜0.7g/ml、好ましくは0.05〜0.5g/ml、さらに好ましくは0.1〜0.3g/ml程度であってもよい。なお、嵩密度Pは、所定重量Wの修飾セルロースナノ繊維をメスシリンダーに入れて体積Vを測定し、式P=W/Vで算出できる。
修飾セルロースナノ繊維(B)は、流動性が高く、安息角が、温度25℃、湿度60%の条件下において、JIS R9301−2−2に準拠して測定したとき、例えば20〜45°、好ましくは25〜40°、さらに好ましくは30〜35°程度であってもよい。流動性が大きすぎると、取り扱い性が低下し、逆に小さすぎると、分散性が低下するおそれがある。
修飾セルロースナノ繊維(B)は、粘稠な液体を形成することなく、ナノファイバーの形態を維持している。そのため、比較的分子量(又は重合度)が大きく、粘度平均重合度は、例えば、100〜10000、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜2000程度であってもよい。
粘度平均重合度は、TAPPI T230に記載の粘度法により測定できる。すなわち、修飾セルロースナノ繊維(又は原料セルロースナノ繊維)0.04gを精秤し、水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとを加え、5分間程攪拌して修飾セルロースを溶解する。得られた溶液をウベローデ型粘度管に入れ、25℃下で流下速度を測定する。水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとの混合液をブランクとして測定する。これらの測定値に基づいて算出した固有粘度[η]を用い、木質科学実験マニュアルに記載の下記式に従って粘度平均重合度を算出できる。
粘度平均重合度=175×[η]
また、本発明のポリアミド組成物において、修飾セルロースナノ繊維(B)の特性(例えば、低線熱膨張特性、強度、耐熱性など)を有効に発現させる場合、結晶性の高い修飾セルロースナノ繊維が好ましい。前記のように、修飾セルロースはセルロースナノ繊維の結晶性を維持できるため、修飾セルロースナノ繊維(B)の結晶化度は前記セルロースナノ繊維の数値をそのまま参照できる。例えば、修飾セルロースの結晶化度は、40〜95%(例えば50〜85%)、好ましくは60〜95%(例えば65〜85%)、さらに好ましくは70〜90%(特に75〜90%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば75〜90%程度)であってもよい。結晶化度が小さすぎると、線熱膨張特性や強度などの特性を低下させるおそれがある。セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、低線膨張特性及び弾性率などが高いI型結晶構造が好ましい。なお、結晶化度は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
ポリアミド(A)と修飾セルロースナノ繊維(B)との重量比は、前者/後者=99/1〜50/50程度の範囲から選択でき、例えば98/2〜55/45、好ましくは97/3〜60/40(例えば95/5〜65/35)、さらに好ましくは90/10〜70/30(特に85/15〜75/25)程度である。さらに、本発明では、修飾セルロースナノ繊維(B)の割合が少なくても、機械的特性及び耐熱性を向上でき、両者の重量比は、前者/後者=97/3〜90/10(特に96/4〜93/7)程度であってもよい。修飾セルロースナノ繊維(B)の割合が少なすぎると、ポリアミド組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、ポリアミド組成物の成形性が低下する虞がある。
本発明では、ポリアミド(A)に対して、修飾セルロースナノ繊維(B)を前記割合で添加することにより、ポリアミドの耐熱性を向上できる。さらに、修飾セルロースナノ繊維(B)の原料である未修飾のセルロースナノ繊維も、ポリアミドに添加することにより、ポリアミドの耐熱性を向上できる。セルロースナノ繊維の割合も、前記修飾セルロースナノ繊維(B)の添加量(組成物中の前記割合)と同一の範囲から選択できる。ポリアミドの耐熱性を大きく向上できる点からは、未修飾のセルロース繊維よりも、修飾セルロースナノ繊維(B)の方が好ましい。
[補強剤]
本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド(A)及び修飾セルロースナノ繊維(B)に加えて、補強剤をさらに含んでいてもよい。
補強剤としては、慣用の補強剤を利用でき、例えば、粒状補強剤(シリカ、カーボンブラック、マイカ、タルクなど)、繊維状補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ウィスカー、ワラストナイトなどの無機繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維などの有機繊維など)などが挙げられる。これらの補強剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの補強剤のうち、軽量性及び機械的特性に優れる点から、セルロースナノ繊維が好ましい。さらに、セルロースナノ繊維は、原料セルロースナノ繊維とフルオレン化合物(B1)とを混錬する過程で反応させて修飾セルロースナノ繊維を製造した場合において、フルオレン化合物(B1)と反応せずに残存したセルロースナノ繊維であってもよい。
補強剤の割合は、ポリアミド組成物中10重量%以下(例えば0.01〜10重量%程度)であってもよく、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であってもよい。
さらに、本発明のポリアミド組成物は、軽量性やリサイクル性などの点から、無機系補強剤を実質的に含まないのが好ましい。無機系補強剤の割合は、ポリアミド組成物中1重量%以下(特に0.1重量%以下)であってもよく、0重量%(無機系補強剤を含まないの)が特に好ましい。
[分散剤又は相溶化剤]
本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド(A)及び修飾セルロースナノ繊維(B)に加えて、分散剤又は相溶化剤をさらに含んでいてもよい。分散剤又は相溶化剤は、セルロース繊維を樹脂中に分散させる際に利用される慣用の分散剤又は相溶化剤を利用できるが、分散性に優れる点から、修飾セルロースナノ繊維(B)を構成するフルオレン化合物(B1)が好ましい。フルオレン化合物(B1)は、原料セルロースナノ繊維とフルオレン化合物(B1)とを混錬する過程で反応させて修飾セルロースナノ繊維を製造した場合において、原料セルロースナノ繊維と反応せずに残存したフルオレン化合物(B1)であってもよい。
分散剤又は相溶化剤の割合は、ポリアミド組成物中10重量%以下(例えば0.01〜10重量%程度)であってもよく、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であってもよい。
[他の樹脂成分]
本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド(A)及び修飾セルロースナノ繊維(B)に加えて、ポリアミド(A)以外の他の樹脂成分をさらに含んでいてもよい。他の樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよいが、成形性などの点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン[エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、環状オレフィン樹脂など]、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂など)、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン;スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などの共重合体;耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体などのゴムグラフトスチレン系共重合体など)、芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート樹脂など)、ポリカーボネート(例えば、芳香族ポリカーボネートなど)、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンなどを含む)、ポリエーテルケトン(ポリエーテルエーテルケトン樹脂を含む)、ポリイミド(ポリエーテルイミド、液晶性ポリマーを含む)、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。また、必要に応じて、ポリアミドは、前記熱可塑性樹脂とのポリマーアロイを形成してもよい。
他の樹脂成分の割合は、ポリアミド組成物中10重量%以下(例えば0.01〜10重量%程度)であってもよく、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であってもよい。
[他の添加剤]
本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド(A)及び修飾セルロースナノ繊維(B)に加えて、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、慣用の添加剤を利用でき、例えば、着色剤(例えば、染顔料など)、導電剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、可塑剤、滑剤、安定剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、核剤、結晶化促進剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
他の添加剤の割合は、ポリアミド組成物中10重量%以下(例えば0.01〜10重量%程度)であってもよく、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であってもよい。
[ポリアミド組成物の製造方法及び特性]
本発明のポリアミド組成物は、高い溶融流動性を有しており、ポリアミド(A)が脂肪族ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド66、コポリアミド6/66など)などの比較的低い融点(例えば、280℃未満の融点)を有するポリアミドを含む場合、ISO 1133に準じて測定したMFR(温度:280℃、荷重:2.16kgf)は、例えば1〜100g/10分程度の範囲から選択でき、例えば3〜50g/10分、好ましくは5〜40g/10分(例えば7〜35g/10分)、さらに好ましくは8〜30g/10分(特に10〜25g/10分)程度であってもよい。
本発明のポリアミド組成物は、良好な機械的特性を有しており、特に、高温であっても、良好な機械的特性を有している。本発明のポリアミド組成物の100℃における引張弾性率は0.2GPa以上であってもよく、例えば0.25〜1.5GPa、好ましくは0.3〜1GPa(例えば0.4〜0.9GPa)、さらに好ましくは0.5〜0.8GPa(特に0.6〜0.7GPa)程度であってもよい。ポリアミド組成物の150℃における引張弾性率は0.15GPa以上であってもよく、例えば0.15〜1GPa、好ましくは0.2〜0.8GPa、さらに好ましくは0.25〜0.5GPa(特に0.3〜0.4GPa)程度であってもよい。
また、本発明のポリアミド組成物の100℃における引張強度は5MPa以上であってもよく、例えば5〜30MPa、好ましくは10〜28MPa(例えば12〜25MPa)、さらに好ましくは13〜23MPa(特に15〜20MPa)程度であってもよい。ポリアミド組成物の150℃における引張強度はMPa以上であってもよく、例えば5〜25MPa、好ましくは7〜20MPa、さらに好ましくは8〜15MPa(特に10〜12MPa)程度であってもよい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、引張弾性率及び引張強度は、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のポリアミド組成物は、高温での線熱膨張係数が低く、150℃以上(例えば150〜180℃程度)であっても、低い線熱膨張係数を示す。具体的には、150℃における線熱膨張係数は2×10−4/K以下であればよく、例えば0.1×10−4〜1.5×10−4/K、好ましくは0.2×10−4〜1×10−4/K、さらに好ましくは0.3×10−4〜0.5×10−4/K程度である。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、線熱膨張係数は、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のポリアミド組成物は、各種成形体に成形してもよい。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて選択でき、例えば、一次元的構造体(例えば、線状又は糸状など)、二次元的構造体(例えば、フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造体[例えば、ブロック状、棒状、中空状(管状又はチューブ状)など]などであってもよい。
成形体は、例えば、圧縮成形法、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などの慣用の成形法を利用して製造することができる。
[ポリアミド組成物の製造方法]
本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド樹脂(A)と、修飾セルロースナノ繊維(B)及び/又はその原料と、必要に応じて他の成分(他の樹脂成分や添加剤など)とを、乾式混合、溶融混練などの慣用の方法で混合することにより調製でき、ポリアミド組成物は、ペレットなどの形態であってもよい。また、修飾セルロースナノ繊維(B)が布帛の形態である場合、樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(必要に応じて、さらに他の成分)を含む樹脂組成物形成成分を修飾セルロースナノ繊維(B)に溶融含浸して調製してもよい。そのため、ポリアミド組成物は、シート(プリプレグ又はスタンパブルシート)などの形態であってもよい。
前記方法のうち、簡便性などの点から、溶融混練する方法が好ましい。溶融混錬方法としては、慣用の溶融混練手段により、例えば10〜500rpm、好ましくは20〜100rpm、さらに好ましくは30〜80rpm(特に40〜60rpm)程度の回転速度で溶融混練してもよい。慣用の溶融混練方法としては、例えば、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸又は二軸押出機など)などを用いた方法などが挙げられる。
溶融混練温度は、ポリアミド(A)の融点以上であればよいが、ポリアミドの分解を抑制し、かつ溶融成形性を向上できる点から、ポリアミド(A)の融点をTmとしたとき、溶融混練温度は、例えばTm〜(Tm+50)℃、好ましくは(Tm+10)〜(Tm+40)℃、さらに好ましくは(Tm+20)〜(Tm+30)℃程度である。
溶融混練時間は、特に限定されないが、本発明の方法では、短時間でポリアミド組成物を得られることが多いため、混練時間は、例えば1分〜1時間、好ましくは3〜30分、さらに好ましくは5〜10分程度であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、用いた原料及び測定機器の詳細、評価方法は以下の通りである。
(使用原料)
BPFG:9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン
ポリアミド:コポリアミド6/66、DSM社製「Novamid2420J」。
(測定機器及び成形機器)
走査型電子顕微鏡(SEM):日本電子(株)製「JSM−6510」
ラマン顕微鏡:(HORIBA JOBIN YVON社製、XploRA)
ラボプラストミル:(株)東洋精機製作所製「50M」
動的粘弾性測定装置:(株)ユービーエム製「Rheogel−E4000」
熱機械分析装置:(株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」。
(修飾セルロースナノ繊維に結合したフルオレン化合物の修飾率)
フルオレン化合物の修飾率(以下フルオレン修飾率)は、ラマン顕微鏡を使用してラマン分析を行い、芳香族環(1604cm−1)とセルロースの環内CH(1375cm−1)との吸収バンドの強度比(I1604/I1375)により算出した。なお、算出にあたっては、フルオレン化合物を所定量含有するジアセチルセルロース((株)ダイセル製)フィルムを、溶液キャスト法により作成し、これらの強度比(I1604/I1375)から作成した検量線を用いた。すべてのサンプルは3回測定し、その結果から算出される値の平均値をフルオレン修飾率とした。
(修飾セルロースナノ繊維の合成)
セルロースナノ繊維の水分散液(固形分濃度15重量%)100gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)500gに分散して遠心分離した後、沈降した固形分をさらに500gのDMAcに分散して再び遠心分離することにより、溶媒置換し、セルロースナノ繊維とDMAcとの混合物(セルロース含量約10重量%)を得た。この混合物を1000mLの三口フラスコに移し、さらにDMAc350g、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン(BPFG)15g、ジアザビシクロウンデセン(DBU)10gを加え、120℃で3時間攪拌した。得られた混合液を遠心分離で回収し、1200mLのDMAcで洗浄する工程を3回繰り返し、修飾セルロースナノ繊維(B−CNF)を得た。フルオレン化合物の修飾率は12重量%であった。なお、使用した原料であるセルロースナノ繊維のSEM写真を図1に示す。
(引張弾性率及び引張強度)
サンプルを粉砕し、ホットプレスで厚み0.3mmに調整したフィルムを30mm×3mmに切り出し、動的粘弾性測定装置を用いて試料室内を100℃又は150℃に調整して引張速度0.0175mm/secで引張試験を行った。
(線熱膨張係数)
サンプルを粉砕し、ホットプレスで厚み0.3mmに調整したフィルムを24mm×5mmに切り出し、熱機械分析装置を用いて、静荷重49mNの引張モード、窒素雰囲気下、温度範囲40〜190℃、昇温速度5℃/minで熱機械分析を行った。得られた結果を2℃毎に区切り、区間毎に傾きを算出することで100〜190℃における線熱膨張係数を算出した。
実施例1(ポリアミド/B−CNFコンポジットAの調製)
事前に80℃で5時間真空乾燥したポリアミド99重量部を、ラボプラストミルを用いて、溶融温度220℃、回転速度20rpmの条件で2分間混練を行った後に、修飾セルロースナノ繊維(B−CNF)を固形分量換算で1重量部添加し、50rpmで6分間混練を行うことでポリアミド/B−CNFコンポジットA(ポリアミド組成物)を調製した。
実施例2(ポリアミド/B−CNFコンポジットBの調製)
ポリアミドを95重量部、B−CNFを5重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリアミド/B−CNFコンポジットBを調製した。
実施例3(ポリアミド/B−CNFコンポジットCの調製)
ポリアミドを90重量部、B−CNFを10重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリアミド/B−CNFコンポジットCを調製した。
実施例4(ポリアミド/B−CNFコンポジットDの調製)
ポリアミドを85重量部、B−CNFを15重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリアミド/B−CNFコンポジットDを調製した。
実施例5(ポリアミド/B−CNFコンポジットEの調製)
ポリアミドを80重量部、B−CNFを20重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でポリアミド/B−CNFコンポジットEを調製した。
比較例1(ポリアミド/CNFコンポジットaの調製)
B−CNFの代わりにCNF(未修飾の原料セルロースナノ繊維)を用いたこと以外は実施例1と同様の条件でポリアミド/CNFコンポジットaを調製した。
比較例2(ポリアミド/CNFコンポジットbの調製)
B−CNFの代わりにCNFを用いたこと以外は実施例2と同様の条件でポリアミド/CNFコンポジットbを調製した。
比較例3(ポリアミド/CNFコンポジットcの調製)
B−CNFの代わりにCNFを用いたこと以外は実施例3と同様の条件でポリアミド/CNFコンポジットcを調製した。
比較例4(ポリアミド/CNFコンポジットdの調製)
B−CNFの代わりにCNFを用いたこと以外は実施例4と同様の条件でポリアミド/CNFコンポジットdを調製した。
比較例5(ポリアミド/CNFコンポジットeの調製)
B−CNFの代わりにCNFを用いたこと以外は実施例5と同様の条件でポリアミド/CNFコンポジットeを調製した。
実施例6(ポリアミド/B−CNFコンポジットBの引張試験)
実施例2で調製したサンプルを用いて、試料室内を100℃に調整し、引張試験を行った結果、弾性率0.30GPa、強度10.5MPaであった。
実施例7(ポリアミド/B−CNFコンポジットBの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は実施例6と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.20GPa、強度10.1MPaであった。
実施例8(ポリアミド/B−CNFコンポジットCの引張試験)
使用したサンプルを実施例3で調製したサンプルに変更した以外は実施例6と同様の条件で引張試験を行った結果、弾性率0.41GPa、強度14.1MPaであった。
実施例9(ポリアミド/B−CNFコンポジットCの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は実施例8と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.17GPa、強度9.3MPaであった。
実施例10(ポリアミド/B−CNFコンポジットDの引張試験)
使用したサンプルを実施例4で調製したサンプルに変更した以外は実施例6と同様の条件で引張試験を行った結果、弾性率0.56GPa、強度16.9MPaであった。
実施例11(ポリアミド/B−CNFコンポジットDの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は実施例10と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.28GPa、強度10.2MPaであった。
実施例12(ポリアミド/B−CNFコンポジットEの引張試験)
使用したサンプルを実施例5で調製したサンプルに変更した以外は実施例6と同様の条件で引張試験を行った結果、弾性率0.62GPa、強度16.1MPaであった。
実施例13(ポリアミド/B−CNFコンポジットEの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は実施例12と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.31GPa、強度10.5MPaであった。
比較例6(ポリアミドの引張試験)
試料室内を100℃に調整し、原料であるポリアミドの引張試験を行った結果、弾性率0.16GPa、強度8.7MPaであった。
比較例7(ポリアミドの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は比較例6と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.10GPa、強度6.6MPaであった。
比較例8(ポリアミド/CNFコンポジットbの引張試験)
使用したサンプルを比較例2で調製したサンプルに変更した以外は実施例6と同様の条件で引張試験を行った結果、弾性率0.19GPa、強度9.0MPaであった。
比較例9(ポリアミド/CNFコンポジットbの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は比較例8と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.09GPa、強度6.3MPaであった。
比較例10(ポリアミド/CNFコンポジットcの引張試験)
使用したサンプルを比較例3で調製したサンプルに変更した以外は実施例6と同様の条件で引張試験を行った結果、弾性率0.25GPa、強度11.1MPaであった。
比較例11(ポリアミド/CNFコンポジットcの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は比較例10と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.11GPa、強度5.7MPaであった。
比較例12(ポリアミド/CNFコンポジットdの引張試験)
使用したサンプルを比較例4で調製したサンプルに変更した以外は実施例6と同様の条件で引張試験を行った結果、弾性率0.30GPa、強度10.5MPaであった。
比較例13(ポリアミド/CNFコンポジットdの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は比較例12と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.14GPa、強度6.6MPaであった。
比較例14(ポリアミド/CNFコンポジットeの引張試験)
使用したサンプルを比較例5で調製したサンプルに変更した以外は実施例6と同様の条件で引張試験を行った結果、弾性率0.33GPa、強度10.4MPaであった。
比較例15(ポリアミド/CNFコンポジットeの引張試験)
試料室内を150℃に調整したこと以外は比較例14と同じ条件で引張試験を行った結果、弾性率0.21GPa、強度8.3MPaであった。
実施例6〜13及び比較例6〜15の結果から明らかなように、実施例の組成物は、高温であっても機械的特性に優れ、修飾セルロースナノ繊維の割合が増加するにつれて、機械的特性も増加した。これに対して、比較例の組成物は、実施例の組成物に比べて、機械的特性が低かった。
実施例14(ポリアミド/B−CNFコンポジットAの線熱膨張係数測定)
実施例1で調製したサンプルの線熱膨張係数を算出した。
実施例15(ポリアミド/B−CNFコンポジットBの線熱膨張係数測定)
実施例2で調製したサンプルの線熱膨張係数を算出した。
実施例16(ポリアミド/B−CNFコンポジットEの線熱膨張係数測定)
実施例5で調整したサンプルの線熱膨張係数を算出した。
比較例16(ポリアミドの線熱膨張係数測定)
原料であるポリアミドの線熱膨張係数を算出した。
比較例17(ポリアミド/CNFコンポジットaの線熱膨張係数測定)
比較例1で調製したサンプルの線熱膨張係数を算出した。
比較例18(ポリアミド/CNFコンポジットbの線熱膨張係数測定)
比較例2で調製したサンプルの線熱膨張係数を算出した。
比較例19(ポリアミド/CNFコンポジットeの線熱膨張係数測定)
比較例5で調製したサンプルの線熱膨張係数を算出した。
実施例14及び比較例16、17を比較した結果を図2に示す。図2から明らかなように、B−CNFを1重量%含む実施例14の組成物の線熱膨張係数は、原料ポリアミドの比較例16及びCNFを1重量%含む比較例17よりも低かった。
実施例15及び比較例16、18を比較した結果を図3に示す。図3から明らかなように、B−CNFを5重量%含む実施例15の組成物の線熱膨張係数は、原料ポリアミドの比較例16及びCNFを5重量%含む比較例18よりも低く、実施例15と比較例18との差も顕著であった。
実施例16及び比較例16、19を比較した結果を図4に示す。図4から明らかなように、B−CNFを20量%含む実施例16の組成物の線熱膨張係数は、原料ポリアミドの比較例16及びCNFを20重量%含む比較例19よりも低く、実施例16と比較例19との差も顕著であった。