JP6357070B2 - 修飾セルロース及びその製造方法 - Google Patents
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Description
セルロースとしては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維由来のパルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ないことからパルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。また、セルロースは、前記例示のパルプ(例えば、化学パルプ)などを微細化(ミクロフィブリル化)したセルロース繊維、特に、セルロースナノファイバーが好ましい。
前記修飾セルロースにおいて、フルオレン化合物は、下記式(1)で表される。
修飾セルロース(又は変性セルロース、セルロース誘導体)の化学修飾(又は結合)の形態は、特に限定されず、通常、セルロース(又はセルロース繊維)のヒドロキシ基及び/又はパルプなどの製造過程でセルロースに形成されたカルボキシ基と、前記フルオレン骨格を有する化合物のヒドロキシ基とが結合(エーテル結合及び/又はエステル結合)している場合が多い。
さらに、修飾セルロースの特性(例えば、低線膨張特性、強度、耐熱性など)を樹脂に有効に発現させるためには、結晶性の高い修飾セルロースが好ましい。前記のように、本発明の修飾セルロースはセルロースの結晶性を維持できるため、修飾セルロースの結晶化度は前記セルロースの数値をそのまま参照できる。例えば、修飾セルロースの結晶化度は、40〜95%(例えば、50〜90%)、好ましくは60〜95%(例えば、65〜90%)、さらに好ましくは70〜90%(例えば、75〜85%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば、75〜90%程度)であってもよい。結晶化度が小さすぎると、低線膨張特性や強度などの特性を低下させる虞がある。なお、結晶化度は、実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の製造方法では、所定の酸の存在下、前記セルロースと前記フルオレン化合物とを反応させてもよい。
本発明の修飾セルロース(又は修飾セルロース繊維)は、樹脂との親和性又は混和性に優れているため樹脂の複合材料(例えば、補強材)として利用できる。
微結晶セルロースB:旭化成(株)製、「セオラスST-100」
米松:(株)ジュオン製、「米松の木粉(平均粒径0.2mm)」
セリッシュ(ダイセルファインケム(株)製、「KY110N」、セルロース:水(重量比)=15/85)。
フルオレン化合物の修飾率の定量はFT−Raman分析により行った。酢酸セルロース((株)ダイセル製)と既定量の9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEFという)とをテトラヒドロフラン(THF)に溶解して成膜し、ラマン顕微鏡(堀場JOBIN YVON社製、「XploRA」)を使用してラマン分析を行った。芳香族環(1604cm−1)とセルロースの環内CH(1375cm−1)との吸収バンドの強度比(I1604/I1375)と、BPEFの濃度に基づき、検量線を作成した。すべてのサンプルは3回測定し、その結果を平均した。
修飾セルロースの形状はFE−SEM(日本電子(株)製、「JSM−6700F」、測定条件:20mA、60秒)を用いて観察した。なお、平均繊維径は、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出した。
実施例1で得られた修飾セルロースナノファイバーの結晶化度は、参考文献:Textile Res. J. 29:786-794(1959)に基づき、XRD分析法(Segal法)により評価し、下式により算出した。
I200はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、IAMはアモルファス部(002面と110面間の最低部、回折角2θ=18.5°)の回折強度である。
実施例1で得られた修飾セルロースナノファイバーの熱分解温度は、TG−DTA測定装置(「Rigaku Thermo Plus TG8120」、(株)リガク製、雰囲気:窒素、昇温速度:10℃/分)を用いて測定した。
洗浄後の修飾セルロースナノファイバーを1,4−ジオキサン(ジオキサン)で置換した後、105℃の条件下、5時間で乾燥して秤量(W2)し、下式によりセルロース繊維の収率を算出した。
なお、W1は、溶媒分散系セルロースの固形分の重量、W2は実施例1で得られた修飾セルロースナノファイバーの重量を示す。
既定量のセルロース繊維をジオキサンに分散して0.2重量%のセルロース繊維分散液を調製した後、室温で放置し、沈降時間に基づいて分散性を評価した。なお、沈降時間が5時間以上の場合、分散性が良い(○)、沈降時間が2時間以下の場合は、分散性が悪い(×)と評価した。
実施例2又は比較例4で得られた複合体を熱プレス後、急冷することで30μmのシートを調製し、偏光顕微鏡によりセルロース繊維の分散性を評価した。なお、評価は、大きな凝集塊があるものを分散性が悪い(×)とし、大きな凝集塊が見られないものを分散性が良い(○)とした。
実施例2又は比較例4で得られた複合体を厚み1mmのシート状に熱プレス成形した後、110℃で30分間アニール処理したシートを5mm×30mmの短冊状にカットして測定用サンプルに用いた。なお、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、「Q−800」)を用い、荷重たわみ温度を測定した。
引張測定用のサンプルは、荷重たわみ温度測定で用いた測定用サンプルと同様に熱プレス及びアニール処理して厚み0.6mmのシートを調製し、ダンベルカッターによりIEC540規格のサイズにカットして使用した。また、引張特性[引張強度及び弾性率]は、引張試験機(ミネベア(株)製、「LTS−1kNB」)を用い、チャック間距離30mm、引張速度5mm/分の条件で測定した。
(1)セルロース含有溶媒分散系の調製
上記セリッシュ100g(固形分15g)をN,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAc)500gに分散して遠心分離した後、沈降した固形分をさらにDMAc500gに分散して再び遠心分離することによりセルロースとN,N-ジメチルアセトアミドとの混合物(セルロース含量約10重量%)を得た。
1000mlの三口フラスコに、セルロース含有溶媒分散系150g(固形分15g)、ジメチルスルホキシド250g、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BPEFという)350g及び35%塩酸5.5gを加え、撹拌機を用いて170℃で30分間撹拌した。得られた混合液を遠心分離機(日立工機(株)製、「CR22GIII」、回転速度:8000rpm(4530g))で25分間処理した後、固形分を回収し、更に、N,N-ジメチルアセトアミド1200mlに分散した後、再度遠心分離を行った。このような操作を3回繰り返すことにより、ジメチルスルホキシド、過剰のBPEF及び他の溶解成分を除去し、修飾セルロースとN,N-ジメチルアセトアミドとの混合物を得た。得られた混合物を乾燥することにより、粉体状の形態を有する修飾セルロースナノファイバーを得た。
特許文献1の実施例1に従って、米松とBPEFとを反応させた。すなわち、100メッシュに破砕した5gおよびBPEF50gを100mlのオートクレーブに入れ、220℃の油浴中で60分加熱した。そして、加熱後の混合物に、1,4−ジオキサンと水との混合溶媒(前者/後者(重量比)=90/10)100mlを加え、均一に分散するまで攪拌し、濾過、洗浄により残留BPEFを除去した。
特許文献2の実施例1に従って、硫酸の存在下、微結晶セルロースとBPEFとを反応させた。すなわち、三口フラスコ(容量100mL)に、BPEF20g、微結晶セルロースA10g、及び濃度6Nの硫酸0.7gを加え、200℃のオイルバスを用いて加熱下で1時間撹拌し、液状の反応混合物(液化組成物)を得た。得られた液状反応混合物を、1,4−ジオキサンと水(9/1、v/v)の混合溶媒に分散させてから濾紙を用いて減圧下でろ過した。得られた残渣を105℃で3時間乾燥してから、微結晶セルロースの残渣率をセルロースの仕込量に基づいて計算した結果、残渣率は25重量%であり、75重量%もの微結晶セルロースが液化していた。また、液状反応混合物の粘度は約500mPa・sであった。
「セリッシュ」を処理せず、そのままの状態でジオキサンに分散して沈降時間を評価した結果、沈降時間は25分で、評価は×であった。
(1)修飾セルロースナノファイバーとポリ乳酸とのマスターバッチの調製
実施例1で得られた修飾セルロースナノファイバー(以下、修飾繊維)/ポリ乳酸(以下、PLA)[(重量比)=30/70のマスターバッチ]を下記手順により調製した。
ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて修飾セルロース繊維を30重量%含有するPLAのマスターバッチをPLAと混練することにより、修飾繊維を10重量%含有するPLA/修飾繊維複合体を調製した。得られた複合体を成形して得られたシートのSEM写真を図2に示し、このシートの外観の写真を図3に示す。シートのSEM写真から修飾セルロースナノファイバーの分散性を評価した。さらに、引張試験、弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。結果を表3に示す。なお、図3から明らかなように、修飾セルロースナノファイバーは光透過性を有し、樹脂に対して高い分散性を有することがわかった。
未修飾の微結晶セルロースBを用い、実施例2と同様の方法にて、微結晶セルロースBを10重量%含有するPLA/微結晶セルロース複合体を調製した。得られた複合体を成形して得られたシートのSEM写真を図4に示した。このSEM写真からセルロース繊維の分散性を評価した。また、引張り試験、弾性率及び荷重たわみ温度を測定した。結果を表3に示す。
Claims (16)
- セルロースと、下記式(1)で表される化合物とが結合した修飾セルロースであって、セルロースに結合した下記式(1)で表される化合物の割合が0.01〜20重量%であり、粉体状の形態を有する修飾セルロース。
- セルロースに結合した式(1)で表される化合物の割合が、修飾セルロースの総量に対して、0.1〜20重量%である請求項1に記載の修飾セルロース。
- ナノファイバーである請求項1又は2に記載の修飾セルロース。
- 平均繊維径が5〜500nmである請求項1〜3のいずれかに記載の修飾セルロース。
- 結晶化度が、60%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の修飾セルロース。
- 式(1)において、環Zが単環式アレーン環、多環式アレーン環又は環集合アレーン環であり、R1がC2−6アルキレン基、R2がアルキル基又はアルコキシ基、R3がシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基、mが0〜5の整数、nが1〜3の整数、pが0〜3の整数、kが0〜3の整数である請求項1〜5のいずれかに記載の修飾セルロース。
- 式(1)において、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環であり、R1がC2−4アルキレン基、R2がC1−4アルキル基、R3がC1−4アルキル基、mが0又は1、nが1又は2、pが0〜2の整数、kが0又は1である請求項1〜6のいずれかに記載の修飾セルロース。
- 式(1)で表される化合物が、9,9−ビス(ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール)フルオレン及び9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール)フルオレンから選択された少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の修飾セルロース。
- 樹脂の補強材である請求項1〜8のいずれかに記載の修飾セルロース。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の修飾セルロースを含む樹脂組成物。
- 25℃、水溶液中の酸解離指数pKaが−9〜5であるブレンステッド酸、固体酸及びルイス酸から選択された少なくとも1種の酸の存在下、セルロース繊維が有機溶媒に分散した形態で、セルロースと、請求項1に記載の式(1)で表される化合物とを反応させる請求項1〜9のいずれかに記載の修飾セルロースの製造方法。
- 酸が、少なくともハロゲン化水素酸を含む請求項11に記載の製造方法。
- 有機溶媒が、非プロトン性極性溶媒である請求項11又は12に記載の製造方法。
- セルロースが、木材パルプ及びコットンリンターパルプから選択された少なくとも1種のパルプに由来するナノセルロースファイバーを含む請求項11〜13のいずれかに記載の製造方法。
- セルロースが、I型結晶構造を有する結晶セルロースを含む請求項11〜14のいずれかに記載の製造方法。
- 酸の割合が、セルロース100重量部に対して0.01〜20重量部である請求項11〜15のいずれかに記載の製造方法。
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