JP6580471B2 - ポリ乳酸組成物及びその製造方法並びに複合体 - Google Patents

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本発明は、ポリ乳酸中にセルロースナノ繊維が高い含有割合で均一に分散したポリ乳酸組成物(マスターバッチ)及びその製造方法並びに前記組成物とポリ乳酸とを含む複合体(又は複合材料)に関する。
温室効果ガス排出削減による「低炭素化社会」や、環境に調和した「資源循環型社会」の実現に向けた取り組みが強く求められており、これらの社会を実現するために、新しい素材であるバイオプラスチックの普及が加速している。なかでも、ポリ乳酸は植物由来で生分解する樹脂として利用されているが、耐熱性や強度の点でポリプロピレンなどの石油系樹脂に比べて低い。そのため、ポリ乳酸の物性を改善するため、ポリ乳酸を繊維と組み合わせる方法が検討されている。繊維の中でも、植物由来の繊維であるセルロース繊維は、環境負荷が小さく、かつ持続型資源であるとともに、高弾性率、高強度、低線膨張係数などの優れた特性を有するため、有用である。
特開2009−132094号公報(特許文献1)には、天然繊維を温度100℃以上の高温水蒸気で処理し、ヘミセルロースを低級水性のフルフラールに変質させた改質天然繊維と、結合材としてのポリ乳酸とを含む天然繊維ボードが開示されている。
しかし、この天然繊維ボードでは、ポリ乳酸と繊維との界面の親和性や密着性が十分でないため、引張、曲げ、衝撃などの力が作用した場合、ポリ乳酸と繊維との界面から破断が生じ、元々耐衝撃性が低いポリ乳酸の強度がより低下する。さらに、繊維径も大きいため、繊維による強度の向上効果も十分ではなかった。
そこで、微細化したセルロースナノ繊維(セルロースナノファイバー)を樹脂の補強剤として利用する方法も検討されている。「成形加工’14」、一般社団法人 プラスチック成形加工学会発行、第377〜378頁(非特許文献1)には、アルゴン雰囲気下、セルロース、フルオレン化合物[ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(BPFG)]、非プロトン性極性溶媒、及び触媒を反応させ、未反応フルオレンと触媒とを除き、修飾セルロースを得たこと、この修飾セルロースの2%ジオキサン分散液をポリ乳酸のジオキサン溶液と混合し、ホモジナイザーで微細化し、メタノールで析出して、30重量%のセルロースナノファイバーとポリ乳酸との複合体(マスターバッチ)を得たこと、さらに、得られたマスターバッチとポリ乳酸とを溶融混練し、10重量%のセルロースナノファイバーを含有するポリ乳酸コンポジットを調製したことが記載されている。
しかし、このポリ乳酸コンポジットで形成されたシート(フィルム)は、引張破断強度、伸度などの靱性が低い。また、触媒の存在下、フルオレン化合物が結合(又は修飾)した修飾セルロースを予め調製する必要がある。さらに、多量の有機溶媒を要するため、生産性が低下する。
また、特開2013−10855号公報(特許文献2)には、強度と耐衝撃性に優れ、色調が良好なポリ乳酸コンポジット材料として、ポリ乳酸樹脂、結晶化度50%未満のセルロース、ガラス繊維及びコアシェル型ゴムなどのゴム成分(耐衝撃剤)を含有するポリ乳酸樹脂組成物が開示されている。
しかし、このポリ乳酸樹脂組成物は、ガラス繊維や石油由来の改質剤を利用しているため、植物化度が著しく低い。
特開2009−132094号公報(特許請求の範囲、段落[0019][0024]) 特開2013−10855号公報(請求項1、段落[0010][0013][0088][0090])
「成形加工’14」、一般社団法人 プラスチック成形加工学会発行、第377〜378頁
従って、本発明の目的は、高い含有量であっても、セルロース繊維がナノメータサイズでポリ乳酸中に分散(均一分散)するとともに、高い植物化度であり、かつ強靱性のポリ乳酸組成物、及びこのようなポリ乳酸組成物を混練によって簡便かつ容易に調製できる製造方法並びに前記組成物と樹脂とを含む複合体(又は複合材料)を提供することにある。
本発明の他の目的は、高い植物化度であり、生分解性が優れるにも拘わらず、柔軟で靱性が高い成形体を製造できるポリ乳酸組成物、及びその製造方法並びに前記組成物と樹脂とを含む複合体(又は複合材料)を提供することにある。
本発明の別の目的は、修飾剤を結合したセルロースナノ繊維を予め調製しなくても、セルロースナノ繊維がポリ乳酸中に分散したポリ乳酸組成物、及びその製造方法並びに前記組成物と樹脂とを含む複合体(又は複合材料)を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリ乳酸溶液の存在下、加熱して溶媒を除去しながら、セルロース(セルロース原料)及びヘミセルロースを混練すると、意外なことに、従来は、不純物として除去の対象であったヘミセルロースが、ポリ乳酸溶液中で、セルロースナノファイバーの分散性を向上させる作用を示し、セルロースをミクロフィブリル化でき、かつ高含有量のセルロースナノ繊維を樹脂に均一に分散できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸、セルロースナノ繊維及び可塑剤を含むポリ乳酸組成物であって、前記可塑剤がヘミセルロースを含む。セルロースナノ繊維の割合は、ポリ乳酸100重量部に対して10〜1000重量部程度である。本発明のポリ乳酸組成物は、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物をさらに含んでいてもよい。前記9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物は、セルロースナノ繊維と結合して修飾セルロースナノ繊維を形成していてもよい。前記9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物の割合は、セルロースナノ繊維100重量部に対して0.1〜50重量部程度である。前記可塑剤の割合は、セルロースナノ繊維100重量部に対して1〜50重量部程度である。本発明のポリ乳酸組成物は、繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでいないのが好ましい。前記セルロースナノ繊維の平均繊維径が5〜500nm、平均繊維長が10μm以上であってもよい。前記セルロースナノ繊維の割合は、ポリ乳酸100重量部に対して50〜150重量部程度である。本発明のポリ乳酸組成物は、樹脂補強剤又はマスターバッチであってもよい。本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸を溶解可能な溶媒をさらに含み、かつ樹脂補強剤又はマスターバッチの前駆体であってもよい。
本発明には、溶媒にポリ乳酸が溶解した樹脂溶液と、セルロースと、ヘミセルロースとを少なくとも含む繊維状組成物を、溶媒を除去しつつ混練する前記ポリ乳酸組成物の製造方法も含まれる。本発明の方法では、加熱してポリ乳酸を溶融しつつ前記繊維状組成物を混練してもよい。本発明の方法では、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物の存在下、樹脂溶液とセルロースとヘミセルロースとを含む繊維状組成物を混練してもよい。
本発明には、前記ポリ乳酸組成物とポリ乳酸とを含む複合体も含まれる。
本発明では、ヘミセルロースがポリ乳酸溶液中で可塑剤として作用し、ポリ乳酸と微細化したセルロースナノ繊維との間に浸透して介在、又はポリ乳酸に相溶し、可塑剤として作用するためか、ポリ乳酸組成物においてセルロースナノ繊維が樹脂に均一に分散し、高い植物化度であり、且つ組成物としての靱性が高い。また、ポリ乳酸を溶解可能な溶媒を用いて、混練という簡単な操作で前記ポリ乳酸組成物を簡便かつ容易に得ることができる。このようなポリ乳酸組成物をマスターバッチ(又は樹脂の補強剤)として用いることにより、生分解性が優れるにも拘わらず、柔軟で靱性が高い成形体を製造できる。さらに、修飾剤(例えば、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物)の存在下で混練すると、修飾剤とセルロース(又はセルロースナノ繊維)とが反応し易いためか、触媒の存在下で予め修飾剤が結合した修飾セルロースを調製しなくても、修飾剤が結合した修飾セルロースナノ繊維を含むポリ乳酸組成物を形成でき、しかも反応促進により、繊維間に作用する水素結合を緩和できるためか、繊維径を小さくできる。
図1は、実施例1で得られたマスターバッチ中のセルロースナノファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。 図2は、比較例1で得られた修飾セルロースナノファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。
本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸に、ヘミセルロースを可塑剤として、セルロースナノ繊維が分散(均一に分散)した混練(又は溶融混練)組成物である。
[ポリ乳酸]
ポリ乳酸(ポリ乳酸系樹脂)は、乳酸成分を重合成分とするポリマーである。乳酸成分としては、例えば、乳酸(D−乳酸、L−乳酸、DL−乳酸)、乳酸の反応性誘導体[例えば、ラクチド(乳酸二量体)、メチルエステルなどのC1−3アルキルエステルなど]などが含まれる。乳酸成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
ポリ乳酸は、乳酸成分を主成分とするポリマーであればよく、乳酸成分の単独重合体(例えば、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD,L−乳酸など)であってもよく、乳酸成分と共重合成分との共重合体であってもよい。乳酸成分と共重合可能な共重合成分としては、ジオール成分(例えば、エチレングリコールなどのC2−6アルカンジオール成分など)、ジカルボン酸成分(例えば、アジピン酸又はそのエステル形成性誘導体などのC6−12アルカンジカルボン酸成分など)、ヒドロキシカルボン酸又はラクトン(例えば、グリコール酸などのヒドロキシC2−6アルカンカルボン酸、グリコリドなどのC4−10ラクトンなど)などが挙げられる。これらの共重合成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。共重合体において、乳酸成分の割合は、例えば、全構成モノマーの70モル%以上(例えば75〜99.5モル%程度)、好ましくは80モル%以上(例えば85〜99モル%程度)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば92〜98モル%程度)であってもよい。
ポリ乳酸の光学純度(全乳酸成分に対するD−又はL−乳酸の割合)は、耐熱性の点から、例えば90%以上、好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上(例えば97〜100%)程度である。
なお、ポリ乳酸は、異なる種類(又は重合組成)のポリ乳酸を2種以上組み合わせて構成してもよい。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、ポリスチレン換算で、5000〜1000000の範囲から選択でき、例えば10000〜800000(例えば20000〜700000)、好ましくは30000〜600000、さらに好ましくは50000〜500000程度であってもよい。
[セルロースナノ繊維]
セルロースナノ繊維(又はセルロースナノファイバー)は、セルロース(セルロース原料)をナノオーダーまで微細化(又はミクロフィブリル化)したセルロース繊維である。前記セルロースとしては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維由来のパルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ないことからパルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
また、前記セルロースナノ繊維は、酸化処理(例えば、C6位のメチロール基をカルボキシル基に酸化する処理)を施したナノ繊維(酸化セルロースナノ繊維)であってもよいが、本発明では、酸化セルロースナノ繊維でなくても樹脂に分散(又は均一に分散)可能なため、前記酸化処理をしていないセルロースナノ繊維が好ましい。この酸化処理をしていないセルロースナノ繊維で形成されたポリ乳酸組成物は、酸化処理によるセルロース分子鎖の切断(又は重合度の低下)の虞がなく、かつ加熱による着色の虞もない。そのため、セルロースの特性(例えば、引張強度、弾性率、低繊膨張率など)を維持できる場合が多い。なお、酸化処理過程を経ていなくても、パルプなどの製造過程で形成されたカルボキシル基などがセルロースナノ繊維に含まれていることがあるが、実施的に酸化されていないセルロースナノ繊維であればよい。
セルロースナノ繊維の平均繊維径は、例えば1〜1000nm未満(例えば3〜800nm)、好ましくは5〜500nm(例えば10〜400nm)、さらに好ましくは50〜300nm(特に70〜250nm)程度であってもよい。平均繊維径が大きすぎると、ポリ乳酸組成物の強度などの特性が低下する虞がある。なお、セルロースナノ繊維の最大繊維径は、例えば3〜1000nm未満(例えば5〜900nm)、好ましくは10〜700nm(例えば50〜500nm)、さらに好ましくは70〜400nm(特に100〜300nm)程度であってもよい。なお、セルロース繊維は、繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでいない場合が多い。
また、本発明では、セルロースにポリ乳酸溶液を浸透又は含浸させた状態で、ヘミセルロースを含む可塑剤の存在下で混練し、セルロース繊維に直接的に剪断力が作用するのを抑制できるためか、セルロース原料の長手方向の切断を抑制でき、繊維長が比較的長い繊維を得ることができる。すなわち、セルロース繊維の平均繊維長は、例えば0.01〜500μm(例えば0.1〜400μm)程度の範囲から選択でき、通常1μm以上(例えば5〜300μm)、好ましくは10μm以上(例えば20〜200μm)、さらに好ましくは30μm以上(特に50〜150μm)であってもよい。
さらに、セルロース(又はセルロース繊維)の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上(例えば、5〜10000程度)、好ましくは10以上(例えば10〜5000程度)、さらに好ましくは20以上(例えば20〜3000程度)、特に50以上(例えば50〜2000程度)であってもよく、100以上(例えば100〜1000程度)、さらには200以上(例えば200〜800程度)であってもよい。アスペクト比が小さすぎると、樹脂の補強性が低下する虞がある。
なお、セルロース(又はセルロース繊維)は、結晶性の高いセルロース(又はセルロース繊維)であってもよく、セルロースの結晶化度は、例えば40〜100%(例えば50〜100%)、好ましくは60〜95%、さらに好ましくは70〜90%(特に75〜90%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上であってもよい。また、セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。
また、本発明の方法では、樹脂溶液中での混練により、セルロースナノ繊維への樹脂溶液の浸透性を高めつつセルロース原料にせん断力を有効に作用できるためか、修飾剤が結合していないセルロースであっても、ナノオーダーの平均繊維径を有し、樹脂に均一分散したポリ乳酸組成物(混練組成物)を形成できる。ポリ乳酸組成物は、通常、繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでいない場合が多い。
本発明のポリ乳酸組成物は、セルロースナノ繊維の割合(含有量)が大きく、マスターバッチとして有用である。セルロースナノ繊維の割合は、ポリ乳酸100重量部に対して、例えば10〜1000重量部(例えば20〜500重量部)、好ましくは30〜300重量部(例えば40〜200重量部)、さらに好ましくは50〜150重量部(特に70〜120重量部)程度である。セルロースナノ繊維の割合が小さすぎると、機械的特性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、成形性が低下する虞がある。
[可塑剤]
可塑剤(相溶化剤又は分散助剤)はヘミセルロースを含む。すなわち、本発明のポリ乳酸組成物は、従来はセルロースの不純物として認識されていたヘミセルロースを可塑剤として含むことにより、ポリ乳酸中でのセルロースナノ繊維の均一分散性を向上しつつ、柔軟性を付与している。
ヘミセルロースは植物細胞壁中に含まれるヘミセルロースであれば特に限定されず、各種の植物原料、例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなどに由来するヘミセルロースを利用できる。ヘミセルロースは、分離精製されたヘミセルロースであってもよく、セルロースナノ繊維の原料である原料セルロースに不純物として含まれるヘミセルロース(例えば、パルプ中に含まれるヘミセルロース)のいずれであってもよい。
可塑剤は、ヘミセルロースに加えて、ヘミセルロースによる効果を損なわない範囲で、ポリ乳酸に用いられる慣用の可塑剤としてさらに含んでいてもよい。このような可塑剤としては、例えば、オキシカルボン酸エステル類(例えば、乳酸メチル、クエン酸トリブチルなどのオキシカルボン酸アルキルエステルなど)、ジカルボン酸エステル類(例えば、アジピン酸エステル、セバシン酸エステルなどの脂肪族ジカルボン酸エステル、フタル酸エステルなどの芳香族ジカルボン酸エステルなど)、多価アルコール脂肪酸エステル(例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、グリシジルエーテル類[例えば、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリングリシジルエーテルなど]などが挙げられる。
ヘミセルロースの割合は、可塑剤全体に対して50重量%以上であればよく、例えば50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%程度であり、100重量%(ヘミセルロースからなる可塑剤)であってもよい。ヘミセルロースの割合が多すぎると、ポリ乳酸組成物の植物化度が低下する虞がある。
可塑剤(特にヘミセルロース)の割合は、セルロースナノ繊維100重量部に対して1重量部以上であってもよく、例えば1〜50重量部、好ましくは3〜30重量部(例えば8〜25重量部)、好ましくは5〜20重量部(特に10〜15重量部)程度である。可塑剤の割合が少なすぎると、ポリ乳酸中でのセルロースナノ繊維の均一分散性が低下する虞がある。
[フルオレン化合物]
本発明のポリ乳酸組成物は、セルロースナノ繊維の分散性を向上させるために、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物(以下「フルオレン化合物」と称する場合がある)をさらに含んでいてもよい。9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有し、カルボキシル基又はその反応性誘導体、エポキシ基及びヒドロキシル基から選択された少なくとも一種の反応性基を有している。前記カルボキシル基の反応性誘導体としては、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、酸ハライド基(酸クロライド基、酸ブロマイド基などのハロホルミル基)などが例示できる。エポキシ基は、オキシラン環を含む限り、グリシジル基であってもよい。
代表的なフルオレン化合物としては、下記式(1)で表される。
[式中、環Zはアレーン環、Xは下記式(2-1)、(2-2)又は(2-3)で表される基を示し、nは1〜3の整数、R及びRは置換基を示し、pは0又は1以上の整数、kは0〜4の整数を示す]。
(Rは水素原子又はアルキル基、Rはアルキレン基、m1及びm2はそれぞれ0又は1以上の整数を示す)。
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン(例えば、ナフタレンなどの縮合二環式C10−16アレーン)環、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環、テルアレーン環、例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環などが例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6−10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
前記式(1)において、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基である。m1は0又は1以上の整数(例えば1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2程度)であってもよい。m1は、通常0又は1〜2であってもよい。
アルキレン基Rには、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2−3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などの分岐鎖状C3−6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3−4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。
オキシアルキレン基(OR)の数m2は、0又は1以上の整数(例えば0〜15、好ましくは0〜10)程度の範囲から選択でき、例えば0〜8(例えば1〜8)、好ましくは0〜5(例えば1〜5)、さらに好ましくは0〜4(例えば1〜4)、特に0〜3(例えば1〜3)程度であってもよく、通常0〜2(例えば0又は1)であってもよい。なお、m2が2以上である場合、アルキレン基Rの種類は、同一又は異なっていてもよい。また、置換基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基Xの置換数nは、環Zの種類に応じて、同一又は異なって1以上の整数であればよく、例えば1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1又は2、特に1であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
なお、基Xは、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2−、3−、4−位(特に、3−位及び/又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位である場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係(特にnが1である場合、2,6−位の関係)で基Xが置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基Xの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの4−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、基Xの置換位置は、2−、3−、2’−、3’−、4’−位のいずれであってもよく、通常、2−、3’−、4’−位、好ましくは2−、4’−位(特に2−位)に置換していてもよい。
前記式(1)において、置換基Rとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など)、ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
これらの置換基Rのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルキル基(メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキル基)が好ましい。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
置換基Rの係数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば、0〜2)の整数、特に0又は1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
置換基Rとして、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。
これらの置換基Rのうち、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(特に、メチル基などのC1−3アルキル基)、カルボキシル基又はC1−2アルコキシ−カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0〜4(例えば、0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば、0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
式(2-1)で表される基Xを有する具体的なフルオレン化合物としては、n=1、p=k=0、m1=0である9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシ−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−カルボキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC6−10アリール)フルオレン;n=1、p=k=0、m1=1〜3である9,9−ビス(カルボキシアルキル−アリール)フルオレン化合物、例えば、9,9−ビス(4−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−カルボキシエチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(カルボキシメチル)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(カルボキシメチル)−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−6アルキルC6−10アリール)フルオレンなどが例示できる。これらのフルオレン化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
式(2-2)で表される基Xを有する具体的なフルオレン化合物としては、n=1、p=k=0、m2=0である9,9−ビス(グリジシルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−グリジシルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリジシルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリジシルオキシ−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−グリジシルオキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリジシルオキシC6−10アリール)フルオレン;n=1、p=k=0、m2=1〜5である9,9−ビス(グリジシルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(4−(2−グリジシルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−グリジシルオキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(2−グリジシルオキシエトキシ)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(2−グリジシルオキシエトキシ)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;n=1、p=1、k=0、m2=0である9,9−ビス(アルキル−グリジシルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−グリジシルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−グリジシルオキシC6−10アリール)フルオレン;n=1、p=1、k=0、m2=1〜5である9,9−ビス(アルキル−グリジシルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−(2−グリジシルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;n=1、p=1、k=0、m2=0である9,9−ビス(アリール−グリジシルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−グリジシルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−グリジシルオキシC6−10アリール)フルオレン;n=1、p=1、k=0、m2=1〜5である9,9−ビス(アリール−グリジシルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−(2−グリジシルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;n=2、p=0、k=0、m2=0である9,9−ビス(ジ(グリジシルオキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(グリジシルオキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ(グリジシルオキシ)C6−10アリール)フルオレン;n=2、p=0、k=0、m2=1〜5である9,9−ビス(ジ(グリジシルオキシ(ポリ)アルコキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(2−グリジシルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ(グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシ)C6−10アリール)フルオレンなどが例示できる。これらのフルオレン化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、前記式(2-2)で表される基を有するフルオレン化合物は、単量体であってもよく、多量体(例えば、二量体、三量体など)であってもよい。グリシジル基を有するフルオレン化合物は、通常、少なくとも単量体を含む場合が多く、例えば、単量体、二量体及び三量体の混合物などであってもよい。
また、式(2-3)で表される基Xを有する具体的なフルオレン化合物としては、前記式(2-2)で表される基Xを有するフルオレン化合物に対応する化合物(グリジシルオキシ基をヒドロキシル基に代えた化合物)などが挙げられる。
これらのフルオレン化合物のうち、好ましいフルオレン化合物としては、例えば、9,9−ビス(グリジシルオキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C1−4アルキル−グリジシルオキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C1−4アルキル−グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C6−10アリール−グリジシルオキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C6−10アリール−グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(ジ(グリジシルオキシ)C6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(ジ(グリジシルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシ)C6−10アリール)フルオレンなどの前記式(2-2)で表される基Xを有するフルオレン化合物の単量体、及び多量体(二量体、三量体など);9,9−ビス(ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C6−10アリール−ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(C6−10アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(ジヒドロキシC6−10アリール)フルオレン、9,9−ビス(ジヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ)C6−10アリール)フルオレンなどの前記式(2-3)で表される基Xを有するフルオレン化合物などが挙げられる。なお、「(ポリ)C2−4アルコキシ」とは、C2−4アルコキシ基の繰り返し数m2が1以上の整数であることを意味する。
このようなフルオレン化合物は、ポリ乳酸組成物中において、セルロースナノ繊維と結合して修飾セルロースナノ繊維を形成していてもよい。なお、フルオレン化合物の修飾(又は化学修飾)の形態は、通常、セルロースナノ繊維のヒドロキシル基及び/又はパルプなどの製造過程でセルロースに形成されたカルボキシル基と、前記フルオレン化合物のヒドロキシル基とが結合(エーテル結合及び/又はエステル結合)している場合が多い。
このようなフルオレン化合物が結合した修飾セルロースナノ繊維は、ポリ乳酸に対し、優れた分散性(又は親和性)を発現できる。従って、フルオレン化合物が結合したセルロースナノ繊維をポリ乳酸組成物に含むと、ポリ乳酸組成物の機械的強度などの特性を向上できる。さらに、セルロースのミクロフィブリル化過程で、繊維間に作用する水素結合を緩和できるためか、セルロースナノ繊維の平均繊維径を小さくすることもできる。また、セルロースナノ繊維は、フルオレン化合物の結合割合が少量であっても、前記分散性(又は親和性)向上効果や繊維径低減効果を有効に発現できる。
9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物の割合は、セルロースナノ繊維100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部(例えば3〜30重量部)、さらに好ましくは5〜25重量部(特に10〜20重量部)程度である。フルオレン化合物の割合が多すぎると、ポリ乳酸組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に少なすぎると、フルオレン化合物によるセルロースナノ繊維の分散性を向上させる効果が小さくなる虞がある。
さらに、セルロースナノ繊維に結合したフルオレン化合物(修飾剤)の割合(修飾率という場合がある)は、修飾セルロースナノ繊維の総量(セルロースナノ繊維と修飾剤との総量)に対して0.1〜20重量%程度の範囲から選択でき、例えば0.2〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%(特に1〜7重量%)、さらに好ましくは1.5〜5重量%(特に2〜4重量%)程度であってもよい。修飾率が大きすぎると、セルロースナノ繊維の特性(高強度、高弾性率、低線膨張率などの特性)が低下する虞があり、逆に小さすぎると、ポリ乳酸に対する分散性(又は混和性)が低下するとともに、セルロースナノ繊維の繊維径が大きくなる虞がある。
[ポリ乳酸組成物の製造方法]
本発明のポリ乳酸組成物は、前記ポリ乳酸の樹脂溶液と、セルロース(セルロースナノファイバー又は繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維、例えばパルプ)と、ヘミセルロースとを(又はポリ乳酸と、溶媒と、セルロースと、ヘミセルロースとを)含む繊維状組成物を混練下、溶媒を除去することにより得ることができる。この方法では、ヘミセルロースの作用により、セルロースの繊維径がマイクロサイズの場合、樹脂溶液がセルロース繊維の表面(界面)及び/又はミクロフィブリルを構成する各ナノ繊維間に十分に浸透した状態で、加熱により溶媒を除去し、ポリ乳酸を高粘度状態で混練できるため、せん断力を有効に作用できる。そのためか、混練に伴って効率よくセルロース繊維を解繊しつつ、ナノオーダーレベルまでミクロフィブリル化でき、セルロースナノ繊維を樹脂に均一分散できる。また、セルロースナノ繊維の濃度が高くても、セルロースナノ繊維が凝集することなく(又はセルロースナノ繊維の再凝集を抑制し)、繊維径が小さなセルロースナノ繊維を樹脂に短時間で均一分散できる。しかも、セルロースナノ繊維の分散液の調製、エマルジョンの調製などが不要であり、混練という一段階の操作で前記ポリ乳酸組成物を調製できる。
セルロースは、セルロースナノ繊維の項で例示のセルロース(又はセルロース原料)を使用できる。このセルロースの平均繊維径は、種類に応じて選択でき、例えば1μm〜1mm、好ましくは5〜500μm(例えば10〜300μm)、さらに好ましくは20〜100μm(特に30〜50μm)程度であってもよい。また、セルロースの平均繊維長は、例えば0.1〜100mm、好ましくは0.5〜50mm(例えば0.5〜30mm)、さらに好ましくは1〜10mm(特に1〜5mm)程度であってもよい。
溶媒としては、ポリ乳酸を溶解可能であれば、特に限定されないが、例えば、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなどのシクロアルカンケトン類)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル)、ピロリドン類(2−ピロリドン、3−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、ポリ乳酸に対する溶解性およびその後の除去性に優れる点から、トルエンなどの芳香族炭化水素類、クロロホルムや塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジオキサンなどの環状エーテル類が好ましい。
溶媒の沸点としては、例えば40〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜115℃程度であってもよい。このような低沸点の溶媒を使用すると、溶媒の蒸発(又は気化)に伴って樹脂の粘度が増大するため、せん断力を作用させることで、セルロースのナノ化(又は微細化)を促進できる。
樹脂溶液(ポリ乳酸組成物前駆体又はマスターバッチ前駆体)中の溶媒の割合は、例えば10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%(例えば30〜70重量%)、さらに好ましくは35〜60重量%(特に40〜50重量%)程度である。溶媒の割合が低すぎても、高すぎても、セルロースの解繊(又はナノ化)が十分でなくなる虞がある。
また、セルロースとポリ乳酸との割合は、前述したポリ乳酸組成物中のポリ乳酸とセルロースナノ繊維との総量に対するセルロースナノ繊維の割合(含有量)に対応しており、セルロースの割合は、セルロースナノ繊維の割合に換算した割合で使用できる。
混練は、樹脂溶液とセルロース及びヘミセルロース(又はポリ乳酸と溶媒とセルロースとヘミセルロース)とを混練し、系中の溶媒を除去又は溶媒量を制御できれば、特に限定されず、慣用の方法、例えば、ミキシングローラ、ニーダ、バンバリーミキサー、押出機(一軸又は二軸押出機など)などにより行うことができ、二軸押出機などを好適に使用してもよい。
混練工程は、空気中又は不活性ガス(窒素、アルゴンなどの希ガスなど)雰囲気下、開放系で行ってもよく、通常、密閉した混練系で行う場合が多い。溶媒を除去する際には、混練機に設置した脱気装置などを利用して、加熱により溶媒を気化(又は蒸発)させてもよい。なお、せん断力を大きくするために、混練過程で溶媒を完全に除去するのが好ましいが、セルロースをナノレベルに解繊可能な範囲で溶媒を残存させてもよい。溶媒の除去割合は、除去前の溶媒に対して、例えば10重量%以上(例えば20〜80重量%)、好ましくは30重量%以上(例えば40〜95重量%)、さらに好ましくは50重量%以上(例えば70〜99重量%)、特に80重量%以上(例えば90〜99.9重量%)程度であってもよい。なお、混練後、残存した溶媒は、必要であれば、慣用の方法(例えば、濃縮など)により除去してもよい。また、必要に応じて、減圧し、溶媒を除去してもよい。
また、最終的にポリ乳酸を溶融しつつ前記組成物を混練(溶融混練)してもよい。溶融混練する場合、ポリ乳酸の融点(又は軟化点)以上(通常、溶媒の沸点以上)の温度、例えば100〜270℃、好ましくは130〜250℃、さらに好ましくは150〜220℃(特に170〜200℃)程度の温度で前記組成物を溶融混練してもよい。
好ましい態様としては、溶媒の沸点以下の温度又は溶媒の沸点付近の温度(例えば40〜100℃、好ましくは50〜80℃程度)で一定時間混練し、樹脂溶液中にセルロース(又はセルロース繊維)及びヘミセルロースを均一に分散させながら溶媒を除去し、さらにポリ乳酸の融点(又は軟化点)以上の温度(又は融点以上セルロースの分解温度以下の温度)まで加熱し、溶媒を完全に除去することでポリ乳酸の粘度及びせん断力を大きくし、所定時間混練する方法などが挙げられる。この方法では、繊維径が小さなセルロースナノ繊維を樹脂に短時間で均一分散できる。混練時間は、特に限定されないが、本発明の方法では、短時間でポリ乳酸組成物を得られることが多いため、混練時間は、例えば1分〜5時間、好ましくは3分〜3時間、さらに好ましくは5分〜1時間(特に8〜30分)程度であってもよい。
また、フルオレン化合物(修飾剤)がセルロースに結合した修飾セルロースナノ繊維を含むポリ乳酸組成物を製造する場合、予め、触媒(例えば、酸)の存在下、セルロースに前記修飾剤を結合(又は修飾)させた後(修飾セルロース調製工程を経た後)、この修飾セルロースを樹脂溶液と混練してもよいが、本発明の方法では、修飾剤の存在下で混練することにより、セルロースナノ繊維と修飾剤とを有効に結合させることができ、しかも、触媒(例えば、塩酸などの酸触媒など)を添加する必要もないため、簡便かつ容易に修飾セルロースナノ繊維を含むポリ乳酸組成物(又はマスターバッチ)を調製できる。
なお、混練工程において、各成分は、複数回に分けて混練系に添加してもよい。例えば、樹脂溶液とセルロース原料とを少なくとも含む組成物を混練し、さらにポリ乳酸及び/又は修飾剤などを加えてもよい。
混練後、慣用の乾燥方法(例えば、熱風乾燥、減圧乾燥など)により、ポリ乳酸組成物を得てもよい。
[複合体]
本発明の複合体(複合材料)は、前記ポリ乳酸組成物(マスターバッチ)と他の樹脂(第2の樹脂)とを含んでおり、混練(又は混合)により得ることができる。他の樹脂(第2の樹脂)としては、マスターバッチを構成するポリ乳酸組成物のポリ乳酸と親和性(又は相溶性)を有する樹脂(各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)であればよく、マスターバッチを構成するポリ乳酸と異なる樹脂であってもよいが、親和性の点から、通常、ポリ乳酸である。このポリ乳酸は、ポリ乳酸組成物を構成するポリ乳酸と異なるポリ乳酸であってもよいが、親和性の点から、同一のポリ乳酸が好ましい。
複合体において、セルロースナノ繊維の割合(含有量)は、樹脂(マスターバッチを構成するポリ乳酸と第2の樹脂)とセルロースナノ繊維との総量に対して、例えば0.1〜50重量%(例えば0.5〜40重量%)、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜20重量%(特に5〜15重量%)程度であってもよい。
また、前記複合体は、必要により、種々の添加剤、例えば、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、耐衝撃改良剤、流動性改良剤、補強材(充填剤など)、着色剤、滑剤、離型剤、色相改良剤、分散剤、抗菌剤、防腐剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の複合体(複合材料)は、マスターバッチと前記他の樹脂とを前記慣用の方法により、混練して得ることができる。さらに、前記複合体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などにより成形してもよい。複合体の成形品は、二次元的構造(フィルム、シート、板など)に限らず、三次元的構造(例えば、管、棒、チューブ、中空品など)などであってもよい。また、成形品は、ハウジング、ケーシングなどであってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、用いた原料及び測定機器の詳細、評価方法は以下の通りである。
(使用原料)
フラッフパルプ:GP Cellulose社製「Grade4800」、ヘミセルロース含有量10〜15重量%
セルロースナノファイバー:ダイセルファインケム(株)製「セリッシュKY110N」
ポリ乳酸(PLA):ポリ乳酸、Hisun社製「REVODE110」
BPFG:9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン
ジオキサン:1,4−ジオキサン
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DBU:ジアザビシクロウンデセン
(成形機器及び測定機器)
ニーダ:(株)栗本鐵工所製「KRCニーダS1」
二軸押出機:(株)テクノベル製
ラボプラストミル:(株)東洋精機製作所製
走査型電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子(株)製「JIM−6700F」
ラマン顕微鏡:(HORIBA JOBIN YVON社製、XploRA)
動的粘弾測定装置:ティー・エー・インスツルメント・ジャパン(株)製「Q−800」。
(セルロースに結合したフルオレン化合物の修飾率)
フルオレン化合物の修飾率(以下フルオレン修飾率)は、ラマン顕微鏡を使用してラマン分析を行い、芳香族環(1604cm−1)とセルロースの環内CH(1375cm−1)との吸収バンドの強度比(I1604/I1375)により算出した。なお、算出にあたっては、フルオレン化合物を所定量含有するジアセチルセルロース((株)ダイセル製)フィルムを、溶液キャスト法により作成し、これらの強度比(I1604/I1375)から作成した検量線を用いた。すべてのサンプルは3回測定し、その結果から算出される値の平均値をフルオレン修飾率とした。
(粘弾性)
実施例及び比較例で得られたシートを、動的粘弾測定装置の引張モード(周波数0.01Hz、昇温速度3℃/分)にて30℃、80℃及び110℃の貯蔵弾性率を測定した。
実施例1
3mm角程度のチップ状に裁断したフラッフパルプ32gと、PLAのジオキサン溶液(PLA分率20重量%)68gとをニーダーにより10分間ブレンドし、パルプ/ジオキサン/PLA=32/54.4/13.6(重量比)の組成物を調製した。さらに、この組成物にBPFG4.8g、PLA18.4gを加え、二軸押出機で混練することにより、白色のPLA/CNF(ポリ乳酸/セルロースナノファイバー)マスターバッチ1(混練組成物)を得た。この際のシリンダー温度は60〜180℃であり、180回転の条件にてオープンベントによりジオキサンを除去しながら処理し、パルプ分率が46.5重量%であるPLA/CNF(セルロースナノファイバー)マスターバッチAを得た。得られたマスターバッチA中のジオキサンは本操作により完全に除去されていた。得られたPLA/CNFマスターバッチA中のCNFの繊維の走査型電子顕微鏡観察結果、及びフルオレン修飾率を測定した結果をそれぞれ図1、及び表1に示す。図1の結果から明らかなように、マスターバッチ中のセルロース繊維はナノサイズの繊維が略均一に分散していた。
(シートの調製)
得られたPLA/CNFマスターバッチA及びPLAを用いて、セルロースナノファイバーの分率が10重量%となるように、二軸押出機にて、シリンダー温度60〜180℃で混練してコンパウンドを調製した。さらに、得られたペレットを熱プレスして0.2mmのシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシートにはセルロースナノファイバーの凝集は見られず、180°屈曲させても割れることなく、優れた靱性を有していた。
比較例1
(溶媒置換によるセルロースナノファイバー含有溶媒分散系の調製)
セルロースナノファイバーの水分散液(セルロース:水(重量比)=15/85)100g(固形分15g)をDMAc500gに分散して遠心分離した後、沈降した固形分をさらにDMAc500gに分散して再び遠心分離することにより、溶媒置換し、セルロースナノファイバーとDMAcとの混合物(セルロース含量約10重量%のセルロースナノファイバー含有溶媒分散系)を得た。
(セルロースナノファイバーとフルオレン化合物との反応)
1000mlの三口フラスコに、セルロースナノファイバー含有溶媒分散系150g(固形分15g)、DMSO350g、BPFG15g、DBU10gを加え、120℃で3時間攪拌した。得られた混合液を遠心分離機(日立工機(株)製、「CR22GIII」、回転速度:8000rpm(4530g))で25分間処理した後、固形分を回収し、この固形分をさらにDMAc1200mlに分散した後、再度遠心分離を行った。このような操作を3回繰り返すことにより、DMAc、過剰のBPFG及び他の溶解成分を除去し、BPFG修飾セルロースナノファイバーとDMAcとの混合物を得た。得られた混合物を乾燥することにより、粉体状の形態を有するBPFG修飾セルロースナノファイバーを得た。尚、得られたBPFG修飾セルロースナノファイバーの走査型電子顕微鏡観察結果、及びフルオレン修飾率を測定した結果をそれぞれ図2、及び表1に示す。
(マスターバッチの調製)
BPFG修飾セルロースナノファイバー/PLA[(重量比)=30/70]のマスターバッチBを下記手順により調製した。
(a)PLA7gをジオキサン93gに溶解して7重量%のPLA溶液を調製した。
(b)BPFG修飾セルロースナノファイバーのジオキサン分散液250g(BPFG修飾セルロースナノファイバー3g)を調製した。
(c)上記(a)で調製した樹脂溶液と(b)の分散液とをホモジナイザーで混合した。
(d)上記(c)で調製し混合液をメタノールに加え、析出した固体を遠心分離により回収した。
(e)上記(d)で調製した固形物を更に95℃の送風乾燥機で5時間乾燥した。
(シートの調製)
得られたマスターバッチBを用いてバッチ式混練機にて180℃でコンパウンドした以外は、実施例1と同様の方法でシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシートにはセルロースナノファイバーの凝集は見られなかったが、容易に割れる脆いシートであった。
比較例2
3mm角程度のチップ状に裁断したフラッフパルプ、PLA及びBPFGを、フラップパルプ/PLA/BPFG=10.2/90.0/1.5の重量比で、二軸押出機に供給し、シリンダー温度60〜180℃でコンパウンドを調製した。さらに、得られたペレットを熱プレスして0.2mmのシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシート中のパルプはナノファイバー化することが無かったほか、明らかな凝集が見られ、簡単に割れる脆いシートであった。
比較例3
PLAを熱プレスして0.2mmのシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシートは、簡単に割れる脆いシートであった。
表1の結果から明らかなように、実施例のシートは、30℃での貯蔵弾性率が低いにも拘わらず、110℃での貯蔵弾性率が比較例2と同程度であった。
本発明のポリ乳酸組成物(又はマスターバッチ)は、幅広い用途、樹脂(ポリ乳酸)の補強材、添加剤、フィルムやシートの材料などとして利用できる。また、複合体(複合材料)は、高い植物化度であるにも拘わらず、靱性、強度、弾性率などのバランスの優れた特性を備えるため、例えば、種々の樹脂成形品[例えば、電気・電子部品の梱包材料、建築資材(壁材など)、土木資材、農業資材、包装資材(容器、緩衝材など)、生活資材(日用品など)など]、液晶ディスプレイ基板や太陽電池基板などの種々の材料;光学シート、光学フィルム(例えば、偏光フィルム(及び偏光板保護フィルム)、位相差フィルム(例えば、逆波長分散特性を有する位相差フィルム)、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)など)などの他;高い強度を有するため、自動車部品(ボディ、フード、ドア、ドライブシャフトなど)、スポーツ用品(ゴルフシャフト、テニスラケットフレームなど)、レジャー用品(釣り竿など)などにも利用できる。また、各種分野の成形部材(例えば、ケーシング、ハウジングなどの成形体)に利用できる。

Claims (9)

  1. ポリ乳酸、セルロースナノ繊維、ヘミセルロースからなる可塑剤、及び9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物を含むポリ乳酸組成物であって、前記セルロースナノ繊維の割合が、前記ポリ乳酸100重量部に対して50〜150重量部であり、前記可塑剤の割合が、前記セルロースナノ繊維100重量部に対して〜50重量部であるヘミセルロースを含むポリ乳酸組成物。
  2. 9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物が、セルロースナノ繊維と結合して修飾セルロースナノ繊維を形成している請求項1記載のポリ乳酸組成物。
  3. 9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物の割合が、セルロースナノ繊維100重量部に対して0.1〜50重量部である請求項1又は2記載のポリ乳酸組成物。
  4. 繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでおらず、セルロースナノ繊維の平均繊維径が5〜500nm、平均繊維長が10μm以上である請求項1〜のいずれかに記載のポリ乳酸組成物。
  5. 樹脂補強剤又はマスターバッチである請求項1〜のいずれかに記載のポリ乳酸組成物。
  6. ポリ乳酸を溶解可能な溶媒をさらに含み、かつ樹脂補強剤又はマスターバッチの前駆体である請求項1〜のいずれかに記載のポリ乳酸組成物。
  7. 9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物の存在下、溶媒にポリ乳酸が溶解した樹脂溶液と、セルロースと、ヘミセルロースとを少なくとも含む繊維状組成物を、溶媒を除去しつつ混練する請求項1〜のいずれかに記載のポリ乳酸組成物の製造方法。
  8. 加熱してポリ乳酸を溶融しつつ繊維状組成物を混練する請求項記載の方法。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のポリ乳酸組成物とポリ乳酸とを含む複合体。
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