JP2017095628A - ポリ乳酸組成物及びその製造方法並びに複合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリ乳酸溶液と、セルロースと、可塑剤としてのヘミセルロースとを少なくとも含む組成物を、溶媒を除去しつつ混練(又は溶融混練)し、セルロースを微細化(又はナノ化)するとともに、微細化したセルロースナノ繊維を高含有量でポリ乳酸に分散したポリ乳酸組成物を調製する。前記セルロースナノ繊維の割合が、ポリ乳酸100重量部に対して10〜1000重量部程度である。前記ポリ乳酸組成物は、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物をさらに含んでいてもよい。
【選択図】なし
Description
ポリ乳酸(ポリ乳酸系樹脂)は、乳酸成分を重合成分とするポリマーである。乳酸成分としては、例えば、乳酸(D−乳酸、L−乳酸、DL−乳酸)、乳酸の反応性誘導体[例えば、ラクチド(乳酸二量体)、メチルエステルなどのC1−3アルキルエステルなど]などが含まれる。乳酸成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
セルロースナノ繊維(又はセルロースナノファイバー)は、セルロース(セルロース原料)をナノオーダーまで微細化(又はミクロフィブリル化)したセルロース繊維である。前記セルロースとしては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維由来のパルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ないことからパルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
可塑剤(相溶化剤又は分散助剤)はヘミセルロースを含む。すなわち、本発明のポリ乳酸組成物は、従来はセルロースの不純物として認識されていたヘミセルロースを可塑剤として含むことにより、ポリ乳酸中でのセルロースナノ繊維の均一分散性を向上しつつ、柔軟性を付与している。
本発明のポリ乳酸組成物は、セルロースナノ繊維の分散性を向上させるために、9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物(以下「フルオレン化合物」と称する場合がある)をさらに含んでいてもよい。9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有し、カルボキシル基又はその反応性誘導体、エポキシ基及びヒドロキシル基から選択された少なくとも一種の反応性基を有している。前記カルボキシル基の反応性誘導体としては、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、酸ハライド基(酸クロライド基、酸ブロマイド基などのハロホルミル基)などが例示できる。エポキシ基は、オキシラン環を含む限り、グリシジル基であってもよい。
本発明のポリ乳酸組成物は、前記ポリ乳酸の樹脂溶液と、セルロース(セルロースナノファイバー又は繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維、例えばパルプ)と、ヘミセルロースとを(又はポリ乳酸と、溶媒と、セルロースと、ヘミセルロースとを)含む繊維状組成物を混練下、溶媒を除去することにより得ることができる。この方法では、ヘミセルロースの作用により、セルロースの繊維径がマイクロサイズの場合、樹脂溶液がセルロース繊維の表面(界面)及び/又はミクロフィブリルを構成する各ナノ繊維間に十分に浸透した状態で、加熱により溶媒を除去し、ポリ乳酸を高粘度状態で混練できるため、せん断力を有効に作用できる。そのためか、混練に伴って効率よくセルロース繊維を解繊しつつ、ナノオーダーレベルまでミクロフィブリル化でき、セルロースナノ繊維を樹脂に均一分散できる。また、セルロースナノ繊維の濃度が高くても、セルロースナノ繊維が凝集することなく(又はセルロースナノ繊維の再凝集を抑制し)、繊維径が小さなセルロースナノ繊維を樹脂に短時間で均一分散できる。しかも、セルロースナノ繊維の分散液の調製、エマルジョンの調製などが不要であり、混練という一段階の操作で前記ポリ乳酸組成物を調製できる。
本発明の複合体(複合材料)は、前記ポリ乳酸組成物(マスターバッチ)と他の樹脂(第2の樹脂)とを含んでおり、混練(又は混合)により得ることができる。他の樹脂(第2の樹脂)としては、マスターバッチを構成するポリ乳酸組成物のポリ乳酸と親和性(又は相溶性)を有する樹脂(各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)であればよく、マスターバッチを構成するポリ乳酸と異なる樹脂であってもよいが、親和性の点から、通常、ポリ乳酸である。このポリ乳酸は、ポリ乳酸組成物を構成するポリ乳酸と異なるポリ乳酸であってもよいが、親和性の点から、同一のポリ乳酸が好ましい。
フラッフパルプ:GP Cellulose社製「Grade4800」、ヘミセルロース含有量10〜15重量%
セルロースナノファイバー:ダイセルファインケム(株)製「セリッシュKY110N」
ポリ乳酸(PLA):ポリ乳酸、Hisun社製「REVODE110」
BPFG:9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン
ジオキサン:1,4−ジオキサン
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DBU:ジアザビシクロウンデセン
ニーダ:(株)栗本鐵工所製「KRCニーダS1」
二軸押出機:(株)テクノベル製
ラボプラストミル:(株)東洋精機製作所製
走査型電子顕微鏡(FE−SEM):日本電子(株)製「JIM−6700F」
ラマン顕微鏡:(HORIBA JOBIN YVON社製、XploRA)
動的粘弾測定装置:ティー・エー・インスツルメント・ジャパン(株)製「Q−800」。
フルオレン化合物の修飾率(以下フルオレン修飾率)は、ラマン顕微鏡を使用してラマン分析を行い、芳香族環(1604cm−1)とセルロースの環内CH(1375cm−1)との吸収バンドの強度比(I1604/I1375)により算出した。なお、算出にあたっては、フルオレン化合物を所定量含有するジアセチルセルロース((株)ダイセル製)フィルムを、溶液キャスト法により作成し、これらの強度比(I1604/I1375)から作成した検量線を用いた。すべてのサンプルは3回測定し、その結果から算出される値の平均値をフルオレン修飾率とした。
実施例及び比較例で得られたシートを、動的粘弾測定装置の引張モード(周波数0.01Hz、昇温速度3℃/分)にて30℃、80℃及び110℃の貯蔵弾性率を測定した。
3mm角程度のチップ状に裁断したフラッフパルプ32gと、PLAのジオキサン溶液(PLA分率20重量%)68gとをニーダーにより10分間ブレンドし、パルプ/ジオキサン/PLA=32/54.4/13.6(重量比)の組成物を調製した。さらに、この組成物にBPFG4.8g、PLA18.4gを加え、二軸押出機で混練することにより、白色のPLA/CNF(ポリ乳酸/セルロースナノファイバー)マスターバッチ1(混練組成物)を得た。この際のシリンダー温度は60〜180℃であり、180回転の条件にてオープンベントによりジオキサンを除去しながら処理し、パルプ分率が46.5重量%であるPLA/CNF(セルロースナノファイバー)マスターバッチAを得た。得られたマスターバッチA中のジオキサンは本操作により完全に除去されていた。得られたPLA/CNFマスターバッチA中のCNFの繊維の走査型電子顕微鏡観察結果、及びフルオレン修飾率を測定した結果をそれぞれ図1、及び表1に示す。図1の結果から明らかなように、マスターバッチ中のセルロース繊維はナノサイズの繊維が略均一に分散していた。
得られたPLA/CNFマスターバッチA及びPLAを用いて、セルロースナノファイバーの分率が10重量%となるように、二軸押出機にて、シリンダー温度60〜180℃で混練してコンパウンドを調製した。さらに、得られたペレットを熱プレスして0.2mmのシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシートにはセルロースナノファイバーの凝集は見られず、180°屈曲させても割れることなく、優れた靱性を有していた。
(溶媒置換によるセルロースナノファイバー含有溶媒分散系の調製)
セルロースナノファイバーの水分散液(セルロース:水(重量比)=15/85)100g(固形分15g)をDMAc500gに分散して遠心分離した後、沈降した固形分をさらにDMAc500gに分散して再び遠心分離することにより、溶媒置換し、セルロースナノファイバーとDMAcとの混合物(セルロース含量約10重量%のセルロースナノファイバー含有溶媒分散系)を得た。
1000mlの三口フラスコに、セルロースナノファイバー含有溶媒分散系150g(固形分15g)、DMSO350g、BPFG15g、DBU10gを加え、120℃で3時間攪拌した。得られた混合液を遠心分離機(日立工機(株)製、「CR22GIII」、回転速度:8000rpm(4530g))で25分間処理した後、固形分を回収し、この固形分をさらにDMAc1200mlに分散した後、再度遠心分離を行った。このような操作を3回繰り返すことにより、DMAc、過剰のBPFG及び他の溶解成分を除去し、BPFG修飾セルロースナノファイバーとDMAcとの混合物を得た。得られた混合物を乾燥することにより、粉体状の形態を有するBPFG修飾セルロースナノファイバーを得た。尚、得られたBPFG修飾セルロースナノファイバーの走査型電子顕微鏡観察結果、及びフルオレン修飾率を測定した結果をそれぞれ図2、及び表1に示す。
BPFG修飾セルロースナノファイバー/PLA[(重量比)=30/70]のマスターバッチBを下記手順により調製した。
(a)PLA7gをジオキサン93gに溶解して7重量%のPLA溶液を調製した。
(b)BPFG修飾セルロースナノファイバーのジオキサン分散液250g(BPFG修飾セルロースナノファイバー3g)を調製した。
(c)上記(a)で調製した樹脂溶液と(b)の分散液とをホモジナイザーで混合した。
(d)上記(c)で調製し混合液をメタノールに加え、析出した固体を遠心分離により回収した。
(e)上記(d)で調製した固形物を更に95℃の送風乾燥機で5時間乾燥した。
得られたマスターバッチBを用いてバッチ式混練機にて180℃でコンパウンドした以外は、実施例1と同様の方法でシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシートにはセルロースナノファイバーの凝集は見られなかったが、容易に割れる脆いシートであった。
3mm角程度のチップ状に裁断したフラッフパルプ、PLA及びBPFGを、フラップパルプ/PLA/BPFG=10.2/90.0/1.5の重量比で、二軸押出機に供給し、シリンダー温度60〜180℃でコンパウンドを調製した。さらに、得られたペレットを熱プレスして0.2mmのシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシート中のパルプはナノファイバー化することが無かったほか、明らかな凝集が見られ、簡単に割れる脆いシートであった。
PLAを熱プレスして0.2mmのシートを調製し、粘弾性を評価した結果を表1に示す。なお、得られたシートは、簡単に割れる脆いシートであった。
Claims (13)
- ポリ乳酸、セルロースナノ繊維及び可塑剤を含むポリ乳酸組成物であって、前記可塑剤がヘミセルロースを含むポリ乳酸組成物。
- セルロースナノ繊維の割合が、ポリ乳酸100重量部に対して10〜1000重量部である請求項1記載のポリ乳酸組成物。
- 9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物をさらに含む請求項1又は2記載のポリ乳酸組成物。
- 9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物が、セルロースナノ繊維と結合して修飾セルロースナノ繊維を形成している請求項3記載のポリ乳酸組成物。
- 9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物の割合が、セルロースナノ繊維100重量部に対して0.1〜50重量部である請求項3又は4記載のポリ乳酸組成物。
- 可塑剤の割合が、セルロースナノ繊維100重量部に対して1〜50重量部である請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸組成物。
- 繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでおらず、セルロースナノ繊維の平均繊維径が5〜500nm、平均繊維長が10μm以上であり、セルロースナノ繊維の割合が、ポリ乳酸100重量部に対して50〜150重量部である請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸組成物。
- 樹脂補強剤又はマスターバッチである請求項1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸組成物。
- ポリ乳酸を溶解可能な溶媒をさらに含み、かつ樹脂補強剤又はマスターバッチの前駆体である請求項1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸組成物。
- 溶媒にポリ乳酸が溶解した樹脂溶液と、セルロースと、ヘミセルロースとを少なくとも含む繊維状組成物を、溶媒を除去しつつ混練する請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸組成物の製造方法。
- 加熱してポリ乳酸を溶融しつつ繊維状組成物を混練する請求項10記載の方法。
- 9,9−ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物の存在下、樹脂溶液とセルロースとヘミセルロースとを含む繊維状組成物を混練する請求項10又は11記載の方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸組成物とポリ乳酸とを含む複合体。
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