JP6971378B2 - 水産養殖動物におけるアエロモナス出血性疾患の予防及び制御のための弱毒生ワクチン - Google Patents

水産養殖動物におけるアエロモナス出血性疾患の予防及び制御のための弱毒生ワクチン Download PDF

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Description

本発明は、水産養殖動物におけるアエロモナス出血性疾患の予防及び制御のための弱毒生ワクチンに関する。
中国は世界最大の水産養殖生産国であり、世界の水産養殖生産量の60%以上を占めている。生産実践における水産養殖の強化と商業化の増加に伴い、病気の大発生は魚類養殖業の大きな問題となっている。特に、アエロモナスによって引き起こされる魚類出血性疾患は、水産養殖業の発展において非常に際立った問題となっている。魚類の病気の大発生は、世界の水産養殖業で年間数億ドルの経済を引き起こすと推定されている。例えば、アエロモナス属(Aeromonas spp.)による運動性アエロモナス敗血症(MAS)の大発生は、通常、世界の水産養殖における魚類の高い死亡率につながり、深刻な経済的損失を引き起こす。過去数十年間、抗生物質は、水産養殖における魚類の病気の管理と制御、及び魚類の成長の促進のための伝統的な戦略として機能してきた。しかしながら、病原菌の耐薬性の問題及び動物製品における抗生物質の残留の問題は世界中の人々の関心事になっており、水産養殖業における抗生物質の禁止は不可欠となっている。現在、抗生物質の使用に加えて、不活化ワクチンは、アエロモナスによる出血性疾患の主な予防と治療方法であるが、不活化ワクチンによる抗原の破壊は、不安定な免疫応答と長期的な免疫原性の欠如につながる。従って、病原菌ワクチンの開発は、アエロモナス出血性疾患の予防と治療のための重要な抗生物質なしの予防と治療方法の1つとなる。
現在、細菌性敗血症に対するワクチン予防と治療は、早期発症機序が不明であるため、主に腸管/鰓バリアの破壊後に侵入する感染細菌であるアエロモナス・ハイドロフィラのワクチンの研究開発に注目している。一方、宿主の物理的バリアを破壊する主要な細菌であるアエロモナス・ベロニのワクチンの開発に関する報告は非常に少なく、主に従来の強毒性株の不活化ワクチンを含む。さらに、アエロモナス・ベロニゴースト、及び特異的なアプタマーペプチドを導入したアエロモナス・ベロニワクチンが報告されているが、それらのほとんどは注射によって免疫化され、次の欠点がある。1)不活性化プロセスにより、保護抗原が部分的又は完全に失われ、不安定又は低レベルの免疫応答のみを引き起こし、さらに、正しい免疫反応を刺激することさえできず、副作用を引き起こす可能性がある。2)アエロモナス・ベロニゴーストには、生産量が低く、溶菌遺伝子の毒性があるという欠点がある。3)特異的なアプタマーペプチドのアエロモナス・ベロニワクチンは、それ自体の病原性遺伝子発現が病因となるという欠点を回避することはできない。4)魚類の注射免疫には、作業量が多いという欠点がある。
本発明は、水産養殖動物におけるアエロモナス出血性疾患の予防及び制御のための弱毒生ワクチンを提供する。
本発明の発明者は、中国水産科学研究院珠江水産研究所と協力して、その研究所による2009年から2014年の期間における中国南部のコイ科養殖魚類のアエロモナス病の究明分析を参照し、アエロモナス・ベロニ A.veronii感染の割合が最も高く(50%)、アエロモナス・ハイドロフィラ感染は20.8%に過ぎず、さらに、両方の混合感染が感染全体の16.7%を占めていることを発見した。研究者らは、浸漬チャレンジの方式で無菌ゼブラフィッシュシステムにおいてこれら2つの種の複数の分離株を測定して、アエロモナス・ベロニの毒性が一般的にアエロモナス・ハイドロフィラの毒性よりも高いことを発見した。さらに、トランスポゾンノックアウトスクリーニングにより、アエロモナス・ベロニII型分泌システムによって分泌されるアエロリシン(Aerolysin)が主要な病原性因子であることが確認された。アエロモナス・ハイドロフィラは、アエロモナス・ベロニとの混合感染及びストレスでバリア損傷を引き起こした場合にのみ感染を確立できる。これは、養殖魚類のアエロモナス敗血症の病気の予防と制御に新しいアイデアを提供し、その病気に対する既存の対策の効果が不明確な状況を変えることが期待される。
本発明は、アエロモナス・ベロニのアエロリシン遺伝子をノックアウトすることによって得られた組換え菌をまず提供する。
前記アエロリシン遺伝子は、アエロリシンタンパク質をコードする遺伝子である。
前記アエロリシンタンパク質は、以下の(1)又は(2)である。
(1)は、配列表の配列6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。
(2)は、配列表の配列6で示されるアミノ酸配列が、1つ又は幾つかのアミノ酸残基の置換及び/又は欠損及び/又は付加を受けて、同じ機能を有する、配列6に由来するタンパク質である。
前記アエロリシン遺伝子は、以下の(a1)又は(a2)又は(a3)又は(a4)である。
(a1)は、配列表の配列5で示されるDNA分子である。
(a2)は、コード領域が配列表の配列5で示されるDNA分子である。
(a3)は、(a1)又は(a2)により限定されるDNA配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズし、同じ機能を有するタンパク質をコードするDNA分子である。
(a4)は、(a1)又は(a2)又は(a3)により限定されるDNA配列と90%以上の相同性を有し、同じ機能を有するタンパク質をコードするDNA分子である。
前記ノックアウトは、オープンリーディングフレーム全体をノックアウトするか、又は一部の遺伝子セグメントをノックアウトすることである。
具体的には、前記ノックアウトは、アエロモナス・ベロニゲノムDNAの配列表の配列5を5’末端から第91〜1381番目でノックアウトすることであり得る。
前記ノックアウトは、相同組換えによって実現される。
前記相同組換えは、特異的なDNA断片をアエロモナス・ベロニに導入することによって実現される。前記特異的なDNA断片は、アエロリシン遺伝子の上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアームを含み、前記上流ホモロジーアームは、配列表の配列3の5’末端から第3092〜4276番目のヌクレオチドで示され、前記下流ホモロジーアームは、配列表の配列3の5’末端から第4277〜5408番目のヌクレオチドで示される。前記特異的なDNA断片は、配列表の配列3の5’末端から第3092〜5408番目のヌクレオチドで示される。
前記相同組換えは、前記特異的なDNA断片を含む組換えベクターをアエロモナス・ベロニに導入することによって実現される。前記組換えベクターは、線状化プラスミドベクター、断片A及び断片Bを連結することによって得られる。前記断片Aは、配列表の配列1で示される。前記断片Bは、配列表の配列2で示される。前記連結は、シームレスクローニングによって実現される。前記プラスミドベクターはプラスミドpRE112である。具体的には、前記組換えベクターは、配列表の配列3で示される。
本発明は組換え菌を更に保護する。その組換え菌は、特異的なDNA断片をアエロモナス・ベロニに導入し相同組換えを行った後に得られた前記特異的なDNA断片を有する組換え菌である。前記特異的なDNA断片は、アエロリシン遺伝子の上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアームを含み、前記上流ホモロジーアームは、配列表の配列3の5’末端から第3092〜4276番目のヌクレオチドで示され、前記下流ホモロジーアームは、配列表の配列3の5’末端から第4277〜5408番目のヌクレオチドで示される。
前記相同組換えは、前記特異的なDNA断片を含む組換えベクターをアエロモナス・ベロニに導入することによって実現される。前記組換えベクターは、線状化プラスミドベクター、断片A及び断片Bを連結することによって得られる。前記断片Aは、配列表の配列1で示される。前記断片Bは、配列表の配列2で示される。前記連結は、シームレスクローニングによって実現される。前記プラスミドベクターはプラスミドpRE112である。具体的には、前記組換えベクターは、配列表の配列3で示される。
上記いずれかのアエロモナス・ベロニは、具体的にはアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091であってもよい。
上記いずれかの組換え菌は、具体的にはアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerであってもよい。
アエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerは、2017年10月09日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センター(略称CGMCC;住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所;郵便番号100101)に、寄託番号CGMCC No.14776で寄託された。
本発明は、ワクチンを調製するための上記いずれかの組換え菌の用途をさらに保護する。前記ワクチンは、以下の(b1)〜(b4)のいずれかである。
(b1)水産動物アエロモナス・ベロニワクチン、
(b2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチン、
(b3)水産動物アエロモナスワクチン、
(b4)水産動物出血性疾患ワクチン
本発明は、ワクチンを調製する方法をさらに保護する。この方法は、上記いずれかの組換え菌をワクチンの活性成分として包装するステップを含む。前記ワクチンは、以下の(b1)〜(b4)のいずれかである。
(b1)水産動物アエロモナス・ベロニワクチン、
(b2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチン、
(b3)水産動物アエロモナスワクチン、
(b4)水産動物出血性疾患ワクチン
本発明は、製品を調製するための上記いずれかの組換え菌の用途をさらに保護する。前記製品の用途は以下の(c1)〜(c5)の少なくとも1つである。
(c1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
(c2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
(c3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
(c4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
(c5)水産動物の免疫力の改善
本発明は、活性成分が上記いずれかの組換え菌である水産動物アエロモナス・ベロニワクチンをさらに保護する。本発明は、活性成分が上記いずれかの組換え菌である水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチンをさらに保護する。
本発明は、活性成分が上記いずれかの組換え菌である水産動物アエロモナスワクチンをさらに保護する。
本発明は、活性成分が上記いずれかの組換え菌である水産動物出血性疾患ワクチンをさらに保護する。
本発明は、活性成分が上記いずれかの組換え菌である製品をさらに保護する。前記製品の用途は以下の(d1)〜(d5)の少なくとも1つである。
(d1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
(d2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
(d3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
(d4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
(d5)水産動物の免疫力の改善
本発明はまた、上記組換え菌のいずれか1つの用途を保護する。用途は、以下の(f1)〜(f5)のうちの少なくとも1つである。
(f1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
(f2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
(f3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
(f4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
(f5)水産動物の免疫力の改善
上記ワクチンのいずれかの使用方法は、具体的には、経口又は浸漬であってもよい。
上記製品のいずれかは、具体的には、水産動物飼料添加物であってもよい。
上記アエロモナスのいずれかは、具体的には、アエロモナス・ベロニ又はアエロモナス・ハイドロフィラであってもよい。
上記アエロモナス・ベロニのいずれかは、具体的には、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091であってもよい。
上記アエロモナス・ハイドロフィラのいずれかは、具体的には、アエロモナス・ハイドロフィラ A.hydrophila NJ−1であってもよい。
上記水産動物のいずれかは、具体的には、ゼブラフィッシュ、草魚、フナ、レンギョ、ハクレン、ケツギョ、鯉、アオウオ、ティラピア、ウナギ、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、チョウザメ、
Figure 0006971378
、ヒラウオ、アメリカナマズ、金魚、タウナギ、ヒラメなどの魚類、又は蛙、サンショウウオ、蝦、蟹、スッポン、亀などの水生動物であってもよい。
実施例1のノックアウトプラスミドの構築プロセスの模式図である。 実施例1のノックアウト菌の同定結果である。 実施例2の蛍光局在化の結果である。 実施例3の安全性試験の結果である。 実施例4の免疫保護效果の統計結果である。
以下の実施例は、本発明のさらなる理解を促進するためのものであり、本発明を限定しない。以下の実施例における実験方法は、特に説明しない限り従来の方法である。以下の実施例で使用される試験材料は、特に説明しない限り、従来の生化学試薬店から購入したものである。以下の実施例の定量試験では、いずれも3回の反復実験を設定し、結果として平均値を求めた。
アエロモナス・ベロニアエロリシン遺伝子のゲノムDNA参照配列は、配列表の配列5で示される。配列5で示されるDNAは、配列6で示されるタンパク質をコードする。
プラスミドpRE112:BioVectorプラスミドベクター菌種細胞遺伝子寄託センター、カタログ番号:3573410
アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091:参考文献:張徳鋒、劉礼輝、李寧求など.我国南方地区魚源アエロモナスの異なる種類の疫学的特徴[J].水産科学,2015,34(11):673−682.;公衆は、中国農業科学院飼料研究所からそれを入手することができる。
アエロモナス・ハイドロフィラ A.hydrophila NJ−1:参考文献:Li J,Ni X D,Liu Y J,et al. Detection of three virulence genes alt, ahp and aerA in Aeromonas hydrophila and their relationship with actual virulence to zebrafish[J]. Journal of Applied Microbiology,2011,110(3):823−30.;公衆は、中国農業科学院飼料研究所からそれを入手することができる。
E.coli MC1061:BioVector NTCC典型培養物寄託センター、番号:MC1061
E.coli S17−1(λ pair):BioVector NTCC典型培養物寄託センター、番号:s17−1
MC1061コンピテント細胞:E.coli MC1061シングルコロニーを50mlのLB液体培地に接種し、37℃、200rpmで一晩培養し、500mlのLB液体培地を含む1Lのコニカルフラスコに5%の接種量で接種し、37℃、250rpmで培養した。OD600nm値が0.35〜0.4となる場合、コニカルフラスコを15〜30分間氷浴した(期間中、コニカルフラスコを揺動して菌液を均一に冷却した)。その後、菌液を、氷浴で予冷した遠心管に移し、1000g、4℃で15分間遠心分離し、上清を廃棄し、500mlの氷浴で予冷した脱イオン水に菌体を再懸濁し、1000g、4℃で20分間遠心分離し、上清を除去し、菌体を収集し、250mlの氷浴で予冷した10%(前述の百分率)グリセロール水溶液に再懸濁し、1000g、4℃で20分間遠心分離し、上清を除去し、1mlの氷浴で予冷したGYT液体培地に菌体を再懸濁した。菌液を、氷浴で予冷した1.5mlの滅菌EP管に、管あたり50μlで分注し、液体窒素で急速冷却した後、−80℃の冷蔵庫に保存した。
S17(λ)コンピテント細胞:E.coli S17−1(λ pair)シングルコロニーを50mlのLB液体培地に接種し、37℃、200rpmで一晩培養し、500mlのLB液体培地を含む1Lのコニカルフラスコに5%の接種量で接種し、37℃、250rpmで培養した。OD600nm値が0.35〜0.4となる場合、コニカルフラスコを15〜30分間氷浴した(期間中、コニカルフラスコを揺動して菌液を均一に冷却した)。その後、菌液を、氷浴で予冷した遠心管に移し、1000g、4℃で15分間遠心分離し、上清を廃棄し、500mlの氷浴で予冷した脱イオン水に菌体を再懸濁し、1000g、4℃で20分間遠心分離し、上清を除去し、菌体を収集し、250mlの氷浴で予冷した10%(前述の百分率)グリセロール水溶液に再懸濁し、1000g、4℃で20分間遠心分離し、上清を除去し、1mlの氷浴で予冷したGYT液体培地に菌体を再懸濁した。菌液を、氷浴で予冷した1.5mlの滅菌EP管に、管あたり50μlで分注し、液体窒素で急速冷却した後、−80℃の冷蔵庫に保存した。
ゼブラフィッシュ:北京大学ゼブラフィッシュ水体実験室が提供したTu系統ゼブラフィッシュ
<実施例1>アエロモナス・ベロニノックアウト菌の構築
一、ノックアウトプラスミドの構築
ノックアウトプラスミドの構築プロセスの模式図を図1に示す。具体的なステップは次のとおりである。
1、PCR法(反応手順:98℃、5分、32×[98℃、20秒;58℃、20秒;72℃、1分]、72℃、5分)によってプラスミドpRE112を線状化して、線状化プラスミド断片を得た。
2、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091のゲノムDNAをテンプレートとして、プライマーAer−up−F及びプライマーAer−up−Rからなるプライマーペアを採用してPCR増幅を行い、PCR増幅産物(配列表の配列1、上流ホモロジーアームを有する)を得た。
Aer−up−F:5’−TGAATTCCCGGGAGAATGATCTCGGCGGTACCTGG−3’;
Aer−up−R:5’−GATCCACACCGGTAAATCAGGGTAGACAGGTTCAG−3’。
3、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091のゲノムDNAをテンプレートとして、プライマーAer−down−F及びプライマーAer−down−Rからなるプライマーペアを採用してPCR増幅を行い、PCR増幅産物(配列表の配列2、下流ホモロジーアームを有する)を得た。
Aer−down−F:5’−CCTGTCTACCCTGATTTACCGGTGTGGATCTGGAC−3’;
Aer−down−R:5’−GCTTCTTCTAGAGGTTGAGTGAAGGTGGAGCTGAG−3’。
4、NEBuilderR HiFi DNA Assembly Master Mix(NEB、カタログ番号:E2621L)を用いて、ステップ1で得られた線状化プラスミド、ステップ2で得られたPCR増幅産物及びステップ3で得られたPCR増幅産物を相同組換えして連結し(方法はキットの説明書を参照)、ノックアウトプラスミド(配列表の配列3で示される環状プラスミド、配列決定によって検証された)を得た。
二、ノックアウト菌の構築及び同定
1、ステップ1で得られたノックアウトプラスミドで、MC1061コンピテント細胞を形質転換し、25uF、2.5kV、200ohmで電気形質転換を行った。電気形質転換の直後に、1mlのLB液体培地を加え、37℃、200r/minで1〜1.5時間シェーカーで培養した後、遠心分離し、900μlを除去し、100μlを残し再懸濁し、その後すべてを30ug/mlのクロロマイセチン(Cm)を含むLB固体プレート上に塗布し、37℃で一晩培養した。一晩後に増殖したシングルコロニーについて、コロニーPCR検出により陽性コロニーをスクリーニングした(プライマーAer−up−F及びプライマーAer−up−Rを用いてPCR検出を行い、サイズが2348bpのバンドを得た)。
2、ステップ1で陽性と同定したシングルコロニーを、30ug/mlのクロロマイセチン(Cm)を含む30mlのLB液体培地に接種し、37℃、200r/minで12時間シェーカーで培養し、シングルコロニーを選び取りプラスミドを抽出し、Hind III制限酵素により酵素切断で同定し、サイズが8029bpのバンドの陽性プラスミドを得た。
3、ステップ2で正しいと同定した陽性プラスミドで、S17(λ)コンピテント細胞を形質転換し、25uF、2.5kV、200ohmで電気形質転換を行った。電気形質転換の直後に、1mlのLB液体培地を加え、37℃、200r/minで1〜1.5時間シェーカーで培養した後、遠心分離し、900μlを除去し、100μlを残し再懸濁し、その後すべてを30ug/mlのクロロマイセチン(Cm)を含むLB固体プレート上に塗布し、37℃で一晩培養した。一晩後に増殖したシングルコロニーについて、コロニーPCR検出により陽性コロニーをスクリーニングした(プライマーAer−up−F及びプライマーAer−up−Rを用いてPCR検出を行い、サイズが2348bpのバンドを得た)。
4、ステップ3で陽性と同定したシングルコロニーを、接種ループにより30ug/mlのクロロマイセチン(Cm)を含むLB固体プレート上に再画線し、37℃で24時間培養した。
5、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091を、30ug/mlのクロロマイセチン(Cm)を含むLB固体プレート上に画線して接種し、37℃で24時間培養した。
6、ステップ4で得られたコロニー及びステップ5で得られたコロニーをそれぞれ掻き取って結合し(ステップ4で得られたコロニーを掻き取って、ステップ5のプレート上に画線し)、37℃で8時間結合した。
7、ステップ6の完了後に、コロニーを掻き取って、LB液体培地で希釈してから、30μg/mlのクロロマイセチン(Cm)+100μg/mlのアンピシリン(Amp)を含むLB固体プレート上に塗布し、37℃で24時間培養した。
8、ステップ7の完了後に、シングルコロニーを選び取り、30μg/mlのクロロマイセチン(Cm)+100μg/mlのアンピシリン(Amp)を含むLB固体プレート上に接種し、37℃で24時間培養した。
9、ステップ8の完了後に、シングルコロニーを選び取り、抗生物質を含まないLB固体プレート上に接種し、37℃で24時間培養した。
10、ステップ9の完了後に、適量のコロニーを接種ループで掻き取って、15%(質量パーセント)のスクロースを含むLB固体プレート上に画線し、15〜25℃で3日間低温培養し、プラスミド喪失株をスクリーニングした。
11、ステップ10の完了後に、50〜80個のモノクローナルを選び取って、30μg/mlのクロロマイセチン(Cm)+100μg/mlのアンピシリン(Amp)を含むLB固体プレート上にそれぞれ画線し、37℃で24時間培養した。
12、ステップ11の完了後に、シングルコロニーを選び取り、コロニーPCR検出によりノックアウト変異株をスクリーニングした。
アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091(WT)を対照として採用した。プライマーAer−up−FとプライマーAer−down−Rからなるプライマーペア、及びプライマーAer−confirm−FとプライマーAer−confirm−Rからなるプライマーペアをそれぞれ採用して同定を行った。プライマー配列と予想される産物断片の長さを表1に示す。
Figure 0006971378
結果を図2に示す。プライマーAer−confirm−F及びプライマーAer−confirm−Rは、Aer遺伝子に関して設計されたプライマーである。野生型菌(WT)は目的断片1722bpまで増幅し、ノックアウト菌(Hm091△aer)は目的断片に増幅しなかった。プライマーAer−up−F及びプライマーAer−down−Rは、Aer遺伝子の上流配列及び下流配列に関して設計されたプライマーである。野生型菌(WT)の増幅断片の配列は約4000bpであり、ノックアウト菌(Hm091△aer)の増幅断片の配列は約2300bpであり、ちょうど野生型菌よりもAer遺伝子断片のサイズ(約1700bp)少ない。
野生型菌及びノックアウト菌を配列決定した。その結果、ノックアウト菌は、配列表の配列4で示されるDNA断片に野生型菌ゲノムアエロリシン遺伝子の対応する断片を置換して得られたものであることが明らかになった。
上記方法で得られたすべてのノックアウト菌の一株はアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerと命名され、アエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerはアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerと略称された。そのうちの一株が寄託されている。
三、アエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerの寄託
アエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerは、2017年10月09日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センター(略称CGMCC;住所:北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所;郵便番号100101)に、寄託番号CGMCC No.14776で寄託された。
<実施例2>ゼブラフィッシュにおけるアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerの局在
1、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091を30mlのLB液体培地に接種し、37℃、200r/minで18時間シェーカーで培養した。2mlの菌液を取り、5000r/mimで10分間遠心分離し、上清を除去し、PBSで2回洗浄し、遠心分離で上清を除去し、1mlの0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液を加えて菌体を再懸濁し、A.veronii Hm091炭酸水素ナトリウム緩衝液を得た。
2、アエロモナス・ハイドロフィラ A.hydrophila NJ−1を30mlのLB液体培地に接種し、37℃、200 r/minで18時間シェーカーで培養した。2mlの菌液を取り、5000r/mimで10分間遠心分離し、上清を除去し、PBSで2回洗浄し、遠心分離で上清を除去し、1mlの0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液を加えて菌体を再懸濁し、A.hydrophila NJ−1炭酸水素ナトリウム緩衝液を得た。
3、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerを30mlのLB液体培地に接種し、37℃、200r/minで18時間シェーカーで培養した。2mlの菌液を取り、5000r/mimで10分間遠心分離し、上清を除去し、PBSで2回洗浄し、遠心分離で上清を除去し、1mlの0.1M炭酸水素ナトリウム緩衝液を加えて菌体を再懸濁し、A.veronii Hm091△aer炭酸水素ナトリウム緩衝液を得た。
4、赤色蛍光染料(Texas Red(登録商標)−X)(サーモフィッシャーサイエンティフィックT7471)をDMSOに10mg/mlの濃度で溶解して、赤色蛍光染料溶液を得た。青色蛍光染料(Pacific BlueTM)(Invitrogen P10163)をDMSOに10mg/mlの濃度で溶解して、青色蛍光染料溶液を得た。
5、ステップ4で得られた赤色蛍光染料溶液を50μl取り、ステップ2で得られたA.hydrophila NJ−1炭酸水素ナトリウム緩衝液に加え、室温遮光で軽く揺動しながら1.5時間インキュベートした後、遠心分離し上清を取り、PBSで2回洗浄し、遠心分離し上清を除去し、最後に1mlのPBSで再懸濁して、A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識溶液を得た。
6、ステップ4で得られた赤色蛍光染料溶液を50μl取り、ステップ1で得られたA.veronii Hm091炭酸水素ナトリウム緩衝液に加え、室温遮光で軽く揺動しながら1.5時間インキュベートした後、遠心分離し上清を取り、PBSで2回洗浄し、遠心分離し上清を除去し、最後に1mlのPBSで再懸濁して、A.veronii Hm091赤色蛍光標識溶液を得た。
7、ステップ4で得られた青色蛍光染料溶液を50μl取り、ステップ1で得られたA.veronii Hm091炭酸水素ナトリウム緩衝液に加え、室温遮光で軽く揺動しながら1.5時間インキュベートした後、遠心分離し上清を取り、PBSで2回洗浄し、遠心分離し上清を除去し、最後に1mlのPBSで再懸濁して、A.veronii Hm091青色蛍光標識溶液を得た。
8、ステップ4で得られた赤色蛍光染料溶液を50μl取り、ステップ3で得られたA.veronii Hm091△aer炭酸水素ナトリウム緩衝液に加え、室温遮光で軽く揺動しながら1.5時間インキュベートした後、遠心分離し上清を取り、PBSで2回洗浄し、遠心分離し上清を除去し、最後に1mlのPBSで再懸濁して、A.veronii Hm091△aer赤色蛍光標識溶液を得た。
9、エロモナス・ハイドロフィラA.hydrophila NJ−1を30 mlのLB液体培地に接種し、37℃、200 r/minで18時間シェーカーで培養した。2mlの菌液を取り、5000r/mimで10分間遠心分離し、上清を除去し、PBSで2回洗浄し、遠心分離で上清を除去し、PBSを加えて菌体を再懸濁し、A.hydrophila NJ−1溶液を得た。
10、エロモナス・ベロニA.veronii Hm091△aerを30mlのLB液体培地に接種し、37℃、200r/minで18時間シェーカーで培養した。2mlの菌液を取り、5000r/mimで10分間遠心分離し、上清を除去し、PBSで2回洗浄し、遠心分離で上清を除去し、PBSを加えて菌体を再懸濁し、A.veronii Hm091△aer溶液を得た。
11、孵化後2日目のゼブラフィッシュを、次の5つの群にランダムに分けた(魚の各群を6ウェルプレートに入れ、ウェルあたり10mlの水、15匹の魚)。
群A(対照群):PBSにゼブラフィッシュを感染させた。
群B(A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識感染群):A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識溶液にゼブラフィッシュを感染させ、感染ウェル内のA.hydrophila NJ−1の濃度は4×10CFU/mlであった。
群C(A.veronii Hm091赤色蛍光標識感染群):A.veronii Hm091赤色蛍光標識溶液にゼブラフィッシュを感染させ、感染ウェル内のA.veronii Hm091の濃度は4×10CFU/mlであった。
群D(A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識+無標識A.veronii Hm091感染群):A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識溶液及びA.veronii Hm091溶液にゼブラフィッシュを感染させ、感染ウェル内のA.hydrophila NJ−1の濃度は4×10CFU/mlであり、感染ウェル内のA.veronii Hm091の濃度は4×10CFU/mlであった。
群E(A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識+A.veronii Hm091青色蛍光標識):A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識溶液及びA.veronii Hm091青色蛍光標識液にゼブラフィッシュを感染させ、感染ウェル内のA.hydrophila NJ−1の濃度は4×10CFU/mlであり、感染ウェル内のA.veronii Hm091の濃度は4×10CFU/mlであった。
群F(A.veronii Hm091△aer赤色蛍光標識感染群):A.veronii Hm091△aer赤色蛍光標識溶液にゼブラフィッシュを感染させ、感染ウェル内のA.veronii Hm091△aerの濃度は4×10CFU/mlであった。
群G(A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識+無標識A.veronii Hm091△aer感染群):A.hydrophila NJ−1赤色蛍光標識溶液及びA.veronii Hm091△aer溶液にゼブラフィッシュを感染させ、感染ウェル内のA.hydrophila NJ−1の濃度は4×10CFU/mlであり、感染ウェル内のA.veronii Hm091△aerの濃度は4×10CFU/mlであった。
上記各群を4時間感染させた後に、4%のパラホルムアルデヒドで稚魚をそれぞれ固定した。固定された稚魚をレーザー共焦点顕微鏡で撮影して、ゼブラフィッシュの細菌の局在を観察した。
結果を図3に示す。対照群のゼブラフィッシュ稚魚では、蛍光信号(A)は観察されなかった。赤色蛍光標識のアエロモナス・ハイドロフィラA.hydrophila NJ−1感染群(B)、赤色蛍光標識のアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer感染群(F)、赤色蛍光標識のアエロモナス・ハイドロフィラA.hydrophila NJ−1+アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer感染群(G)では、ゼブラフィッシュ稚魚の腸管内で赤色蛍光信号を観察することができるが、腸腔内に限られる。しかしながら、赤色蛍光標識又は青色蛍光標識のアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091感染群では、ゼブラフィッシュの腸管内で強い蛍光信号を観察することができるだけでなく、腸管の周囲及び頭部で蛍光信号を検出することもできる(C及びE)。興味深いことに、赤色蛍光標識のアエロモナス・ハイドロフィラNJ−1+有/無青色蛍光標識のアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091感染群では、同様に、NJ−1の蛍光信号は、ゼブラフィッシュの腸管の周囲及び頭部で検出することができる(D及びE)。これらのデータは、アエロモナス・ベロニによって分泌されたアエロリシンがゼブラフィッシュの腸管バリアを破壊することができ、それ自体及び他のアエロモナス、特にアエロモナス・ハイドロフィラが魚の体内に入り、魚の溶血及び死亡をもたらすことを示す。一方、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerは、ゼブラフィッシュの腸管バリアを破壊する能力を持っていない。
<実施例3>アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerワクチンの安全性
1、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091をLB固体培地に接種し、37℃で12時間培養し、その後モノクローナルを選び取って、30mlのLB液体培地に接種し、37℃、200r/minで18時間シェーカーで培養した。
2、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerをLB固体培地に接種し、37℃で12時間培養し、その後モノクローナルを選び取って、30mlのLB液体培地に接種し、37℃、200r/minで18時間シェーカーで培養した。
3、ステップ1及びステップ2で培養されたアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091及びアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerをそれぞれ異なる濃度(2.5×10CFU/ml、1.0×10CFU/ml、5.0×10CFU/ml、3.33×10CFU/ml、2.5×10CFU/ml及び1.67×10CFU/ml)で、孵化後5日目のゼブラフィッシュ(浸漬)に感染させて、96時間以内のゼブラフィッシュの死亡状況を統計した。
結果を図4に示す。図4では、図4Aは3.3×10CFU/mlの浸漬濃度での生存時間統計結果であり、図4Bは2.5×10CFU/mlの浸漬濃度での生存時間統計結果であり、図4Cは1.67×10CFU/mlの浸漬濃度での生存時間統計結果である。その結果、次のことが明らかになった。
アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerがそれぞれ3.3×10CFU/ml、2.5×10CFU/ml、1.67×10CFU/mlの浸漬濃度では、ゼブラフィッシュは死亡しなかったが、野生型株による感染後24時間以内にゼブラフィッシュは100%死亡する可能性がある。その結果、Aerをノックアウトすると、アエロモナス・ベロニの毒性は著しく低下し、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerの感染濃度≦3.3×10CFU/mlの浸漬は安全であることが明らかになった。
実施例4、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerワクチン保護の研究
一、ゼブラフィッシュの血清免疫グロブリン含有量に対するアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerワクチンの影響
生後3ヶ月のゼブラフィッシュを次の3つの群にランダムに分けた。
群1(対照群):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
群2(給餌免疫群):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer(2×10CFU/g)を含む基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
群3(浸漬免疫群):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer含有の水に週に1回浸漬し(2×10CFU/ml、浸漬時間は12時間)、基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
各群の処理後、各群のゼブラフィッシュを尾静脈から採血し、魚IGMキット(南京建成生物工程研究所から購入)の説明書に従ってゼブラフィッシュ免疫グロブリンの指標を検出した。
キットの方法に従ってロジスティック曲線を測定し、免疫グロブリン方程式y=(A−D)/[1+(x/C)]+D(A=5.61378;B=0.36217;C=0.14147;D=−0.12176;r=0.99394)を得た。3つの群のゼブラフィッシュの免疫グロブリン濃度の平均値は次のように測定された。対照群:7.304175ng/ml;給餌免疫群:13.646945ng/ml;浸漬免疫群:16.00466ng/ml。その結果、ワクチンで免疫された後にゼブラフィッシュの血清免疫グロブリン含有量はある程度増加したことが明らかになった。
二、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerワクチンゼブラフィッシュの血清抗体の凝集力価
生後3ヶ月のゼブラフィッシュを次の3つの群にランダムに分けた。
群1(対照群):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
群2(給餌免疫群):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer(2×10CFU/g)を含む基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
群3(浸漬免疫群):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer含有の水に週に1回浸漬し(4×10CFU/L、浸漬時間は12時間)、基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
各群の処理後、各群のゼブラフィッシュを尾静脈から採血し、血清を取って血清抗体価を測定した。96ウェル血凝集板法を使用した。アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091培養液を12000rpmで遠心分離した後、等量の生理食塩水に再懸濁し、菌懸濁液(濃度は4×10CFU/ml)を得た。マイクロピペットで生理食塩水を第1ウェルに80μl加え、残りの各ウェルに50μl加えた。測定する血清を第1ウェルに20μl加え、ピペッティングにより均一に混合した後50μl取り出して第2ウェルに加え(1:2希釈)、再度均一に混合した後第2ウェルから50μl取り出して第3ウェルに加え(1:4希釈)、このように第9ウェル(1:256希釈)まで操作して、50μl廃棄した。第10ウェルは対照として使用した。各ウェルに50μlのアエロモナス・ベロニ懸濁液を加え、ピペッティングにより均一に混合し、37℃のインキュベーターで1時間インキュベートし、4℃の条件下で一晩静置し検出した。
実験は2回繰り返した(第1群と第2群)。結果を表2に示す。アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerワクチンは、給餌と浸漬の2つの方式により成体ゼブラフィッシュを免疫化した。対照群、給餌群及び浸漬群の血清抗体凝集力価はそれぞれ2〜2、2〜2及び2であった。給餌群の血清抗体レベルは、対照群の血清抗体レベルよりもわずかに高かった。
Figure 0006971378
三、浸漬及び経口のアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aerワクチンによるゼブラフィッシュの相対的免疫保護率
群1(対照群、CK):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
群2(給餌免疫群、T1):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer(2×10CFU/g)を含む基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
群3(浸漬免疫群、T2):ゼブラフィッシュを2週間正常に飼育し、アエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091△aer含有の水に週に1回浸漬し(3×10CFU/ml、浸漬時間は12時間)、基礎飼料を1日2回飽食給餌した。
各群の処理後、各群のゼブラフィッシュを次の3つの群にランダムに分けた。
群A(A.hydrophila NJ−1+塩化アンモニウム):200mg/Lの塩化アンモニウムにゼブラフィッシュを感染させ(浸漬)、12時間後、2×10CFU/mlのアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091を加えた。
群B(A.veronii Hm091):2×10CFU/mlの濃度のアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091にゼブラフィッシュを感染させた(浸漬)。
群C(A.veronii Hm091+ A.hydrophila NJ−1):それぞれの菌の濃度が2×10CFU/mlのアエロモナス・ベロニ A.veronii Hm091及びアエロモナス・ハイドロフィラ A.hydrophila NJ−1にゼブラフィッシュを感染させた(浸漬)。
96時間以内のゼブラフィッシュの死亡状況を統計し、式(RPS=(1−免疫群死亡数/対照死亡数)×100%)に従って免疫保護率(RPS)を計算した。
結果を図5及び表3に示す。
Figure 0006971378
図5では、図5AはNJ−1+塩化アンモニウムチャレンジの場合の各群の生存率の統計結果であり、図5BはHM091チャレンジの場合の各群の生存率の統計結果であり、図5CはHM091+NJ−1チャレンジの場合の各群の生存率の統計結果である。図5の結果は、浸漬免疫群のゼブラフィッシュの死亡時間が延長されたが、明らかな保護効果がなかったことを示す。一方、給餌免疫方式は、NJ−1+塩化アンモニウム、Hm091、Hm091+NJ−1浸漬チャレンジに対して明らかな免疫保護作用を果たし、ゼブラフィッシュの生存率が明らかに改善された。
表3の結果は、浸漬免疫群の免疫保護率が低く、明らかな保護作用を果たさなかったことを示す。給餌免疫群は、NJ−1+HM091免疫保護率が33%に達し、一定の保護作用があった。NJ−1+塩化アンモニウム群の場合、HM091免疫保護率は80%に達し、非常に強い免疫保護作用があった。
本発明は以下の利点を有する。
??1)本発明は、アエロモナス・ベロニのアエロリシンがゼブラフィッシュの感染部位に損傷を引き起こし、さらに関連する細菌の魚体内への侵入を促進することが出血性疾患の大発生を引き起こす主な原因となるという発症メカニズムに基づき、感染症を引き起こすアエロモナス・ベロニから、出血性疾患を予防/治療するワクチンを開発する。それにより、長い間アエロモナス出血性疾患の病因が不明であるため後期に感染を引き起こす細菌を重視する一方、損傷を引き起こす主要な細菌のワクチンの開発を無視することで、長い間細菌性敗血症のワクチン予防/制御効果が低下するという現状が回避される。
2)本発明は相同組換えの原理を採用し、特定の遺伝子断片を標的として欠損させて遺伝子不活性化を引き起こすことによって、得られた遺伝子欠損株はより良好な遺伝的安定性を有し、トランスポゾンなどの不安定な遺伝子工学的手法により構築される弱毒株による遺伝的不安定性のリスクが回避される。本発明の弱毒生ワクチンは、抗生物質標識を一切含まず、耐性株又は抗生物質耐性遺伝子を環境に放出することによって引き起こされる潜在的な害がない。
3)本発明では、遺伝子ノックアウトの方法を使用して、アエロリシン(Aerolysin)の主要な毒性因子をノックアウトして弱毒株を取得し、その毒性は親株よりも著しく低下する。同時に、不活化ワクチンの不十分な不活化による安全性の問題、及び不活化試薬による副作用がよく回避される。
4)本発明の弱毒生ワクチンは、様々な供給源からのアエロモナスに対して一定の交差保護力を有し、幅広い適応性を有する。
5)本発明の弱毒生ワクチンは、ゼブラフィッシュにおいて一定の免疫保護力を有し、本発明の弱毒生ワクチンがゼブラフィッシュの免疫応答を効果的に活性化できることを示している。
6)本発明により提供されるワクチンを使用することによって、水産動物の免疫力を著しく増強し、耐病性発現型を改善することができる。
本発明は、抗生物質標識なしで主要な毒性因子をノックアウトする技術で構築された経口又は浸漬弱毒生ワクチンを採用することによって、免疫抗原性を保持しながら病原菌の病原性を低下させることができ、免疫保護の効果が顕著であり、自然免疫系反応及び細胞免疫が強化され、他の病原菌により感染に抵抗する能力が向上し、免疫作業の量が大幅に削減される。

Claims (17)

  1. 組換え菌であって、アエロモナス・ベロニのアエロリシン遺伝子をノックアウトすることによって得られたものである、ことを特徴とする組換え菌。
  2. 前記ノックアウトは、オープンリーディングフレーム全体をノックアウトするか、又は一部の遺伝子セグメントをノックアウトすることである、ことを特徴とする請求項1に記載の組換え菌。
  3. 組換え菌であって、特異的なDNA断片をアエロモナス・ベロニに導入し相同組換えを行った後に得られた前記特異的なDNA断片を有する組換え菌であり、前記特異的なDNA断片は、アエロリシン遺伝子の上流ホモロジーアーム及び下流ホモロジーアームを含み、前記上流ホモロジーアームは、配列表の配列3の5’末端から第3092〜4276番目のヌクレオチドで示され、前記下流ホモロジーアームは、配列表の配列3の5’末端から第4277〜5408番目のヌクレオチドで示される、ことを特徴とする組換え菌。
  4. 寄託番号がCGMCC No.14776であるアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aer。
  5. 求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌を含むワクチンであって、下の(b1)〜(b4)のいずれかである、ことを特徴とするワクチン
    (b1)水産動物アエロモナス・ベロニワクチン、
    (b2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチン、
    (b3)水産動物アエロモナスワクチン、
    (b4)水産動物出血性疾患ワクチン
  6. 求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(A.veronii)Hm091△aerを含むワクチンであって、下の(b1)〜(b4)のいずれかである、ことを特徴とするワクチン
    (b1)水産動物アエロモナス・ベロニワクチン、
    (b2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチン、
    (b3)水産動物アエロモナスワクチン、
    (b4)水産動物出血性疾患ワクチン
  7. ワクチンを調製する方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌をワクチンの活性成分として包装するステップを含み、前記ワクチンは、以下の(b1)〜(b4)のいずれかである、ことを特徴とする方法。
    (b1)水産動物アエロモナス・ベロニワクチン、
    (b2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチン、
    (b3)水産動物アエロモナスワクチン、
    (b4)水産動物出血性疾患ワクチン
  8. ワクチンを調製する方法であって、請求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerをワクチンの活性成分として包装するステップを含み、前記ワクチンは、以下の(b1)〜(b4)のいずれかである、ことを特徴とする方法。
    (b1)水産動物アエロモナス・ベロニワクチン、
    (b2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチン、
    (b3)水産動物アエロモナスワクチン、
    (b4)水産動物出血性疾患ワクチン
  9. 求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌を用いて、製品を調製するための使用であって、下の(c1)〜(c5)の少なくとも1つである、ことを特徴とする使用
    (c1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
    (c2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
    (c3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
    (c4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
    (c5)水産動物の免疫力の改善
  10. 求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerを用いて、製品を調製するための使用であって、下の(c1)〜(c5)の少なくとも1つである、ことを特徴とする使用
    (c1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
    (c2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
    (c3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
    (c4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
    (c5)水産動物の免疫力の改善
  11. 水産動物アエロモナス・ベロニワクチンであって、その活性成分は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌、又は、請求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerである、ことを特徴とする水産動物アエロモナス・ベロニワクチン。
  12. 水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチンであって、その活性成分は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌、又は、請求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerである、ことを特徴とする水産動物アエロモナス・ハイドロフィラワクチン。
  13. 水産動物アエロモナスワクチンであって、その活性成分は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌、又は、請求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerである、ことを特徴とする水産動物アエロモナスワクチン。
  14. 水産動物出血性疾患ワクチンであって、その活性成分は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌、又は、請求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerである、ことを特徴とする水産動物出血性疾患ワクチン。
  15. 製品であって、その活性成分は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌、又は、請求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerであり、前記製品の用途は、以下の(d1)〜(d5)の少なくとも1つである、ことを特徴とする製品。
    (d1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
    (d2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
    (d3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
    (d4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
    (d5)水産動物の免疫力の改善
  16. 以下の(f1)〜(f5)の少なくとも1つである請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え菌の使用
    (f1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
    (f2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
    (f3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
    (f4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
    (f5)水産動物の免疫力の改善
  17. 以下の(f1)〜(f5)の少なくとも1つである請求項4に記載のアエロモナス・ベロニ(Aeromonas veronii)Hm091△aerの使用
    (f1)水産動物アエロモナス・ベロニ感染の予防及び/又は治療、
    (f2)水産動物アエロモナス・ハイドロフィラ感染の予防及び/又は治療、
    (f3)水産動物アエロモナス感染の予防及び/又は治療、
    (f4)水産動物出血性疾患の感染の予防及び/又は治療、
    (f5)水産動物の免疫力の改善
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