本明細書に記載の物質、化合物、組成物、製品および方法は、以下に開示した主題の特定の態様およびこの中に含まれる実施例についての詳細な説明を参照することによってより容易に理解することができる。本発明の物質、化合物、組成物、製品、デバイスおよび方法を開示および説明する前に、以下に記載する態様は、これら自体が変動する可能性があるので、特定の合成方法もしくは特定試薬に限定されないことを理解されたい。さらに、本明細書で使用する用語は特定の態様を記載するためだけであり、限定することは意図されていない。
さらに、本明細書を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は全体として、開示した物体が関係する分野の最新状態をより完全に記載するために、これにより本出願に参照により組み込まれる。開示した参考文献は、さらに参考文献が依拠する文章において考察される物体に含有される物質については個別および特別に本明細書に参照により組み込まれる。
本発明は、内皮細胞増殖、血管透過性強化、炎症もしくは血管新生によって誘発される眼障害の治療に使用するための活性物質を含有する組成物もしくは製剤を提供する。本発明の製剤は、このような眼障害に関連する新生血管および血管漏出を予防もしくは阻止することに有用である。一部の場合には、本発明の製剤は新生血管の退行を誘発する。手短には、本発明の範囲内では、活性物質は、血管成長を阻止する、血管透過性を低下させる、および/または炎症を減少させるために作用する、合成もしくは天然型いずれかのあらゆる分子であると理解すべきである。特に、本発明は、治療有効量の活性物質を含む製剤を提供する。
一般的定義
本明細書および下記の特許請求の範囲では、以下の意味を有すると規定される多数の用語を参照されたい。本明細書の全てのパーセンテージ、割合および比率は、他に特に規定しない限り、重量に基づく。全ての温度は、他に特に規定しない限り、摂氏温度(℃)である。
「医薬として許容される」は、生物学的もしくはこの他の点で望ましくない物質でない物質を意味しており、つまり物質は、臨床的に許容されない生物学的作用を誘発することなく、またはこれが含有されている医薬組成物もしくは製剤のあらゆる他の成分と有害な方法で相互作用することなく関連活性化合物と一緒に個体に投与することができる。
成分の重量%は、特に反対のことが規定されない限り、この成分が含まれる製剤もしくは組成物の総重量に基づいている。
本明細書で使用する「有効量」は、「所望の結果もしくは治療結果を達成するために必要な用量および期間にわたり有効である、本明細書に開示した1つ以上の化合物の量」を意味する。有効量は、当分野における公知の因子、例えば治療されるヒトもしくは動物の疾患の状態、年齢、性別および体重によって変動する可能性がある。特定の用法・用量は本明細書の実施例に記載されてよいが、当業者であれば、最適な治療応答を提供するために用法・用量を変化させられることを認識するであろう。例えば、複数回の分割用量を毎日投与できる、または用量は治療状況の緊急状況によって指示されるように比例して減量されてよい。さらに、本開示の製剤は、治療量を達成するための必要に応じて頻回に投与することができる。
本明細書で使用する「賦形剤」は、治療的もしくは生物学的活性化合物ではない1つ以上の本明細書に開示した阻害剤中に含有されてよい、または組み合わされてよい任意の他の化合物を含む。従って、賦形剤は医薬として、または生物学的に許容されなければならない、または適切でなければならない(例えば、賦形剤は一般に被験者にとって非毒性でなければならない。)。「賦形剤」は単一のこのような化合物を含むが、さらに複数の賦形剤を含むことも企図されている。本開示のためには、用語「賦形剤」および「担体」は、本開示の説明を通して互換的に使用され、上記用語は本明細書において「安全で効果的な医薬組成物を調製する実践において使用される成分」であると規定されている。
本明細書で使用する場合、「被験者」は、個体を意味する。従って「被験者」は、飼育動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)および鳥類を含むことができる。「被験者は」、さらに霊長類もしくはヒトを含むこともできる。
「減少させる」またはこの言葉の他の形態、例えば「減少させる工程」もしくは「減少」は、事象もしくは特徴(例えば、血管漏出もしくは組織腫脹)の低下を意味する。これは典型的には一部の標準もしくは予測値に関連する、言い換えると、相対的であり、ただしこれは、参照される標準値もしくは相対値が必ずしも必要なわけではないと理解される。
用語「治療する」または例えば「治療された」もしくは「治療」などのこの用語の他の形態は、本明細書では本発明の化合物の投与が宿主における疾患もしくは障害を軽減する、および/または障害に関連する特定の特徴もしくは事象(例えば、血管漏出)を減少させる、阻害する、または排除することを意味するために使用される。
本発明の方法が障害を予防することに向けられる限りにおいて、用語「予防する」は、疾患状態が完全に阻止されることを必要としないと理解される。むしろ本明細書で使用する場合、用語「予防する工程」は、本発明の化合物の投与を疾患の発生前に行うことができるように、当業者が障害に感受性である集団を同定する能力に関する。この用語は、疾患状態が完全に回避されることを意味するものではない。
用語「緩和する工程」または例えば「緩和する」などのこの用語の他の形態は、本明細書では本発明の治療薬の投与が宿主における疾患もしくは障害の1つ以上の症状を軽減する、および/または治療薬の投与前および/または投与後に疾患もしくは障害に関連する特定の症状を減少させる、阻害する、または排除することを意味するために使用される。
本明細書に開示した化合物は、受容体チロシンキナーゼを阻害することによって血管漏出もしくは病理的新生血管に影響を及ぼす。
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、用語「含む」および例えば「含んでいる」および「含む」などのこの用語の他の形態は、含んでいるがこれらに限定されないことを意味し、例えば他の添加物もしくは成分を排除することは意図されていない。
本明細書および特許請求項において使用する場合、単数形の「1つの」および「この」には、状況が明確に他のことを指示しない限り、複数形が含まれる。
「場合による」もしくは「場合により」は、この後に記載された事象もしくは状況は発生する場合も発生しない場合もあること、および本明細書は事象もしくは状況が発生する場合および事象もしくは状況が発生しない場合を含むことを意味する。
用語「約」は、製剤の調製および疾患もしくは障害の治療において薬剤物質の有効性を変化させない治療薬の濃度もしくは量における何らかのわずかな変化を意味する。例えば、限定することなく、治療薬の濃度は、濃度が0.005%から5.0%(±0.0005%)の間で変動する場合は有効であろう。本発明の治療薬/活性物質の濃度範囲に関する用語「約」は、さらに有効な量もしくは範囲であろう規定の量もしくは範囲の任意の変動も意味する。
範囲は、本明細書では「約」1つの特定値から、および/または「約」また別の特定値までとして表示できる。このような範囲が表示される場合は、また別の態様は、1つの特定値から、および/または他の特定値までを含む。同様に、数値が先行詞「約」を使用して近似値として表示される場合は、特定値はまた別の態様を形成すると理解される。さらに、各範囲の終点は他の終点との関連において、および他の終点からは独立しての両方で重要であると理解される。さらに、本明細書では多数の数値が開示されること、および各数値は本明細書ではさらにこの数値自体に加えて特定値を「約」として開示されることも理解される。例えば、数値「10」が開示されている場合は、「約10」もまた開示されている。さらに、ある数値が開示されている場合は、当業者であれば適切に理解されるように、「この数値以下」、「この数値以上」および「可能性のある数値間の範囲」もまた開示されていると理解される。例えば、数値「10」が開示されている場合は、「10以下」ならびに「10以上」もまた開示されている。さらに、本出願を通して、データは多数の異なるフォーマットで提供されること、およびこのデータはデータポイントのあらゆる組み合わせについての終点および開始点ならびに範囲を示すことが理解される。例えば、特定データポイント「10」および特定データポイント「15」が開示されている場合は、10から15の間に加えて、10および15より大きい、10および15以上、10および15よりより小さい、10および15以下および10および15に等しいは、本明細書に開示されていると理解される。さらに、2つの特定単位間の各単位もまた開示されていると理解される。例えば、10および15が開示されている場合は、11、12、13および14もまた開示されている。
本明細書で使用する用語「ハロ」には、他に特に規定しない限り、フルオロ、クロロ、ブロモもしくはヨードが含まれる。好ましいハロ基は、フルオロ、クロロおよびブロモである。
本明細書で使用する用語「アルキル」には、他に特に指示しない限り、規定数の炭素原子を有する分岐鎖状および直鎖状両方の飽和脂肪族炭化水素基が含まれる。例えば、C1−6アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5およびC6アルキル基を含むことが意図されている。アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチルおよびn−ヘキシルが含まれるがこれらに限定されない。所定の実施形態では、直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルは主鎖内に6個もしくはこれより少ない炭素原子を有し(例えば、直鎖状についてはC1−C6、分岐鎖状についてはC3−C6)、別の実施形態では、直鎖状もしくは分岐鎖状アルキルは4個もしくはこれより少ない炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルは環構造内に3から8個の炭素原子を有し、他の実施形態では、シクロアルキルは環構造内に5もしくは6個の炭素を有する。アルキルは、炭化水素主鎖の1個以上の炭素を水素と取り替えることにより置換することができる。このような置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくは複素環式芳香族成分が含まれる。シクロアルキルは、さらに例えば上述した置換基と置換することができる。「アルキルアリール」もしくは「アラルキル」成分は、アリールと置換されたアルキル(例えばフェニルメチル(ベンジル))である。
本明細書で使用する用語「アルケニル」には、他に特に指示しない限り、上述したアルキルと長さおよび可能な置換が類似であるが、少なくとも1つの二重結合を含有する不飽和脂肪族基が含まれる。例えば、用語「アルケニル」には、直鎖状アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、分岐鎖状アルケニル基、シクロアルケニル(例えば、脂環式)基(例えば、シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルもしくはアルケニル置換シクロアルケニル基およびシクロアルキルもしくはシクロアルケニル置換アルケニル基が含まれる。所定の実施形態では、直鎖状もしくは分岐鎖状アルケニル基は主鎖内に6個もしくはこれより少ない炭素原子を有する(例えば、直鎖状についてはC2−C6、分岐鎖状についてはC3−C6)。同様に、シクロアルケニル基はこれらの環構造内に3から8個の炭素原子を有していてよく、一部の実施形態では、シクロアルケニル基はこれらの環構造内に5もしくは6個の炭素を有する。用語「C2−C6」には、2から6個の炭素原子を含有するアルケニル基が含まれる。用語「C3−C6」には、3から6個の炭素原子を含有するアルケニル基が含まれる。アルケニルは、炭化水素主鎖の1個以上の炭素原子を水素と取り替えることにより置換することができる。このような置換基には、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくは複素環式芳香族成分が含まれる。
本明細書で使用する用語「アルキニル」には、他に特に指示しない限り、上述したアルキルと長さおよび可能な置換が類似であるが、少なくとも1つの三重結合を含有する不飽和脂肪族基が含まれる。例えば、「アルキニル」には、直鎖状アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、分岐鎖状アルキニル基ならびにシクロアルキルもしくはシクロアルケニル置換アルキニル基が含まれる。所定の実施形態では、直鎖状もしくは分岐鎖状アルキニル基は主鎖内に6個もしくはこれより少ない炭素原子を有する(例えば、直鎖状についてはC2−C6、分岐鎖状についてはC3−C6)。用語「C2−C6」には、2から6個の炭素原子を含有するアルキニル基が含まれる。用語「C3−C6」には、3から6個の炭素原子を含有するアルキニル基が含まれる。アルキニルは、炭化水素主鎖の1個以上の炭素原子を水素と取り替えることにより置換することができる。このような置換基には、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくは複素環式芳香族成分が含まれる。
本明細書で使用する用語「アルコキシ」には、他に特に指示しない限り、O−アルキル基が含まれるが、このとき「アルキル」は上記に規定した通りである。
本明細書で使用する用語「アリール」は、他に特に指示しない限り、0から4個のヘテロ原子を含んでいてよい5員および6員の「非共役」または単環式芳香族基ならびに少なくとも1つの芳香族環を備える「共役」もしくは多環式系が含まれる。アリール基の例には、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。さらに、用語「アリール」には、多環式アリール基、例えば三環式、二環式の、例えばナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリンもしくはインドリジンが含まれる。環構造内にヘテロ原子を有するこれらのアリール基はさらに「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」もしくは「複素環式芳香族」と呼ぶこともできる。芳香族環は、1つもしくはこれ以上の環位置で上述したこのような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくは複素環式芳香族成分と置換することができる。アリール基は、さらにまた多環式系(例えば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成できるように芳香族ではない脂環式もしくは複素環式環と融合することができる、またはこれらと架橋することができる。
本明細書で使用する用語「4−10員複素環」には、他に特に指示しない限り、各々がO、SおよびNから選択される1個以上のヘテロ原子を含有する芳香族および非芳香族複素環基が含まれ、このとき各複素環基は環系内に4から10個の原子を有する。非芳香族複素環基には、環系内に原子を4個しか有さない基が含まれるが、芳香族複素環基は環系内に少なくとも5個の原子を有していなければならない。4員複素環基の1つの例は、アゼチジニル(アゼチジンに由来する。)である。5員複素環基の1つの例はチアゾリルであり、10員複素環基の1つの例はキノリニルである。非芳香族複素環基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドロニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H−インドリルおよびキノリジニルである。芳香族複素環基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノオキサリニル、ナフチリジニルおよびフロピリジニルである。上記に列挙した化合物に由来する上記の基は、このようなことが可能である場合はC付着基もしくはN付着基であってよい。例えば、ピロールに由来する基はピロール−1−イル(N付着)もしくはピロール−3−イル(C付着)であってよい。「4−10員複素環」成分は、置換することができる。
本明細書で使用する語句「医薬として許容される塩」には、他に特に指示しない限り、式(I)もしくは(II)の化合物中に存在していてよい酸性基もしくは塩基性基の塩が含まれる。本質的に塩基性である式(I)もしくは(II)の化合物は、様々な無機酸および有機酸と広範囲の塩を形成することができる。式(I)もしくは(II)のこのような塩基性化合物の医薬として許容される酸付加塩を調製するために使用できる酸は、非毒性酸付加塩、即ち薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩、例えばヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸性ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、ラクテート、サリチレート、シトレート、酸性シトレート、タルトレート、パントテネート、ビタルトレート、アスコルベート、スクシネート、マレエート、ゲンチシネート、フマレート、グルコネート、グルカロネート、サッカレート、ホルメート、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネートおよびパモエート[即ち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)]塩を形成する酸である。
本質的に酸性である式(I)のこれらの化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと塩基性塩を形成することができる。このような塩の例には、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩および特にナトリウム塩およびカリウム塩が含まれる。一部の実施形態では、塩は酸付加塩、例えばHCl塩である。
式(I)の所定の化合物は、不斉中心を有していてよく、このため様々なエナンチオマー形で存在する。本発明は、式(I)の化合物の全ての光学異性体および立体異性体ならびにこれらの混合物の使用に関する。式(I)の化合物は、さらにE/Z幾何異性体もしくは互変異性体としても存在してよい。本発明は、全てのこのような幾何異性体および互変異性体およびこれらの混合物の使用に関する。
本発明にはさらに、1個以上の原子が、通常本質的に見られる原子量もしくは質量数とは異なる原子量もしくは質量数を有する原子で置換されるという事実を別にすれば、式(I)に挙げたものと同一である同位体標識化合物およびこれらの医薬として許容される塩が含まれる。本発明の化合物内に組み込むことのできる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えば、各々2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18Fおよび36Clが含まれる。上述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物、これらのコンジュゲートおよび上記化合物もしくは上記コンジュゲートの医薬として許容される塩は、本発明の範囲内に含まれる。本発明の所定の同位体標識化合物、例えばこの中に例えば3Hおよび14Cなどの放射性同位体が組み込まれている化合物は、薬物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化、即ち3H、および炭素−14、即ち14C同位体は、これらの調製の容易さおよび検出可能性のために特に好ましい。さらに、より重い同位体、例えばジュウテリウム、即ち2Hとの置換は、より大きな代謝安定性から生じる、例えばインビボ半減期の増加または必要用量の減少を生じさせるなどの所定の治療上の利点を与えることができ、このため一部の状況では好ましい場合がある。本発明の式(I)の同位体標識化合物およびこれらのエステルもしくは脂質コンジュゲートは、一般に下記のスキームおよび/または実施例および調製の項に開示した方法を実施することによって、非同位体標識試薬を容易に入手できる同位体標識試薬に置換することによって調製できる。
本発明はさらに、式(I)の化合物の誘導体もしくはこれらの医薬として許容される塩を含有する医薬製剤を含んでいる。遊離アミノ基もしくは遊離アミド基を有する式(I)の化合物またはこれらの医薬として許容される塩は、共役誘導体に変換させることができるが、このときアミノ酸残基または2つ以上(例えば、2、3もしくは4つ)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖は、式(I)の化合物またはこれらの医薬として許容される塩の遊離アミノ基に1つのアミドもしくはエステル結合を通して共有結合される。アミノ酸残基には、一般に3文字記号によって指定される20の天然型アミノ酸が含まれるがこれらに限定されず、さらに4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デモシン、イソデモシン、3−メチルヒスチジン、ノルバリン、β−アラニン、γーアミノ酪酸、シトルリンホモシステイン、ホモセリン、オルニチンおよびメチオニンスルホンが含まれる。
追加の誘導体のタイプもさらに包含される。アミドおよびエステル成分には、エーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含むがこれらに限定されない基を組み込むことができる。遊離ヒドロキシ基は、D.Fleisher,et al.,ADVANCED DRUG DELIVERY REVIEWS(1996)19,115に略記されたヘミスクシネート、ホスフェートエステル、ジメチルアミノアセテートおよびホスホリルオキシメチルオキシカルボニルを含むがこれらに限定されない基を使用して誘導体化されてよい。ヒドロキシおよびアミノ基のカルバメートコンジュゲートもまた、ヒドロキシ基のカーボネートコンジュゲートおよびスルフェートエステルと同様に含まれる。アシル基が場合によりエーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含むがこれらに限定されない基で置換されたアルキルエステルであってよい、またはアシル基が上述したようにアミノ酸エステルである場合のヒドロキシ基の(アシルオキシ)メチルおよび(アシルオキシ)エチルエーテルとしての誘導体化もまた包含される。このタイプの誘導体は、R.P.Robinson et al.,J.MEDICINAL CHEMISTRY(1996)39,10に記載されている。
用語「キナーゼ」は、タンパク質残基へのホスフェート基の添加を触媒する任意の酵素を意味しており、例えば、セリンおよびトレオニンキナーゼは、セリンおよびトレオニン残基へのホスフェート基の添加を触媒する。
用語「VEGFRキナーゼ」、「VEGFR」は、血管内皮成長因子受容体のいずれかを意味する。
用語「VEGFシグナル伝達」および「VEGFカスケード」は、VEGFシグナル伝達カスケードの上流および下流両方の成分を意味する。
用語「医薬として許容される」は、担体、希釈剤もしくは賦形剤が製剤の他の成分と適合性でなければならず、これらの受容者にとって有害であってはならない事実を意味する。
用語「化合物の投与」もしくは「化合物を投与する工程」は、治療を必要とする被験者に本発明の化合物もしくは医薬製剤を提供する行為を意味する。
用語「血管均衡状態」は、正常な生理学的機能をもたらすホメオスタティック血管機能の維持を意味する。
用語「血管均衡剤」は、血管均衡状態が損傷している状態を、血管均衡状態の消失を防止する、または回復もしくは維持することによって対応することを試みる作用物質を意味する。
本開示では、「組成物」および「製剤」は互換的に使用され、当分野において公知である組成物もしくは製剤の従来型の意味を意味する。
本発明は、眼科用製剤に関する。一部の実施形態では、本発明の眼科用製剤は、ゲル製剤もしくはセミゲル製剤またはこの両方である。
本発明による「ゲル」は、懸濁粒子を含有する本発明の半固体剤形である。半固体は注入不能である。半固体は、流動しない、または室温でこれの容器に適合する。半固体は、低剪断応力では流動せず、一般に塑性流動挙動を示す。コロイド分散系は、コロイド寸法(即ち、典型的には1nmから1μm)の粒子が液体全体に均一に分散している系である。
一部の実施形態では、「ゲル」は、小さな無機粒子または液体に浸透される有機分子いずれかの懸濁液からなる半固体系である。「ゲル」は、単層系もしくは2層系いずれかに分類される。「ゲル」はさらにまた、本実施形態の「点眼ゲル」における活性物質の状態である、中間相もしくは部分的に規則化された構造を表す液体と固体の間の中間の状態からなる。2層ゲルは、小さな離散粒子の網状組織からなる。2層系では、ゲル塊は、懸濁物質の粒径が大きい場合は、時々はマグマ(例えば、ベントナイトマグマ)と呼ばれる。ゲルおよびマグマはどちらも揺変性であり、静止状態で半固体を形成し撹拌すると液体になる。半固体製剤は、均質性を保証するために投与前に撹拌されなければならず、このことが標識されなければならない(懸濁液の項を参照)。単層ゲルは、分散した高分子と液体との間に明白な境界が存在しないような方法で液体全体に均質に分散した有機高分子からなる。単層ゲルは、ゲル化の原因となる成分が実際の有効成分である場合は有機低分子量(LMW)分子からなってもよい。これらのいわゆる「LMWヒドロゲル」は、例えば高分子量合成ポリマー、多糖類およびタンパク質などの水の伝統的ゲル化剤とは異なる。高分子量ゲル化剤は水素結合に起因して高度に規則的で一方向性であるが、LMWヒドロゲルを統制する力は概して無指向性ファンデルワールス(van der Waals)力(疎水性)相互作用である。実際に、LMWヒドロゲルは、物理的分岐網状組織もしくはもつれた網状組織を作り出す液体全体に広がる高度に異方性(典型的には原線維状)構造として観察される。従ってゲルは、一部の複屈折性液晶特性を示す非規則的からわずかに規則的であってよい。ゲルは、局所的に、または撹拌後に点眼薬としてヒドロゲルの形態で投与される。
本発明による半固体「ゲル」は、USPの定義およびこの中に参照された文献による半固体である。半固体製剤の見かけの粘度は、濃度とともに増加する。本製剤の臨床的用量強度の範囲は≦1mg/mL(0.1%)の低強度から≦6mg/mL(0.6%)の高強度の範囲にわたる。低強度用量は最低粘性であって「液剤」のカテゴリーの中に含まれるが、高強度はより粘性でゲルの定義に適合する。
本発明による「ゼリー」は、小さな無機粒子または構造的コヒーレントマトリックスが液体の大きな部分、通常は水を含有する液体によって浸透される大きな有機分子のいずれかから構成される懸濁剤からなる半固体系である1クラスのゲルである。
本発明による「液剤」は、溶媒中に溶解した1つ以上の化学物質または相互に混和性の溶媒の混合物を含有する透明で均質な液体剤形である。液剤は、適切な溶媒もしくは相互に混和性の溶媒の混合液中に1つ以上の溶解化学物質を含有する液体調製物である。液剤中の薬剤物質の分子は一様に分散しているので、剤形としての液剤の使用は、一般に投与後の一様な用量の保証および液剤が希釈またはさもなければ混合された場合の良好な正確さを提供する。
本発明による「液体」は、液体状態にある純粋化学物質からなる剤形である。液体は注入可能である。液体は、流動する、および室温でこの容器に適合する。液体は、ニュートンもしくは疑似塑性流動挙動を提示する。
本発明による「懸濁剤」は、液体ビヒクル中に分散した固体粒子を含有する液体剤形である。
本発明の化合物は、天然形もしくは塩形として治療用製剤に調製される。医薬として許容される非毒性塩には、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムもしくはフェリックヒドロキシドなどの無機塩基、および例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノ−エタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来する塩基付加塩(遊離カルボキシルもしくは他のアニオン性基を用いて形成される。)が含まれる。このような塩は、あらゆる遊離カチオン性基を備える酸付加塩として形成され、一般には例えば塩酸、硫酸もしくはリン酸などの無機酸または例えば酢酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成される。本発明の塩には、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸を用いたアミノ基のプロトン化によって形成されるアミン塩が含まれる。本発明の塩には、さらに適切な有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、酢酸などを用いたアミノ基のプロトン化によって形成されるアミン塩が含まれる。本発明の実践において使用するために企図される追加の賦形剤は、例えば当業者であれば入手できる、例えば米国薬局方22巻(United States Pharmacopoeia Vol.XXII)および国民医薬品集17巻(U.S.Pharmacopoeia Convention,Inc.、メリーランド州ロックビル(1989))の中に見出される賦形剤であり、これらの関連する内容は参照により本発明に組み込まれる。さらに、本化合物の多形体は、本発明に含まれる。
本発明の実施形態は、式I:
の活性物質もしくはこの医薬として許容される塩;および医薬として許容される賦形剤を用いて眼血管新生を治療するための眼科用組成物もしくは眼科用製剤を提供する;活性物質もしくは医薬として許容される塩は、約0.02%から約1.0%(w/v)で存在し、活性物質は、下記のように同定される:X
1はOもしくはSである;R
1はH、C
1−C
10アルキル、C
2−C
10アルケニル、C
2−C
10アルキニル、−C(O)(C
1−C
10アルキル)、−(CH
2)
t(C
6−C
10アリール)、−(CH
2)
t(4−10員複素環))、−C(O)(CH
2)
t(C
6−C
10アリール)もしくは−C(O)(CH
2)
t(5−10員複素環)(式中、tは0から5の整数である。)である;アルキル基は場合によりO、Sおよび−N(R
6)−から選択される1もしくは2個のヘテロ成分を含むが、ただし2個のO原子、2個のS原子もしくは1個のO原子およびS原子は相互に直接的に付着していないことを前提とする;アリールおよび複素環式R
1基は場合によりC
6−C
10アリール基、C
5−C
8飽和環式基もしくは5−10員複素環基に融合している;上記の複素環成分中の1もしくは2個の炭素原子は場合により1つのオキソ(=O)成分もしくは1つの酸素のアニオンにより置換されている;上記のR
1基の−(CH
2)
t−成分は炭素−炭素二重もしくは三重結合(式中、tは2から5の整数である。)を含む;および上記のR
1基は、Hを除いて、場合により1から3つのR
4基で置換される;R
2はHである;R
3は−(CH
2)
t(C
6−C
10アリール)(式中、tは0から5の整数である。)であり;場合によりC
6−C
10アリール基、C
5−C
8飽和環式基もしくは5−10員複素環基に融合している;−(CH
2)
t−成分は、場合により炭素−炭素二重もしくは三重結合(式中、tは2から5である。)を含み、場合により1から5つのR
4基で置換される。;各R
4は、独立してC
1−C
10アルキル、C
2−C
10アルケニル、C
2−C
10アルキニル、ハロ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−OR
5、−C(O)R
5、−C(O)OR
5、−NR
6C(O)OR
5、−OC(O)R
5、−NR
6SO
2R
5、−SO
2NR
5R
6、−NR
6C(O)R
5、−C(O)NR
5R
6、−NR
5R
6、−S(O)
jR
7(式中、jは0から2の整数である。)、−SO
3H、−NR
5(CR
6R
7)
tOR
6、−(CH
2)
t(C
6−C
10アリール)、−SO
2(CH
2)
t(C
6−C
10アリール)、−S(CH
2)
t(C
6−C
10アリール)、−O(CH
2)
t(C
6−C
10アリール)、−(CH
2)
t(5−10員複素環)および−(CR
6R
7)
mOR
6(式中、mは1から5の整数であり、tは0から5の整数である。)から独立して選択される;アルキル基は、場合によりO、Sおよび−N(R
6)−から選択される1もしくは2個のヘテロ成分を含有するが、ただし2個のO原子、2個のS原子もしくは1個のO原子およびS原子は相互に直接的に付着していないことを前提とする;アリールおよび複素環式R
4基は場合によりC
6−C
10アリール基、C
5−C
8飽和環式基もしくは5−10員複素環基に融合している;上記の複素環成分中の1もしくは2個の炭素原子は場合により1つのオキソ(=O)成分もしくは1つの酸素のアニオンにより置換されている;上記のR
4基のアルキル、アリールおよび複素環成分は場合によりハロ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アジド、−NR
6SO
2R
5、−SO
2NR
5R
6、−C(O)R
5、−C(O)OR
5、−OC(O)R
5、−NR
6C(O)R
5、−C(O)NR
5R
6、−NR
5R
6、−(CR
6R
7)
mOR
6(式中、mは1から5の整数である。)、−OR
5およびR
5の定義に列挙された置換基から独立して選択された1から3つの置換基で置換される;ならびに各R
5、R
6およびR
7は独立してHもしくはC
1−C
6アルキルである。
本発明の別の実施形態では、本発明の式I中のR3は、−(CH2)t(C6−C10アリール)(式中、tは1から3の整数である。)である、およびR3基は場合により1から4つのR4基で置換される。
また別の実施形態では、本発明の式I中のR3は、ハロおよびC1−C4アルキルから独立して選択された1から4つの置換基により場合により置換されたベンジルである。例えば、本発明の式I中のR3は、メチル、フルオロ、クロロおよびブロモから独立して選択された1から4つの置換基により置換されたベンジルである。
本発明の式I中のR1は、C1−C4アルキル、ヒドロキシおよびヒドロキシメチルから独立して選択された1もしくは2つの置換基により場合により置換された−(CH2)t(5−10員複素環)(式中、tは0から5の整数である。)である。
本発明の式I中のR1基の複素環成分は、モルホリノ、ピロリジニル、イミダゾリル、ピペラジニル、ピペリジニルおよび2,5−ジアザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルから選択され、R1基のt変量は2から5の範囲にわたり、R1基は場合により1つ以上のヒドロキシ基で置換される。
例えば、本発明の式I中のR1基の複素環成分はピロリジンである。
本発明の別の実施形態では、活性物質は:
本発明の化合物は、分子式:C20H24BrF2N5O3S・HCl、分子量:568.86g/モルの3−[(4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)メトキシ]−5−[[[[4−(1−ピロリジニル)ブチル]アミノ]カルボニル]アミノ]−4−イソチアゾールカルボキサミドヒドロクロリドであり、およびこの分子は不斉中心を含有しておらず、キラルではないという特性を備える。本発明の化合物は、化合物I:
本発明の化合物Iは、この受容体のVEGF誘導自己リン酸化ならびに内皮細胞増殖を遮断するVEGFR−2のチロシンキナーゼ活性の阻害剤である。化合物Iは、上皮成長因子受容体(EGFR)およびインスリン受容体(IR)チロシンキナーゼを阻害するために必要とされる濃度に関連して選択的(>500×)である。化合物Iは、米国特許第6235764号明細書に記載されている。
一般的特性
本発明の化合物Iは、表1に示した特徴を有する。実施形態は、化合物Iもしくはこの遊離塩基である式IIの化合物の3種の製剤を提供する。
化合物I製剤の組成物は、表1Bに列挙した。製剤材料は、表1Cに列挙した。
眼科用液剤
本発明は、水に類似する粘度を備える液剤として形成された化合物Iおよび/またはこの遊離塩基(式IIの化合物)の製剤を提供する。液剤には、医薬として許容される物質/賦形剤、例えば制限なく、シクロデキストリンが含まれる。こうして形成された液剤は、眼に局所投与するために適合する透明で無色の液剤である。
本発明の液剤は、活性物質の前眼部曝露を減少させる;これにより本発明の液剤は、液剤中活性物質の濃度増加および送達頻度の増加を可能にし、従って後眼部内での活性物質の高濃度の維持を促進する。
本発明の液剤は、約0.005%から約5.0%(w/v)の式(I)の活性物質もしくはこの医薬として許容される塩、例えば化合物Iを含む。一部の実施形態では、液剤中の化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)の濃度は、局所投与のためには、約0.005%から約0.01%、約0.01%から約0.05%、約0.05%から約0.1%、約0.1%から約0.2%、約0.2%から約0.3%、約0.3%から約0.4%、約0.4%から約0.5%、約0.5%から約0.6%、約0.6%から約0.7%、約0.7%から約0.8%、約0.8%から約0.9%、約0.9%から約1.0%、約1.0から約2.0%、約2.0から約3.0%、約3.0から約4.0%または約4.0から約5.0%(w/v)である。一部の実施形態では、液剤は、約0.005%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%もしくは約5.0%(w/v)の化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)を含む。
一部の実施形態では、製剤は、化合物Iの溶解度を改良するためにシクロデキストリンを含む。1もしくは4個の結合を通して結合された6から8個のデキストロース単位から形成されたオリゴ糖であるシクロデキストリンは、水もしくは水溶液(例えば、PBSバッファー中)に難溶性もしくは低溶解性を有する活性物質の溶解度を増加させる。シクロデキストリンは、疎水性活性物質と親水性錯体を形成する。
本発明の液剤中では、1つ以上のシクロデキストリンが使用される。本発明の製剤中で使用するためのシクロデキストリンの非限定的例は、例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ランダムメチル化−β−シクロデキストリン、エチル化−β−シクロデキストリン、トリアセチル−β−シクロデキストリン、パーアセチル化−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル−β−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、分岐β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ランダムメチル化−γ−シクロデキストリン、トリメチル−γ−シクロデキストリンまたはこれらの組み合わせである。
一部の実施形態では、シクロデキストリンを含む式IIの化合物または化合物Iの液剤は、透明で無色の液剤であり、水に類似する粘度を有する。本開示は、局所投与のための化合物Iおよび1つ以上のシクロデキストリンを含み、眼に局所投与される液剤を提供する。
本発明のシクロデキストリンを含む眼科用液剤は、選択された医薬賦形剤を眼科用液剤のための最適以下の濃度で含む。本発明の賦形剤は、例えば、ベンザルコニウムクロリド(BAK)およびNaClである。一部の実施形態では、眼科用液剤は、約0.001から約0.005%(w/v)のベンザルコニウムクロリド(BAK)を含む。BAK量は、本発明の必要に依存して変動する。
眼科用液剤は、例えば、制限されずに約0.005%から5.0%の化合物Iもしくはこの遊離塩基、約2から約25%のシクロデキストリン、例えば制限されずにヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)もしくはメチルシクロデキストリン(KLEPTOSE(R)HPB)および/またはスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(CAPTISOL(R))、約0.1から約0.7%の塩、例えば制限されずにNaClおよび/または約0.005%の抗菌剤、例えば制限されずにベンザルコニウムクロリド(BAK)を含む。本製剤は、化合物Iもしくはこの遊離塩基対シクロデキストリンを比率1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10もしくは1:10から1:20で含む。一部の実施形態では、シクロデキストリンを含む眼科用液剤は、トロメタミン(Tris、Tris(ヒドロキシメチル)アミノメタンもしくはTrisバッファーとしても公知である。)をさらに含む。一部の実施形態では、眼科用液剤は約1%のTrisを含む。
本実施形態の眼科用液剤には、例えば、制限されずに、約0.3%から約5.0%の化合物I(約3mg/mLから約50.0mg/mL)、約0.05%の一塩基性ナトリウムホスフェート一水和物、約2%のグリセリン;約0.4%の化合物I、約7%のHPβCD、約0.7%のNaCl、約0.005%のBAK;約0.4%の化合物I、約4%のHPβCD、約0.7%のNaCl、約0.005%のBAK;約0.4%の化合物I、約7%のHPβCD、約1%のトロメタミン、約0.4%のNaCl、約0.005%のBAK;および約0.6%の化合物I、約7%のHPβCD、約0.7%のNaCl、約0.005%のBAKが含まれる。約0.005%から約5.0%の濃度の化合物Iについては、シクロデキストリンは対応するモル比で存在する。
追加の眼科用液剤には、例えば、制限なく:約0.4%の式IIの化合物(遊離塩基)、約7.15%のHPβCD、約0.7%のNaCl;約0.1%の式IIの化合物(遊離塩基)、約1.79%のHPβCD、約0.85%のNaCl;約0.2%の式IIの化合物(遊離塩基)、約3.57%のHPβCD、約0.8%のNaCl;約0.6%の式IIの化合物(遊離塩基)、約10.72%のHPβCD、約0.6%のNaCl;約0.4%の式IIの化合物(遊離塩基)、約8.41%のHPβCD、約0.65%のNaCl;約0.4%の化合物I、約10.51のHPβCD、約0.65%のNaCl;約0.4%の式IIの化合物(遊離塩基)、約10.51%のHPβCD、約0.15%のNaCl、約1.0%のトロメタミン(Tris);および/または0.1%の式IIの化合物(遊離塩基)、約2.63%のHPβCD、約0.8%のNaCl;約0.6%の化合物I(遊離塩基として)、約15.77%のHPβCD、約0.37%のNaClが含まれる。約0.005%から約5.0%の濃度の化合物IIについては、シクロデキストリンは対応するモル比で存在する。
一部の実施形態では、化合物Iの眼科用液剤は、約1.0%から約25%のシクロデキストリンを含む。例えば制限されずに、化合物I製剤は、約2.0%から約3.0%のHPβCD、約3.0%から約5.0%のHPβCD、約5.0%から約10%のHPβCDもしくは約10%から約25%のHPβCDを含む。
追加の実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基の眼科用液剤は、例えば、制限されずに:約8.41%のKLEPTOSE(R)HPBおよび約0.142%のホスフェート;約8.9%のKLEPTOSE(R)HPBおよび約0.142%のホスフェート;約4.88%のCAPTISOL(R)および約0.142のホスフェート;および/または約4.88%のCAPTISOL(R)および約0.122%のホスフェートとして調製される。
一部の実施形態では、シクロデキストリンを含む眼科用液剤は、透明および無色であり、極めて粘性、中等度に粘性である、または水に類似する粘度を有する。
一部の実施形態では、本発明の眼科用液剤は、約40℃以下で約4.5から約7.5のpH値を有する。
例えば、本発明の眼科用液剤は、約40℃以下で約6.0のpH値を有する。
一部の実施形態では、本発明の眼科用液剤は、約40℃以下で約5.0から約7.0のpH値を有する。
本開示の眼科用液剤は、通常組み込まれる様々な添加物、例えば緩衝剤(例えば、ホスフェートバッファー、ボレートバッファー、シトレートバッファー、タルトレートバッファー、アセテートバッファー、アミノ酸、ナトリウムアセテート、ナトリウムシトレートなど)、等張化剤(例えば、糖類、例えばソルビトール、グルコースおよびマンニトール、多価アルコール、例えばグリセリン、濃縮グリセリン、PEGおよびプロピレングリコール、塩、例えばナトリウムクロリドなど)、保存料もしくは防腐剤(例えば、ベンザルコニウムクロリド、ベンザトニウムクロリド(Benzatkonium chloride)、p−オキシベンゾエート、例えばメチルp−オキシベンゾエートもしくはエチルp−オキシベンゾエート、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール、ソルビン酸もしくはこの塩、チメロサール、クロロブタノールなど)、可溶化酸もしくは安定剤(例えば、水溶性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、界面活性剤、例えばチロキサポール、ポリソルベートなど)、pH修飾剤(例えば、塩酸、酢酸、リン酸、ナトリウムヒドロキシド、カリウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドなど)、増粘剤(例えば、HEC、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、HPMC、カルボキシメチルセルロースおよびこれらの塩)、キレート剤(例えば、ナトリウムエデテート、ナトリウムシトレート、縮合ナトリウムホスフェートなど)を含有する。
本開示のシクロデキストリンを含む眼科用液剤は、さらに追加の賦形剤、例えば制限されずに約0.5%から約3%の界面活性剤および乳化剤、例えば限定されずにポリソルベート80もしくはこの同等賦形剤;約0.05から約0.4%のアルキルアリールポリエーテルアルコールタイプの非イオン性液体ポリマー、例えば制限されずにチロキサポール;および/または0.05%から約0.6%の親水性非イオン性界面活性剤、例えば制限されずにポロキサマー、例えばポロキサマー407を含む。
様々な眼組織中の濃度−眼科用液剤として送達された
シクロデキストリンを含む眼用液剤は、後眼部での本発明の活性物質のバイオアベイラビリティを改善する。理論によって制限されずに、1つの実施形態では、シクロデキストリンを含む製剤は、活性物質の角膜曝露、例えば化合物Iの曝露を等モルの点眼ゲル製剤を用いた角膜曝露に比較して約5分の1から15分の1に低下させる、透明で無色の液剤を形成する。
理論によって制限されずに、1つの実施形態では、シクロデキストリンを含む眼科用液剤は、局所眼投与中の化合物Iの治療指数を上昇させる。投与後、シクロデキストリン−化合物Iの親水性錯体は角膜では薬理学的に不活性である。理論によって制限されずに、一部の実施形態では、シクロデキストリン−化合物I錯体は、化合物Iの角膜忍容性を増加させる。理論によって制限されずに、一部の実施形態では、末梢血管構造での化合物Iからのシクロデキストリンの自然解離は標的組織、例えば脈絡膜もしくは網膜でのバイオアベイラビリティを増加させる。
一部の実施形態では角膜毒性の原因となる化合物Iの他の製剤とは異なり、類似濃度の化合物Iを含むシクロデキストリンベースの眼科用液剤は、角膜曝露を低下させ、これにより治療指数および患者にとっての対応する利点を増加させる。1つの実施形態では、シクロデキストリンベースの化合物Iの液剤の使用は、等モル濃度の点眼ゲルと比較して角膜曝露のおよそ10分の1の減少を提供する。一部の実施形態では、シクロデキストリンベースの化合物Iの液剤は、化合物Iの角膜曝露を5分の1、20分の1、30分の1、40分の1または50分の1に減少させる。1つの実施形態では、シクロデキストリンベース液剤としての約0.005%から約5.0%の化合物Iの1から90日間または3から9カ月間の局所的眼投与は、角膜、脈絡膜および/または網膜での有害作用もしくは毒性作用を全く有していない。さらに他の実施形態では、シクロデキストリンベース液剤としての約0.6%から約5.0%の化合物Iの1から90日間の局所的眼投与は、角膜、脈絡膜および/または網膜での有害作用もしくは毒性作用を全く有していない。
角膜曝露の低下は、後眼部、例えば網膜もしくは脈絡膜での活性物質のバイオアベイラビリティおよび治療指数の上昇と関連している。例えば、シクロデキストリンを含む約0.1%から約5.0%の化合物I製剤を少なくとも30日間または60日間を超えて眼に局所投与された場合に、角膜または眼の他の部分への活性物質もしくは適合する担体に帰せられる毒性作用は全く観察されない。
1つの実施形態では、約0.4%(約4mg/mL)の化合物Iもしくはこの遊離塩基およびシクロデキストリンを含む製剤が眼に局所投与された場合は、中心脈絡膜中濃度は約0.2μMから約0.9μMであり、活性物質の中心網膜中濃度は約0.02μMから約0.4μMであり、活性物質の眼房水中濃度は約0.003μMから約0.009μMであり、活性物質の角膜中濃度は6μMから30μMである。製剤中で使用されるシクロデキストリンは、例えば、制限されずに、KLEPTOSE(R)HPBまたはCAPTISOL(R)である。
一部の実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基のシクロデキストリンベース液剤は、角膜での濃度を減少させながら、中心脈絡膜および中心網膜での活性物質のバイオアベイラビリティを増加させる。一部の実施形態では、シクロデキストリンの存在下での化合物Iもしくはこの遊離塩基の局所送達は、角膜中濃度を等モル濃度の点眼ゲルの角膜中濃度に比較して約5分の1から約15分の1に減少させる。
理論によって制限されずに、一部の実施形態では、後眼部バイオアベイラビリティを増加させながら不良な眼忍容性を回避できるように角膜薬物曝露を減少させる複合効果は、治療指数および対応する患者にとっての利点を増加させる。
一部の実施形態では、化合物Iの曝露期間は、1から90日間である。一部の実施形態では、用法・用量は、1から90日間にわたる被験者への化合物Iを含む製剤の数コースの局所眼投与を含む。例えば、用法・用量は、1から90日間にわたる製剤の1日1回、1日2回、1日3回または1日4回の投与を含んでいる。例えば、用法・用量は、90日間まで隔日(即ち、第1、3、5、7日など)の製剤の1回、2回、3回もしくは4回の投与を含む。例えば、用法・用量は、第1日に1回、第2日から第90日に1回もしくは2回の投与を含む。例えば、用法・用量は、第1日に1回、2回、3回もしくは4回、この後は第2から第90日に1日1回の投与を含む。例えば、用法・用量は、第1日に1回、2回、3回もしくは4回、この後は90日間まで隔日(即ち、第1、3、5、7日など)の製剤の1回、2回、3回もしくは4回の投与を含む。例えば、1つの用法・用量は、1、2、3、4もしくは5連続日にわたり1日1回もしくは1日2回を含む。1日2回もしくは3回の用法・用量のためには、被験者は、第1日および第4日におよそ約4、6もしくは8時間を空けて化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。また別の実施形態では、被験者は、4連続日にわたりおよそ約4、6もしくは8時間空けて化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。一部の実施形態では、被験者は、5連続日にわたり1もしくは2回の化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。さらに他の実施形態では、被験者は、5から90連続日にわたり1もしくは2回の化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。一部の実施形態では、被験者は、少なくとも25連続日にわたり1もしくは2回の化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。1つの実施形態では、被験者は少なくとも90連続日以上にわたり1もしくは2回の局所的眼投与を受ける。
例えば、約2mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約3mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約3mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約4mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約4mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約5mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約5mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約6mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約6mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。1から90日間にわたる用法・用量は、上記の段落に記載した連続日または隔日を含む用法のいずれかであってよい。
本開示は、30から90日間または4から6カ月間にわたり局所投与された場合に良好に忍容されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD、KLEPTOSE(R)HPB)またはCAPTISOL(R)を含有するシクロデキストリンベース液剤を提供する。一部の実施形態では、約1.0%から約25%のHP−β−CDまたはCAPTISOL(R)を含有する液剤中の約0.005%から約5.0%(w/v)の化合物Iもしくはこの遊離塩基の1日1回もしくは2回の投与は、被験者に良好に忍容される。
一部の実施形態では、式(II)もしくは化合物Iの製剤は、被験者の片眼または両眼に投与される。例えば、本開示の約0.2%から約0.6%(w/v)の式(II)の化合物または約0.1%から0.7%(w/v)の化合物Iを含む製剤は、1日1回(QD)または1日2回(BID)、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、式(II)の化合物もしくは化合物Iは、約1:8の比率で錯化剤、例えばシクロデキストリン(例えば、KLEPTOSE(R)HPB(%))を用いて錯体形成されるが、このとき製剤には約2%から13%(w/v)のシクロデキストリン(例えば、KLEPTOSE(R)HPB(%))が加えられる。製剤は、さらに約0.1%から約0.2%のバッファー、例えば10mMのホスフェートバッファーを含む。製剤の所望のオスモル濃度は、このオスモル濃度を達成するために十分な量の塩、例えばナトリウムクロリドを加えることによって達成される約200から約300mOsmである。製剤のpH値は、約40℃以下で約6.0である。1から90日間にわたる用法・用量は、上記の段落に記載した連続日または隔日を含む用法のいずれかであってよい。
眼科用懸濁剤
本実施形態は、化合物および医薬として許容される賦形剤を含む化合物Iの懸濁剤を提供する。例えば、化合物I懸濁剤には、制限されずに緩衝剤、酸および塩基、例えば制限されずにHClおよびNaOHが含まれる。1つの実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基の懸濁剤には、緩衝剤、例えば、制限されずにトロメタミン(Tris)が含まれる。式IIの化合物もしくは化合物Iのトロメタミンベース懸濁剤は、眼に局所投与するために有用である。
本発明の懸濁剤は、約0.005%から約5.0%(w/v)の式(I)、(II)の活性物質またはこれらの医薬として許容される塩、例えば化合物Iを含む。懸濁剤中の化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)の濃度は、局所投与のためには、約0.005%から約0.01%、約0.01%から約0.05%、約0.05%から約0.1%、約0.1%から約0.2%、約0.2%から約0.3%、約0.3%から約0.4%、約0.4%から約0.5%、約0.5%から約0.6%、約0.6%から約0.7%、約0.7%から約0.8%、約0.8%から約0.9%、約0.9%から約1.0%、約1.0から約2.0%、約2.0から約3.0%、約3.0から約4.0%または約4.0から約5.0%(w/v)である。一部の実施形態では、懸濁剤は、約0.005%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%もしくは約5.0%(w/v)の化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)を含む。
眼科用懸濁剤は、通常組み込まれる様々な添加物、例えば緩衝剤(例えば、ホスフェートバッファー、ボレートバッファー、シトレートバッファー、タルトレートバッファー、アセテートバッファー、アミノ酸、ナトリウムアセテート、ナトリウムシトレートなど)、等張化剤(例えば、糖類、例えばソルビトール、グルコースおよびマンニトール、多価アルコール、例えばグリセリン、濃縮グリセリン、PEGおよびプロピレングリコール、塩、例えばナトリウムクロリドなど)、保存料もしくは防腐剤(例えば、ベンザルコニウムクロリド、ベンザトコニウムクロリド(Benzatkonium chloride)、p−オキシベンゾエート、例えばメチルp−オキシベンゾエートもしくはエチルp−オキシベンゾエート、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール、ソルビン酸もしくはこの塩、チメロサール、クロロブタノールなど)、可溶化酸もしくは安定剤(例えば、シクロデキストリンおよびこれらの誘導体、例えば、水溶性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、界面活性剤、例えばチロキサポール、ポリソルベートなど)、pH修飾剤(例えば、塩酸、酢酸、リン酸、ナトリウムヒドロキシド、カリウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドなど)、増粘剤(例えば、HEC、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、HPMC、カルボキシメチルセルロースおよびこれらの塩)、キレート剤(例えば、ナトリウムエデテート、ナトリウムシトレート、縮合ナトリウムホスフェートなど)を含有する。
本発明の眼科用懸濁剤は、選択された医薬賦形剤を眼科用液剤のための最適以下の濃度で含む。本発明の賦形剤には、例えば、制限されずにナトリウムホスフェート一水和物、グリセリンおよびベンザルコニウムクロリド(BAK)が含まれる。
一部の実施形態では、約0.005%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%もしくは約5.0%(w/v)の式(I)、(II)もしくはこの医薬として許容される塩、例えば化合物Iは、トロメタミン水溶液である。化合物Iもしくはこの遊離塩基のトロメタミンベース懸濁剤は、追加のバッファーおよび賦形剤、例えば、制限されずにホスフェートバッファーを含む。約0.2%から約1.0%のTris中で調製された懸濁剤は、さらに1つ以上の界面活性剤および乳化剤、例えば限定されずに、ポリソルベート80もしくはこの同等賦形剤;1つ以上のアルキルアリールポリエーテルアルコールタイプの非イオン性液体ポリマー、例えば制限されずにチロキサポール;および/または1つ以上の親水性非イオン性界面活性剤、例えば制限されずに、ポロキサマー、例えばポロキサマー407を含む。
本開示は、賦形剤、例えば制限されずにTrisバッファー中のポビドン、ポリソルベート80(PS80)、ポリエチレングリコール(PEG)400、チロキサポール、ポロキサマー、グリセリンおよびBAKの存在下で調製された本発明の作用物質の懸濁剤を提供する。
1つの実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基の懸濁剤は、約0.1から0.5%のホスフェートバッファーを含む。一部の実施形態では、トロメタミンベース懸濁剤のpHは、pH4から7、例えばpH6.0である。一部の実施形態では、Tris中で調製された懸濁剤は、約0.5%から約2%のポリソルベート80、約0.05から約0.2%のチロキサポール;および/または約0.05%から約0.4%のポロキサマー407をさらに含む。
一部のこのような実施形態では、本発明の懸濁剤は、さらに約0.01から約1%、または約1から約2.0%(w/v)のグリセリンを含む。特定の実施形態では、懸濁剤は約2%(w/v)のグリセリンを含む。
一部の実施形態では、本発明の懸濁剤は、約0.001から約0.005%(w/v)のベンザルコニウムクロリド(BAK)を含む。BAK量は、あらゆる観察された有害作用に依存して変動する可能性がある。BAKは、眼表面上の細胞を損傷させる可能性があり、このため、製剤中の量は、眼細胞層の完全性を損なわせて毒性を増加させることなく、化合物Iの眼浸透の最適レベル達成するために変動させられてよい。
一部の実施形態では、懸濁剤は、場合によりバッファーを含む。バッファーは、使用される場合は、例えば塩基性ナトリウムモノホスフェート、リン酸およびTrisバッファーであってよい。懸濁剤中の化合物Iの濃度は、約0.005%から約5.0%(w/v)である。追加のバッファーを使用せずに調製された懸濁剤は、約0.005%のBAKおよび約2%のグリセリンをさらに含み、pH6.0を備える。また別の実施形態では、追加のバッファーを使用せずに調製された懸濁剤は、約1%のポリソルベート80、約0.1%のチロキサポール、約0.2%のポロキサマー407、約0.005%のBAK、約2.0%のグリセリンを含み、pH6.0を備える。
リン酸/Tris中で調製された懸濁剤中では、懸濁剤は、約0.14%のリン酸、約0.2%のTrisベース、約1.0%のポリソルベート80、約0.005%のBAK、約2.0%のグリセリンを含み、pH6.0を備える。1つの実施形態では、懸濁剤はさらに約0.2%のチロキサポールを含む。懸濁剤のpHは、約pH6.0から7.2の間で変動する。
トロメタミン(Tris)単独中で調製された懸濁剤は、約1%のポリソルベート80、約0.1%のチロキサポール、約0.2%のポロキサマー407、約0.6%のTris、約0.005%のBAKおよび約2.0%のグリセリンを含み、pH6.0を備える。また別の実施形態では、Tris中で調製された懸濁剤は、約1%のTris、約0.45%のNaCl、約0.025%のEDTA、約0.2%のHPMC、約0.1%のポリソルベート80、約0.005%のBAKを含み、pH6.0を備える。これらの懸濁剤中では、1NのHClおよび/または1NのNaOHが適切なpHへ滴定するために使用される。
本発明の懸濁剤は、約0.005%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%もしくは約5.0%の式(I)、(II)の活性物質もしくはこれらの医薬として許容される塩、例えば化合物Iおよび約0.01%から約0.05%、約0.05から約0.09%もしくは約0.09から約0.2%(w/v)の一塩基性ナトリウムホスフェート一水和物および/または約0.3%から約1.0%のTrisを含む。特定の実施形態では、懸濁剤は約0.14%(w/v)もしくは約0.2%w/vのTrisバッファーを含む。追加の実施形態では、懸濁剤は、約0.6%のTrisもしくは約1.0%のTris中で調製される。当分野において周知の他の同等バッファー系もまた本発明の懸濁剤中で使用される。1つの実施形態では、式IIの化合物もしくは化合物Iは、約0.4%の活性物質、約5%のCremophor RH40、約2.0%のグリセリンおよび約0.005%のBAKとして調製される。
一部の実施形態では、本発明の懸濁剤は、約40℃以下で約4.0から7.5のpH値を有する。
例えば、本発明の懸濁剤は、約40℃以下で約6.0のpH値を有する。
一部の実施形態では、本発明の懸濁剤は、約40℃以下で約5.0から約7.0のpH値を有する。
様々な眼組織中の濃度−眼科用懸濁剤として送達された
一部の実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基の懸濁剤は、点眼ゲル形(以下で考察する。)で送達される活性物質の濃度と比較して中心脈絡膜および中心網膜で類似濃度の活性物質を提供する。
一部の実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基のTrisベース懸濁剤は、角膜での濃度を減少させながら、中心脈絡膜および中心網膜での活性物質のバイオアベイラビリティを増加させる。一部の実施形態では、Trisベース中で調製された化合物Iもしくはこの遊離塩基の局所送達は、角膜中濃度を点眼ゲルとして送達された等モルの化合物Iもしくはこの遊離塩基の角膜中濃度と比較して約5分の1から10分の1、10分の1から20分の1、20分の1から30分の1、30分の1から40分の1または約50分の1から100分の1まで減少させる。
受容体チロシンキナーゼ(RTK)、例えばVEGFの阻害を増加させられるように後眼部バイオアベイラビリティを維持もしくは増加させながら不良な眼忍容性を回避できるように角膜薬物曝露を減少させる複合効果は、治療指数および患者にとっての対応する利点を有意に増加させる。
本発明の約0.005%から約5.0%(w/v)の化合物I懸濁剤の30から90日間または4から6カ月間にわたる1日1回もしくは2回の投与は、眼において良好に忍容される。
点眼ゲル
一部の実施形態では、本発明の眼科用組成物もしくは製剤は、点眼ゲルとして調製される。点眼ゲル製剤には、界面活性剤添加物を必要とせずに約0.005%から約2.0%の化合物Iで必要とされる緩衝能力および自由流動性のろ過可能な製剤を提供するために約0.05%以下の一塩基性ナトリウムホスフェート一水和物が含まれる。
本発明の点眼ゲル製剤は、約0.005%から約2.0%(w/v)の式(I)、(II)の活性物質またはこれらの医薬として許容される塩、例えば化合物Iを含む。点眼ゲル中の化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)の濃度は、局所投与のためには、約0.005%から約0.01%、約0.01%から約0.05%、約0.05%から約0.1%、約0.1%から約0.2%、約0.2%から約0.3%、約0.3%から約0.4%、約0.4%から約0.5%、約0.5%から約0.6%、約0.6%から約0.7%、約0.7%から約0.8%、約0.8%から約0.9%、約0.9%から約1.0%、または約1.0%から約2.0%(w/v)である。一部の実施形態では、点眼ゲルは、約0.005%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%もしくは約2%(w/v)の化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)を含む。
一部の実施形態では、本発明の点眼ゲル眼科用組成物は、等張化剤としてグリセリンを含む。本発明の一部の実施形態は、マンニトールを含む眼科用組成物を提供する。化合物Iの溶解度におけるあらゆる変化を防止するための量および約2.0から約2.5%のグリセリンレベルにあるグリセリンもしくはマンニトール含量は、ホスフェート濃度に依存して約225から約300mOsm/kgのオスモル濃度を生じさせる。追加の実施形態では、グリセリンは点眼ゲル眼科用組成物の約2%であり、ホスフェートは約0.05%である。本発明のグリセリンおよびホスフェートの濃度は、眼科用組成物の等張化剤レベルが約240mOsm/kgである量にある。
本発明の点眼ゲル眼科用組成物は、ベンザルコニウムクロリド(BAK)を含む。一部の実施形態では、BAK含量は、細菌汚染に対し眼科用組成物を保存するために十分な約0.005%である。本発明の一部の実施形態では、BAKは、無菌単回使用製品中の眼科用組成物を使用するためには必要とされない。
化合物Iの点眼ゲル眼科用製剤には、約0.005%から約2.0%の化合物Iもしくはこの遊離塩基、約0.05%のナトリウムホスフェート、張性調整剤としての約2%のグリセリン、保存料としての約0.005%のBAK、ビヒクルとしての水(精製水、即ち蒸留水もしくは脱イオン水)およびpHを6.0へ調整するためのナトリウムヒドロキシドが含まれる。1つの実施形態では、他の賦形剤は加えられない。
本発明の点眼ゲルは、約0.005%から約2.0%の式(I)、(II)の活性物質もしくはこれらの医薬として許容される塩、例えば化合物I、ならびに約0.01%から約0.05%、約0.05から約0.09%または約0.09から約0.2%(w/v)の一塩基性ナトリウムホスフェート一水和物を含む。特定の実施形態では、点眼ゲルは、約0.05%、約0.2%もしくは約0.2%w/vの一塩基性ナトリウムホスフェート一水和物バッファーを含む。当分野において周知の他の同等バッファー系もまた本発明の点眼ゲル中で使用される。1つの実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基は、約0.4%から約2.0%の活性物質、約5%のCremophor RH40、約2.0%のグリセリンおよび約0.005%のBAKとして調製される。
1つの実施形態では、化合物Iの点眼ゲルは、約0.3%から約2.0%(3から20mg/mL)の化合物I、約0.05%から約0.2%のナトリウムホスフェートおよび約2%のグリセリンを含む。組成物のpHは、約pH5.0から7.0である。
本開示は、賦形剤、例えば制限されずにホスフェートバッファー中にポビドン、ポリソルベート80(PS80)、ポリエチレングリコール(PEG)400、チロキサポール、ポロキサマー、グリセリンおよびBAKの存在下で調製された本発明の作用物質の点眼ゲルを提供する。
点眼薬
本明細書で開示されるのは、患者にとって医薬として許容され、便宜的で安全で数分間で作用が開始される薬物送達の形態である、点眼薬として開示された化合物を含む製剤である。米国連邦政府規制に従って療法に使用される標準点眼薬は、無菌であり、約6.0から7.4のpHを有し、2回以上使用しなければならない場合は保存料を含有するが、開封後には通常は1カ月間の限定された保管寿命を有する。点眼薬が無菌の単回使用専用単位用量ディスペンサーに包装される場合は、保存料を除外することができる。
点眼薬製剤の1つの方法は、開示した化合物の最も純粋形(例えば、99%の純度より高い。)を含み、生理学的pHおよびオスモル濃度を調整するために化合物とバッファーおよび等張性調整剤とを混合する。pHを維持または調整するための緩衝剤の例には、アセテートバッファー、シトレートバッファー、ホスフェートバッファーおよびボレートバッファーが含まれるがこれらに限定されない。張性調整剤の例は、ナトリウムクロリド、マンニトールおよびグリセリンである。一部の実施形態では、他の医薬として許容される成分もまた加えられる。
調製された液剤は、次に各々が単位投与のために適合する複数の別個の無菌ディスポーザブルカートリッジ、または単位投与のための単一カートリッジどちらかの中に等分される。このような単一のディスポーザブルカートリッジは、容器が容器の一端でこれから容器内容物を分注するために長手軸に向かって半径方向にスクイーズ可能な側壁を有する容器を備える、例えば、円錐形もしくは円筒形の特定容量ディスペンサーである。
本開示は、例えば、アイドロッパーを備えるプラスチックボトルとしての多用量形もしくは単一用量形に包装された眼科用点眼薬を提供する。多用量形製剤中では、容器を開封した後の細菌汚染を防止するために保存料が必要とされる。適切な保存料には、ベンザルコニウムクロリド、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、二ナトリウムエデテート、ソルビン酸、ポリクオタニウム−1または当業者には公知の他の作用物質が含まれるがこれらに限定されず、これらの全部が本発明において使用するために企図されている。このような保存料は、典型的には、0.001から約1.0%(w/v(重量/容積))のレベルで使用される。
理論によって拘束することを望まなくとも、点眼薬中の本発明の製剤は、薬物のパルス式進入を提供する。化合物Iが後眼部にアクセスするまでの経路は、角膜を通過してまっすぐに広がり、その後眼房水、硝子体液、網膜および最終的には脈絡膜を通過して広がるというものではない。むしろ、化合物I化合物は、局所滴下後、眼球を通過するのではなく眼球周囲の周方向経路を使用して顕著な後眼部のバイオアベイラビリティを達成する。
所定の臨床状態では、点眼液剤/懸濁剤は、他の成分の刺激性を弱めて臨床応答を促進するために、他の医薬物質を用いて調製できる。このような作用物質には、血管収縮剤、例えばフェニレフリン、オキシメタゾリン、ナファゾリンもしくはテトラヒドロゾリン;マスト細胞安定剤、例えばオロパタジン;抗ヒスタミン剤、例えばアゼラスチン;抗生物質、例えばテトラサイクリン;ステロイド性抗炎症薬、例えばベタメタゾン;非ステロイド性抗炎症薬、例えばジクロフェナク;免疫調節剤、例えばイミキモドもしくはインターフェロン;ならびに抗ウイルス薬、例えばバラシクロビル、シドフォビルおよびトリフルリジンが含まれるがこれらに限定されない。上述した目的のために使用される用量は、様々であるが、目における不快感、痒み、刺激または疼痛を抑制するための十分量にある。本組成物が局所投与される場合は、化合物の「医薬上有効量」は、一般に1日1から4回、単位用量として投与される1から4滴を用いて、0.05mg/mLから約10mg/mLの濃度範囲内にある。眼薬物送達の最も一般的な方法は、角膜中への滴剤の滴下である(即ち、「点眼薬」)。
重要な要件は、製剤が無菌であること、および無菌環境において生成されることである。眼科用液剤/懸濁剤中で使用するために理想的な開示された化合物は、正常の眼pHおよび張性で水性媒体中で可溶性および/または混和性でなければならない。さらに、本明細書に開示した化合物は、安定性で非毒性の持効性でなければならず、ならびに瞬きおよび流涙による薬物濃度の希釈を無効にするために十分に強力でなければならない。
剤形
本発明の製剤は、眼科用に適合する可能性がある。1つの実施形態では、製剤は液剤である。本発明の液剤は、透明、無色、無菌、等張性、緩衝自由流動水性液体製剤であってよい。薬物製品はおよそ6.0のpHを有し、+5℃で保存されてよい。薬物製品は、ドロッパーのチップおよびキャップを備える半透明の眼科用ディスペンサーボトルからなる容器栓システム内で提供されてよい。
一部の実施形態では、化合物I眼科用液剤もしくは懸濁剤の臨床濃度は、約0.1mg/mL以下、約0.2mg/mL以下、約0.2から約1.0mg/mL、約0.3から約1.0mg/mL、約0.4から約1.0mg/mL、約0.5から約1.0mg/mL、約0.6から約1.0mg/mL、約0.7から約1.0mg/mL、約0.8から約1.0mg/mL、約0.9から約1.0mg/mL、約1.0から約2.0mg/mL、約2.0から約3.0mg/mL、約3.0から約4.0mg/mL、約4.0から約5.0mg/mL、約5.0から約6.0mg/mL、約5.0から約10.0mg/mL、約10から約20mg/mL、約20から約30mg/mL、約30から約40mg/mLまたは約40から約50mg/mLである。
本発明の1つの実施形態では、化合物の強度は、約0.005%から約5.0%(約0.5から約50mg/mL)である。病理的脈絡膜および網膜血管新生に対する本発明の製剤の所望の薬理学的活性(もしくは濃度)は、約0.005%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%もしくは約5.0%(w/v)の化合物Iを含有する製剤の眼投与後に達成される。本発明は、最適用量(例えば約0.005%から約5.0%)での局所的眼投与後に、中心脈絡膜標的組織中で薬理学的活性濃度が達成されて維持される。1つの実施形態では、活性物質(式IIもしくは化合物I)は約0.005から約5.0%(w/v)の濃度で調製され、60連続日を超えて1眼当たり1日1回もしくは2回投与される。局所投与後に観察される血漿濃度は、全身性毒性を生成すると予期されるレベルより実質的に低い。
一部の実施形態では、化合物Iは、約100nM未満のIC50を備える、数種の血管新生促進性成長因子受容体に対するチロシンキナーゼ活性の強力な阻害を示す(表3を参照)。化合物Iはさらに、高親和性VEGF受容体、例えばVEGFR−1/Flt−1も遮断するが、しかし効力は低い(約122nM(69.41ng/mL)のIC50)。
VEGFRの阻害は、血管透過性を減少させるため、およびさらなる新血管成長を防止するために必須であると思われるが、他の成長因子シグナル伝達経路(例えば、PDGFおよびアンギオポエチン/Tie2)の阻害とのVEGFシグナル伝達の同時阻害は、独特の治療転帰と結び付いている可能性がある。シグナル伝達経路をより広範囲に阻害することの治療転帰は、後眼部における新規に確立された病理的血管の退行に寄与する可能性がある。
一部の実施形態では、約300nM(約170.67ng/mL)の化合物IはVEGFR−2キナーゼ機能を阻害する(表4を参照)。FGFR1−3、Tie−2およびEphB−4を含む類似した一連の血管新生促進性成長因子受容体の実質的な遮断もまた観察されている。予想外の所見は、約300nMの濃度の化合物IがVEGFR−2キナーゼ機能を阻害することであり、これは、5日間の局所的眼送達後の中心脈絡膜中および網膜中で見出される典型的範囲内に含まれる。
薬剤物質および薬物製品の概説
薬物製品:臨床試験用の化合物I眼科用製剤は、0.05%から1.0%の用量強度で(化合物Iとして)製造される。一部の実施形態では、製剤中の化合物Iの用量は、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.6%、0.8%もしくは1.0%である。化合物I眼科用製剤(液剤もしくは懸濁剤)は、臨床設定における眼への連日投与、単回使用、局所投与のためである。有効成分に加えて、一部の実施形態では、薬物製品は保存料としての約0.005%のBAK、ビヒクルとしての精製水を含有し、ナトリウムヒドロキシドを用いてpH6.0へpH調整される。
ナトリウムホスフェートベースの点眼ゲル
ナトリウムホスフェートベース製剤(表6に列挙されている。)中の化合物Iの眼科的利点は、例えばナトリウムホスフェートなどのバッファー中でのAPIの自己ゲル化特性の結果として生じる。透明溶液からの化合物Iの自己形成性チキソトロープゲルの自然形成は、ナトリウムホスフェート中の活性物質濃度を増加させることによって形成される。ホスフェートバッファー中の活性物質濃度が超飽和状態に達すると、化合物Iの不溶性粒子がゲル内で観察される。
当分野の現在の状況は、眼の表面への増加した粘度を備えるゲルの投与は角膜滞留時間を増加させると予測している。増加した角膜滞留時間は、次に眼薬物吸収を促進する。結果として、粘性ゲルの眼内薬物濃度は、例えば水様液剤などの非粘性製剤と比較して増加するであろう。粘性を増加させる1つの方法は様々な粘度増強性賦形剤、例えば実質的に局所的眼投与後の様々な薬剤物質の増加した眼内吸収を達成する、例えばカルボキシメチルセルロースを使用することである。本開示は、任意の粘度増強性賦形剤の非存在下で形成される化合物Iのチキソトロープゲルを提供する。例えば、化合物Iが単純バッファー、例えばナトリウムホスフェート内に溶解させられると、チキソトロープゲルが形成される。粘度増強性賦形剤を使用せずに形成されるチキソトロープゲルは、点眼ゲルとして調製される。
本開示は、後眼部眼組織への化合物Iの用量依存性および投与頻度依存性送達を提供する。
本開示の点眼ゲル製剤(表6に列挙されている。)は、数種の態様、例えば有効成分濃度、ナトリウムホスフェート濃度、等張化剤(グリセリン)もしくは保存料(ベンザルコニウムクロリド/BAK)、可溶化界面活性剤(ポリソルベート80、チロキサポールおよび/またはポロキサマー)の存在もしくは非存在およびpHにおいて相互に異なる。
トロメタミンベース懸濁剤
本開示は、トロメタミンベース製剤中の化合物Iの懸濁剤を提供する。一部の実施形態では、トロメタミンベース製剤中の化合物Iの懸濁剤は、不溶形にある95%以上の活性薬剤物質を有する。この特徴は、点眼ゲル(活性物質の濃度が増加するため完全には溶解状態ではない点眼ゲル(ゲル))中またはシクロデキストリンベース製剤中において可溶性もしくは半溶解性状態の化合物Iから識別可能である。化合物Iのトロメタミンベース製剤は、活性物質濃度が増加するにつれて増加した濁度を示す。可溶性および不溶性活性物質成分の組み合わせである化合物I懸濁剤の局所用滴剤の眼への投与は、安全性/忍容性および有効性の両方に関して有益である。
本開示は、様々な血管新生促進性RTKのための10から1000×の細胞IC50の濃度で標的組織に送達されるトロメタミンベース懸濁剤中の化合物Iを提供する。例えば、表7を参照されたい。
局所化合物Iの角膜安全性および忍容性は、角膜表面に適用された可溶性(不溶性とは対照的に)活性物質の量および結果として生じる角膜組織中濃度の直接的結果である。一部の実施形態では、トロメタミンベース懸濁剤の局所眼投与を受ける被験者は、ナトリウムホスフェートベース点眼ゲルの等モル製剤と比較して、製剤中のより高レベルの活性物質濃度まで忍容することができる。
本開示は、トロメタミンベース懸濁剤の投与後の後眼部内での化合物Iの眼バイオアベイラビリティを提供する。後眼部内での化合物Iの眼バイオアベイラビリティは、投与された薬剤の総量(不溶性+可溶性、例えば表7を参照)に直接的に比例する。不溶性薬物粒子は前眼部組織で容易に使用することはできないが、化合物Iの固有および独特の生理化学的特性は不溶性および可溶性両方の成分が例えば脈絡膜および網膜などの後眼部組織への進入することを可能にする。結果として、トロメタミンベース懸濁剤を用いると、同等量の活性物質を含有する点眼ゲル製剤を用いて達成された薬物濃度より一層高い薬物濃度が達成される。従って、トロメタミンベース懸濁剤は、a)改良された角膜忍容性およびb)後眼部、特に新生血管(湿性)AMDを治療するための主要標的組織である脈絡膜への増加したバイオアベイラビリティを提供する。
シクロデキストリンベース液剤
1から4つの結合を通して結合された6から8デキストロース単位から製造された環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(α−、β−およびγ−CD)は、これらが相対的不溶性薬物のための可溶化剤として機能する能力のために周知である。Stella & He,Cyclodextrins,Toxicol.Pathol.,36:30−42(2008)を参照されたい。
一部の実施形態では、1:6以上のモル比にある2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD、KLEPTOSE(R)HPBとしても公知)または1:2以上の比にあるβでのスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(SBE−β−CD、CAPTISOL(R)としても公知)は、提案された臨床製剤、化合物Iもしくはこの遊離塩基の眼科用液剤中で0.1から1.0%の化合物Iの臨床用量強度を満たす溶解度を提供する。
一部の実施形態では、化合物Iもしくはこの遊離塩基のシクロデキストリンベース液剤は、活性物質の溶解度を改良して一様な液剤を達成するだけでなく、局所的眼投与後に、さらに後眼部での活性物質の治療指数が有意に増加した新規で以前には観察されなかった特徴も有する。本開示の化合物Iの液剤は前眼部曝露を減少させ、これにより液剤中の有効成分の濃度の増加および送達頻度の増加をもたらし、高い後眼部濃度を維持させる。これらの有益な特性はどちらも、シクロデキストリンの疎水性薬物との親水性錯体を形成する公知の特性に関連している。Stella & He,Cyclodextrins,Toxicol.Pathol.,36:30−42(2008)を参照されたい。化合物Iもしくはこの遊離塩基を用いて調製すると、シクロデキストリンは水様性粘性を示した透明で無色の液剤を形成した。局所的眼投与後に、化合物I/シクロデキストリン錯体は、薬理学的に不活性および代謝的に不活性である外観を有する。化合物I/シクロデキストリン錯体はシクロデキストリンが活性物質から自然に解離するまで角膜忍容性を付与し、従って後眼部、例えば脈絡膜中および網膜中での意図された作用部位で高濃度の化合物Iを利用可能にする。
一部の実施形態では、化合物Iのシクロデキストリンベース液剤は、類似の薬物濃度での滴下ゲル製剤に比較して化合物Iの角膜曝露を低下させる。化合物Iのシクロデキストリンベース液剤の使用は、点眼ゲルの等モル製剤の投与と比較して角膜中濃度における約10分の1の減少を提供する。一部の実施形態では、シクロデキストリンベース液剤としての約0.2から2.0%、例えば約0.6%の化合物Iの20から30日間の局所眼投与後に、試験製品もしくはビヒクルに帰せられる不都合な所見は見られなかった。本開示は、後眼部標的組織内、例えば中心脈絡膜中および中心網膜中で、化合物Iのシクロデキストリンベース液剤が局所投与された場合に、より高濃度の化合物を提供する。一部の実施形態では、RTK阻害を増加させられるように後眼部バイオアベイラビリティを増加させながら不良な眼忍容性を回避できるように角膜薬物曝露を減少させる複合効果は、治療指数および治療される患者にとっての対応する利点を増加させる。
本開示は、懸濁剤ベースの製剤(実施例3を参照)およびシクロデキストリン製剤両方についての有意に減少した曝露(約10分の1から100分の1または1対数から2対数の減少)に起因する治療範囲の拡大を提供する。減少した曝露は角膜安全性/忍容性を改良し、これは局所投与される化合物Iのより高い濃度またはより高い投与頻度を可能にする。より高い濃度は、化合物Iによる眼標的組織中濃度のより高度の逆転の達成を可能にし、化合物Iの治療有効性を改良する。
一部の実施形態では、眼科用点眼ゲルの局所用眼投与には前眼部における高い角膜組織曝露(≧100μM)および対応する不都合な観察所見、例えば不快感、角膜および結膜炎症、角膜上皮びらんおよび/または菲薄化および変性が伴う。対照的に、化合物I眼科用液剤の反復局所眼投与は、等モル用量の眼科用点眼ゲルより大まかに5分の1から10分の1である角膜曝露を生じさせ、不都合な臨床的もしくは組織病理学的所見を伴わない。化合物I眼科用液剤を用いた局所眼投与は、さらに等モル用量の眼科用点眼ゲルに比較して中心脈絡膜中での同等以上の標的治療的曝露を達成する。全体的に見ると、改良された物理化学的安定性に加え、後眼部標的組織への薬物送達を同時に維持もしくは促進しながらの減少した角膜曝露および対応する改良された眼忍容性の組み合わせは、眼科用点眼ゲル製剤と比較して被験者にとってより大きな利点を提供する。
シクロデキストリンベース液剤中での局所的眼化合物Iを用いた1から5日間のPK結果
本開示は、化合物Iの様々な製剤および用法/用量の局所的眼用量投与後の眼薬物動態を提供する。化合物Iの9種の局所眼製剤中での3種の用量強度は、1、2、3、4もしくは5連続日中の1日1回(QD)または1日2回(BID)いずれかの投与のために使用される。被験者は各々、容積移送式ピペットを使用して、3種の化合物I製剤またはビヒクル製剤の内の1つの30μLの両側の局所眼投与を受ける。
各化合物I製剤の組成物は、表8Aに記載した。全用量は、予定投与時点の±1時間以内に投与された。第1日に、第1、2、4から6、8、10、11、13、15および17群は、1日間もしくは4日間のいずれかに1日1回(QD)の投与を受ける。第1から4日に、第3、7、9、12、14および16群は、4日間にわたり午前7時および午後3時におよそ8時間空けてBID投与を受ける。一部の被験者は、5連続日にわたりビヒクル単独製剤のBID投与を受ける。
一部の実施形態では、眼サンプリングは、第1日投与に比較して、投与約0.5時間後、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約9時間後、約10時間後、約11時間後、約12時間後、約13時間後、約14時間後、約15時間後、約16時間後、約17時間後、約18時間後、約19時間後、約20時間後、約21時間後、約22時間後、約23時間後もしくは約24時間後に実施される。治療の作用を監視するために、眼房水、角膜、中心および周辺網膜ならびに中心および周辺脈絡膜サンプルが収集される。眼房水、角膜、中心網膜および中心脈絡膜サンプルがアッセイされる。
表8AからCは、シクロデキストリンベース液剤中の局所的眼化合物Iを用いた1から5日間のPK結果を列挙している。
表8Bは、眼房水、網膜、脈絡膜および角膜中の平均化合物Iの濃度を列挙している(LLOQ:定量下限濃度;LLOQは、許容される正確さおよび精度を用いて定量できる最低分析物濃度である。)。
表8Cは、第1群から第10群について、眼房水、中心および周辺網膜、中心および周辺脈絡膜ならびに角膜中での化合物Iの平均眼組織中濃度の要約を列挙している。<LLOQのあらゆる数値は、統計的計算から除外した。所定の時点について全数値が<LLOQである場合は、<LLOQを平均値として報告した。
シクロデキストリンベース液剤中の局所的眼化合物Iを用いた5日間のPK結果
本開示は、眼投与後のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(「HDβCD」)を含有する化合物Iの様々な用法・用量の局所的眼液剤の眼薬物動態を提供する。化合物Iの様々な局所的眼液剤は、4もしくは5連続日いずれかにわたる1日1回(QD)または1日2回(BID)いずれかで投与される。被験者は各々、1から4種の化合物I用量強度の30μLの両側性局所眼投与を受ける。
全用量は、第1日に投与された一部の患者を除き、予定投与時点の±1時間に投与された。化合物Iの投与後の眼サンプル採取は、眼サンプル採取が第4日の初回投与の24時間後に実施される数例を除いて、被験者について第5日の初回投与の1時間後に実施される。
眼房水、角膜、中心および周辺網膜ならびに中心および周辺脈絡膜サンプルが収集される。角膜、中心網膜および中心脈絡膜サンプルがアッセイされる;眼房水、周辺網膜および周辺脈絡膜サンプルはアッセイされない。
表9(AからB)は、シクロデキストリンベース液剤中の局所的眼化合物Iを用いた5日間のPK結果を列挙している。
表9Bは、中心網膜、中心脈絡膜および角膜中での化合物Iの平均眼組織中濃度の要約を列挙している。<LLOQのあらゆる数値は、統計的計算から除外した。所定の時点について全数値が<LLOQであった場合は、<LLOQを平均値として報告した。
様々な眼液中および組織中の化合物Iの濃度(単位:μM)
一部の実施形態では、眼の様々な組織中および眼液中の活性物質の濃度は、約0.4%(約4mg/mL)の化合物Iおよびシクロデキストリンの液剤の局所眼投与後に測定する。化合物Iの平均濃度は、中心脈絡膜、中心網膜、眼房水および角膜中で測定する。化合物Iは、8.41%のKLEPTOSE(R)および0.142%のホスフェートバッファー;8.9%のKLEPTOSE(R)HPBおよび0.142%のホスフェートバッファー;4.88%のCAPTISOL(R)および0.142%ホスフェートバッファー;または4.88%のCAPTISOL(R)および0.122%のホスフェートバッファーを含む液剤(0.4%もしくは4mg/mL)中にある。表10AからBを参照されたい。
一部の実施形態では、約0.4%(約4mg/mL)の化合物Iおよびシクロデキストリンの液剤の局所眼投与後に、化合物Iの中心脈絡膜中濃度は、約0.2μMから約0.8μMである。化合物Iの中心網膜中濃度は、約0.05μMから約0.15μMである。一部の実施形態では、約0.4%(約4mg/mL)の化合物Iおよびシクロデキストリンの液剤の局所眼投与後に、化合物Iの眼房水中濃度は、約0.003μMから約0.008μMである。および化合物Iの角膜中濃度は、約6.0μMから約40μMである。KLEPTOSE(R)HPBまたはCAPTISOL(R)は、眼に局所的に投与される化合物Iの液剤中で使用される。
一部の実施形態では、ベンジルアルコニウムクロリドを含む、および含まない0.3%の化合物I眼科用点眼ゲル製剤の1日2回の投与後の平均化合物I眼組織中濃度は、角膜中で約200μMから約350μM、周辺脈絡膜中で約2.0μMから約5.0、中心脈絡膜中で約0.2μMから約0.7μM、周辺網膜中で約0.05μMから約0.5μMおよび眼房水中で約0.01μMから約0.05μMと角膜中で最も高い。
一部の実施形態では、化合物IのTrisベース懸濁剤製剤は、角膜所見を全く伴わず、軽度の結膜炎の極めて少数の散在性発生率しか伴わず、良好に忍容される。一部の実施形態では、ベンジルアルコニウムクロリドを含む、および含まない0.3%の化合物IのTrisベース懸濁剤を用いた1日2回の局所投与についての第30日の初回局所眼投与1時間±15分後に評価した平均化合物I眼組織中濃度は、例えば、約2.00μMから約4.0μMで角膜中で最高である。同一用量からの周辺脈絡膜中濃度は約0.7μMから約1.5μMである;中心脈絡膜中濃度は0.3μMから約0.4μMである;周辺網膜中濃度は約0.08μMから約0.09μMである;中心網膜中濃度は約0.04μMから約0.07μMである;および眼房水中濃度は約0.001μMから約0.002μMである。
本開示は、被験者において約0.1%の化合物I(約2.0%から約2.5%のHP−β−CDを含む液剤中)で1日2回、約0.2%の化合物I(約4.0%から約4.5%のHP−β−CDを含む液剤中)で1日2回、約0.4%の化合物I(約8.0%から約8.5%のHP−β−CDを含む液剤中)で1日1回もしくは2回、および約0.6%の化合物I(約14%までのHP−β−CDを含む液剤中)で1日1回もしくは2回、30日間まで局所投与された場合に良好に忍容された化合物Iのシクロデキストリンベース液剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD、KLEPTOSE(R)HPB)を含む液剤)を提供する。さらに、追加の実施形態では、KLEPTOSE(R)HPB、KLEPTOSE(R)HPもしくはCAPTISOL(R)中の約0.4%(w/v)の化合物Iのシクロデキストリンベース液剤は、24日間まで1日2回投与された場合に良好に忍容された。
本開示は、化合物I眼科用点眼ゲル製剤を用いて観察される用量限定性角膜毒性を示す。一部の実施形態では、眼科用点眼ゲルは、シクロデキストリンベース液剤に比較して化合物Iの角膜中濃度を約5から約15倍増大させ、Trisベース懸濁剤に比較して化合物Iの角膜中濃度を約15倍から約100倍増大させる。本開示の化合物IのTrisベース懸濁剤およびシクロデキストリンベース液剤は、明白な眼毒性の徴候を伴わずに良好に忍容される。一部の実施形態では、化合物Iの約0.005%から約5.0%(w/v)のシクロデキストリンベース液剤もしくはTrisベース懸濁剤は、被験者において良好に忍容される。本開示は、等モル用量のゲルベースおよび/またはTrisベース製剤に比較して、シクロデキストリンベース液剤を使用して最も高い化合物Iの中心脈絡膜中濃度を生じさせる。
表11は、化合物I製剤の角膜中および中心脈絡膜中濃度を示している。
新生血管AMDを有する患者における用量漸増試験のための第1相プロトコル
本開示は、新生血管加齢性黄斑変性症(AMD)を有する患者における化合物Iの局所眼投与後の安全性、忍容性および薬物動態を評価するための12週間オープンラベル用量漸増多施設共同臨床試験を含む第I相試験を提供する。計60例までの患者が1日1から2回、3カ月間にわたり化合物I眼科用液剤の局所眼投与により治療されるが、このとき3群の用量漸増単剤療法群およびLUCENTIS(R)+最大忍容単剤療法用量の単回硝子体内注射を使用する1群の補助療法群が計画される(1治療群当たり患者15例)。独立読影センターによって確証された、事前に規定された視覚およびCNV病変基準を満たす患者は、同時に局所眼投与を中止して標準的ケアを行う治療を受けさせられる。
本開示は、臨床試験のための0.1%から1.0%(w/v)(化合物Iとして)の範囲にわたる3種の用量強度の眼科用液剤を提供する。これらの強度は、約0.1%、約0.3%、約0.6%および約1.0%(w/v)の化合物I−HClである。
製剤の調製
本開示の製剤の非限定的例は、表12に略述されている。
治療の用量
本発明の製剤は、哺乳動物被験者の眼における脈絡膜および網膜血管新生(NV)を治療もしくは予防する(即ち、退行させる)ことに有効である。本発明の化合物Iは、規定用量で受容体チロシンキナーゼを阻害する。一部の実施形態では、化合物I製剤は、規定用量でVEGFR、FGFR、Tie2およびEphB−4を含む受容体チロシンキナーゼを阻害する。本発明の製剤による数種のRTKの規定用量での同時の阻害は相乗作用を有し、後眼部におけるNVの治療および退行において効果的である。
また別の実施形態では、本発明の製剤は、約0.005%から約5.0%(約0.05から約50mg/mL)の化合物Iの局所眼送達により1日1回、2回、3回および4回投与された場合にNVを治療することに効果的である。NVを治療もしくは退行させるための化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)の製剤は、シクロデキストリンを含む液剤またはTrisを含む懸濁剤中にある。液剤もしくは懸濁剤は、例えば酸素誘導性網膜症(OIR)もしくはNVを誘導するために大気中酸素に曝露させられた被験者に送達された場合に、網膜による網膜前NVの平均面積を効果的に減少させることができる。化合物I製剤および/または懸濁剤によるNVの予防もしくは治療は、VEGFR−2を含む数種の受容体チロシンキナーゼ(RTK)の阻害によって達成される。
本明細書に記載した、開示した疾患もしくは状態のいずれも約200nMから約2μMの開示した化合物もしくはこれらの医薬として許容される塩、製剤および/または懸濁剤の標的組織中濃度を達成することによって治療または予防することができる。本発明の1つの実施形態は、後眼部における病理的血管新生を治療するための方法であって、本明細書に開示した化合物もしくはこれらの医薬として許容される塩および/またはこの製剤の約200nMから約2μMの標的組織中濃度を達成する方法に関する。この実施形態のまた別の繰り返しは、本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこの製剤の1つ以上の約300nMから約2μMの標的組織中濃度を達成する工程に関する。
本発明の1つの実施形態では、液剤もしくは懸濁剤として調製された化合物Iの約0.2から約1.0%(約2から約10mg/mL)の化合物Iは、投与されると、VEGFR−2キナーゼ機能を効果的に阻害し、FGFR 1から3、Tie−2およびEphB−4を含む一連の血管新生促進性成長因子受容体の実質的遮断を提供する。製剤中の化合物Iの2から10mg/mLの濃度は、1から5日間の局所的眼送達後の中心脈絡膜および網膜に薬理学的に効果的な濃度の薬剤を提供する。
一部の実施形態では、化合物Iの曝露期間は、1から90日間である。一部の実施形態では、用法・用量は、1から90日間にわたる被験者への化合物Iを含む製剤の数コースの局所眼投与を含む。例えば、用法・用量は、1から90日間にわたる製剤の1日1回、1日2回、1日3回または1日4回の投与を含んでいる。例えば、用法・用量は、90日間まで隔日(即ち、第1、3、5、7日など)の製剤の1回、2回、3回もしくは4回の投与を含む。例えば、用法・用量は、第1日に1回、第2日から第90日に1もしくは2回の投与を含む。例えば、用法・用量は、第1日に1回、2回、3回もしくは4回、この後は第2から第90日に1日1回の投与を含む。例えば、用法・用量は、第1日に1回、2回、3回もしくは4回、この後は90日間まで隔日(即ち、第1、3、5、7日など)の1回、2回、3回もしくは4回の投与を含んでいる。例えば、1つの用法・用量は、1、2、3、4もしくは5連続日にわたり1日1回もしくは1日2回を含む。1日2回もしくは3回の用法・用量のためには、被験者はおよそ約4、6もしくは8時間を空けて、第1日および第4日に化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。また別の実施形態では、被験者は、4連続日にわたりおよそ約4、6もしくは8時間空けて化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。一部の実施形態では、被験者は、5連続日にわたり1もしくは2回の化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。さらに他の実施形態では、被験者は、5から90連続日にわたり1もしくは2回の化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。一部の実施形態では、被験者は、少なくとも25連続日にわたり1もしくは2回の化合物I製剤の局所的眼投与を受ける。1つの実施形態では、被験者は少なくとも90連続日以上にわたり1もしくは2回の局所的眼投与を受ける。
一部の実施形態では、本開示は、AMD、病理的CNVおよび/または病理的NVを治療するために被験者の前眼部に局所投与される化合物Iもしくはこの遊離塩基の製剤を提供する。例えば、製剤は、被験者の眼に1日1回、2回、3回もしくは4回投与される。特定の実施形態では、製剤は、被験者の眼に1日2回もしくは3回投与される。例えば、製剤は、被験者の片眼または両眼に投与される。例えば、約1mg/mLの活性物質を含む本開示の製剤は、被験者の片眼または両眼に1日2回(BID)投与される。一部の実施形態では、約2mg/mLがBID、約3mg/mLが1日1回(QD)もしくはBID、約4mg/mLがQDもしくはBID、約5mg/mLがQDもしくはBIDまたは6mg/mLがQDもしくはBIDで被験者の片眼または両眼に投与される。
例えば、約2mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約3mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約3mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約4mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約4mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約5mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約5mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約6mg/mL(BID)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、約6mg/mL(QD)の化合物Iを含む製剤は、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。1から90日間にわたる用法・用量は、上記の段落に記載した連続日または隔日を含む用法のいずれかであってよい。
本開示は、被験者の片眼または両眼に投与するための表13に示した製剤を提供する。
一部の実施形態では、式(II)もしくは化合物Iの製剤は、被験者の片眼または両眼に投与される。例えば、本開示の約0.2%から約0.6%(w/v)の式(II)の化合物または約0.1%から0.7%(w/v)の化合物Iを含む製剤は、1日1回(QD)または1日2回(BID)、1から90日間にわたり被験者の片眼または両眼に投与される。一部の実施形態では、式(II)の化合物もしくは化合物Iは、約1:8の比率で錯化剤、例えばシクロデキストリン(例えば、KLEPTOSE(R)HPB(%))を用いて錯体形成されるが、このとき製剤には約2%から13%(w/v)のシクロデキストリン(例えば、KLEPTOSE(R)HPB(%))が加えられる。製剤は、さらに約0.1%から約0.2%のバッファー、例えば10mMのホスフェートバッファーを含む。製剤の所望のオスモル濃度は、このオスモル濃度を達成するために十分な量の塩、例えばナトリウムクロリドを用いて達成される約200から約300mOsmである。製剤のpH値は、約40℃以下で約6.0である。1から90日間にわたる用法・用量は、上記の段落に記載した連続日または隔日を含む用法のいずれかであってよい。
本開示の方法は、レーザー治療および注射可能抗血管新生剤による治療を含むがこれらに限定されない標準的ケアと組み合わせられる。
適応および治療方法
眼の疾患もしくは状態を治療するための方法が開示される。本明細書に開示した方法は、被験者に本明細書に開示した化合物およびこれらの製剤の1つ以上を投与する工程によって、眼血管新生(NV)を治療する、予防するもしくは管理する工程、またはNVの発現に関連する疾患もしくは状態を治療することに関する。
本明細書に開示した方法の1つの態様は、被験者に有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上を投与する工程によってNVを治療もしくは予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、被験者に、a)有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上、および場合によりb)1つ以上の担体もしくは適合する賦形剤の組成物を投与する工程によってNVを治療するための方法に関する。
本明細書に開示した方法は、被験者に本明細書に開示した化合物およびこれらの製剤の1つ以上を投与する工程によって、眼血管新生(NV)を治療する、予防するもしくは管理する工程、またはNVの発現に関連する疾患もしくは状態を治療することに関する。
本実施形態は、眼の血管障害性もしくは炎症性疾患の後眼部疾患を有する被験者を治療するための医薬品を製造するための化合物Iもしくはこの遊離塩基(式II)の製剤の使用を提供する。これらには、例えば、糖尿病性網膜症(背景糖尿病性網膜症、増殖性糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫を含む。);加齢性黄斑変性症(AMD)(新生血管(湿性/滲出性)AMD、乾性AMDおよび地図状萎縮症を含む。);何らかの機序(即ち、強度近視、外傷、鎌状赤血球症;眼ヒストプラスマ症、色素線条、外傷性脈絡膜破裂、眼神経のドルーゼおよび数種の網膜ジストロフィー)からの病理的脈絡膜新生血管(CNV);何らかの機序(即ち、鎌状赤血球症;イールズ病、眼虚血症候群、頚動脈−海綿静脈洞フィステル、家族性滲出性硝子体網膜症、過粘稠度症候群、特発性閉塞性細動脈炎;バードショット脈絡網膜症、網膜血管炎、サルコイドーシスもしくはトキソプラズマ症)からの病理的網膜新生血管;ブドウ膜炎;網膜静脈閉塞症(中心静脈もしくは血管枝);眼外傷;手術誘発性浮腫;手術誘発性新生血管;類嚢胞黄斑浮腫;眼虚血症;未熟児網膜症;コーツ病;鎌状赤血球網膜症および/または血管新生緑内障が含まれる。
本発明の1つの態様では、製剤は、加齢性黄斑変性症(AMD)(血管新生(湿性/滲出性)AMD、乾性AMDおよび地図状萎縮症を含む。)の治療に使用される。新生血管(滲出性もしくは湿性)AMDの治療には、液剤もしくは懸濁剤が使用される。また別の実施形態では、乾性AMDを治療するために液剤もしくは懸濁剤が使用される。さらにまた別の実施形態では、地図状萎縮症を治療するために液剤もしくは懸濁剤が使用される。
本発明の製剤は、被験者におけるいずれかの機序(つまり、強度近視、外傷、鎌状赤血球疾患;眼ヒストプラスマ症、色素線条、外傷性脈絡膜破裂、眼神経のドルーゼおよび数種の網膜ジストロフィー)から病理的脈絡膜血管新生(CNV)の発現を予防する、遅延させる、または治療する。
本発明の製剤は、網膜神経感覚上皮の下の病理的脈絡膜血管新生(CNV)の発現を遅延させる、進行を予防する、または形成を治療する。本発明の製剤は、CNVを治療することに効果的である。
本方法の1つの態様は、被験者に有効量の本明細書に開示した化合物もしくはこれらの医薬として許容される塩の1つ以上を投与する工程により眼血管新生を治療もしくは予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、被験者に、a)有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上、および場合によりb)1つ以上の担体もしくは適合する賦形剤の組成物を投与する工程により眼浮腫および血管新生を治療するための方法に関する。
本明細書に開示した方法は、さらに被験者に本明細書に開示した化合物の1つ以上を投与する工程によって、眼浮腫を予防もしくは管理する、または眼浮腫の発現に関連する疾患もしくは状態を治療することに関する。
本方法の1つの態様は、被験者に有効量の本明細書に開示した化合物もしくはこれらの医薬として許容される塩の1つ以上を投与する工程により眼浮腫を治療もしくは予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、被験者に、a)有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上、および場合によりb)1つ以上の担体もしくは適合する賦形剤の組成物を投与する工程により眼浮腫を治療または予防するための方法に関する。
本明細書に開示したまた別の方法は、被験者に本明細書に開示した化合物の1つ以上を投与する工程によって、網膜浮腫もしくは網膜血管新生を予防もしくは管理する、または網膜浮腫もしくは網膜血管新生の発現に関連する疾患もしくは状態を治療することに関する。本方法の1つの態様は、被験者に有効量の本明細書に開示した化合物もしくはこれらの医薬として許容される塩の1つ以上を投与する工程により網膜浮腫もしくは網膜血管新生を治療もしくは予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、被験者に、a)有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上、および場合によりb)1つ以上の担体もしくは適合する賦形剤の組成物を投与する工程により網膜浮腫もしくは網膜血管新生を治療するための方法に関する。
この態様のまた別の実施形態は、被験者に、a)有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上、および場合によりb)1つ以上の担体もしくは適合する賦形剤の組成物を投与する工程により非増殖性網膜症から増殖性網膜症への進行を遅延させる、もしくは予防するための方法に関する。
本明細書に開示した方法の1つの態様は、糖尿病、特に糖尿病性黄斑浮腫および糖尿病性網膜症の直接的もしくは間接的結果である疾患に関する。糖尿病性の眼血管構造は経時的に不安定になり、例えば非増殖性網膜症、黄斑浮腫および増殖性網膜症等の症状を引き起こす。明敏な正視が発生する眼の部分である黄斑の中心内に眼水が漏出するにつれて、眼水の集積および関連タンパク質は黄斑上もしくは黄斑下に沈着し始める。これは結果として、被験者の中心視覚が徐々に歪められるようになることを引き起こす腫脹を生じさせる。この状態は、「黄斑浮腫」と呼ばれる。発生する可能性があるまた別の状態は、眼の変性領域の外側で観察される可能性がある眼の血管が変化する、例えば微細動脈瘤などの非増殖性網膜症である。増殖性DR中、病理的な新規血管が網膜中および網膜から硝子体内へ成長し、これらの異常な血管が黄変内での網膜形態を変化させる、および/または硝子体内へ出血して視軸を不明瞭にする可能性がある。
本明細書に開示したまた別の方法は、被験者に本明細書に開示した化合物の1つ以上を投与する工程によって、糖尿病性網膜症を治療する、予防する、または管理すること、または糖尿病性網膜症の発現に関連する疾患もしくは状態を治療することに関する。
本明細書に開示した方法の1つの態様は、被験者に有効量の本明細書に開示した化合物もしくはこれらの医薬として許容される塩の1つ以上を投与する工程により糖尿病性網膜症を治療もしくは予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、被験者に、a)有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上、および場合によりb)1つ以上の担体もしくは適合する賦形剤の組成物を投与する工程により糖尿病性網膜症を治療するための方法に関する。
糖尿病性増殖性網膜症は、血管新生によって特徴付けられる。新規血管は脆弱で出血しやすい。この結果は、網膜の瘢痕化ならびに新規血管の異常な形成に起因する、眼を通しての光路の閉鎖もしくは完全閉塞である。典型的には、糖尿病性黄斑浮腫を有する被験者は、非増殖性段階の糖尿病性網膜症に罹患している;しかし増殖性段階の発現時に被験者が黄斑浮腫の発現しか開始していないことはまれではない。
本明細書に開示したさらにまた別の方法は、被験者に本明細書に開示した化合物の1つ以上を投与する工程によって、糖尿病性黄斑浮腫を予防もしくは管理すること、または糖尿病性黄斑浮腫の発現に関連する疾患もしくは状態を治療することに関する。
本方法の1つの態様は、被験者に有効量の本明細書に開示した化合物もしくはこれらの医薬として許容される塩またはこれらの製剤の1つ以上を投与する工程により、糖尿病性黄斑浮腫を治療もしくは予防することに関する。この態様の1つの実施形態は、被験者に、a)有効量の本明細書に開示した化合物もしくは医薬として許容される塩および/またはこれらの製剤の1つ以上、および場合によりb)1つ以上の担体もしくは適合する賦形剤の組成物を投与する工程により、糖尿病性黄斑浮腫を治療するための方法に関する。
キット
さらに開示されるのは、ヒト、哺乳動物または細胞へ薬物送達するための本明細書に開示した化合物および組成物のキットである。キットは、ヒト、哺乳動物または細胞へ送達するべき1つ以上の化合物を含む組成物の1つ以上の包装単位用量を含むことができる。送達されなければならない化合物が使用前にこの中に包装される単位用量アンプルもしくは多用量容器は、医薬的に有効な投与量または有効な投与量の倍数に適合するある量の活性物質もしくは医薬として許容される塩またはこの製剤を同封している気密密閉容器を含むことができる。これらの化合物は無菌製剤として包装できる、および気密密閉容器は製剤を使用時まで無菌性を保存するように設計されている。
本発明のキットは、眼科用製剤を送達するための単回使用点眼薬ディスペンサーボトルを有する。また別の実施形態では、本発明のキットは、複数回使用点眼薬ディスペンサーボトルを有する。多用量ディスペンサーボトルは、適切な量の抗感染薬および/または保存料、例えば制限されずに0.005%のBAKを有する。本発明の眼科用ディスペンサーは、先端部およびキャップを有する。本発明の容器は、LDPEドロッパーチップおよびHDPEキャップを備える半透明LDPE眼科用ディスペンサーボトルを有する。容器は、必要に応じたおよびまたは当分野で使用されている他のタイプおよび形態であってよい。
下記の実施例は、本発明の方法および組成物の例示であるが、限定するものではない。療法において通常見出される、および当業者には明白である様々な状態およびパラメーターの他の適切な修飾および翻案は、実施形態の精神および範囲内に含まれる。
化合物Iは、他の血管新生促進性RTK、例えばFGF受容体(FGFR−1から3)、Tie−2およびエフリン受容体B4(EPHB−4)とともに、VEGFR−2の強力で選択的な低分子阻害剤である。化合物Iは、マウス角膜およびラット成長板モデルにおける全身性投与後の特異的RTKのリン酸化、内皮細胞増殖および病理的血管新生ならびに無胸腺マウスにおけるヒト腫瘍異種移植片の増殖を阻害することが証明された。潜在的眼科用適応に関して、以下に記載する本発明の実施例は化合物Iの局所眼送達が臨床的に重要な齧歯類モデルにおける病理的網膜および脈絡膜血管新生の有意な阻害を提供することを証明した。以下にこれらのデータの要約を示す。
以下の試験は、本明細書に開示した化合物が網膜組織の血管漏出および血管新生に及ぼす作用を測定するために実施した。
[実施例1]
主要薬物動態
化合物Iのインビトロ有効性薬理学
化合物Iは、様々なインビトロアッセイ中に、血管内皮成長因子受容体2(VEGF−2)のチロシンキナーゼ活性ならびに選択的サブセットの他の血管新生促進性RTKを強力に阻害する。詳細には、化合物I化合物は、培養内皮細胞の増殖とともに細胞全体でのVEGF誘発性VEGFR−2リン酸化を遮断した。化合物Iは、VEGFR−2およびFGFR−2の組み換えチロシンキナーゼ活性を各々10.55nM(6ng/mL)および8.79nM(5ng/mL)の50%阻害濃度(IC50)で阻害した;および無傷細胞内でのVEGFR−2自己リン酸化をIC50=5.27nM(3ng/mL)で阻害した。この阻害は他の多くのチロシンキナーゼに対して選択的であり、例えばVEGFR−2のIC50は、内皮成長因子(EGFR)およびインスリン受容体(IR)チロシンキナーゼに対して各々およそ500分の1および1000分の1低かった(表2を参照)。
257から5000nM(146から2845ng/mL)の範囲にわたる10点滴定曲線を使用すると、化合物Iは、<100nM(56.89ng/mL)のIC50によって証明されたように、数種の血管新生促進性成長因子受容体についてのチロシンキナーゼ活性の強力な阻害を示した(表3参照)。このキナーゼの選択群についてのIC50は下記の通りであった:組み換えKDR(VEGFR−2のヒトアイソフォーム)=1.27nM(0.72ng/mL)、Tie−2=10.10nM(5.75ng/mL)およびFGFR 1から3=各々、8.50nM(4.84ng/mL)、3.08nM(1.75ng/mL)および33.9nM(19.29ng/mL)。この化合物は、他の高親和性VEGF受容体であるVEGFR−1/Flt−1もまた遮断したが、効力は低かった:IC50=122nM(69.41ng/mL)。
VEGFR阻害は血管透過性を減少させ、さらに新血管成長を防止するために必須であると思われるが、他の成長因子シグナル伝達経路(例えば、PDGFおよびアンギオポエチン/Tie2)の阻害とのVEGFシグナル伝達の同時阻害は、独特の治療転帰と結び付いている可能性がある。シグナル伝達経路をより広範囲に阻害することの治療転帰は、後眼部における新規に確立された病理的血管の退行に寄与する可能性がある。
300nM(170.67ng/mL)の化合物Iは、VEGFR−2キナーゼ機能を完全に阻害し(表4を参照)、FGFR−1から3、Tie−2およびEphB−4を含む類似した一連の血管新生促進性成長因子受容体の実質的遮断を提供した。予想外の所見は、300nMの濃度がVEGFR−2キナーゼ機能を完全に阻害できたことであった。この濃度は、ウサギおよびイヌにおける5日間の局所眼送達後の中心脈絡膜中および網膜中で見出された典型的範囲内に含まれる。
薬剤物質および薬物製品の概説
薬剤物質:
医薬品有効成分(API)である式IIのヒドロクロリド(化合物I、CP−547632−01)は、単一多形の低分子である。API物質は、99.7%を超える純度で一貫して製造される。薬剤物質中の≧0.15%の何らかの不純物は、毒物学試験において適格であると認められ、新規の不明な個別不純物についての本仕様はNMT 0.2%に設定されている。最終の薬剤物質および薬物製品は、標準方法を使用して分析される。
薬物製品:
臨床試験のための化合物I眼科用製剤は、0.05%から1.0%の用量強度で(化合物Iとして)製造された。GLPバッチのために使用される強度は、化合物Iの0%(プラセボ)、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.6%、0.8%および1.0%である。化合物I眼科用製剤(液剤もしくは懸濁剤)は、臨床試験における眼への連日投与、単回使用、局所投与のために使用される。有効成分に加えて、薬物製品は保存料としての約0.005%のBAK、ビヒクルとしての精製水を含有し、ナトリウムヒドロキシドを用いてpH6.0へpH調整される。
[実施例2]
ナトリウムホスフェートベースの点眼ゲル
ナトリウムホスフェートベース製剤(表6に列挙されている。)中の化合物Iの眼科的利点は、例えばナトリウムホスフェートなどのバッファー中でのAPIの自己ゲル化特性の結果として生じる。透明溶液からの化合物Iの自己形成性チキソトロープゲルの自然形成は、ナトリウムホスフェート中のAPI濃度を増加させることによって形成された。このゲルは、最初は透明に見えたが、この後API濃度が高くなると厚さ/粘度の増加を示し、ならびにますます不透明になり、即ち混濁した。ホスフェートバッファー中のAPI濃度が超飽和状態に達すると、ゲル内で化合物Iの不溶性粒子が観察された。
眼の表面への増加した粘度を備えるゲルの投与は、角膜滞留時間を増加させる。角膜滞留時間の増加は、次に眼薬物吸収を促進する。結果として、粘性ゲルの眼内薬物濃度は、例えば水様液剤などの非粘性製剤と比較して増加する。粘性を増加させる1つの方法は様々な粘度増強性賦形剤、例えば実質的に局所的眼投与後の様々な薬剤物質の眼内吸収の増加を達成する、例えばカルボキシメチルセルロースを使用することである。しかし本試験では、化合物Iのチキソトロープゲルが予想外にもあらゆる粘度増強性賦形剤の非存在下で形成された。例えば、化合物Iが単純バッファー、例えばナトリウムホスフェート内に溶解させられるとチキソトロープゲルが形成された。粘度増強性賦形剤を全く使用せずに形成されたチキソトロープゲルは、本実施例では点眼ゲルとして調製された。
化合物Iの点眼ゲルは、ダッチベルテッド種(Dutch−belted)のウサギの目に適用された。化合物Iの点眼ゲルはダッチベルテッド種のウサギに4もしくは5連続日にわたり、1日3回の投与で投与された。標的組織での化合物Iの濃度は、最終投与の1時間後に測定した。化合物Iの後眼部組織への送達は、用量依存性および投与頻度依存性であった。
点眼ゲル製剤(表6に列挙した。)は、数種の態様、例えばAPI濃度、ナトリウムホスフェート濃度、等張化剤(グリセリン)もしくは保存料(ベンザルコニウムクロリド/BAK)、可溶化界面活性剤(ポリソルベート80、チロキサポールおよび/またはポロキサマー)の存在もしくは非存在およびpHにおいて異なった。
[実施例3]
トロメタミンベース懸濁剤
トロメタミンベース製剤中の化合物I(約1mg/mLから約10mg/mL)は懸濁剤を形成した。トロメタミンベース製剤中の化合物Iの懸濁剤は、不溶形にある>95%の活性薬剤物質を有した。この特徴は、点眼ゲル(点眼ゲル(ゲル)は活性物質の濃度が増加するため完全には溶解状態ではない。)中またはシクロデキストリンベース製剤中において可溶性もしくは半溶解性状態の化合物Iから識別可能である。化合物Iのトロメタミンベース製剤は、活性物質濃度が増加するにつれて増加した濁度を示した。化合物I懸濁剤の局所用滴剤(可溶性および不溶性活性物質成分の組み合わせである。)の眼への投与は、安全性/忍容性および有効性の両方に関連する固有の利点を提供すると予想された。
化合物Iのトロメタミンベース懸濁剤はダッチベルテッド種のウサギに4もしくは5連続日にわたり、1日3回の投与で投与された。化合物Iの眼組織中および血漿中濃度は、最終投与の1時間後に測定した。トロメタミンベース懸濁剤中の化合物Iは、標的組織に様々な血管新生促進性RTKについて10から1000×の細胞IC50の濃度を送達した。表7を参照されたい。
局所化合物Iの角膜安全性および忍容性は、角膜表面に適用された可溶性(不溶性とは対照的に)活性物質の量および結果として生じる角膜組織中濃度の直接的結果であった。トロメタミンベース懸濁剤の局所眼投与を受けた動物は、ナトリウムホスフェートベース点眼ゲルの等モル製剤と比較して、製剤中のより高レベルの活性物質濃度まで忍容することができた。ダッチベルテッド種ウサギおよびビーグル犬両方から得た結果は、眼副作用、例えば不快感および炎症ならびに一部の場合には角膜菲薄化は、化合物Iの角膜中濃度が100μMを超えるとより一貫して観察されることを示唆した。
トロメタミンベース懸濁剤の投与は、後眼部における化合物Iの眼バイオアベイラビリティに予想外の作用を及ぼした。後眼部内での化合物Iの眼バイオアベイラビリティは、投与された薬物の総量(不溶性+可溶性、例えば表7を参照)に直接的に比例することが観察された。不溶性薬物粒子は前眼部組織では容易に使用できなかったが、化合物Iの固有および独特の生理化学的特性は不溶性および可溶性両方の成分の例えば脈絡膜および網膜などの後眼部組織への進入を可能にした。結果として、トロメタミンベース懸濁剤を用いると、同等量の活性物質を含有する点眼ゲル製剤を用いて達成された薬物濃度より一層高い薬物濃度が達成された。従って、トロメタミンベース懸濁剤は、a)改良された角膜忍容性およびb)後眼部、特に新生血管(湿性)AMD治療のための一次標的組織である脈絡膜への増加したバイオアベイラビリティを提供した。
[実施例4]
シクロデキストリンベース液剤
1から4つの結合を通して結合された6から8デキストロース単位から作られた環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(α−、β−およびγ−CD)は、相対的不溶性薬物のための可溶化剤として機能するこれらの能力のために周知である。Stella & He,Cyclodextrins,Toxicol.Pathol.,36:30−42(2008)を参照されたい。
1:6以上のモル比にある2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD、KLEPTOSE(R)HPB)または1:2以上の比のβでのスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(SBE−β−CD、CAPTISOL(R))における化合物Iもしくはこの遊離塩基ベースの眼科用液剤の臨床製剤は、化合物Iの0.1から1.0%の臨床的用量強度を伴う溶解度を提供した。
化合物Iもしくはこの遊離塩基のシクロデキストリンベース液剤は、活性物質の溶解度を改良して一様な液剤を達成しただけでなく、局所的眼投与後に、さらに後眼部での活性物質の治療指数が有意に増加した新規で以前には観察されなかった特徴も有した。本液剤は前眼部曝露を減少させ、これにより液剤中の有効成分の濃度の増加および送達頻度の増加をもたらし、高い後眼部濃度を維持させた。これらの有益な特性はどちらも、シクロデキストリンの疎水性薬物との親水性錯体を形成する公知の特性に関連している。Stella & He,Cyclodextrins,Toxicol.Pathol.,36:30−42(2008)を参照されたい。化合物Iもしくはこの遊離塩基を用いて調製すると、シクロデキストリンは透明で無色の液剤を形成し、水様性粘性を示した。局所的眼投与後に、化合物I/シクロデキストリン錯体は、薬理学的に不活性および代謝的に不活性である外観を有した。化合物I/シクロデキストリン錯体はシクロデキストリンが活性物質から自然に解離するまで角膜忍容性を付与し、従って、後眼部、例えば脈絡膜中および網膜中での意図された作用部位で高濃度の化合物Iを利用可能にした。
ダッチベルテッド種のウサギにおける1から30日間継続された局所眼投与試験中に、化合物Iのシクロデキストリンベース液剤は、類似の薬物濃度での点眼ゲル製剤(実施例2を参照)と比較して劇的に低下した角膜曝露を示した。化合物Iのシクロデキストリンベース液剤の使用は、点眼ゲルの等モル製剤の投与と比較して角膜中濃度における約10分の1の減少を提供した。結果として、シクロデキストリンベース液剤としての0.6%の化合物Iの30日間の局所眼投与後に、試験製品もしくはビヒクルに帰せられる不都合な所見は見られなかった。化合物Iのシクロデキストリンベース液剤はさらに、後眼部標的組織中、例えば中心脈絡膜中および中心網膜中で同等もしくは有意に高い薬物濃度を達成した。RTK阻害を増加させられるように後眼部バイオアベイラビリティを増加させながら不良な眼忍容性を回避できるように角膜薬物曝露を減少させる複合効果は、治療指数および治療される患者が経験した対応する利点を有意に増加させることができる。
懸濁剤ベースの製剤(実施例3を参照)およびシクロデキストリン製剤の両方について、治療範囲は、有意に減少した曝露(約10分の1から100分の1または1対数から2対数の減少)に起因して拡大する。減少した曝露は角膜安全性/忍容性を改良し、これは局所投与される化合物Iのより高い濃度またはより高い投与頻度を可能にする。より高い濃度は、薬剤による眼標的組織中濃度のより高い逆転の達成を可能にし、化合物Iの治療有効性を改良する。
本試験は、ウサギおよびイヌにおいて、眼科用点眼ゲルの局所用眼投与には前眼部における高い角膜組織曝露(≧100μM)および対応する不都合な観察所見、例えば不快感、角膜および結膜炎症、角膜上皮びらんおよび/または菲薄化および変性が伴うことを証明した。対照的に、化合物I眼科用液剤の反復局所眼投与は、等モル用量の眼科用点眼ゲルより大まかに5分の1から10分の1である角膜曝露を生じさせ、不都合な臨床的もしくは組織病理学的所見を伴わない。さらに、化合物I眼科用液剤を用いた局所眼投与は、等モル用量の眼科用点眼ゲルに比較して中心脈絡膜中での同等以上の標的治療的曝露を達成した。全体的に見ると、改良された物理化学的安定性に加え、後眼部標的組織への薬物送達を同時に維持もしくは促進しながらの減少した角膜曝露および対応する改良された眼忍容性の組み合わせは、眼科用点眼ゲル製剤と比較して患者にとってより大きな利点を提供するであろう。
[実施例5]
シクロデキストリンベース液剤中の局所的眼化合物Iを用いた1から5日間のPK結果
ダッチベルテッド種のウサギにおける化合物Iの様々な製剤および用法・用量の局所眼投与後に、眼薬物動態を調査した。化合物Iの3種の用量を有する9種の局所眼製剤は、4もしくは5連続日いずれかにわたり1日1回(QD)または1日2回(BID)いずれかで投与された。試験デザイン(表10AからCを参照)は、各々、容積移送式ピペットを使用して、3種の化合物I製剤またはビヒクル製剤の内の1つの30μLの両側の局所眼投与を受ける72匹のウサギから構成した。
各化合物I製剤の組成物は、表8Aに記載した。全用量は、予定投与時点±1時間以内に投与された。第1日に、第1、2、4から6、8、10、11、13、15および17群は、1日間もしくは4日間のいずれかに1日1回(QD)の投与を受けた。第1から4日に、第3、7、9、12、14および16群は、4日間にわたり午前7時および午後3時におよそ8時間空けてBID投与を受けた。第18群および19群の動物は、5連続日にわたりビヒクル単独製剤のBID投与を受けた。
眼サンプリングは、第1群については第1日投与に比較して投与0.5、1、2、4、8もしくは24時間後に行われた。眼サンプリングは、第2および6群については第5日朝の投与に比較して投与1、8および24時間後に行われた。眼サンプリングは、第3、7、8、11および13群については第5日朝の投与に比較して投与1もしくは24時間後に行われた。眼サンプリングは、第4、9、10、12、14、15、16および17群については第5日朝の投与に比較して投与1時間後に行われた。第5群の眼サンプリングは、第1日投与に比較して投与0.5、1、2、4、8もしくは24時間後に行われた。第18および19群における動物は、5日間にわたる臨床観察によってのみ追跡した。
眼房水、角膜、中心および周辺網膜ならびに中心および周辺脈絡膜サンプルが収集された。眼房水、角膜、中心網膜および中心脈絡膜サンプルが次にアッセイされた。周辺網膜および周辺脈絡膜サンプルは、試験プロトコルに従って第1から8、12、14および16群についてのみアッセイされた。
ウサギの眼房水、角膜、中心および周辺網膜ならびに中心および周辺脈絡膜サンプルが分析された。様々な組織中での化合物Iの濃度を決定するために、検量線はコントロール基質中で調製された。
[実施例6]
シクロデキストリンベース液剤中の局所的眼化合物Iを用いた5日間のPK結果
様々な用法・用量のダッチベルテッド種のウサギにおけるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(「HDβCD」)を含有する化合物Iの局所眼液剤の眼投与後に、眼薬物動態を計算した。化合物Iの4種の用量を有する9種の局所的眼液剤は、4もしくは5連続日いずれかにわたり1日1回(QD)または1日2回(BID)いずれかで投与された。試験デザインは、各々が容積移送式ピペットを使用して、4種の化合物I製剤強度の1つの30μLの両側の局所眼投与を受ける40匹のウサギから構成した。
全用量は、第1、4および10群についての第1日を除いて、予定投与時点の±1時間に投与された。第1日の初回用量は午後12時に投与され、第2回投与(第1および10群)はおよそ4時間後に投与された。これは製剤の到着が遅延したためであった。これらの群についての全ての他の投与は、予定通りであった。第1日に、第4から8群および11から12群は、1日1回(QD)の投与を受け、これは4日間にわたった。第1から4日に、第1から3および9から10群は、4日間にわたりおよそ8時間空けてBID投与を受けた。
眼サンプリングは、眼サンプリングが第4日の初回投与の24時間後に行われた第5bおよび6b群を除いて、全群についての第5日の初回投与の1時間後に行われた。
血漿収集のための血液サンプルは、全動物について予定された安楽死の直前に入手された。眼房水、角膜、中心および周辺網膜ならびに中心および周辺脈絡膜サンプルが収集された。第1から12群からの眼房水、中心網膜および中心脈絡膜サンプルはアッセイされた。眼房水、周辺網膜および周辺脈絡膜サンプルはアッセイされなかった。
[実施例7]
様々な眼液および組織中の化合物Iの濃度(単位:μM)
シクロデキストリンを含む化合物Iの眼科用液剤を調製し、様々な動物群において試験した。0.4%(4mg/mL)の化合物Iおよびシクロデキストリンの液剤の局所眼投与後、活性物質の濃度を眼の様々な組織中および眼液中で測定した。化合物Iの平均濃度は、中心脈絡膜、中心網膜、眼房水および角膜中で測定した。化合物Iは、8.41%のKLEPTOSE(R)および0.142%のホスフェートバッファー;8.9%のKLEPTOSE(R)HPBおよび0.142%のホスフェートバッファー;4.88%のCAPTISOL(R)および0.142%ホスフェートバッファー;または4.88%のCAPTISOL(R)および0.122%のホスフェートバッファーを含む液剤(0.4%もしくは4mg/mL)中にあった。表10AからBを参照されたい。
化合物Iの中心脈絡膜中濃度は、0.259μMから0.769μMであった。表10Aを参照されたい。化合物Iの中心網膜中濃度は、0.0531μMから0.124μMであった。表10Aを参照されたい。化合物Iの眼房水中濃度は、0.00313μMから0.00656μMであった。表10Aを参照されたい。および化合物Iの角膜中濃度は、6.49μMから30μMであった。表10Aを参照されたい。液剤を調製するために使用されたシクロデキストリンは、KLEPTOSE(R)HPBまたはCAPTISOL(R)であった。表10Bを参照されたい。
[実施例8]
眼毒性試験
用量限定性眼毒性は、ダッチベルテッド種ウサギおよびビーグル犬における角膜および結膜所見によって特徴付けた。化合物I眼科用点眼ゲルを用いた反復投与毒性試験からのこれらの眼所見は、臨床的眼科学的および組織病理学的評価に基づいており、結膜充血、結膜浮腫、うっ血および分泌、角膜混濁および上皮びらんならびに角膜結膜炎に限定された。眼のより深部の構造(虹彩、水晶体、毛様体、網膜、脈絡膜、強膜)または視神経に関係する不都合ではない変化が観察された。網膜機能は、ウサギにおいて実施された全視野網膜電図検査中の全試験製品群およびビヒクル治療群において正常であった。
探索的眼毒性試験の目的は:a)良好に忍容された局所眼製剤およびb)中心脈絡膜中での化合物Iの目標とする治療濃度を達成できるであろう製剤を同定することであった。
ベンジルアルコニウムクロリドを含む,および含まない0.3%の化合物I眼科用点眼ゲル製剤を用いた1日2回の局所投与後の化合物Iの平均眼組織中濃度は、ダッチベルテッド種ウサギにおいて角膜中で最高(236から260μM)>>周辺脈絡膜(2.79から4.10μM)、中心脈絡膜(0.340から0.496μM)、周辺網膜(0.150から0.309μM)および眼房水(0.0197から0.0395μM)であった。
Trisベース懸濁剤製剤は良好に忍容され、臨床的眼科検査では角膜所見の顕著な非存在が明らかとなり、ダッチベルテッド種ウサギに軽度結膜炎のほんの少数の散発性発生数を伴うのみであった。さらに、30日間にわたり1日2回0.3%(w/v)の化合物IのTrisベース懸濁剤を投与されていた動物の眼は、顕微鏡評価中に正常と見なされた。ベンジルアルコニウムクロリドを含む、および含まない0.3%の化合物IのTrisベース懸濁剤を用いた1日2回局所投与について第30日に初回局所眼投与の1時間±15分後に評価した平均化合物I眼組織中濃度は、角膜中で最高であり(2.69から3.10μM)>>周辺脈絡膜(0.781から1.21μM)、中心脈絡膜(0.303から0.319μM)、周辺網膜(0.0819から0.0868μM)、中心網膜(0.0495から0.0592μM)および眼房水(0.00127から0.00145μM)がこれに続いた。
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD、KLEPTOSE(R)HPB)を使用するシクロデキストリンベース液剤は、ダッチベルテッド種ウサギにおいて30日間にわたり局所投与された場合に、0.1%の化合物Iの1日2回(2.1%のHP−β−CD)、0.2%の化合物Iの1日2回(4.21%のHP−β−CD)、0.4%の化合物Iの1日1回もしくは2回(8.41%のHP−β−CD)および0.6%の化合物Iの1日1回もしくは2回(12.62%のHP−β−CDまで)を良好に忍容した。さらに、類似の反復投与試験では、KLEPTOSE(R)HPB、KLEPTOSE(R)HPもしくはCAPTISOL(R)中の約0.4%(w/v)の化合物Iのシクロデキストリンベース液剤は、24日間にわたり1日2回投与された場合に良好に忍容された。化合物Iもしくはビヒクル治療に関連する明白な眼毒性は、いずれの試験における臨床的眼科検査もしくは顕微鏡検査中にも見出されなかった。
24日間試験で、化合物Iのシクロデキストリンベース液剤を用いて治療された眼からの眼組織中濃度は、第24日の初回局所眼投与の1時間±15分後に、角膜中が最高で(6.49から30μM)あり、降順で>>中心穿孔脈絡膜中(0.212から0.769μM)>中心穿孔網膜中(0.0531から0.124)>眼房水中(0.002から0.007)であると評価された。
要約すると、用量限定性角膜毒性が化合物I眼科用点眼ゲル製剤を用いて観察された。眼科用点眼ゲルは、シクロデキストリンベース液剤に比較して化合物Iの角膜中濃度を5から約15倍増大させ、Trisベース懸濁剤に比較して化合物Iの角膜中濃度を15倍から100倍増大させる。化合物IのTrisベース懸濁剤およびシクロデキストリンベース液剤は、明白な眼毒性の徴候を伴わずに良好に忍容された。化合物Iのシクロデキストリンベース液剤もしくはTrisベース懸濁剤に対して良好に忍容された投与レベルは、1日1回もしくは2回投与された場合に少なくとも30日間にわたり約0.005%から約5.0%(w/v)の範囲に及んだ。シクロデキストリンベース液剤はさらに、等モル用量の3種の製剤を使用した場合に最も高い化合物Iの中心脈絡膜中濃度を生じさせ、標的治療濃度を満たした、または超えた。
[実施例9]
新生血管AMDを有する患者における用量漸増試験のための第1相プロトコル
第1相試験は、新生血管加齢性黄斑変性症(AMD)を有する患者における化合物Iの局所眼投与後の安全性、忍容性および薬物動態を評価するために設計された12週間オープンラベル用量漸増多施設共同臨床試験である。計60例までの患者が1日1から2回、3カ月間にわたり化合物I眼科用液剤の局所眼投与により治療されるが、このとき3群の用量漸増単剤療法群、およびLUCENTIS(R)+最大忍容単剤療法用量の単回硝子体内注射を使用する1群の補助療法群を計画する(1治療群当たり患者15例)。独立読影センターによって確証された、事前に規定された視覚およびCNV病変基準を満たす患者は、同時に局所眼投与を中止して標準的ケアを行う治療を受ける。
臨床試験のための化合物I眼科用液剤は、0.1%から1.0%の範囲にわたる少なくとも(化合物Iとして)3種の用量強度で製造される。GLPバッチのための強度は、0%(プラセボ)、0.1%、0.3%、0.6%および1.0%の化合物I HClである。2倍から3倍までの増分用量(およそ1/2対数単位工程)は後続のコホートに投与される。
[実施例10]
0.1から1.0%(1から10mg/mL)の薬物強度にわたって物理的および化学的の両方で安定性である「非ゲル」、「非粘性」の均質な眼科用液剤局所製剤を、化合物Iの溶解度および安定性に関して化合物Iの濃度、シクロデキストリン錯化剤濃度、pHおよび張性を測定することによって調製した。適切な緩衝系は、1mg/mL未満の濃度での安定性に関するpHドリフトを防止する。ホスフェートおよびトロメタモール(Tris)はどちらも緩衝剤であると評価された。ナトリウムクロリドは、張性を調整するために使用された。
製品の品質属性は、表14に示した。
製剤の調製
表12および13に略記した製剤は、列挙した一般方法を用いて調製した。
製剤は、注射用水を用いて所定の容積に作成し、500rpmで30分間撹拌した。最終pHをチェックし、NaOHもしくはHClいずれかを用いて標的範囲へ調整した。およそ5mLのアリコートは、Flexiconフィルターに据え付けて0.2ミクロンのPVDFカプセルフィルターに取り付けたWatson Marlow社製Pumpsil Dチュービングを用いて一定速度で持続的に撹拌しながら、5mLの半透明LDPEボトル内へ直接的にろ過する。サンプルは、全サンプル調製が完了するまで2から8℃で保管する。全サンプルはこの後、保管および試験のために分析を受けることになる。
参照による組み込み
本明細書で言及した特許文献および科学論文の各々の全開示は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。本開示では、多数の文献は十分な特殊性および本開示が参考文献の状況に基づいて重要であると見なされる材料を用いて同定されている。刊行物および特許文献の言及は、いずれかが適切な先行技術であると承認することは意図しておらず、同一物の内容および日付に関して何らかの承認を構成するものではない。ここまで本発明を文書による説明によって記載してきたが、当業者であれば、本発明は様々な実施形態で実施できること、および上記の説明および実施例は例示するためであって下記の特許請求の範囲を限定するものでないことを認識できる。
同等物
本発明は、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱せずに他の特定形態で実施することができる。このため上記の実施形態は、本明細書に記載した本発明を限定するのではなくむしろあらゆる面で例示と見なすべきである。従って本発明の範囲は、上記の説明によってではなくむしろ添付の特許請求の範囲によって指示され、特許請求項の同等性の意味および範囲に含まれる全ての変更点はこの中に包含されることが意図されている。