JP6964344B2 - 表面処理剤、表面処理方法、表面処理基材、及び表面処理基材の製造方法 - Google Patents
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Description
[1] 次式(1):
で示されるポリマー化合物。
[2] 式(1)で示される化合物が次式(2):
で示される構造を有するポリマーである、[1]に記載の化合物。
[3] a/(a+b)の値が0.30〜0.99である、[1]又は[2]に記載の化合物。
[4] 基材の表面を親水化することができるものである、[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物。
[6] 水溶液の形態である、[5]に記載の処理剤。
[7] [5]又は[6]に記載の処理剤を基材の表面に塗布する工程を含む、基材の表面処理方法。
[8] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[4]のいずれかに記載の化合物を含有する親水性コーティング層と、を有する、表面処理基材。
水系溶媒中レドックス重合開始剤を用いて重合することを特徴とする、方法。
[10] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に化学的に固定化された親水性コーティング層とを有する表面処理基材の製造方法であって、
前記基材にプラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、及び過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程、及び
前記基材上に[5]又は[6]に記載の処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む、方法。
[11] 前記基材をシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理する工程をさらに含む、[10]に記載の方法。
[12] 前記基材が、ガラス基材、シリコン基材、金属基材、金属酸化物基材、シリコーンゴム基材、シリコーンハイドロゲル基材、及びセラミックス基材からなる群から選択される、[10]又は[11]に記載の方法。
[13] シランカップリング剤又はチタンカップリング剤の少なくとも一つをさらに含む、[5]又は[6]に記載の表面処理剤。
[14] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に親水性コーティング層とを有する表面処理基材の製造方法であって、
前記基材に、プラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程、及び
前記基材上に[13]に記載の処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む、方法。
(1)本発明の表面処理ポリマーは、基材表面に存在するシラノール基又はチタノール基の少なくとも一つとの脱水縮合反応により基材表面へ化学的に固定可能であり、基材表面に安定的に結合することができる。
(2)本発明の表面処理ポリマーは、防汚性、潤滑性(低摩擦性)、防曇性、及び自己浄化機能(セルフクリーニング)の少なくとも一つを基材表面に付与することができる。
(3)本発明の表面処理ポリマーは、水系溶媒中レドックス重合開始剤を用いた重合反応により沈殿やゲル化を生じることなく、多様な組成で合成することができる。
(4)本発明の表面処理ポリマーは、多様な表面に対して固定されうる。
本発明のポリマー化合物は、側鎖にホスホリルコリン基を含むユニット、及び側鎖にホスホン酸基を含むユニットを有する二元系ポリマー化合物である。
R1及びR2におけるフェニル基の置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、水酸基、チオール基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、シリル基、メタンスルホニル基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C2−6アルキニル基、C3−8シクロアルキル基、C6−10アリール基、C1−6アルコキシ基、C2−7アシル基又はC2−7アルコキシカルボニル基などを挙げることができる。
R1及びR2は同一であっても、異なっていてもよい。重合反応性の点では同一であることが好ましく、特に好ましくは両方が−C(O)O−で示される基である。
mは、1以上の整数を表し、好ましくは1〜12の整数、より好ましくは1〜4の整数、特に好ましくは2である。
nは、1以上の整数を表し、好ましくは1〜12の整数、より好ましくは1〜6の整数、特に好ましくは1である。
さらに好ましくは、重合溶媒への溶解性の点で式(b1)の化合物であり、特に、nが1である化合物が好ましい。
また、X1を含む構造単位及び/又はX2を含む構造単位は一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
式(2)において、nは、1以上の整数を表し、好ましくは1〜12の整数、より好ましくは1〜6の整数、特に好ましくは1である。
式(1)又は(2)で示されるポリマーの合成は、基本的には、当業者の技術水準に基づき、常法により行うことができる。例えば、MPCユニットを構成するモノマー及びPAユニットを構成するモノマーを含む単量体を、重合開始剤を用いてラジカル重合する方法が挙げられる。ラジカル重合としては、レドックス重合開始剤を用いた方法(方法1)又はラジカル重合開始剤を用いた方法(方法2)が挙げられる。
式(1)又は(2)で示されるポリマー化合物は、レドックス重合開始剤を用いたレドックス重合、より好ましくは溶液重合により合成されることが好ましい。本願発明者らは、驚くべきことに、MPCユニットを構成するモノマー及びPAユニットを構成するモノマーを含む単量体を、水性溶媒中、レドックス重合開始剤を用いて重合することにより、ゲル化及び沈殿を抑止しつつ、多様な組成のポリマー化合物が得られることを見出した。本方法によれば、重合物の沈殿やゲル化を抑制することができ、これにより基材表面に化学的結合により固定可能で、高分子量(例えば、重量平均分子量15,000〜600,000)の共重合体を得ることができる。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(溶離液:リン酸バッファー、ポリエチレングリコール標準、UV(210nm)及び屈折率による検出)により測定することができる。
また、レドックス重合反応は室温(約10℃〜約35℃)でも可能である。室温での反応は、加熱等の必要が無く、製造コストを低減できる点で好ましい。
また、水溶液重合及び水溶液によるコーティングは揮発性有機化合物(VOC)の問題を回避できる。
中でも好ましくは、過硫酸アンモニウムとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとの組み合わせである。
当該反応は水性溶媒中で行われるが、その際の単量体の水溶液濃度としては特に制限されない。反応時間は特に制限されないが、例えば、1〜6時間である。
本発明のポリマー化合物は、特定条件でラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合により合成することができる。具体的には、有機溶媒中での溶液重合が好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量はモノマーの重合性や必要とする重合体の分子量に応じて調節することが可能であるが、単量体の全重量(100重量部)に対して、0.001〜3重量部が好ましく、0.01〜1重量部がより好ましい。
本発明の表面処理剤は、上記ポリマー化合物を含むものであり、基材の表面を親水化することができるものである。表面処理剤は、後述するように、基材の表面に塗布することにより表面処理を行うことができるものである。
本発明の表面処理剤は、上記ポリマー化合物以外に、一般的に基材の表面処理剤の成分として用いられる任意の他の成分(例えば、各種溶媒、pH調整剤等)を含むものであってもよく、限定はされない。溶媒としては、例えば、水、水とアルコールとの混合溶媒等が好ましく挙げられ、特に好ましくは水である。
前記二元系ポリマーの濃度は、例えば、0.05重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。ポリマーの均一な溶液が得られる限りポリマーの濃度の上限は特に制限されないが、例えば溶液の粘性を考慮し、5重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましい。
本発明の処理剤を溶液として使用する場合のpHは、例えば3〜11であり、好ましくは3〜7である。
本発明の表面処理方法は、対象基材である基材の表面を親水化する方法であり、具体的には、上述した本発明の表面処理剤を基材の表面に塗布する工程(塗布工程)を含む方法である。これにより、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に親水性コーティング層とを有する表面処理基材が得られる。
親水性コーティング層の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜決定すればよい。通常、親水性コーティング層は、基材表面と化学結合を介して固定された上記ポリマー化合物の一層分から形成されている。親水性コーティング層の厚さは、例えば、30〜100nmが好ましい。親水性コーティング層の厚さは表面処理剤としてのポリマー化合物の構造(例えば、式(1)及び(2)中のn)の制御により制御することができる。
特に、シリコン基材、ガラス基材、シリコーンゴム基材などのシロキサン結合を含む基材表面は、上記処理を行うことによりシラノール基が活性化し、後述するホスホン酸残基との化学結合を形成が促進されて、密着性、固定力が向上し得る。
本発明の表面処理剤は、基材に物理的相互作用により物理的に固定されていてもよいが、化学的結合を介して化学的に固定されていることが好ましい。
本発明のポリマー化合物は、X2を含む構造単位(PAユニット)の側鎖にホスホン基(−P(=O)(OH)2)を有する。当該ホスホン基が基材表面のホスホン酸基と相互作用可能な官能基と脱水縮合反応することにより、基材表面にポリマー化合物が化学的に固定され得る。
ホスホン酸基と相互作用可能な官能基としては、特に制限されないが、例えばシラノール基(Si−OH)、チタノール基(Ti−OH)、Zr−OH基が挙げられる。これらとホスホン酸基が反応することにより、ホスホン酸基のリン原子(P)とシラノール基(Si−OH)又はチタノール基(Ti−OH)又はZr−OH基のシリコン原子(Si)又はチタン原子(Ti)又はジルコニウム原子(Zr)とが酸素原子(O)を介して結合する。
したがって、これらの基材について
(1)必要に応じて、プラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、及び過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程;及び
(2)基材上に上記の表面処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む方法により表面処理することができる。当該表面処理により、基材上に親水性コーティング層を形成することができ、これにより、基材上の少なくとも一方の面に親水性コーティング層を有する表面処理基材が製造される。
すなわち、これらの基材について
(1)酸素プラズマ処理を施す工程;及び
(2)基材上に上記の表面処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む方法により表面処理することができる。当該表面処理により、従来必要であったシランカップリング剤やチタンカップリング剤の処理を行うことなく、シリコーンゴム基材又はシリコーンハイドロゲル基材上に親水性コーティング層を形成することができ、これにより、基材上の少なくとも一方の面に親水性コーティング層を有する表面処理基材が製造される。
この他、ポリメタクリル酸メチル(メタクリル樹脂;PMMA)等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、及びポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン等のポリマー基材にも適用できる。
なお、上記で例示した基材のうち、例えばステンレス基材は、表面にホスホン酸基と相互作用可能な官能基を有する組成のものも存在し、かかる場合には、シランカップリング剤又はチタンカップリング剤での処理は不要であり、上述したホスホン酸基との脱水縮合反応によりポリマー化合物の表面固定が可能である。
(1)基材をシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理する工程;
(2)必要に応じて、プラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、及び過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程;及び
(3)基材上に上記の表面処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む方法により表面処理することができる。当該表面処理により、基材上に接着層(シランカップリング剤又はチタンカップリング剤を含有する層)を介して親水性コーティング層を形成することができ、これにより、基材上の少なくとも一方の面に親水性コーティング層を有する表面処理基材が製造される。
すなわち、一実施形態の方法は、
(1)プラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、及び過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程;及び
(2)基材上に上記の表面処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む。当該方法により、基材上に親水性コーティング層を形成することができ、これにより、基材上の少なくとも一方の面に親水性コーティング層を有する表面処理基材が製造される。
(1)必要に応じて、プラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、及び過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程;及び
(2)基材上に、上記ポリマー化合物及びシランカップリング剤又はチタンカップリング剤の少なくとも一つを含む表面処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む方法により表面処理することができる。当該表面処理により、基材上に親水性コーティング層を形成することができ、これにより、基材上の少なくとも一方の面に親水性コーティング層を有する表面処理基材が製造される。当該方法によれば、親水性コーティング層を有機・無機ハイブリッド構造で構築することができ、この際、ホスホン酸残基が酸触媒効果を発現する。すなわち、ポリマー側鎖のホスホン酸が水溶液中でプロトン解離することにより、表面処理剤の水溶液は低pH(3〜4)を示し、酸触媒として機能し得る。したがって、当該表面処理剤の水溶液とシランカップリング剤及び/又はチタンカップリング剤とを共存させることにより、シランカッブリング剤の加水分解が進行し、続いてシラノール基又はチタノール基とホスホン酸基とが脱水縮合反応することにより、3次元的な有機−無機ハイブリッド構造を基材表面に構築できる。
実施例において使用される略語は当業者に周知の慣用的な略語である。いくつかの略語を以下に示す。
EtOH:エタノール
MeOH:メタノール
iso-PrOH:イソプロパノール
AC:アセトン
TOL:トルエン
n−:ノルマル
TEOS:テトラエトキシシラン
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC) (C11H22NO6P Mw=295.27 CAS 67881-98-5)と、Phosmer M (acid phosphoxy ethyl methacrylate) (C6H11O6P Mw=210.12 CAS 24599-21-1)をモノマーとして用いた2元共重合体(PMPh、次式)の合成
(PMPh 1〜PMPh 8の合成)
モノマーとして上記MPC及びPhosmer M、レドックス重合開始剤(酸化剤)として過硫酸アンモニウム(APS)、重合促進剤(還元剤)としてN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を用い、表1Aに示す配合にて、反応溶媒としての純水15mLにモノマー濃度が0.5mol/Lになるよう溶解した後、溶液を試験管に移し、アルゴンバブリングして系中の酸素を脱気した(20分)。ガスバーナーで封管して、室温下にて重合反応した(24時間)。その後開管して水600mLと混和し、限外ろ過装置(テクノオフィス・カネコ製 ゲンゴロウ)にて連続限外ろ過を行い、未反応物を除去、回収して凍結乾燥して表1Aに示す試料を得た。
なお、上記では共重合体の製造後、限外ろ過精製及び凍結乾燥を行っているが、得られた水溶液をそのままMPCポリマーコーティング用の表面処理剤として使用することができる。
モノマーとして上記MPCモノマー及びPhosmer M、レドックス重合開始剤(酸化剤)として過硫酸アンモニウム(APS)、重合促進剤(還元剤)としてN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を用い、表1Bに示す配合にて、反応溶媒としての純水15mLにモノマー濃度が0.5mol/Lになるよう溶解した後、反応溶液を試験管に移し、アルゴンバブリングして系中の酸素を脱気した(20分)。ガスバーナーで封管して、室温下にて重合反応した(24時間)。その後開管して水600mLと混和し、さらにpH調整のためにリン酸を添加し、限外ろ過装置(テクノオフィス・カネコ製 ゲンゴロウ)にて連続限外ろ過を行い、未反応物を除去、回収して凍結乾燥して表1Bに示す試料を得た。PMPh w11では、リン酸に代わり、塩酸を用いてpH調整した。
2−1 ラジカル重合開始剤又は低温ラジカル重合開始剤を用いた反応
(PMPh 9〜PMPh 19の合成)
モノマーとして上記MPC及びPhosmer M、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(C8H12N4 Mw=164.21 CAS 78-67-1)又は低温ラジカル重合開始剤である2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)(Mw=308.43 CAS 15545-97-8)を用い、表2に示す配合にて、反応溶媒15mLにモノマー濃度が0.5mol/Lになるように溶解した後、溶液を試験管に移し、0℃でアルゴンバブリングして系中の酸素を脱気した(20分)。ガスバーナーで封管して、AIBNを用いた場合には60℃、V-70を用いた場合は30℃に保持したオイルバスで重合反応させた(24時間)。その後開管して、水600mLと混和し、限外ろ過装置(テクノオフィス・カネコ製 ゲンゴロウ)にて連続限外ろ過を行い、未反応物と溶媒を除去し、回収して凍結乾燥して表2に示す試料を得た。
合成したポリマーのうち、沈殿を生じたもの(PMPh9〜18)は水に溶解し、水溶液をコーティングに使用することができる。一方、ゲル化を生じたもの(PMPh19)はさらに水に溶解させた場合であっても、ミクロゲルを生じ、水溶液コーティングに使用することができず、しかも、基材表面への固定ができない。
(PMPh 20〜PMPh 23の合成)
モノマーとして上記MPC及びPhosmer M、開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物 VA-057(Mw= 414.46 CAS 1041483-94-6)を用い、表3に示す配合にて、純水、NaOH水溶液(pH11.8)、又は硫酸水溶液(pH2.0) 15mLにモノマー濃度が0.5mol/Lになるよう溶解した後、溶液を試験管に移し、0℃にてアルゴンバブリングして系中の酸素を脱気した(20分間)。試験管をガスバーナーで封管して、60℃オイルバスで重合反応させた(24時間)。その後、開管して水600mLと混和し、限外ろ過装置(テクノオフィス・カネコ製 ゲンゴロウ)にて連続限外ろ過を行い、未反応物を除去した。回収して凍結乾燥して表3に示す試料を得た。
重合において一旦ゲル化したものは大量の水に溶解させた場合であってもミクロゲル状態を形成するため、コーティングには不適である。
1.表面処理ガラス基材サンプル(サンプル1〜3)、シリコン基材サンプル(サンプル4〜6)、チタン基材サンプル(サンプル7)の調製
(1)酸素プラズマ処理(表面活性化)
ガラス製基板(松浪硝子社製、製品名スライドグラス S1111)、20mm x 60mmに切断したシリコン製基板(フルウチ化学社製)、チタン製基板(ニラコ社製、製品名TI-453327)を中性洗剤で洗浄し、純水でリンスした後、さらにアセトンで洗浄後、室温で乾燥させた。
MPCポリマーコーティングする直前に酸素プラズマ処理(ヤマト科学PR500:25ml/minO2、50W、5min)を行い、表面を活性化させた。
上記で得たNo.6〜8のポリマー(PMPh6〜PMPh8)を水に溶解し、表面処理液としてのPMPh水溶液(0.1wt%)を調製した。
酸素プラズマ処理直後の基材を、表面処理液中に1時間浸漬した後、取り出し一晩100℃で乾燥した。次いで、表面を水中でこすり洗いした後、超音波洗浄を5分間行い、自然乾燥して、基材両面にコーティング層(各50nm)を有するサンプルを得た。
ガラス製基板及びシリコン製基材には、PMPh6、PMPh7、又はPMPh8の表面処理液を用いてサンプルを製造した。チタン製基板には、PMPh6の表面処理液を用いてサンプルを製造した。これにより、表面処理ガラス基材サンプル(サンプル1〜3)、表面処理シリコン基材サンプル(サンプル4〜6)、表面処理チタン基材サンプル(サンプル7)を得た。
MPCポリマーコーティングを施したサンプル(サンプル4)をXPS(X線光電子分光法)測定装置(島津製作所Kuratos)を用いて、サンプル基材表面の元素分析を行った。
MPCポリマーコーティングを施したシリコン基材サンプル表面に、未処理のシリコン基材には存在しない133eV付近のPならびに403eV付近に4級アンモニウムNのピークを確認した(図1〜2)。いずれもMPCポリマー由来のピークであり、シリコン基材表面でのMPCポリマーの存在を示している。
ガラス基材サンプルおよびチタン基材サンプルにおいても、シリコン基材サンプルと同様に、未処理基材には存在しない133eV付近のPならびに403eV付近に4級アンモニウムNのピークを確認した(図示せず)。
(1)下地処理層の形成(表面ガラス化)
20×60mmに切断したSUS304基板(ニラコ社製、製品名753323)を中性洗剤で洗浄して純水でリンスした後、さらにアセトンで洗浄後、室温で乾燥させた。シランカップリング剤の一つであるテトラエトキシシラン(TEOS)(和光純薬)をゾルゲル法にてSUS304基板上にコーティングし、ステンレス表面上にガラスの薄膜層を形成した。
具体的には、モル比で、TEOS : n-ブタノール : エタノール : 純水 : リン酸 = 1 : 7 : 7 : 7 : 0.05の組成比でコーティング溶液を調製し、ディッピング法によりステンレス基板上にコーティングし、その後100℃で加熱した。これにより、ステンレス基材表面上にシラノール基を有する薄膜層を形成した。
MPCポリマーコーティングする直前に酸素プラズマ処理(ヤマト科学PR500:25ml/minO2、50W、5min)を行い、表面を活性化させた。
酸素プラズマ処理直後の基材を、1(2)と同様の方法にて、基材両面にNo.6〜8のポリマー(PMPh6〜PMPh8)を含有するコーティング層(各50nm)を有するサンプル(サンプル8〜10)を得た。
MPCポリマーコーティングを施したサンプルをXPS(X線光電子分光法)測定装置(島津製作所Kuratos)を用いて、サンプル基材表面の元素分析を行った。
MPCポリマーコーティングを施したステンレス基材サンプル表面に、未処理のステンレス基材には存在しない133eV付近のPならびに403eV付近に4級アンモニウムNのピークを確認した(図示せず)。いずれもMPCポリマー由来のピークであり、シリコン基材表面でのMPCポリマーの存在を示している。
(1)シリコーンゴム基材の作製
内側を70mm x 70mm にくりぬいたシリコーンゴム(厚さ0.5mm)をスペーサーとし、PET板(3mm x 100mm x 100mm)で挟み込んでモールドを作製した。
Sylgard(登録商標)184 シリコーン・エラストマー(東レ・ダウコーニング)の主剤及び硬化剤(10:1)の所定量をナスフラスコに取り、エバポレーターで減圧脱泡しながら混錬し、モールド内にエラストマー液を流し込み、100℃で1時間反応させた。硬化後取り出して20mm x 60mmに切断してサンプルとした。
MPCポリマーコーティングする直前に酸素プラズマ処理(ヤマト科学PR500:25ml/minO2、50W、20s)を行い、表面を活性化させた。
酸素プラズマ処理直後の基材を、1(2)と同様の方法にて、基材両面にNo.6のポリマー(PMPh6)を含有するコーティング層を有するサンプル(サンプル11)を得た。
MPCポリマーコーティングを施したサンプル(サンプル11)をXPS(X線光電子分光法)測定装置(島津製作所Kuratos)を用いて、サンプル基材表面の元素分析を行った。
MPCポリマーコーティングを施したシリコーンゴム基材サンプル表面に、未処理のシリコーンゴム基材には存在しない133eV付近のPならびに403eV付近に4級アンモニウムNのピークを確認した(図3〜4)。いずれもMPCポリマー由来のピークであり、シリコン基材表面でのMPCポリマーの存在を示している。
(1)酸素プラズマ処理(表面活性化)
基材として、市販シリコーンハイドロゲルとして、メダリスト(ボシュロム社)、AIR OPTIX(アルコン社)、プレミオ(メニコン社)を用いた。
これらをそれぞれケースから取り出し、生理食塩水に置換して自然乾燥させた後、プラズマ装置(ヤマト科学 PR500)にて酸素プラズマ処理(ヤマト科学PR500:30ml/min O2、50W、1分間)を行い、表面を活性化させた。
酸素プラズマ処理直後の基材を、1(2)と同様の方法にて、基材表面にNo.6のポリマー(PMPh6)を含有するコーティング層(50nm)を有するサンプル(サンプル12〜14)を得た。
MPCポリマーコーティングを施したサンプル(サンプル13)をXPS(X線光電子分光法)測定装置(島津製作所Kuratos)を用いて、サンプル基材表面の元素分析を行った。
MPCポリマーコーティングを施したシリコーンハイドロゲル基材(AIR OPTIX)サンプル表面に、未処理のシリコーンゴム基材には存在しない133eV付近のPならびに403eV付近に4級アンモニウムNのピークを確認した(図5〜6)。いずれもMPCポリマー由来のピークであり、シリコン基材表面でのMPCポリマーの存在を示している。
他のシリコーンハイドロゲル基材サンプルにおいても、上記シリコーンハイドロゲル基材サンプルと同様に、未処理基材には存在しない133eV付近のPならびに403eV付近に4級アンモニウムNのピークを確認した(図示せず)。
(1)酸素プラズマ処理(表面活性化)
25×25mmに切断したアルミニウム基板(Al1050)、金属銅基板(C1100)、SUS304基板、SUS316L基板を中性洗剤で洗浄し、純水でリンスした後、さらにアセトンで洗浄後、室温で乾燥させた。
MPCポリマーコーティングする直前に酸素プラズマ処理(ヤマト科学PR200:30ml/minO2、50W、2min)を行い、表面を活性化させた。
(2)MPCポリマーコーティング(表面処理)
上記で得たNo. w9のMPCポリマー(PMPh w9; MPC:PhosmerM=70:30(モル比);リン酸によるpH調整)を水に溶解し、表面処理液としてのPMPh w9水溶液(0.5wt%)を調製した。
また、上記で得たNo. w11のMPCポリマー(PMPh w11; MPC:PhosmerM=90:10(モル比); 塩酸によるpH調整)を水に溶解し、表面処理液としてのPMPh w11水溶液(0.5wt%)を調製した。
酸素プラズマ処理直後の基材を、PMPh w9又はPMPh w11の表面処理液中に1時間浸漬した後、取り出し一晩60℃で乾燥した。次いで、表面を水中でこすり洗いした後、自然乾燥して、基材両面にコーティング層(各50nm)を有するサンプルを得た。これにより、表面処理アルミニウム基材サンプル(サンプル15〜16)、表面処理金属銅基材サンプル(サンプル17〜18)、表面処理ステンレス基材サンプル(サンプル19〜22)を得た。
(1)方法
水中接触角を、自作の測定装置を用いてキャプティブバブル法で測定した。
測定装置:図7に示す測定装置を組み上げ、MPCポリマーコーティングした各種表面処理基材サンプルを治具に固定し、治具をポンプで吸引して水中で保持した。マイクロシリンジから気泡を押し出してサンプル表面に吸着させ、CMOSカメラで吸着した気泡を撮影し、画像処理により水中接触角を求めた。図8中、接触角θが大きいほど、基材表面の親水性が高いことを意味する。
(i)表面処理ガラス基材
未処理のガラス基材では170°だったものが(図示せず)、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル1〜3)では、同様に170°前後の値を示し、大きな変化は見られなかった(図9)。
(ii)表面処理シリコン基材
未処理のシリコン基材では 158°だったものが、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル4〜6)では、167°以上に向上した(図10)。
(ii)表面処理チタン基材
未処理のチタン基材では132°だったものが、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル7)では、168°以上に向上した(図11)。
(iii)表面処理ステンレス基材
(a)表面処理SUS304基材(シランカップリング剤処理あり)
未処理のSUS304基材では138°だったものが、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル8〜10)では、169°以上に向上した(図12A)。
(b)表面処理SUS304基材(シランカップリング剤処理なし)
未処理のSUS304基材では136°だったものが、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル19〜20)では、169°に向上した(図12B)。
(c)表面処理SUS316L基材(シランカップリング剤処理なし)
未処理のSUS316L基材では142°だったものが、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル21〜22)では、168°に向上した(図12C)。
(iv)表面処理シリコーンハイドロゲル基材
未処理のシリコーンハイドロゲル基材(コンタクトレンズ)に比べて、メダリスト(ボシュロム)、AIR OPTIX(アルコン)、プレミオ(メニコン)をMPCポリマー処理したサンプル(サンプル12〜14)では5°以上値が大きく向上したことから、表面の親水性が向上したことを示している(図13)。
(v)表面処理アルミニウム基材
未処理のアルミニウム基材では139°だったものが、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル15〜16)では、168°に向上した(図14)。
(vi)表面処理金属銅基材
未処理の金属銅基材では131°だったものが、MPCポリマー処理したサンプル(サンプル17〜18)では、167°以上に向上した(図15)。
(1)方法
未処理の基材及びMPCポリマーコーティングを施したサンプルに、それぞれ油性インク(朱肉)を一滴ずつ塗布して乾燥後、水中に浸漬させ、2分後、基材を取り出すことにより基材を水洗浄した。
(2)結果
インク塗布後及び水洗浄後の未処理基材及びMPCポリマーコーティングサンプル(PMPh6を使用)
の写真を図16〜19に示す。図16はガラス基材、図17はシリコン基材、図18はチタン基材、図19はステンレス基材の写真である。
図16〜19から、未処理のサンプルでは、水洗浄によってもインクの汚れは基材表面に依然として吸着していたが、MPCポリマーコーティングサンプル上では、数分の内にインクの汚れが自発的に洗い流され、基材表面にインクの吸着が全くみられなかった。
Claims (12)
- 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に、次式(1):
で示されるポリマー化合物を含有する親水性コーティング層と、を有し、
前記ポリマー化合物は、前記ポリマー化合物に含まれるホスホン酸基と前記基材表面のホスホン酸基と相互作用可能な官能基との脱水縮合反応による化学的結合を介して化学的に固定されている、表面処理基材。 - a/(a+b)の値が0.30〜0.99である、請求項1又は2に記載の表面処理基材。
- 前記ポリマー化合物は、基材の表面を親水化することができるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理基材。
- 前記基材が、ガラス基材、シリコン基材、金属基材、金属酸化物基材、シリコーンゴム基材、シリコーンハイドロゲル基材、及びセラミックス基材からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理基材。
- 前記基材表面のホスホン酸基と相互作用可能な官能基は、シラノール基(Si−OH)、チタノール基(Ti−OH)、及びZr−OH基からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理基材。
- 前記親水性コーティング層の厚さは、30〜100nmの範囲である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理基材。
- 基材の表面処理方法であって、
前記基材にプラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、及び過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程、および
次式(1):
で示されるポリマー化合物を含む、表面処理剤を基材の表面に塗布する工程を含む、方法。 - 前記ポリマー化合物は、前記ポリマー化合物に含まれるホスホン酸基と前記基材表面のホスホン酸基と相互作用可能な官能基との脱水縮合反応による化学的結合を介して化学的に固定される、請求項8に記載の方法。
- 前記表面処理剤は水溶液の形態である、請求項8または9に記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の表面処理基材の製造方法であって、
前記基材にプラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、オゾン水処理、及び過酸化水素水/フェントン反応溶液処理からなる群の少なくとも一つを施す工程、及び
前記基材上に、前記式(1)で示されるポリマー化合物を含む表面処理剤を塗布し、乾燥する工程
を含む、方法。 - 前記基材をシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
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