JP7349194B2 - 被覆体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆体の製造方法に関する。特に、基材の表面の少なくとも一部に、防汚性等に優れた被膜が、優れた耐久性で設けられた被覆体の製造方法に関する。
基材の表面への汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。例えば、基材の表面への汚れの付着を防止する技術として、基材の表面を親水化する方法が知られている。
表面の親水化方法としては、基材の表面を酸化チタン等の光触媒材料で改質し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような光触媒による表面改質では、その光触媒機能により、光触媒を基材に固定するバインダーや基材自体が分解してしまう場合があり、耐久性に問題があった。
また、基材の表面を親水化する方法としては、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等がある。これらの方法は、基材の表面を高度に親水化することができるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、一般的な親水性材料は、構造内にイオン性基を有するため、かえって、タンパク質等の汚れとなる成分を吸着しやすい。
また、所定の親水性ポリマーを基材に被覆する方法(特許文献2参照)もあるが、基材と親水性ポリマーとの密着性を十分に優れたものとすることが困難であり、基材を親水性ポリマーで被覆してなる被覆体の耐久性を十分に優れたものとすることが困難であった。また、特許文献2では、親水性ポリマーの付与に先立って、基材にプラズマ処理等の表面処理を行うことも提案されているが、これらの表面処理を施した場合でも、基材と親水性ポリマーとの密着性を十分に優れたものとすることが困難であり、基材を親水性ポリマーで被覆してなる被覆体の耐久性を十分に優れたものとすることが困難であった。
このように、従来においては、防汚性と耐久性とを両立することは困難であった。
国際公開第1996/029375号パンフレット 国際公開第2018/008663号パンフレット
本発明の目的は、親水性、防汚性に優れた被膜が、優れた耐久性で設けられた被覆体の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記[1]~[8]に記載の本発明により達成される。
[1] 基材に対し、オゾン濃度が50g/m 以上1000g/m 以下であるオゾンのファインバブル水を用いたオゾンファインバブル処理を行うオゾンファインバブル処理工程と、
前記オゾンファインバブル処理が施された前記基材に対し、下記式(1)で示される構造を有する高分子化合物を用いて、厚さが0.03μm以上10μm以下の被膜を形成する被膜形成工程とを有することを特徴とする被覆体の製造方法。
(式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、重合した状態の重合性原子団を表し;RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、または、-C(O)-、-C(O)O-もしくは-O-で示される基を表し;Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し;mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、2以上の整数を表し;Xを含む構造単位およびXを含む構造単位はランダムな順序で結合している。)
[2] 前記基材の前記高分子化合物が付与される部位における前記高分子化合物の付与量が0.01mg/cm 以上10mg/cm 以下である上記[1]に記載の被覆体の製造方法。
[3] 単位体積当たりの前記ファインバブル水中に含まれる粒径が100μm以下の前記オゾンの気泡の個数は、2.0×10 個/mL以上1.0×10 11 個/mL以下である上記[1]または[2]に記載の被覆体の製造方法。
[4] 前記オゾンのファインバブルの平均粒径が0.08μm以上0.50μm以下である上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の被覆体の製造方法。
[5] 前記被膜形成工程より前に、前記基材に対して、超音波処理を施す超音波処理工程を有する上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の被覆体の製造方法。
[6] 前記超音波処理は、前記オゾンファインバブル処理と同一工程で行う上記[5]に記載の被覆体の製造方法。
[7] 前記被膜形成工程より前に、前記基材に対して、紫外線を照射する紫外線照射処理を施す紫外線照射工程を有する上記[1]ないし[6]のいずれかに記載の被覆体の製造方法。
[8] 前記紫外線照射処理は、前記オゾンファインバブル処理と同一工程で行う上記[7]に記載の被覆体の製造方法。
本発明によれば、親水性、防汚性に優れた被膜が、優れた耐久性で設けられた被覆体の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明に係る被覆体の製造方法の一例を模式的に示す縦断面図である。 図2は、実施例1に係る被覆体、および、未処理のSUS304製のステンレス鋼鋼板についての防汚性の評価結果を示す写真である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[被覆体の製造方法]
まず、本発明に係る被覆体の製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る被覆体の製造方法の一例を模式的に示す縦断面図である。
図1に示すように、本実施形態の被覆体100の製造方法は、基材1を用意する基材用意工程(1a)と、基材1に対して、オゾンのファインバブル水を用いた処理であるオゾンファインバブル処理を行うオゾンファインバブル処理工程(1b)と、オゾンファインバブル処理が施された基材1に対し、下記式(1)で示される構造を有する高分子化合物を用いて被膜2を形成する被膜形成工程(1c)とを有する。
(式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、重合した状態の重合性原子団を表し;RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、または、-C(O)-、-C(O)O-もしくは-O-で示される基を表し;Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し;mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、2以上の整数を表し;Xを含む構造単位およびXを含む構造単位はランダムな順序で結合している。)
このような構成により、被膜2を構成する各高分子化合物と基材1との密着力を特に優れたものとすることができる。このようなことから、被膜2全体としても基材1との密着性が優れたものとなり、得られる被覆体100は、親水性、防汚性に優れた被膜2が、優れた耐久性で設けられたものとなる。また、不本意に被膜2の密着性が部分的に低下することも効果的に防止することができる。また、被覆体100は、被膜2の耐摩耗性にも優れたものとなる。特に、被膜2が単分子膜のような厚みの小さいものであっても上記のような優れた効果が確実に得られる。また、上記のような構成により、被覆体100は、防曇性にも優れたものとなる。また、オゾンファインバブル処理を採用することにより、基材1が不本意に荒れてしまうことを効果的に防止することができる。
このような優れた効果が得られるのは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、前記高分子化合物は、親水性に優れるとともに、膜としたときにその表面に汚れが付着しにくく、また、汚れが付着した場合でも当該汚れを比較的容易に除去することができるものである。また、被膜2の形成に先立って被膜2が形成されるべき基材1の表面にオゾンファインバブル処理を行うことにより、基材1の構成材料が好ましくない形態で変性、劣化することを効果的に防止しつつ、基材1の表面に水酸基をむらなく緻密にかつ効率よく導入することができる。その結果、前記高分子化合物が有するホスホン酸基(-P(=O)(OH))と、基材1の表面に導入された水酸基とを脱水縮合反応させることにより、基材1との密着性に優れた被膜2を形成することができる。特に、基材1に緻密に水酸基が導入されることにより、前記高分子化合物が分子内に有する複数個のホスホン酸基のうち、前記水酸基と反応することができないものの割合を低下させることができ、前記高分子化合物の分子内の多点で基材と共有結合を形成することができる。また、前記高分子化合物の分子鎖のうち、基材1から浮いた状態の部分を少なくすることができる。その結果、共有結合が形成されていない部位においても、基材1と被膜2との間のファンデルワールス力を大きいものとすることができる。
以下の説明では、上記のような推定のメカニズムにより、優れた効果が得られるものとして説明する。
上記のような優れた効果は、オゾンファインバブル処理と特定の高分子化合物(式(1)で示される高分子化合物)とを組み合わせることにより得られるものであって、例えば、上記以外の高分子化合物を用いた場合や、式(1)で示される高分子化合物を用いるもののオゾンファインバブル処理を行わなかった場合、オゾンファインバブル処理の代わりに他の表面処理を行った場合等には得られない。より具体的には、オゾンファインバブル処理の代わりに、例えば、プラズマ処理、UV/オゾン洗浄、コロナ放電処理、フレーム処理、通常の一般的なオゾン水処理(ミリバブルのような比較的大きいオゾンを含むオゾン水による処理)、過酸化水素水/フェントン反応溶液処理等の表面処理を施した場合には、上記のような優れた効果は得られない。
《基材用意工程》
基材用意工程では、後に詳述する処理が施される被処理物としての基材1を用意する(図1(1a)参照)。
基材1は、通常、被覆体100の主体となる部分を構成するものである。
基材1は、いかなる材料で構成されたものであってもよく、基材1の構成材料としては、例えば、Ti、Au、Cu、Fe等の各種単体金属やこれらのうち少なくとも1種を含む合金(各種ステンレス鋼、ジュラルミン等)等の金属材料、ケイ素、ダイヤモンド、黒鉛、ダイヤモンド様炭素等の炭素材料、Al、TiO、ZrO、シリコン酸化物(SiO)、Ta、マイカ、ヒドロキシアパタイト、ZnO、ITO、IGZO等の金属化合物材料、各種ガラス材料、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネートポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーや、これらの共重合体、ポリマーブレンド等の各種プラスチック材料、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の各種シリコーンゴム等の各種ゴム材料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、基材1は、構成材料が異なる部位を有するもの、例えば、互いに異なる材料で構成された層を有する積層体であってもよい。また、基材1は、組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成された部位を有するものであってもよい。
特に、基材1の少なくとも被膜2が形成されるべき部位が金属材料で形成されたものであると、基材1と、後に詳述する被膜2との密着性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
通常、基材1の形状は、製造すべき被覆体100によって決定されるものであり、通常は、製造すべき被覆体100と略同形状であるが、例えば、平板状、湾曲板状、屈曲板状等の板状、筒状、多孔状、粒状、繊維状等が挙げられる。また、基材1は、例えば、孔部、溝部、突起部等が設けられたものであってもよい。
後に詳述するオゾンファインバブル処理および被膜2の形成は、基材1の表面のうち少なくとも一部に対して行うものである。
例えば、基材1が中空部を有するものであり、後に詳述するオゾンファインバブル処理および被膜2の形成を、少なくとも、基材1の中空部の内壁面に対して行ってもよい。
本発明に係る方法では、中空部の内壁面に対しても、好適に表面処理(オゾンファインバブル処理)および被膜の形成を行うことができ、前述したような効果が確実に得られる。これに対し、従来においては、中空部の内壁面に対しては、親水性、防汚性に優れた被膜を形成するのが特に困難であった。したがって、基材1が中空部を有するものであり、後に詳述するオゾンファインバブル処理および被膜2の形成を、少なくとも、基材1の中空部の内壁面に対して行う場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
基材1については、例えば、後述する工程に供する前に、洗浄処理等の前処理を施してもよい。より具体的には、例えば、水洗、酸洗、アルカリ洗、中性洗剤等の洗剤を用いた洗浄、有機溶媒を用いた洗浄等を行うことができるが、基材1の表面に汚れが付着している場合であっても、後に詳述するオゾンファインバブル処理の条件を調整することにより、洗浄処理を省略したり、洗浄処理の条件を緩和したりすることができる。
《オゾンファインバブル処理工程》
オゾンファインバブル処理工程では、基材1に対し、オゾンのファインバブル水を用いたオゾンファインバブル処理を行う(図1(1b)参照)。
オゾンのファインバブル水は、通常、酸素ガス(O)を原料として生成したオゾン(O)を水に溶解、分散させることにより調製される。
オゾン(O)の生成方法としては、例えば、低圧水銀ランプを用いたランプ方式、無声放電方式、沿面放電方式、電気分解方式等が挙げられる。
オゾンのファインバブルの粒径は、100μm以下であればよいが、オゾンのファインバブルの平均粒径は、0.08μm以上0.50μm以下であるのが好ましく、0.10μm以上0.40μm以下であるのがより好ましく、0.12μm以上0.30μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
単位体積当たりのオゾンのファインバブル水中に含まれる粒径が0.12μm以上0.30μm以下のファインバブルの個数は、1.0×10個/mL以上1.0×1010個/mL以下であるのが好ましく、5.0×10個/mL以上5.0×10個/mL以下であるのがより好ましく、1.0×10個/mL以上1.0×10個/mL以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
単位体積当たりのオゾンのファインバブル水中に含まれるファインバブル(粒径が100μm以下のオゾンの気泡)の個数は、2.0×10個/mL以上1.0×1011個/mL以下であるのが好ましく、7.0×10個/mL以上1.0×1010個/mL以下であるのがより好ましく、2.0×10個/mL以上5.0×10個/mL以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
なお、ファインバブル水中に含まれるファインバブルの個数の測定は、例えば、1μm以上10μm以下の粒径範囲については、島津製作所社製 SALD7500nanoを用いて行うことができ、0.08μm以上1μm以下の粒径範囲については、ナノサイト社製、LM-10を用いて行うことができる。
また、オゾンのファインバブル水中におけるオゾン濃度は、50g/m以上1000g/m以下であるのが好ましく、100g/m以上700g/m以下であるのがより好ましく、150g/m以上500g/m以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
また、オゾンの消費分等を考慮して、本工程は、系内にオゾンのファインバブルを供給しつつ行うのが好ましい。
オゾンファインバブル処理の処理時間は、10分間以上600分間以下であるのが好ましく、30分間以上300分間以下であるのがより好ましく、60分間以上150分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
オゾンファインバブル処理の処理温度(ファインバブル水の温度)は、0℃以上60℃以下であるのが好ましく、4℃以上40℃以下であるのがより好ましく、5℃以上30℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
《超音波処理工程》
後述する被膜形成工程より前に、基材1に対して、超音波処理を施す超音波処理工程を有していてもよい。
これにより、オゾンファインバブル処理の処理時間を短縮しても、基材1に対する被膜2の密着性を十分に優れたものとすることができ、被覆体100の生産性をより優れたものとすることができる。また、基材1に対する被膜2の密着性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
超音波処理は、後述する被膜形成工程より前に行うことができ、例えば、オゾンファインバブル処理よりも前に行ってもよいし、オゾンファインバブル処理よりも後に行ってもよいが、オゾンファインバブル処理と同一工程で行うのが好ましい。
これにより、基材1に対する被膜2の密着性をさらに優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をさらに優れたものとすることができるとともに、被覆体100の生産性をより優れたものとすることができる。
超音波処理の処理時間は、オゾンファインバブル処理の処理時間と同一であってもよいし、オゾンファインバブル処理の処理時間より短くてもよいし、オゾンファインバブル処理の処理時間より長くてもよい。
超音波処理において付与する超音波の振動数は、20kHz以上100MHz以下であるのが好ましく、25kHz以上50MHz以下であるのがより好ましく、30kHz以上150kHz以下であるのがさらに好ましい。
これにより、オゾンのファインバブル水からオゾンが雰囲気中に放出されることを効果的に防止しつつ、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
超音波処理の処理時間は、1分間以上600分間以下であるのが好ましく、2分間以上300分間以下であるのがより好ましく、3分間以上150分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
超音波処理の処理温度(基材1の温度)は、0℃以上60℃以下であるのが好ましく、4℃以上40℃以下であるのがより好ましく、5℃以上30℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
《紫外線照射工程》
後述する被膜形成工程より前に、基材1に対して、紫外線を照射する紫外線照射処理を施す紫外線照射工程を有していてもよい。
これにより、オゾンファインバブル処理の処理時間を短縮しても、基材1に対する被膜2の密着性を十分に優れたものとすることができ、被覆体100の生産性をより優れたものとすることができる。また、基材1に対する被膜2の密着性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
紫外線照射処理は、後述する被膜形成工程より前に行うことができ、例えば、オゾンファインバブル処理よりも前に行ってもよいし、オゾンファインバブル処理よりも後に行ってもよいが、オゾンファインバブル処理と同一工程で行うのが好ましい。
これにより、オゾンファインバブルの反応性をより効果的に高めることができ、基材1に対する被膜2の密着性をさらに優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をさらに優れたものとすることができるとともに、被覆体100の生産性をより優れたものとすることができる。
これにより、基材1に対する被膜2の密着性をさらに優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をさらに優れたものとすることができる。
紫外線照射処理に用いる紫外線のピーク波長は、10nm以上400nm以下であればよく、15nm以上350nm以下であるのが好ましく、20nm以上300nm以下であるのがより好ましく、30nm以上280nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
紫外線照射処理の処理時間は、0.5分間以上10分間以下であるのが好ましく、1分間以上7分間以下であるのがより好ましく、2分間以上5分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
紫外線照射処理の処理温度(基材1の温度)は、0℃以上60℃以下であるのが好ましく、4℃以上40℃以下であるのがより好ましく、5℃以上30℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に水酸基を導入することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
《被膜形成工程》
被膜形成工程では、オゾンファインバブル処理が施された基材1に対し、下記式(1)で示される構造を有する高分子化合物を用いて被膜2を形成する(図1(1c)参照)。
(式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、重合した状態の重合性原子団を表し;RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、または、-C(O)-、-C(O)O-もしくは-O-で示される基を表し;Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し;mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、2以上の整数を表し;Xを含む構造単位およびXを含む構造単位はランダムな順序で結合している。)
前記高分子化合物については後に詳述する。
前記高分子化合物の基材1への付与は、例えば、ロールコート法、バーコート法、スプレー法等の各種塗布法や、スクリーン印刷法、インクジェット法等の各種印刷法、浸漬法等の各種の方法により行うことができる。
基材1の所定の部位に前記高分子化合物を選択的に付与する等の目的で、基材1の一部をマスクしてもよい。
前記高分子化合物の基材1への付与を浸漬法により行う場合、前記高分子化合物を含む組成物中への基材1の浸漬時間は、特に限定されないが、1分間以上60分間以下であるのが好ましく、2分間以上30分間以下であるのが好ましく、3分間以上15分間以下であるのが好ましい。
前記高分子化合物が付与される部位における前記高分子化合物の付与量は、0.01mg/cm以上10mg/cm以下であるのが好ましく、0.05mg/cm以上5.0mg/cm以下であるのがより好ましく、0.10mg/cm以上1.0mg/cm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、より短時間で効率よく、基材1の表面に、むらをより効率よく抑制しつつ、より緻密に、高分子化合物による被膜2を形成することができる。その結果、被膜2の親水性、防汚性をより優れたものとすることができ、被覆体100の耐久性をより優れたものとすることができる。
本工程では、上記のようなオゾンファインバブル処理等が施された基材1の表面に前記高分子化合物を付与する処理を行い、通常、その後に、加熱処理を行う。
加熱処理を行うことにより、前述した脱水縮合反応をより好適に進行させることができ、被覆体100の信頼性、生産性をより優れたものとすることができる。
前記加熱処理に先立って、高分子化合物が付与された基材1を所定時間だけ放置してもよい。
これにより、例えば、溶媒を含む組成物の状態で高分子化合物を基材1に付与した場合において、基材1が過剰に乾燥してしまうことを効果的に防止しつつ、当該溶媒の少なくとも一部を自然乾燥により除去することができ、加熱処理時に突沸が生じること等をより好適に防止することができ、形成される被膜2の基材1に対する密着性、被覆体100の信頼性をより優れたものとすることができる。
前記加熱処理に先立って高分子化合物が付与された基材1を所定時間だけ放置する場合、放置時間は、0.5分間以上120分間以下であるのが好ましく、1分間以上60分間以下であるのがより好ましく、2分間以上10分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、被覆体100の生産性をより優れたものとすることができるとともに、被覆体100の信頼性、生産性をより優れたものとすることができる。
前記加熱処理の処理温度は、60℃以上150℃以下であるのが好ましく、70℃以上140℃以下であるのがより好ましく、80℃以上130℃以下であるのがさらに好ましい。
これにより、被覆体100の生産性をより優れたものとすることができるとともに、被覆体100の信頼性、生産性をより優れたものとすることができる。
前記加熱処理の処理時間は、30分間以上600分間以下であるのが好ましく、45分間以上480分間以下であるのがより好ましく、60分間以上300分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、被覆体100の生産性をより優れたものとすることができるとともに、被覆体100の信頼性、生産性をより優れたものとすることができる。
上記のようにして被覆体100を得ることができるが、後処理を行ってもよい。
後処理としては、例えば、こすり洗い、超音波洗浄等の洗浄処理等が挙げられる。
特に、こすり洗いを行うことにより、被膜2を構成する高分子化合物のうち基材1の構成物質と脱水縮合反応していない分子を好適に除去することができ、最終的に得られる被覆体100における被膜2の耐摩耗性をより優れたものとすることができる。
こすり洗いは、例えば、流水を用いて行ってもよいし、被覆体100を水中に浸漬して行ってもよい。
また、超音波洗浄を行うことにより、被膜2に付着している不要物をより効果的に除去することができる。
超音波洗浄は、例えば、水中で行うことができる。
上記のような洗浄処理を施した場合、乾燥処理を行ってもよい。この場合、乾燥処理は、例えば、自然乾燥により行ってもよいし、加熱により行ってもよいし、減圧環境下において行ってもよい。
最終的に得られる被覆体100における被膜2の厚さは、特に限定されないが、0.03μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.03μm以上0.1μm以下であるのがより好ましい。
被膜2が前記高分子化合物の単分子膜で構成されたものである場合、例えば、当該高分子化合物の構造(例えば、式(1)、式(2)中のnの値)により、被膜2の厚さを好適に制御することができる。
以下、被膜2の形成に用いる高分子化合物について詳細に説明する。
被膜2の形成に用いる高分子化合物は、上記式(1)で示されるように、側鎖にホスホリルコリン基を含むユニット、および、側鎖にホスホン酸基を含むユニットを有する重合体である。
当該高分子化合物の側鎖に含まれるホスホン酸基は、オゾンファインバブル処理が施された基材1の表面への化学結合による固定を可能とし、被膜2の基材に対する密着性、被覆体100の耐久性を向上させることができる。
具体的には、ホスホン酸基は、基材1の表面に導入された官能基(ホスホン酸基と相互作用可能な官能基(例えば、水酸基))と脱水縮合反応することにより、被膜2の基材に対する密着性、被覆体100の耐久性を向上させることができる。
前記高分子化合物の側鎖に含まれるホスホリルコリン基は両性イオン構造を有する。
このため、ホスホリルコリン基が高分子化合物に含有されることにより、当該高分子化合物は、親水性(ぬれ性)に優れるとともに各種分子に対する非特異的吸着を効果的に抑制することができる。その結果、防汚効果、潤滑特性効果、摩擦低減効果、自己浄化(セルフクリーニング)効果等を発揮させることができる。また、ホスホリルコリン基は、生体膜の主成分であるリン脂質(ホスファチジルコリン)の極性基と同様の構造を有する極性基である。したがって、ホスホリルコリン基の導入により、生体膜の表面が有する極めて良好な生体適合性、特に、生体分子の非吸着性、および非活性化特性が付与され得る。
式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、重合した状態の重合性原子団を表し;RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、または、-C(O)-、-C(O)O-もしくは-O-で示される基を表し;Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し;mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、2以上の整数を表し;Xを含む構造単位およびXを含む構造単位はランダムな順序で結合している。
式(1)において、XおよびXは、それぞれ独立して、重合した状態の重合性原子団を表すものであればよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、ビニル系モノマー残基、アセチレン系モノマー残基、エステル系モノマー残基、アミド系モノマー残基、エーテル系モノマー残基、ウレタン系モノマー残基等が挙げられ、中でも、ビニル系モノマー残基が好ましい。
式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、またはC(O)-、-C(O)O-もしくは-O-で示される基を表すが、-C(O)-、-C(O)O-またはO-で示される基であるのが好ましく、-C(O)O-で示される基であるのがより好ましい。
およびRにおけるフェニル基の置換基の具体例としては、例えば、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、水酸基、チオール基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、シリル基、メタンスルホニル基、炭素数が1以上6以下のアルキル基、炭素数が2以上6以下のアルケニル基、炭素数が2以上6以下のアルキニル基、炭素数が3以上8以下のシクロアルキル基、炭素数が6以上10以下のアリール基、炭素数が1以上6以下のアルコキシ基、炭素数が2以上7以下のアシル基、炭素数が2以上7以下のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
およびRは同一であっても、異なっていてもよい。重合反応性の点では同一であるのが好ましく、両方が-C(O)O-で示される基であるのがより好ましい。
式(1)において、Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表すが、水素原子またはメチル基であるのが好ましく、水素原子であるのがより好ましい。
これにより、溶媒(特に、高分子化合物の合成(重合)時に用いる重合溶媒や、基材1に高分子化合物を付与する際に用いる溶媒等)への溶解性をより優れたものとすることができる。
式(1)において、mは、1以上の整数を表すが、1以上12以下の整数であるのが好ましく、1以上4以下の整数であるのがより好ましく、2であるのがさらに好ましい。
式(1)において、nは、1以上の整数を表すが、1以上12以下の整数であるのが好ましく、1以上6以下の整数であるのがより好ましく、1であるのがさらに好ましい。
式(1)において、Xを含む構造単位の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、N-(2-メタクリルアミド)エチルホスホリルコリン、4-メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6-メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10-メタクリロイルオキシデシルシルホスホリルコリン、ω-メタクリロイルジオキシエチレンホスホリルコリン、4-スチリルオキシブチルホスホリルコリン等に由来する構造単位が挙げられる。中でも、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構造単位が特に好ましい。2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)およびその他のホスホリルコリン系化合物(モノマー化合物)は、市販品を使用してもよいし、常法に基づいて容易に調製することもできる。
式(1)において、Xを含む構造単位の具体例としては、例えば、下記式(b1)、下記式(b2)で表されるモノマー化合物に由来する構造単位等が挙げられる。
(上記式(b1)および上記式(b2)中、nは1以上の整数を表す。)
上記式(b1)および上記式(b2)中、nは1以上の整数であればよいが、1以上12以下の整数であるのが好ましく、1以上6以下の整数であるのがより好ましく、1であるのがさらに好ましい。
特に、式(1)において、Xを含む構造単位としては、式(b1)で表され、かつ、nが1であるモノマー化合物に由来するものであるのが好ましい。
を含む構造単位を構成するモノマー化合物は、当業者の技術水準に基づき、常法により合成することができる。また、例えば、ユニケミカル社製のホスマーM、ホスマーPP(上記式(b2)においてn=5~6の化合物)、ホスマーPE(上記式(b1)においてn=4~5の化合物)、ホスマーM(上記式(b1)においてn=1の化合物)、共栄社化学社製のP-1M(上記式(b1)においてn=1の化合物)等の市販品を使用することもできる。
式(1)で示される高分子化合物は、Xを含む構造単位とXを含む構造単位とは、ランダムな順序で結合したランダムポリマーであってもよいし、ブロックポリマーであってもよい。
また、Xを含む構造単位、Xを含む構造単位のうちの少なくとも一方としては、複数種の成分を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(1)で示される構造を有する高分子化合物の好ましい具体例としては、下記一般式(2)で示される構造を有する高分子化合物が挙げられる。
(式(2)中、Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し、aおよびbは、それぞれ独立して2以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、各モノマーユニットはランダムな順序で結合している。)
式(2)において、ホスホリルコリン基を含む側鎖を有する構造単位(以下、「MPCユニット」ともいう)と、ホスホン酸基を含む側鎖を有する構成単位(以下、「PAユニット」ともいう)とは、式(1)と同様、ランダムな順序で結合していてもよく、限定はされない。
式(2)において、Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表すが、水素原子またはメチル基であるのが好ましく、水素原子であるのがより好ましい。
これにより、溶媒(特に、高分子化合物の合成(重合)時に用いる重合溶媒や、基材1に高分子化合物を付与する際に用いる溶媒等)への溶解性をより優れたものとすることができる。
式(2)において、nは、1以上の整数を表すが、1以上12以下の整数であるのが好ましく、1以上6以下の整数であるのがより好ましく、1であるのがさらに好ましい。
上記式(1)および上記式(2)で示される高分子化合物において、aおよびbは、それぞれ独立して、2以上の整数であればよいが、a/(a+b)の値は、0.10以上0.99以下であるのが好ましく、0.30以上0.99以下であるのがより好ましく、0.60以上0.95以下であるのがさらに好ましい。
上記式(1)および上記式(2)で示される高分子化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、15,000以上600,000以下であるのが好ましい。
高分子化合物の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定するこができる。
上記式(1)および上記式(2)で示される構造を有する高分子化合物は、必要に応じ、他のモノマー由来の構造単位を含むものであってもよい。通常、他のモノマー由来の構造単位の割合は、高分子化合物を構成する全構造単位(100モル%)に対して、30モル%以下であるのが好ましく、10モル%以下であるのがより好ましい。
以下、被膜2の形成に用いる前記高分子化合物の製造方法について説明する。
上記式(1)または上記式(2)で示される高分子化合物の合成は、通常、当業者の技術水準に基づき、常法により行うことができる。例えば、前記高分子化合物の合成方法としては、MPCユニットを構成するモノマーおよびPAユニットを構成するモノマーを含む単量体を、重合開始剤を用いてラジカル重合する方法が挙げられる。ラジカル重合する方法としては、レドックス重合開始剤を用いた方法(方法1)やラジカル重合開始剤を用いた方法(方法2)等が挙げられる。
(方法1)
上記式(1)または上記式(2)で示される高分子化合物は、レドックス重合開始剤を用いたレドックス重合により合成されるものであるのが好ましく、中でも、溶液重合により合成されるものであるのがより好ましい。
これにより、ゲル化および沈殿を抑止しつつ、多様な組成の高分子化合物をより好適に得ることができる。
前記高分子化合物は、水溶性であることから、被膜2の成形には、例えば、レドックス重合後に得られる高分子化合物の水溶液をそのまま用いてもよい。
これにより、重合溶媒の除去(例えば、凍結乾燥による除去)、高分子化合物の精製処理等を省略することができ、省エネルギー、省コストの観点から有利である。
また、レドックス重合反応は室温(10℃以上35℃以下)でも可能である。室温での反応は、加熱等の必要が無く、省エネルギー、省コストの観点から有利である。
また、水溶液による重合は、揮発性有機化合物(VOC)の問題回避の観点からも好ましい。
高分子化合物の合成(重合)時に用いる重合溶媒は、通常、少なくとも水を含む水性溶媒である。
水性溶媒としては、水、または、水と有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。当該有機溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等が挙げられる。
特に、高分子化合物の合成(重合)時に用いる水性溶媒としては、水またはアルコール類の含有率が70体積%以下である水とアルコール溶媒との混合溶媒が好ましく、水を単独で用いることがより好ましい。
レドックス重合反応には、酸化剤と還元剤(重合促進剤)とを組み合わせたレドックス重合開始剤を使用する。
レドックス重合開始剤としては、水溶性のレドックス重合開始剤が好ましい。
レドックス重合開始剤を構成する酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムよりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、過硫酸アンモニウムであるのがより好ましい。
レドックス重合開始剤を構成する還元剤としては、例えば、既知の還元剤が使用できる。例えば、鉄、銅、銀、セリウム、コバルト、ニッケル等の金属イオン、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、水溶性チオ硫酸塩、亜硫酸塩(例えば亜硫酸ナトリウム)等が挙げられ、中でも、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等のアミン化合物が好ましい。
アミンが存在することでホスホン酸基を有するPAユニットを構成するモノマーが中和され、塩構造を形成することによりゲル化が一層抑制され得ると推定される。
還元剤としてアミンを用いる場合には、重合後に反応液に酸(例えば、リン酸)を添加して酸性にし、高分子化合物を脱塩するのが好ましい。
これにより、基材1に対する被膜2の密着性がさらに向上する。
好ましい一形態は、重合後に得た反応液にリン酸等を加えて酸性にして、限外ろ過を行う。
これにより、基材1に対する被膜2の密着性がさらに向上することに加え、PAユニットから脱塩したジアミンがリン酸と塩形成し、これを容易に除去することができる。
レドックス重合開始剤を構成する酸化剤と還元剤との好ましい組み合わせは、過硫酸アンモニウムとN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンとの組み合わせである。
前記酸化剤の使用量は、重合に用いる全単量体100質量部に対して、0.0001質量部以上3質量部以下であるのが好ましく、0.001質量部以上2質量部以下であるのがより好ましく、0.05質量部以上1質量部以下であるのがさらに好ましい。
前記還元剤の使用量は、重合に用い全単量体100質量部に対して、0.001質量部以上15質量部以下であるのが好ましく、0.01質量部以上15質量部以下であるのがより好ましい。
レドックス重合反応の反応温度は、特に限定されないが、例えば、0℃以上100℃以下であるのが好ましく、10℃以上90℃以下であるのがより好ましく、20℃以上40℃以下であるのがさらに好ましい。重合温度がこの範囲であると、重合速度が適切で制御しやすく、重合体の生産性と安定性が優れる。当該レドックス重合反応は室温(10℃以上35℃以下)でも可能である。室温での反応は、加熱等の必要が無く、製造コストを低減できる点で好ましい。
当該反応は、通常、水性溶媒中で行われるが、その際の単量体の濃度は、特に限定されない。また、反応時間は、特に限定されないが、例えば、1時間以上6時間以下とすることができる。
(方法2)
前記高分子化合物は、特定条件でラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合により合成することができる。具体的には、有機溶媒中でのラジカル重合により、前記高分子化合物を好適に合成することができる。
重合に用いられるラジカル重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタノイックアシッド)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ系開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、tーブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウムのようなペルオキシド系開始剤等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの重合性や必要とする重合体の分子量に応じて調節することが可能であるが、重合に用いる全単量体100質量部に対して、0.001質量部以上3質量部以下であるのが好ましく、0.01質量部以上1質量部以下であるのがより好ましい。
ラジカル重合に使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;ジオキサン等のエーテル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族性溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。
前記方法2により重合を行う場合、ホスホリルコリン基を有するモノマー(前述したMPCユニットを含む構成単位)の使用量をa[mol]、ホスホン酸基を有するモノマー(前述したPAユニットを含む構成単位)の使用量をb[mol]としたとき、a/(a+b)は、0.95以上0.99以下であるのが好ましい。
これにより、ラジカル重合の際に、沈殿を生じることをより効果的に防止することができ、比較的分子量の大きい高分子化合物をより好適に合成することができる。
重合反応時の反応温度は、合成すべき高分子化合物の分子量や、開始剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、30℃以上100℃以下であるのが好ましい。
前記方法1または方法2等により重合後、得られた高分子化合物の溶液を必要に応じて精製してもよい。
精製方法は、特に限定されないが、例えば、限外濾過により行うことができる。特に、レドックス重合(前記方法1)における還元剤としてアミンを用いた場合には、重合後の高分子化合物水溶液に酸(例えば、リン酸)を添加して酸性にし、限外ろ過を行うことで、アミンがPAユニットから脱塩して、リン酸と塩形成し、容易に除去することができる。
精製後の溶液は、そのまま被膜2の形成に用いてもよいし、さらに凍結乾燥処理を行ってもよい。凍結乾燥後の高分子化合物は、水溶性であるため、例えば、必要時に、水性溶媒に溶解して、被膜2の形成に用いることができる。
なお、上述のように、レドックス重合開始剤を用いた方法(方法1)では重合物の沈殿やゲル化がより効果的に抑制され、かつ、得られる高分子化合物が水溶性であるため、重合後の水溶液を用いてそのまま被膜2を好適に行うことができる。本方法1は、室温で実施することができ、一般に加熱を伴うラジカル重合開始剤を用いた方法(方法2)に比べて、製造コスト面でも有利である。
被膜2の形成には、少なくとも前述した高分子化合物を用いればよく、例えば、高分子化合物以外の成分を含む組成物を用いてもよい。
このような成分としては、例えば、各種溶媒、顔料、染料等の着色剤、各種フィラー、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤等が挙げられる。
溶媒としては、例えば、水、水とアルコールとの混合溶媒等が好ましく挙げられ、水がより好ましい。
pH調整剤としては、特に限定されないが、無機塩が好ましい。当該無機塩としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもリン酸塩が好ましく、リン酸水素二ナトリウム2水和物、またはリン酸水素二ナトリウム12水和物がより好ましい。
また、所望のpHに調整するために、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基類;硫酸、塩酸、硝酸等の酸類等を用いてもよい。
特に、被膜2の形成には、前述した高分子化合物の溶液を用いるのが好ましく、水溶液を用いるのがより好ましい。
被膜2の形成に用いる組成物中における前述した高分子化合物の含有率は、0.05質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、被膜2の形成に用いる組成物の粘度をより好適な範囲にすることができ、形成される被膜2に不本意な厚みのばらつきや組成のばらつきが生じることをより効果的に防止しつつ、より効率よく被膜2を形成することができる。
被膜2の形成に液状の組成物を用いる場合、当該組成物のpH(23℃でのpH)は、特に限定されないが、3以上11以下であるのが好ましく、3以上7以下であるのがより好ましい。
被膜2の形成に用いる組成物中において、前述した高分子化合物は、溶解状態で含まれていてもよいし、分散状態で含まれていてもよいし、溶融状態で含まれていてもよい。
[被覆体]
上記のようにして得られる本発明に係る被覆体100は、基材1と被膜2とを備えている。そして、基材1と被膜2との密着性、耐久性に優れている。
被覆体100の用途は、特に限定されないが、例えば、歯科材料、歯科用器具、各種医療用デバイス、コンタクトレンズ、人工臓器、バイオチップ、バイオセンサー、酸素富加膜、細胞保存器具等の医療器具、自動車フロントガラス、船底塗料等が挙げられる。歯科材料としては、例えば、有床義歯、架工義歯、インプラント義歯、クラウン等の歯科用補綴物、歯科矯正材、義歯裏装材等が挙げられる。
被覆体100の被膜2が設けられた部位について、CIE 1976 L表色系における、朱油(例えば、サンビー社製、クリア朱肉 品番:SK-H 商品コード:3072030001)0.011gを、0.011g/cmで塗布し、温度:25℃、湿度:22%RHの環境下で、30分間静置した後に、流水により20秒間水洗した後の前記部位における色度と、朱油の付与、水洗を行う前の前記部位における色度との色差は、5以下であるのが好ましく、3以下であるのがより好ましく、1以下であるのがさらに好ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、被覆体の製造方法は、前述した以外の工程を有していてもよい。より具体的には、例えば、被膜形成工程より前に、基材に対して、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理、過酸化水素水/フェントン反応溶液処理、カップリング剤を用いた処理等の各種処理を施す工程を有していてもよい。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に温度条件を示していない処理、測定については、23℃で行った。
<高分子化合物の合成>
(合成例1~6)
モノマーとしての2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)(C1122NOP Mw=295.27 CAS 67881-98-5)およびPhosmer M(acid phosphoxy ethyl methacrylate)(C11P Mw=210.12 CAS 24599-21-1)、レドックス重合開始剤(酸化剤)としての過硫酸アンモニウム(APS)、重合促進剤(還元剤)としてのN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を用い、表1に示す配合にて、反応溶媒としての純水15mLにモノマー濃度が0.5mol/Lになるように溶解した後、溶液を試験管に移し、アルゴンバブリングして系中の酸素を脱気した(20分)。
次に、ガスバーナーで前記試験管を封管して、室温下(23℃)にて重合反応した(24時間)。
その後、前記試験管を開管して水600mLと混和し、限外ろ過装置(テクノオフィス・カネコ製 ゲンゴロウ)にて連続限外ろ過を行い、未反応物を除去、回収して凍結乾燥して高分子化合物を得た。
前記各合成例の反応条件を表1にまとめて示す。
Figure 0007349194000006
<被覆体の製造>
(実施例1)
まず、基材として、SUS304製のステンレス鋼鋼板(日新製鋼社製、冷間圧延ステンレス鋼(2B)を#800のバフ研磨を施して鏡面仕上げにし、45mm×80mmに切断したもの、および、25mm×25mmに切断したもの)を用意した。
この基材に対して、オゾンのファインバブル水を用いたオゾンファインバブル処理を施した。
オゾンファインバブル処理は、ファインバブル発生装置(富喜製作所社製、ミクロスター FS101-1)を設置した水槽(幅600mm×奥行300mm×高さ360mm)に60Lの水を収容し、当該水に、ファインバブル発生装置から発生したオゾンのファインバブルを供給することにより調製したオゾンのファインバブル水中で行った。
ファインバブル発生装置には、レギュレーターを介して酸素ガスボンベを接続したオゾン発生器(エコデザイン社製、ED-0G-R6)から、オゾンガスを供給した。
酸素ガスボンベとしては酸素純度が99.5%のものを用い、レギュレーターは二次圧力を0.1MPaに設定し、オゾン発生器への酸素ガス流量を0.3L/分間に設定し、オゾン発生器での電流値を2.7Aに設定した。また、オゾン発生器からファインバブル発生装置に供給されるオゾンガス量は、4.64g/時間であった。オゾンのファインバブル水中におけるオゾン濃度は258g/mであった。
上記のようにして得られたオゾンのファインバブル水中に、基材を60分間浸漬することにより、オゾンファインバブル処理を行った。
次に、オゾンファインバブル処理が施された基材を取出し、流水で洗浄し、当該基材の表面に、前記合成例1で得た高分子化合物の0.5質量%水溶液を、浸漬法により付与した。
その後、100℃×2時間の加熱処理を施し、次いで、表面を水中でこすり洗いし、さらに、超音波洗浄を5分間行い、自然乾燥して、基材の一方の面に被膜を有する被覆体を得た。被膜の厚さは、30nmであった。なお、被膜の厚さの測定は、大塚電子社製 OPTM-A1を用いて行った。
(実施例2~6)
前記合成例1で得た高分子化合物の代わりに、前記合成例2~6で得られた高分子化合物を用いた以外は、前記実施例1と同様にして被覆体を製造した。
(実施例7~10)
オゾンファインバブル処理の処理条件を表2に示すように変更した以外は、前記実施例5と同様にして被覆体を製造した。
(実施例11)
オゾンファインバブル処理を行いつつ、超音波処理を行った以外は、前記実施例5と同様にして被覆体を製造した。
なお、超音波処理は、日本精機製作所社製のYOUKAI-KUN USS-1を用いて、40kHzの超音波振動を60分間付与することにより行った。
(実施例12)
オゾンファインバブル処理を行いつつ、紫外線照射処理を行った以外は、前記実施例5と同様にして被覆体を製造した。
なお、紫外線照射処理は、ウシオ電機社製のOPM2-502Mを用いて、ピーク波長240nmの紫外線を基材表面の15cmの距離から60分間照射することにより行った。
(実施例13)
オゾンファインバブル処理を行いつつ、超音波処理および紫外線照射処理を行った以外は、前記実施例5と同様にして被覆体を製造した。
なお、超音波処理は、日本精機製作所社製のYOUKAI-KUN USS-1を用いて、40kHzの超音波振動を60分間付与することにより行った。
また、紫外線照射処理は、ウシオ電機社製のOPM2-502Mを用いて、ピーク波長300nmの紫外線を基材表面の15cmの距離から60分間照射することにより行った。
(比較例1)
オゾンファインバブル処理を省略した以外は、前記実施例5と同様にして被覆体を製造した。
(比較例2)
ファインバブル発生装置を取り外し、基材に対して、mmオーダーのバブルを含むオゾン水(ファインバブル水ではない)での処理を施し、当該処理の処理時間を2時間とした以外は、前記実施例5と同様にして被覆体を製造した。
前記各実施例および各比較例の被覆体の製造条件を表2にまとめて示す。表2中、オゾンのファインバブルを「FB」と示し、オゾンのファインバブル水を「FB水」と示す。なお、オゾンのバブルの粒径の測定は、1μm以上10μm以下の粒径範囲については、島津製作所社製 SALD7500nanoを用い、0.08μm以上1μm以下の粒径範囲については、ナノサイト社製、LM-10を用いて行った。また、比較例2については、ファインバブルを含まず、ミリバブルを含むオゾン水を用いた処理を施したため、ファインバブル(FB)の条件を示す項目には、前記ミリバブルの条件を示した。
Figure 0007349194000007
前記各実施例の被覆体について、XPS(X線光電子分光法)測定装置(島津製作所Kuratos)を用いて表面の元素分析を行った。
その結果、未処理の基材(SUS304)には存在しない133eV付近のPおよび403eV付近の4級アンモニウムNのピークを確認した。いずれも、前記高分子化合物由来のピークであり、基材表面に高分子化合物による被膜が形成されていることを示している。
<評価>
(1)摩擦係数
未処理のSUS304製のステンレス鋼鋼板(45mm×80mm)ならびに前記各実施例および各比較例の被覆体(45mm×80mmの大きさのもの)の表面について、HHS2000(新東科学社製)を用いて、水中での動摩擦係数の測定を行い、以下の基準に従い評価した。測定条件は、荷重:29g、速度:3.3mm/秒、距離:10mm、温度:23℃とした。HHS2000(新東科学社製)は、スチールウールホルダー(接触面27mm)を装着して用いた。摩擦対象にはサプラーレ(出光テクノファイン社製)を用いた。測定は、液受けバットを用いアズワン社製、低温恒温水槽(LBX-300)により23℃に温調しながら、水浸して行った。
A:動摩擦係数が0.10未満。
B:動摩擦係数が0.10以上0.20未満。
C:動摩擦係数が0.20以上0.30未満。
D:動摩擦係数が0.30以上0.50未満。
E:動摩擦係数が0.50以上。
(2)防汚性(セルフクリーニング効果、目視)
未処理のSUS304製のステンレス鋼鋼板(25mm×25mm)ならびに前記各実施例および各比較例の被覆体(25mm×25mmの大きさのもの)について、これらの一方の面の中央付近の領域(1cm)に、朱油(サンビー社製、クリア朱肉 品番:SK-H 商品コード:3072030001)0.011gを、0.011g/cmで塗布し、温度:25℃、湿度:22%RHの環境下で、30分間静置した後に、流水により20秒間水洗し、その状態を目視で観察し、以下の基準に従い評価した。
A:朱油の残存が全く認められない。
B:朱油の残存がほとんど認められない。
C:朱油の残存がわずかに認められる。
D:朱油の残存がはっきりと認められる。
E:朱油の残存が顕著に認められる。
(3)防汚性(セルフクリーニング効果、色差)
前記各実施例および各比較例の被覆体(25mm×25mmの大きさのもの)について、色度計(コニカミノルタ社製、CM-3700A)を用いて、朱油を付与する前の状態、および、一方の面の中央付近の領域(1cm)に、朱油(サンビー社製、クリア朱肉 品番:SK-H 商品コード:3072030001)0.011gを、0.011g/cmで塗布し、温度:25℃、湿度:22%RHの環境下で、30分間静置した後に、流水により20秒間水洗した後の状態の色度を測定し、その結果から、CIE 1976 L表色系における朱油を付与した部位での色差を求め、以下の基準に従い評価した。
A:色差が1以下である。
B:色差が1超3以下である。
C:色差が3超5以下である。
D:色差が5超10以下である。
E:色差が10超である。
(4)表面エネルギー
未処理のSUS304製のステンレス鋼鋼板(25mm×25mm)ならびに前記各実施例および各比較例の被覆体(25mm×25mmの大きさのもの)について、Arcotest社製のぬれ性チェック用ダインペン(表面エネルギー値評価用テストペン)を用いて、被膜が設けられた部位の表面エネルギーを求め、以下の基準に従い評価した。
A:表面エネルギーが90mN/m超である。
B:表面エネルギーが84mN/m超90mN/m以下である。
C:表面エネルギーが70mN/m超84mN/m以下である。
D:表面エネルギーが50mN/m超70mN/m以下である。
E:表面エネルギーが50mN/m以下である。
(5)耐久性
未処理のSUS304製のステンレス鋼鋼板(45mm×80mm)ならびに前記各実施例および各比較例の被覆体(45mm×80mmの大きさのもの)の表面について、HHS2000(新東科学社製)を用いて、水中にて、摺動回数:往復3000回での動摩擦係数の測定を行い、以下の基準に従い評価した。測定条件は、荷重:29g、速度:3.3mm/秒、距離:10mm、温度:23℃とした。HHS2000(新東科学社製)は、スチールウールホルダー(接触面27mm)を装着して用いた。摩擦対象にはサプラーレ(出光テクノファイン社製)を用いた。測定は、液受けバットを用いアズワン社製、低温恒温水槽(LBX-300)により23℃に温調しながら、水浸して行った。
A:往復3000回目における動摩擦係数が0.5未満であった。
B:往復2000回以上3000回以下で動摩擦係数が0.5に到達した。
C:往復1000回以上2000回未満で動摩擦係数が0.5に到達した。
D:往復500回以上1000回未満で動摩擦係数が0.5に到達した。
E:往復0回以上500回未満で動摩擦係数が0.5に到達した。
これらの結果を表3にまとめて示す。なお、表3中、表面処理、被膜の形成のいずれも行わなかった未処理のSUS304製のステンレス鋼鋼板を比較例3として示した。また、図2に、実施例1に係る被覆体、および、未処理のSUS304製のステンレス鋼鋼板についての防汚性の評価結果の写真を示す。
Figure 0007349194000008
表3から明らかなように、本発明に係る被覆体では、いずれも、優れた結果が得られた。これに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
また、基材をSUS304製のものから、ガラス製、チタン製、アルミニウム製、ジュラルミン製のものに変更した以外は、前記各実施例および各比較例と同様にして、被覆体を製造して、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の傾向が確認された。
また、基材としてステンレス鋼鋼板の代わりにSUS304製のステンレス鋼鋼管(内外面を#150~#400研磨仕上げした外径5mm、厚さ0.5mmのもの)を用い、送液ポンプ(Cole Parmer社製、MASTER FLEX(登録商標)L/S)を用いて、当該鋼管の中空部に、オゾンのファインバブル水を送液、循環させ、基材の中空部の内壁面に対して選択的にオゾンファインバブル処理を施し、その後、当該中空部に、前記各合成例で得た高分子化合物の0.5質量%水溶液を導入し、100℃×2時間の加熱処理を施し、次いで、中空部に水を流して洗浄し、さらに、日本精機製作所社製のYOUKAI-KUN USS-1を用いて超音波洗浄を5分間行い、自然乾燥して、中空部の内壁面に被膜を有する被覆体を得た。当該被覆体は、中空部の内壁面のみに選択的に被膜が形成されたものであり、外表面には、被覆が形成されていないものであった。当該被覆体について、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の傾向が確認された。
本発明の被覆体の製造方法は、基材に対し、オゾンのファインバブル水を用いたオゾンファインバブル処理を行うオゾンファインバブル処理工程と、前記オゾンファインバブル処理が施された前記基材に対し、下記式(1)で示される構造を有する高分子化合物を用いて被膜を形成する被膜形成工程とを有する。
(式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、重合した状態の重合性原子団を表し;RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、または、-C(O)-、-C(O)O-もしくは-O-で示される基を表し;Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し;mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、2以上の整数を表し;Xを含む構造単位およびXを含む構造単位はランダムな順序で結合している。)
そのため、親水性、防汚性に優れた被膜が、優れた耐久性で設けられた被覆体の製造方法を提供することができる。従って、本発明の被覆体の製造方法は、産業上の利用可能性を有する。
100…被覆体
1…基材
2…被膜

Claims (4)

  1. 基材に対し、オゾン濃度が50g/m 以上1000g/m 以下であるオゾンのファインバブル水を用いたオゾンファインバブル処理を行うオゾンファインバブル処理工程と、
    前記オゾンファインバブル処理が施された前記基材に対し、下記式(1)で示される構造を有する高分子化合物を用いて、厚さが0.03μm以上10μm以下の被膜を形成する被膜形成工程とを有することを特徴とする被覆体の製造方法。
    (式(1)中、XおよびXは、それぞれ独立して、重合した状態の重合性原子団を表し;RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフェニル基、または、-C(O)-、-C(O)O-もしくは-O-で示される基を表し;Rは、水素原子または炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し;mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、2以上の整数を表し;Xを含む構造単位およびXを含む構造単位はランダムな順序で結合している。)
  2. 前記基材の前記高分子化合物が付与される部位における前記高分子化合物の付与量が0.01mg/cm 以上10mg/cm 以下である請求項1に記載の被覆体の製造方法。
  3. 単位体積当たりの前記ファインバブル水中に含まれる粒径が100μm以下の前記オゾンの気泡の個数は、2.0×10 個/mL以上1.0×10 11 個/mL以下である請求項1または2に記載の被覆体の製造方法。
  4. 前記オゾンのファインバブルの平均粒径が0.08μm以上0.50μm以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の被覆体の製造方法
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