JP2021161208A - 親水性改質基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ゴム、樹脂、ガラスから選ばれる材質製の成形基材の表面に十分な親水性を簡便に付与でき、速やかに親水性が発現すると共に、水との接触角を十分に低く維持できるようにしつつ、長期間、大気中又は水中で保管・保存又は使用してもまた必要に応じ滅菌処理しても親水性を損なわず、半年〜数年間もの長期にわたって親水性を担保できる親水性改質基材を提供する。【解決手段】親水性改質基材は、ゴム、樹脂、及びガラスから選ばれる何れかの材質製の成形基材を親水化したものであって、側鎖にベタイン構造を有する繰返単位と側鎖に活性官能基を有する繰返単位とを有する共重合体で、前記成形基材が被覆されており、前記ベタイン構造と前記活性官能基とが、前記成形基材上の表面官能基に反応、結合、又は吸着している。【選択図】なし

Description

本発明は、非親水性成形基材表面に施された親水化処理効果を長時間持続する、水や水系組成物や水系懸濁液に馴染みやすい親水性改質基材に関するものである。
シリコーンゴムやシリコーン樹脂などのシリコーンは、本来、非親水性で撥水性を有するものである。このようなシリコーンで形成された非親水性成形基材は、帯電し易く塵埃などを付着させ吸着してしまって次第に黒ずんだり、水や水系組成物と接触したときに高い接触角の所為で馴染み難かったりする。シリコーンは耐熱性・耐候性・耐久性に優れた素材なので、様々な用途に用いられているが、その用途に応じ、非親水性成形基材に親水性が求められることがある。そのような場合、従来、非親水性成形基材への乾式処理や湿式処理、又は親水性化合物含有シリコーン原料組成物の硬化によるシリコーン基材形成処理、表面蒸着処理のような表面改質処理によって、シリコーン表面に親水性基を付与していた。
これら表面改質処理のうち、乾式処理は、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理、エキシマ処理などがあり、表面に水酸基などの親水性基を生成させて、親水性を付与するというものである。このような乾式処理は、比較的簡便である。しかし、乾式処理して得られた親水性化したシリコーン基材を大気中又は水中で保管・保存又は使用していると、シリコーン基材表面に折角生じさせた親水性基が経時的にシリコーンとりわけシリコーンゴムの内部に潜りこむようになり、親水性が3〜6箇月程度の比較的短期間で失われてしまう。
また、表面改質処理のうち、湿式処理は、親水性コーティング剤(例えば親水性シランカップリング剤)を成形基材の表面官能基へ化学的に結合させて化学修飾して導入するというものである。このような湿式処理では、成形基材表面の表面官能基が疎らにしか存在せず親水性コーティング剤の結合にムラができてしまったり、3〜6箇月程度親水性を保持できるが親水程度が然程高くなく水との接触角を30°程度にまでしか低下できなかったり、表面で結合した親水性コーティング剤分子が次第に成形基材の表面から内部へ潜り込みシリコーン分子が露出し易くなって親水性が低下したり、シリコーンゴムに適用可能な親水性コーティング剤の種類が極めて少なかったりして、十分な親水性を発現し難い。また、この表面処理した面に支持体等を接合する際には、別途、接合のための表面処理や化学修飾を施さなければならず、折角の親水性を阻害してしまう。
別な湿式処理として、ベタイン構造を有するポリマー例えば側鎖にアミノ酸構造を有するポリ(メタ)アクリレート又は側鎖にスルホベタイン構造を有する(メタ)アクリルアミドを成形基材表面へアニオン・カチオン同士乃至正負帯電基同士による化学吸着をさせて導入する表面改質処理もある。しかし、このような表面改質処理では、表面に物理吸着乃至化学吸着させただけであるので、折角均質に吸着されていても水、若しくは酸性試液又はアルカリ性試液との接触によって比較的速やかに流れ落ちてしまい、長期間の強い親水性発現ができない。
また、表面改質処理のうち、親水性化合物含有シリコーン原料組成物の硬化によるシリコーン基材形成処理として、液状乃至ミラブル状のシリコーン原材料に親水性化合物例えば親水性オイルを配合して硬化させシリコーン成形体を形成することにより、その表面に親水性添加剤を露出させて親水性を付与する素材改質処理がある。このような素材改質処理の例として、特許文献1に、(a)上面に所定の微細構造を有するマスターを準備するステップと、(b)前記マスターの微細構造形成面側に、PDMSプレポリマーと硬化剤とポリエーテル変性界面活性剤とからなる混合物を注入するステップと、(c)成型されたPDMS製シートの微細構造形成面側を酸素プラズマ処理するステップと、(d)前記PDMS製シートの微細構造形成面側にオルガノシラン溶液を塗布するステップとからなることを特徴とする恒久的親水性を有するPDMS製シートの製造方法が、開示されている。一般的に、素材改質処理では、親水程度が然程高くなく水との接触角を30°程度にまで低下できなかったり、水と接触したときに親水性を発現するのに10分間以上要したりするなど、十分な親水性を発現し難い。
また、表面改質処理のうち、表面蒸着処理は、シリカや酸化チタンを蒸着し成形基材の表面を被覆して隠蔽するものであるが然程の親水性向上に寄与しない。
しかも、従来のこれら表面改質処理では、十分な親水性を長期間発現させ続けることが困難であり、しかも、オートクレーブ滅菌やエチレンガスオキサイド滅菌やγ線滅菌や電子線滅菌などの各種滅菌で、折角の親水性が大きく低下してしまい、医療器具に用いる際に、親水性による効果を十分に発現できなくなってしまうという問題があった。
特開2006−181407号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、ゴム、樹脂、ガラスのような材質製の成形基材の表面に十分な親水性を簡便に付与でき、速やかに親水性が発現すると共に、水との接触角を十分に低く維持できるようにしつつ、長期間、大気中又は水中で保管・保存又は使用してもまた必要に応じ滅菌処理しても親水性を損なわず、半年〜数年間もの長期にわたって親水性を担保できる親水性改質基材を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた親水性改質基材は、ゴム、樹脂、及びガラスから選ばれる何れかの材質製の成形基材を親水化した親水性改質基材であって、側鎖にベタイン構造を有する繰返単位と側鎖に活性官能基を有する繰返単位とを有する共重合体で、前記成形基材が被覆されており、前記ベタイン構造と前記活性官能基とが、前記成形基材上の表面官能基に反応、結合、又は吸着していることを特徴とするというものである。
この親水性改質基材は、例えば、前記共重合体中、前記繰返単位を繰り返している主鎖が、ポリ(メタ)アクリル骨格であるというものである。
この親水性改質基材は、前記共重合体中、前記ポリ(メタ)アクリル骨格が、ポリ(メタ)アクリルアミド共重合骨格、ポリ(メタ)アクリレート共重合骨格、又はポリ(メタ)アクリルアミド及びポリ(メタ)アクリレート共重合骨格であると好ましい。
この親水性改質基材は、前記ベタイン構造が、カルボン酸基、スルホン酸基、及びリン酸基から選ばれるアニオン基と、アンモニウム基、スルホニウム基、及びホスホニウム基から選ばれるカチオン基とを有すると、一層好ましい。
この親水性改質基材は、前記ベタイン構造が、側鎖末端に前記アニオン基又は前記カチオン基を有すると、なお一層好ましい。
この親水性改質基材は、前記活性官能基が、アジド基、スルホ基、トリアルコキシシリル基、及び水酸基から選ばれる少なくとも何れかの官能基であるというものであってもよい。
この親水性改質基材は、炭化水素芳香環基、非芳香族複素環基、芳香族複素環基、直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の炭化水素基、アミド基、及びエステル基から選ばれる少なくとも何れかのスペーサ基が、前記活性官能基を有しつつ、前記繰返単位に、結合しているというものであってもよい。
この親水性改質基材は、前記共重合体が、例えば下記化学式(1)又は(2)
Figure 2021161208
(式(1)及び(2)中、R及びRは水素原子又はメチル基であり、n1〜n4は2〜6の数である)で表されるもので前記ベタイン構造を有する繰返単位と、下記化学式(3)
Figure 2021161208
(式(3)中、Rは水素原子又はメチル基であり、n5は2〜6の数であり、n6は0〜1の数であり、Rは前記活性官能基である)で表されるもので活性官能基を有する繰返単位とのランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、又はグラフト共重合体であるというものである。
前記成形基材が、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、及びウレタンゴムから選ばれる前記ゴム製であることが好ましい。
前記成形基材が、シリコーン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びアクリル樹脂から選ばれる前記樹脂製であることが好ましい。
前記成形基材が、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、及びソーダ石灰ガラスから選ばれる前記ガラス製であることが好ましい。
この親水性改質基材は、前記成形基材の表面が、コロナ放電処理表面、プラズマ処理表面、紫外線処理表面、エキシマ処理表面、及び/又はシランカップリング剤処理表面であることが好ましい
この親水性改質基材は、例えば前記表面官能基が、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、及びアルコキシシリル基から選ばれる少なくとも何れかであるというものである。
この親水性改質基材は、前記ベタイン構造が前記表面官能基にイオン結合で結合し又は吸着しており、前記活性官能基がイオン結合又は共有結合で結合していることが好ましい。
この親水性改質基材は、前記成形基材が、ポリジメチルシロキサン骨格、ポリメチルフェニルシロキサン骨格、及びポリメチルハイドロジェンシロキサン骨格から選ばれる何れかを有するシリコーンゴム製又はシリコーン樹脂製であるというものである。
本発明の親水性改質基材は、側鎖にベタイン構造を有する繰返単位と側鎖に活性官能基を有する繰返単位とを有する共重合体で、成形基材が被覆されていることにより、ゴム、樹脂、ガラスから選ばれる材質製の成形基材の表面に十分な親水性が付与されている。
この親水性改質基材は、ベタイン構造に由来する分子内のカチオン構造とアニオン構造により、成形基材上の表面官能基に反応、結合、又は吸着とりわけ吸着をして親水性改質基材に付されると共に、強い親水性を発現する。一方、この親水性改質基材は、活性官能基が成形基材上で、反応、結合、又は吸着しているものと同種又は異種の別な表面官能基に反応、結合、又は吸着とりわけ反応又は結合していることにより、水、若しくは酸性試液又はアルカリ性試液との接触によっても流れ落ち難くなっていると共に、親水性を発現できる。
この親水性改質基材は、物理吸着乃至化学吸着好ましくは化学吸着のような所謂吸着型での結合性及び親水性付与と、反応又は結合好ましくは共有結合のような所謂結合型での結合性及び親水性付与とにより、従来技術のような吸着型単独、又は結合型単独による問題点を解決して、十分な親水性発現と長期間安定な親水性維持とを発揮できる。
また、この親水性改質基材は、成形基材の表面に速やかに親水性を発現するので、水、若しくは酸性試液又はアルカリ性試液との接触の際に、所望の親水性を発現でき、その用途を阻害しない。その親水性は、水との接触角を20°程度以下と十分に低いまま、半年〜数年維持し続けることができるものである。そのため、長期間、大気中又は水中で保管・保存又は使用しても親水性を損なわず、高い品質を維持して担保することができる。
さらに、この親水性改質基材は、必要に応じてオートクレーブ滅菌やエチレンガスオキサイド滅菌やγ線滅菌や電子線滅菌などの各種滅菌を行っても、高い親水性を維持できる。
しかも、この親水性改質基材は、成形基材の表面に、均質で十分な親水性を簡便に付与でき、ロット間のばらつきが無く、再現性よく高い歩留まりで、大量処理、大量生産が可能である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の親水性改質基材は、ゴム、樹脂、ガラスから選ばれる材質製の成形基材を親水化した親水性改質基材である。この親水性改質基材は、成形基材上の表面官能基に反応、結合、又は吸着するベタイン構造としてアニオン基とカチオン基との両性イオンを側鎖に有する繰返単位と、成形基材上の表面官能基に反応、結合、又は吸着する活性官能基を側鎖に有する繰返単位とを有する共重合体で、成形基材が被覆されている。
この親水性改質基材は、ベタイン構造が、物理吸着乃至化学吸着好ましくは化学吸着のような所謂吸着型での結合性及び親水性を付与し、成形基材表面の表面官能基や共重合体が成形基材内部に潜り込むのを防いで結合性及び親水性を維持するというものである。また、この親水性改質基材は、活性官能基を介した反応又は結合好ましくは共有結合のような所謂結合型での結合性及び親水性を付与し、共重合体が成形基材内部に潜り込むのを防いで結合性及び親水性を維持するというものである。
従って、この親水性改質基材は、ベタイン構造と活性官能基とが成形基材上の表面官能基に反応、結合、又は吸着していることにより、ベタイン構造又は活性官能基の何れかしか有しないものよりも、共重合体と成形基材とが、強く相互作用している。それによって、共重合体が、水、若しくは酸性試液又はアルカリ性試液との接触によっても成形基材上から流れ落ち難く、強い親水性を発現していると共に、強い親水性を長期間発現し続けることができる。
共重合体中、繰返単位を繰り返している繰返主鎖は、例えばポリ(メタ)アクリル骨格である。ポリ(メタ)アクリル骨格には、ポリアクリル骨格とポリメタクリル骨格とを包含する。より具体的には、ポリ(メタ)アクリル骨格が、ポリ(メタ)アクリルアミド共重合骨格、ポリ(メタ)アクリレート共重合骨格、又はポリ(メタ)アクリルアミド及びポリ(メタ)アクリレート共重合骨格である。なかでも、共重合体は、ポリ(メタ)アクリルアミド共重合骨格を有するものであると特に好ましい。
共重合体は、繰返単位の繰返形式に制限はなく、例えばこれら繰返単位のランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体の何れでもよい。またその両性イオンを側鎖に有する繰返単位と、活性官能基を側鎖に有する繰返単位とのモル比に制限はないが、モル比で1:1が好ましい。
共重合体中、ベタイン構造を側鎖に有する繰返単位は、アニオン基とカチオン基とが成形基材上の表面官能基に、反応、結合、又は吸着、とりわけ成形基材上の水酸基のような極性基に互いの静電引力又はイオン引力によって物理吸着乃至化学吸着のような吸着をしている。
ベタイン構造として、側鎖が、アニオン基とカチオン基との何れか一方を側鎖末端に有し、他方を側鎖中に有していてもよい。
ベタイン構造中、アニオン基は、側鎖末端にある場合、カルボン酸基(−COO基)、スルホン酸基(-SO 基)、リン酸基(−Ra1−PO−(ORa2)(ORa3);−Ra1−は側鎖の末端までの基、ORa2及びORa3は炭素数1〜6のアルコキシ基又はフェノキシ基又はOアニオンであって少なくとも何れかがOアニオン)から選ばれるアニオン基が挙げられ、側鎖中程にある場合、側鎖から分岐した置換カルボン酸基(−COO基)、側鎖から分岐した置換スルホン酸基(-SO 基)、リン酸基(−Rb1−PO−(ORb2)(ORa3); Rb1は側鎖の途中までの基、ORb2は側鎖の途中から末端までの基又はOアニオン、ORb3はOアニオン)から選ばれるアニオン基が挙げられる。
ベタイン構造中、カチオン基は、側鎖末端にある場合、1級乃至4級アンモニウム基のような有機アンモニウム基((−NH)、(−N(Rc1)H2)、(−N(Rc2)H)、(−N(Rc3));Rc2〜Rc3は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基)、スルホニウム基好ましくは有機スルホニウム基((−S(Rc4));Rc4は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基)、ホスホニウム基好ましくは四級ホスホニウム基((−P(Rc5));Rc5は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基)から選ばれるカチオン基が挙げられ、側鎖中程にある場合、4級アンモニウム基のような有機アンモニウム基((−Rd1−N(Rd2)(Rd3));Rd2は側鎖の途中までの基、Rd2炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基、Rd3は側鎖の途中から末端までの基)、スルホニウム基(−Rd4−S(Rd5)−Rd6);Rc4は側鎖の途中までの基、Rd5炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基、Rd6は側鎖の途中から末端までの基)、ホスホニウム基(−Rd7−P(Rd8)−Rd9);Rd7は側鎖の途中までの基、Rd8は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基、Rd9は側鎖の途中から末端までの基)から選ばれるカチオン基が挙げられる。
ベタイン構造は、成形基材の表面に露出した表面官能基、成形基材の表面がコロナ放電処理表面、プラズマ処理表面、紫外線処理表面、エキシマ処理表面、及び/又はシランカップリング剤処理表面であることにより生じている水酸基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基のような表面官能基、又は成形基材の表面官能基と、反応、結合、又は吸着とりわけ表面官能基とベタイン構造との互いの静電引力又はイオン引力によって物理吸着乃至化学吸着のような吸着をして、成形基材の表面に強く相互作用している。
共重合体中、ベタイン構造を有する繰返単位は、好ましい一例として、前記化学式(1)又は(2)で表されるものが挙げられるが、より具体的には、下記化学式(4)〜(7)
Figure 2021161208
で表されるものが挙げられる。
また、共重合体中、活性官能基を側鎖に有する繰返単位は、成形基材上の表面官能基に、反応、結合、又は吸着、とりわけ共有結合によって結合している。
活性官能基は、アジド基(−N)、スルホ基(−SO)、トリアルコキシシリル基(−Si(ORe1);ORe1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基)、水酸基(−OH)又は水酸基を生成する水酸基ブロック基例えば炭素数1〜6のアルコキシ基のような水酸基前駆基から選ばれる少なくとも何れかの官能基が挙げられる。
活性官能基のうち、アジド基(−N)は、例えば、紫外線又は光による分解によって又は熱分解によって窒素分子を放出してナイトレン基(−N:基)を生成し、成形基材上の表面官能基、若しくは成形基材の硬化成分が有する不飽和基、アルキル基、フェニル基、又はアミノ基と反応して及び/又は環拡大して、反応又は結合することにより、共有結合を形成する。活性官能基のうち、トリアルコキシシリル基は、成形基材上の表面官能基例えば水酸基と縮合反応することにより、シリルエーテル結合である共有結合を形成する。活性官能基のうち、水酸基又は水酸基ブロック基は、成形基材上の表面官能基例えばシラノール基(−Si−OH)又はシロキシ基(−Si−ORf1基;Rf1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基)と縮合反応することにより、エーテル結合である共有結合を形成する。これらは、イオン結合を介して結合しているものであってもよい。
また、共重合体中の活性官能基を側鎖に有する繰返単位中、側鎖は、フェニル、ナフチルのような炭化水素芳香環基、ピペラジニル、ピレリジニル、ピロゾキジニル、モルフォリニルのような非芳香族複素環基、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、トリアゾニルのような芳香族複素環基、メチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−へキシル、シクロヘキシルのような、若しくはベンジル又はフェネチルのような直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の炭化水素基、アミド基(−CO−N(Rg1)−;Rg1は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基)、エステル基(−CO−O−)から選ばれる何れかの単一スペーサ基、またはそれらの少なくとも何れかを組み合わせた複合スペーサ基が、前記活性官能基を有しているものであってもよい。
共重合体中の活性官能基は、成形基材の表面に露出した表面官能基、成形基材の表面がコロナ放電処理表面、プラズマ処理表面、紫外線処理表面、エキシマ処理表面、及び/又はシランカップリング剤処理表面であることにより生じている水酸基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基のような表面官能基、又は成形基材が有するアミノ基、アルコキシ基、アルコキシシリル基のような表面官能基と反応、結合、又は吸着とりわけ表面官能基と化学反応して共有結合を形成して、成形基材の表面に共重合体の分子を付している。
この共重合体の分子量及び分子量分布は特に限定されないが、下記化学式(9)の場合、分子量:30000以上、分子量分布は狭い高分子であることが好ましい。
なかでも、共重合体は、下記化学式(8)又は化学式(9)
Figure 2021161208
(式(8)及び(9)中、R〜Rは水素原子又はメチル基、m1及びm2並びにm3及びm4は、前記分子量と繰返単位の比を形成する任意の正数)で表されるものであることが好ましい。
成形基材が、ゴム、樹脂、ガラスであることが好ましい。さらに好ましくは弾性を有し又は軟質のシリコーンゴム製、又は硬質のシリコーン樹脂製であることが好ましい。ポリジメチルシロキサン骨格、ポリメチルフェニルシロキサン骨格、ポリメチルハイドロジェンシロキサン骨格から選ばれる何れかを有するものであると、入手が容易で製造し易いことから、好ましい。
親水性改質基材は、このような構成を有することにより、水接触角20°以下という優れた親水性を発現している。未処理の成形基材は、水接触角が約40〜108°であるが、親水性改質基材は、作製直後で水接触角が20°以下であり、室温やクリーンルームで、半年間〜1年間以上保存しても水接触角が20°以下であり高い親水性を維持できている。
親水性改質基材は、親水性を維持した状態で、架橋済みシリコーンゴムと接着可能である。
親水性改質基材は、オートクレーブによる加速劣化試験にて、121℃、2気圧で20分間でも、親水性が維持されており、水接触角が20°以下という高い親水性を維持でき、高い耐熱性を発現している。
共重合体は、水、アルコールやアセトンのような水溶性有機媒体、塩化メチレンやクロロホルムやエーテルのような水不溶性有機媒体などの各種媒体で希釈して使用してもよく、共重合体濃度が0.001〜10wt%のときに高い親水性を発揮することができ、さらに好ましくは0.01〜1.0wt%であると好ましい。
このような親水性改質基材は、以下のようにして作製することができる。
先ず、化学式(1)で表される側鎖にベタイン構造を有する繰返単位と、化学式(3)で表される側鎖に活性官能基を有する繰返単位とを有する共重合体は、以下のようにして合成される。
より具体的には、前記化学式(8)又は(9)で表される共重合体を例に説明する。ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドにプロパンサルトンを反応させ、化学式(1)で表されるような繰返単位を形成するためのベタイン構造含有コモノマーを合成する。
4−アミノ安息香酸のアミノ基をジアゾ化後にアジド化し酸クロライドにしてから、ピぺリジンのアミノ基の一方を保護基で保護したモノ保護ピぺリジンと反応させてアミド化し、その後、保護基を外し、モノ−p−アジ化安息香酸ピペラジンアミドを得る。メタクリル酸クロライドと6−アミノカプロン酸とをアミド化し、さらに前記モノ−p−アジ化安息香酸ピペラジンアミドの遊離アミノ基とアミド化して、化学式(2)で表されるような繰返単位を形成するための活性官能基含有コモノマーを合成する。
又は、メタクリル酸クロライドと前記モノ−p−アジ化安息香酸ピペラジンアミドの遊離アミノ基とアミド化して、化学式(2)で表されるような繰返単位を形成するための別な活性官能基含有コモノマーを合成する。
化学式(1)で表されるような繰返単位となるベタイン構造含有コモノマーと、化学式(3)で表されるような繰返単位となる活性官能基含有コモノマーとを、共重合させると、前記化学式(8)又は(9)で表される共重合体が得られる。
なお、炭素数等が異なる別なコモノマー、例えば化学式(1)又は(2)で表される繰返単位を形成するためのベタイン構造含有コモノマー若しくは化学式(3)で表されるような繰返単位となる活性官能基含有コモノマーは、始発物質を調整すれば同様にして合成できる。
次に、水、アルコールやアセトンのような水溶性有機媒体、塩化メチレンやクロロホルムやエーテルのような水不溶性有機媒体などの各種媒体に、共重合体を溶解又は懸濁させる共重合体含有液を調製する。
ゴム、樹脂、ガラスから選ばれる何れかの材質製の成形基材を、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理、エキシマ処理、及び/又はシランカップリング剤処理し好ましくはエキシマ処理して、成形基材表面に元々存するものの他に新たに表面官能基を生成させる。また、マスキングなどを用いることで、前記成形基材表面の一部に表面官能基を生成させることも可能であり、選択的に親水性を発現させることができる。
その後、共重合体液を、噴霧、塗布、浸漬などの方法で、付し、必要に応じて媒体を揮発などの方法で除去し、共重合体が付された成形基材とする。この段階では、成形基材表面の表面官能基に、共重合体のベタイン構造が静電的な相互作用をして、共重合体が、物理吸着乃至化学吸着のような吸着されていることによって、強固に付されつつ、親水性を発現している。
次いで、共重合体が付された共重合体のベタイン構造を、紫外線又は光照射処理好ましくは波長220〜410nm、積算光量は任意の紫外線を照射することにより、アジド基が分解してナイトレン基を生じ、不飽和基、アルキル基、フェニル基、アミノ基と反応して及び/又は環拡大して、成形基材上の表面官能基、若しくは成形基材の主成分やその他の硬化性分が有する不飽和基、アルキル基、フェニル基、又はアミノ基と反応して及び/又は環拡大して、反応又は結合することにより、共有結合を形成し、共重合体が、化学結合によって強固に付されつつ、親水性を発現している。
このようにして、親水性改質基材が得られる。
なお、活性官能基がアジド基である例を示したが、活性官能基が、スルホ基、トリアルコキシシリル基、若しくは水酸基又は水酸基ブロック基であって、成形基材上の表面官能基であるシラノール基やシロキシ基と縮合反応して、エーテル結合である共有結合を形成し、共重合体が、化学結合によって強固に付されつつ、親水性を発現していてもよい。
親水性改質基材は、親水性を発現する用途に用いられる。例えば、生体の水分と馴染みやすいように血管カテーテルなどの医療器具や、細胞培養容器、マイクロ流路チップなどに用いられる。
以下、本発明を適用する親水性改質基材の実施例、及び本発明を適用外の比較例を、対比しながら説明する。
先ず、本発明を適用する親水性改質基材を作製するために用いられるベタイン構造含有繰返単位と活性官能基含有繰返単位とを有する共重合体を調製した。
(合成例1:共重合体[化学式(9)]の合成)
(1-1) メタクリルアミドプロピルスルホベタインの合成
Figure 2021161208
三口フラスコ(300ml)にジメチルアミノプロピルメタクリルアミド1.70g(10mmol)と脱水アセトン120mlを入れ、室温で撹拌した。1,3−プロパンサルトン1.83g(15mmol)の脱水アセトン溶液20mlを滴下し、室温で48時間撹拌した。アセトンを留去し、得られた固体にアセトン20mlを加えて洗浄した。得られた固体をメタノールに溶かし、ヒドロキノンを加えて溶媒を留去し、固体を取り出して減圧乾燥したところ、収率98%で無色固体のメタクリルアミドプロピルスルホベタインが得られ、m/z:293(M+H)であり、その構造が支持された。
(1-2) メタクリルアミドピペラジンフェニルアジドモノマーの合成
(1-2(i)) モノBocピペラジンの合成
Figure 2021161208
三口フラスコ(300ml)にピペラジン12.9g(150mmol)、水酸化ナトリウム1.20g(30mmol)、ジオキサン75ml、水75mlを入れ、0℃で撹拌した。ジ−t−ブチルジカーボネート6.54g(30mmol)のジオキサン溶液50mlを滴下し、さらに室温で12時間撹拌した。反応液を5wt%炭酸ナトリウム水溶液200mlに注ぎ、クロロホルム200mlで抽出した。クロロホルム、ジオキサン、及び未反応ピペラジンを留去し、減圧乾燥したところ、無色固体のモノBocピペラジンを粗収率80%で得ることができ、そのまま次の反応に用いた。
(1-2(ii)) p−アジ化安息香酸の合成
Figure 2021161208
三口フラスコ(1L)に4−アミノ安息香酸6.86g(50mmol)、エタノール500ml、濃塩酸250mlを入れ、0℃で撹拌した。亜硝酸ナトリウム5.18g(75mmol)の水溶液100mlを滴下し、0℃で1時間撹拌してジアゾニウム塩溶液を調整した。三口フラスコ(2L)にアジ化ナトリウム32.5g(500mmol)、エタノール250ml、水250mlを入れ、0℃で撹拌した。この溶液に調整したジアゾニウム塩溶液を滴下し、室温で24時間撹拌した。エタノールを留去した反応液をクロロホルム500mlで二回抽出した。クロロホルム、エタノールを留去し、減圧乾燥したところ、淡黄色固体のp−アジ化安息香酸を粗収率100%で得ることができ、そのまま次の反応に用いた。
(1-2(iii)) p−アジ化安息香酸クロライドの合成
Figure 2021161208
ナスフラスコ(500ml)に粗アジ化安息香酸3.26g(20mmol)、オキザリルクロライド5.08g(40mmol)、ベンゼン300mlを入れ、室温で撹拌した。DMF4滴を加え、室温で6時間撹拌した。ベンゼン、オキザリルクロライドを留去し、減圧乾燥したところ、褐色液体のp−アジ化安息香酸クロライドを粗収率100%で得ることができ、そのまま次の反応に用いた。
(1-2(iv)) p−アジ化安息香酸Bocピペラジンアミドの合成
Figure 2021161208
三口フラスコ(500ml)に粗モノBocピペラジン4.95g(90%、24mmol)、トリエチルアミン6.06g(60mmol)、THF300mlを入れ、0℃で撹拌した。粗アジ化安息香酸クロライド3.63g(20mmol)のTHF溶液50mlを滴下し、さらに室温で12時間撹拌した。THFを留去し、得られた残渣を5wt%塩酸200mlに注ぎ、クロロホルム200mlで抽出した。クロロホルムを留去し、残渣をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて精製したところ、淡褐色固体のp−アジ化安息香酸Bocピペラジンアミドを収率97%で得た。
(1-2(v)) モノ−p−アジ化安息香酸ピペラジンアミドの合成
Figure 2021161208
ナスフラスコ(200ml)にアジ化安息香酸Bocピペラジンアミド3.31g(10mmol)を入れ、0℃で撹拌した。トリフルオロ酢酸20mlを加え、室温で30分撹拌した。トリフルオロ酢酸を留去し、得られた残渣に5wt%炭酸ナトリウム水溶液100mlを注ぎ、クロロホルム100mlで二回抽出した。クロロホルムと副成したピペラジンとを留去し、減圧乾燥したところ、褐色固体のモノ−p−アジ化安息香酸ピペラジンアミドを粗収率90%で得ることができ、そのまま次の反応に用いた。
(1-2(vi)) メタクリルアミドピペラジン−p−フェニルアジドアミドモノマーの合成
Figure 2021161208
三口フラスコ(100ml)にメタクリルアミドプロピルスルホベタイン1.46g(5mmol)、トリエチルアミン1.01g(10mmol)、THF60mlを入れ、0℃で撹拌した。メタクリル酸クロライド627mg(6mmol)のTHF溶液15mlを滴下し、さらに室温で12時間撹拌した。THFを留去し、得られた残渣を5wt%炭酸ナトリウム水溶液100mlに注ぎ、クロロホルム100mlで抽出した。クロロホルムを留去し、再結晶(ヘキサン:クロロホルム=25:5ml)すると、タール状不純物が除去でき、淡褐色固体のメタクリルアミドピペラジン−p−フェニルアジドアミドモノマーが、収率54%で得られた。
(1-3) 共重合体[化学式(9)]への共重合
Figure 2021161208
ナスフラスコ(100ml)にメタクリルアミドプロピルスルホベタイン1.46g(5mmol)、メタクリルアミドピペラジン−p−フェニルアジドアミドモノマー15.0mg(0.05mmol)、過硫酸アンモニウム11.4mg、水5mlを入れ、アルミホイルで蓋をして均一溶液にした。70℃のウォーターバスにナスフラスコを1時間浸けて重合させた。反応液に水5mlを加えて撹拌し、溶液をメタノール50mlに注いだ。生成した沈殿物を集め、メタノールで洗浄し、減圧乾燥したところ、淡黄色固体のランダム共重合体[化学式(9)]が、収率92%で得られ、GPCで測定したところ数平均分子量92000であり、その構造が支持された。
(実施例1)
合成例1で調製した共重合体[化学式(9)]を用いて、各種基材に親水性改質処理を行った。成形基材は架橋済みシリコーンゴムシートを用いた。共重合体[化学式(9)]を0.1wt%水溶液に調製して使用した。基材を所定条件でプラズマ処理又はエキシマ処理した後、0.1wt%共重合体水溶液に室温で10分間浸漬した。その後、基材を取り出した後に紫外線を照射して親水性改質基材を得た。
(実施例2)
基材にポリカーボネート(三菱ガス化学社製:ユーピロン・フィルムFE−2000)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、親水性改質基材を得た。
(実施例3)
基材にソーダ石灰ガラス(松波硝子工業社製:S9213)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、親水性改質基材を得た。
(比較例1)
数平均分子量(i)95000又は(ii)253000のホスホリルコリン高分子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、親水性改質基材を作製した。
(接触角の測定)
得られた親水性処理改質基板の水の接触角にて親水性の評価を行った。得られた親水性改質基板に水1滴を滴下して10秒後に、接触角測定器自動接触角計(協和界面科学社製;DM−501)で水との接触角を、一試験片につき5〜7点測定し、その平均値を求めた。結果を表1に示した。
Figure 2021161208
表1から明らかな通り、親水性改質処理を行うことで接触角の減少が見られ、親水性が改質されたことがわかった。また、実施例1、2、3から、基材の種類に関係なく親水性が改質されたことがわかった。
次に長期間保存性の確認として、オートクレーブ処理を行い、加速試験を実施した。
(オートクレーブ処理試験)
得られた親水性改質基材にオートクレーブ処理を行い、その前後により接触角の変化を確認した。試験は実施例1と比較例2にて実施した。オートクレーブ処理は、高圧蒸気滅菌器(サクラ精機社製:ASV−2402)にて121℃、2気圧で20分間行い、その後、水の接触角を測定した。結果を表2に示した。
Figure 2021161208
表2から明らかな通り、実施例1ではオートクレーブ処理の前後で接触角の変化はほぼ見られなかった。それに対し比較例1では、接触角の増加が見られた。このことから本発明は熱・圧力に対して耐性を持ち、長時間親水性を維持できると示唆される。
次に、実施例1の親水性改質基板にて各種滅菌処理への耐性及び長期保存性を確認した。以下の各種試験を行い、評価した。得られた結果をまとめて表3に示した。
(γ線・電子線照射試験)
親水性改質基材にγ線及び電子線照射を行い、放射線耐性を確認した。親水性改質基材を放射線発生装置にて20〜50kGyで放射線照射を行った。その後、水との接触角を測定した。
(長期保管試験)
親水性改質基材を長期保管し、長期保存性を確認した。親水性改質基材をシャーレに入れて、室温、湿度60%環境下にて6箇月間保管し、日数経過後に水との接触角を測定した。
Figure 2021161208
表3から明らかな通り、γ線・電子線照射により若干の接触角の上昇が見られたが、親水性を維持できていた。また、6箇月間経過後でも同様に、若干の接触角の上昇が見られたが親水性が維持できていた。このことから本発明は各種滅菌処理に対して耐性があり、長期にわたって親水性が維持できることが確認できた。
以上の結果から、本発明を適用する実施例では、成形基材の表面に十分な親水性を簡便に付与でき、速やかに親水性が発現すると共に、水との接触角を十分に低く維持できるようにしつつ、長期間、大気中又は水中で保管・保存又は使用してもまた必要に応じ滅菌処理しても親水性を損なわず、長期にわたって親水性を担保できる親水性改質基材として活用できることがわかった。
本発明の親水性改質基材は、親水性を発現したまま長期間維持を必要とする血管カテーテルなどの医療器具や、細胞培養容器、マイクロ流路チップなどに用いられる。

Claims (15)

  1. ゴム、樹脂、及びガラスから選ばれる何れかの材質製の成形基材を親水化した親水性改質基材であって、側鎖にベタイン構造を有する繰返単位と側鎖に活性官能基を有する繰返単位とを有する共重合体で、前記成形基材が被覆されており、前記ベタイン構造と前記活性官能基とが、前記成形基材上の表面官能基に反応、結合、又は吸着していることを特徴とする親水性改質基材。
  2. 前記共重合体中、前記繰返単位を繰り返している主鎖が、ポリ(メタ)アクリル骨格であることを特徴とする請求項1に記載の親水性改質基材。
  3. 前記共重合体中、前記ポリ(メタ)アクリル骨格が、ポリ(メタ)アクリルアミド共重合骨格、ポリ(メタ)アクリレート共重合骨格、又はポリ(メタ)アクリルアミド及びポリ(メタ)アクリレート共重合骨格であることを特徴とする請求項2に記載の親水性改質基材。
  4. 前記ベタイン構造が、カルボン酸基、スルホン酸基、及びリン酸基から選ばれるアニオン基と、アンモニウム基、スルホニウム基、及びホスホニウム基から選ばれるカチオン基とを有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の親水性改質基材。
  5. 前記ベタイン構造が、側鎖末端に前記アニオン基又は前記カチオン基を有することを特徴とする請求項5に記載の親水性改質基材。
  6. 前記活性官能基が、アジド基、スルホ基、トリアルコキシシリル基、及び水酸基から選ばれる少なくとも何れかの官能基であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の親水性改質基材。
  7. 炭化水素芳香環基、非芳香族複素環基、芳香族複素環基、直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状で飽和又は不飽和の炭化水素基、アミド基、及びエステル基から選ばれる少なくとも何れかのスペーサ基が、前記活性官能基を有しつつ、前記繰返単位に、結合していることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の親水性改質基材。
  8. 前記共重合体が、下記化学式(1)又は(2)
    Figure 2021161208
    (式(1)及び(2)中、R及びRは水素原子又はメチル基であり、n1〜n4は2〜6の数である)で表されるもので前記ベタイン構造を有する繰返単位と、下記化学式(3)
    Figure 2021161208
    (式(3)中、Rは水素原子又はメチル基であり、n5は2〜6の数であり、n6は0〜1の数であり、Rは前記活性官能基である)で表されるもので活性官能基を有する繰返単位とのランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、又はグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の親水性改質基材。
  9. 前記成形基材が、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、及びウレタンゴムから選ばれる前記ゴム製であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の親水性改質基材。
  10. 前記成形基材が、シリコーン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びアクリル樹脂から選ばれる前記樹脂製であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の親水性改質基材。
  11. 前記成形基材が、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、及びソーダ石灰ガラスから選ばれる前記ガラス製であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の親水性改質基材。
  12. 前記成形基材の表面が、コロナ放電処理表面、プラズマ処理表面、紫外線処理表面、エキシマ処理表面、及び/又はシランカップリング剤処理表面であることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の親水性改質基材。
  13. 前記表面官能基が、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、及びアルコキシシリル基から選ばれる少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の親水性改質基材。
  14. 前記ベタイン構造が前記表面官能基にイオン結合で結合し又は吸着しており、前記活性官能基がイオン結合又は共有結合で結合していることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の親水性改質基材。
  15. 前記成形基材が、ポリジメチルシロキサン骨格、ポリメチルフェニルシロキサン骨格、及びポリメチルハイドロジェンシロキサン骨格から選ばれる何れかを有するシリコーンゴム製又はシリコーン樹脂製であることを特徴とする請求項1〜14の何れかに記載の親水性改質基材。

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