JP2004225035A - 素材の表面改質方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ホスホリルコリン基を素材表面に安定して導入できる素材の改質方法を提供して、生体適合性及び親水性に優れた各種素材を提供すること。化粧料、医用材料、クロマト用充填剤等として有用な粉体を提供すること。表面が改質された素材は、医用材料、化粧料配合原料、クロマト用充填剤等の最終品若しくは中間材料として有用である。また、分離分析装置等の部材の改質に有用である。
【解決手段】アミノ基を有する素材を、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物で処理を行って、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法。
(1)
Figure 2004225035

(R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は素材の表面改質方法に関する。本発明の改質方法は、高分子、セラミック、金属、繊維など多種多様の素材に応用され、生体適合性及び親水性に優れた表面を有する成形品及び原料を容易に提供でき、例えば、医用材料、化粧料配合原料、クロマト用充填剤等として有用である。また、分離分析装置等の部材の改質に有用である。
【0002】
【従来の技術】
ホスホリルコリン基を有する重合体は生体適合性高分子として検討されており、この重合体を各種基剤に被覆させた生体適合性材料が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体で被覆した粉末を、化粧料用粉末として利用して保湿性や皮膚密着性を改善した化粧料が開示されている。
また、特許文献2及び特許文献3には、ホスホリルコリン基を有する重合体で被覆した医療用材料や分離剤が開示されている。
【0004】
上記の材料は、主に水酸基を有するアクリル系モノマーと2−クロロ−1,3,2−ジオキサホスホラン−2−オキシドを反応させ、更にトリメチルアミンにより4級アンモニウムとすることによりホスホリルコリン構造を有するモノマーを合成しこれを重合して得られる重合体により、その表面が被覆されたものである(重合体の製造方法に関しては特許文献4及び5を参照)。
【0005】
特許文献4には、2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルの共重合体が製造され、特許文献5には2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体が製造されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−118123号公報
【特許文献2】
特開2000−279512号公報
【特許文献3】
特開2002−98676号公報
【特許文献4】
特開平9−3132号公報
【特許文献5】
特開平10−298240号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ホスホリルコリン基を有する重合体により素材を被覆して表面を改質する方法では、素材の形状によっては表面全体を効果的に被覆することは難しい。また、被覆した重合体が素材表面から剥離するため、耐久性に問題が生じる場合がある。さらには、素材表面が重合体により被覆されるため、ホスホリルコリン基による生体適合性を付与する目的から逸脱して、素材自体に要求されている基本的性質が失われる場合もある。
また、被覆に用いる重合体の上記製造方法は厳密な無水条件下にて行う必要があり、手法が煩雑という問題もある。さらに、重合条件により被覆重合体に結合しているホスホリルコリン基の安定性にも問題が生じる。
【0008】
本発明者らは、上述の観点から、ホスホリルコリン基により各種素材の表面を改質する方法について鋭意研究した結果、あらかじめホスホリルコリン基を有する重合体を素材表面に被覆する方法ではなく、ホスホリルコリン基を含有する化合物とアミノ基を有する素材とを反応させると、素材表面における結合形成反応により、簡便かつ高い汎用性をもってホスホリルコリン基を素材表面に直接有し、優れた生体適合性及び親水性を有する素材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
一方、重合体により素材を被覆して表面を改質する方法であっても、特定のポリマーを使用してコーティングした後に上記本発明の方法を応用すると、単に親水性ポリマーのキャストにより物理的に被覆しただけに過ぎない従来の方法より も素材表面のホスホリルコリン基の耐久性が十分に確保できることを見出した。そして、素材によっては(金属、プラスチック、ガラスなどの基板や加工品のように一定の厚みを有している素材等)、素材に要求される基本的性質を維持しつつ、本発明の方法により親水性や生体適合性を極めて容易に付与できるようになり、分離分析装置等の材料として有効に利用可能なことを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、アミノ基を有する素材を、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物で処理を行って、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法を提供するものである。
【化14】
(1)
Figure 2004225035
(R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
【0010】
また、本発明は、前記式(1)が下記式(2)であることを特徴とする上記の素材の表面改質方法を提供するものである。
【化15】
(2)
Figure 2004225035
【0011】
さらに、本発明は、素材にアミノ基を導入するステップと、次に、該素材をグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物で処理を行うステップとからなる、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法を提供するものである。
【化16】
(1)
Figure 2004225035
(R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
【0012】
また、本発明は、前記式(1)が下記式(2)であることを特徴とする上記の素材の表面改質方法を提供するものである。
【化17】
(2)
Figure 2004225035
【0013】
さらに、本発明は、素材の表面をアルコキシシリル基含有ポリマーでコーティングして、次に、下記式(3)及び/又は(4)のホスホリルコリン基含有化合物を、還元的アミノ化反応若しくは縮合反応により結合させ、下記式(2)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法を提供するものである。
【化18】
(2)
Figure 2004225035
【化19】
(3)
Figure 2004225035
【化20】
(4)
Figure 2004225035
【0014】
また、本発明は、前記アルコキシシリル基含有ポリマーが、下記式(5)のモノマーと、式(6)〜(8)の少なくとも1つのモノマーを共重合して得られるポリマーであることを特徴とする上記の素材の表面改質方法を提供するものである。
【化21】
(5)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、R は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である)
【化22】
(6)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
【化23】
(7)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
【化24】
(8)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
【0015】
さらに、本発明は、素材の表面を、下記式(5)のモノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーとの共重合体でコーティングして、次に、ホスホリルコリン基含有化合物を結合させ、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法を提供するものである。
【化25】
(5)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、R は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である)
【化26】
(1)
Figure 2004225035
(R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳述する。
本発明の方法により、表面が処理される素材は限定されない。例えば、高分子、セラミックまたは金属からなる各種材料を好ましく処理できる。好ましく処理される高分子材料は、樹脂成形品、繊維、フィルム、シート、布、不織布、粉体などがあり、最終製品、中間加工品若しくは原料等として利用されるものであり、その形状は限定されない。セラミック又は金属からなる材料についても同様である。セラミック又は金属加工品、セラミック又は金属粉体が好ましく処理される。
【0017】
処理される素材の表面にはアミノ基が存在しなければならない。アミノ基が存在しない素材は、公知の方法若しくは今後開発される方法にてアミノ基を導入する。アミノ基は一級アミン若しくは二級アミンである。
アミノ基導入の方法としては下記が挙げられる。
【0018】
1.プラズマ処理の表面反応によるアミノ基の導入
窒素ガス雰囲気下で低温プラズマにより素材表面にアミノ基を導入する。具体的には、素材をプラズマ反応容器内に収容し、反応容器内を真空ポンプで真空にした後、窒素ガスを導入する。続いてグロー放電により、素材表面にアミノ基を導入できる。例えば、フッ素樹脂、各種金属(ステンレス、チタン合金、アルミニウム、鉄等)、セラミックス、カーボン系素材、各種ポリマー(ウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル系、ビニル系、多糖類、ポリアルキルシロキサン)、有機−無機複合系素材、各種無機物(マイカ、タルク、カオリン、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、各種無機顔料)等の材料に好ましくアミノ基が導入される。
本法によれば、素材表面が重合体などの物質で被覆されて複合化されることなく、アミノ基が素材表面に直接結合した素材が得られる。したがって、ホスホリルコリン基を導入すること以外には素材自体が有する機能を損なうことがない。
【0019】
2.プラズマ重合によるアミノ基の導入
プラズマ処理により素材表面にラジカルを発生させる。続いてモノマーで処理し重合させてアミノ基を導入する。例えば、ポリ乳酸フィルムをプラズマ反応容器内に収容し、容器内を真空にした後、放電によりフィルム表面にラジカルを発生させる。続いてフィルムを容器より取り出し、窒素置換したアリルアミンのTHF(テトラヒドロフラン)溶液中に浸し、グラフト重合させる。
素材を処理するモノマーは、アミン系モノマーを用いることが出来る。アミン系モノマーとは、アリルアミンに限られず、アミノ基及び重合可能なビニル、アクリル等の反応性部位を有していれば良い。アミノ基は、ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などにより保護されていても良い。
また、アミン系モノマーでなくても、エポキシ基のように、例えばジアミンとの反応により簡単にアミノ基を導入可能な官能基を有するモノマーでも良い。
【0020】
プラズマ処理に関する文献を下記に示す。
1. M. Muller, C. oehr
Plasma aminofunctionalisation of PVDF microfiltration membranes: comparison of the in plasma modifications with a grafting method using ESCA and an amino−selective fluorescent probe
Surface and Coatings Technology 116−119 (1999) 802−807
2. Lidija Tusek, Mirko Nitschke, Carsten Werner, Karin Stana−Kleinschek, Volker Ribitsch
Surface characterization of NH3 plasma treated polyamide 6 foils
Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 195 (2001) 81−95
3. Fabienne Poncin−Epaillard, Jean−Claude Brosse, Thierry Falher
Reactivity of surface groups formed onto a plasma treated poly (propylene) film
Macromol. Chem. Phys. 200. 989−996 (1999)
【0021】
3.表面改質剤によるアミノ基の導入
アミノ基を有するアルコキシシラン、クロロシラン、シラザンなどの表面改質剤を用いて、シラノール含有粉体、酸化チタン粉体等の表面を処理する。
例えば、1級アミノ基を有する3−アミノプロピルトリメトキシシランにより、シリカ粉体を処理してアミノ基を導入する。具体的には、シリカを水−2−プロパノール混合液中に浸し、3−アミノプロピルトリメトキシシランを添加後、100℃に加熱し6時間反応させる。室温に冷却後、シリカをメタノールで洗浄し、乾燥してアミノ基がシリカ表面に直接導入された粉体が得られる。本法において好ましく処理される素材としては、シリカ以外に、ガラス、アルミナ、タルク、クレー、アルミニウム、鉄、マイカ、アスベスト、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄等の成形品及び粉体が挙げられる。
本法によれば、素材表面が重合体などの物質で被覆されて複合化されることなく、アミノ基が素材表面の官能基に直接結合した素材が得られる。したがって、ホスホリルコリン基を導入すること以外には素材自体が有する機能を損なうことがない。
【0022】
4.シリコーン気相処理によるアミノ基の導入(特公平1−54379号公報、特公平1−54380号公報、特公平1−54381号公報参照)
粉体表面を、まず1.3.5.7−テトラメチルシクロテトラシロキサンにより処理し、表面に導入されたSi−H基と、アミノ基を有するモノマーを反応させてアミノ化された表面を得る。例えば、マイカと1.3.5.7−テトラメチルシクロテトラシロキサンをデシケーター中に入れ、アスピレーターで脱気する。80℃で16時間反応させた後、マイカを取り出し、120℃で乾燥させる。得られたマイカをエタノール中に分散し、アリルアミンを添加、続いて塩化白金酸のエタノール溶液を添加し、60℃で2時間攪拌する。反応終了後、濾過、エタノール洗浄、減圧乾燥してアミノ化マイカを得る。本法により好ましく処理可能な粉体として、フッ素樹脂、各種金属(ステンレス、チタン合金、アルミニウム、鉄等)、セラミックス、カーボン系素材、各種ポリマー(ウレタン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル系、ビニル系、多糖類、ポリアルキルシロキサン)、有機−無機複合系素材、各種無機物(マイカ、タルク、カオリン、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、各種無機顔料)などの粉体が挙げられる。
本法に用いるモノマーは、アミン系モノマーを用いることが出来る。アミン系モノマーとは、アリルアミンに限られず、アミノ基及び重合可能なビニル、アクリル等の反応性部位を有していれば良い。アミノ基は、ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などにより保護されていても良い。
また、アミン系モノマーでなくても、エポキシ基のように、例えばジアミンとの反応により簡単にアミノ基を導入可能な官能基を有するモノマーでも良い。
【0023】
上記の如くアミノ基を導入した素材に対し、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られたアルデヒド体あるいはハイドレート体を、還元的アミノ化反応によって、ホスホリルコリン基を素材表面に直接的に付加させる。
具体的には、素材をメタノール中に漬し、ホスファチジルグリセロアルデヒドを添加し、室温で6時間放置する。そして、シアノホウ素酸ナトリウムを0℃で添加、一晩加熱攪拌し、アミノ基にホスホリルコリン基を付加させる。粉体をメタノールで洗浄後、乾燥し、ホスホリルコリン基を表面に直接有する表面改質素材が得られる。反応溶媒はメタノール以外にも水、エタノール、2−プロパノール等プロトン性溶媒であれば使用可能であるが、メタノールを用いた場合の導入率が高い傾向にある。
【0024】
表面改質剤に3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて、ホスホリルコリン基(PC基と略す)を導入する方法のスキームを下記に示す。
【化27】
Figure 2004225035
【0025】
本発明の表面改質方法は、ホスホリルコリン基の導入率が高く、導入される量を容易に調整でき、様々な素材の表面を修飾できるという大きな利点がある。
【0026】
本発明の方法において、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物は、公知のグリセロホスホリルコリン基を、公知の方法により酸化的解裂を行わせるもので、極めて簡単なステップである。この反応は、1,2−ジオールを過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いて酸化することにより結合を開裂させ、2つのアルデヒド体を得るものであり、本法の場合、ホスホリルコリンアルデヒド体とホルムアルデヒドを生成する。反応は通常水中または水を含む有機溶媒中で行われる。反応温度は0度から室温である。アルデヒド体は水中で平衡反応を経てハイドレートとなることもあるが、続くアミンとの反応には影響しない。下記にホスホリルコリン基含有する一官能のアルデヒド体を調製するスキームを示す。
【化28】
Figure 2004225035
【0027】
アミノ基を有する素材は特に限定されない。素材の表面、場合によっては、複雑な形状をした素材の内部表面にグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体が反応できるアミノ基があればよい。
【0028】
グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体(若しくはハイドレート体)を、素材表面のアミノ基に結合させる還元的アミノ化反応は、両者を溶媒中にて攪拌することにより容易に行うことが出来る。この反応は両者を水或いはアルコール中に共存させ(第三成分の有機溶媒を混合しても良い)、イミンを形成させた後、これを還元剤により還元して2級アミンを得るものである。還元剤としてはシアノホウ素酸ナトリウム等マイルドな還元剤が好ましいが、ホスホリルコリンが安定な限り、他の還元剤を用いることも可能である。反応は通常0度から室温で行われるが、場合により加熱することもある。
【0029】
上記の方法により、親水性のホスホリルコリン基を任意の量で含有する素材が簡単に得られる。
上記説明は、式(2)のホスホリルコリン基を導入する手段であるが、一般式(1)のホスホリルコリン基を含有する素材も上記と同様にして得られる。一般式(1)のホスホリルコリン基を有する化合物は、公知化合物から公知の方法を用いて、式(2)のホスホリルコリン基を有する化合物を合成するのと同様の反 応により製造出来る。式(2)は一般式(1)の最も好ましい態様であり、R 、R 、R がメチル基、n=2の場合である。
本明細書において、一般式(1)におけるR 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6(好ましくは1〜3)の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である。この直鎖若しくは分枝アルキル基には他の置換基を有していてもよく、例えば、水酸基を有する直鎖若しくは分枝アルキル基であっても好ましい。
また、素材が合成ポリマーの場合、その親水部として、カルボン酸基、水酸基、1級〜3級アミノ基、スルホン酸基、リン酸基、ポリオキシエチレン基、アンモニウム基、アミド、カルボキシベタイン、糖類等を含有してもよく、これらの種類及び含有量で、素材の機能を設計できる。さらに、その疎水部として、炭素原子数2〜22の直鎖状または分岐アルキル、コレステロール等の環状アルキル、オレイル等不飽和結合を含むアルキル基、ベンゼン環、ナフタレン環、ピレンをはじめとする炭化水素系芳香族、ピリジン環、イミダゾール、チアゾール、インドール等のヘテロ系芳香族、パーフルオロアルキル、ポリアルキルシロキサン等の疎水基を含有してもよく、素材の用途に応じて選択し、設計できる。合成ポリマーからなる素材の疎水基の結合形態は、エステル、エーテル、アミド、ウレタン、尿素結合等により直接ポリマー主鎖と結合されていても良いし、スペーサーを介して主鎖と結合されていても良い。スペーサーの種類としては、親水性のポリエチレンオキサイド、疎水性のポリプロピレンオキサイド、直鎖状アルキル(炭素原子数2〜22)等が挙げられる。
また、素材表面に存在するアミノ基の1部をホスホリルコリン基により修飾し、残部を他の官能基で修飾することで、新たな機能を発現する改質素材を設計できる。素材に導入されたアミノ基を元素分析等により定量し、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物を、付加させたい量だけ使用することにより製造される。そして、残りのアミノ基に任意の官能基を付加させることが出来る。この手法は全ての粉体に一般的に適用できる。
【0030】
本発明の改質方法により表面が改質された素材は、生体適合性及び親水性に優れた材料及び成形品となる。生体適合性を有するホスホリルコリン基を素材表面に直接有する材料として、化粧料、医用材料(人工臓器、手術用器具など)、クロマト用充填剤、塗料等、幅広い用途に応用可能である。
【0031】
本発明の他の態様は、上述の改質方法に、特定のポリマーコーティングを応用した場合の改質方法である。本発明における重合体により素材を被覆して表面を改質する方法であっても、単に親水性ポリマーのキャストにより物理的に被覆しただけに過ぎない従来の方法と比較して、素材表面のホスホリルコリン基の耐久性が十分に確保できる。この態様により改質される好ましい素材は、金属、プラスチック、ガラス、セラミックなどの基板材料や加工素材品のように一定の厚みを有している素材である。本発明の方法は、素材に要求される基本的性質を維持しつつ、本発明の方法により親水性や生体適合性を極めて容易に付与できるようになり、分離分析装置やその配管や部品等の材料の改質方法として有効に利用可能である。例えば、分離若しくは分析装置用の配管、配管接続部品、サンプリングのためのニードル、サンプルバイアル、検出器セル等の試験液が接触する部材の改質方法として有用であり、特には、HPLC、MS、NMRの接続配管や電気泳動装置のキャピラリー配管等の素材が好ましく改質される。テフロン(登録商標)管、テフゼル管、ピーク樹脂管、フューズドシリカ管等の素材である。
【0032】
アルコキシシリル基含有ポリマーは、素材にコーティング可能であれば特に限定されない。コーティングされた素材の表面上にてアルコキシシランの架橋反応により強固な被膜が形成される。例えば、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸系モノマーに、アルコキシシリル基が置換した公知若しくは今後開発されるモノマーが好ましい。具体的には、下記一般式(5)のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸系モノマーを重合したポリマーを溶剤に溶解させて素材の表面を処理し、常法によりに架橋させてコーティングさせる。
【化29】
(5)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、R は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である)
【0033】
素材をコーティングするアルコキシシリル基含有ポリマーは、下記式(1)、好ましくは式(2)で示されるホスホリルコリン基を導入するためには、ホスホリルコリン基含有化合物と反応して導入可能な何らかの反応性基を有していなければならない。好ましい反応性基はアミノ基である。アミノ基は一級アミン若しくは二級アミンである。公知の方法若しくは今後開発される方法にてアミノ基を導入すれば良い。最も簡便で好ましい方法は、アミノ基を有するアミン系モノマーや、アミノ基を生じるイソシアネート基やエポキシ基を有するモノマーと共重合したコポリマーを用いることである。
【化30】
(1)
Figure 2004225035
(R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
【化31】
(2)
Figure 2004225035
【0034】
なお、アミン系モノマーとの共重合体でなくても、エポキシ基やイソシアネート基のように、例えばジアミンとの反応により簡単にアミノ基を導入可能な官能基を有するモノマーと、アルコキシシリル基含有ポリマーとを共重合させたポリマーでもよい。
なお、プラズマ重合により、アルコキシシリル基含有ポリマーに、窒素置換したアリルアミンのTHF(テトラヒドロフラン)溶液中に浸し、グラフト重合させて、アミノ基を導入することもできる。
【0035】
共重合させるモノマーは下記の式(6)〜(8)のモノマーや、アクリル酸やメタクリル酸等の(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。式(6)〜(8)におけるエステル結合は(COO)はアミド結合(CONH)であってもよい。なお、式(8)のアミノ基は任意の保護基により保護されていてもよい。例えば、ブトキシカルボニルもしくはベンジルオキシカルボニルにより保護されてい てもよい。アミノ基が保護されている場合は脱保護(ブトキシカルボニルの場合トリフルオロ酢酸処理、ベンジルオキシカルボニルの場合水素雰囲気下パラジウム触媒処理)した後に、ホスホリルコリン基(PC基)を導入する。
【化32】
(6)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
【化33】
(7)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
【化34】
(8)
Figure 2004225035
(R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
【0036】
また、共重合するモノマーには、上記の結合性官能基を有するモノマーの他に、素材の材質に応じて、コーティングするアルコキシシリル基含有ポリマーと、素材との親和性の観点から、その他のモノマーを共重合しても好ましい。例えば、素材の材質がポリプロピレンの場合、飽和炭化水素との親和性向上のためブチルメタクリレートを、ポリシロキサン系素材の場合はポリジメチルシロキサンメタクリレートを、テフロン(登録商標)の場合はパーフルオロアルキルモノマーを共重合することにより効果が向上する。
【0037】
導入したアミノ基に対して、ホスホリルコリン基含有化合物、好ましくはグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られたアルデヒド体あるいはハイドレート体を、還元的アミノ化反応によって反応させて、ホスホリルコリン基が導入される。好ましいホスホリルコリン基含有化合物は、下記式(3)のジオール体及び/又は下記式(4)のアルデヒド体であり、好ましくは縮合反応及び/又は還元的アミノ化反応によりアミノ基に結合させる。
なお、最終的にホスホリルコリン基含有化合物がアミノ基に結合していれば、アミノ基の導入から結合に至るまでにどのような反応経路をとってもよい。
【化35】
(3)
Figure 2004225035
【化36】
(4)
Figure 2004225035
【0038】
グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体は、公知のグリセロホスホリルコリン基を、公知の方法により酸化的解裂を行わせるもので、極めて簡単なステップである。この反応は、1,2−ジオールを過ヨウ素酸、或いは過ヨウ素酸塩を用いて酸化することにより結合を開裂させ、2つのアルデヒド体を得るものであり、本法の場合、ホスホリルコリンアルデヒド体とホルムアルデヒドを生成する。反応は通常水中または水を含む有機溶媒中で行われる。反応温度は0度から室温である。アルデヒド体は水中で平衡反応を経てハイドレートとなることもあるが、続くアミンとの反応には影響しない。下記にホスホリルコリン基含有する一官能のアルデヒド体を調製するスキームを示す。
【化37】
Figure 2004225035
グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるハイドレート体及び/又はアルデヒド体を、素材をコーティングしたポリマーのアミノ基に結合させる還元的アミノ化反応は、両者を溶媒中にて攪拌することにより容易に行うことが出来る。この反応は両者を水或いはアルコール中に共存させ(第三成分の有機溶媒を混合しても良い)、イミンを形成させた後、これを還元剤により還元して2級アミンを得るものである。還元剤としてはシアノホウ素酸ナトリウム等マイルドな還元剤が好ましいが、ホスホリルコリンが安定な限り、他の還元剤を用いることも可能である。反応は通常0度から室温で行われるが、場合により加熱することもある。
具体的には、素材をメタノール中に漬し、ホスファチジルグリセロアルデヒドを添加し、室温で6時間放置する。そして、シアノホウ素酸ナトリウムを0℃で添加、一晩加熱攪拌し、アミノ基にホスホリルコリン基を付加させる。反応溶媒はメタノール以外にも、水、エタノール、2−プロパノール等プロトン性溶媒であれば使用可能であるが、メタノールを用いた場合にホスホリルコリン基を付加率が高い傾向にある。
【0039】
上記の方法により、親水性のホスホリルコリン基を任意の量でその表面に導入された素材が簡単に得られる。以下にさらに具体的な方法を記す。
【0040】
改質方法1
上記式(5)のモノマー1(以下、モノマー1と略す)と、上記式(6)のモノマー(以下、モノマー2と略す)を必須成分として有する共重合体を合成する。反応溶媒はモノマー1及び2と反応せず、2つのモノマーを溶解するものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルムの1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。重合開始剤はラジカル系開始剤であれば特に限定されない。例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酢酸)ジメチル等のアゾ系化合物が挙げられる。また重合開始剤を用いる以外にも放射線照射等により重合させることもできる。共重合体の平均分子量は最終的に架橋反応を起こすものであるため特に制限されない。共重合させるモノマーは素材との親和性に応じて上記2種以外にも加えてよい。
<改質方法1−1>
モノマー1とモノマー2を必須とする共重合体を合成し、これを各種基板(素材:例えば、様々な形態の金属、プラスチック、セラミック、ガラス等)に展着させる。さらに残存しているイソシアナートと、上記式(3)のホスホリルコリン基含有化合物(以下、PC1と略す)を、ウレタン結合により縮合させ、上記式(1)のホスホリルコリン基(以下、PC基と略す)を導入する。ポリマーの架橋反応を起こすタイミングは簡便性に応じて、PC基導入前でも後でも良い。水による処理を行えば架橋反応は速やかに進行するが、皮膜を放置しておいても次第に進行してゆく。
<改質方法1−2>
モノマー1と2を必須とする共重合体を合成し、これを各種基板(素材)の表面に展着させる。さらにこれを水または塩基性水溶液により処理することによりイソシアナートを分解してアミンに変換する。このアミノ基と、上記式(2)のホスホリルコリン基含有化合物(以下、PC2と略す)を、還元的アミノ化反応により結合させPC基を導入する。または、上記ポリマーをエチレンジアミンで処理し、アミノ基を導入したのち、還元的アミノ化反応により上記式(2)のホスホリルコリン基含有化合物と結合させることもできる。
【0041】
改質方法2
モノマー1と、上記式(7)のモノマー(以下、モノマー3と略す)を必須成分として有する共重合体を合成する。反応溶媒はモノマー1及び3と反応せず、2つのモノマーを溶解するものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルムの1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。重合開始剤はラジカル系開始剤であれば特に限定されない。例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘−アゾビス(イソ酢酸)ジメチル等のアゾ系化合物が挙げられる。また、重合開始剤を用いる以外にも放射線照射などにより重合させることもできる。共重合体の平均分子量は最終的に架橋反応を起こすものであるため特に制限されない。共重合させるモノマーは基板との親和性に応じて上記2種以外にも加えてよい。
モノマー1と3を必須とする共重合体を、各種(基板)素材の表面に展着させる。さらに、これをアンモニア水溶液或いはエチレンジアミンを始めとする分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物で処理することによりエポキシ基をアミノ基に変換する。続いて、PC2を還元的アミノ化反応により結合させ、PC基を導入する。
【0042】
改質方法3
モノマー1と、上記式(8)のモノマー(以下、モノマー4と略す)又はそのアミノ基をブトキシカルボニルもしくはベンジルオキシカルボニルにより保護したものを必須成分として有する共重合体を合成する。反応溶媒はモノマー1及び4と反応せず、2つのモノマーを溶解するものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルムの1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。重合開始剤はラジカル系開始剤であれば特に限 定されない。例えば過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酢酸)ジメチル等のアゾ系化合物が挙げられる。また、重合開始剤を用いる以外にも放射線照射などにより重合させることもできる。共重合体の平均分子量は最終的に架橋反応を起こすものであるため特に制限されるものではない。
共重合させるモノマーは素材の材質との親和性に応じて上記2種以外にも加えてよい。
モノマー1と4を必須とする共重合体を各種基板(素材)の表面に展着させる。続いて、PC2を還元的アミノ化反応により結合させPC基を導入する。アミノ基が保護されている場合は脱保護(ブトキシカルボニルの場合トリフルオロ酢酸処理、ベンジルオキシカルボニルの場合水素雰囲気下パラジウム触媒処理)した後PC基を導入する。
【0043】
改質方法4
モノマー1と(メタ)アクリル酸を必須成分として有する共重合体を合成する。反応溶媒はモノマー1及び(メタ)アクリル酸と反応せず、2つのモノマーを溶解するものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルムの1種または2種以上の混合溶媒が挙げられる。重合開始剤はラジカル系開始剤であれば特に限定されない。例えば過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酢酸)ジメチル等のアゾ系化合物が挙げられる。また、重合開始剤を用いる以外にも放射線照射などにより重合させることもできる。本共重合体の平均分子量は最終的に架橋反応を起こすものであるため特に制限されるものではない。共重合させるモノマーは素材の材質との親和性に応じて上記2種以外にも加えてよい。モノマー1と(メタ)アクリル酸を必須成分として有する共重合体を各種基板(素材)に展着する。
これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピ ル)−3−エチルカルボジイミドを始めとするカルボジイミド系カップリング剤やカルボジイミダゾールカップリング剤等を用いてPC基を結合させる。
または、共重合体中のカルボキシル基を塩化チオニルにより酸塩化物とした後、あるいは、 N− ヒドロキシスクシンイミドをはじめとする活性エステルに変換した後、PC基を有するアルコールと反応させてPC基を結合させる。
【0044】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は下記の実施例のみに限定されない。素材表面に導入されたホスホリルコリン基はFT−IR及び元素分析により確認して定量出来る。
【0045】
合成例1 ホスホリルコリン基を含有するアルデヒド体
L−α−グリセロホスホリルコリン(450mg)を蒸留水15mlに溶解し、氷水浴中で冷却する。過ヨウ素酸ナトリウム(750mg)を添加し、2時間攪拌する。更にエチレングリコール(150mg)を添加して1晩攪拌する。反応液を減圧濃縮、減圧乾燥し、メタノールにより目的物を抽出する。
構造式及びNMRスペクトルを図1に示す。
【0046】
実施例1 ホスホリルコリン基により改質されたシリカゲル
平均粒子径5μmのシリカゲル(ポアサイズ80Å)10gを水(15ml)−2−プロパノール(15ml)に分散、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(5g)を添加後、100℃に加熱し6時間反応させる。室温に冷却後、シリカゲルを濾過、洗浄し、減圧乾燥してアミノ基の導入されたシリカを得る。このシリカの透過型FT−IRスペクトルを図2に示す。
このシリカゲルをメタノール100mlに分散し、合成例1により得られた化合物10gと混合、室温で6時間攪拌する。続いてこの混合液を氷浴中で冷却し、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム3gを添加し、室温で一晩攪拌した後、シリカゲルを濾過し、メタノールで洗浄し、減圧乾燥して、目的とするホスホリルコリン基を表面に直接有するシリカゲル10.6gを得る。このシリカゲルのFT−IRスペクトルを図3に示す。
図3から、1250cm−1付近にリン酸基由来のピークが出現しており、ホスホリルコリン基が粉体表面に導入されたことがわかる。
【0047】
また、粉体の元素分析値を示す。
【表1】
Figure 2004225035
上記元素分析値より、実施例1の改質粉体には、ホスホリルコリン基がシリカゲル表面にほぼ定量的に導入されたことが分る。
【0048】
本発明の方法により、改質されたシリカ粉体はアセトンなどの極性溶媒中に長時間保持してもホスホリルコリン基が安定して粉体表面に保持されるという優れた効果を有している。これに対して、2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体及び共重合体で被覆したシリカは、被覆された重合体が粉体表面から溶出し、ホスホリルコリン基を安定的に粉体に結合させておくことが出来ない。また、シリカ表面は重合体で被覆されているため、シリカ表面の本来の性質も重合体自体の性質により変化してしまう。
【0049】
実施例2 ホスホリルコリン基により改質されたN−イソプロピルアクリルアミド−アクリル酸共重合体粒子
水200ml中に、ドデシル硫酸ナトリウム(20mg)、N−イソプロピルアクリルアミド(2.7g)、アクリル酸(172mg)、メチレンビスアクリルアミド(121mg)を溶解、窒素雰囲気下70℃で30分間攪拌した後、重合開始剤(過硫酸カリウム 9.2mg)を添加し、4時間攪拌する。得られた粒子(実施例2前駆体)を水中で透析により精製し、凍結乾燥する。更にこの粒子(700mg)をテトラヒドロフラン(30ml)−ジメチルホルムアミド(10ml)に分散し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(800mg)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(500mg)、2、2‘−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(1.14g)のテトラヒドロフラン(10ml)−ジメチルホルムアミド(50ml)溶液を室温で添加、一晩攪拌する。粒子を水中で透析し、凍結乾燥する。更にこれをメタノール(70ml)に分散、合成例1の化合物1gを添加し、室温で6時間攪拌した後、この混合液を氷浴中で冷却し、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム2.8gを添加、室温で一晩攪拌する。得られた粒子を水中で透析し、目的のホスホリルコリン基を粒子表面に直接有するN−イソプロピルアクリルアミド−アクリル酸共重合体粒子(620mg)を得る。
【0050】
実施例3 ホスホリルコリン基により改質されたN−イソプロピルアクリルアミド−アクリル酸共重合体粒子
水200ml中に、ドデシル硫酸ナトリウム(20mg)、N−イソプロピルアクリルアミド(2.4g)、アクリル酸(382mg)、メチレンビスアクリルアミド(121mg)を溶解、窒素雰囲気下70℃で30分間攪拌した後、重合開始剤(過硫酸カリウム 9.2mg)を添加し、4時間攪拌する。得られた粒子(実施例3前駆体)を水中で透析により精製し、凍結乾燥する。更にこの粒子(700mg)をテトラヒドロフラン(30ml)−ジメチルホルムアミド(10ml)に分散し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(800mg)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(500mg)、2、2‘−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(1.14g)のテトラヒドロフラン(10ml)−ジメチルホルムアミド(50ml)溶液を室温で添加、一晩攪拌する。粒子を水中で透析し、凍結乾燥する。更にこれをメタノール(70ml)に分散、合成例1の化合物1.2gを添加し、室温で6時間攪拌した後、この混合液を氷浴中で冷却し、シアノトリヒドロほう酸ナトリウム3gを添加、室温で一晩攪拌する。得られた粒子を水中で透析し、目的とするホスホリルコリン基で改質されたN−イソプロピルアクリルアミド−アクリル酸共重合体粒子(650mg)を得る。
【0051】
次に、実施例2及び3で得られた各粒子2mgをウシ血清アルブミン(BSA)の2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸バッファー5mmol溶液(pH5)2ml中に分散、一晩放置後、遠心分離により粒子を除去し、上澄みのBSA濃度をUV吸収(λ=280nm)により定量した。結果を図4に示す。
ホスホリルコリン基のない実施例2前駆体及び実施例3前駆体は、多くのBSAを吸着するが、ホスホリルコリンを付加した実施例2及び3はその吸着量に減少が見られた。また、ホスホリルコリン基の導入率が高い実施例3が、より効果的にBSAの吸着を阻害した。したがって、本発明の改質方法により素材が有する性質が効果的に変化している。
【0052】
実施例4 ホスホリルコリン基により改質された鉄板
1cmx1cm、厚さ1mmの鉄板を水(20ml)−2−プロパノール(20ml)に分散、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(5g)を添加後、100℃に過熱し6時間反応させる。鉄板を水でよく洗浄し、ホスホリルコリンのアルデヒド体(300mg)のメタノール(50ml)溶液に浸漬、5時間放置後、シアノヒドロホウ酸ナトリウム100mgを0℃で添加、室温で一晩放置し、メタノールで洗浄、目的とするホスホリルコリン基で修飾された鉄板を得る。
【0053】
実施例4の鉄板と未改質鉄板の蛋白吸着量を比較する。上記2種の鉄板をヒト血清アルブミンのリン酸バッファー溶液(0.2%)10mlに浸漬し、2週間放置する。鉄板をリン酸バッファーで軽くすすぎ、その表面を原子間力顕微鏡で観察し、蛋白吸着の量を比較できる。ホスホリルコリン基で修飾された鉄板には蛋白は付着しないが、未改質鉄板には付着が見られる。
【0054】
実施例5 ホスホリルコリン基により改質された布
木綿布(3cmx3cm)をプラズマ反応容器中、真空下で窒素ガスを導入する。グロー放電により表面にアミノ基を導入後、メタノール(20ml)中に浸漬、ホスホリルコリンのアルデヒド体(300mg)を添加し、室温で6時間放置、更にシアノヒドロホウ素酸ナトリウム(100mg)を0℃において添加し、一晩室温で放置する。得られた木綿布を水でよく洗浄し、乾燥して、目的とするホスホリルコリン基で修飾された布を得る。この布は、改質前の布と比較して手触りのぬめり感が大幅に向上する。
【0055】
実施例6 ホスホリルコリン基で改質されたグラファイト
グラファイト(2cm 2cm,厚さ1mm)をプラズマ反応容器中、真空下で窒素ガスを導入する。グロー放電により表面にアミノ基を導入後、メタノール(20ml)中に浸漬、ホスホリルコリンのアルデヒド体(300mg)を添加し、室温で6時間放置、更にシアノヒドロホウ素酸ナトリウム(100mg)を0℃において添加し、一晩室温で放置する。得られたグラファイトをメタノールでよく洗浄し、乾燥して目的とするホスホリルコリン基で修飾されたグラファイトを得る。
【0056】
実施例6のグラファイトと未改質グラファイトの蛋白吸着量を比較する。上記2種のグラファイトをヒト血清アルブミンのリン酸バッファー溶液(0.2%)10mlに浸漬し、2週間放置する。グラファイトをリン酸バッファーで軽くすすぎ、その表面を原子間力顕微鏡で観察し、蛋白吸着の量を比較できる。ホスホリルコリン基で修飾されたグラファイトには蛋白は付着しないが、未改質グラファイトには付着が見られる。
【0057】
上記実施例の結果は、本発明の方法により改質された素材が生体適合性を必要とする生体埋殖機器等医療用途に極めて有用であることを示している。
【0058】
次に、素材の表面をアルコキシシリル基含有ポリマーでコーティングして、次に、式(3)及び/又は(4)のホスホリルコリン基含有化合物を、還元的アミノ化反応若しくは縮合反応により結合させ、式(2)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法の実施例を記す。
【0059】
実施例7
市販のモノマー1(5g)、モノマー2(n=2)(5g)、ブチルメタクリレート(5g)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、窒素雰囲気下30分間脱気する。温度を70℃に上げ、アゾビスイソブチロニトリル(5mg)を添加し、4時間重合した。反応液をポリエチレン板(2cm 2cm,厚さ1mm)に展着し、十分に乾燥させた。続いてPC1(1g)、トリエチルアミン(1g)を含有するジメチルホルムアミド(100ml)を調製し、このポリエチレン板を室温にて5時間浸漬させた。その後、ポリエチレン板を、メタノール、アセトンで洗浄し、目的とするPC基修飾ポリエチレン素材を得た。なお、ポリエチレン板上の架橋反応を充分進行させるため水処理後再度乾燥させても良い。
【0060】
実施例8
実施例7のポリマーを全く同様にして、ポリプロピレン板(2cm 2cm,厚さ1mm)に展着、乾燥後、トリエチルアミン含有水溶液に1時間浸漬して架橋反応を進行させると共にイソシアナートをアミンに変換した。続いて、このポリプロピレン板をメタノール中に浸漬し、PC2(1g)を添加して5時間室温で放置した後、シアノホウ素酸ナトリウム(0.5g)を氷浴中で添加し、室温で12時間放置した。この基板をメタノール洗浄して目的とするPC基修飾ポリプロピレン素材を得た。
【0061】
実施例9
市販のモノマー1(5g)、モノマー3(n=1)(15g)、ヒドロキシエチルメタクリレート(5g)、トリメチルアンモニウムエチルアクリレート(1g)をエタノール(200ml)に溶解し、窒素雰囲気下30分間脱気した。温度を70℃に上げ、アゾビスイソブチロニトリル(5mg)を添加し、4時間重合した。反応液をチタン板(2cm 2cm,厚さ1mm)に展着し、充分乾燥させた。続いてこの基板を架橋させ、エポキシ基をアミノ基に変換するためアンモニア水溶液中50℃で5時間処理した。これをメタノール洗浄し、メタノール中に浸漬し、PC2(1g)を添加して5時間室温で放置した後、シアノホウ素酸ナトリウム(0.5g)を氷浴中で添加し、室温で12時間放置した。この基 板をメタノール洗浄し目的とするPC基修飾チタン素材を得た。
【0062】
実施例10
市販のモノマー1(5g)、モノマー4(n=2)(2g)、メチルメタクリレート(10g)、ジメチルポリシロキサンメタクリレート(3g)をエタノール(100ml)−ヘキサン(50ml)に溶解し、窒素雰囲気下30分間脱気した。温度を70℃に上げ、アゾビスイソブチロニトリル(5mg)を添加し、4時間重合した。反応液をシリコーン板(2cm 2cm,厚さ1mm)に展着し、充分乾燥させた。続いて、このシリコーン板を架橋させるため水中室温で1時間処理した。これを乾燥し、メタノール中に浸漬し、PC2(1g)を添加して5時間室温で放置した後、シアノホウ素酸ナトリウム(0.5g)を氷浴中で添加し、室温で12時間放置した。基板をメタノール洗浄し目的とするPC基修飾シリコーン素材を得た。
【0063】
実施例11
市販のモノマー1(5g)、モノマー2(n=2)(5g)、ブチルメタクリレート(5g)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、窒素雰囲気下30分間脱気する。温度を70℃に上げ、アゾビスイソブチロニトリル(5mg)を添加し、4時間重合した。反応液をクロロホルムで希釈した後、表面改質を行う対象となるチューブ(テフロン(登録商標)管)に封入する。管の片方の終点は封管し、他方の終点より減圧により、数時間かけて溶媒除去をおこなう。ついで、PC1(1g)、トリエチルアミン(1g)を含有するジメチルホルムアミド(100ml)を調製し、管にその液を毎分1cmの速度で5時間通液させる。その後、管内をメタノール、アセトンを通液させ、目的とするPC基内面修飾配管を得る。内面の架橋反応を充分進行させるため水を通液し再度、減圧により乾燥させても良い。
なお、材質の異なるテフゼル管、ピーク樹脂管、フューズドシリカ管を使用しても全く同様にPC基内面修飾配管が得られる。
【0064】
実施例12
実施例11のポリマーを同じくクロロホルムで希釈した後、表面改質を行う対象となるチューブ(テフゼル管)に封入する。管の片方の終点は封管し、他方の終点より減圧により、数時間かけて溶媒除去をおこなう。トリエチルアミン含有水溶液を毎分1cmの速度で5時間通液させて架橋反応を進行させると共にイソシアナートをアミンに変換した。続いてこの配管をPC2(1g)を含有するメタノール(100ml)を5時間室温で通液した後、シアノホウ素酸ナトリウム(0.5g)を含有するメタノール(100ml)を氷温下で通液し、室温で12時間封入放置する。その後、管内をメタノール洗浄し目的とするPC基で内面が修飾された配管を得る。
なお、材質の異なるテフロン(登録商標)管、ピーク樹脂管、フューズドシリカ管を使用しても全く同様にPC基内面修飾配管が得られる。
【0065】
実施例13
市販のモノマー1(5g)、モノマー3(n=1)(15g)、ヒドロキシエチルメタクリレート(5g)、トリメチルアンモニウムエチルアクリレート(1g)をエタノール(200ml)に溶解し、窒素雰囲気下30分間脱気する。温度を70℃に上げ、アゾビスイソブチロニトリル(5mg)を添加し、4時間重合した。反応液をクロロホルムで希釈した後、表面改質を行う対象となるチューブ(ピーク樹脂管)に封入する。管の片方の終点は封管し、他方の終点より減圧により、数時間かけて溶媒除去をおこなう。続いてこの配管内面を架橋させ、エポキシ基をアミノ基に変換するためアンモニア水溶液を50℃で5時間通液する。これにメタノール通液し、PC2(1g)を含有するメタノール(100ml)を5時間室温で通液した後、シアノホウ素酸ナトリウム(0.5g)を含有するメタノール(100ml)を氷温下で通液し、室温で12時間封入放置した。その後、管内をメタノール洗浄し目的とするPC基内面修飾配管材を得る。
なお、材質の異なるテフロン(登録商標)管、テフゼル管、フューズドシリカ管を使用しても全く同様にPC基内面修飾配管が得られる。
【0066】
実施例14
市販のモノマー1(5g)、モノマー4(n=2)(2g)、メチルメタクリレート(10g)、ジメチルポリシロキサンメタクリレート(3g)をエタノール(100ml)−ヘキサン(50ml)に溶解し、窒素雰囲気下30分間脱気する。温度を70℃に上げ、アゾビスイソブチロニトリル(5mg)を添加し、4時間重合する。反応液をクロロホルムで希釈した後、表面改質を行う対象となるチューブ(フューズドシリカ管)に封入する。管の片方の終点は封管し、他方の終点より減圧により、数時間かけて溶媒除去をおこなう。続いてこの配管内面を架橋させるため水を室温で5時間通液した。これを乾燥し、PC2(1g)を含有するメタノールを5時間室温で通液した後、シアノホウ素酸ナトリウム(0.5g)を含有するメタノール(100ml)を氷温下で通液し、室温で12時間封入放置する。その後、管内をメタノール洗浄し目的とするPC基内面修飾配管材を得る。
なお、材質の異なるテフロン(登録商標)管、テフゼル管、ピーク樹脂管を使用しても全く同様にPC基内面修飾配管が得られる。
【0067】
【発明の効果】
本発明の改質方法によれば、各種素材に対し、簡便な方法にてホスホリルコリン基を素材表面に安定して導入することが可能である。具体的用途に使用される素材に、最適な量のホスホリルコリン基を容易に導入でき、用途に適した改質を容易に行うことができるという大きな利点がある。表面が改質された素材は、生体適合性及び親水性が高く、医用材料、化粧料配合原料、クロマト用充填剤等として有用である。また、分離分析装置等の部材の改質に有用である。
【0068】
本発明の改質方法に、特定のポリマーコーティングを応用した場合においても、簡便な方法にて、親水性のホスホリルコリン基を安定して素材に導入することが可能である。特に、ホスホリルコリン基を、試験液が接触する内面に導入した分析装置若しくは分離装置用配管や分析装置用各種器材は、タンパク質の吸着を防止して、再現性に優れたタンパク分析を可能とする。また、分析装置内でのタ ンパク変性を抑制し、タンパク回収率を向上させることも可能である。改質される素材を選ばず、コーティングされたポリマーが架橋するため、コーティングの耐久性に優れている。さらにポリマーコーティング後に高分子反応によってホスホリルコリン基を導入するため、最適な量のホリルコリン基を容易に各種接液部材の表面に導入することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1の構造式及びNMRスペクトルである。
【図2】実施例1のアミノ基の導入されたシリカゲルの透過型FT−IRスペクトルである。
【図3】実施例1の改質シリカゲルの透過型FT−IRスペクトルである。
【図4】BSA吸着量を表すグラフである。

Claims (7)

  1. アミノ基を有する素材を、グリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物で処理を行って、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法。
    【化1】
    (1)
    Figure 2004225035
    (R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
  2. 前記式(1)が下記式(2)であることを特徴とする請求項1記載の素材の表面改質方法。
    【化2】
    (2)
    Figure 2004225035
  3. 素材にアミノ基を導入するステップと、次に、該素材をグリセロホスホリルコリンの酸化的解裂反応により得られるアルデヒド体を含有する化合物で処理を行うステップとからなる、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法。
    【化3】
    (1)
    Figure 2004225035
    (R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
  4. 前記式(1)が下記式(2)であることを特徴とする請求項3記載の素材の表面改質方法。
    【化4】
    (2)
    Figure 2004225035
  5. 素材の表面をアルコキシシリル基含有ポリマーでコーティングして、次に、下記式(3)及び/又は(4)のホスホリルコリン基含有化合物を、還元的アミノ化反応若しくは縮合反応により結合させ、下記式(2)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法。
    【化5】
    (2)
    Figure 2004225035
    【化6】
    (3)
    Figure 2004225035
    【化7】
    (4)
    Figure 2004225035
  6. 前記アルコキシシリル基含有ポリマーが、下記式(5)のモノマーと、式(6)〜(8)の少なくとも1つのモノマーを共重合して得られるポリマーであることを特徴とする請求項5記載の素材の表面改質方法。

    【化8】
    (5)
    Figure 2004225035
    (R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、R は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である)
    【化9】
    (6)
    Figure 2004225035
    (R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
    【化10】
    (7)
    Figure 2004225035
    (R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
    【化11】
    (8)
    Figure 2004225035
    (R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である。−O−は−NH−でもよい。)
  7. 素材の表面を、下記式(5)のモノマーと(メタ)アクリル酸系モノマーとの共重合体でコーティングして、次に、ホスホリルコリン基含有化合物を結合させ、下記式(1)で示されるホスホリルコリン基を該素材表面に導入することを特徴とする素材の表面改質方法。
    【化12】
    (5)
    Figure 2004225035
    (R は水素又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、R は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝のアルキルであり、nは1〜6の数である)
    【化13】
    (1)
    Figure 2004225035
    (R 、R 、R はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分枝アルキル基を表し、n=2〜4である)
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