JP5406719B2 - Si−H基を含有する表面を処理する方法 - Google Patents
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Description
さらに、制御された表面特性(湿潤性、電気伝導性・・・)を有するよく規定された表面を与えるために、ポリオルガノシロキサンの表面を修飾すると、表面化学や、マイクロ流体のようなマイクロテクノロジーに対する相当な関心が引き起こされる。しかしながら、シリコーンは通常、前処理なしで使用されるのに適当な性質を有していない。
シリコーンポリマーは、それらに様々な性質、例えば、それらを前述の用途、例えば、レンズに適合させるための親水性を与えるために修飾されてもよい。例えば、前記シリコーンポリマーは、前記親水性を得るために含浸(impregnation)又はソーキング(soaking)によりバルクで処理されてもよい。しかしながら、そのような性質が主にその表面で示されることがいっそう望まれる、ということが広く認識されている。
さらに、1以上のスペーサーを介して、共有結合により、シリコーンポリマー表面に分子をグラフトすることを暗示する技術が開発されたが、特に、スペーサーを基質にグラフトする第一工程、及び生物活性分子を前記スペーサーの末端官能基(function)にグラフトする第二工程の、少なくとも2つの工程が必要とされるので、前記プロセスはほとんどの場合行うのが容易でない。
また、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコールスペーサーを通して、シリコーン表面にヘパリンを固定することが、H. Chenらの“ヘテロ二官能性PEGスペーサーを通してのシリコーン表面でのヘパリンの固定化”Biomaterials 26 (2005) 7418-7424から知られている。
H. Chenらの“ポリ(エチレンオキシド)の共有結合固定化によるタンパク質忌避(repellant)シリコーン表面”, Biomaterials 26 (2005) 2391-2399は、ポリメチルヒドロキシシロキサン存在下、酸性触媒による平衡により表面にSi−H基を導入した後、白金触媒によるヒドロシリル化によりポリ(エチレンオキシド)(PEO)を結合する方法を報告している。
前述の論文の著者と同じ発明者が作成した、特許出願WO2005/111116は、シリコーン材料を生体適合性を有するように修飾する一般的な方法を報告している。
Si−H基と反応し、さらに共有結合を作り出すことにより、前記基質又は前記表面に結合する(attach)ことのできる少なくとも3つの反応部位、及び
前記修飾された性質を、前記基質又は前記その表面に与えることのできる、少なくとも分子又はその一部、
を含有し、前記工程が、前記ポリマーを前記基質又はその表面に共有グラフト結合させることを促進するのに効率的な条件下で行われ、かつ前記ポリマーの分子量が1000g/molよりも大きい方法に関する。
Si−H基と反応し、さらに共有結合を作り出すことにより、Si−H基を有する基質又は表面に結合することのできる少なくとも3つの反応部位、及び
物理的及び/又は生化学的な、修飾された性質を、前記基質又は前記その表面に与えることのできる少なくとも分子又はその一部、
を含有し、分子量が1000g/molよりも大きいポリマーが含まれる。
本発明はまた、その表面に、本発明に従う方法により得ることのできる、修飾された物理的及び/又は生化学的性質が提供されている、Si−H基を有する基質に関する。
前記Si−H基と反応し、さらに共有結合を作り出すことにより、Si−H基を有する基質又はその表面に結合することのできる反応部位を含有するコポリマーを、少なくとも1つの反応部位と反応することにより生じさせる試薬、及び/又は
修飾された、物理的及び/又は生化学的性質を、前記基質又はその表面に与えることのできるコポリマーを、少なくとも1つの反応部位と反応することにより生じさせる別の試薬、と反応する調製方法に関する。
さらに、本発明者は、本発明に従うポリマー及びコポリマーを含めて、Si−H基を有する多様な基質に付着され得るということを見出し、より特には、前記基質はその表面に十分な量のSi−H基を含有するということを提供した。Si−H基を有する前記基質のうち、シリコーン及び水素末端シリコン基質が引用されてもよい。
本明細書で使用される用語「モノマー単位」は、特異的なモノマーから開始して形成される、ポリマーの構成単位のことを言う。
本明細書で使用される用語「コポリマー」は、1よりも多い種類のモノマーから構成されるポリマーと定義される。
本明細書で使用される表現「線状コポリマー」は、分枝していないコポリマーと定義される。
本明細書で使用される表現「ブロックコポリマー」は、1種類のモノマーが互いに隣接し、ホモポリマーセグメントを形成し、かつ異なるホモポリマーセグメントが共に結合するコポリマーと定義される。
用語「修飾された物理的及び/又は生化学的性質」は、処理されるべき表面の元の性質と異なる、いずれかの物理的及び/又は生化学的性質のことを言う。処理された、「修飾された物理的及び/又は生化学的性質」を示す表面は、生体分子がポリマーを介して表面に共有結合するように、いずれかの生体分子上の反応基と反応することのできる反応基を有する表面にまで及ぶ。
本明細書で使用される用語「生体適合性を有する」は、生物学的環境、特に、人を含む動物対象に使用可能である能力のことを言う。生体適合性は、用途の事情に従属している様々な性質を通して得られてもよい。例えば、材料は、生体適合性を有する状態にされてもよく、また、改良されたタンパク質忌避性、改良された接着性、又は前記生物学的環境において、材料をその用途に適合できる状態にするいずれかの生物学的性質、例えば、抗血栓性特性の導入により、改良された生体適合性を示してもよい。
用語「効率的な条件」は、通常のパラメーター、すなわち、pH、温度、溶媒、持続時間などにより定義される化学反応を行うための通常の条件を意味する。これは、当業者の標準的な技能の範囲内に入る。
用語「十分な量のSi−H基」は、一定の基質において本発明の方法を実施する場合、所定の性質又は特徴に関して著しく修飾されている表面を、周知の方法により測定することを可能にするのに十分な量のSi−H基を意味する。
用語「結合することのできる反応部位」は、Si−H基と共有結合を作り出すのに適している化学的官能基を意味する。
用語「前記修飾された性質を与えることのできる」は、周知の方法により、肉眼で及び/又は顕微鏡で見えるスケールにおいて測定され得る、前記の一定の性質を与える能力のことを言う。
図1及び図2は本発明を説明する。
Si−H基を有する基質の主な代表分類はシリコーン基質及び水素末端シリコン基質である。
本発明の枠組みの中で、ポリオルガノシロキサン又はポリシロキサン基質として技術的に知られている全ての種類のシリコーンは、前記シリコーン基質がその表面に十分な量のSi−H基を含有するということが提供される、本発明に従う方法により処理されてもよい。
実際に、シリコーンの製造プロセスに起因して、それらは常に、自然と、その表面に前記プロセスに由来して残存するSi−H基を有する。以下に開示されるように、分子量が1000g/molよりも大きいポリマーを使用する本発明のため、シリコーン基質の表面を修飾するための技術的に知られている方法とは対照的に、処理されるべき表面が多量のSi−H基を有することを必要としない。
[R1R2SiO]n
ここで、R1及びR2はお互い独立しており、互いにH、(C1〜C30)アルキル、(C2〜C30)アルキニル及びアリールから選択され、後者の4つの基が非置換、又は、例えば、ハロゲン原子、−OH、−NH2、−NH(C1〜C30)アルキル、−N(C1〜C6)アルキル(C1〜C6)アルキル、−O(C1〜C6)アルキル及びハロ置換(C1〜C6)アルキル基から独立して選択される、1以上の基で置換されている。
用語シリコーンはまた、前記有機側基が、2以上の−Si−O−骨格との結合に使用されるポリマーを包含する。
−Si−O−鎖長を変えることにより、有機側基及び架橋結合シリコーンは多様な性質及び組成でもって合成され得る。
とりわけ、本発明において企図されるシリコーンは硬化性シリコーンであり、例えば、以下に開示されるように、2種類のグレードのエラストマー及び樹脂である。言い換えると、2種類のグレードの流動体及びエマルジョンであるシリコーンは、より好ましくは、本発明の範囲から除かれる。
シリコーンゴムの構成要素は、長鎖ポリシロキサン及び様々な充填剤、例えば、焼成(ヒュームド)シリカ、チョーク、石英、雲母、及びカオリンであり、これらはエラストマーに良い力学的性質(弾性、吸収、引裂強度)を与える。ゴムは、鎖が架橋されるプロセスである、加硫又は硬化(curing)により柔軟にされる。種々のゴムは、加硫(架橋試薬、温度)の種類、及び用いられる基本ポリマー粘性によって分類され、室温で加硫する種類と高温で加硫する種類が広く区別される。
それらの2種類のエラストマーは、本発明で使用されるシリコーン又はポリオルガノシロキサンの意味内に包含される。
・過酸化物(により開始される)硬化(ポリマーがビニル基を含有する場合)
・白金を触媒とした付加硬化(ポリマーがビニル基含有し、架橋試薬がSi−H基を含有する場合)
・スズを触媒とした縮合硬化(α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとケイ酸エステルの間)
である。これらは全て、本発明に従う処理方法の実施前に進められ得る。いくつかは、以下に開示されるように、表面に修飾された性質を与える、ポリマーの任意的な硬化工程と同時に進められ得る。
必要な試薬及び反応条件とは別に、付加硬化及び縮合硬化はまた、適当な触媒を必要とする。白金触媒が付加硬化系に必要とされ、スズ触媒が縮合硬化系に必要とされる。対照的に、過酸化物により開始される硬化は触媒を必要としない。
架橋結合は一般的に長時間にわたって高温で行われ、その間、一時的な熱可塑性相が生じる。シリコーン樹脂及びそれらの低分子前駆体は、シリコーン石造保護試薬(silicone masonry protection agent)、例えば、外壁用シリコーン樹脂エマルジョン塗料(silicone resin emulsion paint for facade)の結合剤の基本となる。
−[SiO(CH3)2]n−
弾性固体又はゴムと同じような半固体が、より好ましく、本発明の枠組みの中で企図される限りは、nは、より好ましくは、1〜20000である。
実際に、nが非常に低い場合、製造されたポリマーは希薄な注ぐことのできる(pourable)液体であり得る。これは、好ましくは、本発明の枠組みの中で使用されるPDMSの範囲から除かれる。
本発明に従う方法により処理され得る全てのシリコーンは、従来のプロセスを通して製造されてもよい。
しかしながら、本方法は、硬化した又は硬化していないシリコーンにおいて行われてもよい。実際に、本発明の特定の態様によれば、本方法は、硬化していないシリコーン基質において行われてもよい。この場合、処理されるべき基質は必ずしも硬質の形態を示さず、また、必ずしも固体でなく、それは決定付けられた表面を示すことが提供される。それ故、処理前の基質は、決定付けられた表面を有する形態を保持させるために、容器の中に収容されてもよい。処理されるべき基質は、例えば、多かれ少なかれ変形可能なペーストであってもよい。
この態様は、表面が修飾されたシリコーンの製造における工程の数を減らすための特別な関心のうちの一つであり得る。態様の範囲は、本発明の方法によりいつでも処理される用意ができている、硬化した、硬化していない、又は部分的に硬化したのシリコーン基質を得るためにいくつかの条件を変えた実施例3でよく説明される。
シリコーン表面の全ての形態は本方法により処理され得る、ということがまた注目されるべきである。特に、シリコーン表面は、粒子、例えばコロイド溶液における粒子の形態を取ってもよい。
本発明の方法に従って処理され得るシリコン基質は、Si−H基を有している。実際に、水素末端シリコン基質は、自然酸化物(SiO2)薄膜が、例えば、フッ化水素水溶液に浸すことにより除去されて、それに水素原子が残されているシリコン基質である。表面を調製する前記方法は、当業者によく知られている。
部分的に水素末端シリコン基質を含むどんな種類の複合材料であっても、本発明に従う方法により処理されるのに適していると理解される。
実施例11は、シリコン基質に適用される本発明に従う方法を説明する。
本発明に従う方法は、幅広いその物理的及び/又は生化学的性質を考慮して、Si−H基を有する基質の表面修飾を可能にする。
言い換えると、Si−H基を有する基質を、より広い技術的用途において使用できるようにするために、本発明に従う方法は、前記基質又はその表面に以下の全てのうちの性質を与えることを可能にする。その性質は、親水性、改良された疎水性、細胞傷害性、例えば、抗菌性、殺菌性、抗ウイルス性、及び/又は抗真菌性、細胞接着性、改良された生体適合性、例えば、タンパク質忌避性又は接着性、電気伝導性、及び前記表面を生体分子固定化可能にする反応性である。
本発明の第二の態様によれば、本処理方法は主に、改良された疎水性をSi−H基を有する基質又はその表面に与えるために使用される。このような場合、処理した基質には、シリコーン基質に対して構成材料の製造、及び水素末端シリコン基質に対して生体センサーの製造のための用途を見出し得る。
本発明の第三の態様によれば、本処理方法は主に、抗菌性をSi−H基を有する基質又はその表面に与えるために使用される。言い換えると、前記方法は生物膜の形成、及び細菌コロニーの成長を防止する。
特に、本方法が殺菌性をシリコーン基質に与えるために使用される場合、それには、医学(病院及び個人医療)においても、国内環境及び産業(例えば食品産業)環境においても用途を見出し得る。
本発明の第五の態様によれば、本処理方法は主に、電気伝導性をSi−H基を有する基質又はその表面に与えるために使用される。このような場合、処理した基質には、シリコーン基質に対して医療機器の製造、及び水素末端シリコン基質に対して電子機器の製造のための用途を見出し得る。
本発明に従うポリマーは、どんな種類のポリマー、例えば、ホモポリマー又はコポリマーであってもよい。
Si−H基を有する基質又はその表面に結合することのできる反応部位は、好ましくはアルケン基、最も好ましくはビニル基であり、又はアセチレン基である。
本発明の一態様によれば、ポリマーは、アルケン基、最も好ましくはビニル基、又はアセチレン基を含む少なくとも3つのモノマー単位を含む。前記アルケン又はアセチレン基は、モノマー単位中にもともと存在していてもよいし、また、本発明に従うポリマーを得る前、間又は後の官能化に由来してもよい。
ポリマーの分子量は、1000g/molよりも大きく、好ましくは3000g/molよりも大きく、より好ましくは5000g/molよりも大きい。好ましい態様では、前記分子量は、ポリマーの性質に応じて、10000〜8000000g/mol、より好ましくは20000〜2000000g/mol、特には30000〜700000g/mol、例えば50000〜500000g/molの間にあってもよい。
本発明に従うポリマー、例えば、ホモポリマー又はコポリマーは、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリビニル誘導体(例えば、ポリビニルピロリドン)、任意に(C1〜C4)アルキルによりフェニル基上で置換されたポリスチレン、多価アルコール(例えば、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール)、ポリビニルベンジル、ポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン)、ポリメタクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリメタクリルアミド、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリエステル(例えば、ポリ(DL−ラクチド))、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(エチレン−アルト−スクシンイミド)、多糖類誘導体(例えば、デキストラン、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース)、ポリ尿素、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及び固有に第四級アンモニウム基を含有するポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)のうちから選択されるポリマー鎖骨格を含んでもよく、以下の式により表されてもよい。
ポリマーがホモポリマーである本発明の態様では、各モノマーは、共有結合により基質表面に結合することのできる少なくとも一種の反応部位と、物理的及び/又は生化学的性質を基質表面に与えることのできる少なくとも分子又はその一部とを有する。これらを以下「混合モノマー」と称する。
いくつかのモノマーは、以下の段落「コポリマー」で説明され、「混合モノマー」であり、重合されて本発明に従うホモポリマーを形成し得る。
前記ホモポリマーは、当業者に知られている方法により合成される。
本発明に従うコポリマーは、以下に説明されるように、少なくともタイプAのモノマーと、少なくともタイプBのモノマーとを含有する。前記コポリマーは、「シリコーン表面特性修飾(modifier)コポリマー」としての資格を与えられてもよい。
コポリマーは、どんな種類のコポリマー、すなわち、ブロックコポリマー又は統計コポリマーのうちの全てのコポリマーであってもよいが、有利なことには、統計コポリマーである。それ故、以下の記載はとりわけ、別に記されない限りは、用語「コポリマー」は統計コポリマーについて言及するように、統計コポリマーのために使用される。
統計コポリマー中に含有された2つのタイプA及びBのモノマー単位の比は、基質又は前記基質の表面の所望の性質を最適化するために、連続的に調節されてもよい。
コポリマーの各モノマーの選択は、基質又はその表面の所望の性質を考慮して、コポリマーの必要とされる効果に従って変化させ得る。
各モノマー単位は、特別な順序なく、統計コポリマー鎖に沿って分布されてもよい。モノマー単位の総量中の、タイプAのモノマー単位の割合は0.1%〜50%、好ましくは1%〜10%に変えてもよい。一方、モノマー単位の総量中の、タイプBのモノマーの割合は50%〜99.9%、好ましくは90%〜99%の間にあってもよい。
コポリマーはまた、様々な性質をシリコーンポリマー表面に与えることのできる、様々なタイプBのモノマー単位を含有してもよい。
それ故、コポリマーは、例えば、ABタイプの、AA’Bタイプの又はABB’タイプのコポリマーであってもよく、ここで、A’はAタイプのモノマーの変異体であり、B’はBタイプのモノマーの変異体である。
コポリマーは、好ましくは、線状コポリマーである。しかし、本発明の別の特徴によれば、コポリマーは、グラフト層(grafted layer)の安定性及び耐久性を改良するために、本発明に従う処理方法の実施後に架橋されてもよい。しかしながら、架橋結合点の数が、必要とされる効果又はグラフト親和性(grafting affinity)に影響を与え得る数を超えてはいけない、ということは明白である。
本発明の好ましい態様によれば、コポリマーの架橋結合は、以下の段落「処理方法」で開示される硬化工程と同時に生じる。
本発明の一態様によれば、タイプAのモノマー単位の反応部位、及び/又はタイプBのモノマー単位の様々な性質を与える分子は、互いに独立して、鎖骨格の一部を形成してもよい。
本発明の別の態様によれば、タイプAのモノマー単位の反応部位、及び/又はタイプBのモノマー単位の様々な性質を与える分子は、互いに独立して、側鎖を介して関係したモノマーに結合されてもよい。
一方ではタイプBのモノマー単位の側鎖を形成し、他方ではタイプAのモノマーの側鎖を形成する側鎖は、様々な構造を有していてもよい。
前述の2つの態様の組み合わせもまた、本発明の一部を形成する。
前述のように、タイプBのモノマー単位の様々な性質を与える分子又はその一部は、側鎖又は骨格鎖の一部であってもよい。単純化するために、本発明の枠組みの中で、前記化学基を「性質修飾基」と称する。
前記性質修飾基はまた、前記性質修飾基の前駆体を包含する。実際に、表面の官能化は、修飾された性質を基質表面に与えるであろう最終生体分子の結合前に生じてもよい。このような場合、反応官能性基を有する生体分子は、前駆体と反応して共有結合を形成する。例えば、前駆体が活性化カルボン酸である場合、生体分子の反応官能性基は、求核基、例えばチオール、アルコール又はアミン基であり得る。
一般的に、前記前駆体は、ペプチド合成において使用される活性化基、例えば、カルボイイミド(carboiimide)、無水物、活性化エステル、又はアジドを形成する。
本発明の態様では、前記前駆体は、以下の中からなる群から選択される。
抗菌性を与えるタイプBのモノマーのうち、以下のものが引用されてもよい。すなわち、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)・・・。親水性を与えるタイプBのモノマーのうち、以下のものが引用されてもよい。すなわち、多糖類誘導体、ポリビニルピロリドン。抗接着性を与えるタイプBのモノマーのうち、以下のものが引用されてもよい。すなわち、ポリビニルピロリドン。導電性を与えるタイプBのモノマーのうち、以下のものが引用されてもよい。すなわち、ポリアニリン及びポリピロール。
タイプBのモノマー単位の側鎖は、所望の性質をシリコーン基質又は前記基質の表面に与えるその能力のために選択される。
ほとんどの場合、1つの化学基が性質修飾を担っている。言い換えると、コポリマー中に大量に存在する前記化学基が、肉眼で及び/又は顕微鏡で見えるスケールにおいて、期待された修飾された性質をシリコーン基質に与える
・改良された親水性を与える側鎖、すなわち、これは、例えば単糖類、5000g/mol、より具体的には1000g/molより小さい分子量を有する水溶性ポリマーの両性イオン(ベタイン及びホスホコリン誘導体)部分又はポリマー鎖、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ末端ポリエチレングリコール(PEG−NH2)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノ−プロピルエーテル)(PPG−NH2)、ポリアルコール、例えばポリビニルアルコール、多糖類(例えば、デキストランセルロース)及び関連化合物、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ酸、例えばポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(ポリNIPAM)、並びにポリアリルアミン(PAM)を含む。
・改良された疎水性を与える側鎖、すなわち、これは、例えばフッ素化基、(C1〜C10)アルキル基を含む。
・タンパク質忌避性によって、改良された生体適合性を与える側鎖、すなわち、これは、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリサルコシン、ポリビニルピロリドンを含む。
・電気伝導性を与える側鎖、すなわち、これは、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンを含む。
・改良された吸着抵抗を与える側鎖、すなわち、これは、例えばポリエチレングリコール(PEG)を含む。
・抗菌性、殺菌性、抗ウイルス性を与える側鎖であって、これは、細胞膜と相互作用することが知られているアミノペニシラン酸を含んでもよい。
・殺菌性を与える側鎖であって、これは、正に荷電した基、例えば第四級アンモニウム基、第四級ホスホニウム基、グアニジウム基、イミダゾリウム基及びスルフニウム(sulfunium)基を含んでもよい。
・抗ウイルス性を与える側鎖であって、これは、第四級アンモニウム基(特に細菌ウイルスに対して)、第四級ホスホニウム基、グアニジウム基、イミダゾリウム基及びスルフニウム基を含んでもよい。
・抗真菌性を与える側鎖であって、これは、第四級アンモニウム基、第四級ホスホニウム基、グアニジウム基、イミダゾリウム基及びスルフニウム基を含んでもよい。
従って、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つの短アルキル鎖、例えばC1〜C6、特にC1のアルキル鎖を有する第四級アンモニウム基を含むモノマーは、期待された細胞接着を得るのに有利である。
トリメチルアンモニウム基がとりわけ好ましい。
mは0又は1である。
X2は、アミン、アミド、エステル又はケトン官能基、アミン、アミド若しくはケトン官能基のいずれか1つが間に入ってもよい、オリゴエチレングリコール、アリーレン基、(C1〜C6)アルキルアリーレン又は(C1〜C8)アルキレンを表す。
X4 +は、以下のものを表す。
・下式で表されるトリアルキルアンモニウム。
前述のように、タイプAのモノマー単位の反応部位は、側鎖の一部であってもよい。
タイプAのモノマー単位の側鎖は、以下の式により表され得る。
xは0又は6である。
Rx、Rx1、Rx2及びRx3は、独立して、水素原子又は(C1〜C4)アルキル基を意味し、Rx1及びRx2は、5−又は6−員環、例えば、シクロヘキセンを形成してもよく、XAは、アリーレン基、(C1〜C8)アルキレン基、(C1〜C6)アルキルアリーレン基を意味し、前記基は(C1〜C4)アルキル、ハロゲン原子、−OR1又は−NR1R2基のいずれか1つにより置換されてもよく、及び/又は、(C1〜C8)アルキレン及び/又は(C1〜C6)アルキルアリーレン基はアミン、アミド若しくはケトン官能基のいずれか1つが間に入ってもよく、前記基XAは、任意に、炭素原子交換により、又は置換により、前述のように少なくとも1つの性質修飾基を含み、かつR1及びR2は独立して、(C1〜C4)アルキル又は水素原子を意味する。
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子のことを言う。臭素及び塩素は、本発明の枠組みの中で、好ましいハロゲン原子である。
本明細書で使用される用語「アリーレン」は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、ジヒドロナフチレン、テトラヒドロナフチレン、インデニレン(indenylene)及びインダニレン(indanylene)のうちから選択される二価基のことを言う。
タイプAのモノマー単位は、コポリマーの中で、以下の式(I)で示される化合物により表され得る。
Rは、水素原子又は(C1〜C4)アルキレン基であり、
Rx1、Rx2及びRx3は、独立して、水素原子又は(C1〜C2)アルキル基を意味し、Rx1及びRx2は、5−又は6−員環、例えば、シクロヘキセンを形成してもよく、かつ
Y1は、ポリマー鎖骨格の一部であり、有利なことには、メチル基、アクリルアミド、エチレンイミン、メチルメタクリレート基、又はプロピレングリコールにより、任意に置換されたエチレンであり得る。
タイプBのモノマー単位は、コポリマーの中で、以下の式(I)で示される化合物により表され得る。
X'2は、(C1〜C4)アルキレン、オリゴエチレングリコール、又はアリーレン基を表し、Y2は、ポリマー鎖骨格の一部であり、有利なことには、メチル基、アクリルアミド、エチレンイミン、メチルメタクリレート、又はプロピレングリコールにより、任意に置換されたエチレンであり得る。
モノマーが第四級アンモニウムを含む場合、対イオンX3 -は、ハロゲン、メシラート、トシラート、スルホナート、ホスファート、ヒドロゲノホスファート(hydrogenophosphate)、ジヒドロゲノリン酸アンモニウム(ammonium dihydrogenophosphate)、スルファート、又はニトラートであってもよい。
本発明はとりわけ、殺菌及び/又は抗真菌物質、及びビニル基の両方を含有する統計コポリマーに関する。殺菌及び/又は抗真菌物質は、好ましくは、正に荷電した基であり、ビニル基は、シリコーン表面に共有結合することが企図される。
正に荷電した基は、有利なことには、第四級アンモニウム基、第四級ホスホニウム及び/又はグアニジウム基である。
本発明はまた、とりわけ、改良された親水性を与える性質修飾基、及びビニル基の両方を含有する統計コポリマーに関する。性質修飾基は、好ましくは多糖類誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース)であり、ビニル基は、シリコーン表面に共有結合することが企図される。
上述の式(I)のモノマー単位及び式(II)のモノマー単位を含む、特定の前記統計コポリマーの使用は、多くの利点をもたらす。実際に、本付着(deposition)方法は極めて簡単である。すなわち、この特定の統計コポリマーでのシリコーン表面の修飾は、水中における一段階反応と、その後、乾燥工程を伴う。実際に、水は液体媒体であり得、統計コポリマーは、十分な量の、前記コポリマーを水溶性にする第四級アンモニウム基を含む、ということを提供した。この特徴は、シリコーン表面を処理する周知の方法を超える、本発明の更なる利点である。その周知方法は、一般的に有機溶媒中で行われ、環境にやさしくない。
本発明に従う統計コポリマーは、当業者によく知られた方法論を使用して、モノマーの共重合により合成される。
本発明の好ましい態様によれば、開始ポリマーはホモポリマーである。
さらに、本発明は、本発明に従う表面特性修飾コポリマーの調製方法に関する。本方法では、少なくとも2つの反応部位を含む開始ホモポリマーは、少なくとも以下のものと反応する。
・共有結合より、Si−H基を有する基質又はその表面に結合することのできる反応部位を含有するコポリマーを、少なくとも1つの反応部位と反応することにより生じさせる試薬、及び/又は
・修飾された性質を、Si−H基を有する基質又はその表面に与えることのできるコポリマーを、少なくとも1つの反応部位と反応することにより生じさせる別の試薬。
以下のスキームP2〜P7で説明される、開始ホモポリマーに存在し得る反応部位は、ハロゲン原子、活性化カルボン酸、例えば無水物、ハロゲン化アシル、例えば塩化アシル、活性化エステル、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、及びアルコール、アミン、例えば脂肪族又は芳香族アミンのうちから選択されてもよい。
これらの開始ホモポリマーは、当業者によく知られているか、又は市販されている。
。第一工程では、1タイプのモノマー単位だけ、すなわち、タイプA又はタイプBのモノマー単位を生じさせ、かつ開始モノマー単位の一部は未反応のままである。第二工程では、第一工程後、未反応のモノマー単位から別のタイプのモノマー単位を生じさせる。一方、この第二工程中、前工程で変換されたモノマー単位は変化しない。
これとは別に、本発明に従う統計コポリマーは、2つの異なるモノマーから開始する重合によって製造されてもよい。前記代替方法は、以下のスキームP8で説明される。
前記統計コポリマーのうちの一つの合成は、後に、実施例で説明される。
さらに、以下のスキーム1は、ホモポリマーから開始する、本発明に従う統計コポリマーを得るための一般的な手順を説明する。本発明に従う統計コポリマーは、すなわち、ビニル基を含むタイプAのモノマー単位、及び性質修飾基を含むタイプBのモノマー単位を含む、特に上記のようなものである。
スキームP8及びP9は、2つの異なるモノマーから開始する、本発明に従うコポリマーの製造を説明する。
本発明はまた、有効量の統計コポリマーを含む組成物に関する。
組成物中に任意に存在する溶媒は、コポリマーを可溶化し得るいずれかの溶媒であってもよい。水溶性コポリマーの好ましい態様では、組成物は水と混和でき、最も好ましくは、溶媒として水を大部分含有している。他の溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、2−メトキシエチルエーテル、メタノール、イソプロパノール及びエタノールがまた使用され得る。前記組成物中の統計ポリマーの濃度は、処理後に所望の性質をシリコーン基質又は前記シリコーン基質の表面に提供するいずれかの量である。この濃度は、分子構造、所望の性質、及び溶媒に関係して変わるだろう。典型的には、組成物中の統計ポリマーの質量濃度は、水の場合では0.1〜1%とすることができ、エタノールの場合では0.1〜1%とすることができる。
すでに上述したように、本処理方法は、硬化した又は硬化していないシリコーンで行われてもよい。
本発明は、シリコーン基質又はその表面を処理して、該基質又は表面に物理的及び/又は生化学的な、表面修飾された性質、例えば前述の性質を与える方法であって、液体媒体中で、前記基質又は前記その表面を少なくとも一種のコポリマーに曝露することからなる工程を少なくとも含み、前記コポリマーが、共有結合により前記基質又は前記表面に結合することのできる少なくとも一種の反応部位を含む少なくともタイプAのモノマー単位と、前記修飾された性質を、前記基質又は前記その表面に与えることのできる少なくとも1つの分子を含む少なくともタイプBのモノマー単位とを含有し、前記工程が、前記コポリマーを前記シリコーン基質又はその表面に共有グラフト結合させることを促進するのに効率的な条件で行われ、かつ前記コポリマーの分子量が、1000g/molよりも大きい方法に関する。
本発明に従う表面を処理する方法を行うために、ブロックコポリマーが必要とされるモノマー単位の存在という点において上述の特徴に従うという条件で、そのブロックコポリマーが使用されてもよい。
言い換えると、前述の段落「統計コポリマー」における、タイプA及びタイプBのそれぞれのモノマー単位の記載は全て、本発明に従う処理方法に使用されるいずれのコポリマーにも適用される。
有利なことには、液体媒体は水性媒体である。
本発明に従う、ポリマー又はコポリマーに基質を曝露することに本質がある工程は、たとえもし触媒がグラフト工程中で任意に使用され得るとしても、触媒の使用を必要としない。この特徴は、技術的に知られている、表面を修飾するための方法と比較して、更なる利点を表す。
しかしながら、特にPDMSの場合では、そのような前処理は必要でない。これは、簡単さの点において、本発明に従う方法の更なる利点である。
硬化工程は、アルケン又はアセチレン基と表面のSi−H基、それとまた、それら自身の間で架橋結合を促進する条件を作り出す。
様々な条件は、本発明に従うポリマーのそのような硬化を得るために選択されてもよい。実際に、前記条件は、加熱(若しくは乾燥)、光活性化、又はその両方に本質があってもよい。
加熱は10〜200℃、好ましくは25〜150℃、最も好ましくは70〜120℃の範囲にある温度で行われ得る。
前記加熱工程は、有利なことに、1分〜24時間の範囲にある時間、例えば60分〜12時間行われてもよい。
光活性化は、いずれかの周知の方法により進められてもよい。
硬化工程はまた、その後に、基質の表面に共有結合していないコポリマーを除去するために洗浄工程が続いてもよい。例えば、基質は、いくつかの水浴で、例えば数日間洗浄されてもよい。
本発明は更に、本発明に従う方法により得ることのできる、一定の性質、例えば前述の性質をもたらされた基質に関する。
特定の態様によれば、それは、以下の性質のうちの少なくとも1つが適切な化学処理により与えられ得る基質に関する。その性質とは、親水性、改良された疎水性、細胞傷害性、例えば、抗菌性、殺菌性、抗ウイルス性、及び/又は抗真菌性、細胞接着性、改良された生体適合性、例えば、タンパク質忌避性又は接着性、電気伝導性、及び前記表面を生体分子固定化可能にする反応性である。
処理した前記基質は、それらの修飾された性質を保つための特別な保存条件を要求しない。表面処理は、実に有利なことに、特定の限度に至るまで水及び他の溶媒に耐性がある。前記修飾された性質は、以前から技術的に知られている方法により得られる修飾された性質よりも持続する、ということが注目されるべきである。
殺菌活性を有することなく細胞接着を促進するために、シリコーン基質が使用され得る場合、活性部位の密度は、検討した反応部位の化学的性質に関係して、とりわけその細胞傷害力を考慮して調節される必要がある。この調節は当業者により行われてもよい。
例えば、細胞接着が、反応部位としてトリメチルアンモニウム基を示す基質により促進される場合、一般的に、単位表面あたりの活性部位の密度は、cm2当たり1014以下である。
次に、シリコーン基質は、単離されたバクテリアの解析を行うのに有用である、ある種のプローブと考えられるべきである。この道具は、例えば、生産ラインの停止が常に避けられる食産業において関心が持たれる。
本発明は、とりわけ、タイプBのモノマーが第四級アンモニウムを含有し、かつ単位表面積あたりの活性抗菌部位の密度がcm2当たり1014〜1016の範囲であることを特徴とする、抗菌性を与えられたシリコーン基質に関する。
第四級アンモニウム基の密度は、例えば、フルオレセイン誘導体化法により測定され得る。
説明したコポリマーで処理した基質は、10分以内で全ての吸収された大腸菌を殺菌し得る、ということが実施例で実証され、説明された。
上述の方法に従う更なる含浸及び硬化工程のために、処理した基質は再処理されてもよい。前記再処理した基質はまた、本発明の範囲内に包含される。
本発明はまた、上述の、表面が修飾された基質の使用を包含する。それは、上述の方法により得ることができ、以下の実施例で説明される。
汚染除去するために、本発明のシリコーン基質を使用することは、多くの産業分野、例えば、健康、衛生及び農業食品(agroalimentary)産業において関心が持たれる。以下に例を挙げる。
・特に使い捨てできる、医療用途用容器、例えば、ポーチ、チューブを生産するための基質の使用。
・生体外又は生体内器官処理用医療機器、例えば、腎臓透析カートリッジを生産するための基質の使用。
・歯科用若しくは歯磨き用材料又は装置を生産するための基質の使用。
・埋め込み型デバイス、例えば、人工骨若しくは人工血管、又はレンズ(すなわちカテーテル)を生産するための基質の使用。
・家庭内液体(domestic fluid)、特に、水及び飲料(フルーツジュース、牛乳、ワイン等)、又は他の液体食料を汚染除去するための基質の使用。
・産業液体(industrial fluid)、例えば、切削液、滑剤、又は石油液、例えば、軽油、ガソリン若しくは灯油を汚染除去するための基質の使用。
表面が修飾されたシリコン表面が関係する限りは、それらの使用は、マイクロ電子デバイスの製造から生体センサーの製造にまで及んでもよい。
以下の実施例は本発明を説明する。
全ての化学物質をAldrich(St. Quentin Fallavier, France)から購入した。NMR実験をBruker Avance 300 MHzで行った。IRスペクトルをNicolet Magna 550を使用して得た。UV実験をPerkin Elmerのラムダ800分光計で行った。
(スキーム1を参照)
開始物質、ポリ−(ビニルベンジルクロリド)1(2g、Mn=55000、Ip=1.82)を、室温で30分間撹拌することにより乾燥テトラヒドロフラン50mL中に溶解した。次いで、3,4−ブテンアミン(120μL、1.3mmol)を10%化学量論比で添加し、混合物を50℃で24時間、還流下で撹拌した。N,N−ジメチルブチルアミン(8.2mL、57.5mmol)を前記溶液に添加し、コポリマーの沈殿のために、1時間撹拌後、エタノール30mLを溶液に添加した。反応を50℃で24時間、撹拌しながら行った。次に、溶液を濃縮し、その結果生じた生成物2をエタノール50mL中に溶解した。次いで、N,N−ジメチルブチルアミン(8.2mL、57.5mmol)をこのエタノール溶液に添加し、塩素基を完全に第四級アンモニウムに変換した。50℃で24時間撹拌した後、コポリマー3をジエチルエーテル中に沈殿させ、減圧下で乾燥させ、水中に溶解し、凍結乾燥させた(収率:83%)。1H NMR(300MHz、D2O)δ 7.02及び6.47 (m; 4H; CH=CH); 4.16 (m; 2H; -Ar-CH 2-N+); 2.70 (m; 8H; CH 3-N+ 及び -CH2-CH 2-N+), 1.3-2 (m; 3H; -CH 2-CH-Ar); 0.9-1.3 (m; 4H; -CH 2-CH 2-CH3); 0.74 (m; 3H; -CH2-CH 3); FTIR-ATR (ダイヤモンド): νO-H(水) = 3374 cm-1; ν=C-H = 3023 cm-1; νCH2,CH3 = 2990-2770 cm-1; νC=C(アリール及びブテン) = 1631 cm-1; δCH2,CH3 = 1482-1380 cm-1; δ=C-H = 866-810 cm-1; νAr-Cl(PVBC)の完全消失 = 1263 cm-1; UV(水) : λmax = 264 nm (ε= 476 M-1.cm-1); λmax = 219 nm (ε= 6828 M-1.cm-1); λmax = 187 nm (ε= 54186 M-1.cm-1)。
コポリマー3は、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び水のような多様な溶媒の使用を受け入れる。
2.1.シリコーン材料(SYLGARD(登録商標)184)の調製
SYLGARD(登録商標)184シリコーンエラストマー、塩基及び硬化剤は、液体成分から成る、2つのパーツのキットとして供給される。塩基及び硬化剤を、通常、10:1の質量比で混合する。混合物を約5〜10分間盛んにかき混ぜる。混合物中に混入した空気を、弱い減圧下で除去する。これは、混合物中に入り込んだ空気の量に応じて、30〜60分行われてもよい。次いで、混合物を70℃で24時間硬化させる。
2g/Lの水性ポリマー溶液中にシリコーン材料を浸漬し、その後、70℃で一晩中水を蒸発させることにより、試料を調製する。試料の上に置かれるポリマー溶液の量は、1cmの高さに相当する。次いで、試料をいくつかの水浴で3日間洗浄し、表面に共有結合していないコポリマーを除去する。
白金はすでに材料中に含まれており、その触媒の量はヒドロシリル化触媒作用を確実にするのに十分であるため、グラフト工程の間、白金触媒を添加する必要がないということが注目されるべきである。
統計カチオンコポリマーで修飾された表面のUVトレース(トランスミッションモード)は、グラフトしたポリマーの2つの特徴的な結合を示す。すなわち、一つは264nm(DO=0.06)に集中し、もう一つは219nm(DO=0.87)に集中する。ポリマーの第三の特徴的な結合(187nm)は、シリコーン遮断(cut-off)によりマスクされる。FTIR-ATR (ダイヤモンド): νO-H(水) = 3374 cm-1; νCH2,CH3 = 2990-2770 cm-1; νC=C(アリール及びブテン) = 1631 cm-1; δCH2,CH3 = 1482-1380 cm-1。
第四級アンモニウムの表面密度を、蛍光錯体形成、及びTillerらの“接触してバクテリアを殺菌する設計表面”、Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 2001, 98, p.5981-5985により説明されるUV−VIS分光法に基づく比色法により測定した。7×7mm2の試料を、フルオレセインナトリウム塩(蒸留水中1%)溶液に10分間浸漬した。それらの負電荷により、蛍光マーカーはカチオン部位に強く結合し、次いで、未反応の分子を蒸留水での徹底的な洗浄により除去し得る。次いで、修飾された試料を少量(2mL)の一価の塩の溶液(塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、C16H36N+Cl-、98%、Fluka、蒸留水中0.5%)に浸漬することにより、結合したフルオレセイン分子を交換し、45分間ソニケーションした。PBS(pH=7.2)0.3mL添加後、結果として生じた溶液の吸光度を175〜600nmで測定し、フルオレセインの濃度を計算し、λmax=501nmに対応する減衰係数(extinction coefficient)に対して77000 M-1.cm-1という値を得た。501nmで得られた吸光度は、ベースラインからの減算により正された。次いで、カチオン基の密度をこの濃度から導いた。すなわち、測定された電荷は、フルオレセインとイオン性錯体を形成することのできる第四級アンモニウム基に相当するものである。
2.5.処理した基質での蛍光ナノ粒子の接着
カルボキシラート修飾されたポリスチレンのラテックスビーズ(Sigma、L3530、0.05μL、2.5%固体)の1/10希釈の液滴40μLを、検討表面(1cm2)上に落とし、広げた。ビーズを30分間基質に堆積させた。その後、蒸留水で基質を洗い流すことにより、溶液中に残っているままのビーズを洗い落とした。次いで、63×水浸対物レンズ(water immersion objective)を使用して、落射蛍光顕微鏡により表面を解析した。
大腸菌(MG1655)の蒸留水懸濁液(3.7×108UFC/mL)の固着液滴(sessile droplet)40μLを、検討表面(1cm2)上に落とし、広げた。バクテリアを30分間基質に堆積させた。その後、蒸留水で基質を洗い流すことにより、溶液中に残っているままのバクテリアを洗い落とした。次いで、3.34×10-4mmol/Lの濃度である蛍光マーカー(SYTO(登録商標)9、分子プローブ、L7012)の液滴40μLを、これらの表面上に落とし、15分間広げた。次いで、光学観察のために使用される63×及び40×水浸対物レンズを備えた、市販の落射蛍光顕微鏡(DMR Leica)を使用して解析した。吸着したバクテリアは緑の点として見える。画像をカラーCCDカメラ(Micropublisher、Qimaging)で記録し、コンピュータ画像システムで解析した。
大腸菌の蒸留水懸濁液(3.7×108UFC/mL)の固着液滴40μLを、検討表面(1cm2)上に落とし、広げた。バクテリアを10分間基質に堆積させた。その後、蒸留水で基質を洗い流すことにより、溶液中に残っているままのバクテリアを洗い落とし、次いで、水滴40μLをこれらの表面上に落とし、35分間広げた。次に、水を表面から除去し、次いで、2つの蛍光マーカー、すなわち、SYTO(登録商標)9(分子プローブ、L7012、2×10-5mmol/L)及びヨウ化プロピジウム(L7007、分子プローブ、1.2×10-4mmol/L)の水溶液の混合物の液滴40μLを、これらの表面上に落とし、15分間広げた。次いで、63×水浸対物レンズを使用して、落射蛍光顕微鏡により表面を解析した。吸着したバクテリアは、もしまだ生きていれば緑の点として見え、もし第四級アンモニウム基と接触した後、それらの膜が損傷を受けているならば、赤/オレンジの点として見える。
さらに、殺菌性は約100日間引き続くことが観察された。
3.1. 以下の式により表される、Sigma-Aldrich (Saint-Quentin Fallavier, France) より販売されている市販のポリマー(ポリジメチルジアリルアンモニウム)は、重合工程から残されたその骨格にいくつかのアルケン基を有するため、表面と反応することができる(IR−ATRによる1633cm-1での特性ピークはアルケン基の存在を示す)。
さらに、前記実施例はまた、実施例2.1.でのように同じシリコーン材料で開始し、硬化剤(Si−H結合を含有する)と塩基の比を1/10〜1/1に変化させると電荷密度の増大を導く、ということを明示することを企図する(エントリー1対2、エントリー4対5、表1)。
本実施例はまた、硬化した及び硬化していないPDMS材料とのコポリマー3の反応性を調査し、硬化したエラストマーは、驚いたことに、硬化していないものよりも高い電荷密度を示すということを明示する(エントリー2、3及び5、6)。しかしながら、シリコーンキュレーション(curation)及び表面処理は一工程で行われ得るため、硬化していない材料の表面処理は、シリコーン産業及び明らかに生体材料に対して特別な関心のある手順を構成する。表面を処理したシリコーンの殺菌性を、蛍光顕微鏡検査法、及び生きているバクテリアを緑の点として、死んでいるバクテリアを赤の点として染色する生死判別の蛍光マーカー(SYTO(登録商標)9及びヨウ化プロピジウム)を使用して調査した。処理した表面は全て、以下の表2に示されるように、接触の30分後において抗菌性を示す。
ポリマー4から調製された表面の電荷密度は、同じ条件で3から得られた表面の電荷密度と遜色ない。
表1.様々なグラフトしたPDMS表面(SYLGARD(登録商標)184)の電荷密度
a SYLGARD(登録商標)184シリコーンエラストマーは2つのパーツのキット(塩基及び硬化剤)として供給される。塩基及び硬化剤を、ブラケット中で、示されるように10:1又は1:1質量比で混合し、硬化(C、70℃24時間)又は部分的に硬化(PC、100℃5分間)させて固体を得た。表1における反応を全て水中で行った。b カチオン電荷密度をフルオレセイン滴定により測定した。
a SYLGARD(登録商標)184シリコーンエラストマーは2つのパーツのキット(塩基及び硬化剤)として供給される。塩基及び硬化剤を、ブラケット中で、示されるように10:1又は1:1質量比で混合し、硬化(C、70℃24時間)又は部分的に硬化(PC、100℃5分間)させて固体を得た。
「ND」は測定していないことを意味する。
4.1.シリコーン材料(NUSIL(登録商標)MED 4750)の調製
NUSIL(登録商標)MED 4750シリコーンエラストマー、塩基及び硬化剤は、固体成分から成る、2つのパーツのキットとして供給される。塩基及び硬化剤を、通常、1:1の質量比で混合する。2つのパーツを約30分間機械的に混合した。次いで、混合物をi)硬化していない、又はii)硬化した(120℃2時間)表面処理のために使用する。
上記の節2.2.で説明されるのと同様の手順を使用し、同様の記載が有益である。
同じ特性の、コポリマー3で修飾されたNUSIL(登録商標)MED 4750シリコーン表面のUVトレース(トランスミッションモード)及びFTIR-ATRスペクトルを得た。
節2.2.と同様の手順を使用する。
表3.水中における、様々なグラフトしたPDMS表面(NUSIL(登録商標)MED 4750)の電荷密度
a NUSIL(登録商標)MED 4750シリコーンエラストマーは2つのパーツのキット(塩基及び硬化剤)として供給される。塩基及び硬化剤を、ブラケット中で、示されるように1:1質量比で混合し、表面処理の前に硬化させて(C、120℃2時間)又は硬化させないで(NC)使用した。表1における反応を全て水中で行った。b カチオン電荷密度をフルオレセイン滴定により測定した。
モノマー(N−(アクリルオキシ)スクシンイミド)(7)の調製
塩化アクリロイル(3mL、36.9mmol)を、0℃で、N−ヒドロキシスクシンイミド(4.25g、36.9mmol)及びトリエチルアミン(4.1g、5.65mL、1.1当量)のCHCl3(30mL、1.23M)撹拌溶液に添加した。溶液を0℃で3時間撹拌させ、次いで、塩水(2×30mL)で洗浄し、次いで、MgSO4上で乾燥させ、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)の溶液から再結晶させて、67%の収率で無色の結晶4.2g(24.25mmol)を得た。1H NMR(300MHz、DMSO)δ/ppm: 6.67 (dd; 1H; =CH) ; 6.52 (dd; 1H; =CH2) ; 6.34 (dd; 1H; =CH2) ; 2.84 (s; 4H; CH2CH2)。
蒸留したトルエン中の、N−(アクリルオキシ)スクシンイミド(1.3g、7.7mmol)及びAIBN(126mg、0.1当量)の混合物を80℃で15時間加熱した。次に、溶液を室温まで冷やした。形成された沈殿を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。真空中で乾燥させ、ポリ(N−(アクリルオキシ)スクシンイミド)(0.8g、4.73mmol)を白い固体として得た(収率:61%)。
1H NMR(300MHz、DMSO)δ/ppm: 2.80 (s; 4H; CH 2CH 2) ; 3.12 (m; 1H; COCHCH2); 2.06 (m; 2H; COCHCH2)。
3,4−ブテンアミン(22μL、236μmol)を、室温で、DMF4mL中のポリ[N−(アクリルオキシ)スクシンイミド]400mgの撹拌溶液に添加した。反応を室温で2時間撹拌しながら行った。次いで、NH4OH水溶液(30%、d=0.892)2mLを前記溶液に滴加した。溶液を12時間撹拌させた。次いで、溶液を水(50mL)で希釈し、透析し、凍結乾燥させてコポリアクリルアミドを得た(収率:55%)。1H NMR(300MHz、D2O)δ/ppm: 5.68 (m; 1H; =CH); 5.00 (m; 2H; =CH2); 3.12 (m; 2H; CONHCH2CH2); 2.48 (m; 2H; CONHCH2CH2); 2.11 (m; 12H; COCHCH2); 1.52 (m; 12H; COCHCH2)。
FTIR-ATR: νO-H = 3430 cm-1 ; νCH-CH2-CH3 = 2750-3000 cm-1 ; νC=C = 1658 cm-1 ; νC-O-C = 1054 cm-1 ; δCH,CH2 = 1300-1500 cm-1(通常、結晶化度により影響を受けた強度)。
NMR 1H(D2O) δ/ppm : 2.9-4.5 (m, O-CH- 及び 0-CH 2 及び 0-CH 3 及び -CH 2-CH=CH2, 227H) ; 5.10 (m, -CH2-CH=CH 2, 2H) ; 5.80 (m, -CH2-CH=CH2, 1H)。
水酸化ナトリウムNaOH326mg(8.14mmol)を、水20mL中のデキストラン(0.6g、3.7mmol、Mw=2×106g/mol、リューコノストック・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来デキストラン、Sigma-Aldrich)の撹拌溶液に添加した。次いで、1,4−ジオキサン1.85mL中の臭化アリル152.5μL(1.85mmol)を溶液に添加した。60℃で24時間撹拌後、最終的なデキストラン溶液を透析し、凍結乾燥させて、コポリマー12を得た。
FTIR-ATR: νO-H = 3320 cm-1 ; νCH-CH2 = 2900 cm-1 ; νC=C = 1636 cm-1 ; νC-O-C = 1000 cm-1 ; δCH,CH2 = 1200-1450 cm-1。
NMR 1H(D2O) δ/ppm : 3-3.9 (m, O-CH- 及び 0-CH 2, 83H); 3.97 (m, -CH 2-CH=CH2, 2H); 5.10 (m, -CH2-CH=CH 2, 2H); 5.76 (m, -CH2-CH=CH2, 1H)。
マグネティックスターラー及びアルゴン吸気口を備えた三口丸底フラスコ中で、共重合実験を行った。NVP(9.35mmol)1mL及びNAS(1.04mmol)176mgを、蒸留したDMF21mL中に溶解した(モノマー全体の濃度:0.5M)。次いで、溶液を2時間アルゴンでパージした。恒温油槽を使用して温度を60℃まで上げ、最終的に、開始剤(4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸))28.6mgを反応混合物に添加した。アルゴン雰囲気下、24時間、撹拌しながら反応を行った。
24時間の撹拌後、3,4−ブテンアミン192μL(2.08mmol)を、前記溶液に添加した。アルゴン雰囲気下、60℃で24時間、撹拌しながら反応を行った。次いで、溶媒を蒸発させ、得られた固体を水中に溶解した。最終的に、水溶液を透析し、凍結乾燥させて、コポリマー13を得た。
FTIR-ATR : νO-H(eau) = 3400 cm-1 ; νN-H(アミド) = 3270 cm-1 ; ν=C-H,NH,CH,CH2,CH3 = 3150- 2800 cm-1 ; νC=C,C=O(アミド類) = 1640 cm-1 ; δN-H(アミドII型トランス) = 1550 及び 1493 cm-1。
NMR 1H(D2O) δ/ppm : 1.15-2 (m, -CH 2-CH-CO-NH 及び -CH 2-CH-N-CO 及び CH2-N-CO-CH2-CH 2-, 10H) ; 2-2.34 (m, -CH2-CH-CO-NH 及び CO-NH-CH2-CH 2 及び CH2-N-CO-CH 2-, 6H) ; 3-4 (-CH2-CH-N-CO 及び -CO-NH-CH 2-CH2- 及び -CH2-CH 2-N-CO, 8H) ; 4,91 (m, -CH2-CH=CH 2, 2H) ; 5.64 (m, -CH2-CH=CH2, 1H)。
GPC(又はSEC)。分子量及び分子量分布を、Waters Styragel HR 5E カラム、Waters 410 示差屈折計、及びWaters 486 UV 検出器を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。使用したカラムで分離することを求めた分子量範囲は、PS当量の2×103〜4×106である。示差屈折計の光波長は930nmである。THFを1mL/分で溶離液として使用した。コポリマー13に関して:Mw=12200g/mol、多分散性:1.27。
10.1.シリコーン材料(SYLGARD(登録商標)184)の調製
SYLGARD(登録商標)184シリコーンエラストマー、塩基及び硬化剤は、液体成分から成る、2つのパーツのキットとして供給される。塩基及び硬化剤を、通常、10:1の質量比で混合する。混合物を約5〜10分間盛んにかき混ぜる。混合物中に混入した空気を、弱い減圧下で除去する。これは、混合物中に入り込んだ空気の量に応じて、30〜60分行われてもよい。次いで、混合物を70℃で24時間硬化させる。
節2.2.で説明されるのと同様の手順を使用し、同様の記載が有益である。
コポリマー9、10、11、12及び13でグラフトしたシリコーン表面は、処理していないシリコーンと比べて、明らかに親水性の表面特性を示す(表4を参照)。
表4.様々なグラフトしたPDMS表面(NUSIL(登録商標)MED 4750及びSYLGARD(登録商標)184)の水動的接触角(water dynamic contact angle)(AA:前進角、AR:後退角)
11.1.シリコンウエハーの調製
ACM (Villiers St Frederic, France)に由来するSiウエハー(100オリエンテーション(orientation)、Pドープ(P doped)、抵抗性1〜20Ωcm、厚さ280μm)を、表面にSi−H結合を作り出すために、処理前に10%HF溶液と共に30分間インキュベートした。
Siウエハーを、一滴のH2PtCl6溶液(イソプロパノール中8質量%)と共に、2mg/mLのコポリマー3を含有するイソプロパノール中に浸漬し、70℃で一晩中インキュベートした。
節2.2.と同様の手順を使用する。
コポリマー3でグラフトしたシリコンウエハーは、明らかに、高いカチオン電荷密度を示す(表5を参照)。
表5.グラフトしたシリコンウエハーの電荷密度
a 表面にSi−H結合を作り出すために、Siウエハーを処理前に10%HF溶液と共にインキュベートした。b カチオン電荷密度をフルオレセイン滴定により測定した。c Siウエハーを、Pt触媒と共に、2mg/mLの3を含有するイソプロパノール中に浸漬した。
落射蛍光顕微鏡検査法
1×1×0.1cm3のシリコーン試料を、LB成長培地中の大腸菌(MG1655)懸濁液4mL中に浸漬した。37℃で48時間インキュベーションした後、試料を滅菌水の2つの槽で洗浄する(2×10分)。次いで、表面に付着したバクテリアをSyto 9(登録商標)で標識し、落射蛍光顕微鏡を使用して観察した(水浸対物レンズ×40)バクテリアの計数を行うため、試料表面の異なる区域における15枚の画像を記録する。結果を表6に示す。
1×1×0.1cm3のシリコーン試料を、LB成長培地中の大腸菌(MG1655)懸濁液4mL中に浸漬した。37℃で48時間インキュベーションした後、試料を滅菌水の2つの槽で洗浄する(2×10分)。次いで、滅菌蒸留水1mL中に試料を1時間浸漬し、その後、2分間ボルテックス撹拌することにより、付着したバクテリアを回収した。
1/10希釈した(decimal dilution)懸濁液をLB−寒天に植え付けることにより、バクテリアの計数を行った。37℃で24時間インキュベーションした後、バクテリアの数をシリコーン表面のcm2当たりのCFUとして表した(表6)。
Claims (15)
- Si−H基を有する基質又はその表面を処理して、該基質又は表面に物理的及び/又は生化学的な、表面修飾された性質を与える方法であって、液体媒体中で、前記基質又はその表面を少なくとも一種の統計コポリマーに曝露することからなる工程を少なくとも含み、前記統計コポリマーが、
Si−H基と反応し、さらに共有結合を作り出すことにより、前記基質又は前記表面に結合することのできる少なくとも3つの反応部位、及び
前記修飾された性質を、前記基質又は前記その表面に与えることのできる、少なくとも分子又はその一部、
を含有し、
前記工程が、前記コポリマーを前記基質又はその表面に共有グラフト結合させることを促進するのに効率的な条件下で行われ、かつ前記コポリマーの分子量が、1000g/molよりも大きく、
前記コポリマーが、共有結合により前記基質又は前記表面に結合することのできる少なくとも3つの反応部位を含む第一のモノマー単位と、前記修飾された性質を前記基質又は前記その表面に与えることのできる少なくとも一種の分子を含む第二のモノマー単位とを少なくとも含有し、
前記コポリマーが、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリビニル誘導体、任意に(C 1 〜C 4 )アルキルによりフェニル基上で置換されたポリスチレン、多価アルコール、ポリビニルベンジル、ポリアミン、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(エチレン−アルト−スクシンイミド)、多糖類誘導体、ポリ尿素、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及び固有に第四級アンモニウム基を含有するポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)のうちから選択されるポリマー鎖骨格を含むことを特徴とする方法。 - 前記コポリマーの分子量が、3000g/molよりも大きい、請求項1に記載の方法。
- 前記基質又は前記その表面に結合することのできる前記反応部位が、アルケン基又はアセチレン基である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コポリマーが、アルケン基又はアセチレン基を含む少なくとも3つのモノマー単位を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記修飾された性質が、親水性、改良された疎水性、細胞傷害性、細胞接着性、改良された生体適合性、電気伝導性、及び前記表面を生体分子固定化可能にする反応性の中からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記コポリマーが、メチルセルロースであるポリマー鎖骨格を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 物理的及び/又は生化学的な、表面修飾された前記性質が、前記コポリマー中における、単糖類、5000g/molより小さい分子量を有する水溶性ポリマーの両性イオン部分又はポリマー鎖、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、アミノ末端ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノ−プロピルエーテル)、ポリアルコール、多糖類及び関連化合物、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ酸、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、フッ素化基、(C1〜C10)アルキル基、ポリサルコシン、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、アミノペニシラン酸、第四級アンモニウム基、第四級ホスホニウム基、グアニジウム基、イミダゾリウム基並びにスルフニウム基のうちから選択され得る性質修飾基の存在により与えられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 続いて、硬化工程がある、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記液体媒体が、水性媒体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記Si−H基を有する基質又はその表面が、シリコーン基質又は水素末端シリコン基質である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 統計コポリマーであって、Si−H基と反応し、さらに共有結合を作り出すことにより、Si−H基を有する基質又は表面に結合することのできる少なくとも3つの反応部位を含む少なくとも第一のモノマー単位と、物理的及び/又は生化学的な、修飾された性質を、前記基質又は前記その表面に与えることのできる少なくとも分子又はその一部を含む少なくとも第二のモノマー単位とを含有し、分子量が、1000g/molよりも大きく、
前記コポリマーが、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリビニル誘導体、任意に(C 1 〜C 4 )アルキルによりフェニル基上で置換されたポリスチレン、多価アルコール、ポリビニルベンジル、ポリアミン、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(エチレン−アルト−スクシンイミド)、多糖類誘導体、ポリ尿素、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及び固有に第四級アンモニウム基を含有するポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)のうちから選択されるポリマー鎖骨格を含むことを特徴とする統計コポリマー。 - Si−H基を有する基質又はその表面を処理するための組成物であって、液体媒体中で、請求項11に記載の統計コポリマーを含む組成物。
- Si−H基を有する基質であって、その表面に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得ることのできる、修飾された物理的及び/又は生化学的性質が提供されている基質。
- 請求項13に記載の基質を含む医療機器であって、前記基質がシリコーン基質である医療機器。
- 請求項11に記載の統計コポリマーを調製する方法であって、少なくとも2つの反応部位を含む開始ホモポリマーが、少なくとも、
前記Si−H基と反応し、さらに共有結合を作り出すことにより、Si−H基を有する基質又はその表面に結合することのできる少なくとも3つの反応部位を含有するコポリマーを、前記開始ホモポリマーの少なくとも1つの反応部位と反応することにより生じさせる試薬、及び/又は
修飾された、物理的及び/又は生化学的性質を、前記基質又はその表面に与えることのできるコポリマーを、前記開始ホモポリマーの少なくとも1つの反応部位と反応することにより生じさせる別の試薬、
と反応する方法。
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