JP4217881B2 - 機能性被膜の形成方法及び機能性被膜被覆物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック、金属、セラミックス、陶器、ガラス等の基材表面を、撥水性、親水性、防汚性、導電性等、機能性のある表面に改質する方法、及びこれにより得られる機能性被膜被覆物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機ポリシロキサンを基材にコーティングした被膜は、種々の表面特性を与えることが知られている。例えば、ジメチルポリシロキサンをコーティングした被膜は、表面滑性、撥水性、防汚性に優れた表面を与える。ポリオキシアルキレンとジメチルポリシロキサンを共重合したものは、防曇性のある表面を与える。フルオロアルキル基で変性したジメチルポリシロキサンは、表面滑性、撥水性、防汚性に加え、撥油性をも与える。
【0003】
しかしながら、これらの有機ポリシロキサンは、基材表面に塗布しただけでは、表面を濡らしているに過ぎないため、磨耗や溶剤の影響で、簡単に脱離してしまい、これらを薄膜で耐久性ある機能性被膜として固定化する方法は、未だ確立されていない。
【0004】
特公平6−49597号公報(特許文献1)には、ガラス基板と、該ガラス基板の表面に積層された1000Å以上の厚さを有する二酸化珪素からなる中間層と、該中間層の表面に積層されたシリコーンからなる撥水層とをもつことを特徴とする撥水性ガラスが開示されている。しかし、二酸化珪素からなる中間層とシリコーンからなる撥水層との結合は強固ではなく、繰り返しの拭き取り等によって次第に剥がれる問題があった。
【0005】
また、特許第3007436号公報(特許文献2)には、一端又は両端にクロルシラン基を有するシリコーン化合物を溶かした非水系の有機溶媒中に基材を浸漬することで、シリコーンと基材の間にシロキサン結合を形成したシロキサン系単分子膜が開示されている。しかし、クロルシラン基は、水との反応性が非常に高く、非水系溶媒や塗布作業を行う雰囲気に少量含まれる水によって容易に加水分解される。その結果、シリコーン化合物同士の重縮合が避けられず、基材とシリコーン化合物の間に強固な結合を効率よく形成させるには不都合があった。
【0006】
特開平9−157635号公報(特許文献3)には、アニオン系界面活性剤及びポリオキシアルキレンとジメチルポリシロキサンを共重合したものの混合物が、高耐久の防曇性表面を与えると記載されているが、浴室での使用において、高々数日間の耐久性しかなかった。
【0007】
更に、特開2002−97192号公報(特許文献4)には、片末端にポリフルオロアルキル基を有し、他方の末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンが、ガラスの水滴除去性に優れていると記載されている。しかしながら、これらの有機ポリシロキサンは、末端の加水分解性シリル基の基材表面への配向性が十分ではなく、耐久性に問題があった。
【0008】
一方、特開平5−169011号公報(特許文献5)には、反応性官能基を有する有機ポリマーを主成分とする前処理組成物を基材表面に処理し、その上に該反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有する撥水性防汚剤を主成分とする防汚組成物を前処理層と反応させる表面防汚処理構造体が記載され、更にアリル基含有アクリル樹脂を前処理し、その上にシロキサンの側鎖のみにSiH基を有するハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製KF−99)をハイドロシリレーションで反応させることが例示されている。しかし、この方法は、側鎖にのみSiH基を有するハイドロジェンポリシロキサンを使用しているため、立体障害により反応性が不足すること、及び前処理にシロキサン化合物とは濡れ性の悪いアクリル樹脂を使用しているため、両者の反応による固着が十分ではなかった。
【0009】
【特許文献1】
特公平6−49597号公報
【特許文献2】
特許第3007436号公報
【特許文献3】
特開平9−157635号公報
【特許文献4】
特開2002−97192号公報
【特許文献5】
特開平5−169011号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、種々の表面特性を与える有機ポリシロキサンを基材表面に薄膜で耐久性ある機能性被膜として固定化する方法、及びこれにより得られる機能性被膜被覆物品を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、表面が脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料で被覆された基材上に、下記一般式(1)で表されるヒドロシリル基(SiH基)含有有機ケイ素化合物の1種又は2種以上を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有材料の被膜と該ヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応させることにより、薄膜で耐久性のある種々の性能を有する機能性被膜を基材表面に形成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、分子中に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合を有する基及び少なくとも1個のケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するシラン、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選択される1種又は2種以上と、ケイ素原子に結合した全ての基が加水分解性基を有するシラン、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選択される1種又は2種以上とを含む脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料により表面が被覆された基材上に、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の1種又は2種以上を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の被膜と該有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応させ、基材の最表面に機能性被膜を形成させることを特徴とする機能性被膜の形成方法を提供する。また本発明は、表面が脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料で被覆されたガラス上に、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の1種又は2種以上を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の被膜と該有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応させ、基材の最表面に機能性被膜を形成させることにより、機能性被膜がガラス表面に形成されてなることを特徴とする機能性被膜被覆物品を提供する。
【0013】
【化2】
(式中、R1は同一でも異なってもよい炭素数1〜12の1価炭化水素基であり、R2は同一でも異なってもよい水素原子及び機能性を有する1価の有機基から選ばれる基であり、両末端のR2の少なくとも1つは水素原子である。kは0〜100の整数、mは0〜100の整数、nは0〜100の整数である。)
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の機能性被膜の形成方法は、表面が少なくとも脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料で被覆された基材上に、一般式(1)で表されるヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物の1種又は2種以上を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基含有材料の被膜とヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応させるものである。
【0015】
本発明における脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料は、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、スチリル基等の脂肪族不飽和炭化水素基を含有する化合物である。ここで言う材料とは、モノマーであってもそれを重合させたポリマーであってもよい。不飽和炭化水素基としては、少なくとも末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20、更に好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8の1価の脂肪族不飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
このような材料としては、例えば、分子中に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合を有する基及び少なくとも1個のケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するシラン、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0017】
具体的には、下記式で表されるものを挙げることができる。
R3 4-a-bR4 bSiXa
(式中、R3は脂肪族不飽和結合を有さない1価の基であり、R4は脂肪族不飽和結合を有する1価の基であり、Xは加水分解性基であり、aは1〜3の整数、bは1〜3の整数、a+bは2〜4の整数である。)
【0018】
上記式中、R3の脂肪族不飽和結合を有さない1価の基は、特に炭素数1〜10、とりわけ1〜8の1価炭化水素基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。また、R4は脂肪族不飽和結合を有する炭素数2〜20、特に2〜12、とりわけ2〜8の1価の基であり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基等のアルケニル基、スチリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基等が例示される。Xは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4、特に1〜2のアルコキシ基、塩素原子等のハロゲン原子、アセトキシ基等のアシロキシ基などが例示され、中でもアルコキシ基が好ましい。また、aは1〜3の整数、好ましくは2又は3であり、bは1〜3の整数、好ましくは1であり、a+bは2〜4の整数、好ましくは3又は4である。
【0019】
上記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料は、上記脂肪族不飽和結合を有する加水分解性シランと脂肪族不飽和炭化水素基を有しない加水分解性シランとの混合物又はこれらの共加水分解物であってもよい。また、脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料が、分子中に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合を有する基及び少なくとも1個のケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するシラン、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選択される1種又は2種以上とケイ素原子に結合した全ての基が加水分解性基であるシラン、具体的には、SiX4(Xは上記と同じ)、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選択される1種又は2種以上を含有するもの又はこれらの共加水分解物も好ましい。
【0020】
更に、上記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料としては、脂肪族不飽和基含有シランで表面処理されたシリカ、チタニア、ジルコニア等の無機パウダーを充填したアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂や、未反応の上記脂肪族不飽和基を有するアクリル樹脂等の有機重合体であってもよい。
【0021】
なお、これらの脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料は、この材料を可溶の有機溶剤で希釈して用いることが好ましい。ここで、この材料が可溶な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン、ヘキサン、工業用ガソリン等の非極性溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等を例示することができる。
【0022】
また、上記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料で被覆され得る基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、陶器等が挙げられ、特にガラス、とりわけ自動車窓用ガラスが好適である。
【0023】
基材表面に上記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料被膜を形成する方法としては、刷毛、スプレー、ロール、ディッピング、スピンコート等、公知のコーティング方法により塗布すればよい。
【0024】
上記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の塗布量としては、基材表面を覆える量であればよく、基材や用途により異なるが、通常、膜厚が0.001〜1000μm、特に0.1〜100μmとなる量であることが好ましい。
【0025】
この材料は、上記シラン、その部分加水分解物或いはその加水分解縮合物の場合、これを硬化させることが好ましく、硬化方法は、材料のタイプにより選択され、室温硬化性のものは室温硬化、加熱硬化性のものは加熱硬化すればよい。
【0026】
この場合、硬化触媒を添加することができ、硬化触媒としては硬化タイプにより異なるが、公知の触媒を用いてもよく、具体的には塩酸、酢酸等の酸類、チタン系、スズ系、アルミニウム系の金属触媒等が挙げられる。また、硬化触媒の添加量としては、触媒量であり、通常脂肪族不飽和炭化水素を有する材料100重量部に対して0.01〜5重量部であるのが望ましい。
【0027】
また、該材料を塗布する前に、基材と該材料の密着性を高めるために、基材にプライマーを塗布しても差し支えない。
【0028】
本発明では、表面に前記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料を被覆した基材上に、下記一般式(1)で表されるヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物の1種又は2種以上を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の被膜と一般式(1)で表されるヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応させ、基材最表面にこの有機ケイ素化合物に基づく機能性被膜を形成させることにより、種々の機能を与えるものである。なお、本発明において、前記機能性被膜とは、撥水性、撥油性、親水性、防汚性、導電性等の機能性ある被膜を言う。
【0029】
【化3】
(式中、R1は同一でも異なってもよい炭素数1〜12の1価炭化水素基であり、R2は同一でも異なってもよい水素原子及び機能性を有する1価の有機基から選ばれる基であり、両末端のR2の少なくとも1つは水素原子である。kは0〜100の整数、mは0〜100の整数、nは0〜100の整数である。)
【0030】
上記式中、R1は炭素数1〜12、特に1〜8の1価炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を有さないものであることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換炭化水素基などの非置換又は置換の1価炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、撥水性被膜としてはメチル基が好ましい。
【0031】
また、R2の機能性を有する1価の有機基としては、炭素数1〜15、特に1〜8のアルキル基、炭素数1〜15のフルオロアルキル基を有する有機基、オキシアルキレン基を有する有機基等が挙げられる。フルオロアルキル基を有する有機基の場合は、撥水性、撥油性、オキシアルキレン基を有する有機基の場合は、親水性、防汚性を付与することができる。
【0032】
kは0〜100、好ましくは0〜10の整数、mは0〜100、好ましくは0〜10の整数、nは0〜100、好ましくは0〜60の整数であるが、分子内に1個以上、特に1〜10個のヒドロシリル基(Si−H基)を有することが必要である。
【0033】
なお、炭素数1〜15のフルオロアルキル基を有する有機基としては、下記式で示されるものが挙げられる。
−(CH2)p−(CF2)q−CF3
(式中、pは0〜14の整数、qは0〜14の整数である。)
で示されるものが挙げられる。
【0034】
また、オキシアルキレン基を有する有機基としては、下記式で示されるものが挙げられる。
−(CH2)r−O−(C2H4O)t(C3H6O)uR
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10の1価炭化水素基又は炭素数1〜10のアシル基、rは0〜10の整数、tは0〜50の整数、uは0〜50の整数であるが、t+uは1〜100の整数である。)
【0035】
これらの有機珪素化合物としては、以下のものが例示される。
【0036】
【化4】
【化5】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10の1価炭化水素基又は炭素数1〜10のアシル基であり、aは0〜50、好ましくは1〜30、bは0〜50、好ましくは0〜20で、a+b>1であり、n,mは上記の通りである。)
【0037】
上記式中、Rの1価炭化水素基としては、R1と同様のものが例示され、また、アシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヴァレリル基、キャプロイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基などが挙げられる。
【0038】
上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を、前記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料で被覆された基材表面上に塗布する場合、該有機ケイ素化合物は、白金族金属系の触媒と共に、これらを溶解する溶剤に溶解して塗布することが望ましい。
【0039】
ここで、白金族金属系の触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などのヒドロシリル化反応の触媒として公知のものを使用することができる。
上記白金族金属系触媒の添加量は、触媒量であるが、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物に対して白金族金属の重量換算で、0.1〜2000ppm、特に1〜500ppmであることが好ましい。
【0040】
また、これらを溶解する溶剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール等が挙げられる。
【0041】
また膜厚は、単分子膜〜100μm、特に単分子膜〜10μm、とりわけ単分子膜であることが好ましい。
【0042】
この場合、上記有機ケイ素化合物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法により行うことができる。また、塗布後は、室温〜250℃、好ましくは50〜150℃で、ヒドロシリル化反応を完結させることが望ましい。
【0043】
【発明の効果】
本発明の機能性被膜の形成方法によれば、ガラス、特に自動車窓用ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、陶器等の基材表面を、撥水性、親水性、防汚性、導電性等の機能を有する表面に改質することができ、この機能性被膜は、薄膜で耐久性を有するものである。
【0044】
【実施例】
以下、合成例、調製例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0045】
脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の合成
[合成例1]
攪拌機、温度計、水冷コンデンサを備えた3リットル4ツ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン178g、ビニルトリメトキシシラン148g、イソブチルアルコール250g、ダイアセトンアルコール250g、アルミニウムアセチルアセトネート10g、過塩素酸アンモニウム1g、シリカゾルの20%水溶液(商品名;スノーテックスO(日産化学工業(株)製))1200gをこの順に仕込み、40℃で3時間反応させた。このビニル基含有化合物溶液を、処理剤a−1とした。
【0046】
[合成例2]
攪拌機、温度計、水冷コンデンサを備えた3リットル4ツ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン356g、ビニルトリメトキシシラン148g、イソブチルアルコール250g、ダイアセトンアルコール250g、アルミニウムアセチルアセトネート10g、過塩素酸アンモニウム1g、シリカゾルの20%水溶液(商品名;スノーテックスO(日産化学工業(株)製))1200gをこの順に仕込み、40℃で3時間反応させた。このビニル基含有化合物溶液を、処理剤a−2とした。
[合成例3]
攪拌機、温度計、水冷コンデンサを備えた3リットル4ツ口フラスコに、エチルアルコール98g、テトラエトキシシラン0.3g、ビニルトリメトキシシラン0.04gをこの順に仕込み、濃塩酸2gを添加して25℃で1時間反応させた。このビニル基含有化合物溶液を、処理剤a−3とした。
[比較合成例1]
攪拌機、温度計、水冷コンデンサを備えた3リットル4ツ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン356g、イソブチルアルコール250g、ダイアセトンアルコール250g、アルミニウムアセチルアセトネート10g、過塩素酸アンモニウム1g、シリカゾルの20%水溶液(商品名;スノーテックスO(日産化学工業(株)製))1200gをこの順に仕込み、40℃で3時間反応させた。このビニル基を含有しない化合物溶液を、処理剤a−4とした。
【0047】
ヒドロシリル基含有シロキサン溶液の調製
[調製例1]
下記式(2)で示されるヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン2g、白金触媒(商品名;CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製))0.1g、デカメチルシクロペンタシロキサン98gを混合し、処理剤b−1とした。
【化6】
【0048】
[調製例2]
下記式(3)で示されるヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン2g、白金触媒(商品名;CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製))0.1g、デカメチルシクロペンタシロキサン98gを混合し、処理剤b−2とした。
【化7】
【0049】
[調製例3]
下記式(4)で示されるトリフルオロプロピル基、ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン2g、白金触媒(商品名;CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製))0.1g、トルエン98gを混合し、処理剤b−3とした。
【化8】
【0050】
[調製例4]
下記式(5)で示されるポリオキシエチレン基、ヒドロシリル基含有ジメチルポリシロキサン2g、白金触媒(商品名;CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製))0.1g、メチルエチルケトン98gを混合し、処理剤b−4とした。
【化9】
【0051】
[比較調製例1]
下記式(6)で示されるトリアルコキシシリル基含有ジメチルポリシロキサン2g、0.1N塩酸1g、イソプロピルアルコール97gを混合し、比較用処理剤b−5とした。
【化10】
【0052】
[比較調製例2]
下記式(7)で示されるジメチルハイドロジェンポリシロキサン2g、白金触媒(商品名:CAT−PL−50T信越化学工業(株)製)0.1g、デカメチルシクロポリシロキサン98gを混合し、比較用処理剤b−6とした。
【化11】
【0053】
[実施例1〜3、参考例1〜6、比較例1〜3]
下記に示す基材1〜3に、下記に示す処理方法で合成例で得られた処理剤a−1〜a−4を塗布後、調製例で得られた処理剤b−1〜b−6を塗布した。これを用いて、下記に示す性能評価方法により接触角を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0054】
基材1
透明ポリカーボネート板(商品名;ユーピロンNF−2000U(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製))に、アクリル系プライマー(商品名;プライマーPC−7A(信越化学工業(株)社製))をフローコートし、120℃、1時間加熱硬化させたものを基材1とした。
【0055】
基材2
厚さ1mm、巾100mm、長さ200mmのステンレス板(SUS316)を、アセトンにより脱脂洗浄したものを基材2とした。
【0056】
基材3
厚さ3.4mm、巾150mm、長さ150mmのソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成のガラス板を、アセトンにより脱脂洗浄したものを基材3とした。
【0057】
〔処理方法〕
処理剤a−1〜a−4の処理方法
基材に処理剤a−1〜a−4をフローコートし、130℃で1時間加熱硬化した。
処理剤b−1〜b−6の処理方法
処理剤aを塗布、硬化した基材に、処理剤b−1〜b−6をフローコートした後、100℃、1時間加熱したものを、エタノールで浸したティッシュペーパーで拭き、室温で1時間乾燥した。
【0058】
〔性能評価〕
初期接触角
水接触角;協和界面科学(株)製接触角計CA−X150を使用(液滴量)
ヘキサデカン接触角;協和界面科学(株)製接触角計CA−X150を使用
耐久接触角
キシレンを浸した脱脂綿で、100往復ラビングした後の接触角を初期接触角と同様にして測定した。
【0059】
【表1】
【0060】
上記のように、表面が脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料で被覆された基材上に、ヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の被膜と該ヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物とを反応させることにより、耐久性のある機能性被膜を形成させることができる。
Claims (14)
- 分子中に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合を有する基及び少なくとも1個のケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するシラン、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選択される1種又は2種以上と、ケイ素原子に結合した全ての基が加水分解性基を有するシラン、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選択される1種又は2種以上とを含む脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料により表面が被覆された基材上に、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の1種又は2種以上を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の被膜と該有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応させ、基材の最表面に機能性被膜を形成させることを特徴とする機能性被膜の形成方法。
- 前記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料中の脂肪族不飽和炭化水素基が、少なくとも末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20の脂肪族不飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項1記載の機能性被膜の形成方法。
- 前記式(1)中のR2の機能性を有する1価の有機基が、炭素数1〜15のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の機能性被膜の形成方法。
- 前記式(1)中のR2の機能性を有する1価の有機基が、炭素数1〜15のフルオロアルキル基を有する有機基であることを特徴とする請求項1又は2記載の機能性被膜の形成方法。
- 前記式(1)中のR2の機能性を有する1価の有機基が、オキシエチレン基を有する有機基であることを特徴とする請求項1又は2記載の機能性被膜の形成方法。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載の形成方法により、機能性被膜が基材表面に形成されてなることを特徴とする機能性被膜被覆物品。
- 基材が、ガラスであることを特徴とする請求項6記載の機能性被膜被覆物品。
- 表面が脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料で被覆されたガラス上に、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の1種又は2種以上を塗布し、該脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料の被膜と該有機ケイ素化合物とをヒドロシリル化反応させ、基材の最表面に機能性被膜を形成させることにより、機能性被膜がガラス表面に形成されてなることを特徴とする機能性被膜被覆物品。
- 脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料が、分子中に少なくとも1個の脂肪族不飽和結合を有する基及び少なくとも1個のケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有するシラン、その部分加水分解物及びその加水分解縮合物から選択される1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項8記載の機能性被膜被覆物品。
- 前記脂肪族不飽和炭化水素基を有する材料中の脂肪族不飽和炭化水素基が、少なくとも末端に炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20の脂肪族不飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項8又は9記載の機能性被膜被覆物品。
- 前記式(1)中のR 2 の機能性を有する1価の有機基が、炭素数1〜15のアルキル基であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の機能性被膜被覆物品。
- 前記式(1)中のR 2 の機能性を有する1価の有機基が、炭素数1〜15のフルオロアルキル基を有する有機基であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の機能性被膜被覆物品。
- 前記式(1)中のR 2 の機能性を有する1価の有機基が、オキシエチレン基を有する有機基であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載の機能性被膜被覆物品。
- 機能性皮膜被覆物品が、撥水性自動車窓用ガラスであることを特徴とする請求項7乃至13のいずれか1項記載の機能性被膜被覆物品。
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