本発明のブラスト処理用ノズルの構造などの理解を容易にするため、本発明のブラスト処理方法に好適なブラスト処理装置全体の概略図(図1)並びにブラスト処理用ノズルの主要部の図面(図2〜6)などを引用しながら本発明を説明するが本発明は、図示したものに限定されるものではない。
図1は、本発明のブラスト処理方法に好適なブラスト装置全体の一例を示す概略模式図であり、図2は図1のブラスト処理用ノズルの別の態様であって図1と同様に図の紙面側から見た拡大概略別態様模式図である。また、図3は、図1のブラスト用及び霧噴霧用ノズル(単にまとめてブラスト処理用ノズルと称することあり)を図1の矢印A側から見た概略端面部模式図であって、A側から見えるブラストメディア噴出用の平ノズル部5のA側に最も近い端面と霧噴霧用ノズル9a、9b(9bは図1のブラストメディア噴出用の平ノズル部5の図面の裏側に位置しているので、本発明ではブラストメディア噴出用の平ノズル部5の外側面で正面と背面に、霧噴霧用ノズルが設けられと表現している。ここで正面とは図1で図のおもて面を意味しており、背面とは図1のブラストメディア噴出用の平ノズル部5を図の裏側から見たと仮定した場合の図を意味している。)のA側に最も近い端面のみを示した図(ホースの図示などは省略)であり、図4〜6もほぼ同様の趣旨の別の態様を示すブラスト処理用ノズル端面図である。(本発明においてブラストメディア噴出用の平ノズル部5を単に「平ノズル部」と略称することあり。)また、図7は、本発明で使用可能なブラストメディア噴出用の平ノズル部に装着して用いられる霧噴霧ノズルの別の形態(2流体ノズルタイプ)を示すノズルの長手方向切断面の端面図である。
図1は、本発明のブラスト処理方法に好適なブラスト装置全体の一例を示す概略模式図であり、ブラストメディアを噴出させるための駆動用気体としては、通常、空気や窒素ガスなどの気体が用いられる。通常は空気が最も一般的であるが、酸化を防止する必要があるような場合には窒素ガスなどを用いる。ここではブラストメディアを噴出させるための駆動用気体として空気を用いる場合を取り上げて説明する。
図1に示すように、ブラストメディアを噴出させるための駆動用気体として圧縮空気を生成するエアーコンプレッサー1と、ブラストメディアを貯留するブラストメディアタンク2とブラストメディア噴出口6の形状が扁平なスリット状の噴出口6(図3〜図6参照)を有するブラストメディア噴出用平ノズル部5、霧噴霧ノズル9a、9bを備えており、ブラストメディア噴出用のエアーコンプレッサー1とブラストメディアタンク2並びにブラストメディアタンク2とブラストメディア噴出量調整用バルブ7はホース11bで連結されており、ブラストメディア噴出量調整用バルブ7とブラストメディア噴出用平ノズル部5はホース11fで連結されている。この態様の場合、霧噴霧ノズル9a、9bは、それぞれブラストメディア噴出用平ノズル部5の正面と背面の各外側面ほぼ中央に固定されている。
ここで平ノズル部5は正面5aと背面5b(図3〜6参照)がほぼ平坦な面を有し当該ほぼ平坦な面に対する側面(5cと5d)(図3〜6参照)の幅の寸法が正面5aと背面5bの幅より小さくされた形状を有し、ブラストメディア噴出方向から見たブラストメディア噴出口6の形状がスリット状である形状の部材からなる。このようにブラストメディア噴出用のノズル部5は、扁平な形状であるので平ノズル部5と称している。なお、図1や図2で記載された平ノズル部5は、ブラストメディア噴出口6方向に向かって正面5aと背面5bの幅が大きくなっているが、平ノズル部5は、ブラストメディア噴出口6方向に向かって正面5aと背面5bの幅が一定、すなわち図1や図2において平ノズル部5の側面5c、5dが平行な形の平ノズル部5も特に好ましく使用され得る。
平ノズル部5は金属製であることが必要であり、特に好ましくはステンレス製またはチタン製であり、後述するように、その正面と背面の少なくとも一部が微細な梨地模様状に粗面化されていることが好ましい。
そして霧噴霧用の水の供給原として水道を用いる場合には、水道の蛇口4と霧の噴霧量を調整するための調整バルブ8とがホース11cで連結され、調整バルブ8は、ブラストメディア噴出用の平ノズル部5の正面側(図1で図のおもて面側:図3の図面でブラストメディア噴出用の平ノズル部5の左側の面)に設けられた霧噴霧用ノズル9aにホース11dで連結され、かつ調整バルブ8は、ブラストメディア噴出用の平ノズル部5の背面側(図1で図の裏面側:図3の図面でブラストメディア噴出用の平ノズル部5の右側の面)に設けられた霧噴霧用ノズル9bにホース11eで連結されている。この場合霧の噴霧量の調整は、平ノズル部5の正面側も背面側も調整バルブ8で同等に調整可能である。そして21は、噴霧形状や噴霧量などを調整するためのリング状の調整部であり、当該リング状調整部を回転させることにより噴霧形状や噴霧量などが調整されるが、調整バルブ8があれば、リング状調整部21はなくてもよいし、逆に、リング状調整部21があれば調整バルブ8はなくてもよいし、両方とも備わっていてもよい。なお、霧噴霧用の水の供給原として水道を用いずに、水貯槽タンク25を用いる場合には水道の蛇口4の代わりに点線で示した水貯槽タンク25とポンプ26をホース11mで連結し、貯槽タンク25とポンプ26を使用する場合はポンプ26の水排出口はホース11cに連結されている。
霧噴霧用ノズル9a、9bは、霧噴出口がブラストメディア噴出方向に向けられ、且つ、霧噴出口の位置が、ブラストメディア噴出口6より後ろ側になるように配置され、前記霧噴霧用ノズルの霧噴出口より少なくとも霧噴出方向の前記平ノズル部5の前記正面と背面のほぼ平坦な外側面が梨地状粗面とされている。図1で霧噴霧用ノズルの霧噴出口の位置は、ブラスト処理用ノズルの大きさによっても変わるので、特に限定するものではないが、ブラストメディア噴出口より後ろ側への距離、すなわち矢印Bの長さで3〜10cmであることが好ましい。
従って、前記平ノズル部の前記正面と背面のほぼ平坦な外側面が梨地状粗面とされている部分の幅も少なくとも前記霧噴霧用ノズルの霧噴出口より平ノズル部の5のブラストメディア噴出口6との間だ(梨地状粗面部分を点々を付して示した)である。この梨地状粗面の粗さは、算術平均粗さRa(JIS
B 0601‐2001)が3〜20μmであることが好ましい。この梨地状粗面を設けることにより、噴出した霧の当該梨地状粗面部に当たった霧は、きわめて薄い水膜となり、ブラストメディア噴出口6より噴出したブラストメディアの噴出によって周囲近辺が減圧になるので、薄い水膜が噴出したブラストメディアを両面からはさみこむような状態になり、少ない水量でブラストメディアの周囲への飛び散りを防止できるとともに、霧噴霧用ノズルから噴霧され平ノズル部の5の梨地状粗面に当接せずに噴出して広がった霧は、上記薄い水膜で捕らえきれずに薄い水膜から外にはみ出したブラストメディアや、被ブラスト処理対象物に当たって跳ね返ってきたブラストメディア、ならびにブラスト処理された被ブラスト処理対称物のブラスト処理により剥がされた表面が粉体状になって飛び散るのを防止できる。この梨地状粗面部分の表面粗さがあまりに小さくて鏡面であったり、ステンレスで最も建材などに多く使用されるヘアーライン仕上げのような場合には、ヘアーラインの向きを霧の噴出方向と同一方向にしても、それと直角方向にしても平ノズル部面に接触した霧は、霧の粒子よりはるかに大きな水玉状になり不連続になるので、それらの水玉同士の間から噴出したブラストメディアが飛散してしまうことを十分に防止し得なくなる。
また、霧噴霧用ノズル9a、9bは、前記平ノズル部5の前記正面と背面のほぼ平坦な外側面の幅方向(ブラストメディア吐出方向と直角方向の幅をここでは幅方向と称している)のほぼ中央部分に設けられていることが好ましい。
以上の説明は、以下で説明する他の実施形態においても、特に断らない限り、同様であるので、重複説明を省略している。
次に図2に図1に示したブラスト処理用ノズルとは別の態様のブラスト処理用ノズル部分近傍のみの図を示した。図示している方向は、図1のブラスト処理用ノズルと同じ方向から見た図(正面図)の概略様模式図である。図1のブラスト処理用ノズルと同じ部分は図1のブラスト処理用ノズルと同じ符号を付して、重複説明を省略した。
図2に示したブラスト処理用ノズルは、図1に示した水供給用のホース11cがホース11gとホース11hの二手に分かれ、それぞれのホースが霧の噴霧量を調整するための調整バルブ8aと8bに連結され当該バルブから正面と背面それぞれの霧噴霧用ノズル(背面の霧噴霧用ノズルは正面から見えないので図示していない)にホース11jと11kで接続されている。したがって、図1に示した霧噴霧用ノズルに比べ、背面の霧噴霧用ノズルと正面の霧噴霧用ノズルの霧噴出量を調整バルブ8aと8bで、別個に調整できるタイプである。
次に図4に図3と同様に図1のブラスト処理用ノズルを図1の矢印A側から見た場合と同方向から見た場合の別の態様の概略端面部模式図を示した。すなわち図1の矢印A側から見た場合と同様の方向から見た概略端面部模式図であって、A側から見えるブラストメディア噴出用の平ノズル部5のA側に最も近い端面と霧噴霧用ノズル9a、9b(9bはブラストメディア噴出用の平ノズル部5の図面図2の裏側に位置している)の図1の矢印A側に相当する矢印A側から最も近い端面のみを示した図(ホースの図示などは省略)と同様の別態様を示す概略端面部模式図であり、後で説明する図5や図6も同様の別態様を示す概略端面部模式図である。
いずれも図1や図3に示したと同様の部分は図1や図3のブラスト処理用ノズルと同じ符号を付して、重複説明を省略した。
図4に示したブラスト処理用ノズルは、平ノズル部5に霧噴霧用ノズル9a、9bを着脱自在に嵌合し得る霧噴霧用ノズル保持部材10を設けたものであり、例えば、霧を噴霧しなくてもよい場合には、霧噴霧用ノズル9a、9bを霧噴霧用ノズル保持部材10から取り外して使用したり、霧噴霧用ノズル9a、9bのいずれか一方のみを霧噴霧用ノズル保持部材10から取り外して使用する必要がある場合に好適であるし、霧噴霧用ノズル9a、9bの霧噴出口の位置を前後に適宜調整して使用することもできる。
霧噴霧用ノズル保持部材10の材質は、金属、プラスチックスなど、その機能が発揮されるものであれば、特に限定されるものではない。また、平ノズル部5に霧噴霧用ノズル9a、9bを着脱自在に保持し得る機構は図示したものに限定されるものではなく、本発明の機能を発揮し得る限り、平ノズル部5に霧噴霧用ノズル9a、9bを着脱自在に保持し得る機構であれば他の機構でもよい。
図5は、さらに別の態様の、図3と同様に図1の矢印A側と同様の側から見たブラスト処理用ノズルの概略端面部模式図である(ホースの図示などは省略)。
図5に示したブラスト処理用ノズルは、平ノズル部5の側面5c、5dが平ノズル部5の正面側の面5aと背面側の面5bより少し左右方向(正面方向と背面方向)に伸びた低い側壁部15を有している態様である。この側壁部15は少なくとも霧噴出口の先端よりも前側(平ノズル部5のブラストメディア噴出口6のある方向)で、通常、ブラストメディア噴出口6までの部分に有していることが好ましい。この側壁部の霧と接する面も、好ましくは上述した梨地状粗面であることが好ましい。この側壁部15を設けることにより、前述したきわめて薄い水膜が、吐出方向に対する幅方向に拡散しすぎて、水膜が幅方向に連続した膜でなくなることを防止でき好ましい。
図6は、図5に示したブラスト処理用ノズルの変形態様である。図5の側壁部15に相当する側壁部16が平ノズル部5の表面側(正面5aと背面5b)にそれぞれ曲げられて設置された側壁部16である点を除いて図5に示したブラスト処理用ノズルと同様である。図5に示した態様のブラスト処理用ノズルよりも、前述したきわめて薄い水膜が、吐出方向に対する幅方向に拡散しすぎるのをより確実に防止でき好ましい。
いずれの場合も、特に図示していないが水の吐出圧力が小さすぎて、霧状になりにくい場合は、水供給ラインにコンプレサーなどを取り付けて圧力を調整すればよい。
以上説明した霧噴霧用ノズル9a、9bは、通常水を用いる1流体ノズルと称されるタイプであるが、圧搾空気と水とを同時に噴霧するいわゆる2流体ノズルと称されるタイプを用いることも好ましい。
2流体ノズルの一実施形態例を図7に示した。図7は、霧噴霧ノズルの別の形態(2流体ノズルタイプ)を示すノズルの長手方向切断面の端面図である。
1流体ノズルと異なる点は、この例では水の供給口31が霧噴霧ノズル9の長手方向の横に設けられ、圧搾空気供給口32が霧噴出口方向に向かって設けられている点である。11pは水供給用のホースであり矢印E方向に水が供給される。水供給用のホース11pの水供給元側(手元側)は図示していないが、圧力計や圧力調整弁が設けられていることが好ましく、同様に11qは圧搾空気供給用のホースであり矢印F方向に圧搾空気が供給される。圧搾空気供給用のホース11qの圧搾空気供給元側(手元側)は図示していないが、圧力計や圧力調整弁が設けられていることが好ましい。
2流体ノズルは、水の供給口31から比較的少量の水を供給しながら、圧搾空気供給口32から吹き込まれた圧搾空気で供給された水を吹き飛ばして霧を発生させるタイプである。2流体ノズルは、図7に示されたタイプに限定されるものではなく、本発明の目的にかなう範囲において、特に支障のない限り、別構造の各種市販の霧噴霧用の2流体ノズルを使用することができる。2流体ノズル体ノズルを用いる場合は、図1〜6などに示した、霧噴霧用の1流体ノズル9a、9bの代わりに2流体ノズルを用いればよいので、特に霧噴霧用の2流体ノズルを用いたブラスト処理装置全体の図面を図示していないが、水の供給口31に11pなどの水供給用のホースを設けて矢印E方向に水が供給される装置とし、水供給用のホース11pの水供給元側(手元側)に設けられる水源は、水道など特に限定するものではなく図示していないが、水源と水の供給口31を連結するホース11pの水源と水の供給口31の間に必要に応じて圧力計や圧力調整弁を設ければよく、また、圧搾空気供給口32に圧搾空気供給用のホース11qなどを設け、矢印F方向に圧搾空気が供給される装置とし、圧搾空気供給口32と圧搾空気供給源を連結する圧搾空気供給用のホース11qの圧搾空気供給元側(手元側)は図示していないが、圧搾空気供給源と圧搾空気供給口32を連結するホース11qの圧搾空気供給源と圧搾空気供給口32の間に必要に応じて圧力計や圧力調整弁を設ければよく、圧搾空気供給源としては、特に限定するものではないが、空気コンプレッサーなどを用いればよい。
本発明で噴霧する霧は、水からなる霧状の霧であればよく、特に限定するものではないが、好ましくは霧の平均粒子径が、10〜30μmのものが好ましくより好ましくは20〜25μmである。なお、ここで平均粒子径は、位相ドップラー式レーザ粒子分析器での測定でザウター平均粒子径による値である。通称、噴霧する霧はドライミストとかセミドライフォグとか呼ばれている霧も使用可能である。(注:「ドライミスト」などは、装置や、医薬品、化粧品等の試験ほかを指定商品、指定役務とする日本国の商標として登録されているが、水の霧そのものを指すドライミストやドライフォグなどは商標ではなく、フリー百科事典“ウィキペディア(Wikipedia)”や“コトバンク”のドライミストにも記載があるように、霧の粒子が細かいので、例えば、人に触れてもぬれたように感じない霧と解説されている。)。
このような、霧噴霧用ノズルは、例えば、株式会社いけうち等で製造販売されており、その中でも、「扇形ノズル」タイプの霧噴霧用ノズルや「充円錐ノズル」と称されている噴出した霧の噴霧形状が中空部があまり生じないようなものが好ましく用いられる。少数の具体例を例示するなら、株式会社いけうちの1流体ノズルとしては、例えば霧+ファン冷却ユニットのCLJ−CSAやCLJ−C590A等で使用される10〜30μmの霧を発生させるノズル等が挙げられ、2流体ノズルとしては、“CBIMV”、“BIMV.S”、“BIMJ” 等が挙げられるがこれらのみに限定されるものではない。
前述したように、霧噴霧用ノズルから噴霧された霧の一部の平ノズル部5の梨地状粗面に当たって生じた薄い水膜が噴出したブラストメディアを両面からはさみこむような状態になり、少ない水量でブラストメディアの周囲への飛び散りを防止できる機能が強化されるとともに、ブラストメディアの飛び散り防止機能は特に横風に対しても強く、また、霧噴霧用ノズルから噴霧され平ノズル部5の梨地状粗面に当接せずに噴出して広がった霧は、上記薄い水膜で捕らえきれずに薄い水膜から外にはみ出したブラストメディアや、被ブラスト処理対象物に当たって跳ね返ってきたブラストメディア、ならびにブラスト処理された被ブラスト処理対象物のブラスト処理により剥がされた表面が粉体状になって飛び散るのを防止できる。特に限定するものではないが、通常、平ノズルは、図1から6に示されているように、ブラストメディア噴出口6のスリット状の長手方向が上下方向に向くように持って、それを直角方向に動かしながらブラスト処理を行うので、一般的には平ノズルを用いたブラスト処理は、横風があると、より飛び散りやすいが、本発明においては、霧噴霧用ノズルから噴霧された霧の一部の平ノズル部5の梨地状粗面に当たって生じた薄い水膜が噴出したブラストメディアを両面からはさみこむような状態になるので、少ない水量で横風に対してもブラストメディア飛び散り防止機能は強化されるのである。
霧噴霧用ノズルから噴霧される霧の量は、被ブラスト処理対象物によっても異なるので、一概に規定しがたいが、好ましくは、水の量にして1〜15L/hr、より好ましくは5〜8L/hrである。
用いるブラストメディアは、被ブラスト処理対象物の種類や、ブラスト処理の目的によって異なるので、一概に規定できないが、例えば、粒子径がメジアン径の平均値で0.01mm〜2.5mm程度の粒子状のブラストメディアが用いられる。もちろんブラストメディアは意図的に水を含ませたものではなく、通常の大気雰囲気の湿度程度など以下のいわゆる乾式ブラストに使用される程度のブラストメディアが用いられる。特に限定するものではないが、通常、水分含有量はブラストメディア全重量に対し10重量%以下である。
ブラストメディアの材質としては、被ブラスト処理対象物の種類や、ブラスト処理の目的によって適宜選定すればよく、各種の無機物や有機物の固形粒子状物が用いられる。無機物のブラストメディアとしては、特に限定するものではないが、石粉、砂、重曹、炭酸カルシウム、貝殻粉末、金属粉、ガラス粉、陶磁器粉などが挙げられ、有機物のブラストメディアとしては、特に限定するものではないが、胡桃の種子殻、アプリコットの種子殼、桃の種子殻、トウモロコシの穂芯などの粉砕物や木材のおが屑などの植物系ブラストメディアや、固形ポリマー粒子(熱硬化性樹脂が好適)などが挙げられるが、周囲の環境に影響を及ぼしにくいという観点のものとして、生分解性である植物系ブラストメディアが好適である。
植物系ブラストメディアは、無機物などに比べて比較的比重が小さいので、乾式ブラスト処理だと、風などで広範囲に散らばってしまうのを本発明の処理で防止でき好ましいし、本発明は、前記特許文献5で提案されたような水とブラスト粒子を混合して吐出させるものではないので、比較的水で膨潤しやすい植物系ブラストメディアを使用しても植物系ブラストメディアがホース中で膨潤してホースが詰まるなどの問題が生じないし、特許文献5や6のごとく、大量の水で膨潤したり、強度が低下しやすくなる木材、漆喰壁、土壁、土器類ですらブラスト処理することが可能になり、水で錆が生じやすい金属類に適用した場合にも、水のふき取りなどをせずに手間が省ける。
本発明によれば、被ブラスト対象物としては、特に限定するものではないが、鉄、銅、青銅、真鍮、ステンレス、チタン又はアルミニウムその他の等の金属類やプラスチック、ガラス、陶器、磁器、セラミックス、コンクリート、石材、ゴム、土器、木材、又は、これらの塗装品やコーティングされた物品などや、漆喰壁や土壁も含めて固形状物品に対して有効なブラスト処理を行うことができる。ブラスト処理は、目的に応じそのブラストメディアなどを適宜選定して、ブラスト処理により、通常、被処理対象物品の表面がきれいにされるが、被処理対象物品の表面の汚れ、錆、コーティング、塗装層、表面についた指紋、落書き、貼紙、鳥獣の糞害、コケ類、カビ類、キノコ類などの除去にも使用できる。ブラストメディアのうち、角が丸みを帯びた植物系のブラストメディアを含有した植物系のブラストメディアなどを選定するなど、ブラストメディアの選定により、塗装層や錆が2層以上の場合、1層のみの除去や1層づつの順次の除去、木材の表面を荒らすことなく汚れた表面の汚れを除去することも可能となる。
特に、気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアを含む植物系ブラストメディアであって、前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの内、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアを用いることにより、木材においては表面の塗装や汚れを極めて緻密な精度を持って除去しながら、木肌表面を荒らすことなく過去の緻密な表面処理痕を残して被処理物の綺麗な木肌を露出することができ、また、通常、神社仏閣並びに重要文化財及び国宝等の場合は、下塗り層として胡粉塗層、上層として朱塗りの丹塗り層など2層以上の塗膜層が施されているものがあるが、表面が汚れてきた場合にこれらの塗膜層を除去して新しく塗装をし直す場合に、当初より使用されていた塗料と同じ塗料を使用するので、塗膜を1層づつ除去して、それぞれどのような塗料が使用されていたのか分析する必要がある。この場合、粒子状植物系ブラストメディアを用いても、通常の、粒子の角が角ばっている植物系ブラストメディアを用いると、塗膜を複数層同時に除去してしまうので、上述した粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアを用い霧噴霧と併用することが好ましい。
同様に寺社などの門や欄間の彫刻物で細かい部分(例えば龍の彫刻のひげ部分)の存在する彫刻物の細部の形状を崩さずに、細かい彫刻の輪郭をぼやかすことなく表面をきれいにする場合とか、木造家屋の「浮作り仕上げ」と称する木目以外の木材の柔らかい部分を若干磨いて凹ませ、木目部分が浮き立って見えるようにした杉などの劣化した床板について、木目以外の部分である木材の柔らかい部分を削り過ぎることなく、その木肌の表面を荒らさずに汚れや劣化層を取り除き、綺麗な木目と木肌を露出させた「浮作り仕上げ」を復元する場合などにも、上述した粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアを用い、霧噴霧と併用することが好ましい。
また、上述した気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの内、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアを用いることにより、例えば、神社仏閣の銅や真鍮で緑青が発生し、且つ雨などで表面が汚れている屋根や擬宝珠などの緑青は除去せずに汚れのみを除去し、きれいな緑青面を露出させるとか、鉄が一部に使用されている門などで赤錆が発生している鉄部分の黒錆膜表面を荒らすことなく黒錆膜を残して赤錆のみを除去するとか、ブラスト処理を行う際に、より高いレベルで緻密かつ滑らかな処理を行うことが求められる場合に、上述した粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアを用い霧噴霧と併用することにより、粒子状植物系ブラストメディア単独で用いる場合より、より一層より高いレベルで緻密かつ滑らかな処理を行うことが可能になるので好ましい。
特にこれらの様な処理を望む場合には、粒子状植物系ブラストメディアの粒子径もミクロンメッシュ(網枠)を装着した振動ふるい機を用いて粒度を選別し、粒子含有植物系ブラストメディアに含まれる各粒子のメジアン径の平均値が0.02mmから0.6mmのものを粒子径毎に分離して回収するのが好ましく、より好ましくは、0.06mmから0.4mm、さらに好ましくは0.08mmから0.15mmのものを分離して回収するのが良い。
植物系ブラストメディアにおいて、比重は、植物からなるブラストメディアが木材の場合には通常用いられている気乾比重(水分量がほぼ15重量%時の見掛け比重、すなわち水分量がほぼ15重量%時の木材の重さと同体積の水の重さとの比)であり、木材以外の植物からなるブラストメディアは、水分量が5重量%以上10重量%以下で使用する際の個別の水分量で比重が0.5より大きいものに属するか、比重が0.1〜0.5に属するのか決めれば良い。
本発明では、これらもすべてまとめて気乾比重と称する。
気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアを含む植物系ブラストメディアであって、前記気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアの内、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%以上である粒子状植物系ブラストメディアを用いて、上述した特定の目的を達成する場合には、上記条件が保たれる範囲で、気乾比重が0.5以下の植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアを混合して用いてもよい。
本発明の粒子含有植物系ブラストメディアの材料として、気乾比重が0.5より大きい植物材料としては、木材では、ウリン(比重0.84〜1.14)、ブビンガ(比重0.80〜0.96)、樫(比重0.83)、紫檀[ローズウッド] (比重0.82)、サイブレス(比重0.70)、欅(比重0.69)、山桜(比重0.68)、ミズナラ(比重0.68)、イタヤカエデ(比重0.68)、真樺(比重0.67)、ブナ(比重0.65)、ヤチダモ(比重0.65)、アガチス(比重0.40〜0.64)、桑(比重0.62)、栗(比重0.60)、チーク(比重0.60)、ホワイトメランチ(比重0.51〜0.60)、レッドメランチ(比重0.51〜0.60)、黒胡桃[ブラックオールナット] (比重0.59)、米松[ダグラスファー] (比重0.55)、銀杏(比重0.55)、クロマツ[雄松](比重0.54)、胡桃(比重0.53)、カヤ(比重0.53)、赤松[雌松](比重0.53)、唐松[落葉松](比重0.51〜0.53)、栃(比重0.52)、一位(比重0.51)、シベリヤカラマツ(比重0.51)、米桧[オーソンヒノキ] (比重0.51)があり、種子殻や穂芯では、胡桃の種子殻(比重0.58;水分量9.57重量%)、アプリコットの種子殼(比重0.70;水分量9.43重量%)、桃の種子殻(比重0.74;水分量8.73重量%)、トウモロコシの穂芯(比重0.53;水分量5.88重量%)などが挙げられる。
本発明で用いる上記の気乾比重が0.5より大きい粒子状植物系ブラストメディアは、上述の比重が硬さの目安となり、比重の大きいものほど硬さが硬い傾向にある。本発明で用いる上記の気乾比重が0.5より大きい粒子状植物系ブラストメディアとしては、種子殻又は穂芯であることが好ましく、より好ましくは胡桃の種子殻(比重0.58;水分量9.57重量%)、アプリコットの種子殼(比重0.70;水分量9.43重量%)、桃の種子殻(比重0.74;水分量8.73重量%)、トウモロコシの穂芯(比重0.53;水分量5.88重量%)が挙げられる。
気乾比重が0.5以下の植物材料から得られる植物系のブラストメディアとしては、米ヒバ(比重0.50)、桂(比重0.49)、シナノキ(比重0.48)、ホオノキ(比重0.48)、米栂(比重0.46)、キハダ(比重0.45)、スプルース(比重0.41)、檜(比重0.41)、杉(比重0.38)、米杉(比重0.37)、桐(比重0.30)などがあり、檜、杉又は桐等が好適に利用される。比重が小さい植物材料のブラストメディアとの混合割合を変更することによって植物系ブラストメディアの硬さを被処理物の硬さに適切に合わせることが可能になり、より好適なブラスト処理が行えるようになる。
もちろん、ブラスト処理の目的やブラスト対象物の種類によっては、気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状植物系ブラストメディアであって角が丸みを帯びていないブラストメディアか、角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアの含有率が粒子の個数で30%より少ない粒子状植物系ブラストメディアを用いることも可能である。
粉砕したままの状態の植物系のブラストメディアは、通常、角が丸みを帯びておらず、角ばったり、とがった角を有している。ブラスト処理の目的やブラスト対象物の種類によっては、粉砕したままの状態の角が丸みを帯びておらず、角ばったり、とがった角を有している植物系のブラストメディアを用いてもよいし、植物系以外のブラストメディアと併用することもできるし、植物系以外のブラストメディアのみでブラスト処理することも本発明に含まれる。
角が丸みを帯びた粒子状植物系ブラストメディアの作製は、粉砕したままの気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状ブラストメディアの粒子の角が丸みを帯びた状態になるよう処理することによって行う。特に限定するものではないが、例えば、粉砕したままの気乾比重が0.5より大きい植物材料からなる粒子状ブラストメディアをステンレス等の金属製攪拌用タンブラーで内面にブレードなどや突起を有し、回転軸がほぼ水平ないしそれより斜め上方方向に向いたタンブラーなどに入れて、ブラストメディアの粒子の量や硬さにもよるが、例えば、回転速度60〜100r.p.m程度で20〜30分程度回転攪拌するなどの方法が好適に用いられるが、粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアにし得る手段であれば特に上記方法に限定されるものではない。粉砕ブラストメディアの粒子の角が丸みを帯びている粒子状植物系ブラストメディアかどうかを確認するには、ブラストメディアを電子顕微鏡などで撮影して、各ブラストメディアの最長径がおよそ3cm〜8cm程度の大きさになるように拡大して写真を撮影した場合、その顕微鏡写真で判定すればよい。
ブラストメディアをブラストするための空気などの駆動用気体は、ブラストメディアの種類や、粒子径などによって異なるので特に限定するものではないが、ブラストメディアタンク2の圧力ゲージ14のゲージ圧で0.098MPaから0.98MPaの範囲が好適である。この圧力の調整はエアーコンプレッサー1においても可能であるが、更に必要に応じて、図示していないが、エアーコンプレッサー1とホース11aなどの間などに圧力調整用のレギュレーターを設けておいてもよい。ブラストメディアの吐出量は、例えば、図1や図2のブラストメディア噴出量調整用バルブ7で調整できる。そしてブラスト処理しながらその処理状況に応じて調整することもできる。
ブラストメディアの噴出が不安定な場合には、例えば、ブラストメディアタンクの内面が帯電防止処理された、例えば帯電防止剤を含有したフッ素樹脂コーティング処理がなされているブラスト処理装置を使用することによって、例えば、静電気の発生や植物系ブラストメディアを使用した場合などの相互作用による付着等を防止でき安定的にブラストメディアを噴出することを可能にすることもできる。さらに、当該ブラストメディアタンクの内外を断熱性の物質でコーティングして、結露を防止したり、植物系ブラストメディア攪拌用のバイブレータや撹拌器を設けたりして、安定的にブラストメディアを噴出させることを可能にすることもできる。
上述したブラスト処理装置を用いて、被処理物をブラスト処理する場合には、霧噴霧量調整バルブ8(8a、8b)を開いて霧を噴霧させながらブラストメディアタンク2内に所定のブラストメディアが貯留されている状態で、エアーコンプレッサー1より圧縮空気をブラストメディアタンク2内に送り込み、ブラストメディア噴出量調整用バルブ7を開いて被処理物をブラスト処理する。
ブラスト処理する際の駆動流体(気体)の圧力としては特に限定されるものではないが、上述したようにブラストメディアタンク内のゲージ圧を0.098MPaから0.98MPaの範囲にすることが好ましい。また、例えば、図1及び図2に示した平ノズル部5近傍にブラストメディアの噴出速度を微調整し得るブラストメディア噴出量調整用バルブ7を設けているブラスト処理装置を用いる場合には、被処理物に応じてブラストメディアタンク2内の圧力を調整したり、ブラストメディアの供給速度を調整したりすることが可能であり、より緻密で滑らかなブラスト処理を可能にする。
本発明のブラスト処理方法は、ブラストメディア噴出用の金属製で前述した所定の部分が梨地状粗面である平ノズル部と霧噴霧用ノズルを備えた本発明のブラスト処理用ノズル用いてブラストメディアの噴出と霧の噴霧とを同時に行うことによって初めて課題の解決が可能になるものであり、以下、本発明の理解を容易にするため少数の実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に記載したもののみに限定されるものではない。
[実施例1]
約65年前に修復された寺院の再度の修復の際に不要となった柱であって、屋外に露出して劣化した朱塗りが施された上層が丹塗り層、下層が胡粉塗り層(下塗り層)である柱を譲り受け、塗装が劣化しているヒノキの四角柱状の一部について、植物系ブラストメディアに胡桃の種子殻の粒子状植物系ブラストメディア(メジアン径0.2mm、粒子数で約40%の粒子の角が丸みを帯びているもの)を用い、本発明の図1に示したブラスト処理ノズル(1流体霧噴霧ノズル)を有するブラスト処理装置によって、ブラストメディアの駆動気体として空気を用い、ブラストメディアタンクの圧力ゲージのゲージ圧が0.098MPaから0.98MPaの範囲(バルブ7でブラスト処理の状況に応じて調整)の空気を用いてブラストメディア噴出用の平ノズル部(平ノズル部の前記正面と背面のほぼ平坦な外側面の梨地状粗面の粗さが、算術平均粗さRaが10μmで図1の矢印Bの長さで5cmの範囲で梨地状粗面を有する)のブラストメディア噴出口より上記胡桃の種子殻の粒子状植物系ブラストメディアを噴出すると同時に霧噴霧用ノズルとして株式会社いけうち製の充円錐ノズルと称されているタイプのノズルより、水道蛇口からの水を水圧力6.0MPa、約7L/hrで噴霧(霧のザウター平均粒子径:20μm)してブラスト処理した。
その結果、まず、朱塗りの丹塗り層を除去して下層の胡粉塗り層(下塗り層)を露出させることに成功し、さらに下層の胡粉塗り層をブラスト処理したところ、綺麗なヒノキの木肌が露出した。霧噴霧用ノズルから噴霧された霧の一部が平ノズル部5の梨地状粗面に当たって生じた薄い水膜が、噴出したブラストメディアを両面からはさみこむような状態になり、少ない水量でブラストメディアの周囲への飛び散りを防止するとともに、霧噴霧用ノズルから噴霧され平ノズル部5の梨地状粗面に当接せずに噴出して広がった霧は、上記薄い水膜で捕らえきれずに薄い水膜から外にはみ出したブラストメディアや、被ブラスト処理対象物に当たって跳ね返ってきたブラストメディア、ならびにブラスト処理された被ブラスト処理対象物のブラスト処理により剥がされた表面が粉体状になって広範囲に飛び散るのを防止できた。そして、霧で湿ったブラストメディアなどの粒状物や粉末状物は、下に落ちるが、比較的容易に乾燥するので、その回収処理(掃除)が容易にできた。
また、木肌が露出した上記柱も水で膨潤せずに強度が低下することもなく、乾燥後も水によるしみなどは見られなかった。
[実施例2]
45年前に建築された家屋の立替の際に、汚れのついた表面が漆喰製の古い壁の一部を譲り受け、植物系ブラストメディアにアプリコットの種子殻の粒子状植物系ブラストメディア(メジアン径0.5mm、粒子数で約35%の粒子の角が丸みを帯びているもの)を用い、本発明の図1に示したブラスト処理ノズルを有するブラスト処理装置によって、ブラストメディアの駆動気体として空気を用い、ブラストメディアタンクの圧力ゲージのゲージ圧が0.098MPaから0.98MPaの範囲(バルブ7でブラスト処理の状況に応じて調整)の空気を用いてブラストメディア噴出用の平ノズル部(平ノズル部の前記正面と背面のほぼ平坦な外側面の梨地状粗面の粗さが、算術平均粗さRaが10μmで図1の矢印Bの長さで7cmの範囲で梨地状粗面を有する)のブラストメディア噴出口より上記胡桃の種子殻の粒子状植物系ブラストメディアを噴出すると同時に霧噴霧用ノズルとして株式会社いけうち製の充円錐ノズルと称されているタイプの1流体タイプの霧噴霧用ノズルより、水道蛇口からの水を水圧力6.0MPa、約7L/hrで噴霧(霧のザウター平均粒子径が、20μm)してブラスト処理した。
その結果、漆喰層表面の汚れが除去され綺麗な白色の漆喰表面層が露出した。霧噴霧用ノズルから噴霧された霧の一部が平ノズル部5の梨地状粗面に当たって生じた薄い水膜が、噴出したブラストメディアを両面からはさみこむような状態になり、少ない水量でブラストメディアの周囲への飛び散りを防止するとともに、霧噴霧用ノズルから噴霧され平ノズル部5の梨地状粗面に当接せずに噴出して広がった霧は、上記薄い水膜で捕らえきれずに薄い水膜から外にはみ出したブラストメディアや、被ブラスト処理対象物に当たって跳ね返ってきたブラストメディア、ならびにブラスト処理された被ブラスト処理対象物のブラスト処理により剥がされた表面が粉体状になって広範囲に飛び散るのを防止できた。そして、霧で湿ったブラストメディアなどの粒状物や粉末状物は、下に落ちるが、比較的容易に乾燥するので、その回収処理(掃除)が容易にできた。
また、露出した綺麗な白色の漆喰表面層も水で膨潤せず、乾燥後も水によるしみなどは見られなかった。
[実施例3]
実施例1の約65年前に修復された寺院の再度の修復の際に不要となった柱であって、屋外に露出して劣化した朱塗りが施された上層が丹塗り層、下層が胡粉塗り層(下塗り層)である譲り受けた柱を、塗装が劣化しているヒノキの四角柱状の一部について、植物系ブラストメディアに胡桃の種子殻の粒子状植物系ブラストメディア(メジアン径0.2mm、粒子数で約40%の粒子の角が丸みを帯びているもの)を用い、本発明の図1に示したブラスト処理ノズル(ただし、霧噴霧ノズルは図7を用いて説明したような2流体霧噴霧ノズルとした。)を有するブラスト処理装置によって、ブラストメディアの駆動気体として空気を用い、ブラストメディアタンクの圧力ゲージのゲージ圧が0.098MPaから0.98MPaの範囲(バルブ7でブラスト処理の状況に応じて調整)の空気を用いてブラストメディア噴出用の平ノズル部(平ノズル部の前記正面と背面のほぼ平坦な外側面の梨地状粗面の粗さが、算術平均粗さRaが10μmで図1の矢印Bの長さで5cmの範囲で梨地状粗面を有する)のブラストメディア噴出口より上記胡桃の種子殻の粒子状植物系ブラストメディアを噴出すると同時に霧噴霧用ノズルとして株式会社いけうち製の充円錐ノズル(2流体霧噴霧ノズル)と称されているタイプのノズルより、霧噴霧ノズルの水の供給口31に供給する水道蛇口からの水を圧力6Mpa、噴霧量約6L/hr、霧噴霧ノズルに供給する圧搾空気供給口32に供給する圧搾空気圧0.2MPaで噴霧(霧のザウター平均粒子径:20μm)してブラスト処理した。
その結果、実施例1と同様に、まず、朱塗りの丹塗り層を除去して下層の胡粉塗り層(下塗り層)を露出させることに成功し、さらに下層の胡粉塗り層をブラスト処理したところ、綺麗なヒノキの木肌が露出した。霧噴霧用ノズルから噴霧された霧の一部が平ノズル部5の梨地状粗面に当たって生じた薄い水膜が、噴出したブラストメディアを両面からはさみこむような状態になり、少ない水量でブラストメディアの周囲への飛び散りを防止するとともに、霧噴霧用ノズルから噴霧され平ノズル部5の梨地状粗面に当接せずに噴出して広がった霧は、上記薄い水膜で捕らえきれずに薄い水膜から外にはみ出したブラストメディアや、被ブラスト処理対象物に当たって跳ね返ってきたブラストメディア、ならびにブラスト処理された被ブラスト処理対象物のブラスト処理により剥がされた表面が粉体状になって広範囲に飛び散るのを防止できた。そして、霧で湿ったブラストメディアなどの粒状物や粉末状物は、下に落ちるが、比較的容易に乾燥するので、その回収処理(掃除)が容易にできた。
また、木肌が露出した上記柱も水で膨潤せずに強度が低下することもなく、乾燥後も水によるしみなどは見られなかった。