本発明に係るコンバインの一例について説明する。まずは、コンバインの全体構造について簡単に説明する。次いで、そのコンバインに装備されている脱穀装置と選別装置について説明し、その後で穀粒搬送装置について説明する。
[コンバインの全体構造]
図1〜3は、それぞれ、本実施形態のコンバイン100の左側面、右側面、及び平面を示す。図中には、コンバイン100の前後方向、左右方向、及び、上下方向を矢印で示している。
コンバイン100は、主に、走行装置1と、刈取装置2と、脱穀装置3と、選別装置4と、貯留装置5と、動力装置6とによって構成されている。脱穀部である脱穀装置3の左側には、後述する扱胴31の左側方をカバーするサイドカバー7が取り付けられている。また、後述する通り、コンバイン100には、穀粒を貯留するためのグレンタンク51と、グレンタンク51から穀粒を排出する排出オーガ52とが備えられている。
走行装置1は、シャーシフレーム10の下方に設けられている。走行装置1は、トランスミッション11と、左右一対に設けられたクローラ装置12とを備える。トランスミッション11は、後述するディーゼルエンジン61の動力をクローラ装置12に伝達する。クローラ装置12は、コンバイン100を前後方向に走行させたり、コンバイン100を左右方向に旋回させたりする。
刈取装置2は、走行装置1の前方に設けられている。刈取装置2は、リール21と、カッター(刈刃)22と、オーガ(横送りスクリュー)23と、搬送コンベア24と、ロータ25(図4参照)とを備える。リール21は、回転することによって圃場の穀稈をカッター22へ案内する。カッター22は、リール21によって案内された穀稈を切断する。オーガ23は、カッター22によって切断された穀稈を所定の位置に集合させる。搬送コンベア24は、オーガ23によって集合させた穀稈をロータ25まで搬送する。ロータ25は、搬送コンベア24が搬送してきた穀稈を脱穀装置3へ送り込む。
脱穀装置3は、刈取装置2の後方に設けられている。脱穀装置3は、扱室内に、扱胴31と、受網32とを備える。扱胴31は、回転することによって穀稈を脱穀する。また、扱胴31は、回転することによって穀稈を搬送する。受網32は、扱胴31によって搬送される穀稈を支持するとともに、脱穀物を選別装置4へ落下させる。
選別装置4は、脱穀装置3の下方に設けられている。選別装置4は、揺動装置41と、送風装置(唐箕)42とを備える。揺動装置41は、脱穀物をふるいにかけて穀粒を選別する。揺動装置41で選別された穀粒は、第一スクリューコンベアである一番コンベア143と、第二スクリューコンベアである揚穀コンベア151とを備えた穀粒搬送装置により搬送され、投入口153を介してグレンタンク51に投入される。送風装置42は、脱穀物に含まれる藁屑などの夾雑物を吹き飛ばすことによって穀粒を選別する。藁屑などの夾雑物は、カッターによって細かく裁断されて選別装置4の後方に設けられた排稈口(不図示)から外部へ排出される。
貯留装置5は、脱穀装置3及び選別装置4の右側方に設けられている。従って、脱穀装置3及び選別装置4と、貯留装置5とは、走行装置1の上方で左右に並列配置される。貯留装置5は、グレンタンク51を備える。グレンタンク51は、選別装置4から一番コンベア143及び揚穀コンベア151を介して搬送されてきた穀粒を貯留する。排出オーガ52は、グレンタンク51内の穀粒を排出する際に用いられる。排出オーガ52は、穀粒の排出作業を行う際に回動され、穀粒を任意の場所に排出できるように構成されている。
動力装置6は、運転部8の下方に且つ貯留装置5の前方に設けられている。動力装置6は、ディーゼルエンジン61で構成されている。ディーゼルエンジン61は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを運動エネルギーに変換する。より具体的に説明すると、ディーゼルエンジン61は、燃料を燃焼させて得た熱エネルギーを、走行装置1など各部を駆動する動力に変換する。動力装置6は、電気によって動力を発生させる電動モータであっても構わない。また、動力装置6はディーゼルエンジン61と電動モータ双方を備えていてもよい。
運転部8は、グレンタンク51の前方で機体の右側前部に設けられている。運転部8には、オペレータが着席する運転座席81や、その運転座席81の前方に配置された操向ハンドル82が設置され、それらの周囲に変速レバーやクラッチレバー、スイッチ類など種々の操作具が配置されている。
[脱穀装置]
既述のように、脱穀装置3は、扱室内に、扱胴31と、受網32とを備える。図4に示すように、扱胴31は、主に、センターシャフト(扱胴軸)311と、扱胴始端部(掻き込みスクリュー)312と、ツースバー(扱歯支持部材)313とにより構成されている。本実施形態では、センターシャフト311の前端部に扱胴始端部312が配置され、その扱胴始端部312の後方にセンターシャフト311を中心として複数のツースバー313が並列に配置されている。
センターシャフト311は、直線状に形成された構造体であり、扱胴始端部312とツースバー313を支持する。センターシャフト311は、その前端部で扱胴始端部312を支持し、その中央部から後端部にかけて複数のツースバー313を支持する。センターシャフト311は、その前端部及び後端部が扱室の前壁及び後壁によって回転自在に支持されている。
扱胴始端部312は、螺旋状のインペラ(掻き込み羽根)312bが着脱可能に形成された構造体である。扱胴始端部312は、ロータ25によって送り込まれてきた穀稈を掻き込む。つまり、扱胴始端部312は、回転することにより、ロータ25によって送り込まれてきた穀稈を取り込んで扱胴始端部312の後方(即ち、扱胴31)へ送り出す。扱胴始端部312は、螺旋状のインペラ312bが形成された構造に限られず、複数のブレードが形成された構造でも構わない。
ツースバー313は、複数の扱歯313tが所定の間隔を設けて平行に配置された構造体である。ツースバー313は、扱胴始端部312が送り出した穀稈を脱穀する。つまり、ツースバー313は、回転することにより、扱胴始端部312が送り出した穀稈を揉み込み、また打撃して脱穀物を落とす。扱胴31で脱穀処理された穀稈の一部や塵などは、扱胴31の後方に流下し、脱穀装置3の後方から排出される。ツースバー313は、複数の扱歯313tを有する構造に限られず、螺旋状のブレードを有する構造でもよい。また、本実施形態では、複数のツースバー313と、各ツースバー313同士に亘って設けられる板部材314とにより、扱胴31の内部空間と扱胴31の外部空間とを隔てて全体として円筒状をなす回転体を構成しているが、これに代えて、円筒形状の回転体に複数の扱歯313tを備えた構造としてもよい。脱穀装置3の後方には、穀稈を裁断するカッター(裁断装置)を設けることが可能である。
受網32は、主に、網体321により構成されている。本実施形態では、複数のツースバー313によって構成される回転体の下方を覆うように網体321が設けられている。網体321は、複数のワイヤ321wを所定の間隔で平行に張り巡らした構造体である。網体321は、ツースバー313によって揉み込まれる穀稈を支持する。また、網体321は、その隙間から脱穀物を選別装置4へ落下させる。網体321の左端部と右端部は、脱穀装置3に対して着脱自在に支持されている。
[選別装置]
既述のように、選別装置4は、揺動装置41と、送風装置42とを備える。図4に示すように、揺動装置41は、主に、フィードパン411と、チャフシーブ412と、ストローラック413とにより構成されている。本実施形態では、フィードパン411の後方にチャフシーブ412が配置され、そのチャフシーブ412の後方にストローラック413が配置されている。
フィードパン411は、広く平らに形成された構造体である。フィードパン411は、受網32から落下してきた脱穀物を受け止める。また、フィードパン411は、前後に揺動することにより、フィードパン411上の脱穀物を均しながら後方に移動させる。このとき、脱穀物は、斜めに取り付けられたフィン411fによって左右方向にも満遍なく広げられる。
チャフシーブ412は、複数のシーブプレート412pが所定の間隔を設けて平行に取り付けられた構造体である。シーブプレート412p同士の間隔は変更可能に構成されている。チャフシーブ412は、フィードパン411から送られてきた脱穀物を濾過する。つまり、チャフシーブ412は、前後に揺動することにより、フィードパン411から送られてきた脱穀物をふるいにかける。これにより、脱穀物に混入している夾雑物を浮き上がらせ、穀粒と分離することができる。こうして、チャフシーブ412は、脱穀物から穀粒の選別(「精選別」)を行う。精選別後の脱穀物(穀粒のみを含む「一番処理物」)は、ふるい網415を通った後に、第一流穀板431で案内されて一番樋43へ落下し、一番コンベア143で右側方へと搬送される(図5及び図6の矢印F1を参照)。また、チャフシーブ412の上に残った脱穀物は、後方に移動してストローラック413へ送られる。
ストローラック413は、複数のラックプレート413pが所定の間隔を設けて平行に取り付けられた構造体である。ストローラック413は、チャフシーブ412から送られてきた脱穀物を濾過する。つまり、ストローラック413は、前後に揺動することにより、チャフシーブ412から送られてきた脱穀物をふるいにかける。これにより、脱穀物に混入している比較的大きな夾雑物を支持して、穀粒と分離することができる。こうして、ストローラック413は、脱穀物から穀粒の選別(「精選別」)を行う。精選別後の脱穀物(穀粒と少数の小さな夾雑物を含む「二番処理物」)は、第二流穀板441で案内されて二番樋44へ落下する。二番樋44に落下した脱穀物は、二番コンベア144で右側方へと搬送され、選別装置4の前端側に還元搬送されて、再度の選別処理に供される。また、ストローラック413の上に残った脱穀物は、後方に移動して外部へ排出される。
その後、チャフシーブ412は、フィードパン411から送られてきた脱穀物をふるいにかける。上述したように、穀粒のみを含む精選別後の脱穀物は、ふるい網415を通った後に、第一流穀板431で案内されて一番樋43へ落下する。チャフシーブ412の上に残った脱穀物は、後方に移動してストローラック413へ送られる。
加えて、ストローラック413は、チャフシーブ412から送られてきた脱穀物をふるいにかける。上述したように、穀粒と少数の小さな夾雑物とを含む精選別後の脱穀物は、第二流穀板441で案内されて二番樋44へ落下する。ストローラック413の上に残った脱穀物は、後方に移動して外部へ排出される。
送風装置42は、主に、ファン421と、ファンケース422とにより構成されている。本実施形態では、フィードパン411の下方にファン421が配置され、そのファン421を覆うようにファンケース422が配置されている。
ファン421は、複数のファンプレート421pが所定の角度で取り付けられた構造体である。ファン421は、チャフシーブ412やストローラック413に向けて風を送り、夾雑物を吹き飛ばす。つまり、ファン421は、回転して風を送り出すことにより、チャフシーブ412上の藁屑や、チャフシーブ412から落下した藁屑、ストローラック413上の藁屑、ストローラック413から落下した藁屑などを吹き飛ばす。これにより、脱穀物に混入している比較的小さな夾雑物を穀粒と分離することができる。こうして、ファン421は、脱穀物から穀粒の選別を行う。選別後の脱穀物(穀粒のみを含む)は、第一流穀板431で案内されて一番樋43へ落下する。若しくは、選別後の脱穀物(穀粒と少数の小さな夾雑物を含む)は、第二流穀板441で案内されて二番樋44へ落下する。
ファンケース422は、板材を折り曲げて形成された構造体である。ファンケース422は、ファン421を覆うとともに、そのファン421が送り出した風を所定の方向へ案内する。より具体的に説明すると、ファンケース422は、ファン421が送り出した風を四つに分岐し、それぞれを所定の方向へ案内する。
[穀粒搬送装置]
既述のように、選別された穀粒は、第一スクリューコンベアである一番コンベア143と、第二スクリューコンベアである揚穀コンベア151とを備えた穀粒搬送装置によってグレンタンク51へ搬送される。図5及び図6に示すように、一番コンベア143は、脱穀装置3の下部において穀粒を第一の方向F1に搬送する。一番コンベア143の下流側端部は、脱穀装置3の右側方の外側に延出され、揚穀コンベア151の下端部に連結されている。揚穀コンベア151は、脱穀装置3の右側方において穀粒を第二の方向F2に搬送する。
一番コンベア143は、第一スクリュー軸である水平スクリュー軸143aと、第一スクリュー羽根である水平スクリュー羽根143bとを備える。水平スクリュー軸143aは、第一の方向F1に見て反時計回りに回転する(図7の矢印R1を参照)。水平スクリュー羽根143bは、水平スクリュー軸143aの周囲に螺旋状に設けられている。一番コンベア143は、水平スクリュー軸143aを中心に水平スクリュー羽根143bを回転させることで、脱穀装置3で処理された穀粒を第一の方向F1である水平方向(本実施形態では右方向)に搬送する。水平スクリュー羽根143bの下流側端部は、耐久性を高めるために厚みが大きく形成されている。
揚穀コンベア151は、第二スクリュー軸である揚穀スクリュー軸151aと、第二スクリュー羽根である揚穀スクリュー羽根151bとを備える。揚穀スクリュー軸151aは、第二の方向F2に見て時計回りに、即ち平面視で反時計回りに回転する(図7の矢印R2を参照)。揚穀スクリュー羽根151bは、揚穀スクリュー軸151aの周囲に螺旋状に設けられている。揚穀コンベア151は、揚穀スクリュー軸151aを中心に揚穀スクリュー羽根151bを回転させることで、一番コンベア143で搬送された穀粒を第一の方向F1と直交する第二の方向F2(本実施形態では上方)に搬送する。揚穀コンベア151を収容する搬送筒152の上端部には、グレンタンク51に連通する投入口153が設けられている。
図7及び図8に示すように、一番コンベア143の下流側端部(右側端部)と揚穀コンベア151の上流側端部(下端部)とは、ケース161の内部で互いに連結されている。ケース161は、全体としてエルボ形の筒状体に形成されており、その内部にギアケース部162が設けられている。図9は、ケース161の右側面図である。図7のケース161は、水平スクリュー軸143aの軸心と揚穀スクリュー軸151aの軸心とを含む平面により切断した断面(図9のB−B断面)で示している。図8のケース161は、ギアケース部162より後方に位置する平面により切断した断面(図9のC−C断面)で示している。
ケース161は、一番コンベア143の下流側端部と連結される上流側筒状部163と、揚穀コンベア151の上流側端部(下端部)と連結される下流側筒状部164とを有する。上流側筒状部163の左側方には第一開口部163aが設けられ、下流側筒状部164の上方には第二開口部164aが設けられている。水平スクリュー軸143aは、軸受150を介してギアケース部162に対して回転自在に支持されている。揚穀スクリュー軸151aは、軸受156を介してギアケース部162に対して回転自在に支持されている。ケース161の上方に接続された搬送筒152は、第二開口部164aを介してケース161と連通している。
一番コンベア143と揚穀コンベア151とはベベルギア機構を介して連動連結されており、それらの連結部分は、ケース161の内部に設けられたギアケース部162で覆われている。ギアケース部162の内部では、水平スクリュー軸143aの下流側端部に設けられたベベルギア145と、揚穀スクリュー軸151aの下端部に設けられたベベルギア155とが歯合する。これにより、水平スクリュー軸143aの回転に連動して揚穀スクリュー軸151aが回転する。図9に示すように、ギアケース部162は、第一の方向F1と第二の方向F2の両方に直交する第三の方向である前後方向においてケース161の中央部に配置されている。
図7に示すように、一番コンベア143には、回転羽根147が設けられている。本実施形態では、回転羽根147が板状に設けられている。回転羽根147は、一番コンベア143の下流側端部に配置され、ケース161の内部に収容されている。回転羽根147は、水平スクリュー羽根143bの終端143eよりも上流側に配置された始端147s(上流側端)と、水平スクリュー羽根143bの終端143eよりも下流側に配置された終端147e(下流側端)とを有する。水平スクリュー羽根143bの終端143eは、螺旋状をなす部分の末端であり、後述する補助羽根148は勘案しない。回転羽根147は、水平スクリュー羽根143bとは不連続に設けられている。回転羽根147は、水平スクリュー羽根143bの終端143eよりも上流側の位置から、その水平スクリュー羽根143bの終端143eよりも下流側の位置に亘って設けられている。
回転羽根147は、一番コンベア143によってケース161の内部に搬送されてきた穀粒を放り上げて揚穀コンベア151に送り込む。放り上げられた穀粒は、揚穀コンベア151に受け渡されて上方に搬送される。こうして、ケース161の内部では、穀粒の搬送方向が第一の方向F1から第二の方向F2に変換される。
本実施形態では、回転羽根147の始端147s及び終端147eが上記の如く配置されていることから、そうでない場合(例えば、回転羽根147の始端147sが水平スクリュー羽根143bの終端143eまたはそれよりも下流側に配置されている場合)に比べて、回転羽根147の軸方向長さが大きい。このため、回転羽根147で放り上げられる穀粒の量を増やして、一番コンベア143から揚穀コンベア151への穀粒の搬送効率を高めることができる。軸方向長さは、水平スクリュー軸143aの軸心に沿った長さである。
回転羽根147の始端147sが水平スクリュー羽根143bの終端143eよりも上流側に位置するため、回転羽根147は、水平スクリュー軸143aの軸方向において水平スクリュー羽根143bと部分的に重複して配置される。本実施形態では、回転羽根147の始端147sが、水平スクリュー羽根143bの終端143eから、水平スクリュー羽根143bのピッチの半分(即ち、1/2ピッチ)ほど上流側に位置する。但し、これに限られず、例えば、回転羽根147の始端147sを、水平スクリュー羽根143bの終端143eから1/4ピッチだけ上流側に配置した構造でもよい。
図8では、図7の状態から水平スクリュー軸143aを90度回転させている。本実施形態では、回転羽根147の軸方向長さが、その回転羽根147の半径方向長さよりも大きい。また、回転羽根147の回転軌跡の外径は、ケース161の第一開口部163aの内径よりも小さい。回転羽根147が半径方向外側へ大きく突出していないことにより、回転羽根147の先端側での周速が抑えられる。なお、回転羽根147を半径方向外側へ大きく突出させても構わないが、その場合は、回転羽根147の先端側での周速が上昇し、穀粒に必要以上の衝撃を与えたり、穀粒の押圧によりケース161に作用する面圧が高くなって摩耗を促進したりする恐れがある。
図8に示すように、回転羽根147は矩形状に形成されていて、その下流側の角部は、面取り加工を施したような斜め形状になっている。本実施形態では、回転羽根147が揚穀スクリュー羽根151bと干渉しないように設計されている。回転羽根147の角部の形状は、アール加工を施したような円弧形状でも構わない。このように角部を斜め形状や円弧形状にする点は、後述する補助羽根148においても同様である。
図7及び図8に示すように、本実施形態では、回転羽根147が、水平スクリュー軸143aに固着された基部147aと、その基部147aの回転方向の前方を覆うカバー部147bとを備える。基部147aは、水平スクリュー軸143aと相対回転不能に設けられた略円筒状の支持部材146に溶接されている。カバー部147bは、基部147aに対して着脱自在に構成されている。本実施形態では、ボルトなどの締結部材によりカバー部147bが基部147aに取り付けられている。カバー部147bは、基部147aから半径方向外側と下流側に突出するように設けられている。カバー部147bは、基部147aに対して回転羽根147の回転方向(矢印R1)下流側に設けられて穀粒に押し当たる面(作用面)を形成しており、摩耗した際にはカバー部147bを交換することで耐久性を維持できる。
図7に示すように、水平スクリュー軸143aの軸心と揚穀スクリュー軸151aとの軸心とを含む平面で切断した断面で見て、ケース161は、第一内壁部である内壁部161aと、第二内壁部である内壁部161bとを有する。内壁部161aでは、水平スクリュー軸143aの軸心からの距離が一定となる。内壁部161bでは、水平スクリュー軸143aの軸心からの距離が第一の方向F1に向かって次第に大きくなる。内壁部161aが、第一の方向F1に向かって直線状に延びているのに対し、内壁部161bは、第一の方向F1に向かって第二の方向F2へ傾斜して延びている。内壁部161a及び内壁部161bは、一番コンベア143の上方に配置されている。
内壁部161aと内壁部161bとは第一の方向F1に連続して形成され、それらの境目161pが水平スクリュー羽根143bの終端143eよりも上流側に配置されている。境目161pは、水平スクリュー軸143aの軸心からの距離が大きくなり始める位置である。かかる構成によれば、水平スクリュー羽根143bの終端143eよりも上流側の位置から回転羽根147で放り上げられた穀粒が、内壁部161bに沿って揚穀コンベア151へ効率良く搬送される。また、穀粒の逆流や滞留を引き起こすデッドスペースの形成が抑えられる。このため、軸方向長さを大きくした回転羽根147の実効性を高めて、一番コンベア143から揚穀コンベア151へ穀粒をより効率的に搬送できる。
本実施形態では、境目161pが、水平スクリュー羽根143bの終端143eから、水平スクリュー羽根143bのピッチの半分ほど上流側に位置する。上述の効果を高めるうえでは、このように、回転羽根147の始端147sと同じ、またはその近傍となる軸方向位置に境目161pがあることが好ましい。例えば、水平スクリュー軸143aの軸方向における回転羽根147の始端147sと境目161pとの間隔は、水平スクリュー羽根143bのピッチの半分以下に設定される。
本実施形態の回転羽根147は、図7に示すように水平スクリュー軸143aの軸方向に対して傾斜して設けられている。より具体的に、回転羽根147は、第一の方向F1に向かって回転方向の後方に傾斜している。よって、回転羽根147は、水平スクリュー軸143aの軸心を通る平面と同一平面となるものではない。これにより穀粒を斜め上方へ放り上げやすくなるので、より効率的に穀粒を搬送できる。穀粒を放り上げ可能な位置(本実施形態では水平スクリュー軸143aの後方)にある回転羽根147の長手方向の延長線と内壁部161bの延長線とがなす角度θは、鋭角であることが好ましい。この角度θが鋭角であることにより、穀粒が第一の方向F1に向かう移動ベクトル(即ち、第一の方向F1に向かうベクトル)と、回転羽根147により穀粒に与えられるベクトル(即ち、回転羽根147の作用面に垂直な方向に向かうベクトル)との合成ベクトルが、内壁部161bの傾斜角度に近付き(望ましくは略平行となって)、回転羽根147により穀粒を内壁部161bに沿って上方に跳ね上げることができ、また、穀粒の逆流や滞留を引き起こす余計なデッドスペースの形成が抑えられる。
図8に示すように、一番コンベア143には、水平スクリュー軸143aの軸心を挟んで回転羽根147と対向する位置に、回転羽根147よりも軸方向長さの小さい補助羽根148が設けられている。本実施形態では、補助羽根148が板状に設けられている。補助羽根148は、回転羽根147で搬送しきれなかった穀粒を上方に搬送するように機能する。回転羽根147だけでなく補助羽根148によっても穀粒を放り上げることで、搬送効率が効果的に向上する。補助羽根148は、水平スクリュー羽根143bの終端143eに連続して設けられている。本実施形態の補助羽根148は、水平スクリュー羽根143bの終端143eに配置された始端と、回転羽根147の終端147eと同じ軸方向位置に配置された終端とを有する。
回転羽根147及び補助羽根148は、いずれも平板状に形成されている。また、図面では看取できないが、補助羽根148は、回転羽根147と同様に、水平スクリュー軸143aの軸方向に対して傾斜して設けられている。但し、これに限られず、回転羽根147及び補助羽根148の少なくとも一方が、水平スクリュー軸143aの軸心を通る平面と同一平面となるものでも構わない。補助羽根148は、回転羽根147と同様に、水平スクリュー軸143aに固着された基部148aと、その基部148aの回転方向の前方を覆うカバー部148bとを備える。基部148aは、支持部材146に溶接されている。カバー部148bは、基部148aから半径方向外側と下流側に突出するように設けられている。
図8に示すように、ケース161は、一番コンベア143と揚穀コンベア151との連結部分を覆うギアケース部162と、第三内壁部である内壁部161cと、第四内壁部である内壁部161dとを有する。内壁部161cでは、回転羽根147の終端147eからの軸方向距離が一定となる。内壁部161dでは、回転羽根147の終端147eからの軸方向距離が第二の方向F2に向かって次第に大きくなる。軸方向距離は、水平スクリュー軸143aの軸心に沿った距離である。内壁部161cが、第二の方向F2に向かって直線状に延びているのに対し、内壁部161dは、第二の方向F2に向かって第一の方向F1へ湾曲しながら延びている。内壁部161cと内壁部161dとは第二の方向F2に連続して形成され、それらがギアケース部162に隣接して(ギアケース部162の前方及び後方において左側から右側に向かって上方に向かうように)設けられている。
ケース161が内壁部161cと内壁部161dを備えることで、穀粒が通りうるスペースがギアケース部162に隣接して形成され、回転羽根147(及び補助羽根148)で放り上げられた穀粒が、内壁部161dに沿って揚穀コンベア151へ搬送される。しかも、内壁部161cが形成されていることで、穀粒が滞留しやすいデッドスペースの形成が抑えられる。このため、穀粒の逆流や滞留を抑制しながら、一番コンベア143から揚穀コンベア151へ穀粒をより効率的に搬送できる。内壁部161dは、第二の方向F2に向かって第一の方向F1へ傾斜して延びる形状でもよい。内壁部161c及び内壁部161dは、第三の方向(前後方向)においてギアケース部162と隣接する。図示しないが、ギアケース部162の前方も同様に形成されており、本実施形態では、ギアケース部162の前後の空間を有効活用している。
回転羽根147で放り上げられた穀粒が通りうるスペースを確保する観点から、内壁部161cと内壁部161dとの境目161qは、水平スクリュー軸143aの軸心よりも下方に位置することが好ましい。境目161qは、回転羽根147の終端147eからの軸方向距離が大きくなり始める位置である。また、デッドスペースの形成を抑える観点から、内壁部161cは、水平スクリュー軸143aの軸方向において、揚穀スクリュー軸151aの軸心と回転羽根147の終端147eとの間に位置することが好ましい。
本実施形態では、揚穀スクリュー軸151aの軸心に垂直な平面により搬送筒152を切断したときの流路の断面積が、内壁部161bと内壁部161dとケース161の側壁部(前方及び後方の側壁部)とによって囲まれた流路の断面積よりも大きい。かかる構成によれば、ケース161の内部で搬送方向が変換された穀粒を揚穀コンベア151で十分に受け取ることができる。この場合において、揚穀スクリュー軸151aの軸心に垂直な平面により搬送筒152を切断したときの流路の断面積は、例えば、水平スクリュー軸143aの軸心と揚穀スクリュー軸151aの軸心とがなす角を二分する二等分線を含む平面によりケース161を切断したときの流路の断面積よりも大きく設定される。後者の断面積は、図7のA−A断面におけるケース161の流路の断面積に相当する。
既述のように、ケース161は、一番コンベア143の下流側端部と連結される上流側筒状部163と、揚穀コンベア151の上流側端部と連結される下流側筒状部164とを有する。本実施形態では、上流側筒状部163の開口部163aの面積が下端側筒状部164の開口部164aの面積よりも大きく形成されるとともに、ケース161に膨出部180が設けられている。これにより穀粒が勢いよく搬送されるとともに、ケース161内での穀粒の逆流や滞留が抑えられる。膨出部180は、水平スクリュー軸143aの軸方向に直交する方向に膨出している。膨出部180は、ケース161において少なくとも一番コンベア143による穀粒の上方への搬送作用側に設けられることが好ましい。
図10のケース161は、水平スクリュー軸143aの軸心に垂直で且つ回転羽根147を通過する平面により切断した断面で示している。このケース161の断面は、水平スクリュー軸143aの軸心の周りで円弧状に延びる下方部167と、第二の方向F2に向かって次第に先細りとなる上方部168とを有する。下方部167は、水平スクリュー軸143aの軸心を取り囲むように、上方を開放したC字状に延びる内壁部167aを有する。上方部168は、水平スクリュー軸143aの軸心よりも上方に配置されて逆V字状に延びる内壁部168aを有する。下方部167と上方部168とは第二の方向F2に連続して形成されている。
本実施形態では、回転羽根147(及び補助羽根148)により放り上げられた穀粒が、上記の如き形状を有するケース161に沿ってガイドされ、揚穀スクリュー軸151aの軸心に向かって搬送される。つまり、図11に示した矢印のように、穀粒は、第一の方向F1に見て真上ではなく、ケース161の内壁に沿って放り上がり、揚穀スクリュー軸151aの軸心に向けて搬送される。このため、揚穀コンベア151が、揚穀スクリュー軸151aの近傍で穀粒を受け取ることができ、揚穀スクリュー羽根151bとケース161との隙間から穀粒が逆流したり、穀粒が滞留したりすることが抑えられる。その結果、穀粒の受け渡しの無駄を少なくして、一番コンベア143から揚穀コンベア151への穀粒の搬送効率を高めることができる。
図10に示したケース161の断面は、図8のD−D断面に相当する。この位置から第一の方向F1の前後に少しずらした位置においても、ケース161の断面は上記の如き下方部167と上方部168とを有する。ケース161の断面は、少なくとも、水平スクリュー羽根143bの終端143eから回転羽根147の終端147eに至る軸方向の領域において、このような下方部167と上方部168とを有する形状であることが好ましい。なお、図10では、先細りになった上方部168の上端が繋がって、ケース161の断面が全体として水滴形状に形成されているが、これに限られるものではない。
下方部167は、下流側筒状部164よりも第三の方向(本実施形態では前後方向)に膨出している。これは、図11に示すように、下方部167の幅D1が下流側筒状部164の幅D2よりも大きいことに起因する。下方部167の幅D1は、上流側筒状部163の幅と同じ大きさであり、上流側筒状部163は下流側筒状部164よりも幅広に形成されている。幅D1及び幅D2は、それぞれ第三の方向に沿って測定される。本実施形態では、ケース161の前方と後方の両方において下方部167が膨出している。但し、これに限られず、少なくとも回転羽根147の搬送作用側にて膨出していることが好ましい。搬送作用側とは、回転羽根147が穀粒を放り上げる側であり、本実施形態では後方である。
図10及び図11に示すように、膨出部180の上端となる、第一の方向F1に見た下方部167または上方部168と下流側筒状部164との間での変曲部分169は、揚穀スクリュー軸151aの軸方向(本実施形態では上下方向)において、水平スクリュー軸143aの軸心と、回転羽根147の回転軌跡147tにおける第二の方向F2の端位置147p(本実施形態では上端位置)との間に設定されている。変曲部分169が端位置147pよりも下方に位置することにより、受け渡しの無駄がより少なくなるように穀粒を適切にガイドし、一番コンベア143から揚穀コンベア151へ穀粒を更に効率的に搬送できる。変曲部分169は、下方部167及び上方部168を有するケース161の断面が、下流側筒状部164から膨出し始める部分である。
本実施形態では、膨出部180の少なくとも一部がケース161に着脱可能に取り付けられている。具体的には図6〜8に示すように、ケース161に、第一樋状部材である樋状部材165が着脱自在に設けられている。本実施形態では、ボルト165aなどの締結部材により樋状部材165がケース161に取り付けられている。樋状部材165は、回転羽根147に対して第二の方向F2の反対方向(即ち、下方)に位置する内壁部161eを形成する。内壁部161eでは、回転羽根147や補助羽根148の作用によって穀粒が強く押し当たるため、面圧が高くなる傾向にある。内壁部161eが摩耗した際には、樋状部材165を交換することにより容易にメンテナンスできる。樋状部材165の軸方向長さは、回転羽根147の軸方向長さよりも大きいことが好ましい。
図6〜9に示すように、ケース161には、第二樋状部材である樋状部材166が着脱自在に設けられている。樋状部材166は、ボルト166aなどの締結部材によりケース161に取り付けられている。樋状部材166は、揚穀コンベア151の上流側端部に対して第一の方向F1(即ち、右方向)に位置する内壁部161fを形成している。内壁部161fにおいても、穀粒の押圧によって面圧が高くなる傾向にあり、内壁部161fが摩耗した際には、樋状部材166の交換によって容易にメンテナンスできる。
本実施形態では、一番処理物を搬送する穀粒搬送装置に本発明を適用した例を示したが、これに限られるものではなく、二番処理物を搬送する穀粒搬送装置や、グレンタンク51内の穀粒を排出オーガ52から排出する際に用いられる穀粒搬送装置に本発明を適用することも可能である。
本実施形態では普通型コンバインの例を示したが、これに限られず、本発明は自脱型コンバインであってもよい。
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。