JP6960126B1 - 金型の冷却孔の表面処理方法 - Google Patents

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【課題】金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供する。特にU字形の冷却管の割れ防止方法を提供する。【解決手段】金型が冷却に使用する冷却孔を有し、冷却孔の内面を化学研磨処理して、冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および冷却孔の内面の表面付着物を除去し、さらに無電解Niメッキ処理を施すことを特徴とする金型の冷却孔の表面処理方法である。化学研磨処理による冷却孔の内面の研磨量が、10μm以上であり、無電解Niメッキ処理による無電解Niメッキ層の厚さが、3μm以上であることが、好ましい。【選択図】図14

Description

本発明は、金型の冷却孔の表面処理方法に関し、特に、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法に関する。
ダイカストは、生産性に優れ、高品質の鋳物を提供できることから、現在アルミ鋳物の大部分はダイカスト製品である。また、その製品の多くは自動車部品であり、近年の高性能化、軽量化により部品の高品質化、軽量化が求められている。そのため、ダイカスト金型にも高品質化、長寿命化が求められ、鋼材の高性能化や多くの表面処理が提案され、実用化されている。
かかるダイカスト金型など鋳物鋳造用金型の使用寿命を決める主な原因としては、割れ、欠け、溶損、変形などがある。また、金型の割れのうち、金型内部の冷却管(冷却孔)から発生する割れは、割れが金型内部から発生して金型表面に達するため、金型使用者が割れを認識した際には、所謂「大割れ」になり、その修復に多大の費用と時間を要する場合がある。
一方、生産性の向上および鋳物品質の向上の観点からは、溶湯充填後に速やかに製品を冷却することが望ましく、このため冷却管は金型表面に近づける必要がある。しかしながら、冷却管を金型表面に近づけると冷却管周辺の熱振幅が大きく亀裂が入りやすくなる。また、冷却管の内面は孔加工時のツールマークあるいは放電加工による変質層が残っているため、これが応力集中箇所あるいは亀裂の発生起点となる可能性がある。さらに、冷却管には常に冷却水が通っているため、このことにより孔の内面は腐食しやすく、腐食箇所から亀裂が発生する可能性がある。特に、引抜き中子のように局部的に温度が上昇する金型形状の場合にはその部分を集中的に冷却する必要が生じ、図19に示すように一端を閉塞端とする冷却孔20が設けられる場合は、この閉塞端から亀裂が発生することが多いと言われている。
また、金型21の冷却管(冷却孔)20は、金型の形状によっては直線状ではなく、図20に示すようなU字形の冷却孔20(以下、直線状ではなくU字形の冷却孔を、「U字形冷却孔」と称する)を設ける場合も多い。さらに、スリーブ状の金型21では、図21に示すような金型21の断面を多角形状にした冷却孔20を設ける場合もある。さらにまた、近年の3Dプリンターの進化により、より複雑な冷却孔を形成することが可能になってきている。そのため、上記のU字形冷却孔のような複雑な冷却孔の場合には、開口部から直視できない部分のツールマーク除去、汚れ除去および表面処理が難しく、この部分からの亀裂の発生を防止することは非常に困難であった。
また、亀裂の起点としては腐食が挙げられる。冷却孔には常に水が流れており金型に使用されている鋼材は比較的腐食しやすいことから、亀裂の起点となる腐食孔が生じ易い。そのため、腐食を防止することは亀裂の発生を防止することに繋がることが期待できる。かかる腐食の防止方法としては、孔内面のメッキ、酸化皮膜の形成、樹脂等で被覆する技術が提示されている。
近年、冷却孔の内面からの亀裂を防止するために、上記応力集中、腐食に注目した多くの対策が提案されている。例えば、冷却孔の内面のツールマークあるいは変質層を除去し、圧縮応力を付与して、亀裂の発生を予防するが提案され、特許文献1および特許文献2には、ショットブラストあるいはショットピーニングを用いる方法が開示されている。また、特許文献3〜6には、孔の内面の腐食を防止する方法として、孔の内面にメッキを施す方法、樹脂などで被覆する方法、酸化皮膜を生成させる方法、あるいは無電解めっきを施す技術が開示されている。さらに、特許文献7には、孔の表面に耐食性の高い元素を拡散させて腐食を防止する方法が開示されている。さらにまた、特許文献8〜9には、窒化処理とメッキあるいは防食処理の組合せの技術が開示され、特許文献10には冷却孔内面の窒化による硬化を防止して冷却孔内面からの亀裂発生を防止する方法も提案されている。
特開平7−290222号公報 特表2015−521956号公報 特開2015−150568号公報 特開平8−117952号公報 特開2016−204754号公報 特開平9−13174号公報 特開2018−176282号公報 特開2009−72798号公報 特開2013−159831号公報 特開平11−61375号公報
一般に、金型の冷却孔は通常切削加工で形成される。そのため、金型の冷却孔の内面には所謂「ツールマーク」が残り、これが亀裂の起点となることが知られている。そこで、このツールマークを平滑にすることが求められているが、通常、ツールマークの平滑化にはショットブラストあるいはショットピーニングが用いられる。ところが、金型の冷却孔が金型の表面から直線状でない場合は、ショットブラストあるいはショットピーニングは用いることができないという問題点があった。
また、上記特許文献1〜10記載の従来技術は、いずれも冷却孔の内面からの亀裂の原因となる表面粗さ、腐食、応力に注目し、これらの要因を除去、あるいは軽減するものであるが、必ずしもこれらの要因を十分に改善することができるものではなかった。例えば、表面粗さや圧縮応力に注目した技術では、ショットブラストあるいはショットピーニングを用いることが多く、これらの場合には冷却孔の開口部から直線部分しか処理できないものであった。また、腐食の防止に着目した技術では、ツールマークの除去など表面粗さを軽減することを配慮していない場合が多いものであった。そのため、亀裂の原因となる表面粗さ、腐食、応力に対応しつつ、特に、直線以外の形状に対応できる技術が望まれていた。
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決し、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供するものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、化学研磨処理と無電解Niメッキ処理を組合せることで、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、金型が冷却に使用する冷却孔を有し、前記冷却孔の内面を化学研磨処理して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の錆等の表面付着物を除去し、さらに無電解Niメッキ処理を施すことを特徴とするものである。
また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記化学研磨処理による前記冷却孔の内面の研磨量が、10μm以上であり、前記無電解Niメッキ処理による無電解Niメッキ層の厚さが、3μm以上であることが好ましい。
さらに、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記冷却孔の内面を化学研磨処理して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の表面付着物を除去した後に、前記冷却孔の内面を窒化処理し、その後、化学研磨処理と前記無電解Niメッキ処理を行うことが好ましい。
さらにまた、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記冷却孔の内面を化学研磨処理して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の表面付着物を除去した後に、前記冷却孔の内面を窒化処理し、さらに、前記冷却孔の内面を酸化処理し、その後、化学研磨処理と前記無電解Niメッキ処理を行うことが好ましい。
また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記金型の冷却孔が、前記金型の表面からU字形で形成されている場合でも適用が可能である。
本発明によると、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供することができる。
実施例に使用する試験装置を示す図である。 化学研磨処理無しの試験片2の表面状態を示す図である。 4分間化学研磨処理した試験片2の表面状態を示す図である。 8分間化学研磨処理した試験片2の表面状態を示す図である。 化学研磨処理無しの試験片2の表面の研磨痕の状態と研磨痕の凹凸形状を示す図である。 4分間化学研磨処理した試験片2の表面の研磨痕の状態と研磨痕の凹凸形状を示す図である。 8分間化学研磨処理した試験片2の表面の研磨痕の状態と研磨痕の凹凸形状を示す図である。 実施例に使用する試験装置を示す図である。 化学研磨処理無しの試験片9の無電解Niメッキ後のパイプ外面および内面の外観を示す図である。 化学研磨処理無しの試験片9の無電解Niメッキ後のパイプの内面状態(拡大写真)を示す図である。 8分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプ外面および内面の外観を示す図である。 8分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプの内面状態(拡大写真)を示す図である。 15分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプ外面および内面の外観を示す図である。 15分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプの内面状態(拡大写真)を示す図である。 実施例に使用する試験装置を示す図である。 各表面処理後(腐食試験前)の外観である。 水道水浸漬48時間後の外観である。 水道水浸漬1週間後の外観である。 一端を閉塞端とする冷却孔を示す図である。 U字形の冷却孔を示す図である。 金型の断面を多角形状にした冷却孔を示す図である。
以下、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法について具体的に説明する。
本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、金型が冷却に使用する冷却孔を有し、前記冷却孔の内面を化学研磨処理(以下「化学研磨処理(1)」と称す場合もある)して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の錆等の表面付着物を除去し、さらに無電解Niメッキ処理を施すことを特徴とするものである。これにより、冷却孔内部のツールマークや錆等を化学研磨で除去し、無電解Niメッキを施し腐食の防止することができ、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供でき、また、金型寿命を延長することができる。さらに、化学研磨処理と無電解Niメッキ処理を効果的に組み合わせてU字形冷却孔等の冷却孔の内部からの亀裂の発生を防止あるいは軽減することができる。なお、前記金型の冷却孔は、通常切削加工で形成され、その内面には所謂「ツールマーク」が残り、これが亀裂の起点となることが知られている。ここで、「ツールマーク」とは、切削加工により生じる切削故痕のことであり、JIS規格「B 0721:2004」にも記載されているものである。
また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記化学研磨処理(1)による前記冷却孔の内面の研磨量が、10μm以上であり、前記無電解Niメッキ処理による無電解Niメッキ層の厚さが、3μm以上であることが好ましく、前記化学研磨処理(1)による前記冷却孔の内面の研磨量が、上限は特に制約はないが、10μm以上50μm以下であり、前記無電解Niメッキ処理による無電解Niメッキ層の厚さが、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。本発明は、複雑な冷却孔でも対応できる方法として化学研磨処理に着目して、適切な化学研磨処理によりツールマークの凹凸を低減でき、さらに、前記金型の冷却孔の内面を洗浄し、無電解Niメッキ膜を均一に生成させるためには一定量の研磨量であることが好ましいことを見出したものである。なお、ここで、研磨量とは前記化学研磨処理により研磨されて除去された前記冷却孔の内面における内面表面からの深さ(μm)であり、前記無電解Niメッキ層の厚さとは無電解Niメッキ処理により設けられたNiメッキ層の厚さ(μm)を示す。
冷却孔の切削加工において、その切削加工状態により差異はあるが、通常前記金型の冷却孔の内面の表面粗さ(Rz)は5〜20μm程度である。これに対して、本発明においては、金型冷却孔内面のツールマークあるいは汚れを除去するために、前記化学研磨処理(1)により前記金型の冷却孔の内面を平滑かつ清浄にするが、ツールマークによる応力集中をより抑制するために前記金型の冷却孔の内面の表面粗さ(Rz)が、7μm以下であることが好ましい。
前記化学研磨処理(1)により前記金型の冷却孔の内面の(管内面)の粗さ(Rz)を7μm以下にするには、切削加工の粗さにもよるが、後述の実施例(試験結果)に示すように、研磨量を15μm程度に制御することが好ましく、これにより、より平滑さを得ることができる。また、前記無電解Niメッキ処理において、メッキ層を均一に所定の厚さ析出させるためには、研磨量を10μm以上とすることが好ましい。また、前記化学研磨処理(1)中にガスが発生し、この泡が化学研磨液の循環を阻害するため、強制的に液循環する工夫が必要である。そこで、後述の実施例では、市販の金属表面処理剤を用いて処理したが、処理対象物の表面を均一にかつ10μm以上研磨、洗浄できれば、実施例の方法に限定されるものではない。なお、前記化学研磨処理(1)の方法としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、例えば、三菱ガス化学株式会社製の金属表面処理剤である「鉄・鉄鋼用化学研磨液 クリーンエッチ」を使用でき、具体的には、鉄系合金用表面平滑剤CPE−4000(商品名)等を使用できる。また、処理条件としては、鉄系合金用表面平滑剤CPE−4000(商品名)を5倍希釈して、20℃、100mL/minで循環させて使用することができる。
また、酸化被膜がある場合には前記無電解Niメッキ層の厚みは3μm以下でも十分に防食性能を有するが、腐食防止のためには、前記無電解Niメッキ処理で3μm以上の無電解Niメッキ層を析出させることが好ましい。このためには、前記化学研磨処理(1)(下地処理)を確実に行うと共に前記無電解メッキ処理条件を適切に設定することが必要である。なお、前記無電解Niメッキの方法としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、例えば、奥野製薬工業株式会社製の金属表面処理剤である「トップニコロン(商品名)」を使用でき、具体的には、トップニコロンMSH−SLF(商品名)等を使用できる。また、無電解Niメッキ処理は、化学反応であるため反応と共にメッキ液中のNi濃度が変化する。そのため安定したメッキを行うためにはメッキ液を循環し、新しいメッキ液をメッキ対象物表面に供給する必要がある。特に冷却孔の場合にはこのメッキ液の循環は必須である。また、メッキ処理中に水素ガスが発生し、この水素ガスの泡がNiの析出を阻害するため、泡の除去も必要である。下記実施例では市販のメッキ液を用いて無電解Niメッキ処理したが、処理対象物の表面を均一に3μm以上の無電解Niメッキ層の厚さが得られれば、実施例の方法に限るものではない。
さらに、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記冷却孔の内面を化学研磨処理(化学研磨処理(1))して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の表面付着物を除去した後に、前記冷却孔の内面を窒化処理し、その後、化学研磨処理(以下「化学研磨処理(2)」と称す場合もある)と前記無電解Niメッキ処理を行うことが好ましい。なお、前記化学研磨処理(2)は、前記化学研磨処理(1)と同様の方法で行うことができるが、前記化学研磨処理(2)は、ツールマークを軽減するためではなく、無電解Niメッキ処理前に表面を清浄化するために行うものであるため、研磨量は必ずしも10μmである必要はない。
さらにまた、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記冷却孔の内面を(化学研磨処理(1))して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の表面付着物を除去した後に、前記冷却孔の内面を窒化処理し、さらに、前記冷却孔の内面を酸化処理し、その後、化学研磨処理(化学研磨処理(2))と前記無電解Niメッキ処理を行うことが好ましい。
本発明は、窒化処理あるいは窒化処理と酸化処理と、前記化学研磨処理と前記無電解Niメッキ処理を効果的に組み合わせることで、より一層、U字形冷却孔の内部からの亀裂の発生を防止あるいは軽減することができる。また、特に、金型表面に窒化処理あるいは窒化処理と酸化処理を施す場合には、金型表面を窒化処理あるいは窒化処理と酸化処理するのと同時に冷却孔の内面も窒化処理あるいは窒化処理あるいは窒化処理と酸化処理を行うことにより、処理のコスト、時間が低減され、経済的効果が大きくなる。ここで、「金型の表面」とは、ダイカスト製品を形成する金型部分(通常キャビティと呼称される)の表面を示し、「冷却孔の内面」とは、金型の冷却孔の内部の表面部分を示す。
なお、一般には窒化処理あるいは酸化処理の後に無電解Niメッキ処理を施すとNiメッキ層が付着しにくいと言われているが、本発明の実施例(試験)においては、窒化処理後に無電解Niメッキ処理をしても、無電解Niメッキ層の厚さは十分にあり防食効果も充分であった。また、窒化処理を行うことにより圧縮残留応力が発生し、亀裂の発生の抑止効果および亀裂の伝播の抑制効果が向上する。
また、酸化処理後に無電解Niメッキ処理した場合は、無電解Niメッキ層の厚さは薄いものであったが、酸化被膜上に無電解Niメッキ処理を施した場合でも本発明の実施例(試験)の結果腐食の防止効果は十分であった。このことから、酸化被膜がある場合には、無電解Niメッキ層の厚さは薄くても酸化被膜と無電解Niメッキ層の相乗効果で防食性能が向上する。
本発明において、前記金型の冷却孔の窒化処理は、経済的には前記金型の表面の窒化処理と同時に同条件で行うことが好ましく、前記無電解Niメッキ処理を阻害するものでなければ特に窒化処理の条件や方法は限定されるものではないが、例えば、窒素ガス雰囲気中で、480℃〜530℃で5時間〜7時間加熱することで窒化処理することができる。また、前記窒化処理が、窒化層表面に所謂「白層」が生じない窒化処理であることが好ましく、かつ窒化層深さが30〜80μmであることが好ましい。窒化処理温度が480℃〜530℃であり、窒化層深さが30〜80μmとすることで、鋼材の表面に、鉄と窒素の化合物(Fe4NおよびFe2〜3N)、所謂「白層」を生じないように窒化の条件をコントロールすることができ、亀裂の発生を防止することが可能となる。また、前記窒化処理の方法としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、ガス窒化法、ガス軟窒化法等の方法を挙げることができる。また、窒化処理の条件としては、前記鋼材を窒化処理することができ、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、ガス軟窒化法が好ましい。
また、本発明において、前記酸化処理も同様に、前記無電解Niメッキ処理を阻害するものでなければ特に酸化処理の条件や方法は限定されるものではないが、例えば、酸素ガス雰囲気中で、480℃〜530℃で5時間〜7時間加熱することで酸化処理することができる。
なお、本発明において、前記金型の冷却孔とは、水等の冷却溶媒を用いて前記金型を冷却するための孔のことであり、冷却穴とも表記され、一端を閉塞端としている貫通していないものと完全に貫通しているものを含み、貫通している場合は、冷却管と表記されることもある。
また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記金型の冷却孔が、図20に示すように、前記金型の表面からU字形で形成されている場合でも適用可能である。本発明は、開口部から直視できない部分を有する冷却孔に関して、前記化学研磨処理(1)によりツールマークなどの凹凸を低減し応力集中を緩和すると共に前記無電解Niメッキ処理により腐食を防止することで、前記冷却孔の内部からの亀裂発生を防止することができる。特に、曲がりがあり直視できない形状の冷却孔の亀裂防止を図ることができる。
さらに、本発明において、前記金型(ダイカスト金型)としては、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの鋳造に用いられるダイカスト金型等を挙げることができる。かかる金型の鋼材としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、例えば、JIS G 4404 SKD61等を挙げることができる。
さらに、本発明において、本発明の効果が損なわれない範囲で、通常の金型の製造方法に使用できる工程を追加できる。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
化学研磨処理によるツールマークの除去条件を確認するため図1に示す試験装置を作製し、下記表1に示す化学研磨処理条件で試験をおこなった。図1中、1は試験装置、2は試験片(10φ×10H、上部面積0.785cm))、3はウレタンパイプ(10φD×250H)、4は吸引パイプ(4φ)を示す。試験片2は金型に使用される代表的な鋼材であるSKD61を用いた。図2は、化学研磨処理無しの試験片2の表面状態を示す図であり、図3は、4分間化学研磨処理した試験片2の表面状態を示す図であり、図4は、8分間化学研磨処理した試験片2の表面状態を示す図である。4分間化学研磨処理した後にはツールマークはほぼ消失している。また、下記表2に研磨量と表面粗さを示す。ツールマークがほぼ消失した4分間化学研磨処理した時の研磨量は10μmであり、Rzは6.9μmであった。
Figure 0006960126
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(実施例2)
図1の試験装置を用い、表面に筋状の研磨痕を付けた試験片2で凹凸の形状変化を調べた。図5は、化学研磨処理無しの試験片2の表面の研磨痕の状態と研磨痕の凹凸形状を示す図であり、図6は、4分間化学研磨処理した試験片2の表面の研磨痕の状態と研磨痕の凹凸形状を示す図であり、図7は、8分間化学研磨処理した試験片2の表面の研磨痕の状態と研磨痕の凹凸形状を示す図である。化学研磨処理により凹凸が滑らかになり、応力集中の起きにくい形状になっていることが確認できた。
(実施例3)
図8に示す試験装置5を用い、化学研磨処理と無電解Niメッキ処理の試験を行った。図8中、5は試験装置、6はチューブポンプ、7は恒温槽、8はめっき浴を示す。試験片9(図8には図示せず)としては市販の配管用パイプを用いた。この配管用パイプ9は内面に所謂「黒染め処理(四三酸化鉄、Fe)」を施してあるもので、これをパイプの内面の汚れを模したものとした。図8では無電解Niメッキ処理の状況を示しているが、化学研磨処理も同じ装置で行った。下記表3に化学研磨処理条件を示し、下記表4に研磨量を示す。また、化学研磨処理を施した試料および化学研磨処理を施していない試料を下記表5に示す条件で無電解Niメッキ処理を行い、Ni層の厚さを下記表6に示す。また、図9は、化学研磨処理無しの試験片9の無電解Niメッキ後のパイプ外面および内面の外観を示す図であり、図10は、化学研磨処理無しの試験片9の無電解Niメッキ後のパイプの内面状態(拡大写真)を示す図であり、図11は、8分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプ外面および内面の外観を示す図であり、図12は、8分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプの内面状態(拡大写真)を示す図であり、図13は、15分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプ外面および内面の外観を示す図であり、図14は、15分間化学研磨処理した試験片9の無電解Niメッキ後のパイプの内面状態(拡大写真)を示す図である。研磨時間が8分間の試料はNiメッキ層が均一に付着していないが、研磨時間が15分間の試料はNiメッキ層が均一に付着している。研磨条件を適切に設定することにより無電解Niメッキを管内面に均一に施すことができた。
Figure 0006960126
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(実施例4)
図15に示す試験装置10を用い、U字管(図20および図21参照)の化学研磨処理と無電解Niメッキ処理の試験を行った。図15中、10は試験装置、11はチューブポンプ、12は恒温槽、13はめっき浴または化学研磨液を示す。試験片9(図15には図示せず)としては実施例3と同じ市販の配管用パイプを用いた。下記表7に化学研磨処理条件を示し、下記表8に研磨量を示す。また、下記表9に無電解Niメッキ処理条件を示し、下記表10にメッキ層の厚さを示す。発泡による研磨液の溢れ出しを防止して液循環することで安定した研磨状態とし、研磨量を10μm以上とすることで、またメッキ条件を適切に設定することにより管内面に均一に無電解Niメッキ処理を施すことができた。なお、表8および表10中、A、BおよびCは図15の位置のパイプを示す。
Figure 0006960126
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(実施例5)
SKD61調質材を用い、腐食試験を行った。試験片は90mm×50mm×3mmtの板状とし、表面をショットブラストで汚れを落とした後、各種表面処理を施した。これらの試験片を水道水に浸漬し腐食状態を観察した。腐食試験の試料の表面処理条件を下記表11に示す。窒化処理は、530℃の窒素雰囲気中で7時間保持した。酸化処理は、530℃の酸素雰囲気中で7時間保持した。化学研磨処理条件を下記表12に示し、無電解Niメッキ条件を下記表13に示す。
Figure 0006960126
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下記表14に試料4、5および6の研磨厚さおよび無電解Niメッキ厚さを示す。試料4では所期の研磨量およびメッキ厚さとなったが、試料5では窒化処理後の研磨量(研磨厚さ(2))が少なくなった。これは窒化処理によるものと思われる。また、試料6では酸化処理後の研磨量(研磨厚さ(2))が著しく少なくなり、さらにNiメッキ量も極めて少なくなった。これは酸化被膜によりそれぞれの反応が抑制されたためと考えられる。
Figure 0006960126
試料の外観を図16〜図18に示す。図16は、各表面処理後(腐食試験前)の外観である。窒化処理および酸化処理は試料全面に施したが、化学研磨処理および無電解Niメッキ処理は試料の下5cmの部分に施した。図17は、水道水浸漬48時間後の外観である。浸漬部分は写真の下3cmの部分である。試料No.1の素材は錆がはっきりと認められる。窒化処理品(No.2)と酸化処理品(No.3)は一部に錆が発生しているが、無電解Niメッキ品(No.4〜6)はいずれも錆は見られない。また、図18は、水道水浸漬1週間後の外観である。無電解Niメッキ処理を施していない試料(No.1〜3)は錆が著しいが、無電解Niメッキ処理を施した試料(No.4〜6)は錆がほとんど認められない。また、腐食試験後の試料の腐食量を測定した結果を下記表15に示す。腐食量としては、図18に示す1週間水道水浸漬後の試料の錆を落とし乾燥後の重量を測定し、試験前の重量と比較した。無電解Niメッキ処理を施していない試料(No.1〜3)の重量減少量に比べ、無電解Niメッキ処理を施した試料(No.4〜6)は重量減少が非常に少なかった。
Figure 0006960126
1 試験装置
2 試験片
3 ウレタンパイプ
4 吸引パイプ
5 試験装置
6 チューブポンプ
7 恒温槽
8 めっき浴
9 試験片
10 試験装置
11 チューブポンプ
12 恒温槽
13 めっき浴または化学研磨液
20冷却孔
21金型
22 冷却水の流れを示す矢印

Claims (2)

  1. 金型が冷却に使用する冷却孔を有し、
    前記冷却孔の内面を化学研磨処理して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の表面付着物を除去し、
    さらに無電解Niメッキ処理を施す表面処理方法であり、
    前記冷却孔の内面を化学研磨処理して、前記冷却孔の内面のツールマークの粗さを低減または/および前記冷却孔の内面の表面付着物を除去した後に、前記冷却孔の内面を窒化処理し、
    さらに、前記冷却孔の内面を酸化処理し、
    その後、化学研磨処理と前記無電解Niメッキ処理を行うことを特徴とする金型の冷却孔の表面処理方法。
  2. 前記金型の冷却孔が、前記金型の表面からU字形で形成されている請求項1に記載の金型の冷却孔の表面処理方法。
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