JP6818207B1 - 金型の冷却孔の表面処理方法 - Google Patents

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【課題】金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供する。【解決手段】金型が冷却に使用する冷却孔を有し、冷却孔の内面のツールマークを機械的研磨処理、ショットブラスト処理およびショットピーニング処理からなる群から選ばれた1種または2種以上の処理をすることで冷却孔の内面を平滑にし、その後、窒化処理を行って、冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、さらに、酸化処理を行って、冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させる金型の冷却孔の表面処理方法である。【選択図】図9

Description

本発明は、金型の冷却孔の表面処理方法に関し、特に、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法に関する。
ダイカストは生産性に優れ、高品質の鋳物を提供できることから、現在アルミ鋳物の大部分はダイカスト製品である。また、その製品の多くは自動車部品であり、近年の高性能化、軽量化により部品の高品質化、軽量化が求められている。そのため、ダイカスト金型にも高品質化、長寿命化が求められ、鋼材の高性能化や多くの表面処理が提案され、実用化されている。
かかるダイカスト金型など鋳物鋳造用金型の使用寿命を決める主な原因としては、割れ、欠け、溶損、変形などがある。また、金型の割れのうち、金型内部の冷却管(冷却孔)から発生する割れは、割れが金型表面に達するため、金型使用者が割れを認識した際には、所謂「大割れ」になり、その修復に多大の費用と時間を要する場合がある。
一方、生産性の向上および鋳物品質の向上の観点からは、溶湯充填後に速やかに製品を冷却することが望ましく、このため冷却管は金型表面に近づける必要がある。しかしながら、冷却管を金型表面に近づけると冷却管周辺の熱振幅が大きく亀裂が入りやすくなる。また、冷却管の内面は孔加工時のツールマークあるいは放電加工による変質層が残っているため、これが応力集中箇所あるいは亀裂の発生起点となる可能性がある。さらに、冷却管には常に冷却水が通っているため、このことにより孔の内面は腐食しやすく、腐食箇所から亀裂が発生する可能性がある。特に、引抜き中子のように局部的に温度が上昇する金型形状の場合にはその部分を集中的に冷却する必要が生じ、一端を閉塞端とする冷却孔が設けられる場合があり、この閉塞端から亀裂が発生することが多いと言われている。
冷却孔の内面からの亀裂を防止するために、上記応力集中、腐食に注目した多くの対策が提案されている。例えば、冷却孔の内面のツールマークあるいは変質層を除去し、圧縮応力を付与して、亀裂の発生を予防するが提案され、特許文献1および特許文献2には、ショットブラストあるいはショットピーニングを用いる方法が開示されている。また、特許文献3〜5には、孔の内面の腐食を防止する方法として、孔の内面にメッキを施す方法、樹脂などで被覆する方法、あるいは酸化皮膜を生成させる技術が開示されている。さらに、特許文献6には、孔の表面に耐食性の高い元素を拡散させて腐食を防止する方法が開示されている。さらにまた、特許文献7〜8には、窒化処理とメッキあるいは防食処理の組合せの技術が開示されている。
特開平7−290222号公報 特表2015−521956号公報 特開2015−150568号公報 特開平8−117952号公報 特開2016−204754号公報 特開2018−176282号公報 特開2009−72798号公報 特開2013−159831号公報
しかしながら、上記特許文献1〜8記載の従来技術は、いずれも冷却孔の内面からの亀裂の原因となる表面粗さ、腐食、応力に注目しているものではあるが、必ずしもこれらの要因を十分に改善することができるものではない。例えば、特許文献1は応力に注目しているが腐食には言及しておらず、特許文献3では腐食対策を施しているが応力には対応していない。そのため、これらの要因を十分に除去でき、亀裂発生を防止できるとは言い難いものである。また、特許文献6では表面粗さ、腐食、応力を考慮しているが多くの時間と費用がかかる懸念がある。そのため、亀裂の原因となる表面粗さ、腐食、応力に対応しつつ、時間と費用の少ない技術が望まれていた。
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決し、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供するものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、冷却孔の内面を平滑にし、冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、さらに酸化皮膜で被覆することによって、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、
金型が冷却に使用する冷却孔を有し、
前記冷却孔の内面のツールマークを機械的研磨処理、ショットブラスト処理およびショットピーニング処理からなる群から選ばれた1種または2種以上の処理をすることで前記冷却孔の内面を平滑にし、
その後、窒化処理を行って、前記冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、
さらに、酸化処理を行って、前記冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させることを特徴とするものである。
また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、
金型が冷却に使用する冷却孔を有し、
前記冷却孔の内面のツールマークを機械的研磨処理またはショットブラスト処理で平滑にし、
さらに、Zrのショット材でショットピーニング処理を行い、
その後、窒化処理を行って、前記冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、
さらに、酸化処理を行って、前記冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させることを特徴とするものである。
また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記酸化処理の後に、Zrのショット材でショットピーニング処理を行って、圧縮残留応力を付与することが好ましい。
さらに、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記窒化処理が、処理後の表面に白層を生じない窒化処理であることが好ましい。
本発明によると、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供することができる。
実施例に使用する試験治具を示す図である。 実施例に使用する試験片を示す図である。 ショットピーニング処理前の試験片の表面の写真である。 ショットピーニング処理後の試験片の表面の写真である。 ショットピーニング処理後の試験片の表面の写真である。 ショットピーニング処理による硬さと圧縮応力の関係を示すグラフである。 窒化処理および窒化処理後ショットピーニング処理による硬さと圧縮応力の関係を示すグラフである。 酸化処理前の試験片と酸化処理後の試験片の外観の写真である。 腐食試験後(水道水50時間浸漬)の試験片の外観の写真である。 腐食試験後(水道水160時間浸漬)の試験片の外観の写真である。 腐食試験後(水道水24時間浸漬)の試験片の外観の写真である。
以下、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法について具体的に説明する。
本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、金型が冷却に使用する冷却孔を有し、前記冷却孔の内面のツールマークを機械的研磨処理、ショットブラスト処理およびショットピーニング処理からなる群から選ばれた1種または2種以上の処理をすることで前記冷却孔の内面を平滑にし、その後、窒化処理を行って、前記冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、さらに、酸化処理を行って、前記冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させることを特徴とするものである。また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、金型が冷却に使用する冷却孔を有し、前記冷却孔の内面のツールマークを機械的研磨処理またはショットブラスト処理で平滑にし、さらに、Zrのショット材でショットピーニング処理を行い、その後、窒化処理を行って、前記冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、さらに、酸化処理を行って、前記冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させることを特徴とするものである。これにより、金型の割れの大きな要因となっている「冷却孔から発生する亀裂」を防止あるいは軽減するための冷却孔の内面の表面処理方法を提供することができる。また、亀裂発生の複数の要因を除去あるいは軽減し、亀裂の発生を防止すると同時に可能か限り費用と時間を抑えた孔の内面の処理方法を提供するものである。さらに、本発明は、冷却孔の内面を研削し、ツールマークを除去し、さらに孔の内面に表面処理を施し腐食を防止するものである。また、孔の内面に圧縮応力を付加し、亀裂の発生を防止するものである。
本発明において、前記金型の冷却孔とは、水等の冷却溶媒を用いて前記金型を冷却するための孔のことであり、冷却穴とも表記され、一端を閉塞端としている貫通していないものと完全に貫通しているものを含み、貫通している場合は、冷却管と表記されることもある。
前記金型の冷却孔は、通常切削加工で形成され、その内面には所謂「ツールマーク」が残り、これが亀裂の起点となることが知られている。そこで、このツールマークを機械的研磨処理、ショットブラスト処理およびショットピーニング処理からなる群から選ばれた1種または2種以上の処理を行って、平滑にする。機械的研磨処理、ショットブラスト処理、ショットピーニング処理を単独で行ってもよいし、各処理を組合せてもよい。ここで、「ツールマーク」とは、切削加工により生じる切削故痕のことであり、JIS規格「B 0721:2004」にも記載されているものである。
前記機械的研削処理としては、本発明の効果が得られれば、特に限定されないが、砥石あるいは研削用ブラシを回転器具に装着して行うことができる。また、振動器具を用いて底面を平滑にすることもできる。
本発明は、ショットブラスト処理あるいはショットピーニング処理でツールマークを除去することもできる。研掃力はショットブラスト処理のほうが強い特長があるが、平滑面を得る点ではショットピーニング処理が好ましい。
ここで、前記ショットブラスト処理とは、投射材(ショット材(ショットメディア))と呼ばれる粒体を加工物に衝突させる処理のことであり、一般に汚れ除去、清掃に用いられており、使用するメディアもブラスト条件も様々である。変質層の除去にはある水準の研掃力が必要であるが、あまり研掃力が強く、表面を必要以上に粗くしてしまうことは好ましくない。そのため、冷却孔内面の状態を考慮したショット材やショットブラスト条件を選択する必要があり、適切な条件のショットブラスト処理が必要である。また、前記ショットピーニング処理とは、無数の鋼鉄あるいは非鉄金属の小さな球体を高速で金属表面に衝突させる処理のことであり、表面粗さを整え圧縮残留応力を付与するものである。この場合も、冷却孔内面の状態を考慮して、最適なショット材を用いること、あるいはピーニング条件とする必要がある。
また、本発明において、前記ショットブラスト処理としては、F220〜F320のアルミナのショット材を用い、0.2〜0.6MPaの空気圧で行うことが好ましい。さらに、前記ショットピーニング処理としては、#120〜#320のガラスビーズ、スチールビーズ、ジルコンビーズまたはジルコニアビーズのショット材(ショットメディア)を用いて、0.2〜0.6MPaの空気圧で行うことが好ましい。なお「F」および「#」はJIS R6001 によるものである。
さらに、本発明において、ショットピーニング処理によりツールマークを除去する際に、ショット材(ショットメディア)としてZrのショット材(Zr粒子で、ジルコンビーズまたはジルコニアビーズ)を用いることがより好ましい。これにより、より強力に表面を平滑にできると同時にショットピーニング処理面にZrの皮膜が生成し耐食性を向上することができる。
また、本発明において、冷却孔を作製するための機械加工としては、特に限定されないが、例えば、オークマ株式会社製の立形マシニングセンタMB−46VA(商品名)等の機械加工機を使用して行うことができる。
さらに、亀裂は引張り応力で発生するため、本発明は、窒化処理により表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与して、亀裂の発生および伝播を抑制する。
また、亀裂の起点としては腐食があげられる。冷却孔には常に水が流れているため、金型に使用されている鋼材が比較的腐食しやすく、亀裂の起点となる腐食孔が生じ易い。そのため、腐食を防止することは亀裂の発生を防止することに繋がる。そこで、本発明では、腐食の防止として、酸化処理を行って、前記冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させるものである。Feを主体とする酸化皮膜は耐食性が高く腐食防止効果が高い。
さらに、本発明では、孔の内面の平滑化、窒化処理による圧縮応力付与の技術および酸化皮膜の生成を組み合わせることにより、従来と比較してより一層有効な、冷却孔内面の亀裂防止処理を提供することができる。本発明は、上記の技術を効果的に組み合わせて冷却管内部からの亀裂の発生を防止あるいは軽減しようとするものであり、本発明者らは亀裂の起点となる腐食を防止するために表面処理方法を鋭意検討した結果、機械的研磨処理、ショットブラスト処理およびショットピーニング処理等による孔の内面の平滑化に加えて、窒化処理と酸化処理を組合せることにより、窒化処理あるいは酸化処理単独の場合より遥かに耐食性が向上することを見出したものである。
本発明の金型の冷却孔の表面処理方法の具体例としては、金型の冷却孔の内面のツールマーク(あるいは汚れ)を除去するためにショットブラスト処理で研掃し、孔の内面を平滑にする。必要な場合にはさらにショットピーニング処理により内面をより平滑にする。この場合の表面粗さはRz:7μm以下が望ましい。次に、窒化処理を行い表面の硬さを高くすると同時に圧縮残留応力を付与する。さらに窒化処理を行った後に酸化処理を行い、窒化層の上に酸化皮膜を生成させる。この窒化層と酸化皮膜の組合せにより、窒化層あるいは酸化皮膜単独の場合よりも優れた耐食性が得られる。
また、本発明は、前記窒化処理が、窒化層表面に所謂「白層」が生じない窒化処理であることが好ましく、かつ窒化層深さが30〜80μmであることが好ましい。窒化処理温度が500〜600℃であり、窒化層深さが30〜80μmとすることで、鋼材の表面に、鉄と窒素の化合物(Fe4NおよびFe2〜3N)、所謂「白層」を生じないように窒化の条件をコントロールすることができ、亀裂の発生を防止することが可能となる。
本発明において、前記窒化処理の方法としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、イオン窒化法、プラズマ窒化法、ガス窒化法、ガス軟窒化法等の方法を挙げることができる。また、窒化処理の条件としては、前記鋼材を窒化処理することができ、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、ガス軟窒化法が好ましい。
また、本発明の金型の冷却孔の表面処理方法は、前記酸化処理の後に、Zrのショット材(Zr粒子で、ジルコンビーズまたはジルコニアビーズ)でショットピーニング処理を行って、圧縮残留応力を付与することが好ましい。酸化皮膜工程の後に、Zr粒子のショットピーニング処理を行うことにより、圧縮応力を付与することができ、亀裂の発生起点となる腐食を防止すると同時に圧縮応力により亀裂の発生、伝播を抑制することができ、より耐食性を向上することができる。なお、このZrのショット材を使用したショットピーニング処理を行う際には酸化皮膜を剥離しない条件で行う必要がある。
さらに、本発明において、前記金型(ダイカスト金型)としては、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの鋳造に用いられるダイカスト金型等を挙げることができる。かかる金型の鋼材としては、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、例えば、JIS G 4404 SKD61等を挙げることができる。
さらに、本発明において、本発明の効果が損なわれない範囲で、通常の金型の製造方法に使用できる工程を追加できる。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1−1)
図1および図2の金型の冷却孔のモデルを使用して試験を行った。図1は、実施例に使用する試験治具1を示す図であり、図1(a)が上面図、図1(b)が側面図である。また、図2は、実施例に使用する試験片2を示す図であり、図2(a)が上面図、図2(b)が側面図である。本実施例の場合、試験治具1は、SKD61材で作製され、その孔径はφ6mmで、孔深さは40mm(図1(b)中の破線部)であり、試験片2は、SKD61材で作製され、その径はφ6mmで、高さは10mmである。なお、試験片の高さが10mmであるので有効穴深さは30mmである。試験は、試験片2を試験治具1の底部1aにセットし、各処理を行った後、試験片2を取り出して評価した。
試験片2を試験治具1の底部1aにセットし、株式会社不二製作所製のペンシルブラスター DP−2C−U(商品名)を使用し、FZB205 ジルコンビーズ(#205、粒径65μm以下)で、0.6MPaの空気圧でピーニング処理を行った。図3はショットピーニング処理前の試験片2の表面状態を示す写真であり、図4はショットピーニング処理後の試験片2の表面状態を示す写真である。また、下記表1はショットピーニング処理前後の試験片2の表面硬さ(Hv)の表である。
図3、図4および表1の結果から、孔の底面の研磨痕は消え、表面の硬さが高くなっていることが確認できた。
(実施例1−2)
前記試験治具1の孔径をφ10mm、孔の深さを110mmに変更した試験治具3を使用して、試験片2の直径をφ10mmに変更した試験片4を試験治具3の底部にセットし、厚地鉄工株式会社製のAー3R ブラスト機(商品名)をFZB205 ジルコンビーズで0.4MPaの空気圧でショットピーニング処理を行った。図5はショットピーニング処理後の試験片の表面の写真であり、下記表2はショットピーニング処理前後の試験片の表面硬さ(Hv)の表である。
図5および表2の結果から、実施例1−1の場合と同様、孔底面の研磨痕は消え、硬さが高くなっていることが確認できた。
なお、ショットピーニング処理あるいは窒化処理により硬さが高くなっている場合、同時に圧縮応力が存在している。測定例を図6に示す。図6は、SKD61材にガラスビーズでショットピーニング処理を施した場合の硬さと圧縮応力の関係を示すグラフである。硬さは、株式会社ミツトヨ製のHM−210A マイクロビッカース硬さ試験機を用いて測定し、圧縮応力は山梨県工業技術センターでX線応力測定法を用いて測定した。なお、本発明において、硬さと圧縮応力測定方法は同様の方法で行った。
(実施例2)
冷却孔のような閉塞端の深い孔の場合、窒素原子が孔の底部まで十分に拡散せず窒化処理が十分でないおそれがある。そこで、前記試験治具1の孔径をφ10mm、孔の深さを100mmに変更した試験治具5と試験片4を用いて窒化処理試験を行った。窒化処理温度は530℃、保持時間は7時間とし、窒化処理前後の試験片4の表面硬さ(Hv)を測定した。試験結果を下記表3に示す。
表3の結果から、孔の底部は窒化処理により硬化していることが確認できた。また、窒化処理による圧縮応力の影響を確認するため、圧縮応力を測定した。図7は、窒化処理および窒化処理後ショットピーニング処理による硬さと圧縮応力の関係を示すグラフである。図7の結果から、ショットピーニング処理あるいは窒化処理により硬さが高くなり、さらに圧縮応力が付与されていることが確認できた。
(実施例3)
冷却孔のような閉塞端の深に孔の場合には、酸素原子が孔の底まで十分に拡散せず酸化が進行しないおそれがある。そこで、試験治具5と試験片4を用いて酸化処理試験を行った。酸化処理は、酸素ガス含有雰囲気で、処理温度は530℃、保持時間は15時間とし、酸化処理前後の外観の観測と、試験片4の円形の表面の直径部分8mmの距離の電気抵抗を測定した。図8は、酸化処理前の試験片と酸化処理後の試験片の外観の写真であり、電気抵抗の測定結果を下記表4に示す。
図8から、酸化処理により、表面が黒くなり酸化皮膜が形成されていることが確認できた。また、表4から、電気抵抗の変化からも酸化処理による酸化皮膜の生成が確認できた。
(実施例4)
材料がSKD61で、寸法が90mm(縦)×50mm(横)×3mm(厚さ)である試験片6を用い、下記表5記載の条件に従って、F220のアルミナによるショットブラスト処理(アルミナショット)で表面を研掃した後、酸化処理、窒化処理等の処理を施し、腐食試験を行った。ここで、窒化処理は、ガス軟窒化処理を530℃で7時間行い、硬化深さが約50μmとなるように制御し、酸化処理は、酸素ガス含有雰囲気で処理温度は530℃、保持時間は15時間行った。
(腐食試験)
試験片6を常温で水道水中に浸漬し、50時間後と160時間後に試験片6の外観を観察した。
図9は、腐食試験後(水道水50時間浸漬)の試験片の外観の写真である。アルミナショットのみとアルミナショットに酸化処理を施した試料は著しく錆が発生しているのに対し、窒化処理あるいは窒化処理と酸化処理を施した試料はさびの発生は少なかった。また、図10は、腐食試験後(水道水160時間浸漬)の試験片の外観の写真である。窒化処理と酸化処理を施した試料は、錆の発生(発生量)は少ない。この結果、錆の発生の多い順は、
試料1 ≧ 試料2 > 試料3 > 試料4
であった。
(実施例5)
材料がSKD61である試験片6を用い、下記表6記載の条件に従って、腐食試験を行った。アルミナショット、窒化処理および酸化処理の条件は、実施例4と同等の条件で行った。ただし、アルミナショットブラスト処理(アルミナショット)を施した後のZrショットピーニング処理(Zrショット)は、FZB120ジルコンビーズ(#120、粒径65〜125μm)を用い、0.5MPaのエアー圧で行った。また、試料No.9の酸化処理後のZrショットは、0.3MPaのエアー圧で行った。
図11は、腐食試験後(水道水24時間浸漬)の試験片の外観の写真である。実施例4の場合と同様に、窒化処理と比較して、窒化処理と酸化処理の両方を施したものは、格段に錆の発生が少なかった。また、窒化処理と酸化処理の前にZrショットを施した場合、あるいは窒化処理と酸化処理の後にZrショットを施したものも錆の発生は少なかった。冷却孔の内部からの亀裂発生の起点となる腐食を防止するためには、窒化処理と酸化処理の複合処理が極めて有効であることが確認できた。さらに、アルミナショット後にZrショットにより内面を平滑にし圧縮応力を付与すること、あるいは酸化処理後にZrショットを施して圧縮応力を付与することにより、さらに亀裂の発生を抑止できることが期待できる。
1 試験治具
1a 試験治具の底部
2 試験片
3 試験治具
4 試験片
5 試験治具
6 試験片

Claims (3)

  1. 金型が冷却に使用する冷却孔を有し、
    前記冷却孔の内面のツールマークを機械的研磨処理、ショットブラスト処理およびショットピーニング処理からなる群から選ばれた1種または2種以上の処理をすることで前記冷却孔の内面を平滑にし、
    その後、窒化処理を行って、前記冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、
    さらに、酸化処理を行って、前記冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させ
    前記酸化処理の後に、Zrのショット材でショットピーニング処理を行って、前記酸化皮膜を剥離しないで圧縮残留応力を付与することを特徴とする金型の冷却孔の表面処理方法。
  2. 金型が冷却に使用する冷却孔を有し、
    前記冷却孔の内面のツールマークを機械的研磨処理またはショットブラスト処理で平滑にし、
    さらに、Zrのショット材でショットピーニング処理を行い、
    その後、窒化処理を行って、前記冷却孔の内面の表面硬度を上げると共に圧縮残留応力を付与し、
    さらに、酸化処理を行って、前記冷却孔の内面に酸化皮膜を生成させ
    前記酸化処理の後に、Zrのショット材でショットピーニング処理を行って、前記酸化皮膜を剥離しないで圧縮残留応力を付与することを特徴とする金型の冷却孔の表面処理方法。
  3. 前記窒化処理が、処理後の表面に白層を生じない窒化処理である請求項1または2に記載の金型の冷却孔の表面処理方法。
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