JP5833982B2 - 鋳造用金型及びその製造方法 - Google Patents

鋳造用金型及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5833982B2
JP5833982B2 JP2012158547A JP2012158547A JP5833982B2 JP 5833982 B2 JP5833982 B2 JP 5833982B2 JP 2012158547 A JP2012158547 A JP 2012158547A JP 2012158547 A JP2012158547 A JP 2012158547A JP 5833982 B2 JP5833982 B2 JP 5833982B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
casting mold
oxide layer
mold according
oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012158547A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014018820A (ja
Inventor
亮 菊池
亮 菊池
河田 一喜
一喜 河田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2012158547A priority Critical patent/JP5833982B2/ja
Publication of JP2014018820A publication Critical patent/JP2014018820A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5833982B2 publication Critical patent/JP5833982B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Molds, Cores, And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Description

本発明は鋳造用金型及びその製造方法に関する。
近年、軽量化の要請から自動車部品におけるアルミダイカスト製品の使用量が増加している。ここで、ダイカスト金型には、製品を取り出すために離型剤が塗布された後、溶融金属が高圧・高速で射出される。そして、このような冷却・加熱のサイクルが繰り返される。すなわち、ダイカスト金型には熱サイクルが負荷され、特に金型表面は過酷な環境にさらされる。そのため、各種表面処理によりダイカスト金型の長寿命化が図られてきた。ダイカスト金型の長寿化は、ダイカスト製品の生産効率向上、低コスト化等の観点から極めて重要である。
特許文献1には、JIS規格SKD61材からなる基材の表面に窒素拡散層が形成され、さらに当該窒素拡散層上に酸化鉄のみからなる酸化物層が形成されたダイカスト金型が開示されている。
特開2004−237301号公報
発明者は以下の課題を見出した。
特許文献1に開示されたダイカスト金型は、表面の酸化物層が酸化鉄のみからなるため、耐溶損特性に劣り、結果として耐久性に劣るという問題があった。
本発明は、上記を鑑みなされたものであって、耐久性に優れる鋳造用金型を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る鋳造用金型は、
クロムを含有する合金工具鋼からなる基材と、
前記基材上に形成された窒素拡散層と、
前記窒素拡散層上に形成された窒化物層と、
溶湯との接触面に酸化鉄及び酸化クロムを含有し、前記窒化物層上に形成された酸化物層と、を備え、
前記酸化物層の厚さは、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の40%以上であるものである。
溶湯との接触面に酸化鉄及び酸化クロムを含有するため、耐溶損特性に優れている。そのため、耐久性に優れている。
さらに、前記酸化物層の厚さは、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の80%以下であることが好ましい。
前記窒素拡散層の膜厚が、50〜250μmであることが好ましい。
基材と表面処理層との膨張率の差が緩和され、表面処理層の密着性が向上する。
また、前記窒化物層の膜厚と前記酸化物層の膜厚との合計が、1〜40μmであることが好ましい。高温環境下において、窒素拡散層内における窒素がより内部側に拡散することを抑制することができ、金型の強度低下を抑制することができる。
また、前記溶湯の主成分がアルミニウムであることが好適である。
また、当該鋳造用金型はダイカスト金型として特に好適である。
本発明の一態様に係る鋳造用金型の製造方法は、
450〜600℃の温度範囲で60〜400分間、クロムを含有する合金工具鋼からなる基材を窒化処理することにより、窒素拡散層及び窒化物層を前記基材上に形成するステップと、
前記窒化物層が形成された前記基材の表面を研磨するステップと、
450〜600℃の温度範囲で60〜400分間、前記基材を酸化処理することにより、溶湯との接触面に酸化鉄及び酸化クロムを含有する酸化物層を前記窒化物層上に形成するステップと、を備えたものである。
溶湯との接触面に酸化鉄及び酸化クロムを含有するため、耐溶損特性に優れている。そのため、耐久性に優れている。
前記窒素拡散層の膜厚を50〜250μmとすることが好ましい。
基材と表面処理層との膨張率の差が緩和され、表面処理層の密着性が向上する。
また、前記窒化物層の膜厚と前記酸化物層の膜厚との合計を、1〜40μmとすることが好ましい。高温環境下において、窒素拡散層内における窒素がより内部側に拡散することを抑制することができ、金型の強度低下を抑制することができる。
また、前記酸化物層の厚さを、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の40%以上とすることが好ましい。さらに、前記酸化物層の厚さを、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の80%以下とすることが好ましい。
また、前記溶湯の主成分がアルミニウムであることが好適である。
前記窒化処理が、アンモニアガスを用いたガス窒化処理であることが好適である。
前記酸化処理が、水蒸気を用いた酸化処理であることが好適である。
また、当該鋳造用金型はダイカスト金型として特に好適である。
本発明により、耐久性に優れる鋳造用金型を提供することができる。
実施の形態1に係る鋳造用金型の表層部の断面図(a)及び表層部におけるビッカース硬さ(Hv)の深さ依存性を定性的に示すグラフ(b)である。 窒化物層103及び酸化物層104の厚さの合計に対する酸化物層104の厚さの割合(%)(横軸)と20000ショット後の硬さ低下率(%)(縦軸)との関係を示すグラフである。 窒化処理後の研磨の有無による引抜抵抗の違いを示すグラフである。 比較例に係る鋳造用金型の表層部の断面図(a)及び表層部におけるビッカース硬さ(Hv)の深さ依存性を定性的に示すグラフ(b)である。 実施例1に係る鋳造用金型における基材及び表面処理層の膨張率(%)の温度依存性を示すグラフである。 比較例1に係る鋳造用金型における基材及び表面処理層の膨張率(%)の温度依存性を示すグラフである。 実施例1及び比較例1に係る鋳造用金型おける表面硬さのショット数(鋳造回数)依存性を示すグラフである。 実施例1及び比較例1に係る鋳造用金型おいて損傷が発生するまでのショット数を示すグラフである。 実施例1及び比較例2〜4に係る鋳造用金型における溶損質量の浸漬時間依存性を示すグラフである。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、実施の形態1に係る鋳造用金型について説明する。図1(a)は、実施の形態1に係る鋳造用金型の表層部の断面図である。図1(a)において、図面左側が金型表面(金型上側ともいう)、右側が金型内部(金型下側ともいう)である。図1(b)は、図1(a)の鋳造用金型の表層部におけるビッカース硬さ(Hv)の深さ依存性を定性的に示すグラフである。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る鋳造用金型は、基材101、窒素拡散層102、窒化物層103、酸化物層104を備えている。より詳細には、基材101上に、表面処理層である窒素拡散層102、窒化物層103、及び酸化物層104が、この順に形成されている。つまり、金型の最表面には、酸化物層104が位置する。
基材101は、Crを含有する合金工具鋼材からなる。より具体的には、基材101は、例えば熱間金型用の合金工具鋼材であるJIS規格SKD61材からなる。SKD61材は、4.80〜5.50質量%のCrを含有している。
窒素拡散層102は、基材101の窒化処理により形成された表面改質層である。窒素拡散層102は、窒化処理過程において、金型表面側から金型内部側に向かって窒素(N)が拡散することにより形成される。そのため、金型表面側から金型内部側に向かって窒素濃度も徐々に低くなる。ここで、窒素拡散層102内における窒素原子は、窒化物を形成せずに、固溶している。
窒素拡散層102の硬さは、窒素の固溶量が多いほど上昇する。そのため、図1(b)に示すように、窒素拡散層102の硬さは、基材101の硬さから窒化物層103の硬さまで連続して徐々に上昇する。このように、基材101と表面処理層である窒素拡散層102との界面近傍において、硬さが急激に変化することがない。また、窒素拡散層102は、基材101の熱膨張を抑制する。そのため、硬質な窒化物層103及び酸化物層104が、熱サイクルの負荷によって剥離することを抑制することができる。
窒素拡散層102の厚さは、50〜250μmであることが好ましい。50μm未満では、硬さの変化が急になり、上記のような効果を奏し得なくなる。250μmを超えると、窒化処理に多大な時間を要するようになり、金型の生産性が低下する。窒素拡散層102の厚さは、組織観察による膜厚と成膜条件との関係から把握することができる。
窒化物層103も、基材101の窒化処理により形成された表面改質層であって、窒素拡散層102上に形成されている。窒化物層103は、窒化鉄(Fe2〜3N、FeN)、窒化クロム(CrN)からなる。窒化物層103は、高温でも非常に高い硬さを維持するため、金型表面の高温硬度の向上に寄与している。
酸化物層104は、基材101の酸化処理により形成された表面改質層であって、窒化物層103上に形成されている。つまり、酸化物層104は金型の最表面に形成されている。酸化物層104は、酸化鉄(Fe、Fe)、酸化クロム(CrO)からなる。ここで、酸化物層104における酸化クロム(CrO)の割合は、金型内部側ほど高いが、酸化物層104の表面にも酸化クロム(CrO)が存在する。酸化クロム(CrO)を含有する緻密な酸化物層104が最表面に形成されているため、本実施の形態に係る鋳造用金型は、耐溶損特性に優れている。また、本実施の形態に係る鋳造用金型は、アルミ溶湯に対する濡れ性が低く、離型性にも優れている。さらに、耐酸化性にも優れている。
ここで、窒化物層103及び酸化物層104は、断熱性を有している。そのため、溶湯注入時などの高温環境下において、窒素拡散層102内における窒素がより金型内部側に拡散することを抑制することができる。そのため、金型の強度低下を抑制することができる。
窒化物層103及び酸化物層104の厚さの合計は、1〜40μmであることが好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。厚さの合計が1μm未満では、上記断熱性が不十分となる。厚さの合計が40μmを超えると、耐摩耗性が低下する。
また、酸化物層104の厚さは、窒化物層103及び酸化物層104の厚さの合計の40%以上である必要がある。40%未満であると、耐ヒートクラック性が急激に低下するからである。
図2は、窒化物層103及び酸化物層104の厚さの合計に対する酸化物層104の厚さの割合(%)(横軸)と20000ショット後の硬さ低下率(%)(縦軸)との関係を示すグラフである。所望の耐ヒートクラック性を得るには硬さ低下率を5%未満に抑える必要がある。ここで、酸化物層104の割合を40%以上とすることで、確実に硬さ低下率を5%未満に抑えることができる。
他方、窒化物層103及び酸化物層104の厚さの合計に対する酸化物層104の厚さの割合は80%以下であることが好ましい。80%を超えると、耐溶損特性が低下する。
窒化物層103及び酸化物層104の厚さは、組織観察による膜厚と成膜条件との関係から把握することができる。
次に、本実施の形態に係る鋳造用金型の製造方法について説明する。
まず、450〜600℃×60〜400minの条件で、窒素(N)ガス、アンモニア(NH)ガス、二酸化炭素(CO)ガスからなる混合ガスを用いて、金型の基材101にガス窒化処理を施す。その後、炉内を窒素(N)ガスにより置換し、金型を降温する。
次に、窒化処理された基材101の表面(窒化物層103の表面)を研磨(ラップ研磨)する。窒化処理されたままの窒化物層103の表面にはnmオーダーの微細な凹凸が形成されている。この上に酸化物層104を形成すると、酸化物層104の表面にも凹凸が形成されることになる。溶湯と接触する酸化物層104の表面に凹凸があると、凹部に溶湯が入り込み(アンカー効果)、離型性が悪化してしまう。その結果、耐久性も低下する。そのため、窒化処理後に、窒化物層103の表面を研磨し、表面を平坦にする。これにより、酸化物層104の表面も自動的に平坦にすることができる。
上記アンカー効果は、引抜抵抗を測定することにより調査することができる。図3は、窒化処理後の研磨の有無による引抜抵抗の違いを示すグラフである。SKD61材からなるピン形状の基材に、本実施の形態に係る窒化処理及び酸化処理を施し、試験片を作成した。試験片は、窒化処理後に研磨を行うもの(研磨有)と、研磨を行わないもの(研磨無)の2種類を準備した。この2種類の試験片を、アルミ合金(ADC12)の溶湯に浸漬し、溶湯温度が500℃まで低下した段階で引き抜き、その引抜抵抗(kN)を測定した。図3に示すように、研磨有のものは研磨無のものに比べ、引抜抵抗が1/10程度となった。
ここで、窒化処理後に研磨を行わず、酸化処理後に酸化物層104の表面を研磨した場合、酸化物層104の厚さが不均一となり好ましくない。窒化処理後に研磨を行うことにより、窒化物層103及び酸化物層104の膜厚を均一にすることができ、膜厚の制御も容易になる。さらに、窒化物層103の表面の凹凸は、熱サイクル負荷時に発生するマイクロクラックの起点となり易い。この観点からも、窒化処理後に研磨を行うことが好ましい。
次に、450〜600℃×60〜400minの条件で、窒化処理後の金型に水蒸気酸化処理を施した。その後、窒素(N)ガスにより金型を室温まで冷却する。
次に、図4を参照して、本実施の形態の比較例に係る鋳造用金型について説明する。図4(a)は、比較例に係る鋳造用金型の表層部の断面図である。図4(a)において、図面左側が金型表面(金型上側)、右側が金型内部(金型下側)である。図4(b)は、図4(a)の鋳造用金型の表層部におけるビッカース硬さ(Hv)の深さ依存性を定性的に示すグラフである。
図4(a)に示すように、比較例に係る鋳造用金型では、基材1上に、単層の表面処理層2が形成されている。基材1は、図1の基材101と同様である。
表面処理層2は、TD処理(Toyota Diffusion Coating Process)により形成されたバナジウムカーバイド(VC)からなる。
図4(b)に示すように、バナジウムカーバイド(VC)からなる表面処理層2は、基材1に比べ極めて高い硬さを有している。そして、基材1と表面処理層2との界面において硬さが急激に変化する。そのため、比較例に係る鋳造用金型では、高温における基材1と表面処理層2との膨張率の差も大きくなり、両者の界面において割れが発生し易い。
これに対し、本実施の形態に係る鋳造用金型では、基材101と硬質な窒化物層103との間に十分な厚さ(50〜250μm)の窒素拡散層102が形成されている。図1(b)に示したように、窒素拡散層102の硬さは、基材101の硬さから窒化物層103の硬さまで連続して徐々に上昇する。そのため、本実施の形態に係る鋳造用金型では、高温における基材1と表面処理層2との膨張率の差も小さくなり、両者の界面において割れが発生し難い。従って、金型の耐久性も向上する。
(実施例1)
550℃×240minの条件で、窒素(N)ガス、アンモニア(NH)ガス、二酸化炭素(CO)ガスからなる混合ガスを用いて、JIS規格SKD61材からなる金型の表面にガス窒化処理を施した。その後、炉内を窒素(N)ガスにより置換し、金型を降温した。窒化処理された金型の表面をラップ研磨した後、510℃×270minの条件で、窒化処理後の金型に水蒸気酸化処理を施した。その後、窒素(N)ガスにより、金型を室温まで冷却した。これにより、JIS規格SKD61材からなる基材101上に、厚さ150μmの窒素拡散層102、厚さ5μmの窒化物層103、厚さ5μmの酸化物層104をこの順に備えた鋳造用金型を得た。
(比較例1)
比較例1に係る鋳造用金型は、JIS規格SKD61材からなる基材101上に、TD処理による厚さ10μmのバナジウムカーバイド(VC)層を備えたものである。
(比較例2)
550℃×240minの条件で、窒素(N)ガス、アンモニア(NH)ガス、二酸化炭素(CO)ガスからなる混合ガスを用いて、JIS規格SKD61材からなる金型の表面にガス窒化処理を施した。その後、窒素(N)ガスにより、金型を室温まで冷却した。これにより、JIS規格SKD61材からなる基材上に、厚さ100μmの窒素拡散層、厚さ7μmの窒化物層をこの順に備えた鋳造用金型を得た。なお、比較例2に係る鋳造用金型は、酸化物層を備えていない。
(比較例3)
510℃×270minの条件で、JIS規格SKD61材からなる金型の表面に水蒸気酸化処理を施した。その後、窒素(N)ガスにより、金型を室温まで冷却した。これにより、JIS規格SKD61材からなる基材上に、厚さ1.2μmの酸化物層を備えた鋳造用金型を得た。なお、比較例3に係る鋳造用金型は、窒素拡散層及び窒化物層を備えていない。
(比較例4)
比較例4に係る鋳造用金型は、何ら表面処理を施していないJIS規格SKD61材からなる金型である。つまり、比較例4に係る鋳造用金型は、表面処理層である窒素拡散層、窒化物層、酸化物層を備えていない。
<膨張率の変化の調査>
実施例1に係る鋳造用金型について、基材101及び表面処理層(窒素拡散層102、窒化物層103、酸化物層104)の室温からの膨張率の変化を調査した。同様に、比較例1に係る鋳造用金型についても、基材1及び表面処理層(バナジウムカーバイド(VC)層)2の室温からの膨張率の変化を調査した。測定温度は、300℃、500℃とした。図5Aは、実施例1に係る鋳造用金型における基材及び表面処理層の膨張率(%)の温度依存性を示すグラフである。図5Bは、比較例1に係る鋳造用金型における基材及び表面処理層の膨張率(%)の温度依存性を示すグラフである。
図5Aに示すように、実施例1に係る鋳造用金型では、300℃における基材の膨張率は10.8%、表面処理層の膨張率は3.4%であった。また、500℃における基材の膨張率は、19.9%、表面処理層の膨張率は7.6%であった。従って、500℃における基材と表面処理層との膨張率の差は12.3%であった。
図5Bに示すように、比較例1に係る鋳造用金型では、300℃における基材の膨張率は17.4%、表面処理層の膨張率は4.3%であった。また、500℃における基材の膨張率は、29.7%、表面処理層の膨張率は5.6%であった。従って、500℃における基材と表面処理層との膨張率の差は24.1%であった。
図5A、5Bから、500℃における基材と表面処理層との膨張率の差が、実施例1に係る鋳造用金型では、比較例1に係る鋳造用金型に対し、約1/2の値となっている。上述のように、実施例1に係る鋳造用金型では、窒素拡散層102により基材と表面処理層との膨張率の差が緩和されたものと考えられる。そのため、実施例1に係る鋳造用金型では、基材と表面処理層との界面における割れが発生し難く、金型の耐久性も向上する。
<硬さの変化の調査>
実施例1及び比較例1に係る鋳造用金型について、ショット数(鋳造回数)による表面硬さの変化を調査した。図6は、実施例1及び比較例1に係る鋳造用金型おける表面硬さのショット数(鋳造回数)依存性を示すグラフである。
図6に示すように、実施例1に係る鋳造用金型では、15000ショットでの硬さの低下は初期の硬さからの19%に留まっている。一方、比較例1に係る鋳造用金型では、5000ショットでの硬さの低下は初期の硬さからの68%にも及んでいる。
このように、実施例1に係る鋳造用金型では、熱サイクル負荷による硬さの低下が小さく、耐久性に優れている。
<耐久性の調査>
実施例1及び比較例1に係る鋳造用金型について、耐久性を調査した。図7は、実施例1及び比較例1に係る鋳造用金型おいて損傷が発生するまでのショット数を示すグラフである。
図7に示すように、離型剤の有無に関わらず、実施例1に係る鋳造用金型は、比較例1に係る鋳造用金型に比べ、10倍近い耐久性を示した。ここで、図7に示すように、離型剤を塗布しない場合の実施例1の耐久性は、離型剤を塗布した場合の比較例1の耐久性に匹敵する。つまり、比較例1と同等の耐久性を維持しつつ、離型剤を塗布せずに実施例1に係る鋳造用金型を用いることもできる。
離型剤の塗布工程を省略することにより、鋳造用製品の生産効率が向上する。また、離型剤から発生するガスによる鋳造欠陥を防止することができ、鋳造用製品の歩留まりが向上する。また、鋳造用金型が離型剤により冷却されないため、湯流れ性が向上し、鋳造欠陥が低減できる。その結果、鋳造用製品の薄肉化によるさらなる生産性向上も期待できる。
<耐溶損特性の調査>
実施例1及び比較例2〜4に係る鋳造用金型について、耐溶損特性を調査した。図8は、実施例1及び比較例2〜4に係る鋳造用金型における溶損質量の浸漬時間依存性を示すグラフである。
図8に示すように、実施例1係る鋳造用金型は、比較例2〜4に係る鋳造用金型に比べ、耐溶損特性に優れている。耐溶損特性は、溶湯と接触する表面の被膜によるところが大きい。実施例1係る鋳造用金型では、溶湯と接触する表面に、酸化物層104が形成されている。
比較例3に係る鋳造用金型でも、溶湯と接触する表面に酸化物層が形成されているが、この酸化物層は、酸化鉄(Fe、Fe)のみから構成されている。これに対し、実施例1係る鋳造用金型の酸化物層104は、溶湯と接触する表面において、酸化鉄(Fe、Fe)だけでなく、酸化クロム(CrO)を含有している。この表面における酸化クロム(CrO)の存在により、実施例1係る鋳造用金型は、比較例3よりも優れた耐溶損特性を有している。
この表面における酸化クロム(CrO)は、比較例3のように酸化処理を施すのみでは形成されず、窒化処理を経た後に酸化処理を施すことにより形成することができる。表面における酸化クロム(CrO)の存在は、EPMA(Electron Probe Microanalyzer)分析により確認することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本発明に係る鋳造用金型は、金型表面が高圧・高速の溶融金属と繰返し接触し、従来は溶損が激しかったダイカスト金型に特に好適である。しかしながら、ダイカスト金型に限定されるものではなく、あらゆる鋳造用途に適用可能である。
101 基材
102 窒素拡散層
103 窒化物層
104 酸化物層

Claims (13)

  1. クロムを含有する熱間金型用の合金工具鋼からなる基材と、
    前記基材上に形成された窒素拡散層と、
    前記窒素拡散層上に形成された窒化物層と、
    アルミニウムを主成分として含有する溶湯との接触面に酸化鉄及び酸化クロムを含有し、前記窒化物層上に形成された酸化物層と、を備え、
    前記酸化物層の厚さは、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の40%以上である
    鋳造用金型。
  2. 前記酸化物層の厚さは、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の80%以下である請求項1に記載の鋳造用金型。
  3. 前記窒素拡散層の膜厚が、50〜250μmである請求項1又は2に記載の鋳造用金型。
  4. 前記窒化物層の膜厚と前記酸化物層の膜厚との合計が、1〜40μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
  5. ダイカスト金型である請求項1〜のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
  6. 450〜600℃の温度範囲で60〜400分間、クロムを含有する熱間金型用の合金工具鋼からなる基材を窒化処理することにより、窒素拡散層及び窒化物層を前記基材上に形成するステップと、
    前記窒化物層が形成された前記基材の表面を研磨するステップと、
    450〜600℃の温度範囲で60〜400分間、研磨後の前記基材を酸化処理することにより、アルミニウムを主成分として含有する溶湯との接触面に酸化鉄及び酸化クロムを含有する酸化物層を前記窒化物層上に形成するステップと、を備えた
    鋳造用金型の製造方法。
  7. 前記窒素拡散層の膜厚を50〜250μmとする請求項に記載の鋳造用金型の製造方法。
  8. 前記窒化物層の膜厚と前記酸化物層の膜厚との合計を、1〜40μmとする請求項又はに記載の鋳造用金型の製造方法。
  9. 前記酸化物層の厚さを、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の40%以上とする請求項に記載の鋳造用金型の製造方法。
  10. 前記酸化物層の厚さを、前記窒化物層及び前記酸化物層の厚さの合計の80%以下とする請求項に記載の鋳造用金型の製造方法。
  11. 前記窒化処理が、アンモニアガスを用いたガス窒化処理である請求項10のいずれか一項に記載の鋳造用金型の製造方法。
  12. 前記酸化処理が、水蒸気を用いた酸化処理である請求項11のいずれか一項に記載の鋳造用金型の製造方法。
  13. 前記鋳造用金型がダイカスト金型である請求項12のいずれか一項に記載の鋳造用金型の製造方法。
JP2012158547A 2012-07-17 2012-07-17 鋳造用金型及びその製造方法 Active JP5833982B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012158547A JP5833982B2 (ja) 2012-07-17 2012-07-17 鋳造用金型及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012158547A JP5833982B2 (ja) 2012-07-17 2012-07-17 鋳造用金型及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014018820A JP2014018820A (ja) 2014-02-03
JP5833982B2 true JP5833982B2 (ja) 2015-12-16

Family

ID=50194311

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012158547A Active JP5833982B2 (ja) 2012-07-17 2012-07-17 鋳造用金型及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5833982B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6838572B2 (ja) * 2018-02-28 2021-03-03 株式会社デンソー 金型装置
CN110029304A (zh) * 2019-03-12 2019-07-19 常州铂林热处理有限公司 一种合金钢的气氛氮化、氧化处理工艺
WO2021070344A1 (ja) * 2019-10-10 2021-04-15 パーカー熱処理工業株式会社 金型及び金型の製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB8310102D0 (en) * 1983-04-14 1983-05-18 Lucas Ind Plc Corrosion resistant steel components
JPH03285059A (ja) * 1990-03-30 1991-12-16 Atsugi Unisia Corp 鋼部材の表面処理方法
JP3201500B2 (ja) * 1993-11-16 2001-08-20 日産自動車株式会社 金型の表面硬化熱処理方法
JP2004237301A (ja) * 2003-02-04 2004-08-26 Honda Motor Co Ltd 有層鋼材製部材およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014018820A (ja) 2014-02-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5008944B2 (ja) 金型
JP5865487B2 (ja) 鋳造用部材及びその製造方法、ダイカスト用スリーブ、並びにダイカスト装置
US20090314448A1 (en) Method for production of metal material
JP3857213B2 (ja) 鋳造用金型およびその表面処理方法
JP5833982B2 (ja) 鋳造用金型及びその製造方法
CN105908120A (zh) 铝合金压铸模具钢或其模具的离子渗氮与低压氧化复合处理方法
JP2015024625A (ja) 成形用金型及びその製造方法
JP6274317B2 (ja) ダイカスト用被覆金型の製造方法
JP3410303B2 (ja) 耐溶融金属溶損性および耐摩耗性に優れたFe−Ni−Cr−Al系フェライト合金およびその製造方法
JP4883400B2 (ja) 鋳造用部材
JP2010007134A (ja) 鋼材の表面処理方法および表面処理装置ならびにそれらによって得られる鋼材
JP2012183548A (ja) ダイカスト用金型
Chang et al. Enhancement of erosion resistance on AISI H13 tool steel by oxynitriding treatment
JP5776790B2 (ja) 鋳造用部材、及びその製造方法
US6807897B2 (en) Hydraulic piston and process for its surface treatment
JP2018104801A (ja) Fe−Al合金材及びその製造方法
JP2005028398A (ja) 耐アルミ浸食性材料及びその製造方法
JP2010222649A (ja) 炭素鋼材料の製造方法および炭素鋼材料
JP2004237301A (ja) 有層鋼材製部材およびその製造方法
JP6236031B2 (ja) ダイカスト用金型
JPWO2013035351A1 (ja) アルミニウムダイキャスト金型用合金組成物およびその製造方法
JP7289728B2 (ja) 窒化材料の製造方法及び窒化材料
TW202115267A (zh) 模具及模具之製造方法
JP2020001056A (ja) 金型及び金型の製造方法
WO2021070344A1 (ja) 金型及び金型の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140807

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150527

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150616

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150717

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151013

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151030

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5833982

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R154 Certificate of patent or utility model (reissue)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R154

R154 Certificate of patent or utility model (reissue)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R154

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250