JP2020001056A - 金型及び金型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性、及び金属溶湯に対する耐溶損性に優れた金型を提供する。【解決手段】鉄系の金型母材と、金型母材の上層に設けられた窒素拡散層と、窒素拡散層の上層に設けられた窒素化合物層と、窒素化合物層の上層に設けられた、最表層をなす鉄系酸化物層と、を備える金型である。この金型は、窒素拡散層の厚さLNが100μm以上であるとともに窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSが900HV以上であり、かつ、鉄系酸化物層の厚さLOが1μm以上10μm未満である。【選択図】図1
Description
本発明は、金型、及び金型の製造方法に関する。
鋼材から形成された金型を用いた金属加工法としては、鋳造、鍛造、及び押出等の手法がある。これらの金属加工に使用される金型においては、金型母材の表面に、各種の表面処理を施すことが行われている。金型母材に対する表面処理としては、例えば、金型母材の表面に浸炭、窒化、及び酸化等の処理を施して表面改質層を形成させる方法や、化学的蒸着(Chemical Vapor Deposition;CVD)法及び物理的蒸着(Physical Vapor Deposition;PVD)法等により、金型母材の表面を窒化物、炭化物、及びホウ化物等の皮膜で被覆する方法がある。
例えば、被加工材を温間や熱間で鍛造する際に用いる金型(温熱間鍛造用金型)では、金型寿命の原因の多くは摩耗による損傷や熱疲労によるクラック発生(ヒートチェック)であることから、表面処理を施すことで、耐摩耗性や耐ヒートチェック性を向上させることが検討されている。特許文献1では、金型表面部に、Si、Crの1種または2種が基地の濃度よりも濃厚な領域を有する鉄酸化物を主体とした1〜20μmの厚さの層が存在することを特徴とする耐摩耗性に優れる温熱間鍛造用金型が提案されている。また、特許文献2では、表層部に窒素が拡散浸透されることにより、表面から少なくとも100μm深さまでの深さに、いずれの深さにおいても硬さが900〜1100HvでかつN濃度が1.5重量%以上となる耐摩耗層が形成されている温熱間成形用金型が提案されている。
また、例えば、ダイカスト用金型では、金型寿命の原因の多くは熱疲労によるクラック発生(ヒートチェック)であることや、金属溶湯(溶融金属)と接する部分が金属溶湯により溶損を受けやすいことから、表面処理を施すことで、耐ヒートチェック性や耐溶損性を向上させることが検討されている。特許文献3では、鉄系の金型母材と、金型母材の上層に設けられた窒素拡散層と、窒素拡散層の上層に設けられた窒素化合物層と、窒素化合物層の上層に設けられた、最表層をなす特定厚さのリチウム鉄複合酸化物層とを備えることで、金属溶湯に対する耐溶損性に優れたダイカスト用金型が提案されている。
上述した特許文献3には、鉄系の金型母材の上層に、窒素拡散層、窒素化合物層、及び特定の厚さのリチウム鉄複合酸化物層を形成させたダイカスト用金型が、金属溶湯に対して優れた耐溶損性を示すことが開示されている。一方、面圧の高い押出用金型や鍛造用金型、さらには一部のダイカスト用金型の寿命向上には、耐溶損性のほか、耐摩耗性も重要である。耐摩耗性は深い硬化層によって得られると考えられるが、従来の方法で深い硬化層を得るためには長時間の処理が必要となり、長時間処理によって表層の剥離等が引き起こされるという懸念が生じる。つまり、従来の方法では、最適な厚さの鉄系酸化物層及び窒素化合物層を有しながら、深い硬化層を有する組織は形成し難く、一部の金型への適用には限界があるとの考えもあった。
そこで、本発明は、耐摩耗性、及び金属溶湯に対する耐溶損性に優れた金型を提供しようとするものである。
本発明者らは、耐摩耗性や耐面圧性が高レベルで要求される上記金型についても高寿命化できる、金型表面の最適な組織を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、鉄系の金型母材と、前記金型母材の上層に設けられた窒素拡散層と、前記窒素拡散層の上層に設けられた窒素化合物層と、前記窒素化合物層の上層に設けられた、最表層をなす鉄系酸化物層と、を備え、前記窒素拡散層の厚さLNが100μm以上であるとともに前記窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSが900HV以上であり、かつ、前記鉄系酸化物層の厚さLOが1μm以上10μm未満である、金型が提供される。
本発明によれば、耐摩耗性、及び金属溶湯に対する耐溶損性に優れた金型を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明の一実施形態の金型は、鉄系の金型母材と、金型母材の上層に設けられた窒素拡散層と、窒素拡散層の上層に設けられた窒素化合物層と、窒素化合物層の上層に設けられた、最表層をなす鉄系酸化物層とを備える。窒素拡散層の厚さLNは100μm以上であるとともに窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSは900HV以上である。また、鉄系酸化物層の厚さLOは1μm以上10μm未満である。これらの構成によって、その金型は、耐摩耗性、及び金属溶湯に対する耐溶損性に優れる。
以下、図1を参照しながら、本実施形態の金型の構成及び製造方法等に関して詳述する。図1は、本実施形態の金型の構成を説明するための図であり、本実施形態の一例の金型1の断面を模式的に示した図である。金型1は、鉄系の金型母材2、窒素拡散層3、窒素化合物層4、及び最表層をなす鉄系酸化物層5を備える。
鉄系酸化物層5は、金型1の最表面をなす層であり、窒素化合物層4の上層に形成されている。鉄系酸化物層5は、少なくとも鉄元素(Fe)及び酸素元素(O)を含む酸化物層である。鉄系酸化物層5は、金型1を製造する上で好適に採用し得る後述の製造方法における過程で形成することができる。
鉄系酸化物層5の厚さLOは、1μm以上10μm未満である。この特定の厚さの鉄系酸化物層5が、特定の窒素拡散層3の上層に設けられた窒素化合物層4の上層に設けられていることにより、耐摩耗性及び耐溶損性を向上させることができる。耐溶損性の向上効果が十分に得られるように、鉄系酸化物層5の厚さLOを1μm以上とし、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上とする。一方、耐摩耗性の向上効果が十分に得られるように、鉄系酸化物層5の厚さLOを10μm未満とし、好ましくは9.9μm以下、より好ましくは9.5μm以下、さらに好ましくは9μm以下とする。
鉄系酸化物層5の厚さLOは、例えば、金型1の製造に好適に採用し得る窒化処理や酸化処理の処理温度及び処理時間を調整すること等によって決定することができる。また、鉄系酸化物層5の厚さLOは、金型1の側面又は断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察することにより測定することができ、3〜10か所程度の厚さの平均値をとることができる。この厚さLOの測定は、後述する他の層においても同様である。
鉄系酸化物層5は、酸化鉄層、及び鉄以外の他の金属元素を含む複合鉄酸化物層のいずれでもよく、好ましくは複合鉄酸化物層である。鉄系酸化物層5は、それを構成する元素として、鉄(Fe)及び酸素(O)を含むほか、金型母材2の組成元素、及び金型1を製造する上で好適に採用し得る後述の製造方法で使用し得る塩浴由来の元素を含んでいてもよい。金型母材2の組成元素としては、Feのほか、Si、V、Cr、Mn、Mo、Ni、W、及びS等を挙げることができる。塩浴由来の好適な元素としては、例えばLi等を挙げることができる。鉄系酸化物層5は、それを構成する元素として、Fe及びOを含み、かつ、Si、V、Cr、Mn、Mo、Ni、W、及びS、並びにLiからなる群より選ばれる1又は2以上の元素を含むことが好ましい。
鉄系酸化物層5としては、他の金属元素としてリチウムを含む、リチウム鉄複合酸化物層が好ましい。リチウム鉄複合酸化物は、(Li,Fe)O、Li5Fe5O8、Li2Fe3O4、Li2Fe3O5、LiFe5O8、又はLiFeO2の結晶構造を有する複合酸化物のいずれか又はその混合物として形成されていることがより好ましい。リチウム鉄複合酸化物層は、例えば、Li+を添加した溶融塩浴を用いた塩浴軟窒化処理により、形成され得る。
窒素化合物層4は、鉄系酸化物層5の下層に形成されており、窒素拡散層3の上層に形成されている。窒素化合物層4は、少なくとも窒素元素(N)を含む化合物層である。窒素化合物層4は、金型1を製造する上で好適に採用し得る後述の製造方法における過程で形成することができる。
窒素化合物層4の厚さLCは、金型1の耐摩耗性及び耐溶損性を向上させる観点から、1μm以上25μm以下であることが好ましく、2μm以上20μm以下であることがより好ましく、5μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。
また、前述の鉄系酸化物層5と窒素化合物層4の厚さの関係に関し、窒素化合物層4の厚さLCに対する鉄系酸化物層5の厚さLOの比(LO/LC)は、0.1以上5.0以下であることが好ましい。これにより、金型1の耐摩耗性及び耐溶損性の向上のほか、表面(鉄系酸化物層5の表面)の光沢ムラを抑えやすくすることが可能となる。この観点から、LO/LCは、0.2以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5以上であり、3.0以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1.5以下である。
窒素化合物層4は、それを構成する元素として、窒素(N)を含むほか、炭素(C)、金型母材2の組成元素、及び金型1を製造する上で好適に採用し得る後述の製造方法で使用し得る塩浴由来の元素を含んでいてもよい。金型母材2の組成元素としては、前述の通り、Fe、Si、V、Cr、Mn、Mo、Ni、W、及びS等を挙げることができる。塩浴由来の好適な元素としては、例えばLi等を挙げることができる。窒素化合物層4は、それを構成する元素として、N及びCを含み、かつ、Fe、Si、V、Cr、Mn、Mo、Ni、W、及びS、並びにLiからなる群より選ばれる1又は2以上の元素を含むことが好ましい。
窒素拡散層3は、窒素化合物層4の下層に形成され、金型母材2の上層に形成されている。窒素拡散層3は、金型1を製造する上で好適に採用し得る後述の製造方法における過程で形成することができ、少なくとも窒素元素が拡散することにより形成される。窒素拡散層3は、窒素に加えて、炭素及び酸素のうちのいずれか一方又は両方を拡散元素として含むように形成されていてもよい。窒素拡散層3は、それを構成する元素として、窒素(N)及び炭素(C)を含み、かつ、金型母材2の組成元素(Fe、Si、V、Cr、Mn、Mo、Ni、W、及びS等)のうちの1又は2以上の元素を含むことが好ましい。
窒素拡散層3の厚さLNは、耐摩耗性に優れた金型とするために、100μm以上であることを要する。金型1の耐摩耗性をさらに向上させる観点から、窒素拡散層3の厚さLNは、110μm以上であることが好ましく、130μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。窒素拡散層3の厚さLNの上限は、特に限定されないが、金型1の生産性の観点から、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましい。
また、窒素拡散層3の最大ビッカース硬さHSは、耐摩耗性に優れた金型とするために、900HV以上であることを要する。窒素拡散層3のビッカース硬さは、窒素拡散層3の厚さ(深さ)方向に応じて異なり、窒素拡散層3の厚さ(深さ)方向において、窒素化合物層4に近いほど高く、金型母材2に近いほど低い(後述の図2参照)。このことから、窒素拡散層3における窒素化合物層4との界面近傍(当該界面から窒素拡散層3における深さ10μmまでの領域内)でのビッカース硬さを、窒素拡散層3のビッカース硬さの最大とみなして、最大ビッカース硬さHSという。また、最大ビッカース硬さの位置を窒素拡散層3と窒素化合物層4との界面から窒素拡散層3における深さ10μmまでの領域内としたのは、当該界面近傍のビッカース硬さを測定可能な位置を想定したことによるものである。
金型1の耐摩耗性をさらに向上させる観点から、窒素拡散層3の最大ビッカース硬さHSは、920HV以上であることが好ましく、950HV以上であることがより好ましく、980HV以上であることがさらに好ましい。窒素拡散層3の最大ビッカース硬さHSの上限は、特に限定されず、例えば1500HV以下とすることができる。また、窒素拡散層3の最大ビッカース硬さHSは、金型母材2の芯部のビッカース硬さHBよりも、300HV以上高いこと(HS−HB≧300)が好ましく、400HV以上高いこと(HS−HB≧400)がより好ましく、420HV以上高いこと(HS−HB≧420)がさらに好ましい。なお、窒素拡散層3のビッカース硬さは、JIS Z 2244:2009に記載の「マイクロビッカース硬さ試験」に準じた方法、又はJIS G 0562:1993に記載の「拡散層深さ測定方法」に準じた方法で、マイクロビッカース試験機によって測定される値である。
前述の通り、窒素拡散層3のビッカース硬さは、窒素拡散層3の厚さ(深さ)方向に依存する。図2は、金型1(最表層をなす鉄系酸化物層5)の表面からの厚さ(深さ)方向の距離(図2の横軸)と、窒素拡散層3から金型母材2にかけてのビッカース硬さ(図2の縦軸)との関係の一例を模式的に表した図である。図2に示すように、窒素拡散層3のビッカース硬さは、窒素拡散層3における窒素化合物層4側に近づくほど高い。一方、窒素拡散層3のビッカース硬さは、窒素拡散層3における金型母材2側に近づくほど低く、金型母材2のビッカース硬さHBと同等程度となる。
金型1の耐摩耗性及び耐溶損性をより向上させる観点から、窒素拡散層3における窒素化合物層4との界面側において、金型1の表面からの厚さ(深さ)方向の距離と、窒素拡散層3のビッカース硬さとの関係は、以下に述べるような関係にあるのが良い。まず、金型1の最表層(鉄系酸化物層5)の表面から窒素拡散層3における最大ビッカース硬さHSを示す位置までの深さをDS(μm)とする。前述の通り、窒素拡散層3の最大ビッカース硬さHSは、窒素拡散層3における窒素化合物層4との界面から深さ10μmまでの領域内でのビッカース硬さであることから、上記深さDS(μm)は、LO+LC(μm)≦DS≦LO+LC+10(μm)である。また、金型1の最表層(鉄系酸化物層5)の表面から窒素拡散層3における上記深さDS+30μmまでの深さをDX(μm)とし(LO+LC+30(μm)≦DX≦LO+LC+40(μm))、窒素拡散層3における上記深さDXでのビッカース硬さをHX(HV)とする。この場合に、下記式(1)を満たすことが好ましい(図2参照)。
0<(HS−HX)/(DX−DS)<4 ・・・(1)
0<(HS−HX)/(DX−DS)<4 ・・・(1)
上記の「(HS−HX)/(DX−DS)」は、窒素拡散層3における窒素化合物層4との界面から深さ30〜40μmの位置までの領域の窒素拡散層3の深さとビッカース硬さとの関係を表し、図2中の当該領域における曲線の傾きを表す。(HS−HX)/(DX−DS)が上記式(1)で表される特定の範囲内であることは、窒素拡散層3における窒素化合物層4との界面から深さ30μmの位置までのビッカース硬さの変化(低下)が緩やかであることを表す。(HS−HX)/(DX−DS)の値(HV/μm)は、3以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
また、窒素拡散層3の最大ビッカース硬さHSと金型母材2のビッカース硬さHBとの差(HS−HB)と、窒素拡散層3の厚さLN、窒素化合物層4の厚さLC、及び鉄系酸化物層5の厚さLOの和(LN+LC+LO)とは、下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
0.3<(HS−HB)/(LN+LC+LO)<4 ・・・(2)
0.3<(HS−HB)/(LN+LC+LO)<4 ・・・(2)
(HS−HB)/(LN+LC+LO)の値(HV/μm)が、上記式(2)で表される特定の範囲内であることにより、金型1の耐摩耗性及び耐溶損性をより高めることが可能となる。この観点から、(HS−HB)/(LN+LC+LO)の値(HV/μm)は、0.5以上であってよく、3以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
鉄系の金型母材2は、金型1の基材である。金型母材2の材質は、鉄系材料、具体的には鋼材である。好適な金型母材2の材質としては、JIS規格(JIS G4404:2006)における熱間金型用鋼を挙げることができる。金型母材2の材質として、より好適にはJIS規格のSKD4材、SKD5材、SKD6材、SKD61材、SKD62材、SKD7材、SKD8材、SKT3材、SKT4材、及びSKT6材、並びにそれらに相当する鋼材等を挙げることができる。したがって、金型1は、温熱間成形用(例えば温熱間鍛造用や温熱間押出用等)又は鋳造用(例えばダイカスト用等)であることが好ましく、温熱間鍛造用又はダイカスト用であることがより好ましい。
金型1の製造方法は特に限定されない。金型母材2に対して、例えば、酸化を伴う塩浴軟窒化処理;酸化を伴うガス窒化処理;並びに窒化処理又は軟窒化処理と、酸化処理、又は酸化を伴う窒化処理若しくは軟窒化処理とを組み合わせた処理;等のいずれかの処理を行うことによって、金型1を製造することができる。これらの製造方法のなかでも、窒化処理又は軟窒化処理と、酸化処理又は酸化を伴う窒化処理若しくは軟窒化処理とを組み合わせた処理が好ましく、次に述べる製造方法がより好ましい。
本発明の一実施形態の金型の製造方法は、鉄系の金型母材にガス又は溶融塩浴を用いた窒化処理又は軟窒化処理を行う第1の工程と、第1の工程の後、酸化処理、又は酸化を伴う窒化処理若しくは軟窒化処理を行う第2の工程とを含む。この製造方法では、第1の工程及び第2の工程により、金型母材2に、厚さLNが100μm以上であるとともに最大ビッカース硬さHSが900HV以上である窒素拡散層3、窒素化合物層4、及び厚さLOが1μm以上10μm未満である鉄系酸化物層5をこの順に形成する。
上記第1の工程及び第2の工程を含む金型1の製造方法によれば、金型母材2の表面を第1の工程及び第2の工程の二段階で窒化処理又は軟窒化処理(以下、軟窒化処理を含めて単に「窒化処理」と記載することがある。)を行うことができる。そのため、窒化処理の温度及び時間等の条件の精密な制御が容易化される。すなわち、上記第1の工程及び第2の工程によって、金型母材2に、厚さLNが100μm以上であるとともに最大ビッカース硬さHSが900HV以上である窒素拡散層3、窒素化合物層4、及び厚さLOが1μm以上10μm未満である鉄系酸化物層5を形成し易い。
第1の工程における窒化処理に使用し得るガスとしては、従来からガス窒化処理に用いられているガスをいずれも用いることができる。好適なガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、窒素ガス、及びそれらの混合ガス、並びにNH3ガス、窒素ガス、水素ガス、及び二酸化炭素ガスの混合ガス等を挙げることができる。ガスを用いた窒化処理における処理温度としては、430〜590℃が好ましく、480〜580℃がより好ましい。また、その処理時間としては、60分以上が好ましく、600〜6000分がより好ましい。
第1の工程における窒化処理に使用し得る溶融塩浴としては、従来から塩浴軟窒化処理に用いられている溶融塩浴をいずれも用いることができる。塩浴軟窒化処理としては、例えば、特開2002−226963号公報、及び特開2004−91906号公報に開示された塩浴軟窒化処理に準じた方法を採ることができる。好適な溶融塩浴としては、シアン酸塩や炭酸塩を含む溶融塩浴を挙げることができる。より好適には、カチオン成分としてLi+、Na+、及びK+のうちの1種以上を含むとともに、アニオン成分としてCNO-、及びCO3 2-のうちの1種以上を含む溶融塩浴を挙げることができる。溶融塩浴を用いた窒化処理における処理温度としては、480〜600℃が好ましく、530〜580℃がより好ましい。また、その処理時間としては、30〜600分が好ましく、60〜180分がより好ましい。
第2の工程における酸化処理としては、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム等の硝酸塩や、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等の炭酸塩の溶融塩浴に、第1の工程による窒化処理済みの金型母材2を接触させる処理が好ましい。この処理温度としては、280〜600℃がより好ましく、350〜500℃がさらに好ましい。処理時間としては、10〜180分が好ましく、20〜120分がより好ましい。
第2の工程における酸化処理に窒化ガスを使用して、酸化を伴うガス窒化処理を行うこともできる。その処理に使用し得るガスとしては、従来からガス窒化処理に用いられているガスをいずれも用いることができる。好適なガスとしては、例えば、水蒸気、酸素ガス、窒素ガス、水素ガス、アンモニアガス、及びそれらの混合ガス等を挙げることができる。ガスを用いた酸化処理における処理温度としては、350〜600℃が好ましく、500〜560℃がより好ましい。また、その処理時間としては、30〜600分が好ましく、30〜120分がより好ましい。
また、第2の工程における酸化を伴う窒化処理(軟窒化処理)としては、シアン酸塩、炭酸塩、及びリチウム塩を含有する溶融塩浴に、第1の工程による窒化処理済みの金型母材2を接触させる処理(軟窒化処理)が好ましい。この軟窒化処理の処理温度及び処理時間は、前述の第1の工程で採り得る窒化処理(軟窒化処理)で述べた処理温度及び処理時間の範囲内とすることができる。本実施形態では、金型母材2に、前述のガスを用いた窒化処理を行う第1の工程と、その第1の工程の後、酸化を伴う軟窒化処理を行う第2の工程とを含むことがより好ましい。
以上詳述した本実施形態の金型1は、金型母材2に、厚さ100μm以上かつ最大ビッカース硬さ900HV以上の窒素拡散層3と、窒素化合物層4と、厚さ1μm以上10μ未満の鉄系酸化物層5をこの順に備えるため、耐摩耗性及び耐溶損性に優れる。したがって、金型1は、高寿命であり、その結果、金型1を使用して製造される金属製品の製造コストの減少に寄与することができる。
なお、本発明の一実施形態の金型は、以下の構成を採ることが可能である。
[1]鉄系の金型母材と、前記金型母材の上層に設けられた窒素拡散層と、前記窒素拡散層の上層に設けられた窒素化合物層と、前記窒素化合物層の上層に設けられた、最表層をなす鉄系酸化物層と、を備え、前記窒素拡散層の厚さLNが100μm以上であるとともに前記窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSが900HV以上であり、かつ、前記鉄系酸化物層の厚さLOが1μm以上10μm未満である、金型。
[2]前記窒素化合物層の厚さLCが1μm以上25μm以下である上記[1]に記載の金型。
[3]前記窒素化合物層の厚さLCに対する前記鉄系酸化物層の厚さLOの比(LO/LC)が、0.1以上5.0以下である上記[1]又は[2]に記載の金型。
[4]前記最表層の表面から前記窒素拡散層における前記最大ビッカース硬さHSを示す位置までの深さをDS(μm)とし、前記最表層の表面から前記窒素拡散層における前記DS+30μmまでの深さをDX(μm)とし、前記窒素拡散層における前記DXでのビッカース硬さをHX(HV)とした場合、下記式(1)を満たす上記[1]〜[3]のいずれかに記載の金型。
0<(HS−HX)/(DX−DS)<4 ・・・(1)
[5]前記窒素拡散層の前記最大ビッカース硬さHSと前記金型母材のビッカース硬さHBとの差(HS−HB)と、前記窒素拡散層の厚さLN、前記窒素化合物層の厚さLC、及び前記鉄系酸化物層の厚さLOの和(LN+LC+LO)とが、下記式(2)の関係を満たす上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金型。
0.3<(HS−HB)/(LN+LC+LO)<4 ・・・(2)
[6]温熱間成形用又は鋳造用である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の金型。
[7]鉄系の金型母材にガス又は溶融塩浴を用いた窒化処理又は軟窒化処理を行う第1の工程と、前記第1の工程の後、酸化処理、又は酸化を伴う窒化処理若しくは軟窒化処理を行う第2の工程と、を含み、前記第1の工程及び前記第2の工程により、前記金型母材に、厚さLNが100μm以上であるとともに最大ビッカース硬さHSが900HV以上である窒素拡散層、窒素化合物層、及び厚さLOが1μm以上10μm未満である鉄系酸化物層をこの順に形成する金型の製造方法。
[1]鉄系の金型母材と、前記金型母材の上層に設けられた窒素拡散層と、前記窒素拡散層の上層に設けられた窒素化合物層と、前記窒素化合物層の上層に設けられた、最表層をなす鉄系酸化物層と、を備え、前記窒素拡散層の厚さLNが100μm以上であるとともに前記窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSが900HV以上であり、かつ、前記鉄系酸化物層の厚さLOが1μm以上10μm未満である、金型。
[2]前記窒素化合物層の厚さLCが1μm以上25μm以下である上記[1]に記載の金型。
[3]前記窒素化合物層の厚さLCに対する前記鉄系酸化物層の厚さLOの比(LO/LC)が、0.1以上5.0以下である上記[1]又は[2]に記載の金型。
[4]前記最表層の表面から前記窒素拡散層における前記最大ビッカース硬さHSを示す位置までの深さをDS(μm)とし、前記最表層の表面から前記窒素拡散層における前記DS+30μmまでの深さをDX(μm)とし、前記窒素拡散層における前記DXでのビッカース硬さをHX(HV)とした場合、下記式(1)を満たす上記[1]〜[3]のいずれかに記載の金型。
0<(HS−HX)/(DX−DS)<4 ・・・(1)
[5]前記窒素拡散層の前記最大ビッカース硬さHSと前記金型母材のビッカース硬さHBとの差(HS−HB)と、前記窒素拡散層の厚さLN、前記窒素化合物層の厚さLC、及び前記鉄系酸化物層の厚さLOの和(LN+LC+LO)とが、下記式(2)の関係を満たす上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金型。
0.3<(HS−HB)/(LN+LC+LO)<4 ・・・(2)
[6]温熱間成形用又は鋳造用である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の金型。
[7]鉄系の金型母材にガス又は溶融塩浴を用いた窒化処理又は軟窒化処理を行う第1の工程と、前記第1の工程の後、酸化処理、又は酸化を伴う窒化処理若しくは軟窒化処理を行う第2の工程と、を含み、前記第1の工程及び前記第2の工程により、前記金型母材に、厚さLNが100μm以上であるとともに最大ビッカース硬さHSが900HV以上である窒素拡散層、窒素化合物層、及び厚さLOが1μm以上10μm未満である鉄系酸化物層をこの順に形成する金型の製造方法。
以下、本発明による効果を試験例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。なお、試験例中の「%」は、特に断らない限り質量基準(質量%)である。
<試験例1〜13>
金型母材を想定した鋼材として、SKD61相当鋼(C:0.37%、Si:0.97%、Mn:0.43%、Cr:5.30%、Mo:1.22%、及びV:0.81%を含み、残部が実質的に鉄からなる鋼材)に、調質処理(焼入れ及び焼戻し)を施し、ビッカース硬さ(HB)を480HVとした鋼材を用いた。この鋼材を、直径16mm及び高さ100mmに加工した円柱状の母材試験片Aを溶損試験に用い、直径32mm及び高さ3mmに加工した円板状の母材試験片Bを摩耗試験等に用いた。
金型母材を想定した鋼材として、SKD61相当鋼(C:0.37%、Si:0.97%、Mn:0.43%、Cr:5.30%、Mo:1.22%、及びV:0.81%を含み、残部が実質的に鉄からなる鋼材)に、調質処理(焼入れ及び焼戻し)を施し、ビッカース硬さ(HB)を480HVとした鋼材を用いた。この鋼材を、直径16mm及び高さ100mmに加工した円柱状の母材試験片Aを溶損試験に用い、直径32mm及び高さ3mmに加工した円板状の母材試験片Bを摩耗試験等に用いた。
試験例1〜13では、それぞれ、上記母材試験片A及びBについて、以下の表1に示す窒化処理等を施し、試験片1〜13(試験片A−1〜13及び試験片B−1〜13)を作製した。表1中の「ガス窒化処理」は、上記母材試験片をアンモニアガス、窒素ガス及び水素ガスの混合ガス雰囲気中で加熱したことにより行った窒化処理である。「塩浴軟窒化処理」は、シアン酸塩、炭酸塩、及びリチウム塩を含有する溶融塩浴に上記母材試験片を浸漬させたことにより行った軟窒化処理である。「Li無添加塩浴軟窒化処理」は、リチウム塩を含有せず、シアン酸塩及び炭酸塩を含有する溶融塩浴に上記母材試験片を浸漬させたことにより行った軟窒化処理である。「後酸化処理」は、窒化処理後に、ナトリウム及びカリウム等の硝酸塩並びにナトリウム及びカリウム等のアルカリ水酸化物の溶融塩浴に窒化処理済みの試験片を浸漬させたことにより行った酸化処理である。また、試験例8〜11では、第1の工程として、表1に記載の条件の「ガス窒化処理」の後に、第2の工程として、同表に記載の条件の「塩浴軟窒化処理」を行った。
(表面処理層の種類及び厚さ(深さ))
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、試験片の断面を、X線回折装置(XRD)で測定及び分析した。そのXRD測定により、各試験片について、窒化処理等によって形成された表面処理層の種類を確認した。また、光学顕微鏡観察により、各試験片について、鉄系酸化物層の厚さ(深さ)LO(μm)、窒素化合物層の厚さ(深さ)LC(μm)、及び窒素拡散層の厚さ(深さ)LN(μm)を測定した。各層の厚さの測定は、各層における無作為に選択した3箇所について行い、それらの平均値をとった。それらの結果とLO/LCを表2に示す。なお、表2において、厚さ(深さ)が「0.0μm」である箇所は、それに該当する層が確認されなかったことを表す。
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、試験片の断面を、X線回折装置(XRD)で測定及び分析した。そのXRD測定により、各試験片について、窒化処理等によって形成された表面処理層の種類を確認した。また、光学顕微鏡観察により、各試験片について、鉄系酸化物層の厚さ(深さ)LO(μm)、窒素化合物層の厚さ(深さ)LC(μm)、及び窒素拡散層の厚さ(深さ)LN(μm)を測定した。各層の厚さの測定は、各層における無作為に選択した3箇所について行い、それらの平均値をとった。それらの結果とLO/LCを表2に示す。なお、表2において、厚さ(深さ)が「0.0μm」である箇所は、それに該当する層が確認されなかったことを表す。
(窒素拡散層の最大ビッカース硬さ)
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、試験片を切断後、試験片の断面を作製し、その断面において、窒素拡散層の最大ビッカース硬さHS(HV)と、窒素拡散層における深さDX(μm)でのビッカース硬さHX(HV)を測定した。窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSは、窒素拡散層の深さ方向において、窒素拡散層の最表層側から深さ10μmまでの領域内(試験片の最表層の表面からの深さDS(LO+LC(μm)≦DS≦LO+LC+10(μm))の位置)で測定した。また、ビッカース硬さHXは、窒素拡散層の深さ方向において、最大ビッカース硬さHSを測定した位置から深さ30μmの位置(試験片の最表層の表面からの深さDX(DX=DS+30μm)での位置)で測定した。ビッカース硬さの測定は、JIS Z 2244:2009に記載の「マイクロビッカース硬さ試験」に準じた方法により、ビッカース硬さ試験機(ミツトヨ社製、商品名「マイクロビッカース硬さ試験機 HM−103」)を用いて、試験力0.980Nの条件で行った。最大ビッカース硬さHS(HV)の測定値と、「(HS−HX)/(DX−DS)」の値、及び「(HS−HB)/(LN+LC+LO)」の値を表2に示す。
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、試験片を切断後、試験片の断面を作製し、その断面において、窒素拡散層の最大ビッカース硬さHS(HV)と、窒素拡散層における深さDX(μm)でのビッカース硬さHX(HV)を測定した。窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSは、窒素拡散層の深さ方向において、窒素拡散層の最表層側から深さ10μmまでの領域内(試験片の最表層の表面からの深さDS(LO+LC(μm)≦DS≦LO+LC+10(μm))の位置)で測定した。また、ビッカース硬さHXは、窒素拡散層の深さ方向において、最大ビッカース硬さHSを測定した位置から深さ30μmの位置(試験片の最表層の表面からの深さDX(DX=DS+30μm)での位置)で測定した。ビッカース硬さの測定は、JIS Z 2244:2009に記載の「マイクロビッカース硬さ試験」に準じた方法により、ビッカース硬さ試験機(ミツトヨ社製、商品名「マイクロビッカース硬さ試験機 HM−103」)を用いて、試験力0.980Nの条件で行った。最大ビッカース硬さHS(HV)の測定値と、「(HS−HX)/(DX−DS)」の値、及び「(HS−HB)/(LN+LC+LO)」の値を表2に示す。
(表面ムラ)
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、最表層を目視で確認することにより、表面光沢ムラ(表層の剥離や微細組織の差異)の有無を確認し、ムラが確認されなかったものを良好(○)、ムラが確認されたものを不良(×)と評価した。その結果を表2に示す。
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、最表層を目視で確認することにより、表面光沢ムラ(表層の剥離や微細組織の差異)の有無を確認し、ムラが確認されなかったものを良好(○)、ムラが確認されたものを不良(×)と評価した。その結果を表2に示す。
(溶損率)
作製した試験片A−1〜13のそれぞれについて、アルミニウム合金溶湯に対する耐溶損性を評価する試験を行った。この試験では、図3に示すような試験装置100を用いて、鉄製ポット101に収容した内径約90mm及び深さ約200mmのアルミナ製るつぼ102中で、アルミニウム合金としてAl−Si−Cu系合金である、JIS規格ADC12(Si:11.4%、Cu:1.9%、残部:Al)を680℃に加熱溶解させ、その溶湯103中に、2本セットした各試験片104を約30mm浸漬させた状態で約200rpmで回転させながら120分間保持した。各試験片の溶損量(溶損率)は、試験片の試験前後の質量を測定し、式:(W0−W1)/W0×100(%)(W0:試験前の試験片の質量、W1:試験後の試験片の質量)から算出された値とした。この結果を表2に示す。なお、窒化処理等を何ら施していない上記母材試験片Aについての溶損率を同様に測定したところ、母材試験片Aの溶損率は、11.667%であった。
作製した試験片A−1〜13のそれぞれについて、アルミニウム合金溶湯に対する耐溶損性を評価する試験を行った。この試験では、図3に示すような試験装置100を用いて、鉄製ポット101に収容した内径約90mm及び深さ約200mmのアルミナ製るつぼ102中で、アルミニウム合金としてAl−Si−Cu系合金である、JIS規格ADC12(Si:11.4%、Cu:1.9%、残部:Al)を680℃に加熱溶解させ、その溶湯103中に、2本セットした各試験片104を約30mm浸漬させた状態で約200rpmで回転させながら120分間保持した。各試験片の溶損量(溶損率)は、試験片の試験前後の質量を測定し、式:(W0−W1)/W0×100(%)(W0:試験前の試験片の質量、W1:試験後の試験片の質量)から算出された値とした。この結果を表2に示す。なお、窒化処理等を何ら施していない上記母材試験片Aについての溶損率を同様に測定したところ、母材試験片Aの溶損率は、11.667%であった。
(耐摩耗性)
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、耐摩耗性を評価する試験を行った。具体的には、ボールオンディスク式摩擦摩耗試験機(レスカ社製、型式「FPR−2100」)を用いて、乾式で、相手材:アルミボール(A1050)、荷重:50g、速度:0.1m/s、及び試験時間:1時間の条件で試験を行った後、ディスク側(各試験片)の摩耗量(m3)を測定した。この結果を表2に示す。
作製した試験片B−1〜13のそれぞれについて、耐摩耗性を評価する試験を行った。具体的には、ボールオンディスク式摩擦摩耗試験機(レスカ社製、型式「FPR−2100」)を用いて、乾式で、相手材:アルミボール(A1050)、荷重:50g、速度:0.1m/s、及び試験時間:1時間の条件で試験を行った後、ディスク側(各試験片)の摩耗量(m3)を測定した。この結果を表2に示す。
表2より、試験例6〜10で得られた試験片6〜10(特に試験例7〜10で得られた試験片7〜10)は、それら以外の他の試験例で得られた試験片に比べて、溶損率が低く、摩耗量が少ないことが確認された。よって、母材試験片に、厚さLNが100μm以上で最大ビッカース硬さHSが900HV以上である窒素拡散層、窒素化合物層、及び厚さLOが1μm以上10μm未満の鉄系酸化物層を設けることで、耐摩耗性及び耐溶損性を向上できることが認められた。したがって、このような構成を採ることによって、耐摩耗性及び耐溶損性に優れた金型を提供し得ることが認められた。
1:金型
2:金型母材
3:窒素拡散層
4:窒素化合物層
5:鉄系酸化物層
2:金型母材
3:窒素拡散層
4:窒素化合物層
5:鉄系酸化物層
Claims (7)
- 鉄系の金型母材と、
前記金型母材の上層に設けられた窒素拡散層と、
前記窒素拡散層の上層に設けられた窒素化合物層と、
前記窒素化合物層の上層に設けられた、最表層をなす鉄系酸化物層と、を備え、
前記窒素拡散層の厚さLNが100μm以上であるとともに前記窒素拡散層の最大ビッカース硬さHSが900HV以上であり、かつ、前記鉄系酸化物層の厚さLOが1μm以上10μm未満である、金型。 - 前記窒素化合物層の厚さLCが1μm以上25μm以下である請求項1に記載の金型。
- 前記窒素化合物層の厚さLCに対する前記鉄系酸化物層の厚さLOの比(LO/LC)が、0.1以上5.0以下である請求項1又は2に記載の金型。
- 前記最表層の表面から前記窒素拡散層における前記最大ビッカース硬さHSを示す位置までの深さをDS(μm)とし、
前記最表層の表面から前記窒素拡散層における前記DS+30μmまでの深さをDX(μm)とし、
前記窒素拡散層における前記DXでのビッカース硬さをHX(HV)とした場合、
下記式(1)を満たす請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型。
0<(HS−HX)/(DX−DS)<4 ・・・(1) - 前記窒素拡散層の前記最大ビッカース硬さHSと前記金型母材のビッカース硬さHBとの差(HS−HB)と、前記窒素拡散層の厚さLN、前記窒素化合物層の厚さLC、及び前記鉄系酸化物層の厚さLOの和(LN+LC+LO)とが、下記式(2)の関係を満たす請求項1〜4のいずれか1項に記載の金型。
0.3<(HS−HB)/(LN+LC+LO)<4 ・・・(2) - 温熱間成形用又は鋳造用である請求項1〜5のいずれか1項に記載の金型。
- 鉄系の金型母材にガス又は溶融塩浴を用いた窒化処理又は軟窒化処理を行う第1の工程と、
前記第1の工程の後、酸化処理、又は酸化を伴う窒化処理若しくは軟窒化処理を行う第2の工程と、を含み、
前記第1の工程及び前記第2の工程により、前記金型母材に、厚さLNが100μm以上であるとともに最大ビッカース硬さHSが900HV以上である窒素拡散層、窒素化合物層、及び厚さLOが1μm以上10μm未満である鉄系酸化物層をこの順に形成する金型の製造方法。
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JP2018121448A JP2020001056A (ja) | 2018-06-27 | 2018-06-27 | 金型及び金型の製造方法 |
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WO2013150855A1 (ja) * | 2012-04-03 | 2013-10-10 | 日立金属工具鋼株式会社 | 鋳造用部材及びその製造方法、ダイカスト用スリーブ、並びにダイカスト装置 |
-
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- 2018-06-27 JP JP2018121448A patent/JP2020001056A/ja active Pending
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