JP5776790B2 - 鋳造用部材、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金型等の鋳造用部材、及びその製造方法に関する。
従来、金型等の鋳造用部材においては、表面の一部(例えば、成形面)に、ナノカーボン類から成る炭素膜等の皮膜を形成し、摩擦抵抗の低減等を図る技術が広く知られている。
更に、鋳造用部材の表面における、皮膜を形成する部分をショットブラスト等によって凹凸面とし、当該部分の表面積を大きくすることによって、当該部分から皮膜が剥離することを抑制する技術が公知となっている(特許文献1参照)。
しかしながら、ショットブラスト等による鋳造用部材の表面加工では、加工部分の表面積の増加が充分とはいえず、皮膜の剥離強度の更なる向上が望まれていた。
更に、上記のような鋳造用部材を製造する際に、ショットブラスト等の表面加工を別途行う必要があり、製造コストが増加する等の問題が生じていた。
特開2011−156549号公報
本発明は、高い剥離強度を有する皮膜が形成された、低価な鋳造用部材、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明に係る鋳造用部材は、鋳造に用いられる鋳造用部材であって、粉末溶融積層により作製され、逆勾配形状を成す多数の微小な凹凸から構成される表面を有する母材と、前記母材の表面に形成される皮膜と、を具備する。
本発明に係る鋳造用部材において、前記母材は、金型であり、前記金型の成形面上に前記皮膜が形成されることが好ましい。
本発明に係る鋳造用部材の製造方法は、鋳造に用いられる鋳造用部材の製造方法であって、逆勾配形状を成す多数の微小な凹凸から構成される表面を有する母材を粉末溶融積層によって作製する造形工程と、前記造形工程にて作製された母材の表面に皮膜を形成する皮膜形成工程と、を具備する。
本発明に係る鋳造用部材の製造方法において、前記皮膜は、少なくとも一種のナノカーボン類を含む炭素膜であり、前記皮膜形成工程にて、前記炭素膜の原料となる反応ガスを供給しつつ、前記母材を加熱することで、当該母材の表面に前記炭素膜を形成することが好ましい。
本発明に係る鋳造用部材の製造方法において、前記皮膜形成工程にて前記母材を加熱する際の温度及び時間を、前記母材を硬化させるための時効処理を行う際の温度及び時間に設定することが好ましい。
本発明によれば、低価で皮膜の剥離を抑制できる。
本発明に係る表面処理金型を示す図。 本発明に係る表面処理金型の製造工程を示す図。 皮膜形成工程を示すタイムチャート。 従来の金型に対する時効処理を示すタイムチャート。 従来の金型の成形面に炭素膜を形成する工程を示すタイムチャート。
以下では、図1を参照して、本発明に係る鋳造用部材の一実施形態である表面処理金型1について説明する。
図1に示すように、表面処理金型1は、母材としての金型10と、金型10の成形面に形成された炭素膜20とを具備する。
金型10は、ダイカスト鋳造等に用いられる金型であり、その一面(図1における上面)が成形面として形成されている。金型10は、粉末溶融積層によって作製されており、その表面は、多数の微小な凹凸により、粗い表面性状となっている。
ここで、粉末溶融積層とは、所定の金属粉末(例えば、マルエージング鋼の粉末)から成る層を積層しつつ、各層の所定部分をレーザにより溶融させることで、所望の形状の製品を造形する技術であり、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)における一手法として知られている。
粉末溶融積層においては、金属粉末が溶融されて凝固するため、金型10の表面に多数の微小な凹凸が形成され、金型10の表面が粗い表面性状となるのである。
粉末溶融積層によって作製された金型10の表面に形成された多数の微小な凹凸は、多数の突起部11・11・・・から構成されている。
なお、以下では、説明の便宜上、金型10の表面の一部を成す、金型10の成形面、における多数の突起部11・11・・・のみについて説明する。
突起部11は、金型10の成形面から外方(図1における上側)に突出し、逆勾配形状(所謂、アンダーカット)を有している。詳細には、突起部11は、その基端部(図1における下端部)から突出端部(図1における上端部)に向かうに伴い、幅寸法(図1における左右方向の長さ)が徐々に大きくなるように形成されている。換言すれば、隣接する突起部11・11間の距離が、金型10の外側(図1における上側)に向かうに伴って、徐々に小さくなっている。
このように、金型10の成形面は、多数の突起部11・11・・・から構成された凹凸面として形成されている。つまり、金型10の成形面は、逆勾配形状(所謂、アンダーカット)を成す、多数の微小な凹凸から構成されているのである。
炭素膜20は、金型10の成形面における離型抵抗の低減、及び溶損の防止等を実現するための緻密な皮膜である。本実施形態における炭素膜20は、少なくとも一種のナノカーボン類を含む炭素膜である。
ここで、本発明におけるナノカーボン類とは、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、及びカーボンナノフィラメント等の微細な繊維状のナノカーボン類である。
例えば、炭素膜20を、金型10の成形面上に形成される多数のカーボンナノファイバーから構成すること、又は金型10の成形面上に形成される多数のカーボンナノチューブから構成すること等が可能である。更に、カーボンナノファイバー等の繊維状のナノカーボン類に、多数の炭素原子から構成される略球状のフラーレンを塗布することも可能である。
炭素膜20は、金型10の成形面上において、多数の突起部11・11・・・を覆うように形成され、かつ、隣接する突起部11・11間の空隙を埋めるように形成されている。
そのため、多数の突起部11・11・・・と、炭素膜20との間にアンカー効果が生じる。
詳細には、多数の突起部11・11・・・が金型10の成形面から上方に突出しているため、金型10の成形面に対して平行となる方向(図1における左右方向)に沿った、炭素膜20の移動が多数の突起部11・11・・・によって規制される。更に、突起部11が逆勾配形状(所謂、アンダーカット)を有するため、金型10の成形面に対して直交する方向(図1における上下方向)に沿った、炭素膜20の移動が多数の突起部11・11・・・によって規制されることとなる。
したがって、多数の突起部11・11・・・と、炭素膜20との間に生じるアンカー効果によって、炭素膜20が金型10の成形面から剥離することを抑制することができる。
以上のように、表面処理金型1においては、金型10の成形面が、逆勾配形状(所謂、アンダーカット)を有する多数の突起部11・11・・・から構成された凹凸面として形成され、当該成形面上に炭素膜20が形成されている。
これにより、金型10の成形面における表面積を、従来の金型の成形面(ショットブラストによって加工された成型面等)における表面積よりも大きくすることができ、金型10の成形面に、より多くのナノカーボン類を生成させることができる。
したがって、金型10の成形面に対する炭素膜20の結合を強固なものとすることができ、炭素膜20が金型10の成形面から剥離することを抑制することができる。
また、より多くのナノカーボン類が金型10の成形面に生成されることで、より大きい厚み(図1における上下寸法)を有する炭素膜20を形成することができる。
したがって、鋳造時における表面処理金型1の成形面の断熱性を向上させ、良好な湯流れを実現できる。更に、炭素膜20によって離型剤が良好に保持されるため、表面処理金型1の成形面における含油性を向上させることができる。
なお、本実施形態においては、本発明に係る皮膜を、少なくとも一種のナノカーボン類を含む炭素膜20としたが、これに限定するものではない。
例えば、本発明に係る皮膜として、硬質クロムめっき、又は黒錆等の緻密な皮膜を採用することが可能である。
以下では、図2〜図5を参照して、本発明に係る鋳造用部材の製造方法の一実施形態である、表面処理金型1の製造工程S1について説明する。
図2に示すように、製造工程S1は、造形工程S10と、皮膜形成工程S20とを具備する。
造形工程S10は、逆勾配形状(所謂、アンダーカット)を成す多数の微小な凹凸から構成される成形面を有する金型10を粉末溶融積層によって作製する工程である。
造形工程S10においては、粉末溶融積層によって、多数の突起部11・11・・・が形成された成形面を有する金型10を、マルエージング鋼等の金属粉末から作製する。
皮膜形成工程S20は、金型10の成形面上に炭素膜20を形成する工程である。
皮膜形成工程S20においては、雰囲気炉にて、窒素等の不活性ガス雰囲気下で炭素膜20の原料となるアセチレン等の反応ガスを供給しつつ、金型10を加熱することで、金型10の成形面に炭素膜20を形成する。
雰囲気炉にて金型10の成形面に炭素膜20を形成する際には、金型10を硬化させるための時効処理を兼ねて行うことが好ましい。
詳細には、図3に示すように、雰囲気炉内を窒素(N)雰囲気とした後、アセチレン(C)及びアンモニア(NH)を供給しつつ、570℃まで昇温し、当該温度を保持した状態で、金型10を4時間加熱する。
こうして、金型10の成形面に炭素膜20が形成されると共に、金型10に時効処理が施される。
図4に示すように、従来、金型の時効処理は、金型を570℃で4時間加熱することによって行われている。
本実施形態においては、皮膜形成工程S20にて、従来の金型の時効処理と同じ温度及び時間で、金型10の加熱が行われる。
そのため、皮膜形成工程S20を経ることで、金型10に時効処理が施されるのである。
図5に示すように、従来、金型の成形面における炭素膜の形成は、金型の時効処理よりも低い温度(480℃)で行われており、金型の成形面に炭素膜を形成する際の温度は、金型の時効処理を行う際の温度とは異なる。
しかしながら、金型の成形面に形成される炭素膜は、600℃を超えなければ酸化劣化することがないため、金型の成形面に炭素膜を形成する際の温度を、金型の時効処理を行う際の温度(570℃)に設定することが可能である。
なお、本実施形態においては、皮膜形成工程S20における金型10の加熱温度を570℃としたが、これに限定するものではない。
金型10の成形面に炭素膜20を形成する際の温度は、400℃(ナノカーボン類が生成される温度)以上であればよく、金型10の時効処理を行う際の温度は、350℃以上であればよいため、皮膜形成工程S20における金型10の加熱温度を400℃以上に設定すればよい。
更に、前述のように、炭素膜20は、600℃を超えると酸化劣化するおそれがあるため、皮膜形成工程S20における金型10の加熱温度を600℃以下に設定すればよい。
したがって、皮膜形成工程S20における金型10の加熱温度は、400〜600℃に設定することが好ましい。
また、金型の時効処理と同一の温度及び時間で、金型の成形面に炭素膜を形成する際においては、アセチレン等の反応ガスの供給量を従来の値(金型の時効処理よりも低い温度で炭素膜を形成する際の供給量)よりも20%程度減少させても、炭素膜の品質に大きな影響はない。そのため、金型の時効処理の条件に応じて、アセチレン等の反応ガスの供給量を変更する(減少させる)ことが可能である。本実施形態においては、アンモニア(NH)の供給時間を減少させて、アンモニア(NH)の供給量を従来の値よりも減少させている(図3及び図5におけるハッチングパターン部分参照)。なお、アンモニア(NH)の供給量を減少させた代わりに、窒素(N)の供給量を増加させている。
また、金型の時効処理の条件に応じて、炭素膜の品質に大きな影響が生じない程度に、金型の加熱時間を変更することも可能である。
このように、炭素膜20の品質に大きな影響が生じない程度に、炭素膜20を形成する際の温度及び時間を変更し、金型10に対して時効処理を行う際の温度及び時間と同一の値とすることで、皮膜形成工程S20にて、金型10の成形面における炭素膜20の形成と、金型10の時効処理とを同時に行うことができる。
そのため、金型10に対する時効処理を別途行う必要がなく、表面処理金型1の製造に要する時間及びコストを低減することができる。
また、一般的に、金型に対する時効処理を行った後に、当該金型の成形面に炭素膜を形成する工程が行われるが、時効処理によって硬化した金型は、当該金型の成形面に炭素膜を形成する際に再び加熱されることとなるため、時効処理の効果が薄れてしまう。しかしながら、本発明によれば、皮膜形成工程S20にて、金型10の成形面における炭素膜20の形成と、金型10の時効処理とが同時に行われるため、時効処理の効果が薄れることなく、金型10を所望の硬度に設定することができるのである。
以上のように、製造工程S1においては、造形工程S10と、皮膜形成工程S20とを順に経ることにより、表面処理金型1が作製される。
造形工程S10にて作製された金型10の成形面は、多数の突起部11・11・・・により、粗い表面性状となっているが、皮膜形成工程S20にて金型10の成形面上に緻密な炭素膜20が形成されるため、表面処理金型1の成形面は、緻密な表面性状となっている。
従来、金型の形状を成形する荒加工、及び表面を平滑化する仕上げ加工を順に経ることによって金型が作製される。その後、金型の表面がショットブラスト等により凹凸面とされ、当該凹凸面に炭素膜等の皮膜が形成される。
しかしながら、本発明では、造形工程S10にて荒い表面性状の金型10を作製した後、皮膜形成工程S20にて金型10の成形面上に緻密な炭素膜20を形成することによって表面処理金型1を作製するため、前記のような仕上げ加工、及びショットブラスト等の表面加工を行う必要がない。
したがって、表面処理金型1の製造に要する時間及びコストを低減することができる。
また、金型10は、造形工程S10にて、金属粉末がレーザにより溶融された後に凝固することによって作製されるため、表面が活性状態、つまり新生面が露出した状態となっている。
特に、製造工程S1においては、造形工程S10を行った後に、前記のような仕上げ加工、及びショットブラスト等の表面加工を行うことなく、皮膜形成工程S20を行うため、金型10の成形面に炭素膜20を形成する際においても、金型10の成形面に酸化皮膜が形成されず、金型10の成形面の活性状態が維持される。
これにより、皮膜形成工程S20において、金型10の成形面と、アセチレン等の反応ガスとの反応が促進され、短時間で強固な炭素膜20を形成することができる。
なお、本発明に係る鋳造用部材としては、表面処理金型1のような金型の他に、プランジャチップ等の摺動部材を採用可能である。
例えば、本発明に係る鋳造用部材として、プランジャチップを採用した場合には、当該プランジャチップの外周面(摺動面)に炭素膜20と同様の皮膜を形成すればよい。
本発明は、金型等の鋳造用部材、及びその製造方法に利用できる。
1 表面処理金型(鋳造用部材)
10 金型(母材)
11 突起部
20 炭素膜

Claims (5)

  1. 鋳造に用いられる鋳造用部材であって、
    粉末溶融積層により作製され、逆勾配形状を成す多数の微小な凹凸から構成される表面を有する母材と、
    前記母材の表面に形成される皮膜と、を具備する、
    ことを特徴とする鋳造用部材。
  2. 前記母材は、金型であり、
    前記金型の成形面上に前記皮膜が形成される、
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋳造用部材。
  3. 鋳造に用いられる鋳造用部材の製造方法であって、
    逆勾配形状を成す多数の微小な凹凸から構成される表面を有する母材を粉末溶融積層によって作製する造形工程と、
    前記造形工程にて作製された母材の表面に皮膜を形成する皮膜形成工程と、を具備する、
    ことを特徴とする鋳造用部材の製造方法。
  4. 前記皮膜は、少なくとも一種のナノカーボン類を含む炭素膜であり、
    前記皮膜形成工程にて、前記炭素膜の原料となる反応ガスを供給しつつ、前記母材を加熱することで、当該母材の表面に前記炭素膜を形成する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の鋳造用部材の製造方法。
  5. 前記皮膜形成工程にて前記母材を加熱する際の温度及び時間を、前記母材を硬化させるための時効処理を行う際の温度及び時間に設定する、
    ことを特徴とする請求項4に記載の鋳造用部材の製造方法。
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