JP5926973B2 - 金型冷却穴部の表面処理方法及び金型 - Google Patents

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Description

本発明は、金型に形成された金型冷却穴部の表面処理方法及び金型に関する。
従来、金型冷却穴部の表面処理方法としては、特許文献1に記載の表面処理方法が知られている。特許文献1の表面処理方法は、金型の冷却穴部の表面にガス窒化またはガス軟窒化または固体ガス窒化等の低濃度窒化による圧縮応力を付与してから、無電解Ni−Pメッキを施した後、鋼球、ガラスビーズ等を圧搾空気で送り込む表面安定化処理(ショットピーニング)を行ない、冷却通路での耐応力腐食割れ機能を強化させ、溶融金属加工用金型の割れを防ぎ寿命を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献2では、小片状でかつ微細孔を有するような鋼製品などを窒化処理する場合には、窒化処理中の加熱室内の窒化ガスを真空引きして排気するとともに、直ぐに新しい窒化ガスを加熱室内に供給することようにする方法を複数回繰り返すことが記載されている。
また、特許文献3では、自動車用鋼板の表面処理方法として、鋼板の表面に、下層として犠牲防食作用を有するZnまたはZn系合金の合金化溶融めっきを施し、その上に中間層としてCr、Cr系合金、Al、Al系合金、Co系合金およびNi系合金からなる群から選ばれた1種の金属または合金の被覆を施し、さらに上層としてFe系合金の被覆を施すことにより、化成処理性、塗膜密着性および塗装後耐久性はもちろんのこと、スポット溶接性および接着耐久性にも優れた多層めっき鋼板が得られることが記載されている。
特開2009‐72798号公報 特開昭62‐270761号公報 特開平3‐215686号公報
しかしながら、この特許文献1に記載の金型冷却穴部の表面処理方法では、耐応力腐食割れ性能の点で改善の余地があった。具体的には、めっき不良部(ピンホール)が存在すると、めっき不良部から腐食が進行するおそれがあり、さらに鋳造時の高応力下においてめっきが割れ、割れ部より腐食が進行するおそれがあった。
また、特許文献2に記載の窒化処理方法は、金型冷却穴部を窒化する際に有効なものと思われるが、金型冷却穴部に適用するには耐腐食性能の点で改善の余地があった。
さらに、特許文献3に記載の表面処理方法は、自動車用鋼板の表面処理方法であって、金型冷却穴部にそのまま適用することはできない。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐応力腐食割れ性能に優れた金型冷却穴部の表面処理方法及び金型を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
金型(例えば、後述の実施形態における金型M)に設けられた冷却穴部(例えば、後述の実施形態における冷却穴部H)の表面処理を行う金型冷却穴部の表面処理方法であって、
窒化処理中に少なくとも一回、真空引きを行う真空パルス窒化処理により前記冷却穴部に窒化層(例えば、後述の実施形態における窒化層40)を形成する真空パルス窒化処理工程と、
前記窒化層上に、Feよりもイオン化傾向が大きい金属からなる金属層(例えば、後述の実施形態におけるZn層41)を形成する犠牲防食処理工程と、を備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記金属層は、Zn又はZnを主成分とする合金からなることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2の構成に加えて、
前記犠牲防食処理工程では、電解めっきにより前記金属層を形成することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項の構成に加えて、
前記真空パルス窒化処理工程の前に、ショットブラスト処理又はブラッシング処理を行うことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項の構成に加えて、
前記真空パルス窒化処理工程の後であって前記犠牲防食処理工程の前に、ピーニング処理又はバニシング処理を行うことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、真空パルス窒化処理中の真空引きにより冷却穴部の内部が負圧となり、ガス注入時に内部にアンモニアガスが引き込まれることで、穴部内部までアンモニアガスを循環させることができ確実に窒化層を形成することができる。金型の冷却穴部のような細穴では、通常、アンモニアガスを注入すると、水素の分圧が高くなり、アンモニアの分圧が低くなってしまうが、真空引きを行うことでアンモニアを穴部へ引き込み、導入しやすくなる。これにより、冷却穴部の表面に圧縮残留応力が付与されるので、冷却穴部の表面の硬度があがり、応力腐食割れを起点とする割れを防ぐことで、金型寿命を向上させることができる。
また、窒化層上にイオン化傾向の大きい金属からなる金属層を形成することで、金属層が犠牲防食皮膜となり、金型の腐食を抑制することができる。
請求項2の発明によれば、Zn又はZnを主成分とする合金は、金属安定性、熱伝導性、皮膜施工性がよいので、冷却性能を維持しつつ作業性を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、無電解めっきに比べて処理時間が短く、所望の膜厚に制御することができる。
請求項4の発明によれば、窒化を阻害する酸化膜を除去し、窒化性を上げることができる。
請求項5の発明によれば、圧縮残留応力が付与され、冷却穴部の表面の硬度があがり、応力腐食割れを起点とする割れを防ぐことで、金型寿命を向上させることができる。
本発明の一実施形態の金型冷却穴部の表面処理方法のフローを示すフロー図である。 真空パルス窒化処理を説明するグラフである。 犠牲防食処理を行う電解めっき装置の一実施形態の模式図である。 金型冷却穴部の断面図である。 応力腐食環境下での疲労試験の試験片の模式図である。 応力腐食環境下での疲労試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明の金型冷却穴部の表面処理方法ついて図1に示す処理フローを参照しながら説明する。なお、本発明の金型冷却穴部の表面処理方法は、真空パルス窒化処理工程と犠牲防食処理工程とを必須の構成とするものであるが、図1では、好適な処理フローとして、他の処理を含めて記載している。
先ず、真空パルス窒化処理の前処理として、ショットブラスト処理又はブラッシング処理を行う(S1)。これは、金型の冷却穴部の表面に付着した異物、酸化膜等を除去するためである。代わりに、真空炉で熱処理を行うことで、酸化膜の生成を防止することもできる。
続いて、真空パルス窒化処理を行う(S2)。真空パルス窒化処理は、窒化処理中に少なくとも一回、真空引きを行うものである。具体的には、図2に示すように、室温から次第に昇温していき(昇温)、400℃〜550℃、好ましくは450℃〜510℃の範囲内の温度で所定時間保持し(均熱)、続いて、50%〜100%のガス濃度のアンモニアガスにて窒化処理を行う(窒化)。このとき、金型Mとの反応時に、アンモニアガスは以下の(1)式で表される化学反応を示す。
2NH →2(N)+3H (1)
金型の冷却穴部は細止まり穴なので、冷却穴部内は(1)式より水素の分圧が高くなってしまい、アンモニアの分圧が低くなるが、真空引きにより水素の分圧が高くなったガスを一度引き込み、新たにアンモニアガスを導入することで窒化が促進される。
窒化処理中、真空引きを行うことで炉内圧力は減少する(図2中、点線領域参照)。真空引きは、少なくとも一度行えばよく、好ましくは1〜40回であり、真空引きの回数や時間等は適宜選択される。そして、2.5hr〜10hr、好ましくは2.5hr〜5hr窒化処理した後、室温まで冷却される(冷却)。
このように、窒化処理中に、少なくとも一度真空引きを行うことにより、冷却穴部の内部が負圧となり、ガス注入時に内部にアンモニアガスが引き込まれることで、冷却穴部内部までアンモニアガスを循環させることができ確実に窒化層を形成することができる。これにより、冷却穴部の表面に圧縮残留応力が付与されるので、冷却穴部の表面の硬度があがり、応力腐食割れを起点とする割れを防ぐことで、金型寿命を向上させることができる。
窒化層は、表面の硬度がHV700〜HV1100であり、好ましくはHV900〜HV1100である。また、窒化層の厚さは、10μm〜100μmであり、好ましくは70μm〜100μmである。
続いて、犠牲防食処理工程の前処理として、例えばショットピーニング、WJピーニング、超音波ピーニング等のピーニング処理又はローラーバニシング等のバニシング処理を行う(S3)。ショット材を照射して表面を加工硬化させるか又はバニシングローラを押し当てて加工硬化させることにより、窒化層に圧縮残留応力を付与することができ、止まり穴表面の硬度をあげることができる。
続いて、犠牲防食処理を行う(S4)。犠牲防食処理は、好ましくは、アルカリ脱脂工程(S4−1)と、エッチング工程(S4−2)と、スマット除去工程(S4−3)と、めっき工程(S4−4)と、から構成される。なお、以下の説明では、犠牲防食処理により形成される金属層としてZn層を例に説明する。
図3は、犠牲防食処理を行う電解めっき装置の一実施形態の模式図である。
電解めっき装置10は、それぞれ液体を貯留する複数の処理槽11a〜11dと、不図示の弁機構を有する配管12、13を介して複数の処理槽11a〜11dと連通するマニホールド14と、マニホールド14から液体が供給される第1液体流路15を備え、パイプ形状を有する不溶性陽極電極16と、不溶性陽極電極16が陽極、且つ、冷却穴部Hが陰極となるように電圧を供給する電源部PSと、冷却穴部Hからマニホールド14に液体を排出する第2液体流路17を備えるマグネットチャック18と、複数の処理槽11a〜11dから第1液体流路15と第2液体流路17を介して液体を流動させるポンプPと、を備える。
複数の処理槽11a〜11dは、脱脂槽11a、エッチング槽11b、スマット除去槽11c、めっき槽11dに加えて、水及び空気が供給可能に構成され、マニホールド14を含めて多槽式液供給タンク20を構成している。脱脂槽11aには、冷却穴部Hの表面に付着した油分を除去するための洗浄剤が貯留される。エッチング槽11bには、冷却穴部Hの表面の酸化皮膜や加工変質層を除去するための酸が貯留される。スマット除去槽11cには、スマットと呼ばれる、エッチング残りの合金成分を除去するための電解液が貯留される。めっき槽11dは、めっき液が貯留されており、めっき液は例えば塩化亜鉛と塩化アンモニウムを含む電解液から構成される。水及び空気は、各処理の間の配管及び止まり穴の洗浄に使用される。
各処理槽11a〜11dは、弁機構を有する配管12、13を介してマニホールド14と連通しており、各処理槽11a〜11dとマニホールド14を結ぶ配管12、13には、液体を流動させるポンプPが設けられている。従って、例えばめっき処理を行う際には、めっき槽11dにつながる配管の弁機構を開弁し、且つ、他の全ての弁機構を閉弁するとともに、めっき槽11dにつながる配管のポンプPを稼動することで、めっき槽11dからマニホールド14に液体が供給されるとともに、マニホールド14からめっき槽11dへ液体が排出される。マニホールド14から供給される液体は、パイプ形状を有する不溶性陽極電極16の内周部に形成された第1液体流路15に供給される。
不溶性陽極電極16は、マグネットチャック18が金型Mに固定されることにより冷却穴部Hと接触しないように冷却穴部Hの内部に位置決めされる。マグネットチャック18は、冷却穴部Hの開口部と連通する第2液体流路17が形成されており、第2液体流路17を囲うように金型Mとの当接面にシール部材19が収容されている。マグネットチャック18が金型Mに固定されると、シール部材19により第2液体流路17と冷却穴部Hとが密閉される。また、マグネットチャック18には、不溶性陽極電極16が不図示の絶縁部材を介して挿通される。従って、不溶性陽極電極16の第1液体流路15を通って冷却穴部Hに供給された液体は、不溶性陽極電極16の外周部と冷却穴部Hとにより区画された空間を通って、さらにマグネットチャック18に形成された第2液体流路17を経由して、マニホールド14に排出される。
また、不溶性陽極電極16は、Tiから形成され、Ti上にIrO、Pt、RuOのいずれか1つの層が被覆されている。
電源部PSは、不溶性陽極電極16が陽極、且つ、冷却穴部Hが陰極となるように電圧を供給する。これにより、例えば、亜鉛めっきをする場合には、不溶性陽極電極16では、下記(2)式の化学反応が起こり、金型Mの冷却穴部Hでは、下記(3)式の化学反応が起こり、冷却穴部Hの表面に亜鉛めっき皮膜が形成される。
陽極:2HO → O+4e+4H (2)
陰極:Zn2++2e→ Zn (3)
アルカリ脱脂工程(S4−1)は、洗浄剤が貯留している脱脂槽11aと冷却穴部Hとをマニホールド14を介して連通させた状態で洗浄剤を循環させることで、冷却穴部Hの表面に付着した油分を除去する。
エッチング工程(S4−2)は、酸が貯留しているエッチング槽11bと冷却穴部Hとをマニホールド14を介して連通させた状態で酸を循環させることで、冷却穴部Hの表面の酸化皮膜や加工変質層を除去する。
スマット除去工程(S4−3)は、電解液が貯留しているスマット除去槽11cと冷却穴部Hとをマニホールド14を介して連通させた状態で電解液を循環させることで、スマットと呼ばれる、エッチング残りの合金成分を除去することで、冷却穴部Hの表面をきれいに仕上げることができる。
めっき工程(S4−4)は、めっき液が貯留しているめっき槽11dと冷却穴部Hとをマニホールド14を介して連通させて、他の処理槽11a〜11cとは非連通状態でポンプPを稼動させることで、めっき槽11dに貯留していためっき液は、マニホールド14、不溶性陽極電極16の第1液体流路15を経由して、不溶性陽極電極16の外周部と冷却穴部Hとにより区画された空間に供給される。このとき、電源部PSが不溶性陽極電極16が陽極、且つ、冷却穴部Hが陰極となるように電圧を供給することで、不溶性陽極電極16では上記(2)式に記載の化学反応が起こる。また、陰極である冷却穴部Hの表面では上記(3)式に記載の化学反応が起こり、陰極である冷却穴部Hの表面に亜鉛が析出し、冷却穴部Hの表面に亜鉛めっき皮膜が形成される。そして、廃液が、マグネットチャック18の第2液体流路17、マニホールド14を経由して不図示のフィルタを通って再びめっき槽11dへと循環する。
なお、各工程間には、水及び/又は空気を循環させることで、配管及び止まり穴等の流路を洗浄し、各処理槽に貯留している液体が混合するのが防止される。
図4は、上記表面処理方法により形成された金型冷却穴部の断面図である。
金型Mの冷却穴部Hは、表面に窒化層40が形成され、窒化層40上にFeよりイオン化傾向が大きい金属からなる金属層としてZn層41が形成されている。
このようにして窒化処理がなされた冷却穴部Hの表面上に形成されたZn層41は、ZnがFeよりイオン化傾向が大きいので、犠牲防食効果を発揮し、ZnがFeよりも優先的に溶けることで金型Mの母材であるFeの腐食を防止することができ、これにより応力腐食割れを防止することができる。また、Feよりイオン化傾向が大きいZnでめっきすることにより、例え皮膜に欠陥(ピンホール)があった場合でも、バリア型防食効果を発揮する金属でめっきした場合に比べて、高い防食効果を奏する。
なお、金属層は、Znに限らず、Znを主成分とする合金、Mn、Mnを主成分とする合金から構成されてもよい。Zn又はZnを主成分とする合金は、金属安定性、熱伝導性、皮膜施工性がよいので、冷却性能を維持しつつ作業性を向上させることができる点で好ましい。
金属層の厚さは、2μm以上であり、好ましくは10μm以上である。金型Mの冷却穴部Hを流れる冷却水のpHが高い場合、金属層の厚みは薄くてもよく、pHが低い場合、厚みは厚いことが望ましい。この厚さに関しては、適宜設定すればよい。
続いて、本発明の実施例について説明する。
応力腐食環境下での疲労試験として、処理の仕方の異なる4種類の試験片(約100mm×約50mm×約5mm)を用意し、図5に示すように、略中央部(約50mm×約40mm)に水と硝酸(約pH4)からなる腐食液を塗布して腐食エリアとした。
実施例の試験片は、SKD61鋼に、真空パルス窒化処理により表面硬度約1005Hv、深さ約0.04mmの窒化層を形成し、さらに窒化層上に深さ約20μmのZn層を形成した。
比較例1の試験片は、SKD61鋼に、窒化層もZn層も形成しないものとした。
比較例2の試験片は、SKD61鋼に、真空パルス窒化処理により表面硬度約1005Hv、深さ約0.04mmの窒化層を形成したものとした。
比較例3の試験片は、SKD61鋼に、真空パルス窒化処理により表面硬度約1005Hv、深さ約0.04mmの窒化層を形成し、さらに窒化層上に深さ約20μmのNi層を形成した。
疲労試験機で4点曲げ疲労試験(図5中のPに応力付加)を行い、実施例及び比較例1〜3の試験片を用いて、最大応力と最小応力の差である応力範囲をA1、A2、A3(A1>A2>A3)として、起点発生までの繰り返し数(以下、破損繰り返し数と呼ぶ。)を調べた。
結果を図6に示す。図6は、縦軸が応力範囲(MPa)を示し、横軸が破損繰り返し数を10のべき乗で示した片対数グラフである。
図6から明らかなように、応力範囲によらず、比較例1の試験片の破損繰り返し数が低かった。また、同様に応力範囲によらず、比較例2の試験片の破損繰り返し数が比較例1の試験片の破損繰り返し数よりも大きく、比較例3の試験片の破損繰り返し数が比較例2の試験片の破損繰り返し数よりも大きく、実施例の試験片の破損繰り返し数が比較例3の試験片の破損繰り返し数よりも大きい結果となった。
なお、応力範囲A3における実施例の試験片では、孔食の発生が認められなかった。
以上の結果から、SKD61鋼に窒化層を形成することで破損繰り返し数が増加し、さらに窒化層上にNi層を形成することで破損繰り返し数が増加し、窒化層上にNi層を形成したものより窒化層上にZn層を形成する方が、破損繰り返し数が高くなることが分かった。
即ち、本発明の実施例の試験片は、窒化層上に犠牲防食効果を奏するZn層が形成されているため、ZnがFeよりも優先的に溶けることでFeの腐食を防止することができるものと考えられる。そして、この効果は、同じ防食効果を奏するものの、犠牲防食効果ではなくバリア型防食効果を奏するNi層が形成された比較例3と比べて、破損繰り返し数に顕著に現れた。
比較例1の30倍以上を破損繰り返し数の要件閾値とすると、比較例2及び比較例3の試験片では要件閾値を満足することができなかったが、本発明の実施例の試験片では、要件閾値を大きく超えた破損繰り返し数を示し、応力腐食割れを起点とする割れを抑制するためには、真空パルス窒化処理により形成された窒化層と、窒化層上にFeよりもイオン化傾向が大きい金属からなる金属層と、を形成することが有効であることが分かった。
ここで、応力腐食環境下での疲労試験と金型の冷却孔部における応力腐食割れとの関係について説明する。
金属の破断は腐食により発生した孔食を起点とし、金型の冷却穴部では鋳造中又は保管中に以下の現象が起きていることが分かっている。即ち、金型の鋳造中は、(a)繰り返し引張応力により結晶にすべりが発生し、(b)新出したすべり帯がアノード、表面の不働態膜部がカソードとなり局部電池を構成する。(c)そして、イオン分解により鉄が溶け出し、腐食が発生する。(d)繰り返し応力を受けることにより、(a)〜(c)が繰り返され、すべりの進展とともに腐食が内部へ成長し、孔食が生成される。(e)成長した孔食が応力集中を起こすことにより、亀裂が内部へ進展し、(f)さらに応力集中を引き起こし、最終的に破断に至る。また、この鋳造中の現象に加えて、金型保管時においても、冷却穴部に残った水分や大気中の水分によっても腐食が進行し、時間の経過とともに腐食が進展しているものと考えられる。
上記応力腐食環境下での疲労試験は、金型の冷却孔部における鋳造中の繰り返し応力と類似するものであり、従って、本発明の実施例の試験片と同様に、金型の冷却穴部に、真空パルス窒化処理により窒化層を形成するとともに、窒化層上にFeよりもイオン化傾向が大きい金属からなる金属層を形成することで、応力腐食割れを起点とする割れを防ぐことができ、金型寿命を向上させることができる。
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
M 金型
H 冷却穴部
40 窒化層
41 Zn層(金属層)

Claims (5)

  1. 金型に設けられた冷却穴部の表面処理を行う金型冷却穴部の表面処理方法であって、
    窒化処理中に少なくとも一回、真空引きを行う真空パルス窒化処理により前記冷却穴部に窒化層を形成する真空パルス窒化処理工程と、
    前記窒化層上に、Feよりもイオン化傾向が大きい金属からなる金属層を形成する犠牲防食処理工程と、を備えることを特徴とする金型冷却穴部の表面処理方法。
  2. 前記金属層は、Zn又はZnを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1に記載の金型冷却穴部の表面処理方法。
  3. 前記犠牲防食処理工程では、電解めっきにより前記金属層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の金型冷却穴部の表面処理方法。
  4. 前記真空パルス窒化処理工程の前に、ショットブラスト処理又はブラッシング処理を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型冷却穴部の表面処理方法。
  5. 前記真空パルス窒化処理工程の後であって前記犠牲防食処理工程の前に、ピーニング処理又はバニシング処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金型冷却穴部の表面処理方法。
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