JP2001003705A - ガスタービン翼電解加工空冷孔清浄化方法並びに装置 - Google Patents

ガスタービン翼電解加工空冷孔清浄化方法並びに装置

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JP2001003705A
JP2001003705A JP16997599A JP16997599A JP2001003705A JP 2001003705 A JP2001003705 A JP 2001003705A JP 16997599 A JP16997599 A JP 16997599A JP 16997599 A JP16997599 A JP 16997599A JP 2001003705 A JP2001003705 A JP 2001003705A
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gas
air cooling
sludge
gas turbine
hydrogen fluoride
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Kenji Watanabe
謙二 渡辺
Yasuhiko Matsuyama
保彦 松山
Keiji Toyomi
恵治 豊海
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23GCLEANING OR DE-GREASING OF METALLIC MATERIAL BY CHEMICAL METHODS OTHER THAN ELECTROLYSIS
    • C23G5/00Cleaning or de-greasing metallic material by other methods; Apparatus for cleaning or de-greasing metallic material with organic solvents

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  • Electrical Discharge Machining, Electrochemical Machining, And Combined Machining (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガスタービン翼は、本体を冷却する細深穴の
空冷孔に耐食性を目的とした健全な組織皮膜を有するア
ルミニウム拡散皮膜を形成させるが、この健全なアルミ
ニウム拡散皮膜を提供するために、空冷孔内壁面に残存
するスラッジ(母材元素の酸化物;Cr2O3/NiO)を母材に
影響を与えずに除去し清浄化する方法及び装置の提供に
ある。 【解決手段】 コバルト(Co)或いはニッケル(Ni)基耐熱
合金材から成り空冷孔を有するガスタービン翼におい
て、細深穴の空冷孔は、電解加工により加工される。こ
の空冷孔内壁面に残存したスラッジを除去するに際し、
ガスタービン翼1Aを反応炉2Aの内部で600〜1000°Cに
加熱し、更に空冷孔内部に弗化水素ガスを供給すること
で還元反応を起こさせ、ガスタービン翼の性能を損なう
ことなく空冷孔内壁面のスラッジを選択的に除去し清浄
化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コバルト(Co)或い
はニッケル(Ni)基合金材から成るガスタービン翼の電解
加工された空冷孔内壁面の清浄化方法、特に内壁面の酸
化物スラッジを化学反応で分解除去する方法及び装置に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガスタービン或いはジェットエンジンな
どは、高温の燃焼ガスに曝されることからガスタービン
翼本体を冷却するための空冷孔が設けられている。また
この空冷孔は、細深穴であることから効率良く加工する
ために電解加工で得るのが一般的である。一方、この空
冷孔の内壁面には、冷却空気の中に含まれる腐食性成分
から保護するためにアルミニウム拡散皮膜を形成させる
必要がある。
【0003】しかし、電解加工で明けられた空冷孔内壁
面には、電解加工液で完全にイオン化されずに加工液中
に浮遊している基材元素、例えばクロム(Cr)やニッケル
(Ni)などが加工中に発生する酸素(O2)と結合(酸化)し、
スラッジ(Cr2O3/NiO)として空冷孔内壁面に残存する。こ
の部位にアルミニウム拡散皮膜を形成させると前述のス
ラッジ(Cr2O3/NiO)を巻込んだ組織となり、皮膜の目的
を達成する健全な組織が得られない。
【0004】よってアルミニウム拡散皮膜を形成する前
に空冷孔内壁面を清浄化にする必要がある。
【0005】前記の酸化物が製品の外表面に存在した場
合は、アルミナの研磨材を圧縮空気に乗せて噴射するな
ど物理的に除去する方法がある。
【0006】一方、空冷孔の様な細深穴の内壁面の酸化
物除去については、金属プレス(1993年金型製作技術最
先端、28〜36ページ)や第39回精密鋳造部会資料(ター
ビン部品の流体研磨仕上げ、93〜95ページ)に記載され
ている様に、パテ状の高分子材料を媒体としてアルミナ
の砥粒を包み込んだ粘弾性の研磨材を細深穴内部に圧力
を加えて通過させ、研磨材と共にスラッジ(Cr2O3/NiO)
を外部へ排出する砥粒流動加工技術がある。
【0007】また、ガスタービン翼ではないが、エポキ
シ樹脂基板に明けた細深穴の内壁面に平滑化、バリの除
去を、容器内に含ませた腐食性ガスのプラズマ放電によ
るイオン化した反応基により化学的反応除去をする方法
も知られている(特開平7−241732号公報な
ど)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の技術、
つまり上記砥粒流動加工技術で空冷孔内壁面を清浄化す
る場合、細深穴でかつ異径の穴が混在するガスタービン
翼の内部に研磨材を供給させると穴の大きい方へと研磨
材が流動し易い傾向にあり、穴内部の清浄状態にバラツ
キが発生する可能性がある。また、スラッジ(Cr2O3/Ni
O)を効率良く除去するためには、研磨材の流速を上げな
ければならないが、細深穴では抵抗が高く容易に流速を
上げられずに多くの加工時間を費やす欠点があった。
【0009】更に、長時間の研磨材の供給により電解加
工で仕上げられた内壁面が減肉し、これにより穴径の寸
法精度が確保できずガスタービン翼の冷却性能が損なわ
れるなど母材に影響を与える可能性がある。また、砥粒
流動加工後に空冷孔内部に残存した研磨材を完全に除去
する必要性とその確認方法が困難であった。
【0010】また、後者は、エポキシ樹脂基板の加工穴
に対する平滑化、バリをプラズマ放電による除去であ
り、これを電解加工孔のスラッジの除去に利用しても母
材に影響を与えずにスラッジのみを除去することはでき
ない。
【0011】本発明の目的は、健全なアルミニウム拡散
皮膜を形成させる前処理として、母材に影響を与えず選
択的にスラッジ(Cr2O3/NiO)のみを除去する空冷孔清浄
化方法並びにその装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的は、母材の金属
組成が、50%以上のコバルト(Co)で構成されるコバルト
基合金或いは50%以上のニッケル(Ni)で構成されるニッ
ケル基合金であって、かつ、双方の合金とも少なくとも
14%以上のクロム(Cr)を含有する耐熱合金材から成るガ
スタービン翼の電解加工された空冷孔内壁面の清浄化方
法において、電解加工された空冷孔に弗化水素ガスを供
給し、空冷孔内壁面に残存したスラッジ(Cr2O3/NiO)を
母材に影響を与えずに選択的に弗化水素ガスの分解反応
を利用して除去する手段によって達成される。
【0013】上記手段による化学反応は数1或いは数2
による。
【0014】
【数1】
【0015】
【数2】
【0016】上記反応において弗化水素ガスは、ステン
レス製の容器に入った常温で液体状態である弗化水素酸
を容器外部から帯状ヒータで40°C前後に加温すること
で得られる。また、弗化水素ガスは、気体比重が1.0015
であり、空気よりも若干重いことからキャリアガス例え
ば水素ガスを用いて反応炉内部まで搬送する。
【0017】また上記の分解反応を起こさせるために
は、温度が必要である。図2の標準生成自由エネルギー
ΔGから明らかなように空冷孔内壁面に残存したCr2O3
NiOは、温度の上昇と共に分解反応が起こりやすい傾向
を示す。また、ΔGが負の値つまり温度が600°C未満で
は反応が止まる或いは逆反応を起こす。
【0018】一方、ガスタービン翼の母材であるコバル
ト(Co)基或いはニッケル(Ni)基の耐熱合金材は、その溶
体温度が1100〜1150°Cであることから分解反応を起こ
すための温度は、1100°C未満に抑える必要がある。
【0019】従って分解反応を起こすための温度は、60
0〜1000°Cが望ましく、600〜1000°Cに加熱されたガ
スタービン翼の空冷孔内部に弗化水素ガスが供給される
と前述の分解反応が起こりスラッジ(Cr2O3/NiO)は、反
応生成物(CrF3/NiF2)および水蒸気(H2O)として外部へと
排出される。
【0020】一方、弗化水素ガスを空冷孔内部に効率良
く供給するために、前述のガスタービン翼をガス供給経
路途中に設けたガス導入治具に配設し、空冷孔内部に効
率良く弗化水素ガスを搬送させる。また、反応容器内部
のガスの流れを一時的に止め或いは加圧することで空冷
孔内部に弗化水素ガスを滞留させて反応効果を上げるこ
とがでる。
【0021】しかし、弗化水素ガスは、高温状態でスラ
ッジ(Cr2O3/NiO)と分解反応を起こすと同時に母材中元
素などとも反応し、母材に影響を及ぼすことが懸念され
る。逆にいえば、母材が前述した様に600°C未満の比
較的の低温状態であれば弗化水素ガスとの反応が起こり
にくくなる。そこで、母材に影響を与えずに空冷孔内部
のスラッジを選択的に除去するためにガスタービン翼が
600〜1000°Cに均一に加熱された時点で加熱供給源を
止める或いは急冷すると図9から明らかなように空冷孔
内部からガスタービン翼外表面にかけて温度差が生じ
る。そこで600〜1000°Cの高温状態にある空冷孔内部
のスラッジ(Cr2O3/NiO)が弗化水素ガスと効率良く分解
反応を起こし、600°C未満に冷却制御された母材は反
応を起さず、スラッジ(Cr2O3/NiO)を選択的に除去する
ことができる。
【0022】また、スラッジ(Cr2O3/NiO)などの酸化物
が分解反応を起こす際に水蒸気(H2O)が反応の副産物と
して発生するが、この水蒸気(H2O)は弗化水素ガスとの
反応を促進する触媒にもなる。つまり、常温(20〜30°
C)で弗化水素ガスと反応させようとする部位に水分(H2
O)が存在すれば局部的に反応がおこることになる。そこ
で、常温(20〜30°C)で弗化水素ガスを供給する直前に
水蒸気(H2O)を供給し、更に反応炉内部を10〜100Torrに
減圧することにより、スラッジ(Cr2O3/NiO)に湿り気を
与え、直後に弗化水素ガスを供給する工程を短時間で繰
り返し行うことでスラッジ(Cr2O3/NiO)を選択的に除去
することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図
面により説明する。
【0024】図3に示すガスタービン翼1Aの空冷孔1Cの
加工方法及びこれにアルミニウム拡散皮膜した組織形態
について説明する。
【0025】図4は、電解加工の原理を示す。電解加工
は、被加工物2Dに工具電極3Dを対向し、被加工物2Dを陽
極に工具電極3Dが陰極になるように通電した状態で、工
具電極3Dの噴流孔から対向間隙に電解液1D、例えば硝酸
ナトリウムを噴流させると、被加工物2Dと工具電極3Dと
の間で電気分解反応が起こり、被加工物2Dの金属元素が
イオン化されて溶出されることより加工されるから、こ
の加工に伴って工具電極3Dを追従送りし、被加工物2Dと
の間隙を一定に維持させるよう制御しながら工具電極3D
を被加工物2Dの加工孔内に深く送り込み加工を続けるこ
とで、被加工物2Dに工具電極3Dの直径に対応した孔を明
けることができる。
【0026】図5は、ニッケル基耐熱合金材の被加工物
2Dに電解加工した空冷孔の断面摸式図を示す。空冷孔1C
の内壁面には、前述の電気分解で完全にイオン化されな
かった金属元素例えばクロム(Cr)やニッケル(Ni)が、同
じく電解液の電気分解で発生する酸素(O2)と結合(酸化)
してスラッジ(Cr2O3/NiO)1Eとして空冷孔内壁面に残存
する。
【0027】図6は、ニッケル基耐熱合金材にアルミニ
ウム拡散皮膜を施した断面模式図を示す。標準的なアル
ミニウム拡散皮膜の組織形態は、母材2Dの表面に拡散皮
膜処理材の主成分であるアルミニウム(Al)とニッケル(N
i)が母材2Dと拡散結合した拡散層1Fとその上にニッケル
アルミニウム金属間化合物(NiAl)層2Fが形成される。し
かし、図7に示すように電解加工された空冷孔内壁面に
アルミニウム拡散皮膜を施した場合、前述のように内壁
面に残存したスラッジを巻込んだ部位1Gが存在し、図6
とは異なった組織形態となる。この組織形態では、ガス
タービン翼が実機運転される際の腐食性成分から保護す
るといった当初の耐食皮膜の目的を達成できない。
【0028】そこで、本発明は、電解加工された空冷孔
内壁面に残存するスラッジを化学反応により除去し清浄
化させるものである。
【0029】以下、本発明の一実施形態について説明す
る。図1は、本発明を実施する装置の実施形態を示す。
1Aは、電解加工された空冷孔を有するガスタービン翼を
示す。反応炉2Aは、耐熱性および耐食性に優れた合金か
ら成る。空冷孔を有するガスタービン翼1Aは、この反応
炉2Aの中にガス供給パイプ3Aに取付けたガス導入治具4A
を介して配設する。
【0030】このガスタービン翼1Aは、反応炉2Aの外側
の加熱源5Aにより反応炉2Aを介して温調器14Aによって
所要の処理温度に加熱制御される。所要温度に加熱制御
されたガスタービン翼1Aの空冷孔内部に水素ガス6Aをキ
ャリアガスにして弗化水素ガス7Aが、効率良く搬送され
る。スラッジと弗化水素ガスの反応生成物(弗化物)或い
は未反応の弗化水素ガスおよび水素ガスは、反応炉2Aの
上蓋8Aに設けられた排気孔9Aを通してアルカリ中和装置
10Aに排出される。
【0031】また、本装置は、反応炉2Aとアルカリ中和
装置10Aの間に排気を制御する弁11Aが設けられており、
(1)この弁11Aを閉じガスの供給を止めると反応炉2A内部
のガスの流動性が止まり、空冷孔内部に弗化水素ガスを
滞留させることができる。(2)また、この弁11Aを閉じ更
にガスの供給量を制御すると反応炉2A内部の圧力を上昇
させることができる。ガス供給量の制御は、弗化水素ガ
スおよび水素ガスの供給量をバルブ12A、13Aを用いて自
動制御する構造となっている。以下、本装置を用いて電
解加工された空冷孔内壁面のスラッジ除去方法を説明す
る。
【0032】
【実施例1】図10は、空冷孔内部からガスタービン翼
外表面にかけて温度差を設け、空冷孔内壁面のスラッジ
(Cr2O3/NiO)を選択的に除去させる方法を説明したブロ
ック図を示す。又、図11は空冷孔内壁面とガスタービ
ン翼外表面の温度測定結果を示す。
【0033】先ず、ガスタービン翼の段取り、電解加工
された空冷孔を有するガスタービン翼をガス供給パイプ
3Aに取付けたガス導入治具4Aにセットする(101)。また
熱電対の設置、反応炉内部と処理しようとするガスター
ビン翼1Aの外表面および空冷孔内部に温度計測用の熱電
対を取付ける。次に反応炉の昇温を反応炉2Aの外側の加
熱源5Aを起動させ、1000°C程度まで温調器14Aを用い
て加熱制御する(102)。反応炉内部の冷却を、ガスター
ビン翼の実体温度が1000°Cまで達すると加熱源5Aが停
止し、反応炉2Aの外側から冷却ファンで急冷する(10
3)。これにより、図9から明らかなように空冷孔内部1C
から母材2Dの外表面r2にかけて温度差が生じる。ワー
ク表面温度測定を行なう(104)。図11に示すように冷
却開始t0からt1の時間が経過すると空冷孔内壁面からガ
スタービン翼外表面にかけての温度がHFガス作用範囲(6
00〜1000°C)から外れる。
【0034】前述で得た空冷孔内部が600〜1000°Cで
高い状態(分解反応が可能な温度領域)で水素ガスをキャ
リアガスとして弗化水素ガスをバルブ12Aで制御しなが
ら供給すると(105、106)、選択的にスラッジが弗化水素
ガスと反応する。一方、600°C未満の比較的低温状態
(分解反応されにくい温度領域)にある母材は、弗化水素
ガスと反応しにくく影響されない。このようにして分解
反応を、図1に示す反応炉2Aとアルカリ中和装置10Aの
間の弁11Aを閉じ反応炉内部のガスの流動性を止め、数
分間空冷孔内部で弗化水素ガスを滞留させ選択的にスラ
ッジと分解反応を起こさせる。
【0035】ワーク表面の温度を測定し(107)。更にt2
の時間が経過するとスラッジの温度もHFガス作用範囲か
ら外れる。このとき反応炉2Aとアルカリ中和装置10Aの
間の弁11Aを開き(108)、H2ガスを空冷孔内面に供給し(1
09)、前述の分解反応で発生した反応生成物と空冷孔内
面に残留したHFガスをアルカリ中和装置10Aへと排出す
る。以上の分解反応と反応生成物の排出工程を2〜5回繰
り返す。
【0036】そして、最後に反応炉内部の置換を再び反
応炉2Aの外側の加熱源5Aを起動させて昇温し、更に水素
ガスを供給して反応炉2A内部に残存した未反応の弗化水
素ガスや反応生成物を十分に排出した後、加熱源5Aの停
止および反応炉2Aの外側から冷却ファンで急冷し処理を
終了する。
【0037】処理されたガスタービン翼の外観は、弗化
水素ガス或いは水素ガスの還元作用により、銀白色の光
沢面を有し、また空冷孔内壁面についてもボアスコープ
等により同様の結果を確認できる。次にアルミニウム拡
散皮膜の形成を行なう(110)。これは空冷孔内壁面にCVD
法(Chemical Vapor Deposition)或いは粉末パック法な
どによりアルミニウム拡散皮膜を施す。
【0038】清浄化された空冷孔内壁面にアルミニウム
拡散皮膜を施すことで、図6で示す健全な組織形態とな
り、当初の目的を満足する皮膜が形成される。また、前
述した方法により空冷孔内部および母材に影響を与ずに
ガスタービン翼の性能を確保できる。
【0039】
【実施例2】図12は、空冷孔内部に湿り気を与え、空
冷孔内壁面のスラッジを選択的に除去させる方法を説明
したブロック図を示す。
【0040】翼の段取り、電解加工された空冷孔を有す
るガスタービン翼1Aをガス供給パイプ3Aに取付けたガス
導入治具4Aにセットする(121)。さらに熱電対の設
置、反応炉内部と処理しようとするガスタービン翼の外
表面に温度計測用の熱電対を取付ける。次に、ガス導入
治具4Aを利用して常温で水蒸気を空冷孔内部に供給する
(122)。水蒸気を供給しながら反応炉内部の減圧を、反
応炉2Aとアルカリ中和装置10Aの間の真空ポンプ15Aを起
動させて反応炉内部を10〜100Torrまで減圧させると(12
3)、スラッジ表面に水滴が凝着する。
【0041】そこで、弗化水素ガスを前述の水蒸気の供
給で一時的に湿り気を含んだ空冷孔内部に供給する(12
5)。水分(H2O)は、弗化水素ガスとの反応を促進する触
媒であり、水分を含んだスラッジが選択的に弗化水素ガ
スと反応する。弗化水素ガスの供給を短時間で行うこと
で母材に影響を与えずスラッジが選択的に反応する。空
冷孔内部に残存したHFガスをH2ガスでパージする(12
6)。以上の処理の繰返しを行ない前述の水蒸気の供給と
弗化水素ガスの供給工程を交互に2〜5回繰り返す。そし
て、最後に反応炉内部の置換を反応炉内部を1000°Cま
で昇温させ、水素ガスを供給して反応炉2A内部に残存し
た未反応の弗化水素ガスや反応生成物を十分に排出した
後、加熱源5Aの停止および反応炉2Aの外側から冷却ファ
ンで急冷し処理を終了する。
【0042】処理されたガスタービン翼の外表面および
空冷孔内壁面は、実施例1と同様に銀白色の光沢面が得
られる。次にアルミニウム拡散皮膜の形成を空冷孔内壁
面にCVD法(Chemical Vapor Deposition)或いは粉末パ
ック法などにより行ない(127)、アルミニウム拡散皮膜
を施す。
【0043】清浄化された空冷孔内壁面にアルミニウム
拡散皮膜を施すことで健全な組織形態となり、当初の目
的を満足する皮膜が形成される。また、前述した方法に
より空冷孔内部および母材に影響を与ずにガスタービン
翼の性能を確保できる。
【0044】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、空冷孔の
穴径精度および母材に影響を与えずに電解加工によるス
ラッジが短時間で且つ選択的に除去される。更に本発明
を用いることで空冷孔内壁面が清浄化され、この後のア
ルミニウム拡散皮膜の形成では、健全な組織形態を有す
る高精度な皮膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する一実施形態装置の構造を説明
する図面である。
【図2】クロムの酸化物(Cr2O3)とニッケルの酸化物(Ni
O)の標準自由エネルギー線図を示した図面である。
【図3】ガスタービン翼の断面図を示した図面である。
【図4】コバルト(Co)或いはニッケル(Ni)基耐熱合金材
に細深穴の空冷孔を明けるための電解加工方法を説明す
る図面である。
【図5】図4の方法で加工された空冷孔を断面にした時
の空冷孔内部の状態を説明する図面である。
【図6】標準的なアルミニウム拡散皮膜を形成した組織
形態の一例としてニッケル基耐熱合金にアルミニウム拡
散皮膜を形成した組織形態の模式図を説明する図面であ
る。
【図7】電解加工された空冷孔内壁面にアルミニウム拡
散皮膜を形成した場合の組織形態の模式図を説明する図
面である。
【図8】空冷孔内部から母材外表面にかけての温度変化
を説明するためのその部位を示した図面である。
【図9】空冷孔内部から母材外表面にかけての温度差を
示した図面である。
【図10】スラッジと母材の温度差によりスラッジを選
択的に除去する作業ステップを説明した図面である。
【図11】経過時間に対する空冷孔内部から母材表面に
かけての温度測定結果を説明した図面である。
【図12】スラッジに水分を含ませ選択的にスラッジを
除去する作業ステップを説明した図面である。
【符号の説明】
1A・・・ガスタービン翼、2A・・・反応炉、3A・・・ガス供給パ
イプ、4A・・・ガス導入治具、5A・・・加熱源(ヒータ)、6A・・
・水素ガス供給源、7A・・・弗化水素ガス供給源、8A・・・反
応炉の上蓋、9A・・・ガス排気孔、10A・・・アルカリ中和装
置、11A・・・反応炉とアルカリ中和装置の間の弁、12A・・・
弗化水素ガス供給バルブ、13A・・・水素ガス供給バルブ、
14A・・・温調器、15A・・・真空ポンプ、1B・・・弗化水素ガス
とクロム酸化物の反応の標準自由エネルギー線図、2B・・
・弗化水素ガウとニッケル酸化物の反応の標準自由エネ
ルギー線図、1C・・・ガスタービン翼の空冷孔、1D・・・電解
加工液、2D・・・加工物、3D・・・工具電極、1E・・・スラッ
ジ、1F・・・拡散層、2F・・・ニッケルとアルミニウムの金属
間化合物(NiAl)、1G・・・スラッジを巻込んだアルミニウ
ムの層、1H・・・空冷孔内部から母材外表面にかけての温
度変化特性曲線。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 豊海 恵治 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 Fターム(参考) 3C059 AA02 AB01 HA13 3G002 CA07 CA11 CA15 CB01 EA06 GA08 GA10 GB01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材の金属組成が、50%以上のコバルト
    (Co)で構成されるコバルト基合金或いは50%以上のニッ
    ケル(Ni)で構成されるニッケル基合金であって、かつ、
    双方の合金とも少なくとも14%以上のクロム(Cr)を含有
    する耐熱合金材から成るガスタービン翼の電解加工され
    た空冷孔内壁の清浄化方法において、電解加工された空
    冷孔に弗化水素ガスを供給し、空冷孔内壁面のスラッジ
    を母材に影響を与えずに選択的に弗化水素ガスとの分解
    反応を起させて除去することを特徴とするガスタービン
    翼電解加工空冷孔清浄化方法。
  2. 【請求項2】 上記スラッジの選択的分解反応は、スラ
    ッジが弗化水素ガスの分解反応を起こす600〜1000°C
    の高温加熱状態で行うことを特徴とする請求項1記載の
    ガスタービン翼電解加工空冷孔清浄化方法。
  3. 【請求項3】 上記スラッジの選択的分解反応は、スラ
    ッジが弗化水素ガスの分解反応を起こす600〜1000°C
    で母材の内壁面の温度が600°C未満の温度差を付けた
    状態で行なうことを特徴とする請求項1または2記載の
    ガスタービン翼電解加工空冷孔清浄化方法。
  4. 【請求項4】 上記スラッジの弗化水素ガスとの分解反
    応は、供給した弗化水素ガスを空冷孔内部に滞留させた
    状態で行なうことを特徴とする請求項1から3のいずれ
    かに記載のガスタービン翼電解加工空冷孔清浄化方法。
  5. 【請求項5】 上記スラッジの弗化水素ガスとの分解反
    応は、供給した弗化水素ガスを空冷孔内部に滞留させる
    と共に加圧した状態で行なうことを特徴とする請求項1
    から4のいずれかに記載のガスタービン翼電解加工空冷
    孔清浄化方法。
  6. 【請求項6】 上記スラッジの選択的分解反応は、空冷
    孔内部に水蒸気を供給し、スラッジに湿り気を与えて弗
    化水素ガスとの反応効果を上げる状態で行なうことを特
    徴とする請求項1記載のガスタービン翼空電解加工冷孔
    清浄化方法。
  7. 【請求項7】 上記スラッジの選択的分解反応は、空冷
    孔内部に水蒸気を供給すると共に減圧してスラッジ表面
    に水滴を凝着させた状態で行うことを特徴とする請求項
    1または6記載のガスタービン翼電解加工空冷孔清浄化
    方法。
  8. 【請求項8】 反応炉内においてガスタービン翼の電解
    加工空冷孔を化学反応により清浄化する装置において、
    反応炉の加熱制御装置と、反応炉内に設置されたガスタ
    ービン翼の空冷孔内にガスを導入するガス導入治具と、
    該ガス導入治具に取り付けたガス供給パイプにバルブを
    介して弗化水素ガスを搬送供給する弗化水素ガス供給装
    置と、前記反応炉と排気孔を通して連結するアルカリ中
    和装置と、前記反応炉とアルカリ中和装置間の排気を制
    御する弁とを備えたことを特徴とするガスタービン翼電
    解加工空冷孔清浄化装置。
  9. 【請求項9】 上記反応炉とアルカリ中和装置間の排気
    制御弁に並列に真空ポンプを設けたことを特徴とする請
    求項8記載のガスタービン翼電解加工空冷孔清浄化装
    置。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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JP2009509082A (ja) * 2005-09-24 2009-03-05 エムティーユー エアロ エンジンズ ゲーエムベーハー ガスタービンコンポーネントの空洞を洗浄する方法
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CN117970856A (zh) * 2024-03-29 2024-05-03 杭州七所科技有限公司 无人值守水洗模块的自动化控制系统及方法

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