JP2009072798A - 金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷却通路割れに優れた金型の提供。
【解決手段】合金鋼材からなる溶融金属加工用金型を焼き入れ、焼き戻し熱処理した後、冷却通路表面にガス窒化またはガス軟窒化または固体ガス窒化等の低濃度窒化による圧縮応力を付与してから、無電解Ni―Pメッキを施した後、鋼球、ガラスビーズ等を圧搾空気で送り込む表面安定化処理(ショットピーニング)を行ない、冷却通路での耐応力腐食割れ機能を強化させ、溶融金属加工用金型の割れを防ぎ寿命を大幅に向上させる。
【選択図】図1

Description

本発明は合金鋼材からなる溶融金属加工用金型の冷却通路内表面材料に関するものである。
合金鋼材からなる溶融金属加工用金型にはアルミニウム合金、マグネシウム合金などの鋳造に用いられるダイカスト用金型がある。
キャビィティ内に溶融した金属をすばやく圧送し、急冷するサイクルを繰返し大量の均質な鋳物製品を製造するため精緻な形状のほかに鋳物製品を内部から正確に冷却する冷却通路の配置が重要な役割を果たす。
鋳造された鋳物製品が成形部分であるキャビティから排出された後は離型剤を内在させた水性又は油性の冷媒がスプレーされ型表面の冷却が行われる。
このサイクルによって型表面は圧縮−引張りの応力が繰り返されているためキャビティ部分ではヒートクラックが常時発生、増加し金型寿命を決める大きな要因になっている。
近年は作業環境課題、排水環境負荷軽減課題の観点からスプレー噴霧の量を大きく軽減する課題を負っている中で内部冷却通路の存在はその重要度をましている。
従って、金型内部に冷却通路を設けて冷媒を通すことにより金型表面の昇温を緩和する技術はコンピューター解析等で進みつつある。
型表面を内部冷却通路で冷却するのは間接冷却であるため、表面に直接冷媒を当てるのと比較して熱効率はかなり劣る。以上のような背景から、数多くの冷却通路を内在した金型が増加している。このことによりキャビティー部での熱疲労負荷が軽減しキャビティー部のヒートクラックは大きく軽減する一方で内部冷却通路を起点とする割れが発生し、そこから大割れすると言う深刻な問題が生じている。
即ち、溶融金属加工用金型は寿命の大半が冷却通路貫通割れにより決まってしまう。
割れ対策として予め銅管又はステンレス管の薄肉筒を内部挿入し、腐食と冷却通路の補強を行なったものがあるが亀裂による水漏れが解消する一方で冷却能力の著しい低下をきたし、鋳物品質に深刻な影響を与えている。又、頻繁に行なわれるメンテナンス時の金型歪取り焼鈍時(400〜500℃、2時間)に入れ替え、再挿入の手間が生じ大きな費用負担と多くの時間を浪費している。
上記問題を解決する方法として特開平9-27923熱間加工用金型およびその内部冷却穴メッキ方法、特開001-073160金型冷水路のメッキ方法がある。
かかる方法は錆による腐食対策のみで、冷却通路にかかる応力対策、冷却効率向上対策は不十分で複数の冷却通路同士の距離およびキャビティ−と冷却通路のとの距離を縮める事が出来ない欠点がある。又、メッキ層厚さを70〜100μmとするため冷却効率の更なる悪化、メッキコストの増大、メッキ層の剥離の問題も生じている。
また、近年の過酷な製造条件に呼応する金型に対しては寿命向上に必ずしも有効でない事例が多い事も判明している。
内部冷却通路を有する溶融金属加工用金型の場合、キャビティーと内部冷却通路との間の温度差により、内部冷却通路の内壁に引張り応力が発生しており、内部冷却強化の為に冷却管をキャビティーに近づけること、冷却管本数を増加させることが更に引張り応力を大きくし、金型割れが増大すること方向になっている。
特開平9−27923 特開001−073160
内部冷却通路の割れの発生は冷媒による腐食を起点の増加および内部冷却強化による引っ張り応力の増加が主要因である事がわかっている。又、メッキ施工後200〜600℃の熱処理を行なうがこれにより圧縮応力が大きく損なわれる事が特開平8−39432で開示されている。
以上の課題をより効果的に解決するため、腐食対応に加えて、表面に圧縮応力を付与する方法が最も効果的であることを突き止めた。
鋼材表面のメッキに圧縮応力を付与する技術は既に特開平8−39432、特開平2−133578等で開示されており、メッキ施工後、熱処理し、更にショットピーニング又はドライホーニングにより顕著な圧縮応力と密着性が得られる。上記方法は耐磨耗、繰り返し衝撃磨耗防止の目的であり、冷却通路内部の応力腐食割れを想定したものでない。本法のショットピーニングは亀裂発生の防止を目的とするもので耐磨耗目的ではない。本法は適切に焼入れ、焼き戻し熱処理した合金鋼材からなる該金型の冷却通路表面部分に於いてショットピーニングされた低濃度軟窒化層、Ni−Pメッキ層からなる。
低濃度窒化法はイオン窒化法、プラズマ窒化法、ガス窒化法、ガス軟窒化法の前処理強化、反応条件の選定により得られることは既に知られている。(熱間工業金型の寿命対策,2001年、日刊工業社、P155)
かかる条件で金型のキャビティー部には数多くの熱疲労対応の低濃度窒化処理が既に行われている。発明者が調査したところ、低濃度窒化法の金型への適用はすべて繰り返し加熱衝撃が加わる金型キャビティー側への適用であり内部冷却通路への適用事例はない。
広く行なわれているイオン窒化法、プラズマ窒化法、ガス窒化法を適用し、金型キャビティー部への窒化を行なった時に細穴冷却通路の内部までは窒化されることはない。意図しても直径相当の入口部分しか窒化されることはない。
又、冷却通路への窒化はかえって寿命を縮めるとの懸念からマスキングするのが一般的である。本法の低濃度軟窒化処理はイオン窒化法、プラズマ窒化法、溶融塩浴法でないガス窒化、ガス軟窒化、固体ガス窒化の内、都合の良い方法を採用する。イオン窒化法、プラズマ窒化法は電気放電の及ぶ冷却通路の入口部分しか窒化出来ないので本法には適さない。
溶融塩浴法は白層を形成するので圧縮応力が冷却通路全体に入らず不適当である。
低濃度窒化処理条件は450〜550℃、時間は1〜8時間を合金材料の種類、重量から選ぶ。アンモニアガス濃度は予め白層の出ない低濃度ガス分圧条件を選んで行なう。白層とは合金鋼材を窒化するときに高濃度アンモニアガス分圧で行ったときに生成する窒化鉄で硬くて100μm以上の深い硬化層を比較的簡単に得ることが出来る。このとき合金鋼材中の固溶炭素が析出し、回りにかもめ状の析出物が発生する。
即ち、処理後の断面金属顕微鏡観察により表面に5〜20μm程度の白層と呼ばれる鉄ー窒素の化合物層及びかもめ状のマークが観察される。
本方法では白層及び、かもめ状マークが無い条件を選び出し、アンモニアガス分圧を選定する。
表1にSKD61合金材における低濃度窒化処理の条件と窒化拡散層、白層、カモメマークの例を示す


窒化処理の効率を上げるため各冷却通路には窒化ガスを導入する細管を予め用意して行なう。窒化処理を行った後、回転研磨機等を用いて適宜冷却通路内部の脱スケールを行う。冷却通路内部をアルカリ液で脱脂、塩酸又は硫酸で表面汚染物質を除去する。メッキは無電解Ni-Pを行う。圧縮応力を安定して付与する方法としてショットピーニングを行なうと更に良い結果が得られた。
本方法によればメッキ層、低濃度窒化層両方に圧縮応力付加効果が生じ、メッキ後熱処理を行なう必要が無く又メッキ層は薄くても効果が得られる事が判明した。安定化処理の目安は表面粗度(Rmax)の数値で把握できる。
我々の実験の結果から表面粗度はRmaxで管理でき、好ましくは1〜20μmが好ましい事が判明した。
表2にアムスラー試験機を使い、内径7mm径のSKD61薄肉細管(肉厚1.5mm)内部におけるショットピーニング付加の破壊値結果を示す。低濃度窒化層は50μm、Ni−Pメッキ層を細管内部に施してある。ショットピーニングの強さは表面粗度(Rmax)で示した。ショット球はASTM No.325、No.120、No.60標準篩通過径44μm、125μm、250μmのガラス球を使用した。
使用するショット球は鋼球、ステンレス球、セラミック球、ガラス球から好ましいものを選んで使用する。
図1には本発明金型の冷却管通路表面の概念を図示したものである。図2は金型の冷却通路の例を示したものである。図3は金型の冷却通路表面の深さ方向の硬度分布を示したものである。図4は同じく冷却通路表面の深さ方向の施工断面を示したものである。
冷却通路の熱伝達効率を落とすことなく、繰返し熱疲労から来るヒートクラック、応力腐食割れに優れた抵抗力を有し、合金鋼材からなる溶融金属加工用金型の大幅な寿命向上が図れる。
本発明によれば通常、熱間加工用金型はキャビティー面に型彫り加工を施すとともに、内部冷却通路も加工される。続いて所定の焼入れ焼き戻しが行なわれた後に、必要に応じて窒化処理、PVD処理が行われる。
一方、内部冷却通路については過酷なところに関しては銅管、ステンレス管等の薄肉管を挿入する例もあるが冷却効率を大きく損ない製品品質への影響は無視できない。
又、メンテナンス時に行なう歪取り焼鈍作業のため引き抜き再挿入の作業が生じる欠点を有する。
本法は低濃度窒化を施し、無電解メッキを行なうが合金鋼材に圧縮応力が入っているためメッキ膜に靭性が付与され亀裂によるメッキ膜の破壊が大幅に低減され薄い膜厚で冷却通路の応力腐食割れに対応可能となる。冷却通路に70μm厚膜の無電解メッキを施す例もあるが冷却効率を大きく損ない、亀裂、剥離による損傷が入り易く実用にはいたっていない。10μm薄膜の場合は冷却効率を損なうことは無いがメッキ膜に靭性が無いため熱疲労による引張り応力に起因する亀裂、剥離を生じ、応力集中部分を中心に錆、亀裂を容易に発生せしめる。
本法によれば低濃度窒化処理によって冷却通路内部に圧縮応力を与え、かつ、薄い無電解メッキ膜で腐食防止が出来、冷却効率を損なうことなく応力腐食割れを大幅に軽減した冷却通路を有した金型を得る事が出来る。冷却通路内部は球状の鉄又はガラス、セラミックスを圧縮空気とともに送り込み所定の圧縮応力、表面粗度を得て窒化層とメッキ層の密着力を強化した安定化処理を行なう。得られた冷却通路を保有する金型は冷却熱効率を損なうことなく、冷却通路割れも大幅に軽減され、メンテナンス時の挿入管引抜、挿入作業も無く金型の大幅寿命向上に寄与する。
上記の冷却通路への窒化、メッキは冷却の厳しい応力腐食割れの予想される冷却通路を選んで実施する事が可能である。本法を採用することで安定した製品品質と金型の大割れを防ぐことが出来、大幅な寿命向上が可能となる。
冷却通路割れで寿命が決まる金型に於いて耐腐食性、冷却効率、補修機能に優れた冷却通路を簡単な冷却通路表面材料構成で大幅な寿命向上を実現した。
ジャケットコアーと呼ばれるアルミダイカスト金型の冷却通路とキャビティ間肉厚4mm金型の寿命は9000ショットであった。使用されている材料はSKD61、熱処理による硬度は45ロックウエル硬度であった。無電解メッキ厚みは50μmあった。冷却通路の本数は7本、内径は4mm、深さは150mmであった。冷却通路配置近傍の型の肉厚は12mmであった。寿命の原因は冷却通路からの亀裂破損のよる水漏れ、および冷却通路からの型亀裂破壊であった。鋳造直後のキャビティー表面温度で315℃であった。窒化が効果的に行なわれるように窒化ガスを2mm内径の銅管先端を各冷却通路奥までセットして処理を行った。
510℃、5時間の条件で窒化処理を行い冷却通路に施した。表面硬度は1100HV、窒化層深さは50μmであった。表面を脱スケールし、無電解Ni−Pメッキを20μm施した。
引き続いて、圧力0.3MPa/cmで44μmガラス球ショットピーニングを60秒行い表面安定化処理を行った。表面粗度は2μm(Rmax)であった。寿命は18000ショットに向上した。鋳造直後のキャビティー表面温度で296℃と低下を認めた。
同じ金型に低濃度窒化処理を行いキャビティと冷却通路に施した後、Ni-P無電解メッキを行なった。引き続いて冷却通路内を圧力0.3MPa/cmで125μmガラス球ショットピーニングを60秒行い表面安定化処理を行った。表面粗度は5μmであった。
無電解メッキ後のNi-Pメッキ膜厚は10μmであった。
鋳造直後のキャビティー表面温度は296℃から287℃に低下した。寿命は27000ショットに向上した。
実施例2の金型冷却通路とキャビティ間肉厚4mmから2.5mmに減少させた。鋳造直後のキャビティー表面温度は287℃から246℃に下降した。寿命は52000ショットに向上した。
アルミダイカスト鋳造金型の一部である外径8.6mm、内径5mm、長さ150mm、冷却通路と外側との肉厚1.8mm鋳抜きピンの寿命は931ショットであった。寿命原因は亀裂水漏れであった。合金材料はSKD61を使用、熱処理硬度は48ロックウエル硬度であった。実施例2と同じ処理を施したところ寿命は6387ショットに向上した。
冷却通路材料表面材料構成図の例 金型の冷却通路の例 硬度分布の例 施工断面写真例
符号の説明
1:冷却通路、2:Ni−Pメッキ層、3:低濃度窒化層、4:金型母材部

Claims (3)

  1. 合金鋼材からなる溶融金属加工用金型の冷却通路表面部分に低濃度窒化を施した低濃度窒化層と、この低濃度窒化層の上に無電解Ni-Pメッキ層を形成させ、前記無電解メッキ層が最表面であることを特徴とする金型。
  2. 請求項1記載の冷却通路表面部分がショットピーニングによる冷却通路内表面の最大粗さが1〜20μmからなる金型。
  3. 請求項1〜2のいずれかの方法によって形成されたことを特徴とする応力腐食割れに優れた金型。
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