JP3029642B2 - 溶融金属に対する耐溶損性の優れた鋳造用金型または接溶湯器具 - Google Patents

溶融金属に対する耐溶損性の優れた鋳造用金型または接溶湯器具

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、溶融金属の鋳造用金型または堰、ピン等溶
湯に接する器具類(本発明において接溶湯器具と記す)
に関するものである。
〔従来の技術〕
溶融金属の鋳造による成形(ダイカスト、重力鋳造な
ど)に用いられる金型や接溶湯器具(鋳抜きピン、中子
ピン、湯口堰、アルミダイカストスリーブなど)には、
従来、熱間ダイス鋼、高速度工具鋼、ステンレス鋼など
の鋼や鋳鉄が用いられてきた。
現在、鋳造による成形で最も多く用いられる被成形金
属はアルミニウム合金であるが、この鋳造の際、金型や
接溶湯器具に使用されている上記鉄鋼材料のアルミニウ
ム合金溶湯と接触する部分では、これらの鉄鋼材料がア
ルミニウム合金溶湯によって溶損され、アルミニウム合
金溶湯中の鉄含有量を増加し、鋳造部品の品質を低下せ
しめる。さらに、これら金型等の溶損は、操業上種々の
不都合を生ぜしめ、それの耐用期限の長短に大きく影響
する。
これらの問題を解決するために、従来、溶融アルミニ
ウム合金と全く反応しないセラミックス系の材料や溶損
を起こしにくいW合金、Mo合金等が一部使用されている
が、これらの材料は価格面からはもちろん、入子として
用いられた場合周囲の鉄鋼材料との熱膨張率の差が大き
いことによる種々の問題や、折れ・欠けなどに対する強
度、靭性、耐熱衝撃性の不足などの問題があり、必ずし
も工業上これらの課題を解決するには至っていない。
さらに、鋼製の金型または接溶湯器具に窒化物または
炭化物または硼化物等(TiN,TiC,BN,SiC,Si3N4,TiB2,Al
2O3)等を、プラズマ化学蒸着法やスパッタリング法な
どの物理蒸着法、融着法、焼ばめ法などで表面を被覆す
る提案がされている(特願昭55−14395号、特願昭57−1
31024号、特願昭57−143747号、特公平1−29133号、特
願昭59−156337号)。しかし、化学蒸着法や物理蒸着法
のの場合、膜厚が数十μmと薄く、また表面処理層に、
微細なクラックを有し、このクラックを経路として、溶
融金属(例えばアルミニウム合金)が浸透し、表面処理
層直下の母材中の鉄と反応して合金を生成し、この合金
生成により表面処理層直下が膨張して処理層が剥離して
しまい、剥離後は、溶損が急速に進む現象が見られる。
これに対し、浸炭、窒化による表面処理層は、拡散処
理であるため、深い処理層が得られるうえ、剥離は問題
とならない。従来からSKD61等の熱間ダイス鋼、高速度
工具鋼、ステンレス鋼などに窒化処理を施し、溶損寿命
を高める工夫がなされてきた。ところが、これらの鋼は
窒化処理により耐溶損性を高めるべく開発された合金で
はないので、用途によっては耐溶損性が不足することが
本発明者らにより見出された。
本発明者は、アルミニウム合金を中心とした溶融金属
による鉄鋼材料、非鉄合金の溶損について、種々検討を
行なった結果、これらの合金は、溶融アルミニウム合金
との界面で、まずAlとFe,Ni,Mn,Co等が合金層を形成
し、これを介して合金成分が溶融アルミニウム合金中へ
拡散することにより溶損が進行すること、窒化処理を行
なうことにより、Fe,Ni,Mn,Co等からなる基地表面に、
アルミニウムと反応しない窒化物が分布することから、
耐溶損性が増すことを見出し、さらに耐溶損性を高める
ためには、この窒化物の分布密度を高めることが効果の
あることを見出した。
本発明者は以前に、炭化物を相当量分散させた鉄鋼材
料が従来の当該用途用鉄鋼材料に比べ耐溶損性が著しく
優れることを見出し、超硬度高速度工具鋼を低圧鋳造用
の治工具材料とする特許を出願した(「特願平01−1748
97号」(特開平3−39.452号公報参照))。
また、同様の発想から、安価で実用上、十分な強度、
靭性を持つ新しい合金を提案した(特願平1−188397号
(特開平3−53.046号公報参照))が、これらは、目的
とする金型や接溶湯器具によっては、形状面からの機械
加工性や熱衝撃などによる耐割損性、耐折損性が不足す
る場合があることが判った。
なお、従来の技術として特開平1−111846号がある
が、これについては後に触れる。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、これらの問題を解消し、さらに溶融金属に
対する耐性を増進し、また十分な強度、靭性等実用特性
を備えた金型または接溶湯器具を提供することを目的と
する。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、重量%で、C 0.2〜0.8%、Si 0.1〜3%、
Mn 0.1〜3%、Cr 6.95〜15%、場合によっては、これ
にW、Moの一種または二種を合計で、0.5〜5%、ある
いはさらに、V 0.2〜3%やNi、Cu、Coの一種以上を適
宜含み、残部Feならびに不可避的不純物からなるマルテ
ンサイト系の合金鋼に窒化処理を施したことを特徴とす
る溶融金属に対する耐溶損性の優れた鋳造用金型または
接溶湯器具である。
〔作用〕
本発明は、溶損に対する窒化層の有効性に着目して、
より有効な窒化層を得て、さらに非窒化性の向上を図る
とともに、耐熱衝撃性、靭性、非加工性等、実施上の問
題点を加味しつつ選定され、その結果、中C高Crマルテ
ンサイト系とされた成分範囲を有するもので、これらの
要求特性を高いレベルで満たし、かつこれらを調和させ
ている。
なお、本発明の金型または接溶湯器具に用いる材料の
化学成分に近似した同用途材として、前記のごとく特開
平1−111486号がある。
特開平1−111846号は、窒化特性を付与する元素とし
てAlを挙げ、これを構成元素として0.1〜1.5wt%添加し
ている。これに対し、本発明は、Crの添加効果がAlと比
べ、極めて顕著であることを見出したことによるもの
で、Alを添加しないでCrを増量したものである。すなわ
ち、該提案の実施例のCr含有量は、すべて6%未満であ
るのに対し、本発明のCr含有量は6.95%以上である。つ
まり、該提案の同用途鋼がCr含有量6%未満の熱間工具
鋼であるのに対し、本発明は、6.95%以上のCrを含有す
る鋼であり、この鋼を窒化したとき、耐溶損性向上に大
きな効果を持つ窒化層が形成されることを見い出したこ
とによるものである。
本発明組成の合金材料は、通常の鋳造または鍛造によ
り作製することができ、マルテンサイト焼入れまたはこ
れに準ずる焼入れ、および焼もどしを行なうことによっ
て、優れた強度と靭性が得られ、粗大な炭化物が生じな
いため、機械加工性が実用上問題とならない。これを所
定の金型や接溶湯器具に加工したのち、窒化処理を施す
ことにより、耐溶損性の優れた金型や接溶湯器具とする
ものである。
次に本発明鋼の成分範囲の限定理由を述べる。
Cは、本発明鋼の優れた焼入性、焼もどし硬さ、靭性
を得るため添加され、組織を焼入時にマルテンサイトと
する。また、Cは、W、Mo,VおよびCrなどの炭化物形成
元素と結合して炭化物を形成し、結晶粒の微細化、耐摩
耗性、焼もどし軟化抵抗、高温硬さを与えるために添加
するものである。多すぎると過剰の炭化物を生じ鍛造
性、被加工性を著しく低下させて実用面での不都合を生
ずるので、0.8%以下とし、低すぎると上記添加の効果
が得られないので0.2%以上とする。
Siは、製鋼のときの脱酸効果のために0.1%以上添加
される。多すぎると熱伝導率を低下させるので3%以下
とする。
Mnは、焼入性を向上させるが、多すぎるとA1変態点を
過度に低下させ、焼なまし硬さを過度に高くし、被切削
性を低下させるので0.1%以上、3%以下とする。
Crは、適正な添加量の設定により焼もどし軟化抵抗お
よび高温強度の向上、Cと結合して炭化物を形成するこ
とによる耐摩耗性の向上、焼入性の向上および窒化迅速
性付与の効果を有するものである。Crは、さらに窒化処
理のとき、Nと結合して窒化物を形成し、本発明鋼の最
も重要な特徴である耐溶損性を付与する。鉄鋼材料の溶
融金属による溶損は、前記のように溶融金属と母相のFe
やNiが化合物を形成し、これを介して鉄鋼材料が溶融金
属側に拡散して、進行する現象であるが、窒化物が母相
に高密度で分布することによって母相と溶融金属の反応
界面を小さくすることにより、溶損が進行しにくくな
る。しかし、Crの過剰な添加は、過度の炭化物を生じ、
靭性、被加工性を著しく低下させ、実用面で不都合を生
ずるので、6.95%以上15%以下とする。
W,Moは、焼入加熱時、基地に固溶しにくい炭化物を形
成して耐摩耗性向上に効果をもたらすものであり、ま
た、焼もどし時微細な炭化物を析出して軟化抵抗、高温
強度を増加させる効果を有するものである。
W,Moはさらに窒化処理のとき、Nと結合して窒化物を
形成し、上記Crと同様に母相と溶融金属の反応界面を小
さくすることにより、溶損が進行しにくくする。W,Mo
は、Crと比較すると上記の効果を得るために多量の添加
が必要であり、多すぎると靭性低下の影響を及ぼし易い
ため、1種または2種の合計で5%以下とし、低すぎる
と上記添加の効果が得られないので0.5%以上とする。
Vは固溶しにくい炭化物を形成して耐摩耗性および耐
焼付性向上に効果を有するものであり、焼入加熱時基地
に固溶して、焼もどし時微細な凝集しにくい炭化物を析
出し、高い温度域における軟化抵抗を大とし、大きな高
温耐力を与えるのに有効な元素である。特にダイカスト
用の金型または接溶湯器具の場合、溶湯の流動速度は著
しく早く、このため金型または接溶湯器具の表面は、溶
湯の衝突や通過により、高温へ昇温したり、摩擦作用を
うける。この意味で高い温度域における軟化抵抗や大き
な高温耐力が必要である。
多すぎると巨大な炭化物を生成するなど靭性を低下さ
せるので、3%低下とし低すぎると型表面部の早期軟化
をまねくなど上記添加の効果が得られないので0.2%以
上とする。
Ni,Cuは、それぞれの元素とAlとの状態図と、FeやMo
とAlとの状態図の比較からわかるように、溶湯Alに対す
る固溶度がFeと同等またはそれ以上であり、また、溶損
されにくいことが広く知られているMoに比べ固溶度が大
きく、またAlと化合物層を生成する化合物(FeAl3,NiAl
3等)も、低温から生成され易いので、積極的には添加
しないが、それぞれ5%以下は含有されても、実用上問
題となるような耐溶損性の大幅な低下をもたらさないの
で、靭性や耐酸化性向上のために含有しても良い。
Coは、そのAlに体する状態図から、Feとほぼ同様の溶
損挙動をすることがわかり、一方、耐酸化性を向上する
から必要により添加することができる。
なお、本発明の金型等および材料に公知の種々の快削
元素を添加し、この特性を向上することは可能である。
〔実施例〕
次に実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
実施例1 まず、第1表に示す組成の素材を準備し、これから第
1図に示す試験片を作製し、耐アルミ溶損性試験片と耐
亜鉛溶損性試験片とした。
本発明品と比較例U(SKD61)は、920〜1150℃で焼入
後、580〜620℃で焼もどしを行ない、硬さを約HRC40と
した。比較例V(超硬度高速度工具鋼)および比較例X
(特願平1−188397号に記載の鋼)は、焼なましままと
し、比較例W(粉末高速度工具鋼)は、所定の熱処理を
施し、硬さを約HRC50とした。
耐溶損性試験片の一部は、表面処理された。本発明鋼
はすべて窒化処理を施した。第2表にこれらそれぞれの
表面処理の処理条件と、処理層の厚みを示す(本発明品
の溶融ソルト法はいわゆるタフトライド法である)。
耐アルミ溶損性試験は、アルミ合金ADC12の700℃の溶
湯中およびB390合金(Al−17%Si)の740℃の溶湯中
に、2時間ずつ浸漬し、試験片の試験前後の重量比で耐
溶損性を比較した。なお、B390合金は、耐摩耗性アルミ
合金であるが、耐摩耗性付与のため、含Si量が、ADC12
より高い(ADC12は約11%)。このため、融点が高く、
高温度で鋳造されるので、試験温度もこれに合わせて74
0℃とした。
耐亜鉛溶損性試験についてもほぼ同様で、試験片は亜
鉛合金ZAC2の600℃の溶湯中に10時間、浸漬した。
第3表に耐溶損性試験の結果を示す。
比較例W(粉末高速度鋼TiC処理品)は、実用アルミ
ダイカストの中子ピンに適用され、アルミ合金の焼き付
きまたはアルミ合金による喰はれに対し、耐久寿命が良
い実績をもつものである。
第3表からわかるように、本発明品の耐溶損性は、減
量率が大きいADC12の700℃およびB390号金の740℃と比
較すると、いずれの材質、窒化処理方法についても、比
較例U(SKD61に浸硫窒化)および比較例V(超硬度高
速度鋼,表面処理なし)に比べ優れている。また、本発
明品において、最も効果的な窒化法は、浸硫窒化法であ
り、これによるADC12の700℃の減量率では、比較例Y
(セラミックス)以外では、比較例Wおよびやはり浸硫
窒化処理である比較例Xとほぼ同等、B390合金の740℃
での減量率では比較例Xに対しやや劣る粒度である。
なお、比較例W(粉末高速度工具鋼TiC処理品)は、A
DC12の700℃では溶損減量率が上記のように僅少である
が、B390合金の740℃では溶損が急激に進行した。この
試験後の試料の観察を行なったところ、TiC被膜が剥離
し、剥き出しになった母材とアルミ合金の反応が起り溶
損が進んでいた。この挙動は、公知のセラミックコーテ
ィング技術(PVD,CVD,溶融塩法等)によるその他の炭化
物、窒化物、硼化物系(VC,NbC,TiN,BN等)の被覆処理
品についても通常見られる現象と同様であった。
浸硫窒化による本発明品の耐溶損性は、前述のように
比較例Y(セラミックス)およびX(特願平1−188397
号)には劣ったが、これらが実用される場合、重要な問
題となる耐熱衝撃性、機構加工性については後述の如く
極めて優位である。
次に耐熱衝撃性試験結果について述べる。該試験は、
30mm角×20mm厚さの試料を前記と同様の熱処理および表
面処理を施して準備し、ガスバーナーで700℃に加熱
後、ただちに20℃の水浴中に浸漬することを繰り返し
て、表面クラックが所定程度以上となるまでの回数を調
べた。対象品は本発明品(A,CおよびEにそれぞれ浸硫
窒化したもの)、比較例Xおよび比較例Yである。その
結果、比較例Y(セラミックス)は、1回で砕け散り、
比較例Xは、50回であった。第2図に比較例Xのスケッ
チを示す。本発明品は、いずれも100回までのテストで
変化は見られず、以降は打ち切った。
被削性テスト結果を第4表に、また、第5表にその切
削条件を示す。テストは焼鈍状態の各試料母材をエンド
ミルで切削したときの、エンドミル刃先摩耗量を測定し
た。セラミックスは、全く加工できず、比較例Xは、1m
切削後の刃先摩耗が0.85mmと大きく、これ以上加工でき
なかった。これに対し、本発明にかかるAおよびCは、
それぞれ0.15mm(1m切削後)、0.28mm(2m切削後)およ
び0.22mm(1m切削後)、0.41mm(2m切削後)と比較例X
に比し、格段に高い被削性を示した。
以上、耐熱衝撃性および被削性テスト結果を述べた
が、これらにおいて本発明品は、各比較例より優れてお
り、総合性能が高いことが判る。
なお、本発明Gは、Ni,Coを含むものであり、本発明
A〜Fと比べ、若干耐溶損性が劣る。しかし、それでも
比較例Uよりは著しく優れ、浸硫窒化の場合、比較例V
よりはるかに優れる。そして、Niを含むため、衝撃特性
が増していた。これは、用途によって、耐割れ性や耐折
損性を重視する場合、この程度のNiその他の元素を含有
させることが有効であることを示している。
なお、本実施例では、アルミ合金と亜鉛合金に対する
溶損試験の結果を示したが、一般に溶融金属による金型
等の溶損は、溶融金属と金型等の母相である金属との接
触による化合物形成により進行するので、本発明の金型
等や材料は、アルミ系や亜鉛系に対すると同様にその他
の溶融金属、例えば、鉄系や銅系の合金に対する耐溶損
性も同様に優れることが推論される。
実施例2 次に前記の素材から、金型を製作し、実用テストを行
なった結果を示す。
熱処理および表面処理は前記実施例1と同様(本発明
品は浸硫窒化)とし、アルミダイカスト金型の一部を入
子として製作した。入子は、アルミ合金の溶湯が、ゲー
トから直接衝突するゲート正面部に組み込んだ。アルミ
合金の溶湯温度は750℃である。
また、本入子は、入子と言えども寸法が大きく(概略
寸法150×200×100)、さらに形状が複雑でコーナー部
を有するものとした。また、入子表面は、アルミ合金が
凝固して金型から除去された後、水冷され、この際大き
な熱応力が表面に作用し、しかもコーナー部は応力集中
により過大な熱応力が作用するものである。
第6表にそれぞれの金型入子の金型寿命を示す。参考
例Zは500ショット使用した時点で溶損により金型表面
が肌あれを生じ、使用を停止した。
比較例U(SKD61浸硫窒化)は、1,500ショットで肌あ
れが生じた。また、比較例Xは、溶損は生じなかった
が、1,800ショットでコーナーR部より深いクラックが
発生し、使用を停止した。これは第2図で示した結果を
裏付けるものである。
これに対し、本発明品Aは、5,000ショットで肌あれ
を生じ、Eは5,000ショットで肌あれは軽微であった
が、テストは中止した。これは、EがW,Mo,Vを含むため
高温強度が強く、窒化層へのバックアップ作用が強いこ
とによるものである。
本用途のように、高温溶湯が、治工具の表面に高速で
衝突する場合、治工具表面は高温への昇温と溶湯の運動
エネルギーにより、機械的にも侵食される。このような
場合には、W,Mo,Vの添加は有効である。
実施例3 次にアルミダイカスト成形に用いる中子ピンを第7表
に示した素材により製作した(熱処理および表面処理は
実施例1に同じ)。これらの耐久寿命を同表に示す。
本表から、本発明品のすべてと比較例Xは比較例Uの
10倍以上の耐久性を持つことがわかる。ただし、比較例
Xは破損はしないものの、ピンの一部にクラックが入
り、余命が僅かであることがわかる。これに対し本発明
品B,D,Fは、これらのクラックは発生しなかった。また
アルミダイカストの場合、鋳造後に金型や中子ピン等は
水冷され、急冷されるので耐熱衝撃性の低いセラミック
ス製の中子ピンは一回目の鋳造で破損した。
実施例4 次に、低圧鋳造によるアルミ製品成形に用いる鋳抜ピ
ンを第8表に示す素材で製作した。熱処理条件、表面処
理は実施例1と同じである。ただし、V′はVと同材質
である。その形状を第3図に示す。寸法は第3図中のd
=5mmφ、長さは200mmである。同表にそれぞれの素材で
製作した鋳抜ピンの耐久性を比較して示した。参考例Z
では200回の鋳造で溶損によりピンの径が細くなり寸法
不良で使用が不可能となった。また比較例Vは、150回
の鋳造で焼付折損を生じ、耐溶損性を高めるために浸硫
窒化を行なったもの(比較例V′)では、さらに早期に
折損(50本)を生じた。これに対し、本発明品A〜G
(溶融ソルト法による窒化処理の一種であるタフライド
処理を施したピン)は、折損を生ぜず、いずれもほぼ1,
200回まで使用可能で最終的にはピンにアルミ合金の付
着を生じた。
〔発明の効果〕 以上述べたように、本発明は、アルミ合金を始めとし
た溶融金属鋳造用の金型または接溶湯器具において、窒
化を行なったものであるが、従来、SKD61を始めとする
熱間ダイス鋼や粉末高速度工具鋼等既存のいわば、あり
あわせの材料に窒化を行なったものではなく、窒化処理
してこれらの用途に用いることを前提に、耐溶損性につ
いてはもちろん、耐熱衝撃性、靭性、被削性等総合性能
を考慮して、新規な母材成分である中C高Crマルテンサ
イト系を選定したものであるから、従来材に比し、耐溶
損性はもちろん、総合性能に優れるため、これらの耐久
寿命に大幅な向上効果をもたらすものである。
したがって、耐溶損性が優れる超硬度高速度工具鋼や
セラミックスが工業実用上、折損、破損の問題点から適
用が十分進まなかったのに対し、本発明の金型等や材料
は、前記のように靭性、抗折強度、耐熱衝撃性に優れる
ため実用性が高い。さらにW、Mo合金に比べ、安価で製
造できる。
また、本発明者が提案した耐溶損鋼(特願平1−1883
97号によるもの)が、熱衝撃性、機械加工性の面が問題
となる用途に本発明品の実用性が大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1で溶融アルミおよび亜鉛に使用した
溶損試験片を示す図、第2図は、実施例1で耐熱衝撃試
験を行なった後の試験片の外観スケッチ図で、比較例X
の50回テスト後の状況を示す図および第3図は実施例4
で使用した鋳抜きピンを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/18 B22C 9/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C 0.2〜0.8%、Si 0.1〜3
    %、Mn 0.1〜3%、Cr 6.95〜15%を含み、残部Feな
    らびに不可避的不純物からなるマルテンサイト系の合金
    鋼に窒化処理を施したことを特徴とする溶融金属に対す
    る耐溶損性の優れた鋳造用金型または接溶湯器具。
  2. 【請求項2】重量%で、C 0.2〜0.8%、Si 0.1〜3
    %、Mn 0.1〜3%、Cr 6.95〜15%、およびW、Moの一
    種または二種を合計で、0.5〜5%を含み、残部Feおよ
    び不可避的不純物からなるマルテンサイト系の合金鋼に
    窒化処理を施したことを特徴とする溶融金属に対する耐
    溶損性の優れた鋳造用金型または接溶湯器具。
  3. 【請求項3】重量%で、C 0.2〜0.8%、Si 0.1〜3
    %、Mn 0.1〜3%、Cr 6.95〜15%、およびW、Moの
    一種または二種を合計で、0.5〜5%、さらにV 0.2〜
    3%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるマル
    テンサイト系の合金鋼に窒化処理を施したことを特徴と
    する溶融金属に対する耐溶損性の優れた鋳造用金型また
    は接溶湯器具。
  4. 【請求項4】重量%で、C 0.2〜0.8%、Si 0.1〜3
    %、Mn 0.1〜3%、Cr 6.95〜15%、W、Moの一種ま
    たは二種を合計で0.5〜5%、V0.2〜3%、さらにNi、C
    u、Coのうち一種または二種以上をそれぞれ5%以下、
    残部Feおよび不可避的不純物からなるマルテンサイト系
    の合金鋼に窒化処理を施したことを特徴とする溶融金属
    に対する耐溶損性の優れた鋳造用金型または接溶湯器
    具。
JP2164656A 1990-06-22 1990-06-22 溶融金属に対する耐溶損性の優れた鋳造用金型または接溶湯器具 Expired - Fee Related JP3029642B2 (ja)

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