JP6453427B1 - ダイカストスリーブおよびダイカストスリーブの処理方法 - Google Patents
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前記射出スリーブ内面にピットを形成し、
該ピット形成により、前記射出スリーブ内面のピット形成領域の表面粗さRzが、20μm以上かつ200μm以下であり、
前記ピットの開口部の面積が、前記ピットが形成されていない状態での前記スリーブと前記溶融金属との接触領域に対して、60%以上であることを特徴とするものである。
前記射出スリーブ内面にピットを形成し、
該ピット形成により、前記射出スリーブ内面のピット形成領域の表面粗さRzが、20μm以上かつ200μm以下であり、
前記ピットの開口部の面積が、前記ピットが形成されていない状態での前記スリーブと前記溶融金属との接触領域に対して、60%以上であることを特徴とするものである。
本発明のダイカストスリーブ2は、キャビティ7に溶融金属(溶湯)9を圧入してダイカスト製品を鋳造する射出スリーブ2であって、射出スリーブ2内面にピット(凹部)21を形成し、該ピット21形成により、射出スリーブ2内面のピット形成領域22の表面粗さRzが、20μm以上かつ200μm以下であり、ピット21の開口部の面積が、ピット21が形成されていない状態でのスリーブ2と溶融金属9との接触領域24(以下、「接触領域24」とも称す)に対して、60%以上であることを特徴とするものである。また、本発明のダイカストスリーブ2の処理方法は、キャビティ7に溶融金属9を圧入してダイカスト製品を鋳造する射出スリーブ2の処理方法であって、射出スリーブ2内面にピット21を形成し、該ピット21形成により、射出スリーブ2内面のピット形成領域22の表面粗さRzが、20μm以上かつ200μm以下であり、ピット21の開口部の面積が、ピット21が形成されていない状態でのスリーブ2と溶融金属9との接触領域24に対して、60%以上であることを特徴とするものである。ダイカストスリーブ2の内面に微細なピット(凹部)21処理を施すことにより、ダイカストスリーブ2内に溶湯が供給された際、溶湯9とダイカストスリーブ2の接触面積を減らし、溶湯9の温度低下を少なくすることにより「破断チル層」の原因となる凝固層の生成を防止することができる。また、ダイカストスリーブ2において、ダイカストスリーブ2の内面に微細なピット21を付与し、さらに窒化処理、酸化処理を施すことにより、ダイカストスリーブ2に給湯された溶湯9の温度低下を小さくし、これにより、ダイカストスリーブ2内での溶湯9の温度低下に伴う凝固層の生成を抑制し、鋳造時に製品内に巻き込まれる凝固層(破断チル層)による製品の強度低下、製品の欠け込みなどの鋳造不良を減少させることができる。さらに、「破断チル層」を防止するためには、上記のようにいくつかの手法が用いられているが、本発明は、複雑なスリーブ構造を用いることなく、また、高価な断熱性材料を用いることなく比較的安価で耐久性があり、取り扱いに特別な配慮を必要としないで、「破断チル層」を防止するダイカストスリーブ2を提供することができる。
図7は、湯流れ試験金型の一例を示す上面図であり、図8は、湯流れ試験金型の一例を示す側面図である。図7および図8中、23はダイカストスリーブに模した内面表面、23aはピット21が形成されたダイカストスリーブ2に模した内面表面(金型底面、ピット形成領域)を示す。また、ピット21が形成されていない状態でのダイカストスリーブ2に模した内面表面と溶融金属9との接触領域24a(図示せず)は、ピット形成領域23aにおけるピット21の形成されていない状態での領域である。図9は、湯流れ距離の測定図である。図9中、iの矢印は湯流れ距離を示し、jは溶湯9の流れを示す矢印である。ピット21による溶湯9の温度低下防止を確認するために、図7および図8に示すダイカストスリーブ2を模した金型11を製作し、ダイカストスリーブ2の湯流面(内面表面)23に模した金型底面23aにピット21を形成し、湯流れ試験を行った。ピット21は機械的な打痕により形成し、そのアスペクト比は0.5であり、ピット形成領域23aの表面粗さは、Rz=24μm、Rz=54μm、およびRz=83μmであった。また、ピット21の開口部の面積率は、ピット21を有する場合は、いずれも接触領域24aの65%であった。ピット21により溶湯9の温度低下が抑制されるならば、溶湯9は湯口81から流れる距離が長くなるはずである。試験金型11の材料はS45C、溶湯9はアルミニウム合金ADC12を使用し、720℃の溶湯9を湯口81から給湯し、図9に示すようにして湯流れ距離を測定した。結果を下記表1に示す。
実験例1と同様の金型11を用い、同じ方法でピット21を形成した。接触領域24aにおけるピット21の開口部の面積率は、接触領域24aの50%であり、ピット形成領域23aの表面粗さは、Rz=21μmおよび56μmであった。実験例1と同じ条件で試験を行った。湯流れ距離の測定結果は、下記表2の通りである。実験例1の場合と比較して、湯流れ距離は短く、ピット21の効果が小さくなり、凝固層(破断チル層)を十分に低減できなかった。
実験例1と同様の金型11を用い、湯流れ面に窒化処理と酸化皮膜処理を施し、湯流れ試験を行った。ピット21は、ショットブラストにより形成し、そのアスペクト比は0.8でありピット形成領域23aの表面粗さは、Rz=18μmとRz=104μmであった。また、ピット21の面積率は、ピット21を有する場合は、いずれも接触領域24aの80%であった。結果を下記表3に示す。ピット21が存在すると溶湯9の急冷を抑制していることができ、湯流れ距離も長くなり、凝固層(破断チル層)を低減できた。
350tダイカストマシンのダイカストスリーブ2の内面にピット21を形成し、このダイカストスリーブ2を用いて鋳造し、ピットのないダイカストスリーブで鋳造した場合の、いわゆる’欠け込み’不良の発生を目視(下記条件)で比較した。この通常スリーブ(ピット無)の製品の場合、通常のダイカストスリーブで鋳造した場合の’欠け込み’不良は欠け込み部分の観察から「破断チル層」によるものと判断されていた。ピット21の形成はショットブラストにより行い、その後、窒化処理を施した。できあがったダイカストスリーブ2のピット形成領域22の表面粗さは、Rz=32μm、アスペクト比は0.7、ピット21の面積率は、接触領域24の70%であった。なお、ダイカストスリーブ2の材質はSKD61、アルミ合金はADC12で、溶湯量は980gであった。結果を下記表4に示す。表4の結果から、本発明により、欠け込み不良が大幅に減少することが確認できた。
目視で観察し、欠け込みの標準サンプルと照合し、標準サンプルより大きな欠け込みのある場合を不良品とした。
500tダイカストマシンスリーブにピット21形成を施し、さらに窒化処理を施したダイカストスリーブ2を製作した。ダイカストスリーブ2の材質はSKD61であった。できあがったダイカストスリーブ2のピット形成領域22の表面粗さは、Rz=48μm、アスペクト比は0.7、ピット21の面積率は、接触領域24の70%であった。従来のダイカストスリーブ(通常スリーブ(ピット無))を用いて製造した製品と、このピット21形成ダイカストスリーブ2を使用した場合の製品について万能材料試験機(株式会社島津製作所:UH−50A)で圧縮荷重をかけて、実体強度を比較した。アルミ合金はADC12で、溶湯量は1810gであった。結果を下記表5に示す。表5の結果から、本発明により、製品強度のバラツキが小さくなり、強度の最小値が15%以上向上することが確認できた。
350tダイカストマシンスリーブにピット21を形成し、さらに窒化処理と酸化処理を施した。ピット21の形成はショットブラストで実施した。できあがったダイカストスリーブ2のピット21のピット形成領域22の表面粗さは、Rz=24μm、アスペクト比は0.3、ピット21の面積率は、接触領域24の80%であった。なお、ダイカストスリーブ2の材質はSKD61を使用した。従来のダイカストスリーブ(通常スリーブ(ピット無))を用いて製造した製品と、このピット21形成のダイカストスリーブ2を用いて製造した製品を用いて、引張り試験片を採取し、JIS14−B引張り試験を行った。引張り試験は、精密万能材料試験機(株式会社島津製作所:AG−10TD)で行った。アルミダイカスト製品の材質はADC12で、溶湯量は1400gであった。結果を下記表6に示す。ピット21形成ダイカストスリーブ2を用いると引張り強度の最小値は20%以上高くなり、200MPa以下の試験片数は1/4になることが確認できた。
11 ダイカストスリーブを模した金型
2 ダイカスト(射出)スリーブ
21 ピット
22 ピットが形成されたダイカストスリーブの内面表面(ピット形成領域)
23 ダイカストスリーブに模した内面表面
23a ピット21が形成されたダイカストスリーブに模した内面表面(金型底面、ピット形成領域)
24 ピットが形成されていない状態でのスリーブと溶融金属との接触領域(接触領域)
24a ピットが形成されていない状態でのダイカストスリーブに模した内面表面と溶融金属との接触領域
3 チップ
4 射出プランジャー
5 可動型
6 固定型
7 キャビティ
8 給湯口
81 給湯口
9 溶融金属(溶湯)
a 溶湯投入を示す矢印
a1 ダイカストスリーブ内の中央部(中心)の溶湯の進行を示す矢印
b エアー排出を示す矢印
c ダイカストスリーブのピットからの熱の移動を示す矢印
d ダイカストスリーブからの熱の移動を示す矢印
e 円形状のピットの深さ
f 円形状のピットの開口部の最長の長さ
g 四角錐形状のピットの開口部の一辺の長さ
h 四角錐形状のピットの深さ
i 湯流れ距離
j 溶湯の流れ
Claims (8)
- キャビティに溶融金属を圧入してダイカスト製品を鋳造する射出スリーブであって、
前記射出スリーブ内面にピットを形成し、
該ピット形成により、前記射出スリーブ内面のピット形成領域の表面粗さRzが、20μm以上かつ200μm以下であり、
前記ピットの開口部の面積が、前記ピットが形成されていない状態での前記スリーブと前記溶融金属との接触領域に対して、60%以上であり、
前記ピットのアスペクト比が、0.2〜1.0であることを特徴とするダイカストスリーブ。 - 前記ピット形成後、前記射出スリーブ内面が窒化処理されたものである請求項1記載のダイカストスリーブ。
- 前記窒化処理後、前記射出スリーブ内面が酸化処理されたものである請求項2記載のダイカストスリーブ。
- 前記ピットの形成領域が、少なくともスリーブ内面の下側半分である請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のダイカストスリーブ。
- キャビティに溶融金属を圧入してダイカスト製品を鋳造する射出スリーブの処理方法であって、
前記射出スリーブ内面にピットを形成し、
該ピット形成により、前記射出スリーブ内面のピット形成領域の表面粗さRzが、20μm以上かつ200μm以下であり、
前記ピットの開口部の面積が、前記ピットが形成されていない状態での前記スリーブと前記溶融金属との接触領域に対して、60%以上であり、
前記ピットのアスペクト比が、0.2〜1.0であることを特徴とするダイカストスリーブの処理方法。 - 前記ピット形成後、前記射出スリーブ内面を窒化処理する請求項5記載のダイカストスリーブの処理方法。
- 前記窒化処理後、前記射出スリーブ内面を酸化処理する請求項6記載のダイカストスリーブの処理方法。
- 前記ピットの形成領域が、少なくともスリーブ内面の下側半分である請求項5〜7のうちいずれか一項に記載のダイカストスリーブの処理方法。
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