JP2011156549A - プランジャー装置およびプランジャーチップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶融金属が投入されるスリーブ2と、前記スリーブ2に摺動可能に内装され、前記スリーブ2内に投入された溶融金属を圧出するプランジャーチップ3と、を有するプランジャー装置1であって、前記スリーブ2の内周面2bと、前記プランジャーチップ3の溶融金属に面する先端面(前端面3a)と、には、Ra0.2[μm]を超える大きさの表面粗さを有する凹凸形状が形成されるとともに、炭素結合された炭素系被膜が被覆される。
【選択図】図1
Description
そして、キャビティ内に溶融金属を充填する際は、スリーブ内に溶融金属を投入し、その後、プランジャーチップをスリーブの内周部に沿って摺動させて、該プランジャーチップによってキャビティ内に溶融金属を圧出することとしている。
図6は、溶融金属151の投入後における従来のプランジャー装置101を示した図であり、(a)はその側面断面図であり、(b)は(a)における矢印Bの方向から見た正面断面図である。
なお、以下の説明に関しては、便宜上、図6(a)における矢印Aの方向を前方と規定して記載する。また、図6においては、図面上の上下方向を、プランジャー装置101の上下方向と規定して以下説明する。
スリーブ102のダイカスト金型側端部(前端部)は、ダイカスト金型のキャビティ111へと通じる湯道112と連通される。また、スリーブ102はダイカスト金型から外方へ向かって延出しており、延出側端部(後端部)の上面には給湯口102aが形成される。
ここで、プランジャーチップ103の軸心方向断面に関する直径寸法は、スリーブ102の内周部102bの直径寸法に対して略同程度に形成される。そして、スリーブ102の後端部において、プランジャーチップ103はスリーブ102と同軸上に挿入されるとともに、スリーブ102の内周部102bに沿って軸心方向に摺動可能に配設される。
そして、給湯口102aを介してスリーブ102内に溶融金属151を投入した後に、プランジャーチップ103を前方(湯道112側の方向)に摺動させることで、溶融金属151はキャビティ111内に圧出される。
よって、スリーブ102内に投入された直後の溶融金属151の液面は、暫くの間大きく波打つ状態となり、プランジャーチップ103の前端面103a(溶融金属151に面する側面)に押し寄せた溶融金属151は、前記前端面103aの略全領域を飲み込んで濡らすこととなる。
しかし、前記前端面103aの溶融金属151に対する「濡れ性」が大きい場合、溶融金属151が完全に流下するまでには時間が長くかかる。
よって、前記前端面103aに付着して前端面103aを濡らしている溶融金属151の一部は、流下する途中で外気に触れて冷却され、初期凝固層151aとなって凝固する。
即ち、プランジャーチップ103の前端面103aにおいて、その正面視外縁部にはテーパー部103bが設けられる。そして、テーパー部103bは、プランジャーチップ103の軸心方向断面が、前方(溶融金属151側の方向)に向かうにつれて徐々に縮径するように形成される。
従って、テーパー部103bに付着した溶融金属151は、表面張力の影響によって、前記前端部103aの平面部に付着した溶融金属151に比べてスリーブ102内に貯溜された溶融金属151の表面に流下するまでの時間が長くかかり、前端面103aの平面部に付着した溶融金属151に比べて上方へ突出した状態に凝固される。
つまり、初期凝固層151aは、正面視において、テーパー部103bが設けられる左右両端部が中央部よりも上方へ突出した形状に形成されるのである。
その結果、溶融金属151におけるスリーブ102の内周部102bに面する箇所、つまり、溶融金属151の底部においても、初期凝固層151bが形成される。
よって鋳造品質を向上させるべく、このような初期凝固層151a・151bの発生を低減するには、先ず、プランジャーチップ103の前端面103aに関する「濡れ性」を小さくすることが有効であり、さらに、無加圧時の溶融金属151に対するスリーブ102の内周部102bと、プランジャーチップ103の前端面103aとの熱伝達率を低く抑え、スリーブ102によって溶融金属151によって奪われる熱量を少なくすることが有効である。
つまり、ビスケット部の冷却に費やされる時間が長くなれば、それだけ鋳造工程における1サイクルあたりの時間が延び、既に冷却を完了した鋳造製品についても、更に余分に冷却されることとなり、「ひけ」などの品質不良を引き起こす要因ともなる。
つまり、前記「特許文献2」に開示される技術に拠れば、少なくとも初期凝固片の発生を効果的に低減することができる被膜をプランジャーチップに施工することが可能となるものの、その一方においては、鋳造品質に悪影響を及ぼすため、前記被膜の効果としては不十分である。
即ち、本発明におけるプランジャー装置に拠れば、ダイカストマシンに備えられるプランジャー装置およびプランジャーチップであって、鋳造品質を向上させるべく、スリーブ内の溶融金属に発生する初期凝固層の発生を低減しつつ、キャビティ内への溶融金属の充填が完了した後、該溶融金属を早急に凝固させることが可能であり、耐久性に優れたプランジャー装置およびプランジャーチップを提供することができる。
先ず、本実施例におけるプランジャー装置1の構成について、図1を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては、便宜上、図1における矢印Aの方向を前方と規定して記載する。また、図1においては、図面上の上下方向をプランジャー装置1の上下方向と規定して、以下説明する。
プランジャー装置1はダイカスト金型10に備えられ、主にスリーブ2やプランジャーチップ3などにより構成される。
スリーブ2は、キャビティ11内に送り込む溶融金属を一旦貯溜するとともに、該キャビティ11と連通される湯道12に前記溶融金属を導くための部位である。
即ち、スリーブ2はその前端部において、固定金型10Aに挿嵌される。また、スリーブ2は固定金型10Aから外方(後方)へ向かって延出している。スリーブ2の延出側端部(後端部)からは、スリーブ2の内周面2bにて囲まれる空間に、後述するプランジャーチップ3が内挿される。
プランジャーチップ3は、スリーブ2内に投入された溶融金属を湯道12に向かって押し出すための部位である。
そして、プランジャーチップ3が前方端(図1におけるプランジャーチップ3Aの位置)の位置に到達すると、キャビティ11内への溶融金属の充填作業は完了する。
次に、前述したプランジャー装置1に施工される特別な表面加工の方法を探るべく、本発明者らが行った「濡れ性」試験について、図2、および図3を用いて説明する。
「濡れ性」試験は表1に示すように、前端面3aおよび内周面2bに形成された凹凸形状についての表面粗さの大きさと、前端面3aおよび内周面2bに施された被膜の種類との組み合わせについて各々異なる13種類の試験材料を用意し、これら試験材料の表面部に溶融金属を注いだ時の該溶融金属の流れ具合を観測することで行った。
先ず、「濡れ性」試験に用いられる試験材料と溶融金属について説明する。
試験材料は、SKD61を材料とする一辺が200mm、且つ厚みが20mmの板状部材を13枚用意し、各板状部材の一方の平面部全体に、表1に示されるNo.1〜No.13までの表面加工を各々施工して形成した。
また、炭素系被膜については、例えば、化学気相法によるカーボンナノファイバーの生成や、フラーレン粉のすりこみなど、いずれの方法を用いて被覆してもよい。
先ず始めに、周囲温度が摂氏約20℃である実験場内において、各試験材料は、表面加工が施工された平面部を上方に向けつつ、該平面部が水平面に対して約20°の傾斜を有するようにして配設される。
各試験材料に関する「濡れ性」の評価は、前述のとおり、予め定められた評価基準に基づいて付与される点数の合計点、即ち「湯流れ指数」によって行うこととした。
つまり、試験材料の上側平面部の溶融金属に対する濡れ性が低いほど高い点数を付与し、濡れ性が高いほど低い点数を付与するようにしている。
図3に示すように、13種類からなる試験材料のうち、6点以上の「湯流れ指数」が付与された試験材料は、8種類存在した。
即ち、No.1、2、4〜8、10の試験材料については、「濡れ性」に関する評価が「良好」であるとの結果を得た。
次に、前述したプランジャー装置1に施工される特別な表面加工の方法を探るべく、本発明者らが行った熱伝達率の測定試験について、図4、図5、および図7を用いて説明する。
前述のとおり、ダイカストマシンに備えられるプランジャー装置において、鋳造品質を向上させるべく、初期凝固層の発生を低減しつつ、キャビティ内への溶融金属の充填が完了した後、該溶融金属を早急に凝固させるには、プランジャーチップの先端面に関する「濡れ性」を低くすることが前提条件として必要となる。
図5は、初期凝固層の発生量が低減したプランジャー装置の一例として、No.4〜8、10のうちのいずれかの試験材料と同様の表面加工を施したプランジャー装置において、溶融金属をスリーブ内に投入して一定時間放置し、その後、該溶融金属を強制的に冷却して凝固させたもの(以下、「第一溶融金属塊51」と記す)である。
具体的には、初期凝固層52aは、図7(c)の領域Z2内において、黒色を有しつつ第二溶融金属塊52の幅方向に向かって延出された隆起部して形成される。
具体的には、図5(c)の領域Z1によって示すように、プランジャーチップ側(紙面左側)端部の上面は他の領域と略同色であり、際立った隆起部も見られない。
即ち、表1に示すように、No.1の試験材料はNo.7の試験材料と、また、No.2の試験材料はNo.8の試験材料と、表面粗さに関する凹凸形状の大きさや、被膜の種類、即ち炭素系被膜について、各々共通する。
しかし、No.1、2の試験材料については、炭素系皮膜に関して炭素結合が行われておらず、溶融金属との接触時において、該炭素系被膜の一部がプランジャー装置より剥離し、十分な断熱効果を得ることができなかったと考えられる。
よって、より高い熱伝達率を示した、他のNO.4、6〜8、10の試験材料と同様の表面加工を施したプランジャー装置に拠れば、スリーブ内に留まる一部の溶融金属が冷却されて凝固するのにかかる時間をさらに短縮化することができる。
よって、スリーブ2内の溶融金属に発生する初期凝固層の発生を低減することができる。
従って、鋳造製品における材料組織が従来のプランジャー装置101に比べてより密になり、該鋳造製品の材料強度が上がるなど、鋳造品質を向上させることができるのである。
よって、熱膨張差によりプランジャーチップ3の前端面3aから炭素系被膜が剥離するのを防止することができ、耐久性に優れたプランジャー装置1を提供することができる。
さらに、従来のプランジャー装置101においては、プランジャーチップ103への入熱量を見越して、スリーブ2内に投入する溶融金属の湯温を余分に昇温していたが、プランジャーチップ3への入熱が減少することで、前記溶融金属の湯温も低く抑えることができ、経済的である。
よって、鋳造工程における1サイクルあたりの時間が、従来のプランジャー装置101に比べて延びることはなく、既に冷却を完了した鋳造製品が、更に余分に冷却されることともない。
従って、「ひけ」などの品質不良を引き起こす要因もなくなり、鋳造品質を向上させることができるのである。
よって、プランジャーチップ3の摺動移動により、スリーブ2の内周面2bに施された特別な加工が摩耗することも効果的に抑制でき、耐久性に優れたプランジャー装置1を提供することができるのである。
よって、スリーブ2内の溶融金属に発生する初期凝固層の発生を低減することができる。
従って、鋳造製品における材料組織が、従来のプランジャー装置101のプランジャーチップ103によるものと比べて密になり、該鋳造製品の材料強度が上がるなど、鋳造品質を向上させることができるのである。
よって、熱膨張差によりプランジャーチップ3の前端面3aから炭素系被膜が剥離するのを防止することができ、耐久性に優れたプランジャーチップ3を提供することができる。
さらに、従来のプランジャー装置101においては、プランジャーチップ103への入熱量を見越して、スリーブ2内に投入する溶融金属の湯温を余分に昇温していたが、プランジャーチップ3への入熱が減少することで、前記溶融金属の湯温も低く抑えることができ、経済的である。
よって、鋳造工程における1サイクルあたりの時間が、従来のプランジャー装置101に比べて延びることはなく、既に冷却を完了した鋳造製品が、更に余分に冷却されることともない。
従って、「ひけ」などの品質不良を引き起こす要因もなくなり、鋳造品質を向上させることができるのである。
2 スリーブ
2b 内周面
3 プランジャーチップ
Claims (6)
- 溶融金属が投入されるスリーブと、
前記スリーブに摺動可能に内装され、前記スリーブ内に投入された溶融金属を圧出するプランジャーチップと、
を有するプランジャー装置であって、
前記スリーブの内周面と、前記プランジャーチップの溶融金属に面する先端面と、には、Ra0.2[μm]を超える大きさの表面粗さを有する凹凸形状が形成されるとともに、
炭素結合された炭素系被膜が被覆される、
ことを特徴とするプランジャー装置。 - 前記凹凸形状における表面粗さの大きさは、Ra1.5[μm]以上Ra3.2[μm]以下の範囲内によって形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のプランジャー装置。 - 前記スリーブと前記プランジャーチップとの前記溶融金属に関する熱伝達率は、
前記プランジャーチップによって前記スリーブ内に投入された溶融金属を圧出する前の無加圧時の場合、3700[W/m2K]以下であり、
前記プランジャーチップによって前記溶融金属を圧出した後の加圧時の場合、6000[W/m2K]以上である、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2のうちの何れか一項に記載のプランジャー装置。 - 溶融金属が投入されるスリーブに摺動可能に内装され、前記スリーブ内に投入された溶融金属を圧出するプランジャーチップであって、
溶融金属に面する先端面には、Ra0.2[μm]を超える大きさの表面粗さを有する凹凸形状が形成されるとともに、
炭素結合された炭素系被膜が被覆される、
ことを特徴とするプランジャーチップ。 - 前記凹凸形状における表面粗さの大きさは、Ra1.5[μm]以上Ra3.2[μm]以下の範囲内によって形成される、
ことを特徴とする、請求項4に記載のプランジャーチップ。 - 前記プランジャーチップの前記溶融金属に関する熱伝達率は、
前記プランジャーチップによって前記スリーブ内に投入された溶融金属を圧出する前の無加圧時の場合、3700[W/m2K]以下であり、
前記プランジャーチップによって前記溶融金属を圧出した後の加圧時の場合、6000[W/m2K]以上である、
ことを特徴とする、請求項4または請求項5のうちの何れか一項に記載のプランジャーチップ。
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