JP5675172B2 - ダイキャスト方法 - Google Patents
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Description
本明細書で開示される他のダイキャスト方法は、準備工程と充填工程と保圧工程とを備える。準備工程では、キャビティを有するダイキャスト型を準備する。充填工程では、キャビティ内に溶湯を充填する。保圧工程では、キャビティ内に充填した溶湯を加圧し続ける。準備工程では、キャビティ面をヒケ対策必要範囲とヒケ対策不要範囲に分類し、ヒケ対策不要範囲のキャビティ面を画定している材質以上の熱伝導率を有する材質でヒケ対策必要範囲のキャビティ面を画定するダイキャスト型を準備する。「ヒケ対策必要範囲」とは、ヒケ対策不要範囲と同一の条件でダイキャストすると、ダイキャスト製品にヒケが発生する範囲である。本ダイキャスト方法では、保圧工程におけるダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最小値を、充填工程におけるダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最大値よりも大きくする。また、保圧工程におけるヒケ対策必要範囲のダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最小値を、保圧工程におけるヒケ対策不要範囲のダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最大値よりも大きくする。
(特徴1)保圧工程におけるヒケ対策必要範囲のダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最小値が8600W/m2K以上である。
(特徴2)キャビティ面には、カーボンナノチューブやカーボンファイバー等のナノカーボン類の炭素膜が形成されている。
準備工程では、図1に示すダイキャスト型10を準備する。ダイキャスト型10は、SKD61で作製されている。ダイキャスト型10の熱伝導率は、24W/mKである。ダイキャスト型10は、右型12と左型14とを備える。右型12と左型14とを合わせて型締めしたときに画定される空間が、キャビティ16である。キャビティ16は、キャビティ面16aによって画定される。キャビティ16は、溶湯経路18を介して、図示省略した溶湯供給装置に接続される。
充填工程では、溶湯供給装置から溶湯経路18を介して、キャビティ16内にアルミニウム合金の溶湯が充填される。充填工程では、溶湯に0.1MPaの圧力が付与される。充填工程において、ヒケ対策不要範囲22のダイキャスト型10と溶湯との熱伝達係数は2000W/m2Kであり、ヒケ対策必要範囲20のダイキャスト型10と溶湯との熱伝達係数は2500W/m2Kである。ヒケ対策必要範囲20とヒケ対策不要範囲22の熱伝達係数の差は、キャビティ面20a,22aに被覆された炭素膜20b,22bの膜厚の差によるものである。
保圧工程では、図示省略したプランジャを用いて、キャビティ16内の溶湯を加圧する。保圧工程では、キャビティ16内の溶湯の凝固が完了するまで、プランジャで溶湯を加圧し続ける。プランジャは、50MPaの圧力で溶湯を加圧する。溶湯が加圧されると、ダイキャスト型10と溶湯との熱伝達係数が上昇する。保圧工程において、ヒケ対策不要範囲22のダイキャスト型10と溶湯との熱伝達係数は6000W/m2Kであり、ヒケ対策必要範囲20のダイキャスト型10と溶湯との熱伝達係数は8600W/m2Kである。ヒケ対策必要範囲20とヒケ対策不要範囲22の熱伝達係数の差は、キャビティ面20a,22aに被覆された炭素膜20b,22bの膜厚の差によるものである。保圧工程が終了すると、右型12と左型14とを離間させて、ダイキャスト製品を取り出す。
(1)上記の実施例では、炭素膜20b,22bの膜厚を変えることによって、熱伝達係数を変えている。しかしながら、キャビティ面20a,22aの表面粗さを変更すること、キャビティ面20a,22aに塗布する離型剤を変更すること、キャビティ面20a,22aの材質を変更することによっても、保圧工程におけるキャビティ面20a,22aの熱伝達係数を変更することができる。
図2に示すように、第1実験では、溶湯との間の熱伝達係数が異なる複数種類の平板50を準備した。平板50は、SKD61製である。第1実験では、表面50aの表面粗さを変化させること、あるいは、表面50aに油等の液剤を塗布することによって、平板50と溶湯52との間の熱伝達係数が異なる複数種類の平板50を作成した。次いで、複数種類の平板50のそれぞれについて、平板50を水平面からθ=20度だけ傾斜させ、平板50の表面50aにアルミニウム合金の溶湯52の液滴を滴下した。溶湯52が表面50aを流れ落ちる際に、溶湯52が平板50によって冷却されて溶湯52が凝固すると、凝固したアルミニウム合金が表面50a上に付着する。第1実験では、表面50a上に付着したアルミニウム合金の位置によって、溶湯52の流れ性能を評価した。具体的には、アルミニウム合金が付着した最上の位置が、溶湯52を滴下した位置P1である場合に0点とし、位置P1から表面50aの下端までの半分の距離に位置する位置P2との間である場合に1点とし、位置P2よりも下方である場合に2点とし、アルミニウムが付着しなかった場合、即ち、溶湯52が凝固せずに表面50aから落下した場合に3点とした。第1実験では、複数種類の平板50のそれぞれについて、3回実験を行い、その合計点を算出した。
図4に示すように、第2実験では、金型100と溶湯との間の熱伝達係数が異なる複数種類の金型100を準備した。金型100は、SKD61製である。金型100は、水平方向に伸びるキャビティ102を有する。第2実験では、第1実験と同様の手法で、金型100と溶湯との間の熱伝達係数が異なる複数種類の金型100を作成した。次いで、金型100の給湯口104からキャビティ102内にアルミニウム合金の溶湯を注入した。第2実験では、溶湯を加圧せずに、キャビティ102内に溶湯を注入した。複数種類の金型100のそれぞれについて、キャビティ102内で溶湯が凝固して溶湯の流れが停止した時の溶湯の流れた距離を測定した。
図6に示すように、第3実験では、ダイキャスト型200を準備した。ダイキャスト型200は、SKD61製である。ダイキャスト型200は、キャビティ202を有する。第3実験では、ダイキャスト型200のキャビティ面202aを被覆する材料、及び、保圧工程における加圧力を変更することによって、ダイキャスト型200と溶湯との間の熱伝達係数を変化させた。複数種類の熱伝達係数でダイキャストし、成形されたダイキャスト製品の微細層厚さと欠陥率を調査した。表1に実験結果を示す。表1では、実験結果を保圧工程における熱伝達係数で分類し、実験番号E1からE10を付している。
続いて、ダイキャスト型10と同一の形状のダイキャスト型を用いたCAE解析の解析結果について説明する。表2に示すように、CAE解析では、保圧工程におけるヒケ対策必要範囲20及びヒケ対策不要範囲22のダイキャスト型10と溶湯との間の熱伝達係数が異なる実験番号E21からE25の5種類のダイキャスト型10について、解析を行った。なお、E23では、ヒケ対策不要範囲22の上方部分と下方部分とで熱伝達係数を変化させた。これは、キャビティ面22aの表面状態が均一でない場合を想定している。本解析では、キャビティ16内に溶湯が充填された状態から開始した。解析結果を表2に示す。
12:右型
14:左型
16:キャビティ
16a,20a,22a:キャビティ面
20:ヒケ対策必要範囲
20b,22b:炭素膜
20c,22c:キャビティ部分
22:ヒケ対策不要範囲
Claims (2)
- キャビティを有するダイキャスト型を準備する準備工程と、
キャビティ内に溶湯を充填する充填工程と、
キャビティ内に充填した溶湯を加圧し続ける保圧工程と、
を備えるダイキャスト方法であって、
準備工程では、
ナノカーボン類の炭素膜で被覆されているキャビティ面をヒケ対策必要範囲とヒケ対策不要範囲に分類し、ヒケ対策必要範囲のキャビティ面を被覆する炭素膜の膜厚が10μm以下であり、ヒケ対策不要範囲のキャビティ面を被覆する炭素膜の膜厚がヒケ対策必要範囲のキャビティ面を被覆する炭素膜の膜厚よりも厚く、ヒケ対策不要範囲のキャビティ面を画定している材質以上の熱伝導率を有する材質でヒケ対策必要範囲のキャビティ面を画定するダイキャスト型を準備し、
保圧工程におけるダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最小値を、充填工程におけるダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最大値よりも大きくし、
保圧工程におけるヒケ対策必要範囲のダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最小値を、保圧工程におけるヒケ対策不要範囲のダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最大値よりも大きくし、
ヒケ対策必要範囲のキャビティ部分で成形されるダイキャスト製品の部分は、ヒケ対策不要範囲のキャビティ部分で成形されるダイキャスト製品の部分と比較して肉厚である
ことを特徴とするダイキャスト方法。 - 充填工程におけるダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最大値が3700W/m2K以下であり、
保圧工程におけるダイキャスト型と溶湯との間の熱伝達係数の最小値が6000W/m2K以上である
請求項1に記載のダイキャスト方法。
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