JPH07232254A - 鋳物の製造装置及び製造方法 - Google Patents

鋳物の製造装置及び製造方法

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JPH07232254A
JPH07232254A JP2856194A JP2856194A JPH07232254A JP H07232254 A JPH07232254 A JP H07232254A JP 2856194 A JP2856194 A JP 2856194A JP 2856194 A JP2856194 A JP 2856194A JP H07232254 A JPH07232254 A JP H07232254A
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JP
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molten metal
mold
casting
coating
cavity
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JP2856194A
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English (en)
Inventor
Yasushi Tokuge
やすし 徳毛
Shigeki Maekawa
滋樹 前川
Mikio Yamashita
幹生 山下
Yasuyuki Nakaoka
康幸 中岡
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、金型の寿命を長くするとともに鋳
物の品質を向上させることを目的とするものである。 【構成】 射出プランジャ6の移動軸6a方向への湯溜
まり12の投影面がキャビティ10に重ならないよう
に、射出プランジャ6及び湯溜まり12を配置し、かつ
上型22の射出プランジャ6の押圧力が作用する部分と
キャビティ10との間に分割面23を設け、各プランジ
ャ6,25,27による押圧力、及び型締力により金型
に曲げ応力が発生するのを防止し、これにより亀裂の進
展を抑制するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば銅や銅合金等
の高融点金属など、金属の金型鋳造に適用される鋳物の
製造装置及び製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金属の溶湯を金型のキャビティ内
に充填し、高圧下で凝固させて鋳物を製造する方法にお
いては、溶湯に接触して高温高圧下に曝される金型表面
に亀裂や溶湯の溶着等が生じ易く、金型の長寿命化の妨
げとなっていた。これに対し、融点が700〜800℃
程度までのアルミニウム合金等の金属からなる溶湯を用
いる場合については、様々な工夫が為されてきた。即
ち、亀裂や溶湯の溶着等が生じ易い金型表面を金型本体
に対して着脱可能に分割構成すること、又は金型表面に
被膜を形成することなど、物理的或は化学的手段により
表面を改質することが知られている。
【0003】例えば、特開昭60−49833号公報に
は、熱衝撃等に強い材質の型部材を金型本体の所定の位
置に着脱可能に装着し、上記型部材が寿命に至れば交換
するようにしたものが示されている。また、特開昭63
−144843号公報に示されたものでは、着脱可能な
セラミック製の入れ子を用い、上記入れ子が寿命に至れ
ば交換するようにしている。さらに、特開昭62−13
236号公報に示されたものでは、溶湯の溶着及び溶湯
の温度低下を防ぐため、金型表面に被膜を形成してい
る。
【0004】しかし、銅や銅合金等の高融点金属の溶湯
を用いる場合に十分満足できる一般的工夫は知られてい
ない。
【0005】図16は従来の鋳物の製造装置の一例の要
部断面図である。図において、1は下型、2は下型1上
に配置された中型で、ゲート2aが設けられている。3
は中型2上に配置された上型、4は上型3上に取り付け
られている上下動可能な移動プレート、5は上型3内に
設けられた中子、6は下型1内に設けられ移動軸6aに
沿って移動する射出プランジャで、その上端部にはプラ
ンジャチップ7が設けられている。8は上型3内に設け
られた加圧プランジャで、その下端部にはプランジャチ
ップ9が設けられている。10はキャビティ、11はキ
ャビティ10内に導入された溶湯、12は溶湯11の湯
溜まりである。
【0006】図17は図16の湯溜まりの部分を拡大し
て示す断面図である。図において、13は図16の下型
1内に嵌め込まれ、溶湯11の湯溜まり12を形成する
湯溜まりスリーブであり、図16では省略したが、下型
1内にはこの湯溜まりスリーブ13が挿入されることが
多い。なお、図16において、矢印Aは型締め力の作用
方向、矢印Bは射出プランジャ6による押圧力の作用方
向、矢印Cは加圧プランジャ8による押圧力の作用方向
を示す。また、図17において、矢印Dは射出プランジ
ャ6の移動方向を示す。
【0007】上記のように、従来の1個取り金型を用い
た鋳物の製造装置は、射出プランジャ6により湯溜まり
12の溶湯11を加圧充填するための射出構造とキャビ
ティ10とを有しており、また、射出プランジャ6の移
動軸方向への湯溜まり12の投影面がキャビティ10に
重なっている。
【0008】このような鋳造金型のキャビティ10に、
銅や銅合金等の高融点金属の溶湯11を充填し、高圧下
で凝固させ鋳物を製造したところ、僅か数ショットで金
型表面に大きな亀裂が発生した。これは、金型表面が高
温高圧下に曝されて、その部分の材料強度が低下した
上、溶湯11による熱応力が作用するので、金型表面に
存在する機械加工痕、放電加工痕、材料欠陥等の微細な
欠陥を起点として亀裂が発生したものである。また、射
出プランジャ6及び加圧プランジャ8による押圧力、及
び型締力等の機械的応力による引張り応力や曲げ応力が
金型表面に生じるため、上記の亀裂は大きな亀裂に成長
する。即ち、材料強度の低下及び熱応力,機械的応力の
発生といった複数の要因が複雑に絡み合って、亀裂が生
じると考えられる。
【0009】このような高融点金属の溶湯11を用いた
場合の亀裂の発生は、金型表面を分割構成する上記特開
昭60−49833号公報に記載の方法や上記特開昭6
3−144843号公報に記載の方法を適用しても回避
できず、同様に金型表面に被膜を形成する上記特開昭6
2−13236号公報に記載の方法を用いても回避する
ことはできない。これは、これらの方法がアルミニウム
合金等の融点のあまり高くない金属を対象にしているた
めであり、銅や銅合金等の高融点金属を対象とした場合
には積極的に亀裂の発生を抑制するというよりも、むし
ろ亀裂の生じた部分を交換可能とし、かつその交換のた
めの作業を容易にすることを目的としているからであ
る。
【0010】また、いかなる手段を講じたとしても金型
は寿命を迎えるが、そのときには金型或は型部材や入れ
子の交換又は補修を行なう必要がある。しかし、その時
期は、金型表面に亀裂が目立つようになるか若しくはそ
の亀裂が鋳物に転写されるようになってからであり、金
型の交換・補修時期の客観的な判断基準は明確ではな
い。
【0011】一方、高品質の鋳物を得るためには、鋳造
欠陥を無くすために様々な手段を講じる必要があるが、
何よりもまず高品質の溶湯11が供給されることが肝要
である。しかし、湯溜まり12に注湯された溶湯11
は、射出までの間に湯溜まり12内の空気やガスに曝さ
れるため、溶湯11の表面が酸化し、溶湯11の品質の
低下を招いていた。
【0012】そこで、溶湯11を湯溜まり12内の空気
やガスに曝さないようにするための方式として、例えば
キャビティ10内の圧力を減圧し湯溜まり12内の溶湯
11を吸い上げる、いわゆる真空給湯方式がある。ま
た、特開昭54−146216号公報に記載の方法で
は、湯溜まり12内の溶湯11の保温性向上ではなく、
鋳塊を得るための鋳型の押湯の保温性を高めることを目
的として、溶湯11の自由表面に発熱保温剤を散布し、
さらにこの発熱保温剤の表面に非発熱保温剤を散布し、
溶湯11の保温性を高め押湯としての効果を高めてい
る。上記の発熱保温剤は、例えばアルミナ系の粉末状の
もので、溶湯11の表面に振り掛けられる。
【0013】また、湯溜まり12に注湯された溶湯11
を射出するために射出プランジャ6が移動するのに伴っ
て、図17に示すように、溶湯11の自由表面11aが
乱れ、湯溜まり12内のガスを巻き込み、得られた鋳物
にこれら巻き込みガス14が原因の鋳造欠陥を生じるこ
とがあり、特に高速射出が要求されるダイカストでは問
題となっている。
【0014】これに対し、溶湯11の射出時にガスを巻
き込まないようにするためには、一例として射出速度を
下げることが考えられ、溶湯11の自由表面11aが湯
溜まり12を通過中には低速射出し、溶湯11がゲート
2a付近に達した時点で高速射出に切り換える方法があ
る。しかし、切り換えのタイミングを確実に検知するの
は困難であり、装置自体も複雑高価になるという問題が
あった。
【0015】さらに、鋳造で合金を製造する方法の一例
としては、特開平4−339557号公報に記載の方法
があり、これによると合金を作るための金属、即ち溶湯
11と異なる金属を予め製品形状よりも単純な形状に成
形しておき、これをキャビティ10内に設置した後、溶
湯11を溶融又は半溶融状態で射出し加圧成形してい
る。また、繊維強化複合材料を製造する方法として、予
め繊維材料をキャビティ10内に設置しておき、非常に
高い圧力を作用させながら溶湯11を射出し、繊維の隙
間に溶湯を含浸させるという方法もある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】上記のように構成され
た従来の鋳物の製造装置においては、高融点金属の溶湯
11をキャビティ10内に充填して高圧下で凝固させ鋳
物を製造する場合、金型表面に亀裂や溶湯11の溶着が
生じ易いという問題点があった。これに対し、金型表面
を分割可能としたり金型表面に被膜を形成する方法もあ
るが、これらの方法は、亀裂発生の複数の要因全てを考
慮してはいなかったため、高融点金属を対象として鋳造
を行なった場合には、鋳造開始後僅か数ショットで金型
表面に亀裂が発生し実用に供さなかった。また、上記の
ような金型表面部材や入れ子では、溶湯11に接触する
面と反対側の面に冷却手段を特に有してはいないため、
溶湯11の温度によっては上記部材や入れ子を構成する
材料がその要求される機能を発揮できる温度範囲を超え
てしまうこともあった。
【0017】さらに、金型表面部材や入れ子の交換・補
修時期は明確ではなく、かつ目視による亀裂の検知は非
常に難しい作業であるため、場合によっては亀裂がかな
り進展して、金型全体を交換或は補修する必要が生じ、
価格的に損失を被ることがあるという問題点があった。
これは、一般的な金型及び表面が改質された金型のいず
れについても同様に当てはまる。
【0018】さらにまた、高品質の溶湯11をキャビテ
ィ10へ供給するための方法として、先に述べた真空給
湯方式があるが、この方法ではイニシャルコストが高く
なってしまうという問題点があった。また、溶湯11の
保温を目的に溶湯11の自由表面11aに発熱保温剤を
散布する方法では、保温の機能を十分に発揮するために
発熱保温剤を均等に散布する必要があるが、そのために
は手間を要しかつ時間も要するため、鋳造サイクルタイ
ムの短縮化の妨げとなり、また散布された発熱保温剤は
溶湯11とともにキャビティ10へ供給せざるを得ない
ため、発熱保温剤の混入により製品の品質を下げること
があるなどの問題点があった。
【0019】さらに、湯溜まり12のガスを巻き込まず
に溶湯11を射出する方法として、溶湯11の自由表面
11aが湯溜まり12を通過中には低速で射出し、溶湯
11がゲート2a付近に達した時点で高速射出に切り換
える方法があるが、この方法では、射出速度の切り換え
のタイミングを確実に検知することが困難であるという
問題点があった。従って、湯溜まり12内の溶湯11の
温度低下や酸化を防ぎつつ、ガスを巻き込まずに射出す
るのは困難であった。
【0020】さらにまた、従来の鋳造による合金の製造
方法では、溶湯11と異なる金属を予め製品形状よりも
単純な形状に成形しておく必要があり、手間がかかると
いう問題点があった。また、鋳造で繊維強化複合材料を
製造するには、繊維の隙間に溶湯11を含浸させる鋳造
方法が知られているが、繊維の隙間の隅々まで溶湯11
を含浸させるために非常に高い圧力を作用させる必要が
あり、手軽には行えないという問題点があった。
【0021】この発明は、上記のような問題点を解決す
ることを課題としてなされたものであり、金型の寿命を
長くすることができ、また鋳物の品質を向上させること
ができる鋳物の製造装置及び製造方法を得ることを目的
とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る鋳
物の製造装置は、射出プランジャの移動軸方向への湯溜
まりの投影面がキャビティに重ならないように、射出プ
ランジャ及び湯溜まりを配置し、かつ金型の射出プラン
ジャの押圧力が作用する部分とキャビティとの間に分割
面を設けたものである。
【0023】請求項2の発明に係る鋳物の製造装置は、
金型表面に発生する応力を緩和するように分割された着
脱可能な入れ子により金型表面を構成したものである。
【0024】請求項3の発明に係る鋳物の製造装置は、
Ni基耐熱合金及びCo基耐熱合金の少なくともいずれ
か一方から構成される入れ子を用いるとともに、その入
れ子の厚さを1〜30mmとしたものである。
【0025】請求項4の発明に係る鋳物の製造装置は、
Cu基合金及びW基合金の少なくともいずれか一方から
構成される入れ子を用いるとともに、その入れ子の厚さ
を1〜30mmとしたものである。
【0026】請求項5の発明に係る鋳物の製造装置は、
入れ子の溶湯に接触する面と反対側の面を冷却する冷却
手段を金型に設けたものである。
【0027】請求項6の発明に係る鋳物の製造装置は、
金型表面に被膜を形成するとともに、その被膜内部に微
粒子を分散し、被膜の表面側の熱伝導率が金型本体側の
熱伝導率より低くなるようにしたものである。
【0028】請求項7の発明に係る鋳物の製造装置は、
金型表面に被膜を形成するとともに、その被膜内部に大
きさの異なる微粒子を分散し、かつ被膜の表面側の微粒
子の大きさが金型本体側の微粒子の大きさより大きくな
るようにしたものである。
【0029】請求項8の発明に係る鋳物の製造装置は、
金型表面に第1の被膜を形成するとともに、その第1の
被膜内部に微粒子を分散し、かつ第1の被膜上に第2の
被膜を形成するようにしたものである。
【0030】請求項9の発明に係る鋳物の製造装置は、
金型表面に複数層の被膜を形成し、かつ複数層の被膜の
うち、溶湯と接触する最表面層を除いた層のうちの少な
くとも一層を最表面層とは異なる色にしたものである。
【0031】請求項10の発明に係る鋳物の製造装置
は、溶湯上の耐熱性のシート部材を射出時に捕捉するた
めの凹部を、湯溜まりの天井部に設けたものである。
【0032】請求項11の発明に係る鋳物の製造方法
は、湯溜まりに注湯された溶湯の自由表面に耐熱性のシ
ート部材を浮設した後、溶湯を射出するようにしたもの
である。
【0033】請求項12の発明に係る鋳物の製造方法
は、溶湯よりも比重の小さい金属材をシート部材上に設
け、金属材及びシート部材を溶湯とともにキャビティ内
に供給するようにしたものである。
【0034】請求項13の発明に係る鋳物の製造方法
は、繊維材をシート部材上に設け、繊維材及びシート部
材を溶湯とともにキャビティ内に供給するようにしたも
のである。
【0035】
【作用】請求項1の発明においては、射出プランジャの
移動軸方向への湯溜まりの投影面をキャビティからずら
し、射出プランジャの押圧力が作用する部分とキャビテ
ィとの間に分割面を設けることにより、射出プランジャ
及び加圧プランジャによる押圧力、及び型締力により金
型に曲げ応力が発生するのを防止し、これにより亀裂の
進展を抑制する。
【0036】請求項2の発明においては、金型表面を着
脱可能な入れ子で構成することにより、金型表面の発生
応力を緩和するとともに、金型表面に亀裂が発生したと
きの交換・補修を容易にする。
【0037】請求項3の発明においては、強度的に優れ
ているとともに保温性が高いNi基耐熱合金及びCo基
耐熱合金の少なくともいずれか一方から構成される入れ
子を用いることにより、溶湯の温度低下による鋳造欠陥
の発生を防止し、また入れ子の厚さを1〜30mmとす
ることにより、耐圧性及び保温性を維持する。
【0038】請求項4の発明においては、強度的に優れ
ているとともに熱伝導率が高いCu基合金及びW基合金
の少なくともいずれか一方から構成される入れ子を用い
ることにより、入れ子に温度勾配が生じるのを防止し、
入れ子に熱応力が原因の亀裂が生じるのを防止する。
【0039】請求項5の発明においては、入れ子の溶湯
に接触する面と反対側の面を冷却手段により冷却して、
入れ子の温度上昇を緩和して、入れ子に亀裂が生じるの
を防止する。
【0040】請求項6の発明においては、被膜の表面側
の熱伝導率を金型本体側の熱伝導率より低くすることに
より、溶湯の温度低下を抑制する。
【0041】請求項7の発明においては、被膜の表面側
の微粒子の大きさを金型本体側の微粒子の大きさより大
きくすることにより、高温の溶湯に接触する被膜表面近
傍の熱伝導率を小さくして溶湯の温度低下を抑制する。
【0042】請求項8の発明においては、微粒子を分散
した第1の被膜上に第2の被膜を形成することにより、
第2の被膜の表面を滑らかにすることができ、これによ
り亀裂の発生を防止する。また、万一熱応力等が原因で
亀裂が生じ成長しても、亀裂が第1の被膜に到達した際
に微粒子が障害となるため、亀裂が進展しにくく、金型
の寿命を延ばすことが可能となる。
【0043】請求項9の発明においては、溶湯と接触す
る表面層を除いた層のうちの少なくとも一層を表面層と
は異なる色にすることにより、金型全体を交換する必要
がある程度にまで亀裂が進展するのを事前に回避する。
【0044】請求項10の発明においては、溶湯の射出
時に溶湯上に浮設されたシート部材を湯溜まりの天井部
の凹部で捕捉し、キャビティには溶湯のみが供給される
ようにする。
【0045】請求項11の発明においては、溶湯の自由
表面に耐熱性のシート部材を浮設することにより、射出
時の溶湯自由表面の乱れを防止し、これによりガスの巻
き込みを防止し、また溶湯と空気との接触を抑えて溶湯
の酸化を防止し、さらに溶湯の保温性を高める。
【0046】請求項12の発明においては、溶湯よりも
比重の小さい金属材をシート部材上に設け、金属材及び
シート部材を溶湯とともにキャビティ内に供給すること
により、異種金属で構成される鋳物を容易に製造する。
【0047】請求項13の発明においては、繊維材をシ
ート部材上に設け、繊維材及びシート部材を溶湯ととも
にキャビティ内に供給することにより、繊維材を含む繊
維強化複合材料を容易に鋳造する。
【0048】
【実施例】以下、この発明の実施例を図について説明す
る。 実施例1.図1はこの発明の実施例1による鋳物の製造
装置の要部を示す断面図であり、図16と同一又は相当
部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0049】図において、21は溶湯11の湯溜まり1
2を有する下型であり、湯溜まり12は、射出プランジ
ャ6の移動軸6a方向への投影面がキャビティ10に重
ならないように配置されている。また、図1では省略し
たが、下型21内には通常図17に示したような湯溜ま
りスリーブ13が嵌め込まれている。22は移動プレー
ト4の下部に取り付けられている上型であり、この上型
22は、分割面23で分割されている。また、これら下
型21及び上型22により金型が構成されている。24
はキャビティ10と湯溜まり12との間に設けられたゲ
ートである。
【0050】25は上型22内に配置されている第1の
加圧プランジャ、26は第1の加圧プランジャ25のプ
ランジャチップ、27は下型21内に配置されている第
2の加圧プランジャ、28は第2の加圧プランジャ27
のプランジャチップである。また、製品形状を構成する
キャビティ10は、下型21,上型22及びプランジャ
チップ26,28により構成されており、その内部には
中子5が置かれている。なお、図中、矢印Eは型締め力
の作用方向、矢印Fは射出プランジャ6による押圧力の
作用方向を示している。
【0051】次に、動作について説明する。まず、図示
しない溶解炉で銅又は銅合金を1100〜1500℃に
溶解後、図示しないラドル或は柄杓等の給湯手段で溶湯
11を湯溜まり12に注湯する。この後、移動プレート
4を図の下方へ移動させ、型締めを行う。次いで、射出
プランジャ6を移動させ、溶湯11をキャビティ10に
射出する。
【0052】キャビティ10への溶湯11の充填が完了
すると、射出プランジャ6或は各加圧プランジャ25,
27による押圧力が作用し始め、キャビティ10内に生
じる引け巣やガスの巻き込み巣を潰す働きをする。キャ
ビティ10内の溶湯11の凝固が完了した後、移動プレ
ート4を図の上方へ移動させて型開きし、鋳物、即ち製
品を取り出す。
【0053】ところで、溶湯11が注湯され射出される
のに伴って、湯溜まり12,ゲート24及びキャビティ
10を構成する金型、即ち下型21及び上型22は、1
100〜1500℃の溶湯に接触するため、材料強度が
低下するとともに、溶湯11の熱による熱応力が生じ
て、材料強度的に非常に危険な状態に置かれる。さら
に、キャビティ10への溶湯11の充填が完了すると、
射出プランジャ6或は加圧プランジャ25,27による
押圧力が作用し始める。なお、型締が完了した時点よ
り、金型には型締力が作用している。
【0054】例えば、図16に示した従来の1個取り金
型のように、射出プランジャ6の移動軸6a方向への湯
溜まりの投影面がキャビティ10に重なっているもので
は、ゲート2aを構成する中型2に、射出プランジャ6
による力、加圧プランジャ8による力、さらに移動プレ
ート4を図の下方へ押し付けて型締めする力が作用する
が、これらの力の作用する位置がお互いを打ち消し合う
関係にないため、中型2には曲げ応力が生じる。しか
も、この中型2は、上述したように材料強度的に非常に
危険な状態に置かれているため、僅かの曲げ応力にも耐
えられず、その表面に亀裂が発生してしまう。
【0055】また、従来の多数個取り金型では、ゲート
近傍の金型表面に亀裂が生じることが多かった。従来の
多数個取り金型には、図1に示したような射出プランジ
ャ6の押圧力が作用する部分とキャビティ10との間の
分割面23が設けられていないために、ゲート付近に大
きな曲げ応力が作用したことが、上記亀裂の生じた原因
である。
【0056】これに対し、この実施例1の装置では、金
型に働く力が互いに打ち消し合うように、湯溜まり12
及び射出プランジャ6の位置をキャビティ10からずら
すとともに、上型22を分割面23で分割して構成して
いるため、各プランジャ6,25,27による押圧力、
及び型締め力による曲げ応力が金型に発生するのが防止
され、材料強度的に不利な状態にあっても亀裂が発生し
にくくなっている。従って、金型の長寿命化を図ること
ができるとともに、鋳物の品質を向上させることが可能
となる。
【0057】実施例2.次に、図2はこの発明の実施例
2による鋳物の製造装置の要部を示す断面図である。こ
の実施例2では、実施例1で示した下型21及び上型2
2のうち、湯溜まり12の近傍を下型入れ子21a、キ
ャビティ10の近傍を上型入れ子22a、ゲート24の
近傍をゲート入れ子24a,24bとしてそれぞれ分割
構成した。なお、ゲート入れ子24a,24bは、上型
22及び下型21にそれぞれボルト締め等の手段により
着脱可能に固定されている。また、図中、矢印はその部
分に生じる主応力の方向を示している。
【0058】次に、動作について説明する。まず、11
00〜1500℃に加熱された銅又は銅合金の溶湯11
が湯溜まり12に注湯されると、下型21の湯溜まり1
2近傍が溶湯11の熱を受け、その部分に応力が生じ
る。次いで、溶湯11のキャビティ10への充填過程及
び充填完了後には、溶湯11と接触する金型表面に、溶
湯11の熱による応力が発生する。
【0059】このとき、溶湯11の熱による応力によ
り、金型表面部材は伸びようとするが、この伸びは、金
型表面から深くなるにつれて熱の影響が小さいため小さ
くなる。このため、溶湯11の熱による応力が発生する
金型表面には、その周りの熱の影響が小さく伸びが小さ
い部分により拘束され、大きな圧縮応力が発生する。
【0060】逆に、キャビティ10内,ゲート2a内及
び湯溜まり12内の溶湯11の凝固が完了し、これらを
取り出した後は、金型表面は空気と接触して急冷される
ため収縮しようとする。このため、金型表面には、その
外周部の熱の影響が小さく収縮が小さい部分により拘束
され、大きな引張応力が発生する。
【0061】このように、鋳物の製造工程を繰り返す、
即ち鋳造サイクルを繰り返すと、溶湯11の熱による応
力を受ける金型表面に発生する応力は、圧縮,引張のサ
イクルが繰り返すことになるが、例えば銅又は銅合金等
の高温の溶湯11に曝された場合、これらの溶湯11に
よる加熱だけでも先に述べたように材料強度的に非常に
危険な状態であるため、鋳造開始後僅か数ショットで金
型表面に亀裂が発生する。
【0062】これに対し、この実施例2における装置で
は、高温の溶湯11に曝されて熱による応力が生じる金
型表面を、下型入れ子21a,上型入れ子22a及びゲ
ート入れ子24a,24bで構成し、熱の影響が及びに
くい部分と分割したので、伸び或は縮みといった変形に
対する拘束が緩和され、入れ子構造の金型表面は比較的
自由に変形することが可能となる。これにより、金型表
面の応力が緩和されて、亀裂の発生が抑制され、金型の
長寿命化を図ることができるとともに、鋳物の品質を向
上させることができる。
【0063】さらに、上記の金型では、万一入れ子21
a,22a,24a,24bに亀裂が生じても、その亀
裂が金型の入れ子より深い部分にまでが及ぶ以前であれ
ば、入れ子のみを交換或は補修すればよく、交換・補修
が容易である。なお、下型入れ子21aが果たす機能
を、図17に示したような湯溜まりスリーブ13(図2
では省略した。)が果たすようにしてもよい。
【0064】また、金型表面をどのように分割して入れ
子構造とするかについては、亀裂発生の原因となる主応
力の方向や金型構造及び製品形状の制限により決められ
る。例えば、図2の矢印に示したような引張応力を主に
考慮する場合には、その主応力方向に対して垂直に分割
するのが好ましく、これにより効果的に応力を緩和でき
る。また、圧縮応力を主に考慮する場合には、その主応
力方向に対して45°に分割するのが好ましい。
【0065】但し、上記したように金型構造及び製品形
状の制限も受けざるを得ないので、45°に製作するこ
とは難しく、可能な範囲で45°に近い傾きで分割する
ことになる。この実施例2では、引張応力が亀裂発生の
主要因であるため、主応力方向に対して垂直に分割した
入れ子構造としている。
【0066】さらに、隣接する入れ子間や入れ子とそれ
が取り付けられている部分との間などの分割部に、50
〜200μmのクリアランスを設けることも可能であ
り、これにより圧縮応力の発生も緩和することができ
る。ここで、分割部のクリアランスを50〜200μm
としたのは、クリアランスが50μmより小さいと、圧
縮応力の緩和を十分に行えず、200μmよりも大きい
と、クリアランスから溶湯11が流出したり、バリの発
生が著しくなるためである。
【0067】実施例3.次に、図3はこの発明の実施例
3による鋳物の製造装置の要部を示す断面図である。こ
の実施例3では、実施例2に示す入れ子構造、即ち下型
入れ子21a,上型入れ子22a及びゲート入れ子24
a,24bを、Ni(ニッケル)基耐熱合金及びCo
(コバルト)基耐熱合金の少なくともいずれか一方で構
成し、かつその厚さをL1=1〜30mmと規定する。
【0068】このような装置では、高温下での材料強度
的に優れており、かつ溶湯11の保温性が高いNi基耐
熱合金及びCo基耐熱合金を、入れ子材料としているた
め、溶湯11の温度低下が原因の鋳造欠陥の発生を防止
できる。また、入れ子21a,22a,24a,24b
の厚さの最小値を1mmとしたのは、これより薄いと溶
湯11の加圧時の高い圧力に耐えられないためであり、
最大値を30mmとしたのは、これより厚くても上記の
効果がさほど向上しないためである。
【0069】さらに、上記実施例3の装置では、金型全
体をNi基耐熱合金やCo基耐熱合金とするよりも安価
に金型の長寿命化を図ることができる。
【0070】実施例4.次に、図4はこの発明の実施例
4による鋳物の製造装置の要部を示す断面図である。こ
の実施例4では、実施例2に示す入れ子構造、即ち下型
入れ子21a,上型入れ子22a及びゲート入れ子24
a,24bを、Cu(銅)基合金及びW(タングステ
ン)基合金の少なくともいずれか一方で構成し、かつそ
の厚さをL2=1〜30mmと規定する。
【0071】このような装置では、高温下での材料強度
的に優れており、かつ熱伝導率が高いCu基合金及びW
基合金を入れ子材料としているため、溶湯11に接触し
たときに入れ子21a,22a,24a,24bに温度
勾配が付きにくくなり、熱による応力が原因の亀裂が生
じるのが防止される。また、入れ子21a,22a,2
4a,24bの厚さの最小値を1mmとしたのは、上記
実施例3と同様の理由からであり、最大値を30mmと
したのは、これより厚くても上記の効果がさほど向上し
ないためである。
【0072】さらに、この実施例4の装置によれば、金
型全体をCu基合金やW基合金とするよりも安価に金型
の長寿命化を図ることができる。
【0073】なお、上記のように入れ子材料を熱伝導率
の高いものとした場合には、これに接触する溶湯11の
温度低下が懸念されるが、この場合、溶湯11の保温性
を高めるために、溶湯11と接触する入れ子表面部分に
離型剤を十分に塗布して溶湯11と入れ子表面部分との
間の熱伝達率を低くすることもできる。
【0074】また、上記実施例3,4のように材料や厚
さ寸法を規定するのは、一部の入れ子であっても全部の
入れ子であってもよい。
【0075】実施例5.次に、図5はこの発明の実施例
による鋳物の製造装置の要部を示す断面図である。図に
おいて、30は上型22内に設けられた冷却手段として
の冷却パイプであり、この冷却パイプ30は、冷却用の
水を通すことにより、入れ子、ここではゲート入れ子2
4aの溶湯11に接触する面と反対側の面を冷却する。
【0076】このような装置では、上型22内に冷却パ
イプ30が設けられているため、ゲート入れ子24aの
温度上昇を緩和することができ、ゲート入れ子24aが
その要求される機能を果たす温度範囲を超えるのを防止
することができる。このような冷却構造は、例えば銅又
は銅合金等の高融点金属の溶湯11をキャビティ10内
に充填し、高圧下で凝固させて鋳物を製造する鋳造サイ
クルを繰り返す場合には、特に有効である。
【0077】なお、上記実施例5では冷却パイプ30に
水を流しているが、例えば他の液体や気体など、水以外
の冷媒を使用してもよい。また、冷却手段は冷却パイプ
30に限定されるものではなく、その設置場所も上記実
施例5の位置に限定されるものではない。
【0078】実施例6.次に、図6はこの発明の実施例
6による鋳物の製造装置の金型表面の断面図である。図
において、31は金型本体で、上記実施例2〜5のよう
な入れ子構造の場合には、金型本体31は、入れ子とそ
れを支持する金型基体とから構成される。32は金型本
体31の表面上に形成されためっきによる被膜であり、
上記実施例2〜5のように金型表面が入れ子で構成され
ている場合には、その入れ子の表面が金型本体31の表
面となり、被膜32は入れ子の表面に形成されることに
なる。33a,33bはそれぞれ被膜32に分散された
微粒子であり、これらの微粒子33a,33bは、被膜
32の表面34側の微粒子33aの熱伝導率が被膜32
の内側(金型本体31側)の微粒子の熱伝導率より低く
なるように配置されている。
【0079】また、この実施例6では、めっきによる被
膜32としてNi−Co−W合金に微粒子33a,33
bを分散させたものを使用している。めっき液は、硫酸
ニッケル0.11モル、硫酸コバルト0.12モル、タ
ングステン酸ナトリウム0.005モル、クエン酸0.
33モル、塩化ナトリウム0.17モルからなり、この
溶液中に、微粒子33bに相当するAl23粒子(熱伝
導率:0.095CGS(RT))を10〜100g/
リットルほど混ぜ、膜厚約300μmのめっきを施し
た。続いて、Al23粒子の変わりに微粒子33aに相
当するAlN粒子(熱伝導率:0.004CGS(R
T))を混ぜた溶液で、膜厚約300μmのめっきを施
した。めっき条件は、電流密度2A/dm2、温度35
℃とした。
【0080】このような被膜構造によれば、溶湯11
(図1)に接触する金型表面、即ちここでは被膜32の
表面34の熱伝導率が低くなっているので、溶湯11の
温度低下が抑制され、溶湯11の温度低下による鋳造欠
陥の発生が防止されて、鋳物の品質を向上させることが
できる。
【0081】なお、上記実施例6では被膜32内に分散
させる微粒子33a,33bを2種類としたが、被膜3
2の表面34近傍の微粒子の熱伝導率が金型本体31近
傍の微粒子の熱伝導率よりも低ければ、微粒子は3種類
以上であっても良い。例えば、3種類以上の微粒子を上
記条件を満たすように連続的に分散させることで、傾斜
的に熱伝導率を変化させることができる。
【0082】また、以上に述べたような膜厚方向に熱伝
導率を変化させた被膜を得る方法としては、上記の方法
以外に、例えば熱伝導率の低い被膜を形成し、この被膜
内に被膜材料よりも熱伝導率の大きい微粒子を分散させ
て、被膜全体としては熱伝導率が被膜表面側の熱伝導率
が金型本体側のそれより低くなるようにするなどしても
よい。
【0083】実施例7.次に、図7はこの発明の実施例
7による鋳物の製造装置の金型表面の断面図である。図
において、33c,33d,33eは被膜32内に分散
された大きさの異なる微粒子であり、これらの微粒子3
3c〜33eは、微粒子33cの大きさ>微粒子33d
の大きさ>微粒子33eの大きさとなるように分散され
ている。即ち、被膜32の表面34近傍の微粒子の大き
さが金型本体31近傍の微粒子の大きさより大きくなっ
ている。
【0084】また、この実施例7では、めっきによる被
膜32としてNi−Co−W合金に微粒子33c〜33
eを分散させたものを使用している。めっき液は、硫酸
ニッケル0.11モル、硫酸コバルト0.12モル、タ
ングステン酸ナトリウム0.005モル、クエン酸0.
33モル、塩化ナトリウム0.17モルからなり、これ
に微粒子33eに相当する粒径が約0.5μmのAl2
3粒子を10〜100g/リットルほど混ぜた溶液
で、膜厚約100μmのめっきを施した。続いて、微粒
子33dに相当する粒径が約3μmのAl23粒子を1
0〜100g/リットルほど混ぜた溶液で、膜厚約10
0μmのめっきを施した。さらに続いて、微粒子33c
に相当する粒径が約10μmのAl23粒子を10〜1
00g/リットルほど混ぜた溶液で、膜厚約100μm
のめっきを施した。めっき条件は、電流密度2A/dm
2、温度35℃とした。
【0085】このような被膜構造によれば、微粒子33
c〜33eの大きさを上記のように変えることにより、
溶湯11に接触する金型表面、即ちここでは被膜32の
表面34の熱伝導率が低くなっているので、溶湯11の
温度低下が抑制され、溶湯11の温度低下による鋳造欠
陥の発生が防止されて、鋳物の品質を向上させることが
できる。
【0086】なお、上記実施例7では3種類の大きさの
微粒子33c〜33eを用いたが、被膜32の表面34
近傍の微粒子の粒径が金型本体31近傍の微粒子の粒径
よりも大きければ、2種類又は4種類以上であってもよ
い。例えば、4種類以上の微粒子を上記条件を満たすよ
うに連続的に分散させることで、傾斜的に熱伝導率を変
化させることができる。
【0087】実施例8.次に、図8はこの発明の実施例
8による鋳物の製造装置の金型表面の断面図である。図
において、35は金型本体31の表面上に形成されため
っきによる被膜であり、この被膜35は、第1の被膜3
6と、この第1の被膜36の表面37上に積層形成され
た第2の被膜38とを有している。また、第2の被膜3
8は、滑らかでほぼ欠陥のない表面39を有している。
さらに、第1の被膜36内には、微粒子40が分散され
ている。
【0088】また、この実施例8では、めっきによる被
膜36としてNi−Co−W合金に微粒子40を分散さ
せたものを使用している。めっき液は、硫酸ニッケル
0.11モル、硫酸コバルト0.12モル、タングステ
ン酸ナトリウム0.005モル、クエン酸0.33モ
ル、塩化ナトリウム0.17モルからなり、これに粒径
が約0.5μmのAl23粒子を10〜100g/リッ
トルほど混ぜた溶液で、膜厚約100μmのめっきを施
し第1の被膜36を形成する。続いて、微粒子を分散さ
せない溶液で、膜厚約100μmのめっきを施し第2の
被膜38を形成する。めっき条件は、電流密度2A/d
2、温度35℃とした。
【0089】先に述べたように、溶湯11に接触する金
型表面に機械加工痕、放電加工痕、材料欠陥等の微細な
欠陥が存在すると、これらが起点となって亀裂が発生す
る。また、上記実施例6,7の方法の場合、被膜32の
表面34に存在する微粒子33a,33cと被膜32を
構成する母材との間の粒界が亀裂の起点となる恐れがあ
り、また特開昭62−13236号公報に記載の方法で
も同様である。
【0090】これに対して、この実施例8の被膜構造に
よれば、微粒子40を分散させた第1の被膜36上に、
微粒子40のない第2の被膜38を形成しているため、
この第2の被膜38の表面を滑らかで欠陥のない状態と
することができ、亀裂の起点となる微粒子40と第1の
被膜36を構成する母材との粒界41を覆っているの
で、亀裂の発生が抑制される。
【0091】また、亀裂が生じて成長しても、第1の被
膜36に到達した際に微粒子40が障害となるため、亀
裂の進展を防止することができる。
【0092】なお、第1の被膜36を省略し、金型本体
31の表面(上述したように、入れ子構造の場合には入
れ子の表面が金型本体31の表面となる。)に第2の被
膜38を形成するだけであってもよく、亀裂の起点とな
る機械加工痕、放電加工痕、材料欠陥等の微細な欠陥を
覆えるので、亀裂の発生を抑制できる。
【0093】実施例9.次に、図9はこの発明の実施例
9による鋳物の製造装置の金型表面の断面図である。図
において、42は金型本体31の表面上に形成されため
っきによる被膜であり、この被膜42は、上記実施例8
と同様の第1及び第2の被膜36,38と、これらの間
に介在する第3の被膜43とを有している。また、第3
の被膜43は、最表面層である第2の被膜38と異なる
色になっている。
【0094】即ち、この実施例9では、微粒子40を分
散させた第1の被膜36の表面の一部又は全面に、第3
の被膜43を形成し、かつその色を例えば一般的に目立
つ色である黄金色にした。具体的には、第3の被膜43
としてAuめっき層を形成した。この第3の被膜43の
上に、さらに微粒子を分散させない第2の被膜38を形
成した。
【0095】このような被膜構造によれば、金属の溶湯
11をキャビティ10内に充填し高圧下で凝固させて鋳
物を製造することを繰り返すうちに、表面が滑らかな第
2の被膜38が失われると、上記目立つ色である黄金色
の第3の被膜43が露出する。このため、金型全体を交
換する必要がある程度にまで亀裂が進展する前に、金型
本体31(入れ子構造の場合はその入れ子)の表面を補
修したり、入れ子や被膜42を交換・補修したりする時
期をより確実かつ容易に確認することができる。
【0096】なお、被膜は上記実施例9の被膜42に限
らず、上記実施例6,7記載の被膜32、或は上記実施
例8記載の被膜35などであってもよい。
【0097】また、上記実施例9では3層の被膜36,
38,43のうちの中間層を異なる色としたが、被膜の
層数は2層以上であれば何層でもよく、また異なる色に
する層は最表層以外の層であればどの層であってもよ
い。さらに、被膜毎に色を変えて、亀裂の深さを定量的
に判断できるようにしてもよい。
【0098】さらに、異なる色の微粒子を分散させた
り、いわゆるタイヤのスリップマークのような何等かの
形状によって金型本体やその入れ子部分又は被膜の交換
或は補修の時期が来たことを知らせてもよい。
【0099】実施例10.次に、図10はこの発明の実
施例10による鋳物の製造装置の要部を示す断面図であ
る。図において、51は湯溜まり12の溶湯11の自由
表面11aに浮設された耐熱性のシート部材としてのセ
ラミックペーパーであり、ここで言うセラミックペーパ
ー51は、セラミック繊維紙やセラミックシートなども
含むものである。また、図中、矢印Gは射出プランジャ
6の移動方向を示している。
【0100】このような装置では、セラミックペーパー
51を浮設することにより、自由表面11aが乱れない
ようにして溶湯11を射出する。セラミックペーパー5
1の浮設のタイミングは、注湯完了後から射出開始まで
の間ならばいつでもよいが、注湯完了後直ちに浮設する
と溶湯11の酸化や溶湯温度の低下を効果的に抑制でき
好ましい。
【0101】ここで、従来の装置では、図17に示した
ように、射出時に自由表面11aが乱れるため、ガスが
巻き込まれ、巻き込みガス14を内包した状態で溶湯1
1がキャビティ10に供給されていた。従って、キャビ
ティ10には、通常、巻き込みガス14をキャビティ1
0外に排出するための機構、例えばガスベント(図示せ
ず)が設けられていたり、或は巻き込みガス14を圧縮
し潰すための機構、例えば加圧プランジャ等が設けられ
ていた。
【0102】しかし、キャビティ10に供給された溶湯
11から巻き込みガス14を完全に除去することは非常
に困難であり、除去しきれなかった巻き込みガス14
は、キャビティ10内の溶湯11の凝固完了後もキャビ
ティ10、即ち製品内に残留し、製品に欠陥を生じさせ
ていた。このため、上記のような欠陥をなくすために
は、巻き込みガスを内包しない溶湯11をキャビティ1
0に供給することが肝要である。
【0103】そのために従来は、例えばキャビティ10
内の圧力を減圧して溶湯11を湯溜まり12から吸い上
げる真空給湯方式が行われていたが、装置が複雑高価に
ならざるを得ず、また既存の装置ではキャビティ10内
を減圧するための装置を新たに導入しなけらばならなか
った。
【0104】これに対し、この実施例10の方法によれ
ば、溶湯11の自由表面11aにセラミックペーパー5
1を浮設しているため、射出プランジャ6が移動を開始
しても、セラミックペーパー51が蓋の働きをして、自
由表面11aが乱れることがなく、かつ溶湯11が湯溜
まり12内のガスと直接接触することが妨げられ、ガス
の巻き込みが防止される。また、セラミックペーパー5
1を浮設しない場合に比べ、溶湯11が酸化しにくくな
るとともに、溶湯11の温度が低下しにくくなる。
【0105】つまり、この実施例10の方法によれば、
湯溜まり12に注湯された溶湯11のガスの巻き込み、
酸化及び温度低下が抑制され、高品質の溶湯11をキャ
ビティ10に供給することができる。また、セラミック
ペーパー51といった安価かつ手軽に入手可能な部材を
浮設するだけなので、従来例のように新たに設備を導入
する必要がなく、溶湯の品質を容易に向上させることが
でき、鋳造欠陥のない鋳物を得ることができる。
【0106】さらに、作業性を考えると、溶湯11の保
温を目的に発熱保温剤を自由表面11aに散布する従来
例の場合、発熱保温剤を均等に散布するために手間を要
しかつ時間も要するため、鋳造サイクルタイムの短縮化
の妨げとなっていたが、この実施例10の方法によれ
ば、例えば注湯が完了してからセラミックペーパー51
を湯溜まり12に静かに投入するだけで済むので、鋳造
サイクルタイムの短縮化の妨げとなることもない。
【0107】ここで、この実施例10の効果を確かめる
ため、密度2.7g/cm3の純アルミニウムを650
℃で溶解して、径φ100mm、高さ150mmの湯溜
まり12に注湯後、径φ30mm、高さ50mmの円柱
状キャビティ10に、射出プランジャ速度1000mm
/sで射出する実験を行った。
【0108】この結果、セラミックペーパー51を浮設
しない従来の射出方法によると、得られた鋳物の密度は
2.6g/cm3であり、得られた鋳物の断面を観察し
たところ、巻き込みガスが原因の鋳造欠陥が散見され
た。これに対し、セラミックペーパー51を浮設するこ
の実施例10の射出方法によると、得られた鋳物の密度
は2.7g/cm3であり、得られた鋳物の断面を観察
したところ、巻き込みガスが原因の鋳造欠陥は見当たら
なかった。
【0109】なお、セラミックペーパー51の浮設方法
は、図10のように自由表面11aに直接浮かべる、即
ち直接接触させる方法に限らず、例えば図11に示すよ
うに、湯溜まりスリーブ13或は湯溜まり12の内壁に
射出プランジャ6の移動を妨げない程度の突起13aを
設け、この突起13aで上記セラミックペーパー51を
支持する方法、即ち自由表面11aとセラミックペーパ
ー51との間に隙間52を設ける方法であってもよい。
【0110】この場合、自由表面11aが突起13aに
達した時点でセラミックペーパー51が浮設され、その
後は図10の場合と同様に動作する。上記突起13a
は、湯溜まりスリーブ13又は湯溜まり12の内壁とプ
ランジャチップ7の外周壁との間のクリアランス以下の
高さを有するか、若しくは上記クリアランス以上の高さ
を有する場合は、プランジャチップ7の通過により内壁
から剥離する又はそれ自身が変形するようなものであれ
ば特に種類を限定されるものではない。
【0111】なお、上記実施例10ではシート部材とし
てセラミックペーパー51を示したが、十分な耐熱性を
持つものであれば他の材料からなるものであってもよ
い。
【0112】実施例11.次に、図12はこの発明の実
施例11による鋳物の製造装置の射出前の状態を示す要
部断面図、図13は図12の射出中の状態を示す要部断
面図である。図において、53は湯溜まり12の溶湯1
1の自由表面11aに浮設された耐熱性のシート部材と
しての高純度アルミナペーパー、12aは湯溜まり12
の天井部に設けられた凹部である。
【0113】このような装置では、湯溜まり12への溶
湯11の注湯が完了した後、直ちに高純度アルミナペー
パー53を浮設して溶湯11を射出する。このため、上
記実施例10と同様に、溶湯11のガス巻き込み、酸化
及び温度低下が防止され、高品質の溶湯11がキャビテ
ィ10に供給される。
【0114】また、射出時には、高純度アルミナペーパ
ー53が図12の状態から上動し、図13に示すよう
に、凹部12a内に捕捉されるため、キャビティ10に
は高品質の溶湯11のみが供給される。即ち、キャビテ
ィ10に高純度アルミナペーパー53が供給されるのが
防止され、溶湯11の材料のみの純度の高い鋳物を製造
することができる。
【0115】なお、上記実施例11ではシート部材とし
て高純度アルミナペーパー53を示したが、例えば実施
例10で示したセラミックペーパー51など、他のシー
ト部材であっても、凹部12aを設けておくことにより
実施例11と同様の効果が得られる。
【0116】実施例12.次に、図14はこの発明の実
施例12による鋳物の製造装置の要部を示す断面図であ
る。図において、54は高純度アルミナペーパー53上
に乗せられた金属材であり、この金属材54は、その比
重が溶湯11の比重よりも小さいものである。
【0117】この実施例12の鋳物の製造方法では、湯
溜まり12に注湯された溶湯11の自由表面11a上に
高純度アルミナペーパー53を浮設し、さらにその上に
金属材54を乗せ、この後溶湯11を射出する。具体的
には、この実施例12では、溶解炉で純銅を溶湯温度約
1200〜1500℃に溶解し、これをラドル或は柄杓
等の給湯手段により湯溜まり12に注湯した後、直ちに
自由表面11aの上に高純度アルミナペーパー53を浮
設する。そして、さらにその上に、純銅である溶湯11
の比重7.9よりも比重の小さい比重2.7の純アルミ
ニウムからなる金属材54を乗せ、この後溶湯11を射
出した。
【0118】この結果、得られた鋳物には、巻き込みガ
スが原因の鋳造欠陥は見られなかった上、異種金属から
なる鋳物が手軽に得られた。
【0119】なお、シート部材は高純度アルミナペーパ
ー53に限定されるものではなく、例えばセラミックペ
ーパー51等に置き換えてもよく、その浮設方法も図1
0及び図11のいずれの方法でもよい。また、溶湯11
や金属材54の材料も上記実施例12に限定されるもの
ではなく、種々の組み合わせが可能である。
【0120】実施例13.次に、図15はこの発明の実
施例13による鋳物の製造装置の要部を示す断面図であ
る。図において、55は高純度アルミナペーパー53上
に乗せられた繊維材としてのセラミック繊維材である。
【0121】この実施例13の鋳物の製造方法では、湯
溜まり12に注湯された溶湯11の自由表面11a上に
高純度アルミナペーパー53を浮設し、さらにその上
に、溶湯11の比重よりも比重の小さいセラミック繊維
材55を乗せ、この後溶湯11を射出する。具体的に
は、この実施例13では、アルミニウム合金ADC12
を溶解炉で溶湯温度約600〜800℃に溶解し、これ
をラドル或は柄杓等の給湯手段により湯溜まり12に注
湯した後、直ちに自由表面11a上に高純度アルミナペ
ーパー53を浮設する。そして、さらにその上に、アル
ミニウム合金ADC12である溶湯11の比重2.76
よりも比重の小さい比重2.3の炭素を主とするセラミ
ック繊維材55を乗せ、この後溶湯11を射出した。
【0122】この結果、得られた鋳物には、巻き込みガ
スが原因の鋳造欠陥は見られなかった上、繊維強化され
たアルミニウム鋳物が手軽に得られた。
【0123】なお、シート部材は高純度アルミナペーパ
ー53に限定されるものではなく、例えばセラミックペ
ーパー51等に置き換えてもよく、その浮設方法も図1
0及び図11のいずれの方法でもよい。また、溶湯11
及び繊維材は上記実施例13に限定されるものではな
く、種々の組み合わせが可能である。
【0124】さらに、実施例10及び実施例13を除く
上記各実施例では高融点金属の溶湯11を用いる場合に
ついて示したが、例えばアルミニウム合金など、比較的
融点の低い材料からなる溶湯11を使用する場合にもこ
の発明は適用できる。
【0125】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明の
鋳物の製造装置は、射出プランジャの移動軸方向への湯
溜まりの投影面がキャビティに重ならないように、射出
プランジャ及び湯溜まりを配置し、かつ金型の射出プラ
ンジャの押圧力が作用する部分とキャビティとの間に分
割面を設けたので、射出プランジャや加圧プランジャに
よる押圧力、及び型締力により金型に曲げ応力が発生す
るのを防止し、これにより亀裂の進展を抑制することが
でき、従って金型の寿命を長くすることができ、また鋳
物の品質を向上させることができるなどの効果を奏す
る。
【0126】また、請求項2の発明の鋳物の製造装置
は、金型表面に発生する応力を緩和するように分割され
た着脱可能な入れ子により金型表面を構成したので、上
記請求項1の発明と同様の効果に加えて、金型表面の発
生応力を一層緩和することができるとともに、金型表面
に亀裂が発生したときの交換・補修を容易にすることが
できるなどの効果を奏する。
【0127】さらに、請求項3の発明の鋳物の製造装置
は、強度的に優れているとともに保温性が高いNi基耐
熱合金及びCo基耐熱合金の少なくともいずれか一方か
ら構成される入れ子を用いるとともに、その入れ子の厚
さを1〜30mmとしたので、上記請求項2の発明と同
様の効果に加えて、入れ子の耐圧性及び保温性を維持し
つつ、溶湯の温度低下による鋳造欠陥の発生を防止する
ことができ、鋳物の品質を一層向上させることができる
という効果を奏する。
【0128】さらにまた、請求項4の発明の鋳物の製造
装置は、強度的に優れているとともに熱伝導率が高いC
u基合金及びW基合金の少なくともいずれか一方から構
成される入れ子を用いるとともに、その入れ子の厚さを
1〜30mmとしたので、上記請求項2の発明と同様の
効果に加えて、入れ子の耐圧性及び保温性を維持しつ
つ、入れ子に温度勾配が生じるのを防止し、これにより
入れ子に熱応力が原因の亀裂が生じるのを防止すること
ができ、金型の寿命を一層長くすることができるととも
に、鋳物の品質を一層向上させることができるなどの効
果を奏する。
【0129】また、請求項5の発明の鋳物の製造装置
は、入れ子の溶湯に接触する面と反対側の面を冷却する
冷却手段を金型に設けたので、上記請求項2の発明と同
様の効果に加えて、入れ子の温度上昇を緩和して、入れ
子に亀裂が生じるのを防止することができ、金型の寿命
を一層長くすることができるとともに、鋳物の品質を一
層向上させることができるなどの効果を奏する。
【0130】さらに、請求項6の発明の鋳物の製造装置
は、金型表面に被膜を形成するとともに、その被膜内部
に微粒子を分散し、被膜の表面側の熱伝導率が金型本体
側の熱伝導率より低くなるようにしたので、上記請求項
1の発明と同様の効果に加えて、溶湯の温度低下を抑制
することができ、これにより溶湯の温度低下による鋳造
欠陥の発生を防止することができ、鋳物の品質を一層向
上させることができるという効果を奏する。
【0131】さらにまた、請求項7の発明の鋳物の製造
装置は、金型表面に被膜を形成するとともに、その被膜
内部に大きさの異なる微粒子を分散し、かつ被膜の表面
側の微粒子の大きさが金型本体側の微粒子の大きさより
大きくなるようにしたので、上記請求項1の発明と同様
の効果に加えて、高温の溶湯に接触する被膜表面近傍の
熱伝導率を低くして溶湯の温度低下を抑制することがで
き、これにより溶湯の温度低下による鋳造欠陥の発生を
防止することができ、鋳物の品質を一層向上させること
ができるという効果を奏する。
【0132】また、請求項8の発明の鋳物の製造装置
は、金型表面に第1の被膜を形成するとともに、その第
1の被膜内部に微粒子を分散し、かつ第1の被膜上に第
2の被膜を形成するようにしたので、上記請求項1の発
明と同様の効果に加えて、第2の被膜の表面を滑らかに
することができ、これにより亀裂の発生を防止すること
ができ、また万一熱応力等が原因で亀裂が生じ成長して
も、亀裂が第1の被膜に到達した際に微粒子が障害とな
るため、亀裂が進展しにくく、金型の寿命を一層延ばす
ことができるなどの効果を奏する。
【0133】さらに、請求項9の発明の鋳物の製造装置
は、金型表面に複数層の被膜を形成し、かつ複数層の被
膜のうち、溶湯と接触する最表面層を除いた層のうちの
少なくとも一層を最表面層とは異なる色にしたので、上
記請求項1の発明と同様の効果に加えて、金型本体やそ
の入れ子部分又は被膜の交換・補修時期をより確実かつ
容易に確認することができ、金型全体を交換する必要が
ある程度にまで亀裂が進展する以前に、金型本体表面や
その入れ子表面を補修したり、入れ子や被膜の交換・補
修を行うことができるという効果を奏する。
【0134】さらにまた、請求項10の発明の鋳物の製
造装置は、溶湯上の耐熱性のシート部材を射出時に捕捉
するための凹部を、湯溜まりの天井部に設けたので、上
記請求項1の発明と同様の効果に加えて、シート部材が
キャビティに供給されるのを防止することができ、鋳物
の品質を一層向上させることができるという効果を奏す
る。
【0135】また、請求項11の発明の鋳物の製造方法
は、湯溜まりに注湯された溶湯の自由表面に耐熱性のシ
ート部材を浮設した後、溶湯を射出するようにしたの
で、射出時の溶湯自由表面の乱れを防止することがで
き、これによりガスの巻き込みを防止することができ、
また溶湯と空気との接触を抑えて溶湯の酸化を防止する
とともに、溶湯の保温性を高めることができ、これによ
り溶湯の温度低下による鋳造欠陥の発生を防止すること
ができ、鋳物の品質を向上させることができるという効
果を奏する。
【0136】さらに、請求項12の発明の鋳物の製造方
法は、溶湯よりも比重の小さい金属材をシート部材上に
設け、金属材及びシート部材を溶湯とともにキャビティ
内に供給するようにしたので、上記請求項11の発明と
同様の効果に加えて、異種金属で構成される鋳物を容易
に製造することができるという効果を奏する。
【0137】さらにまた、請求項13の発明の鋳物の製
造方法は、繊維材をシート部材上に設け、繊維材及びシ
ート部材を溶湯とともにキャビティ内に供給するように
したので、上記請求項11の発明と同様の効果に加え
て、繊維材を含む繊維強化複合材料を容易に鋳造するこ
とができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1による鋳物の製造装置の要
部を示す断面図である。
【図2】この発明の実施例2による鋳物の製造装置の要
部を示す断面図である。
【図3】この発明の実施例3による鋳物の製造装置の要
部を示す断面図である。
【図4】この発明の実施例4による鋳物の製造装置の要
部を示す断面図である。
【図5】この発明の実施例5による鋳物の製造装置の要
部を示す断面図である。
【図6】この発明の実施例6による鋳物の製造装置の金
型表面を示す概略の断面図である。
【図7】この発明の実施例7による鋳物の製造装置の金
型表面を示す概略の断面図である。
【図8】この発明の実施例8による鋳物の製造装置の金
型表面を示す概略の断面図である。
【図9】この発明の実施例9による鋳物の製造装置の金
型表面を示す概略の断面図である。
【図10】この発明の実施例10による鋳物の製造装置
の要部を示す断面図である。
【図11】図10の変形例を示す断面図である。
【図12】この発明の実施例11による鋳物の製造装置
の射出前の状態を示す要部断面図である。
【図13】図12の射出中の状態を示す要部断面図であ
る。
【図14】この発明の実施例12による鋳物の製造装置
の要部を示す断面図である。
【図15】この発明の実施例13による鋳物の製造装置
の要部を示す断面図である。
【図16】従来の鋳物の製造装置の一例の要部を示す断
面図である。
【図17】図16の湯溜まりの部分を拡大して示す断面
図である。
【符号の説明】
6 射出プランジャ 6a 移動軸 10 キャビティ 11 溶湯 12 湯溜まり 12a 凹部 21 下型 21a 下型入れ子 22 上型 22a 上型入れ子 24a ゲート入れ子 24b ゲート入れ子 30 冷却パイプ(冷却手段) 31 金型本体 32 被膜 33a 微粒子 33b 微粒子 33c 微粒子 33d 微粒子 33e 微粒子 34 表面 36 第1の被膜 38 第2の被膜 40 微粒子 43 第3の被膜 51 セラミックペーパー(シート部材) 53 高純度アルミナペーパー(シート部材) 54 金属材 55 セラミック繊維材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B22D 17/22 E C D F 18/02 P 27/06 Z (72)発明者 中岡 康幸 尼崎市塚口本町8丁目1番1号 三菱電機 株式会社生産技術研究所内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属の溶湯を射出プランジャにより湯溜
    まりから金型のキャビティ内に充填して高圧下で凝固さ
    せる鋳物の製造装置において、上記射出プランジャ及び
    上記湯溜まりは、上記射出プランジャの移動軸方向への
    上記湯溜まりの投影面が上記キャビティからずれるよう
    に配置されており、かつ上記金型の上記射出プランジャ
    の押圧力が作用する部分と上記キャビティとの間に分割
    面が設けられていることを特徴とする鋳物の製造装置。
  2. 【請求項2】 溶湯に接触する金型表面は、発生する応
    力を緩和するように分割された着脱可能な入れ子により
    構成されていることを特徴とする請求項1記載の鋳物の
    製造装置。
  3. 【請求項3】 入れ子は、Ni基耐熱合金及びCo基耐
    熱合金の少なくともいずれか一方から構成されていると
    ともに、その厚さが1〜30mmになっていることを特
    徴とする請求項2記載の鋳物の製造装置。
  4. 【請求項4】 入れ子は、Cu基合金及びW基合金の少
    なくともいずれか一方から構成されているとともに、そ
    の厚さが1〜30mmになっていることを特徴とする請
    求項2記載の鋳物の製造装置。
  5. 【請求項5】 入れ子の溶湯に接触する面と反対側の面
    を冷却する冷却手段が金型に設けられていることを特徴
    とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の鋳物
    の製造装置。
  6. 【請求項6】 溶湯と接触する金型表面に被膜が形成さ
    れているとともに、上記被膜内部に微粒子が分散されて
    おり、かつ上記被膜の表面側の熱伝導率が金型本体側の
    熱伝導率より低くなっていることを特徴とする請求項1
    ないし請求項5のいずれかに記載の鋳物の製造装置。
  7. 【請求項7】 溶湯と接触する金型表面に被膜が形成さ
    れているとともに、上記被膜内部に大きさの異なる微粒
    子が分散されており、かつ上記被膜の表面側の微粒子の
    大きさが上記金型本体側の微粒子の大きさより大きくな
    っていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のい
    ずれかに記載の鋳物の製造装置。
  8. 【請求項8】 溶湯と接触する金型表面に第1の被膜が
    形成されているとともに、上記第1の被膜内部に微粒子
    が分散されており、かつ上記第1の被膜上に第2の被膜
    が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求
    項5のいずれかに記載の鋳物の製造装置。
  9. 【請求項9】 溶湯と接触する金型表面に複数層の被膜
    が形成されており、かつ上記複数層の被膜のうち、溶湯
    と接触する最表面層を除いた層のうちの少なくとも一層
    が上記最表面層とは異なる色になっていることを特徴と
    する請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の鋳物の
    製造装置。
  10. 【請求項10】 湯溜まりの溶湯の自由表面に浮設され
    た耐熱性のシート部材を射出時に捕捉するための凹部
    が、上記湯溜まりの天井部に設けられていることを特徴
    とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の鋳物
    の製造装置。
  11. 【請求項11】 金属の溶湯を射出プランジャにより湯
    溜まりから金型のキャビティ内に充填して高圧下で凝固
    させる鋳物の製造方法において、上記湯溜まりに注湯さ
    れた上記溶湯の自由表面に耐熱性のシート部材を浮設し
    た後、上記溶湯を射出することを特徴とする鋳物の製造
    方法。
  12. 【請求項12】 溶湯よりも比重の小さい金属材をシー
    ト部材上に設け、上記金属材及び上記シート部材を上記
    溶湯とともにキャビティ内に供給することを特徴とする
    請求項11記載の鋳物の製造方法。
  13. 【請求項13】 繊維材をシート部材上に設け、上記繊
    維材及び上記シート部材を上記溶湯とともにキャビティ
    内に供給することを特徴とする請求項11又は請求項1
    2記載の鋳物の製造方法。
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