JP2007105779A - プレス成形用金型及びその表面処理方法 - Google Patents

プレス成形用金型及びその表面処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】焼付きやカジリ傷などの不具合が発生しにくいプレス成形用金型及びその表面処理方法を提供するものである。
【解決手段】本発明に係るプレス成形用金型は、600〜900℃の温間域でのプレス成形に用いるものであり、鉄系材料で構成される金型本体11の金型成形面12に、温間域よりも高い処理温度でボロンの塩浴処理による硼化処理皮膜13を設け、その硼化処理皮膜13の表面にマイクロブラスト処理を施し、硼化処理皮膜13の表面を平滑化して平滑面16に形成したものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、プレス成形用金型及びその表面処理方法に係り、特に、600〜900℃の温間域でのプレス成形に用いる金型及びその表面処理方法に関するものである。
プレス成形は、冷間域(常温)、熱間域(900〜1000℃)で行われ、特に厚さ10mm以上の被成形品のプレス成形は一般に熱間域で行われる。熱間プレス成形用の金型材としては、熱間金型用合金工具鋼、例えばSKD61(JIS規格)などが挙げられる。
熱間域でのプレス成形は、熱間加熱を行うための加熱コストがかさむと共に、長尺な冷却ラインを必要とする。このため、厚さ10mm以上の被成形品を、熱間域ではなく温間域(600〜900℃)でプレス成形を行う温間プレス成形がある(例えば、特許文献1,2参照)。
特開2003−245738号公報 特開2003−126920号公報
ところで、熱間金型用合金工具鋼であるSKD61材を、そのままの状態で温間域でのプレス成形金型に用いると、以下に示すような問題があった。
1) 温間域でのプレス成形では、プレス成形中に横方向の負荷が加わるため、金型成形面に焼付きが生じ易く、成形中の不具合が多い。温間域でのプレス成形中に焼き付きが生じやすい理由は、温間域においては、熱間域と異なり被成形品が完全に軟化せず、一部に硬い部分が存在しており、この硬い部分と金型成形面の当接部に横方向の負荷が加わることで焼き付きが生じるおそれがある。この焼付きは、成形開始から数枚の成形で生じ、例えば、図13に示すように、成形開始から30枚成形した後の金型成形面の領域130には、焼付きが生じているのがわかる。
2) 金型成形面に生じた焼付きは強固であるため、一旦生じると被成形品にカジリ傷として現れ、被成形品表面の修正が必要となる。
3) 金型成形面に生じた焼付きは、金型材が焼入れ材である為、成形後に焼付きを除去するメンテナンスに、多大な工数を必要とする。
4) 成形後に焼付きを除去するメンテナンスの内容によっては、金型成形面表面を機械加工によって削り直す必要があるが、金型材が焼入れ材であることから、焼戻し作業を行う必要がある。
5) 温間域でのプレス成形、メンテナンス時の焼戻し、再焼入れを繰返す事により、金型に熱変形が起き、変形の修正に要する工数が多くなる。
6) 金型成形面の焼付きを防ぐために、金型成形面の表面にCVD系表面処理、TRD(Theromo Reactive Deposition and Diffusion)処理等の表面処理を行う方法が考えられる。しかしながら、これらの表面処理を行う場合、施工する表面処理層の耐熱性が重要となるが、温間域でのプレス成形に耐えられる耐熱性を備えた表面処理はない。
7) また、これらの表面処理層は、プレス成形中に軟化、剥離が起き易く、効果が長続きしない。
8) 金型成形面と被処理材の間に硬度差を設けて被成形品へのカジリ傷の不具合を避ける為に、金型材として鋳鉄材を用いる場合もあるが、この場合においても、成形開始から数枚の成形で焼付きが生じる。この焼付きは、生成後、脱落し易いことから、この焼き付きの脱落片が金型成形面に深いカジリ傷を生む原因となり、金型成形面の劣化を早めてしまう。例えば、図14に示すように、成形開始から15枚成形した後の金型成形面の領域140には、カジリ傷が生じているのがわかる。
9) 金型成形面に生じた焼付きは、プレス成形中に生成、脱落を繰返すが、金型成形面の一旦焼き付けが生じた部位は滑り性が悪くなり、脱落から生成までの間隔が短くなる。
10) 金型材に鋳鉄材を使用する場合、生産金型では生産終了後、毎回、金型成形面を整えるメンテナンスが必要になると共に、1回当りのメンテナンスに要する時間も長くなる。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、焼付きやカジリ傷などの不具合が発生しにくいプレス成形用金型及びその表面処理方法を提供することにある。
上記目的を達成すべく請求項1の発明は、600〜900℃の温間域でのプレス成形に用いるプレス成形用金型において、鉄系材料で構成される金型本体の金型成形面に、上記温間域よりも高い処理温度でボロンの塩浴処理による硼化処理皮膜を設け、その硼化処理皮膜の表面にマイクロブラスト処理を施し、硼化処理皮膜の表面を平滑化して平滑面に形成したことを特徴とするプレス成形用金型である。
請求項2の発明は、上記硼化処理皮膜が、表層に鉄−ボロン系の化合物層と、その下層にボロンが浸透、拡散した拡散層を備え、その拡散層が金型本体に櫛歯状に噛合した請求項1記載のプレス成形用金型である。
請求項3の発明は、上記平滑面は、その表面に深さ1〜2μmの無数のディンプルを備えた請求項1又は2記載のプレス成形用金型である。
請求項4の発明は、上記金型本体が、合金工具鋼又は鋳鉄材で構成される請求項1から3いずれかに記載のプレス成形用金型である。
請求項5の発明は、600〜900℃の温間域でのプレス成形に用いるプレス成形用金型の表面処理方法において、鉄系材料で構成される金型の本体部を、上記温間域よりも高い温度のボロン含有塩浴中に浸漬し、本体部の表層に硼化処理皮膜を形成し、その硼化処理皮膜の表面に、マイクロオーダーの微小な処理剤を用いてマイクロブラスト処理を施し、硼化処理皮膜の表面を平滑面に形成することを特徴とするプレス成形用金型の表面処理方法である。
請求項6の発明は、粒径が40〜80μmの上記処理剤を、硼化処理皮膜の表面に0.2〜0.4Paの空気圧でぶつけ、クリーニング工程とピーニング工程を含む上記マイクロブラスト処理を行う請求項5記載のプレス成形用金型の表面処理方法である。
請求項7の発明は、上記各処理剤が、シリコン製、ナイロン製、プラスチック製又は木製の粒体で構成される請求項6記載のプレス成形用金型の表面処理方法である。
請求項8の発明は、粒径が40〜200μmの上記処理剤を、上記硼化処理皮膜の表面に0.5Paの空気圧、100m/secの噴射速度でぶつけ、上記マイクロブラスト処理を行う請求項5記載のプレス成形用金型の表面処理方法である。
本発明によれば、金型を用いて被成形品にプレス成形を行う際に、金型成形面に焼付きや、金型成形面及び/又は被成形品にカジリ傷などの不具合が発生しにくいという優れた効果を発揮する。
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本実施の形態に係るプレス成形用金型は、600〜900℃の温間域でのプレス成形に用いられる金型である。具体的には、図1に示すように、鉄系材料で構成される金型本体11の金型成形面12に、温間域よりも高い処理温度でボロンの塩浴処理による硼化処理皮膜13を設け、その硼化処理皮膜13の表面にマイクロブラスト処理を施し、硼化処理皮膜13の表面を平滑化して平滑面16に形成したものである。
硼化処理皮膜13は、表層に鉄−ボロン系の化合物層14と、その下層にボロンが浸透、拡散した拡散層15を備える。拡散層15は、金型本体11に対して櫛歯状に噛合される。金型本体11の硼化処理皮膜13側、言い換えると硼化処理皮膜13の下層に、ボロンの浸透、拡散による影響範囲であるボロン影響層17が所定の深さで形成される。また、平滑面16は、マイクロブラスト処理によって、その表面に深さ1〜2μmの無数のディンプルを備える。
金型本体11の構成材としては、合金工具鋼(例えば、SKD61、SKDll、DC53(大同特殊鋼(株)製)など)や鋳鉄材(FC材、FCD材、GM241など)などが使用可能である。この鉄系材料で構成される金型本体11の金型成形面12に設けられる硼化処理皮膜13の皮膜硬さはHv1300〜1700である。例えば、化合物層14の硬度はHv1350〜1500、厚さは50〜60μmとされ、拡散層15の硬度はHv500〜700、厚さは0.5〜1.0mmとされる。
次に、本実施の形態の作用を説明する。
鋳鉄、鋳鋼、構造用鋼、炭素鋼、工具鋼等の鉄系金属で構成される金型本体11を準備する。ここで、温間域のプレス成形に用いる金型の構成材として鋳鉄材が使用できるのは、次の理由による。温間域のプレス成形において、工具鋼(SKD61)を金型材としてプレス成形部に使用した場合、成形中に金型温度が上昇して、金型分割部に段差が生じるおそれがある。温間域でプレス成形を行う場合、この段差が焼付き、カジリ傷等の不具合の原因となるため、金型分割部のない一体物の金型を得るために、鋳鉄材を使用することもある。
先ず、金型本体11に硼化処理が施される。硼化処理の特徴は、被処理材(金型本体11)が鉄系金属で構成される場合、金型本体11の表面に硼化処理皮膜13が生成されることにある。この硼化処理は、ボロン処理とも言われ、温間域よりも高い処理温度、例えば950℃位の硼素を含有する塩浴中に金型本体11を浸漬して硼素成分を拡散浸透させ、金型本体11の少なくとも金型成形面12に硼化処理皮膜(硼化物層)、例えばトーカロ(株)のTBS−1500皮膜を生成させるものである。
硼化処理は、窒化処理などの他の表面処理と比べると反応速度が遅いが、その分、金型本体11の表面深くまで硼素成分がじっくりと染み込む(浸透する)。硼素成分は、金型本体11の表面深くまで染み込み・浸透し、拡散しながら、金型本体11の鉄成分と次々に反応して、ボロン化された鉄(硼化鉄)が形成される。金型本体11内部へ硼素元素が拡散した部分(拡散層15)は、無数の楔を打込んだ様な櫛歯状組織(又は針状組織、或いは楔状組織)になっている。硼化処理皮膜13は、硼化鉄、すなわちFeB、Fe2B、及びFe3Bで構成され、主にFeBとFe2Bの2種で構成される。硼化処理皮膜13の外層側にFeBの層が、内層側にFe2B(及び/又はFe3B)の層が形成される。化合物層14はFeBの層とFe2B(及び/又はFe3B)の層で構成され、拡散層15は主にFe2B(及び/又はFe3B)の層で構成される。
金型本体11にCr成分が含まれている場合、例えば金型本体11がSKD61などで構成される場合、硼化処理皮膜13の金型本体11側(櫛歯の先端側)に、Cr成分と硼素成分が結合したCrB2が点在する組織18が形成される。この組織18によって硼化処理皮膜13の底部が強固となり、硼化処理皮膜13の耐面圧性が向上する。同様に、金型本体11の硼化処理皮膜13側にもCrB2組織18が形成される。つまり、金型本体11と硼化処理皮膜13の境界近傍にCrB2組織18が形成される。
この現象は、金型本体11にCr成分以外の非鉄成分が含まれている場合でも同様である。この場合、金型本体11と硼化処理皮膜13の境界近傍に、非鉄成分と硼素成分が結合した化合物が点在する組織が形成される。但し、金型本体11がCr成分を含んでいない場合、Cr成分と硼素成分の結合が得られないため、図4に示すように、金型本体11と硼化処理皮膜13の境界近傍にCrB2組織18は得られない。よって、この場合は顕著な強度的性質変化はなく、硼化処理皮膜13の耐面圧性の向上効果は期待できない。
塩浴処理によって形成された硼化処理皮膜13は、耐酸化温度が850℃と耐熱性に優れており、温間域でのプレス成形時においても硬度を保持できる。しかしながら、硼化処理皮膜13の表面は、図2に示すように塩浴処理の特徴で粗くなっており、最表層にポーラス層21を有している。また、硼化処理皮膜13の表面は、図5に示すように金属光沢が消えて茶褐色を呈している。このため、硼化処理皮膜13は、金型本体11と比べて表面粗さが悪化しており、その結果、プレス成形時の滑り性が低下する。
そこで、硼化処理被膜13にマイクロブラスト処理を施してポーラス層21を取り除き、図3に示すように、硼化処理被膜13の表面を滑らかな平滑面16に形成する。これによって、図6に示すように平滑面16は金属光沢を有する白色となる。ここで、ポーラス層21の取り除きに機械的な切削処理を用いない理由は、硼化処理被膜13が非常に硬すぎるため切削が困難であると共に、削り過ぎのおそれがあるためである。
マイクロブラスト処理は、最大寸法が0.1mm以下の処理剤を使用するブラスト処理の総称であり、サンドブラスト系とショットピーニング系の2種類に大別する事が出来る。一般的には前者はマイクロサンドブラスト処理、後者はマイクロブラスト処理と呼ばれる。
サンドブラスト系マイクロブラスト処理は、研磨、磨きを目的とした処理であり、金型部品に使用した場合、被処理品の寸法を著しく悪化する事が多々ある。工業的には、バリ取り、スケール除去、掘り込み彫刻を中心に行われている。
一方、ショットピーニング系マイクロブラスト処理は、潰しを目的とした処理であり、潰し処理を施してある程度の潰しがなされると、更に時間を掛けて処理を続行しても潰し量に変化はなく、被処理品の寸法が悪化する事はない。工業的には、被処理面の改善に使用されている。よって、本実施の形態においては、ショットピーニング系マイクロブラスト処理を採用し、以下に示す2種類のマイクロブラスト処理を用いている。
a) 粒径が40〜80μmの処理剤を空気圧0.2〜0.4MPaの力で被処理品表面にぶつけ、被処理品の表面に深さ1〜2μm程度のディンプルを形成する(マイクロブラスト処理A)。処理効果を高めるため、粒径、材質などが異なる少なくとも2種類の処理剤を用いて処理を行う。一方の処理剤が、被処理品表面の微細カエリ、加工変質層、偏析物の除去を行うクリーニング工程で使用される。他方の処理剤が、被処理品表面の微細凹凸をスパッタリングするピーニング工程で使用される。処理剤は、シリコン粒、ナイロン粒、プラスチック粒、植物(木)粒等がある。
b) WPC処理ともいう。粒径が40〜200μmの処理剤を空気圧0.5MPaの力で、噴射速度100m/secの速さで被処理品にぶつけ、被処理品表面に高さ2μmのディンプルを形成する(マイクロブラスト処理B)。処理剤が被処理品表面にぶつかる際、その衝突力によって、被処理品表面の微細カエリ、加工変質層、偏析物が除去され、微細な凹凸が平滑化される。高速で処理剤を被処理品表面にぶつけるため、衝突部位の表面温度は衝突時のエネルギによってA3変態点を超え、被処理品表層の極めて浅い範囲を熱処理することができる。
これらのマイクロブラスト処理によって、図7、図8に示すように、処理前に存在していたポーラス層21が取り除かれて平滑面16となり、被処理品(硼化処理被膜13)の表面粗さを約1ランク強、向上させることができる。マイクロブラスト処理に用いる処理剤の粒径、材質、及び衝突速度などを調節することで、平滑面16の表面に形成されるディンプルの深さの調節が可能となる。このディンプルの深さを調節することで、平滑面16の平滑度を調節することができる。
ここで、熱間プレス加工に用いる金型の金型成形面の表面粗さは通常3.2Sであるが、金型成形面の表面粗さが向上すれば凝着の生じる時期は遅くなり、表面粗さが悪化すると凝着の生じる時期は早くなる傾向にある。しかし、金型表面に凝着が生じるまでのプレス成形回数の多少は、表面粗さが均一である事、磨き目の方向がプレス加工時の被加工材の動き(滑り込み方向)と同一である事の方が重要である。金型表面に磨き残しが部分的にあると、その部位の凝着は早い時期に生じる。また、磨き目が滑り込み方向と一致していないと、その部位の凝着は早い時期に生じる。
ところで、マイクロブラスト処理を硼化処理皮膜13の磨きに使用した理由は、以下に示すことにある。
1.被処理品表面のクリーニング効果(微細カエリ、加工変質層、偏析物の除去)が得られる。
2.被処理品の寸法を悪化させない(寸法変化はせいぜい1〜2μm程度)。
3.誰が行っても、短時間で磨き作業を終了させることが可能である。
4.磨き残しが無く、被処理品表面の磨きが可能である。
5.磨き目が無い。
よって、マイクロブラスト処理された硼化処理皮膜13、すなわち金型表面は、従来の金型表面と比べて、凝着が生じるまでのプレス成形回数が格段に長くなる。また、マイクロブラスト処理A,Bを比較すると、どちらも同等のマイクロブラスト処理効果が得られるが、マイクロブラスト処理Aの方がランニングコスト的に安価である。
以上より、本実施の形態に係るプレス成形用金型及びその表面処理方法によれば、以下に示すようなことが言える。
(1) 金型本体11に硼化処理を行う事によって、金型本体11の表面には上層側の化合物層14(例えば、硬度:Hv1350〜1500、厚さ:50〜60μm)と下層側の拡散層15(例えば、硬度:Hv500〜700、厚さ:0.5〜1.0mm)で構成される硼化処理被膜13が形成される。金型成形面12に硼化処理被膜13を設けることによって、プレス成形時の耐焼付き性、耐面圧性を高めることができる。
(2) 硼化処理を行う事によって得られる化合物層14、拡散層15は、プレス成形の様な成形中に横方向の負荷が加わる成形の場合でも、金型成形面12に焼付きを生じさせ難く、図9に示すように、プレス成形開始から100枚以上の成形を行った後でも金型成形面12に焼付きは生じない。
(3) 金型本体11に鋳鉄材を使用する場合は、温間プレス成形、再表面処理による金型本体11の熱変形が少なく、変形の修正に要する工数を低減することができる。
(4) 金型成形面12の焼付き、被成形品表面のカジリ傷が少なくなり、メンテナンス回数を少なくすることができる。
(5) 金型成形面12の焼付き、被成形品表面のカジリ傷も少なく、メンテナンス1回当りに要する工数を低減することができる。
(6) 金型成形面12は、必要に応じて再硼化処理が可能である。
(7) 金型本体11に鋳鉄材を使用する場合は、素材の歩留りが向上し、金型費を低減することができる。
(8) 金型本体11に鋳鉄材を使用する場合は、素材の熱処理に関係する期間を短縮することができる。
(9) 金型本体11に鋳鉄材を使用する場合は、中子を用いて裏面(金型本体11の内部)の中抜きが可能であり、これによって、金型本体11の軽量化を図ることができる。
(10) 金型本体11に鋳鉄材を使用する場合は、設計変更等で機械加工、穴加工、ネジ穴加工等が必要な際は、硼化処理被膜13を除去することなく、各種加工、例えば図10に示すようにネジ穴加工(雌ネジ穴100)を行うことが可能である。
(11) 金型本体11に鋳鉄材を使用する場合は、設計変更、メンテナンス等で、溶接による欠肉部の肉盛りが必要な際は、硼化処理被膜13を除去することなく、図11に示すように肉盛り溶接加工(肉盛り溶接領域110)を行うことが可能である。
(12) 図12に示すように、金型成形面12(母材)に硼化処理を行うことで、表面粗さが悪化するが、その後、マイクロブラスト処理を行う事で、表面粗さが改善され、プレス成形時における金型成形面12と被成形品の滑り性が向上し、被成形品の表面状態が向上する。
(13) 金型の硼化処理を行った成形面(硼化処理後の金型成形面12)にマイクロブラスト処理を行う事により、硼化処理のみの金型成形面12と比べ、成形初期にダイ滑り込みR部によって生じる、ショックラインを低減することができる。
(14) 金型の硼化処理を行った成形面は、必要に応じて、再マイクロブラスト処理を施すことが可能である。
(15) 従来、プレス成形用金型の構成材にSKD材等の鋼材を使用した場合、鋼材の熱処理時の歪みを避ける為、適度の大きさの部品に分割していたが、本実施の形態に係るプレス成形用金型を使用する事により、金型の分割数の低減または金型を一体物とすることが可能である。
(16) 本実施の形態に係るプレス成形用金型は、温間域だけではなく、冷間域においても使用可能である。
(17) 本実施の形態に係るプレス成形用金型は、金型材だけではなく、軸受け部品、スライド部品の様な摺動運動、回転運動を行う部材にも使用可能である。
(18) 本実施の形態に係るプレス成形用金型は、摺動運動、回転運動によって、発熱を伴う部材にも使用可能である。
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
本発明のプレス成形用金型、すなわち硼化処理とマイクロブラスト処理を施した金型と、他の表面処理を施した金型の比較を行った。本発明の金型及び他の表面処理を施した金型は以下のものである。
(窒化処理)
PS処理(大同アミスタ(株))だけを施したもの(比較例1)と、PS処理+WPC処理(マイクロブラスト処理B、帝国工業資材(株))を施したもの(比較例2)を2種類作製した。
(硼化処理)
TBS−1500処理(トーカロ(株))だけを施したもの(比較例3)と、TBS−1500処理+マイクロブラスト処理A(プラストロン(株))を施したもの(実施例1)の2種類を作製した。
(TRD(Thermo Reactive Deposition and Diffusion)処理)
TD−VC処理(トーカロ(株))だけを施したもの(比較例4)を作製した。
(CVD処理)
TiC処理(トーヨーエイテック(株))だけを施したもの(比較例5)と、TiC処理+TiN処理(共にトーヨーエイテック(株))を施したもの(比較例6)と、CrC処理(トーヨーエイテック(株))だけを施したもの(比較例7)の3種類を作製した。
(PVD処理)
TiN処理(トーヨーエイテック(株))だけを施したもの(比較例8)を作製した。
実施例1及び比較例1〜8の各金型を用いて、温間域でプレス成形実験(モデル型、量産型)を行った。プレス成形実験の評価は、{各例の金型において“ダイに凝着が生じ、被成形品に傷が生じた”枚数}/{表面処理なしの基準金型において“ダイに凝着が生じ、被成形品に傷が生じた”枚数}の比(倍)にて行い、数値が大きいほど金型の耐久性(寿命)が良好であることを示している。ここで言う表面処理なしの基準金型とは、ダイがGM241(合金鋳物)材、パンチがSKD61材で構成され、毎ロットの段取り時に金型表面を磨いているものである。
耐久性の評価を行うプレス成形実験は、比較のため全て同じ方法、条件で行った。モデル金型では、基準枚数を10枚(=1倍)、成形条件をmax60枚(=6倍)としてプレス成形を行った。また、量産型では、基準枚数を100枚(=1倍)とし、量産設備、金型を使用してプレス成形を行った。さらに、モデル金型での成形実験結果が思わしくなかった金型については、量産型での成形実験から除外した。尚、比較例4,5の金型については、量産型のみの成形実験とした。評価結果を表1に示す。
Figure 2007105779
表1に示すように、硼化処理皮膜は、他の皮膜と比べて酸化温度が高いことから、温間域でのプレス成形時における高温硬さが優れており、比較例3及び実施例1の各金型は耐久性が良好であった。特に、硼化処理と共にマイクロブラスト処理を施した実施例1の金型は、金型成形面が平滑で、表面粗さが低いことから、比較例3の金型よりも更に耐久性が良好となった。
また、被成形品に生じた傷を、現在使用している金型(基準金型)によって生じる傷と同レベルまでOKとした場合、現在のダイでは400枚であるのに対して実施例1のダイでは3500枚となり、寿命が8倍強となった。また、現在のパンチでは400枚であるのに対して実施例1のパンチでは6900枚となり、寿命が17倍強となった。
本発明の好適一実施の形態に係るプレス成形用金型の断面観察図である。プレス成形用金型は、SKD11で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けたものである。 SKD11で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた状態を示す倍率200倍の断面観察図である。 SKD11で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた状態を示す倍率400倍の断面観察図である。 FCD490で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた状態を示す倍率200倍の断面観察図である。 SKD11で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた状態を示す倍率200倍の表面観察図である。 SKD11で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた後、マイクロブラスト処理を施した状態を示す倍率200倍の表面観察図である。 図5の断面観察図である。 図6の断面観察図である。 本実施の形態に係るプレス成形用金型を用いて、100枚の被成形品にプレス成形処理した後の表面観察図である。プレス成形用金型は、SKD11で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた後、マイクロブラスト処理を施したものである。 本実施の形態に係るプレス成形用金型の表面にネジ穴加工を施した表面観察図である。プレス成形用金型は、鋳鉄材で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた後、マイクロブラスト処理を施したものである。 本実施の形態に係るプレス成形用金型の表面に肉盛り溶接を施した断面観察図である。プレス成形用金型は、鋳鉄材で構成される金型本体の表面に硼化処理被膜を設けた後、マイクロブラスト処理を施したものである。 金型本体及び硼化処理被膜の表面粗さの変化を示す図である。 従来のプレス成形用金型を用いて、30枚の被成形品にプレス成形処理した後の表面観察図である。プレス成形用金型は、SKD61で構成される金型本体をそのまま用いたものである。 従来のプレス成形用金型を用いて、15枚の被成形品にプレス成形処理した後の表面観察図である。プレス成形用金型は、鋳鉄材で構成される金型本体をそのまま用いたものである。
符号の説明
11 金型本体
12 金型成形面
13 硼化処理皮膜
16 平滑面

Claims (8)

  1. 600〜900℃の温間域でのプレス成形に用いるプレス成形用金型において、
    鉄系材料で構成される金型本体の金型成形面に、上記温間域よりも高い処理温度でボロンの塩浴処理による硼化処理皮膜を設け、その硼化処理皮膜の表面にマイクロブラスト処理を施し、硼化処理皮膜の表面を平滑化して平滑面に形成したことを特徴とするプレス成形用金型。
  2. 上記硼化処理皮膜が、表層に鉄−ボロン系の化合物層と、その下層にボロンが浸透、拡散した拡散層を備え、その拡散層が金型本体に櫛歯状に噛合した請求項1記載のプレス成形用金型。
  3. 上記平滑面は、その表面に深さ1〜2μmの無数のディンプルを備えた請求項1又は2記載のプレス成形用金型。
  4. 上記金型本体が、合金工具鋼又は鋳鉄材で構成される請求項1から3いずれかに記載のプレス成形用金型。
  5. 600〜900℃の温間域でのプレス成形に用いるプレス成形用金型の表面処理方法において、
    鉄系材料で構成される金型の本体部を、上記温間域よりも高い温度のボロン含有塩浴中に浸漬し、本体部の表層に硼化処理皮膜を形成し、
    その硼化処理皮膜の表面に、マイクロオーダーの微小な処理剤を用いてマイクロブラスト処理を施し、硼化処理皮膜の表面を平滑面に形成することを特徴とするプレス成形用金型の表面処理方法。
  6. 粒径が40〜80μmの上記処理剤を、硼化処理皮膜の表面に0.2〜0.4Paの空気圧でぶつけ、クリーニング工程とピーニング工程を含む上記マイクロブラスト処理を行う請求項5記載のプレス成形用金型の表面処理方法。
  7. 上記各処理剤が、シリコン製、ナイロン製、プラスチック製又は木製の粒体で構成される請求項6記載のプレス成形用金型の表面処理方法。
  8. 粒径が40〜200μmの上記処理剤を、上記硼化処理皮膜の表面に0.5Paの空気圧、100m/secの噴射速度でぶつけ、上記マイクロブラスト処理を行う請求項5記載のプレス成形用金型の表面処理方法。
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