JP6959183B2 - お好み焼き用ミックス - Google Patents

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Description

本発明は、お好み焼きの製造に用いられるお好み焼き用ミックス、並びに該ミックスを用いたお好み焼き用生地及びお好み焼きの製造方法に関する。
お好み焼きは、小麦粉を含む液状の生地に、キャベツ等の野菜類、豚肉等の畜肉類、イカ等の魚介類、紅ショウガ等の薬味など、種々の具材をお好みで加え、該生地を加熱した鉄板上などで調理して得られる食品であり、スナック菓子の一種である。お好み焼きは、具材の種類や焼き方などの選択の幅が広く、各人の好みに応じて様々なスタイルで調理でき、遊び感覚で調理して喫食できることもあって非常に人気がある。従来、具材だけを選択して家庭などで簡便にお好み焼きの調理ができるように、小麦粉や調味料等を含む粉体のお好み焼き用ミックスが市販されている。
お好み焼きの旨味は、生地表面の焼きしまったサクミがある食感と、生地内部のふわりとした食感と、各種具材の風味や食感と、ソースの風味とが一体となって醸し出される。しかしながら、お好み焼きの旨味を味わうことができるのは調理後速やかに食する場合であり、調理後に常温で保存するなどして調理からある程度時間が経過すると、生地の保形性が低下して型崩れが起こり、また、生地内部のふわりとした食感が失われてパサついたり硬くなったりしてしまい、電子レンジで再加熱したとしても、焼き立てのような風味は得られなかった。このようなお好み焼きの経時的な品質低下の問題は、お好み焼きの保存中に生地や具材中の水分が移動することで起こるものと推定される。また近年では、調理済みのお好み焼きの冷凍品が販売されており、これを購入して電子レンジで再加熱するだけで喫食可能な状態のお好み焼きが得られるという手軽さもあって広く普及しているところ、前記問題はこのようなお好み焼きの冷凍保存においても起こる。
前記問題の解決を図った技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、お好み焼きの製造に際して従来添加されていたキサンタンガムなどの増粘安定剤の平均粒子径を20μm以下とすることで、表面がカリッとして形崩れがなく、ふっくらとして口当たりが良く、中心はジューシィー感、ソフト感があるといった食感が、調理直後のみならず冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジで再加熱しても維持される旨記載されている。また特許文献2には、平均粒子径20μm以下に粉砕された穀粉類又は澱粉類等でも、同様の効果が奏される旨記載されている。
また、お好み焼きと並んで人気のあるスナック菓子であるたこ焼きについての改良技術も提案されている。特許文献3には、たこ焼きに特有の中身がとろっとしたクリーミーな食感とたこ焼きの焼成作業効率との両立を図る目的で、たこ焼き用ミックスにセルロースエーテルを配合することが記載されている。特許文献4には、たこ焼きの経時的な品質低下の問題を解決する目的で、たこ焼き用ミックスに、穀粉類とともに、昇温ゲル化性の熱可逆性ゲル化剤を配合することが記載されている。
特開2002−355012号公報 特開2003−265148号公報 特開2013−252104号公報 国際公開第2015/087992号
前記の各特許文献は、増粘剤のような保湿性の成分をお好み焼き又はたこ焼きに配合する点で共通する。保湿性の成分は水分を保持することができるため、これをお好み焼きに配合することで、前記のお好み焼きの経時的な品質低下の原因の一つと推定される、生地や具材中の水分の移動が抑制され、斯かる品質低下が防止されることが期待できる。しかしながら、これまで提案されてきた増粘剤のような保湿性の成分は、お好み焼きの食感に与える影響が少なくなく、これを加えることで本来有する食感が低下するという問題がある。
本発明は、調理直後は勿論のこと、調理後時間が経過した場合や、冷凍保存後などに再加熱された場合でも、生地が崩れにくく取扱性に優れ、しかも表面のサクミと内部のふわりとした食感を有するお好み焼きを提供することを課題とする。
本発明者は、お好み焼きの経時的な品質低下を防止するべく種々検討した結果、前記の各特許文献のように、お好み焼きの生地中に単に増粘剤を加えただけでは、調理後の生地の保形性の向上効果に乏しく、喫食する際などに生地が崩れて取り扱いしにくくなるという不都合が解消されないことを知見した。そこで更に検討した結果、特定の小麦粉と特定のセルロース誘導体とを併用することで、前記課題を解決し得ることを知見した。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、強力粉及びデュラム粉からなる群から選択される1種以上の小麦粉を50〜99.7質量%含有し、且つメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される1種以上のセルロース誘導体を0.3〜5.0質量%含有するお好み焼き用ミックスである。
また本発明は、前記の本発明のお好み焼き用ミックスと液体とを含有するお好み焼き用生地である。また本発明は、前記の本発明のお好み焼き用生地を加熱する工程を有する、お好み焼きの製造方法である。
本発明によれば、調理直後は勿論のこと、調理後時間が経過した場合や、冷凍保存後などに再加熱された場合でも、生地が崩れにくく取扱性に優れ、しかも表面のサクミと内部のふわりとした食感を有するお好み焼きが提供される。一般に、お好み焼きは具材が多くなると保形性が低下して型崩れを起こしやすいが、本発明によって提供されるお好み焼きは、具材が多めであっても保形性に優れ、喫食時だけでなく、保存する際や電子レンジなどで再加熱する際の作業時でも型崩れを起こし難く、しかも食感にも優れる。
本発明のお好み焼き用ミックスは、強力粉及びデュラム粉からなる群から選択される1種以上の小麦粉(以下、「特定小麦粉」ともいう。)を含有する。小麦粉は一般的に、普通小麦から得られる薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、超強力粉の普通小麦粉と、デュラム小麦から得られるデュラム粉、デュラムセモリナとに分類される。従来、お好み焼き用ミックスにおける小麦粉としては薄力粉や中力粉が一般的であるが、本発明のお好み焼き用ミックスで必須の小麦粉は強力粉及び/又はデュラム粉である。強力粉やデュラム粉を用いずに薄力粉や中力粉を用いた場合には、本発明の所定の効果は得られない。普通小麦粉は、一般的に蛋白含有量の違いに基づいて前記のように分類されるが、薄力粉と強力粉とでは、蛋白含有量だけでなく、原料となる小麦の種類がそもそも異なっており、それゆえに含まれる蛋白質そのものの性質が異なっている。強力粉の原料となる小麦としては、例えば、アメリカ産のハードレッドウインター、オーストラリア産のプライムハード等を挙げることができる。またデュラム小麦は、普通小麦とは遺伝的に異なる品種のコムギである。
本発明のお好み焼き用ミックスにおける特定小麦粉(強力粉、デュラム粉)の含有量は、該ミックスの全質量に対して、50〜99.7質量%であり、好ましくは55〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%である。特定小麦粉の含有量が50質量%未満ではこれを用いる意義に乏しく、特定小麦粉の含有量が99.7質量%を超えると、後述する他の必須成分(セルロース誘導体)の含有量が相対的に低下する結果、本発明の所定の効果が奏されないおそれがある。
本発明のお好み焼き用ミックスは、前記特定小麦粉に加えて更に、メチルセルロース(MC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群から選択される1種以上のセルロース誘導体(以下、「特定セルロース誘導体」ともいう。)を含有する。これらの特定セルロース誘導体は、加熱によりゲル化する性質を有している。本発明のお好み焼き用ミックスを用いて常法に従って液状の生地を調製し加熱調理すると、その加熱中に特定セルロース誘導体がゲル化し、特定小麦粉により生地中にこれを骨格とする三次元構造が形成されるのと相俟って、保形性に優れ、型崩れを起こし難く、食感にも優れるお好み焼きが得られるようになる。
本発明のお好み焼き用ミックスにおける特定セルロース誘導体(MC、HPMC)の含有量は、該ミックスの全質量に対して、0.3〜5.0質量%であり、好ましくは0.5〜3.0質量%、より好ましくは0.7〜2.0質量%である。特定セルロース誘導体の含有量が0.3質量%未満ではこれを用いる意義に乏しく、特定セルロース誘導体の含有量が5.0質量%を超えると、特定小麦粉の含有量が相対的に低下する結果、本発明の所定の効果が奏されないおそれがある。
本発明のお好み焼き用ミックスは、前記の特定小麦粉及び特定セルロース誘導体に加えて更に、この種のお好み焼き用ミックスに従来用いられている他の材料を含有することができる。他の材料としては、例えば、澱粉類、糖類、食塩、旨味調味料、植物性蛋白質(大豆粉、小麦蛋白等)、卵粉、ヤマイモ粉、雑節類(カツオ節、サバ節、ソーダ節、炒り子、マグロ節等)、粉末昆布、増粘剤(MC、HPMCを除く)、香辛料、粉末エキス・粉末スープ類、乾燥野菜類等の乾燥具材、粉末油脂が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の所定の効果が損なわれないようにする観点から、本発明のお好み焼き用ミックスにおける他の材料の含有量(複数種の他の材料を併用する場合はそれらの総含有量)は、該ミックスの全質量に対して、50質量%未満とすることが好ましい。また、他の材料としては、特定小麦粉(強力粉、デュラム粉)以外の他の小麦粉、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉を用いることもできるが、基本的には不要であり、他の小麦粉を用いるとしてもその含有量は、本発明のお好み焼き用ミックスの全質量に対して、25質量%以下とすることが好ましい。
本発明のお好み焼き用ミックスは、前記の特定小麦粉及び特定セルロース誘導体、更に必要に応じて他の材料を適宜混合することによって製造することができる。本発明のお好み焼き用ミックスは、典型的には常温常圧で粉体であり、乾燥状態で長期保存が可能である。本発明のお好み焼き用ミックスの形態は、粉末、顆粒状など特に限定されない。
本発明のお好み焼き用ミックスはお好み焼きの製造に使用され、その際には、常法に従って該ミックスと液体とを混合して生地を調製し、該生地を焼成するなどして加熱することでお好み焼きが得られる。本発明には、前述した本発明のお好み焼き用ミックスと液体とを含有するお好み焼き用生地が包含される。ここでいう「生地」とは、常温常圧で流動性を有する液状ないし半液状物を意味する。
本発明のお好み焼き用生地が含有する液体は、食用に用いられるものであって常温常圧で流動性を有し、且つ併用される本発明のお好み焼き用ミックスと混合可能なものであればよく、例えば、水、卵液(卵黄液、卵白液、全卵液など)、調味液(出汁、調味料、ソースなど)が挙げられ、これらの1種を単独で又2種以上を組み合わせて用いることができる。
お好み焼き用生地におけるミックスの含有量あるいは液体の含有量は、該生地が加熱調理に適した固さとなるようにする観点と、本発明の所定の効果が得られるようにする観点とを考慮して調整されることが望ましい。以上の観点から、本発明のお好み焼き用生地における本発明のお好み焼き用ミックスの含有量は、該生地の全質量に対して、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜55質量%である。また、本発明のお好み焼き用生地における液体の含有量は、該生地の全質量に対して、好ましくは80〜40質量%、より好ましくは70〜45質量%である。
本発明者の知見によれば、本発明のお好み焼き用生地に特定の乳化液を含有させると、お好み焼きの中身のふわりとした食感を更に向上させることができる。この特定の乳化液は、メチルセルロース(MC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群から選択される1種以上のセルロース誘導体と卵液とを含有する点で特徴付けられる。特定の乳化液に含有されるセルロース誘導体は、前述した本発明のお好み焼き用ミックスに含有される特定セルロース誘導体と同じである。すなわち、本発明のお好み焼き用生地に前記の特定の乳化液を含有させた場合には、該生地に元々含有されていた本発明のお好み焼き用ミックス由来の特定セルロース誘導体に加え、該乳化液由来の特定セルロース誘導体が更に配合されることになる。本発明のお好み焼き用ミックスにおける特定セルロース誘導体と、前記の特定の乳化液におけるセルロース誘導体とは、種類が同じでもよく異なっていてもよい。
前記の特定の乳化液は、典型的には、卵液を主体とする。卵液としては、例えば、卵黄液、卵白液、全卵液が挙げられ、これらの1種を単独で又2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記の特定の乳化液は、油脂を含有してもよい。油脂としては、食品一般に使用可能なもので且つ融点が23℃以下の液体油脂が好ましく、該液体油脂は植物性でも動物性でもよい。
前記の特定の乳化液における各成分(卵液、油脂、特定セルロース誘導体)の含有量の好ましい一例として、該乳化液の全質量に対して、卵液が50〜80質量%、油脂が0〜40質量、特定セルロース誘導体が0.1〜1質量%が挙げられる。前記の特定の乳化液は、前記の各成分を混合して撹拌することで調製することができる。
前記の特定の乳化液を使用するタイミングは特に限定されず、例えば、本発明のお好み焼き用ミックスと液体とを混合するのと同時に添加してもよく、あるいは、予め該ミックスと液体とを混合しておき、その混合物に添加してもよく、あるいは、予め液体と前記の特定の乳化液とを混合しておき、その混合物に添加してもよい。
本発明のお好み焼き用生地における前記の特定の乳化液の含有量は、該生地の全質量に対して、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%である。
前述した本発明のお好み焼き用生地を常法に従って加熱調理することで、お好み焼きを製造することができる。本発明には、本発明のお好み焼き用生地を加熱する工程を有する、お好み焼きの製造方法が包含される。本発明のお好み焼きの製造方法は、典型的には、本発明のお好み焼き用ミックスと液体とを混合し、更に必要に応じ前記の特定の乳化液を混合して生地を調製し、こうして予め調製された生地に具材を加えて混合後、該生地を熱した鉄板上に広げて一方の面側を焼成し、更に該生地を反転させて他方の面側を焼成することでなされる。具材を加えるタイミングは、前記のように生地の調製後でなくてもよく、生地の調製時において特定小麦粉と特定セルロース誘導体とを混合する際に同時に具材を混合し、具材入りの生地としてもよい。具材の種類は特に限定されず、例えば、エビ、カニ、イカ、貝類などの魚介類;鶏、豚、牛、羊、ヤギ等の畜肉類;イモ類、カボチャ、ナス、ピーマン、レンコン、キャベツなどの野菜類;シイタケなどのキノコ類が挙げられ、これらの1種を単独で又2種以上を組み合わせて用いることができる。
お好み焼き用生地に具材を配合する場合、具材の配合量は、該生地100質量部に対して、好ましくは60〜200質量部である。前述したとおり、本発明のお好み焼き用生地は保形性が高いため、該生地に対して配合される具材の比率が比較的高い場合であっても、これを加熱調理して得られたお好み焼きは、生地のつながりが非常によく、喫食時などに型崩れを起こし難い。
本発明によって提供されたお好み焼きは、調理後直ぐに食してもよく、適宜冷ました後に食してもよく、冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等の加熱調理器により解凍又は再加熱して食してもよい。また、冷凍状態のお好み焼きを解凍又は再加熱して食する場合、解凍又は再加熱の前に、お好み焼きを冷蔵してもよい。具体的には例えば、冷凍保存中のお好み焼きを、それを食する時よりも以前(例えば食する日の前日)から解凍を兼ねて冷蔵保存にしておき、食する時に電子レンジなどの加熱調理器により再加熱して食してもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜18、比較例1〜7及び参考例1〜2〕
下記表1〜3に示す材料を混合して、お好み焼き用ミックスを得た。
得られたお好み焼き用ミックス50質量部に、水35質量部と液卵(全卵)14質量部と醤油1質量部からなる液体と、具材とを加え、攪拌して具材入りお好み焼き用生地を得た。具材として、紅生姜5質量部、豚肉こま切れ5質量部及び刻みキャベツ130質量部を用いた。
得られたお好み焼き用生地を180℃に熱した鉄板に厚さ2.5cmで円盤形状に広げた。表面に気泡が出てきたところで反転させ、両面がキツネ色になり全体に火が通るまで何度か返しながら焼成し、お好み焼きを得た。
〔評価試験〕
各実施例、比較例及び参考例のお好み焼きを10名の専門パネラーに食してもらい、下記評価基準により生地の食感を評価してもらった。また、これらのお好み焼きの保形性(取扱性)を10名の専門パネラーに下記方法により評価してもらった。評価結果を10名の専門パネラーそれぞれの評価点(5点満点)の平均値として下記表1〜3に示す。
(お好み焼きの生地の食感の評価基準)
5点:生地内部のふわりとした食感が十分にあり、極めて良好。
4点:生地内部のふわりとした食感があり、良好。
3点:生地内部がややパサついているか、やや粘つく食感。
2点:生地内部がパサつくかやや硬く、不良。
1点:生地内部が非常にパサつくか硬く、極めて不良。
<お好み焼きの保形性の評価方法>
評価対象のお好み焼きを、その焼成直後に、雰囲気温度が室温の環境に設置されたまな板上に載置し、包丁で12cm×6cmの平面視長方形形状に切断して試料を調製した。この試料を、まな板上に載置したままの状態でその焼成直後から30分放置した後、一方の短辺側の縁部を手指で把持して、長辺がほぼ垂直になるように慎重に持ち上げ、該試料の下端(他方の短辺の縁)から上方に3cmの部位の中央部(以下、「回動中心部」ともいう。)を、片手の3本の指で把持する。こうして、試料の上端部(一方の短辺の縁部)が片方の手指で把持され且つ回動中心部がもう片方の手指で把持された垂直状態から、該上端部を把持していた手指を離し、該上端部側を回動中心部周りに回動させることで、該試料を徐々に傾けて該試料を水平状態にした(即ち90度傾けた)後、同様に回動させて元の垂直状態に戻す。斯かる試料の回動操作(垂直状態から水平状態を経て再び垂直状態にする操作)を、試料が崩れて回動操作の続行が不可能になるまで繰り返し、下記評価基準により評価した。本評価方法における試料の回動操作は、お好み焼きを喫食する際の動作を想定したもので、本評価方法で高評価となったお好み焼きは、喫食時に型崩れを起こし難く取扱性に優れると評価できる。
(お好み焼きの保形性の評価基準)
5点:回動操作を10回行っても試料の崩れが無く、極めて良好。
4点:試料が崩れた時の回動操作の実施回数が6回以上10回未満であり、良好。
3点:試料が崩れた時の回動操作の実施回数が2回以上6回未満である。
2点:初回の回動操作において試料を垂直状態から水平状態にする過程で80度以上傾けた時点で崩れてしまい、不良。
1点:初回の回動操作において試料を垂直状態から水平状態にする過程で45度以上80度未満傾けた時点で崩れてしまい、極めて不良。
Figure 0006959183
表1に示すとおり、比較例1はMC又はHPMCを含有していないため、また、比較例2及び3は強力粉又はデュラム粉を含有していないため、それぞれ、各実施例に比して評価に劣る結果となった。参考例1は、通常のお好み焼き用ミックスの組成と同様に薄力粉のみから構成されているところ、保形性の悪さが目立つ結果となった。参考例1のミックスをベースとして、参考例2のように強力粉と薄力粉とを等量に変更すると、保形性の向上が見られるが、生地の食感が低下してしまう。これに対し、各実施例のようにMC又はHPMCを用いることで、生地の食感及び保形性の双方を向上させることが可能になる。
Figure 0006959183
表2の各実施例及び比較例は、強力粉(特定小麦粉)の含有量が互いに異なるところ、実施例と比較例との対比から、特定小麦粉の含有量としては、ミックスの全質量に対して、50〜99.7質量%(表2の全実施例)が適切であることが明白であり、特に60〜85質量%(実施例8、2、9、10)が好ましいことがわかる。
Figure 0006959183
表3の各実施例及び比較例は、HPMC(特定セルロース誘導体)の含有量が互いに異なるところ、実施例と比較例との対比から、特定セルロース誘導体の含有量としては、ミックスの全質量に対して、0.3〜5.0質量%(表3の全実施例)が適切であることが明白であり、特に0.7〜2.0質量%(実施例15、2、16)が好ましいことがわかる。
〔実施例19〜25〕
お好み焼き用生地におけるミックス及び液体の含有量を下記表4に示すように変更した以外は、実施例2と同様にしてお好み焼きを得た。
得られたお好み焼きについて、前記方法により生地の食感及び保形性を評価した。その結果を下記表4に示す。
Figure 0006959183
表4の実施例どうしの対比から、お好み焼き用生地におけるミックスの含有量としては、該生地の全質量に対して、20〜60質量%(実施例19及び25以外の実施例)が好ましく、特に30〜55質量%(実施例21、22、2、23)が好ましいことがわかる。
〔実施例26〜31〕
大豆油30質量%、HPMC0.3質量%、液卵69.7質量%を混合後、よく撹拌して乳化液を調製した。この乳化液をお好み焼き用生地に配合し、液体の含有量を適宜変更した以外は、実施例2と同様にしてお好み焼きを得た。乳化液は、ミックス、液体(水、液卵、醤油)及び具材を混合するのとほぼ同時に混合した。
得られたお好み焼きについて、前記方法により生地の食感及び保形性を評価した。その結果を下記表5に示す。
Figure 0006959183
表5に示すとおり実施例27〜30が特に高評価であったことから、お好み焼き用生地に、特定セルロース誘導体、液卵及び油脂を含有する乳化液を10〜40質量%含有することが、お好み焼きの生地の食感及び保形性の向上に有効であることがわかる。

Claims (6)

  1. 強力粉及びデュラム粉からなる群から選択される1種以上の小麦粉を50〜99.7質量%含有し、且つメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される1種以上のセルロース誘導体を0.3〜5.0質量%含有するお好み焼き用ミックス。
  2. 請求項1に記載のお好み焼き用ミックスと液体とを含有するお好み焼き用生地。
  3. 前記お好み焼き用ミックスの含有量が、前記お好み焼き用生地の全質量の20〜60質量%である請求項2に記載のお好み焼き用生地。
  4. 更に乳化液を10〜40質量%含有し、該乳化液は、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される1種以上のセルロース誘導体と卵液とを含有する請求項2又は3に記載のお好み焼き用生地。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載のお好み焼き用生地を加熱する工程を有する、お好み焼きの製造方法。
  6. 前記お好み焼き用生地に具材が配合されており、該具材の配合量が、該生地100質量部に対して60〜200質量部である請求項5に記載のお好み焼きの製造方法。
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