JP6953787B2 - 環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法 - Google Patents
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Description
[1]水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が11質量%を超え22質量%以下、Fe2O3量が3.9質量%未満、C4AF量が6〜11質量%、C3S量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカー。
[2]ケイ酸率(SM)の下限値が1.50であり、鉄率(IM)の下限値が2.5であり、ボーグ式にて算定されるC4AF量の上限値が10質量%である、[1]に記載の環境負荷低減クリンカー。
[3][1]又は[2]に記載の環境負荷低減クリンカーと、石膏と、石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含むセメント組成物であって、当該セメント組成物100質量部に対する前記高炉スラグの含有量が5〜80質量部、当該セメント組成物100質量部に対する前記石灰石の含有量が1〜10質量部、当該セメント組成物100質量部に対するSO3量が1.2〜15.0質量部である、セメント組成物。
[4]フライアッシュを含み、当該セメント組成物100質量部に対する前記フライアッシュの含有量が0.5〜10質量部である、[3]に記載のセメント組成物。
[5]ボーグ式で算定されるC3A量が11質量%超18質量%以下のポルトランドセメントクリンカーを20質量%以上80質量%以下含み、C3S量が40〜55質量%、C3Aが11質量%を超え18質量%以下であることを特徴とする、[3]又は[4]に記載のセメント組成物。
[6]フライアッシュを含み、前記フライアッシュがブレーン比表面積3000〜10000cm2/gであることを特徴とする[3]〜[5]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[7]前記セメントクリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量は8.0質量%未満である、[3]〜[6]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[8]前記セメントクリンカーのモリブデン含有量は30mg/kg以下、全クロム含有量は100mg/kg以下、鉛含有量は100mg/kg以下である、[3]〜[7]のいずれか1項に記載の環境負荷低減クリンカー。
[9]熱重量測定において、20℃から115℃までの重量減少が0.2%〜1.0%、200℃から350℃までの重量減少が1.0%以下であり、
コンダクションカロリーメーターで測定した接水から15分間での水和発熱量が3.8J/g以下である、[3]〜[8]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[10]吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該セメント組成物100gに対して4.90g以下であり、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異が当該セメント組成物100gに対して1.90g以下である、[3]〜[9]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[11]更に砂と、水とを含む[3]〜[10]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[13]前記原料は、Al2O3量が10質量%以上、SiO2/Al2O3質量比が5.0以下である廃棄物又は副産物を220〜600kg/t−cl’と、Fe2O3量が30質量%以上である鉄原料を30kg/t−cl’以下と、石灰石を800〜1200kg/t−cl’とを含む、[12]に記載のセメント組成物の製造方法。
[14]前記粉砕工程における前記混合物は、前記環境負荷低減クリンカーと、前記石膏と、高炉スラグと、粉砕助剤として有機系粉砕助剤及び/又は水とを含み、前記環境負荷低減クリンカーと前記石膏と前記高炉スラグとの合計量100質量部に対し、前記混合物の前記有機系粉砕助剤の含有量は1.0質量部以下であり、前記混合物の前記水の含有量は0.5〜5.0質量部である、[12]又は[13]に記載のセメント組成物の製造方法。
[15]前記粉砕工程が、前記環境負荷低減クリンカーと、C3A量が11質量%以下のポルトランドセメントクリンカーとを、質量比で2:8〜8:2に調整して混合しながら、同時に粉砕する工程を含む、[12]〜[14]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[16]前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水蒸気吸着量を測定する工程を更に含む、[12]〜[15]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[17]前記粉砕工程後、前記セメント組成物の熱重量減少量を測定する工程を更に含む、[12]〜[16]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[18]前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水和発熱量を測定する工程を更に含む、[12]〜[17]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[20]水/セメント組成物の質量比が0.2〜10.0のスラリーを用いて土壌を固化することを含む、[19]に記載の地盤改良方法。
[22]R2O含有量が0.3質量%を超えて1.2質量%以下である、[1]又は[21]に記載の環境負荷低減クリンカー。
[23][21]又は[22]に記載の環境負荷低減クリンカーと、石膏と、石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含むセメント組成物。
本実施形態のセメントクリンカーは環境負荷低減クリンカー(以下、「セメントクリンカー」という。)であって、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が11質量%を超え22質量%、Fe2O3量が3.9質量%未満、C4AF量が6〜11質量%、C3S量が40〜60質量%である。本実施形態のセメントクリンカーによれば、廃棄物や産業副産物を原料の一部として有効利用でき且つ製造過程においてCO2発生量を低減できる。
HM=CaO/(SiO2+Al2O3+Fe2O3)・・・(1)
SM=SiO2/(Al2O3+Fe2O3)・・・(2)
IM=Al2O3/Fe2O3・・・(3)
C3S量=(4.07×CaO)−(7.60×SiO2)−(6.72×Al2O3)−(1.43×Fe2O3)
C2S量=(2.87×SiO2)−(0.754×C3S)
C3A量=(2.65×Al2O3)−(1.69×Fe2O3)
C4AF量=3.04×Fe2O3
R2O=Na2O+0.658×K2O・・・(4)
本実施形態のセメント組成物は、上記セメントクリンカーと石膏とを含む。セメント組成物における石膏の質量割合は、セメントクリンカー100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは2〜20質量部であり、更に好ましくは3〜10質量部、特に好ましくは4〜7質量部である。セメント組成物における石膏の質量割合が1質量部未満であると固化処理土の強度発現性が不十分となりやすい。なお、セメント組成物における石膏の質量割合が増えるほど、固化処理土の強度発現性は向上する傾向があるが、30質量部を超えると添加効果が飽和する。
セメント組成物における高炉スラグの質量割合が5質量部未満では産業副産物(高炉スラグ)の有効利用が不十分となりやすく、また地盤改良材として使用すると、関東ロームのような火山灰質粘性土を処理する場合、固化処理条件によってはクロムなどの重金属の溶出量の低減効果が不十分となりやすい。他方、セメント組成物における高炉スラグの質量割合が80質量部を超えると、固化処理土の強度が不十分となりやすい。
上記セメント組成物の製造方法について説明する。この製造方法は、原料調合工程と、焼成工程と、粉砕工程とをこの順序で含む。原料調合工程と焼成工程を経ることによってセメントクリンカーが製造され、その後の粉砕工程を経ることでセメント組成物が製造される。
原料調合工程は、諸率(水硬率、ケイ酸率及び鉄率)が上記範囲であり且つボーグ式によって算定される構成化合物量(C3A量及びC4AF量)が上記範囲であるセメントクリンカーが得られるように原料を調合する工程である。つまり、この工程では、所望の物性(諸率及び構成化合物量)のセメントクリンカーが得られるように原料を選択するとともにその使用量(原料原単位)を調整する。
・石灰石:800〜1300kg、より好ましくは900〜1200kg、更に好ましくは1000〜1150kg。
・珪石:0〜100kg、より好ましくは0〜50kg、更に好ましくは0〜20kg。
・粘土系廃棄物:220〜600kg、より好ましくは250〜500kg、更に好ましくは300〜450kg。
・鉄原料:0〜30kg、好ましくは0〜20kg、更に好ましくは0〜10kg、特に好ましくは0kg。
焼成工程は、原料調合工程を経て得られた原料を焼成することによってセメントクリンカー(環境負荷低減クリンカー)を得る工程である。この工程を実施するための設備としては、NSPキルン、SPキルンなどが挙げられる。これらの設備は、焼成温度を測定する焼点温度測定機と、f.CaO量測定機(もしくはf.CaO量分析装置)とを有していることが好ましい。
粉砕工程は、セメントクリンカーと、少なくとも石膏とを含む混合物を粉砕することによってセメント組成物を得る工程である。この工程を実施するための設備としては、ボールミル、竪型ローラーミルなどが挙げられる。セメントクリンカーに石膏を添加する際に、高炉スラグや石灰石、フライアッシュを添加してもよい。
また、上記セメントクリンカーは、環境負荷低減型クリンカーと、C3A含有量が11質量%未満のポルトランドクリンカーとを混合使用し、C3A含有量およびC3S含有量を調整しながら粉砕しても良い。C3A量の異なるクリンカーを混合することにより、諸率ならびに鉱物組成の調整が容易になる。環境負荷低減クリンカーのC3A含有量は、10質量%以上20質量%以下が好ましく、11質量%以上18質量%以下がより好ましく、12質量%以上16質量%以下が特に好ましく、13質量%以上15質量%以下が最も好ましい。C3A含有量11質量%未満のポルトランドクリンカーのC3A含有量は、11質量%未満が好ましく、9質量%以下がより好ましく、1質量%以上9質量%以下が特に好ましい。また、環境負荷低減クリンカーと、C3A含有量11質量%未満のポルトランドクリンカーとの質量比は、2:8〜8:2が好ましく、3:7〜7:3がより好ましい。
ここで、セメント組成物中の石灰石の含有量は1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、更に好ましくは3〜5質量%である。また、セメント組成物における高炉スラグの含有量は、セメント組成物100質量部に対して好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは10〜70質量部であり、更に好ましくは20〜60質量部、特に好ましくは30〜50質量部である。さらに、フライアッシュは0.5〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、更に好ましくは2〜7質量部、特に好ましくは3〜5質量部であり、石灰石とともに添加することが好ましい。
上記セメント組成物はモルタルあるいはコンクリートとして使用できる。
上記セメント組成物100質量部に対して、砂あるいは骨材を200〜800質量部、水を25〜120質量部、好ましくは30〜100質量部、更に好ましくは40〜100質量部、コンクリート用減水剤を0(無添加)〜5質量%、好ましくは0〜2質量%加え、ミキサーにて十分練り混ぜて、モルタルあるいはコンクリートを作製する。
上記セメント組成物は地盤改良材として使用できる。当該セメント組成物を用いた地盤改良方法の実施形態について説明する。本実施形態の地盤改良方法は、上記のセメント組成物と、土壌とを混合する工程を備える。対象の土壌として、ローム、粘土、砂質土、有機質土などが挙げられる。土壌1m3にする地盤改良材の混合量は、土壌の固化強度を十分に高める観点から、好ましくは30〜500kgであり、より好ましくは50〜450kgであり、更に好ましくは200〜400kgである。半水石膏化率の測定は、粉末エックス線回折測定による二水石膏ならびに半水石膏の定量、あるいは熱重量測定・示差熱分析(TG−DTA)装置により脱水温度、脱水量を測定することで実施することができる。
土壌と地盤改良材の混合方法は、従来の地盤改良材と同様に、粉体として土壌に添加して混合する、あるいは水を混ぜてスラリーとして土壌に混合することが可能である。水/セメント組成物の質量比は例えば0.2〜10.0であり、好ましくは0.4〜5.0であり、更に好ましくは0.6〜1.5である。この範囲を満たすことで地盤改良材を含むスラリーの流動性を十分に確保することができる。
表1に示す化学組成の原料と、以下の試薬とを準備した。
・酸化アルミニウム:和光純薬株式会社製、試薬特級
また、一部のクリンカー(K10〜14)は小型のキルン炉を用いて、最高焼成温度1350〜1500℃として焼成した。
HM=CaO/(SiO2+Al2O3+Fe2O3)
SM=SiO2/(Al2O3+Fe2O3)
IM=Al2O3/Fe2O3
C3S=4.07×CaO−7.60×SiO2−6.72×Al2O3−1.43×
Fe2O3
C2S=2.87×SiO2−0.754×C3S
C3A=2.65×Al2O3−1.69×Fe2O3
C4AF=3.04×Fe2O3
セメントクリンカー(K1,K2,K3,K4,K7,K8,K9)に石膏及び/又は高炉スラグを加え、表6に示す配合のセメント組成物を得た。石膏として、ふっ酸無水石膏(セントラル硝子製、SO3量:58.1質量%、ブレーン比表面積:3700cm2/g)を用いた。高炉スラグとして、高炉スラグ微粉末(千葉リバーメント株式会社製、SO3量:0.1質量%、硫化物硫黄含有量:0.861質量%、ブレーン比表面積:3460cm2/g)を用いた。粉砕処理にはボールミルを使用し、有機系粉砕助剤としてジエチレングリコール(DEG)及び/又は水を使用した。表6に示すとおり、有機系粉砕助剤の添加量は、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグの合計量を基準(外割質量)とした。セメント組成物の粉末度はいずれもブレーン比表面積で4500±50cm2/gとした。また、参考例1,2、13はK1とK2を2:1で混合したものを使用した。
また、セメントクリンカー(K10、14〜16)と、石膏と、石灰石及び/またはフライアッシュ(ブレーン:8520cm2/g)と、高炉スラグとを混合し、表7に示す配合のセメント組成物を得た。なお、フライアッシュは、一般的なコンクリート用フライアッシュのブレーン値(3500〜4000cm2/g程度)よりも大きいものを試作して使用した。また、粉砕処理にはボールミルを使用し、粉砕助剤としてDEG及び/または水を使用した。DEG及び水の添加量は、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグの合計量を基準(外割質量)とした。セメント組成物の粉末度はいずれもブレーン比表面積で3600〜4200cm2/gとした。なお、実施例1、2、5〜9は、C3A量が11%以上の環境負荷低減クリンカー(K14)と、C3A量が11%未満のポルトランドクリンカーK10あるいは12とを混合し、C3A量を調整したセメント組成物である。
対象土はローム(自然含水比:132.6%、湿潤密度:1.361g/cm3、礫分:0.1%、砂分:11.0%、細粒分:88.9%)とし、ローム1m3あたりセメント組成物の配合量が300kgとなるようにロームとセメント組成物を配合し、ホバートミキサーで3分間よく混合した後、円柱形の型枠に詰めて固化処理土供試体を作製した。
[3.(2)セメント組成物を用いたモルタルの作製および圧縮強さの測定]
モルタルの作製および圧縮強さの試験方法は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠した。
[3.(3)セメント組成物の断熱温度上昇測定]
セメント組成物22質量部と砂49質量部と水12質量部とを混合してモルタルを作製し、その発熱を断熱温度上昇試験装置を用いて測定した。モルタル作製直後から材齢3日経過時点までの断熱温度上昇量(℃)を終局断熱温度上昇上昇量(℃)とした(図9)。
セメント組成物60質量部と水100質量部とを混合してスラリーを作製し、その見かけ粘度を回転式粘度計(ThermoFisherScientific社製、HAAKE RheoStress 1、測定温度20℃又は35℃、パラレルプレート直径60mm、せん断速度200s−1)にて測定した。
固化処理土について、20℃で7日間及び28日間の養生後、針貫入試験機(丸東製作所製、SH−70)にて針の貫入量が10mmとなるときの貫入力を測定し、貫入勾配を算出した。更に、貫入勾配から固化処理土の強度を算出した。
なお、固化処理土の強度算出には以下の式を用いた。
A=94.248X1.2567
A:固化強度(N/mm2)
X:針貫入勾配(N/mm)=貫入力(N)/貫入量(mm)
水蒸気吸着量は高精度全自動ガス吸着装置(日本ベル社製、BELSORP18)にてセメント組成物を40℃(真空下)で12時間脱気し、25℃で水蒸気吸着試験を行った。相対圧0.9265における水蒸気吸着量と、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線の水蒸気吸着量のヒステリシス(差異)を求めた。なお、セメント組成物に吸着した水蒸気量の体積から質量への換算には、以下の式を用いた。
B:セメント組成物100gあたりの水蒸気吸着量(g/100g)
C:セメント組成物1gあたりの水蒸気吸着量(cm3(STP)/g)
「TGの20〜115℃の減量(質量%)」及び「TGの200〜350℃の減量(質量%)」は、10℃/分で昇温した場合の20〜115℃及び200〜350℃の範囲での重量減少分(質量%)である。なお、測定方法は、示差熱熱重量分析測定装置としてTG−DTA5200(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、直径20μmの孔を有する容量30μLのセル(アルミ容器)に、試料約20mg入れ、昇温速度10℃/分で室温(20℃)から500℃まで昇温した。なお、リファレンスとしてアルミ板(20mg)を用いた。
水和発熱量の測定方法は、コンダクションカロリーメーター(東京理工製、TCG−26)にてセメント組成物と水とを、水:セメント組成物=60:100の質量比で混合して35℃で接水から1時間後までの発熱量を測定した。
[(1)固化材スラリー粘性]
表6にスラリー粘性測定結果と固化処理土の固化強度試験結果を示す。
表7及び図10に、セメント組成物のモルタル圧縮強さと断熱温度上昇試験の結果ならびに関係を示す。
実施例1〜9のセメント組成物の圧縮強さは、いずれもJIS R 5211「高炉セメント」に規定される高炉セメントB種の規格値を満足し、市場に出回っている高炉セメントB種に相当する比較例1と同等レベルであるとともに、断熱温度上昇も比較例1に比べて低く抑えられている。
また、ボーグ式で算定されるC3S量が51質量%と少ない環境負荷低減クリンカー(K14及びK16)を用いたセメント組成物(実施例3〜9)は、圧縮強さが良好でありながら断熱温度上昇量が少なくなった。中でも、環境負荷低減クリンカーとポルトランドクリンカーとを併用して鉱物組成を調整したセメント組成物(実施例8)は圧縮強さが比較例1と同等であるにも関わらず、終局温度上昇量は比較例1よりも5℃程度低くなった。
さらに、フライアッシュを5%含むセメント組成物(実施例9)は、実施例8に比べて圧縮強さは同等であるが、終局断熱温度上昇量が実施例8に比べて更に3℃程度低くなった。
粉砕助剤と水を併用して粉砕した実施例1〜4に係るセメント組成物は、20℃〜115℃の重量減少が0.3〜1.0%と、粉砕助剤のみで粉砕した比較例1に係るセメント組成物よりも大きく、200℃〜350℃の重量減少は1.0%以下となった。接水から15分間の発熱量についても、粉砕助剤と水とを併用した実施例1〜4は比較例1よりも小さくなった。
また、フライアッシュを添加した実施例9は水を併用して粉砕しなくても15分間の発熱量は2.1J/gと非常に低くなった。
Claims (20)
- 水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.50以上2.80未満、鉄率(IM)が2.5〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるC 3 A量が11質量%を超え22質量%以下、Fe 2 O 3 量が3.9質量%未満、C 4 AF量が6〜10質量%、C 3 S量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカーと、石膏と、
石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含むセメント組成物であって、
当該セメント組成物100質量部に対する前記高炉スラグの含有量が10〜80質量部、
石灰石を含む場合、当該セメント組成物100質量部に対する前記石灰石の含有量が1〜10質量部、
当該セメント組成物100質量部に対するSO3量が1.2〜15.0質量部である、
セメント組成物。 - フライアッシュを含み、当該セメント組成物100質量部に対する前記フライアッシュの含有量が0.5〜10質量部である、請求項1に記載のセメント組成物。
- ボーグ式で算定されるC3A量が11質量%超18質量%以下のポルトランドセメントクリンカーを20質量%以上80質量%以下含み、
C3S量が40〜55質量%、C3Aが11質量%を超え18質量%以下である、ことを特徴とする、請求項1または2に記載のセメント組成物。 - フライアッシュを含み、前記フライアッシュがブレーン比表面積3000〜10000cm2/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント組成物。
- 前記環境負荷低減クリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量は8.0質量%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセメント組成物。
- 前記環境負荷低減クリンカーのモリブデン含有量は30mg/kg以下、全クロム含有量は100mg/kg以下、鉛含有量は100mg/kg以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセメント組成物。
- 熱重量測定において、20℃から115℃までの重量減少が0.2%〜1.0%、200℃から350℃までの重量減少が1.0%以下であり、
コンダクションカロリーメーターで測定した接水から15分間での水和発熱量が3.8J/g以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセメント組成物。 - 吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該セメント組成物100g
に対して4.90g以下であり、
相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異が当該セメント組成物100gに対して1.90g以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセメント組成物。 - 更に砂と、水とを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のセメント組成物。
- 前記環境負荷低減クリンカーのSO3含有量が0.3質量%を超えて1.6質量%以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のセメント組成物。
- 前記環境負荷低減クリンカーのR2O含有量が0.3質量%を超えて1.2質量%以下である、1〜10のいずれか1項に記載のセメント組成物。
- 水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.50以上2.80未満、鉄率(IM)が2.5〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるC3A量が11質量%を超え22質量%以下、Fe2O3量が3.9質量%未満、C4AF量が6〜10質量%、C3S量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカーが得られるように原料を調合する原料調合工程と、
1200〜1550℃の焼成温度で前記原料を焼成することによって前記環境負荷低減クリンカーを得る焼成工程と、
前記環境負荷低減クリンカーと、少なくとも石膏と、石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含む混合物を粉砕することによってセメント組成物を得る粉砕工程とを含み、
当該セメント組成物100質量部に対する前記高炉スラグの含有量が10〜80質量部、石灰石を含む場合、当該セメント組成物100質量部に対する前記石灰石の含有量が1〜10質量部、当該セメント組成物100質量部に対するSO 3 量が1.2〜15.0質量部である、セメント組成物の製造方法。 - 前記原料は、
Al2O3量が10質量%以上、SiO2/Al2O3質量比が5.0以下である廃棄物又は副産物を220〜600kg/t−cl’と、
Fe2O3量が30質量%以上である鉄原料を30kg/t−cl’以下と、
石灰石を800〜1200kg/t−cl’と、
を含む、請求項12に記載のセメント組成物の製造方法。 - 前記粉砕工程における前記混合物は、粉砕助剤として有機系粉砕助剤及び/又は水とを更に含み、
前記環境負荷低減クリンカーと前記石膏と前記高炉スラグとの合計量100質量部に対し、前記混合物の前記有機系粉砕助剤の含有量は1.0質量部以下であり、前記混合物の前記水の含有量は0.5〜5.0質量部である、請求項12又は13に記載のセメント組成物の製造方法。 - 前記粉砕工程が、
前記環境負荷低減クリンカーと、C3A量が11質量%以下のポルトランドセメントクリンカーとを、質量比で2:8〜8:2に調整して混合しながら、同時に粉砕する工程を含む
請求項12〜14のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。 - 前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水蒸気吸着量を測定する工程を更に含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
- 前記粉砕工程後、前記セメント組成物の熱重量減少量を測定する工程を更に含む、請求項12〜16のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
- 前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水和発熱量を測定する工程を更に含む、請求項12〜17のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載のセメント組成物を用いる地盤改良方法。
- 水/セメント組成物の質量比が0.2〜10.0のスラリーを用いて土壌を固化することを含む、請求項19に記載の地盤改良方法。
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