JP4585753B2 - 地盤改良材 - Google Patents

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Description

本発明は、地盤改良材に関し、特に各種の土壌に対して地盤の強度改善を図ることができる地盤改良材に関するものである。
一般に、地盤改良材には、アーウィン、ポルトランドセメント、高炉スラグ、ジェットセメント、石灰等が用いられており、改良する対象となる土壌の種類によって様々な硬化特性を有する材料が使用されている。
対象土壌がロームの場合には、ローム中に含まれるアロフェンが、エーライト(CS)の水和によって生成するCa(OH)と容易に反応してC−S−H系やC−A−H系の水和物を生成することから、エーライト(CS)やCa(OH)の多いものが強度発現性の面で好ましく、普通ポルトランドセメントよりも、早強ポルトランドセメントや消石灰が適したものとして用いられている。
一方、高有機質土の場合、有機質土中に含有されるフミン酸等の有機酸によってポルトランドセメントの強度発現性に寄与するエーライト(CS)の水和が阻害されることから、エーライト(CS)の多いものは強度発現性の面で不向きである。
かかる有機質土壌に対して、ロームの固化に適した早強ポルトランドセメントや消石灰を用いると、却って有機質土壌からの有機酸の分解を助長し、水和反応性を著しく遅延させるなどの問題が生じる。
従って、有機質土壌に対しては、普通ポルトランドセメントに高炉スラグ粉や石膏を添加することにより、有機酸による水和阻害を軽減する方法が用いられている。
また、他の例として、特開平11−279551号公報には、有機質土用の地盤改良材として、SOが4.5〜15重量%、CAが8〜20重量%及びCSが40〜70重量%含有された、粉末度が4300〜8000cm/gのセメント組成物100重量部と、石膏10〜300重量部、高炉スラグ10〜500重量部とからなる地盤改良材が開示されている。
かかる地盤改良材を用いた場合には、有機質土に関しては十分な固化性能を示すものの、スラリー添加の場合の流動性や、有機質土以外の土壌に関しては十分な固化性能を示さず、十分に満足できるものではなかった。
例えば、地中の深度により土壌成分が著しく異なる地盤改良の工事現場においては、使用する地盤改良材をその土壌成分によって変化させることは事実上困難であり、最も固化し難い土壌を対象とした地盤改良材の配合を設定して地盤改良工事が行われることが多く、固化が容易な土壌においては過剰強度となってしまう場合がある。
このように、地盤改良工事においてはその固化対象土によって適応可能な地盤改良材が異なっており、従って各種の土壌に対して固化性能を有する地盤改良材の開発が望まれていた。
また、近年、地盤改良分野においては、固化処理土の重金属含有量の規制や溶出基準等により、使用される地盤改良材中に含有される重金属含有量が少ないことが強く求められている。
特開平11‐279551号公報
従って本発明の目的は、対象土壌の性質により多様な固化材配合を必要とするという従来の地盤改良材特有の課題を解決し、多様な対象土壌に対して有効な強度発現性を有する地盤改良材を提供することである。
また、本発明の他の目的は、地盤改良材をスラリーで使用しても、各種の土壌に対して良好な流動性を有する地盤改良材を提供することである。
更に本発明の他の目的は、重金属含量が少なく、改良土壌中に重金属が浸出しない地盤改良材を提供することである。
本発明者らは、特定の組成の地盤改良材を用いることで、エーライト(CS)の初期水和活性を増大させることができ、これにより多様な種類の土壌に対し、優れた初期強度発現性を有することを見出し、本発明に到達した。
本発明の地盤改良材は、CS(3CaO・SO)含有量が35〜65重量%、CA(3CaO・Al)含有量が10〜20重量%の鉱物組成を有し、かつ、Feの含有量が2重量%以下で、Al/Feの重量比が3以上であり、粉末度が2800〜3500cm /gのセメント組成物100重量部、石膏10〜300重量部、高炉スラグ10〜300重量部からなることを特徴とする。
好適には、上記地盤改良材は、該石膏は25〜100重量部、該高炉スラグは50〜100重量部であることを特徴とする。
本発明の地盤改良材は、改良する対象土壌の種類に拘わらず、有効な強度発現性を有し、地中の深度により土壌成分が著しく異なる地盤改良の工事現場においても、使用する地盤改良材をその土壌成分によって変化させることを必要とせず、有効に地盤改良を図ることができる。
また、本発明の地盤改良材は、当該地盤改良材をスラリーで使用しても、各種の土壌に対して良好な流動性を有し、更に、重金属含量が少ないため、改良土壌中に重金属が浸出せず、環境的にも優れたものである。
本発明を、以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の地盤改良材は、CS含有量が35〜65重量%、CA含有量が10〜20重量%の鉱物組成を有し、かつ、Feの含有量が2重量%以下で、Al/Feの重量比が3以上であり、粉末度が2800〜3500cm /gのセメント組成物100重量部、石膏10〜300重量部、高炉スラグ10〜300重量部からなるものである。
かかる配合割合とすることにより、エーライト(CS)の初期水和活性を増大させることができ、種々の土壌に対し、優れた強度発現性を有することが可能となる。また、エーライトの初期水和活性を増大させることができるために、セメント組成物の粉末度を特に高める必要なく、初期強度発現性が得られるようになることから、地盤改良材としてスラリー添加で使用する場合には、セメント組成物の粉末度を高めないようにして流動性低下を軽減することも可能となる。
本発明の地盤改良材中のセメント組成物の鉱物組成は、CS含有量が35〜65重量%、CA含有量が10〜20重量%である。
S含有量は、好ましくは40〜60重量%、更に好ましくは45〜60重量%であることが望ましい。
S含有量が35重量%以上であれば、ローム、粘性土、砂質土に対し良好な初期水和活性が得られ、初期強度発現に寄与し、かつ、あらゆる土壌に対して長期強度発現に寄与する。
また、CS含有量が65重量%以下であれば、高有機質土に対してもフミン酸等の有機酸によるCSの水和阻害の影響を他の成分により補うことが可能となる。
また、好適にはCA含有量は、12〜18重量%であることが望ましい。
A含有量が10重量%以上であれば、高有機質土、粘性土、砂質土に対し良好な初期水和活性が得られ、初期強度発現に寄与する。
A含有量が20重量%以下であれば、CS含有量とのバランスを崩すことなくセメントクリンカーを焼成することが容易なものとなる。
更に、本発明の地盤改良材中のセメント組成物は、Feの含有量が2重量%以下、好適には1.6重量%以下である。
Fe含量が上記範囲以下であることにより、セメントクリンカー焼成時に融液相として生成するCAFの量が少なくなるので、セメントクリンカー焼成時に同様に融液相として生成するCAの含有量が多くてもセメントクリンカー焼成時に融液相が過剰になることを防止することができる。従って、CS含有量、CA含有量が上記範囲となる鉱物組成を有するセメントクリンカーを焼成することが容易なものとなる。
また、工業的に用いられるセメントクリンカー焼成用のFeの原料は、重金属含有量が高いものが多いので、Fe含量を上記範囲以下とすることにより、Feの原料の使用量を減少させることができ、重金属含有量の低い地盤改良材を製造することができるので、土壌中への重金属の溶出を防止することができる。
また、当該セメント組成物は、Al/Feの重量比が3以上、好適には3.5以上であることが望ましい。
かかる範囲とすることにより、セメント組成物中の3CaO・Al(CA)量を確保することができ、CAは石膏と反応して多量のエトリンガイトを早期に生成し、特に高有機質土に対する初期強度発現に寄与して良好な固化性能を発揮する。
さらに一方では、エーライト(CS)へのAl固溶量が増大することによりCSが改質され、CSの初期水和反応性が増大するので、上述のCSの利点がより顕著なものとなる。また、CSの初期水和反応性が増大することにより、セメント組成物の粉末度が低くても初期水和反応性を確保することができるので、地盤改良材をスラリーで使用する場合には、粉末度を低くして流動性を確保することができる。
また上記セメント組成物の粉末度は特に限定されないが、2500〜4000cm/g、本発明においては2800〜3500cm/gである
2500cm/g未満であると、初期強度が十分に得られない場合があり、また4000cm/gを超えても強度増加効果がさほど増進されず、経済的ではなく、また、地盤改良材をスラリーで使用する場合には、流動性が低下する場合があるからである。
更に、本発明の地盤改良材には、石膏が含有され、当該石膏は上記セメント組成物と反応してエトリンガイトを形成することで、地盤の強度の増進を図る機能を有する。
当該石膏の含有量は、上記セメント組成物100重量部に対して、石膏が10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは25〜100重量部である。
石膏が10重量部未満であると、地盤の強度増進が十分ではなく、一方、300重量部を超えると上記セメント組成物に対して石膏の量が過剰となりやはり強度増進が劣り好ましくない。
本発明に使用することができる石膏は、特に限定されないが、例えば二水石膏、半水石膏、無水石膏等が挙げられる
更に、本発明の地盤改良材には、高炉スラグが含まれ、当該高炉スラグは、例えば、有機質土壌の場合には土壌中に含有される有機物をその初期段階において吸着し、これにより有機物の上記セメント組成物に対する悪影響を抑制し、また長期的にはポゾラン反応により強度増進に寄与する機能を有する。
その含有量は、上記セメント組成物100重量部に対して、高炉スラグが10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは50〜100重量部である。
高炉スラグが10重量部未満であると、改良される地盤土壌の強度増進が図れず、逆に300重量部を超えると、上記セメント組成物及び石膏に対して過剰量となり、強度が不充分となってしまう。
本発明の地盤改良材は、上記セメント組成物と石膏と高炉スラグとを、上記混合割合で混合することにより好適に得られ、その混合方法は特に限定されず、セメント組成物を焼成して粉砕したセメントに粉砕した高炉スラグ及び石膏を添加混合しても、セメント組成物と石膏と高炉スラグとを添加混合した後に粉砕しても、いずれの公知の方法を用いて調製してもかまわない。
このようにして得られた地盤改良材は、軟弱地盤や建設発生土等に使用することができ、適用できる土壌としては、特に限定されず、砂質土、砂壌質土、有機質土、粘性土、ローム、シルト、泥土等、任意の土壌が挙げられる。
また地盤改良材の土壌への添加量は、土壌の種類によって異なるものの、例えば、土壌1mあたり50〜600kg程度が好適に使用できる量である。
本発明を次の実施例、比較例及び試験例により説明する。
(a)セメント組成物の調製
表1に示す組成を有するセメント原材料の中から、石灰石、粘土、石炭灰、珪石、銅カラミの5種類の原材料を用いて、組成の異なる原料を調合した。
Figure 0004585753
得られた各調合原料をブロック状に成型し、これを電気炉にて1450℃、2時間焼成することによってクリンカーを焼成した。当該クリンカーに、表1の組成を有する石膏を添加して、ボールミルを用いて所定の粉末度となるよう混合粉砕することにより、表2に示す26種類のセメント(No1〜26)をそれぞれ調製した。なお、粉末度の調整は、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に従い、ブレーン空気透過装置を用いて測定して、(目標の粉末度)±100cm/gとなるようにした。
Figure 0004585753
表3に示すように、表2で得られた各セメント組成物は、各原料中の重金属含有量が異なることから、原料の調合割合を変化させることによって、主要成分のみならず重金属含有量の異なるセメントを製造することができる。
表2に示したセメント組成はその一例であり、鉄原料の使用量を少なくすることによって鉄原料からの重金属含有量を少なくすることが確認できた。
Figure 0004585753
(b)地盤改良材の調製及び試験(セメント組成物の組成の変化)
(実施例1〜16、比較例1〜10)
表2に示した各セメント組成物の粉末度を3200cm/gとし、得られた各セメント組成物100重量部に、高炉スラグ微粉末10重量部、二水石膏10重量部を添加し、均一に混合して、地盤改良材をそれぞれ調製した。
ここで、使用した高炉スラグの化学組成を表4、高炉スラグと二水石膏の各粉末度を表5示す。
なお、前記地盤改良材の配合に使用した二水石膏は、表1に示した石膏と同様のものを使用した。
Figure 0004585753
Figure 0004585753
次いで、得られた各地盤改良材スラリーの流動性と各種土壌に対する強度試験を測定した。
強度試験
使用した各種土壌に対する強度試験は、表6に示す土質を有する各土壌に対し、表6に示す配合で(各土壌1mあたりに添加する量で表す)各地盤改良材を配合することによって得られた各地盤改良材スラリーの材齢7日の圧縮強度で評価した。
Figure 0004585753
各圧縮強度は、一軸圧縮試験:JIS A 1216の「土の一軸圧縮試験方法」に準拠して測定した。
その結果を表7示す。
流動性試験
表6に示す各土壌を使用して、(水/地盤改良材)比が80%となるように各地盤改良材スラリーを調製し、ファンネル粘度計を用いて、当該各スラリーの流下時間を測定して、流動性を評価した。
その結果も表7に示す。
Figure 0004585753
表7には、各地盤改良材スラリーの流下時間、各種土壌の圧縮強度性能の結果を示す。
表7より、セメント組成物中のAl/Fe比が3.0以上の場合、及びセメント組成物中のCS量が35〜65%の場合等で総合的な土壌固化性能が向上することが確認できた。
(c)地盤改良材の調製及び試験(セメント組成物の粉末度)
(実施例3、実施例D、参考例A,E,F
表2に示すNo.3のセメント組成物の粉末度を表8に示すように変化させた。得られた各セメント組成物100重量部に、高炉スラグ微粉末10重量部、二水石膏10重量部を添加し、均一に混合して、地盤改良材をそれぞれ調製した。
ここで、使用した高炉スラグ及び二水石膏の化学組成は、それぞれ上記表4および上記表1に示すものであり、またそれぞれの粉末度は上記表5に示すものである。
次いで、各地盤改良材と水とを(水/地盤改良材)比60%として混合し、得られた各地盤改良材スラリーの流動性と各種土壌に対する強度試験を測定した。
強度試験
使用した各種土壌に対する強度試験は、上記表6に示す土質を有する各土壌に対し、上記表6に示す配合で(各土壌1mあたりに添加する量で表す)、前記地盤改良材スラリーを配合することによって得られた各改良土壌の材齢7日の圧縮強度で評価した。
なお、圧縮強度試験は上記と同様の方法を用いて評価した。
その結果を表8に示す。
流動性試験
前記地盤改良材スラリーの流動性は、ファンネル粘度計を用い、当該各スラリーの流下時間を測定して、流動性を評価した。
その結果も表8に示す。
Figure 0004585753
表8には、各セメント組成物の粉末度と地盤改良材スラリーの流下時間、各種土壌の圧縮強度性能の結果を示す。
表8より、粉末度が2500〜4000cm/gの範囲でスラリーの流動性、各種土壌の圧縮強度性能が共に良好であることがわかる。
(d)地盤改良材の調製及び試験(地盤改良材の配合)
(実施例3、実施例a〜j、比較例a〜h)
表2に示すNo.3のセメント組成物の粉末度を3200cm/gとし、当該セメント組成物100重量部に対し、高炉スラグ微粉末及び二水石膏を、それぞれ表9(石膏は10重量部)及び表10(高炉スラグは10重量部)の配合割合で添加し、均一に混合して、地盤改良材をそれぞれ調製した。
ここで、使用した高炉スラグ及び二水石膏の化学組成は、それぞれ上記表4および上記表1に示すものであり、またそれぞれの粉末度は上記表5に示すものである。
次いで、各地盤改良材と水とを(水/地盤改良材)比60%として混合し、得られた各地盤改良材スラリーの流動性と各種土壌に対する強度試験を測定した。
強度試験
使用した各種土壌に対する強度試験は、上記表6に示す土質を有する各土壌に対し、上記表6に示す配合で(各土壌1mあたりに添加する量で表す)、前記地盤改良材スラリーを配合することによって得られた各改良土壌の材齢7日の圧縮強度で評価した。
なお、圧縮強度試験は上記と同様の方法を用いて評価した。
その結果をそれぞれ表9及び表10に示す。
流動性試験
前記地盤改良材スラリーの流動性は、ファンネル粘度計を用い、当該各スラリーの流下時間を測定して、流動性を評価した。
その結果もそれぞれ表9及び表10に示す。
Figure 0004585753
Figure 0004585753
上記表9及び表10より、セメント組成物100重量部に対して、高炉スラグ微粉末10〜300重量部、石膏10〜300重量部を配合した場合に、総合的な土壌固化性能を確保できることが明らかとなった。
各種の土壌に対して優れた固化性能を有するものであるため、有機質土や浚渫土等の土壌の種類に拘わらず、混合土や、深度によって土壌の種類が変化する地盤に対しても、有効に適用することができる。

Claims (2)

  1. S含有量が35〜65重量%、CA含有量が10〜20重量%の鉱物組成を有し、かつ、Feの含有量が2重量%以下で、Al/Feの重量比が3以上であり、粉末度が2800〜3500cm /gのセメント組成物100重量部、石膏10〜300重量部、高炉スラグ10〜300重量部からなることを特徴とする地盤改良材。
  2. 請求項1記載の地盤改良材において、石膏は25〜100重量部、高炉スラグは50〜100重量部であることを特徴とする地盤改良材。
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