JP2018104264A - 環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法 - Google Patents

環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018104264A
JP2018104264A JP2017100134A JP2017100134A JP2018104264A JP 2018104264 A JP2018104264 A JP 2018104264A JP 2017100134 A JP2017100134 A JP 2017100134A JP 2017100134 A JP2017100134 A JP 2017100134A JP 2018104264 A JP2018104264 A JP 2018104264A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
cement composition
amount
clinker
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017100134A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6953787B2 (ja
Inventor
貴康 伊藤
Takayasu Ito
貴康 伊藤
玲 佐々木
Rei Sasaki
玲 佐々木
小西 和夫
Kazuo Konishi
和夫 小西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ube Industries Ltd filed Critical Ube Industries Ltd
Publication of JP2018104264A publication Critical patent/JP2018104264A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6953787B2 publication Critical patent/JP6953787B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P40/00Technologies relating to the processing of minerals
    • Y02P40/10Production of cement, e.g. improving or optimising the production methods; Cement grinding
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02WCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
    • Y02W30/00Technologies for solid waste management
    • Y02W30/50Reuse, recycling or recovery technologies
    • Y02W30/91Use of waste materials as fillers for mortars or concrete

Landscapes

  • Curing Cements, Concrete, And Artificial Stone (AREA)

Abstract

【課題】原料の一部として廃棄物や産業副産物を十分に有効利用できるとともに製造過程におけるCO発生量を十分に低減できる環境負荷低減クリンカーおよびセメント組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る環境負荷低減クリンカーは、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるCA量が11質量%以上22質量%以下、Fe量が3.9質量%未満、CAF量が6〜11質量%、CS量が40〜60質量%である。本発明に係るセメント組成物は、上記環境負荷低減クリンカーと、石膏と、石灰石及び/またはフライアッシュと、高炉水砕スラグとを含み、前記高炉水砕スラグの含有量がセメント組成物100質量部に対して5〜80質量部である。
【選択図】図10

Description

本発明は、セメントクリンカー、特に環境負荷低減クリンカーに関する。また、本発明は、環境負荷低減クリンカーを含むセメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法に関する。
従来、一般的なセメント系地盤改良材は、ポルトランドセメントクリンカーを含むポルトランドセメントをベースに製造されている。特許文献1,2は、固化処理土からの六価クロムの溶出量を低減可能な固化材を開示する。特許文献3は、CS含有量が35〜65質量%、CA量が10〜20質量%、Fe含有量が2質量%以下、Al/Fe(鉄率)が3以上であるセメント組成物と、石膏と、高炉スラグとを含む地盤改良材を開示する。
特開2010−202463号公報 特開2011−195714号公報 特開2005−105234号公報
現状のポルトランドセメントクリンカーは、ポルトランドセメントの品質規格(水和熱、強度、流動性)を満足するための制約を受け、原料として使用できる廃棄物原単位が限定される。また、セメントの強度発現性の面から、クリンカー鉱物のうちCSの含有量を一定の範囲内とするため、原料としての石灰石原単位を大幅に低減したり、焼成温度を大幅に低くしたりすることが難しく、製造におけるCO発生量が多くなるという問題がある。
例えば、上記特許文献1,2に記載のクリンカーの水硬率は2.2以上であり、当該クリンカーの焼成温度は普通ポルトランドセメントクリンカーや早強ポルトランドセメントクリンカーと同程度である。すなわち、特許文献1,2に記載のクリンカーは、比較的高温で実施される焼成プロセスを経て製造されるものであり、CO発生量の低減の点において改善の余地があった。
本発明は、原料の一部として廃棄物や産業副産物を従来と同等以上に有効利用できるとともに製造過程におけるCO発生量を十分に低減できる環境負荷低減クリンカーを提供することを目的とする。また、本発明は、上記環境負荷低減クリンカーを用いて製造され、十分な強度発現性と低減された水和発熱量であるセメント組成物及びその製造方法、並びに当該セメント組成物を使用した地盤改良方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるCA量が11質量%を超え22質量%以下、Fe量が3.9質量%未満、CAF量が6〜11質量%、CS量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカーはその原料として石炭灰などの廃棄物を有効に利用でき、且つ製造時のCO発生量が低減され、さらに当該クリンカーから製造したセメント組成物は良好な強度発現性でありながら水和発熱量が低減されることを知見した。
すなわち、本発明により、以下が提供される。
[1]水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるCA量が11質量%を超え22質量%以下、Fe量が3.9質量%未満、CAF量が6〜11質量%、CS量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカー。
[2]ケイ酸率(SM)の下限値が1.50であり、鉄率(IM)の下限値が2.5であり、ボーグ式にて算定されるCAF量の上限値が10質量%である、[1]に記載の環境負荷低減クリンカー。
[3][1]又は[2]に記載の環境負荷低減クリンカーと、石膏と、石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含むセメント組成物であって、当該セメント組成物100質量部に対する前記高炉スラグの含有量が5〜80質量部、当該セメント組成物100質量部に対する前記石灰石の含有量が1〜10質量部、当該セメント組成物100質量部に対するSO量が1.2〜15.0質量部である、セメント組成物。
[4]フライアッシュを含み、当該セメント組成物100質量部に対する前記フライアッシュの含有量が0.5〜10質量部である、[3]に記載のセメント組成物。
[5]ボーグ式で算定されるCA量が11質量%超18質量%以下のポルトランドセメントクリンカーを20質量%以上80質量%以下含み、CS量が40〜55質量%、CAが11質量%を超え18質量%以下であることを特徴とする、[3]又は[4]に記載のセメント組成物。
[6]フライアッシュを含み、前記フライアッシュがブレーン比表面積3000〜10000cm/gであることを特徴とする[3]〜[5]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[7]前記セメントクリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量は8.0質量%未満である、[3]〜[6]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[8]前記セメントクリンカーのモリブデン含有量は30mg/kg以下、全クロム含有量は100mg/kg以下、鉛含有量は100mg/kg以下である、[3]〜[7]のいずれか1項に記載の環境負荷低減クリンカー。
[9]熱重量測定において、20℃から115℃までの重量減少が0.2%〜1.0%、200℃から350℃までの重量減少が1.0%以下であり、
コンダクションカロリーメーターで測定した接水から15分間での水和発熱量が3.8J/g以下である、[3]〜[8]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[10]吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該セメント組成物100gに対して4.90g以下であり、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異が当該セメント組成物100gに対して1.90g以下である、[3]〜[9]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[11]更に砂と、水とを含む[3]〜[10]のいずれか1項に記載のセメント組成物。
[12]水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるCA量が11質量%を超え22質量%以下、Fe量が3.9質量%未満、CAF量が6〜11質量%、CS量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカーが得られるように原料を調合する原料調合工程と、1200〜1550℃の焼成温度で前記原料を焼成することによって前記環境負荷低減クリンカーを得る焼成工程と、前記環境負荷低減クリンカーと、少なくとも石膏とを含む混合物を粉砕することによってセメント組成物を得る粉砕工程とを含む、セメント組成物の製造方法。
[13]前記原料は、Al量が10質量%以上、SiO/Al質量比が5.0以下である廃棄物又は副産物を220〜600kg/t−cl’と、Fe量が30質量%以上である鉄原料を30kg/t−cl’以下と、石灰石を800〜1200kg/t−cl’とを含む、[12]に記載のセメント組成物の製造方法。
[14]前記粉砕工程における前記混合物は、前記環境負荷低減クリンカーと、前記石膏と、高炉スラグと、粉砕助剤として有機系粉砕助剤及び/又は水とを含み、前記環境負荷低減クリンカーと前記石膏と前記高炉スラグとの合計量100質量部に対し、前記混合物の前記有機系粉砕助剤の含有量は1.0質量部以下であり、前記混合物の前記水の含有量は0.5〜5.0質量部である、[12]又は[13]に記載のセメント組成物の製造方法。
[15]前記粉砕工程が、前記環境負荷低減クリンカーと、CA量が11質量%以下のポルトランドセメントクリンカーとを、質量比で2:8〜8:2に調整して混合しながら、同時に粉砕する工程を含む、[12]〜[14]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[16]前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水蒸気吸着量を測定する工程を更に含む、[12]〜[15]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[17]前記粉砕工程後、前記セメント組成物の熱重量減少量を測定する工程を更に含む、[12]〜[16]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[18]前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水和発熱量を測定する工程を更に含む、[12]〜[17]のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
[19][3]〜[11]のいずれか一項に記載のセメント組成物を用いる地盤改良方法。
[20]水/セメント組成物の質量比が0.2〜10.0のスラリーを用いて土壌を固化することを含む、[19]に記載の地盤改良方法。
[21]SO含有量が0.3質量%を超えて1.6質量%以下である、[1]に記載の環境負荷低減クリンカー。
[22]RO含有量が0.3質量%を超えて1.2質量%以下である、[1]又は[21]に記載の環境負荷低減クリンカー。
[23][21]又は[22]に記載の環境負荷低減クリンカーと、石膏と、石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含むセメント組成物。
本発明によれば、廃棄物や産業副産物を原料の一部として有効利用でき且つ製造過程においてCO発生量を低減できる環境負荷低減クリンカーが提供される。また、本発明によれば、上記環境負荷低減クリンカーを用いて製造されたセメント組成物及びその製造方法、並びに当該セメント組成物を使用した地盤改良方法が提供される。
参考例14の水蒸気吸着量測定結果を示すグラフである。 参考例15の水蒸気吸着量測定結果を示すグラフである。 参考例1〜7の熱重量測定結果を示すグラフである。 参考例1〜7の熱重量測定結果を示すグラフである。 参考例1〜7の水和発熱測定結果(発熱速度)を示すグラフである。 参考例1〜7の水和発熱測定結果(発熱量)を示すグラフである。 参考例1〜7の熱重量測定結果と見掛け粘度との関係を示すグラフである。 参考例1〜7の水和発熱測定結果と見掛け粘度との関係を示すグラフである。 比較例1及び実施例5の断熱温度上昇量の測定結果を示すグラフである。 比較例1及び実施例1、3、5〜9のモルタル圧縮強さと終局断熱温度上昇量との関係を示すグラフである。 比較例2及び実施例10〜16のセメント組成物の材齢28日モルタル圧縮強さと終局断熱温度上昇量との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態においては、セメントクリンカー及びこれを含むセメント組成物を例示するが、本発明に係るセメントクリンカー(環境負荷低減クリンカー)の用途は特に限定されず、当該セメントクリンカーを使用して各種ポルトランドセメント、混合セメント(高炉セメント、フライアッシュセメントなど)、地盤改良材などを製造してもよい。
<セメントクリンカー>
本実施形態のセメントクリンカーは環境負荷低減クリンカー(以下、「セメントクリンカー」という。)であって、水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるCA量が11質量%を超え22質量%、Fe量が3.9質量%未満、CAF量が6〜11質量%、CS量が40〜60質量%である。本実施形態のセメントクリンカーによれば、廃棄物や産業副産物を原料の一部として有効利用でき且つ製造過程においてCO発生量を低減できる。
セメントクリンカーの水硬率(HM)は、以下の式(1)で算出される。セメントクリンカーの水硬率は、1.75〜2.20(1.75以上2.20以下)である。水硬率が1.75未満であるとセメント組成物の水硬性が低下し強度発現性が不十分となりやすい。他方、水硬率が2.20を超えるとセメントクリンカーの製造プロセスにおける焼成温度を十分に低温化できない。セメントクリンカーの水硬率は、好ましくは1.85〜2.20であり、より好ましくは1.95〜2.20であり、更に好ましくは2.00〜2.20であり、特に好ましくは2.10〜2.15である。
HM=CaO/(SiO+Al+Fe)・・・(1)
セメントクリンカーのケイ酸率(SM)は、以下の式(2)で算出される。セメントクリンカーのケイ酸率は、1.30以上2.80未満である。ケイ酸率が1.30未満であると適正な組成のセメントクリンカーが得られ難い。他方、ケイ酸率が2.80以上であると従来のポルトランドセメントクリンカーと比較して廃棄物使用量を高めることが難しく、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。セメントクリンカーのケイ酸率は、好ましくは1.50〜2.70であり、より好ましくは2.00〜2.65であり、更に好ましくは2.33〜2.60であり、特に好ましくは2.40〜2.50である。
SM=SiO/(Al+Fe)・・・(2)
セメントクリンカーの鉄率(IM)は、以下の式(3)で算出される。セメントクリンカーの鉄率は、2.1〜4.0である。鉄率が2.1未満であると従来のポルトランドセメントクリンカーと比較して廃棄物又な産業副産物の使用量を高めることが難しく、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。他方、鉄率が4.0を超えるとセメントクリンカーを含むセメント組成物に水を添加して得られるスラリーの流動性が悪化したり、水和発熱量が高くなり過ぎたりする。セメントクリンカーの鉄率は、好ましくは2.3〜4.0であり、より好ましくは2.5〜3.5であり、更に好ましくは2.70〜3.0である。
IM=Al/Fe・・・(3)
本実施形態のセメントクリンカーは、CA、CAF、CS及びCSを含有するものであり、その組成は、ボーグ式により算出することができる。ボーグ式は、セメントクリンカー中の主要な四鉱物の含有量を求める計算式である。セメントクリンカーの場合のボーグ式は、下記のように表される。
S量=(4.07×CaO)−(7.60×SiO)−(6.72×Al)−(1.43×Fe
S量=(2.87×SiO)−(0.754×CS)
A量=(2.65×Al)−(1.69×Fe
AF量=3.04×Fe
式中の「CaO」、「SiO」、「Al」及び「Fe」は、それぞれ、セメントクリンカーにおけるCaO、SiO、Al及びFeのセメントクリンカー全体質量に対する含有割合(質量%)である。これらの含有割合は、JIS R 5202(2010)「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定することができる。
本実施形態のセメントクリンカーは、ボーグ式にて算定されるCA量が11質量%を超え22質量%以下である。CA量が11質量%未満であるとセメント組成物の強度発現性が不十分になるとともにセメントクリンカーの製造プロセスにおける焼成温度を十分に低温化できない。セメントクリンカーのCA量は、好ましくは12〜20質量%であり、より好ましくは13〜18質量%であり、更に好ましくは14〜18質量%以下であり、特に好ましくは15質量%を超え17質量%以下である。なお、セメントクリンカーのCA量が22質量%を超えるとセメントクリンカーを含むセメント組成物に水を添加して得られるスラリーの流動性が悪化したり、発熱量が増加し過ぎる場合がある。
本実施形態のセメントクリンカーは、ボーグ式にて算定されるCAF量が6〜11質量%である。CAF量が6質量%未満であるとセメントクリンカーの製造プロセスにおける焼成温度を十分に低温化できない。他方、CAF量が11質量%を超えるとセメント組成物の強度発現性が低下するほか、環境基準に定められる六価クロム等の重金属含有量が増加する。CAF量は、好ましくは3〜10質量%であり、より好ましくは4〜8.5質量%であり、更に好ましくは5〜8質量%であり、更により好ましくは6〜7.5質量%であり、特に好ましくは6〜7質量%である。
本実施形態において、CA量及びCAF量の合計量は21〜35質量%であることが好ましい。この合計量が21質量%未満であるとセメントクリンカー原料として使用する粘土代替廃棄物の量が少なくなり、資源循環型社会への貢献が小さくなる。他方、この合計量が35質量%を超えるとセメント組成物の強度発現性及び流動性が低下するほか、セメントクリンカーの融液量が多くなり、通常のロータリーキルンで安定的に製造することが難しくなる。CA量及びCAF量の合計量は、より好ましくは24〜32質量%であり、更に好ましくは27〜30質量%である。
本実施形態において、CS量は好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは11〜45質量%であり、更に好ましくは15〜40質量%である。CS量が10質量%未満であると長期的な強度発現性が不十分となりやすく、他方、50質量%を超えると短期的な強度が低下する恐れがある。CS量は好ましくは40〜60質量%であり、より好ましくは45〜55質量%であり、更に好ましくは50〜53質量%である。CS量が40質量%未満であると強度発現性が不十分となりやすく、他方、60質量%を超えると発熱量の増加に伴う収縮量の増大により強度発現性が不十分となる恐れがあるほか、間隙相量が十分でなくなることで焼成温度が上がる恐れがある。
本実施形態のセメントクリンカーは、Fe量が3.9質量%未満であることが好ましい。より好ましくは0.1〜3.5質量%、更に好ましくは1〜3質量%、特に好ましくは2〜2.5質量%である。このようなFe量のセメントクリンカーは、製造時に多量の石炭灰が使用可能である。
本実施形態のセメントクリンカーは、SO含有量が0.3質量%を超えて1.6質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4〜1.2質量%、さらに好ましくは0.5〜1.1質量%である。このようなSO含有量であるセメントクリンカーを使用すれば、断熱温度上昇量を抑えながら優れた圧縮強さを発現するセメントを製造することができる。
本実施形態のセメントクリンカーは、RO(全アルカリ)含有量が0.3質量%を超えて1.2質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4〜1.0質量%、さらに好ましくは0.5〜0.8質量%である。このようなRO含有量であるセメントクリンカーを使用すれば、断熱温度上昇量を抑えながら優れた圧縮強さを発現するセメントを製造することができる。なお、RO含有量はNaO含有量とKO含有量とから以下の(4)式によって算出される。
O=NaO+0.658×KO・・・(4)
本実施形態のセメントクリンカー中のRO含有量は、SO含有量に応じた特定範囲であることがより好ましい。具体的には、SO含有量が0.3質量%超1.0質量%以下である場合はRO含有量が0.3質量%超0.9質量%以下であることがより好ましく、SO含有量が1.0質量%超1.6質量%以下である場合はRO含有量が0.8〜1.2質量%であることがより好ましい。RO含有量がこのような範囲のセメントクリンカーであれば、断熱温度上昇量を抑えながら優れた圧縮強さを発現するセメントを製造することができる。
セメントクリンカーにおける遊離石灰含有量(f.CaO量)は、強度発現性の観点から、なるべく少ないことが好ましい(例えば1質量%以下)。ただし、このセメントクリンカーを地盤改良材の調製に使用する場合、ポルトランドセメントの調製に使用する場合と比較し、セメントクリンカーは遊離石灰を多く含有してもよい。この場合、セメントクリンカーの遊離石灰含有量の上限値は好ましくは8.0質量%であり、より好ましくは6.0質量%であり、更に好ましくは5.0質量%であり、特に好ましくは4.5質量%である。他方、セメントクリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量の下限値は好ましくは0質量%であり、より好ましくは0.1質量%であり、更に好ましくは0.2質量%である。セメントクリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量が8.0質量%以下であれば、セメントクリンカーを地盤改良材として使用した場合に従来品と同等以上の強度発現性を確保できるとともに、その製造過程において十分に低い温度で焼成することができ、CO発生量を低減できる。
セメントクリンカーにおけるモリブデン含有量は可能な限り少ないことが好ましく、例えば30mg/kg以下であることが好ましい。モリブデン含有量が30mg/kgを超えるとセメント組成物を地盤改良材として使用した場合に固化処理条件によっては固化処理土からのモリブデン溶出量が増大する恐れがある。なお、セメントクリンカーにおけるモリブデン含有量を例えば5mg/kg未満にしようとすると廃棄物及び産業副産物のセメントクリンカー原料としての調合量が少なくなり、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。十分に低い製造原価及び十分に低いモリブデン溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおけるモリブデン含有量は好ましくは6〜28mg/kgであり、より好ましくは6〜24mg/kgであり、特に好ましくは6〜10mg/kgである。
セメントクリンカーにおける全クロム含有量は可能な限り少ないことが好ましく、例えば100mg/kg以下であることが好ましい。ここで、全クロム含有量とは、セメントクリンカー中に含まれる三価クロムや六価クロム等の価数の異なる全てのクロムの合計含有量をいう。セメントクリンカーにおける全クロム含有量が100mg/kgを超えると、セメント組成物を地盤改良材として使用した場合に固化処理条件によっては固化処理土からの六価クロム溶出量が増大する恐れがある。なお、セメントクリンカーにおける全クロム含有量を例えば30mg/kg未満にしようとすると廃棄物及び産業副産物のセメントクリンカー原料としての調合量が少なくなり、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。十分に低い製造原価及び十分に低い六価クロム溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおける全クロム含有量は好ましくは40〜65mg/kgであり、より好ましくは43〜62mg/kgである。
セメントクリンカーにおける六価クロム含有量は、20〜45mg/kgであることが好ましい。全クロム含有量と同様に、六価クロム含有量はできるだけ少ないことが好ましいが、セメントクリンカーにおける六価クロム含有量が20mg/kg未満では、セメントクリンカー原料に使用できる廃棄物及び産業副産物の量が少なくなり、製造原価が上がる傾向がある。一方、セメントクリンカーにおける六価クロム含有量が45mg/kgを超えると、セメント組成物を地盤改良材として使用した場合に固化処理土からの六価クロム溶出量が増大する傾向がある。十分に低い製造原価及び十分に低い六価クロム溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおける六価クロム含有量は好ましくは25〜40mg/kgであり、より好ましくは30〜35mg/kgである。
セメントクリンカーにおける鉛含有量は可能な限り少ないことが好ましく、例えば100mg/kg以下であることが好ましい。セメントクリンカーにおける鉛含有量が100mg/kgを超えると、セメント組成物を地盤改良材として使用した場合に固化処理条件によっては固化処理土からの鉛溶出量が増大する恐れがある。なお、セメントクリンカーにおける鉛含有量を例えば10mg/kg未満にしようとすると廃棄物及び産業副産物のセメントクリンカー原料としての調合量が少なくなり、セメントクリンカーの製造原価が上がってしまう。十分に低い製造原価及び十分に低い鉛溶出量を両立させる観点から、セメントクリンカーにおける鉛含有量は好ましくは10〜100mg/kgであり、より好ましくは30〜70mg/kgである。
上述のとおり、本実施形態に係るセメントクリンカーは、鉄率(IM、Al/Fe)が比較的高く(2.1〜4.0)且つCA量((2.65×Al)−(1.69×Fe))が比較的多い(11質量%超)。つまり、本実施形態のセメントクリンカーは原燃料から持ち込まれるAlの量がFeの量と比較して多いといえる。特に、CA(アルミネート相)は急速に水和反応が進むため、CA量が多いセメントクリンカーを含むセメント組成物に水を添加してスラリーを調製する場合、スラリーの流動性が不十分となる場合がある。スラリーの流動性の十分に確保するため、また発熱を十分抑制するため、換言すると、セメントクリンカーに含まれるCAの水和活性を適度に抑制するため、セメントクリンカーを意図的に風化させる処置を施してもよい。この処置はセメントクリンカーを対象に実施してもよいし、セメント組成物を製造する過程において実施してもよい(後述の「粉砕工程」参照)。
<セメント組成物>
本実施形態のセメント組成物は、上記セメントクリンカーと石膏とを含む。セメント組成物における石膏の質量割合は、セメントクリンカー100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは2〜20質量部であり、更に好ましくは3〜10質量部、特に好ましくは4〜7質量部である。セメント組成物における石膏の質量割合が1質量部未満であると固化処理土の強度発現性が不十分となりやすい。なお、セメント組成物における石膏の質量割合が増えるほど、固化処理土の強度発現性は向上する傾向があるが、30質量部を超えると添加効果が飽和する。
上記セメント組成物に使用される石膏の形態は、特に限定されるものでなく、二水塩、半水塩、無水塩のいずれも使用可能である。石膏の具体例としては、天然石膏や排煙脱硫処理によって副生する副産石膏、天然無水石膏、ふっ酸の製造過程で副産するふっ酸無水石膏等が挙げられる。セメント組成物を地盤改良材としてスラリー工法で使用する場合には、半水石膏の使用量をなるべく低減し、主に二水塩又は無水塩を用いることが好ましい。例えば、セメント組成物に含まれる全石膏に対する半水石膏の割合は好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは0.1〜30質量%であり、更に好ましくは0.5〜20質量%である。半水石膏の割合を40質量%以下にすることで、セメント組成物に水を加えてスラリーを調製する際、スラリーに強張りが生じることを抑制できる。
上記のように、セメント組成物を地盤改良材として使用する場合のセメント組成物におけるSO量は、強度発現性の観点からセメント組成物中100質量部に対して好ましくは1〜15質量部であり、より好ましくは1.1〜10質量部であり、更に好ましくは1.3〜8質量部であり、更により好ましくは1.4〜4質量部であり、特に好ましくは1.6〜2質量部である。セメント組成物のSO量が上記範囲となるように石膏の配合量を調整すればよい。
上記セメント組成物は、適度な量の高炉スラグを更に含むことが好ましい。高炉スラグの具体例として、高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ等が挙げられる。セメント組成物における高炉スラグの含有量は、セメント組成物100質量部に対して好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは10〜70質量部であり、更に好ましくは20〜60質量部、特に好ましくは30〜50質量部である。
セメント組成物における高炉スラグの質量割合が5質量部未満では産業副産物(高炉スラグ)の有効利用が不十分となりやすく、また地盤改良材として使用すると、関東ロームのような火山灰質粘性土を処理する場合、固化処理条件によってはクロムなどの重金属の溶出量の低減効果が不十分となりやすい。他方、セメント組成物における高炉スラグの質量割合が80質量部を超えると、固化処理土の強度が不十分となりやすい。
上記セメント組成物は石灰石、又はフライアッシュなどの石炭灰を含むことが好ましい。セメント組成物100質量部に対する石灰石の含有量は1〜10質量部、好ましくは1〜6質量部、より好ましくは2〜5質量部、更に好ましくは3〜4質量部である。セメント組成物100質量部に対する石炭灰の含有量は0.5〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、より好ましくは3〜6質量部である。このような範囲であれば、強度発現性を維持しながら、水和発熱量の低減も可能となる。また、石灰石と石炭灰とを共に含むことがより好ましく、石灰石とフライアッシュとを共に含むことが更に好ましく、高炉スラグと石灰石とフライアッシュとを共に含むことが特に好ましい。
上記セメント組成物に使用される石灰石は特に限定されないが、JIS R 5210に規定される石灰石などが好適に使用可能である。
上記セメント組成物に使用される石炭灰は特に限定されないが、JIS A 6201に規定されるフライアッシュを使用することができる。フライアッシュのブレーンは強度発現性と流動性の観点から、3000〜10000cm/gであり、好ましくは4500〜9500cm/gであり、さらに好ましくは5000〜9000cm2/g、最も好ましくは6000〜9000cm/gである。
上記セメント組成物は水と砂、又は骨材などを含むこともできる。すなわち、モルタル又はコンクリートとして使用することが可能である。
<セメント組成物の製造方法>
上記セメント組成物の製造方法について説明する。この製造方法は、原料調合工程と、焼成工程と、粉砕工程とをこの順序で含む。原料調合工程と焼成工程を経ることによってセメントクリンカーが製造され、その後の粉砕工程を経ることでセメント組成物が製造される。
(原料調合工程)
原料調合工程は、諸率(水硬率、ケイ酸率及び鉄率)が上記範囲であり且つボーグ式によって算定される構成化合物量(CA量及びCAF量)が上記範囲であるセメントクリンカーが得られるように原料を調合する工程である。つまり、この工程では、所望の物性(諸率及び構成化合物量)のセメントクリンカーが得られるように原料を選択するとともにその使用量(原料原単位)を調整する。
セメントクリンカーの原料として石灰石、珪石、粘土系廃棄物等を主に使用する。粘土系廃棄物としては石炭灰、建設発生土、スラグ等が挙げられる。ここで、通常のポルトランドセメントクリンカーで使用される銅カラミや鉄精鉱等の鉄原料は極力使用量を抑える。鉄原料の使用量をなるべく少なくすることで、鉄原料に含まれる重金属がセメントクリンカーに持ち込まれることを十分に抑制できる。
セメントクリンカー1トン当たりの原料原単位は以下の範囲であることが好ましい。
・石灰石:800〜1300kg、より好ましくは900〜1200kg、更に好ましくは1000〜1150kg。
・珪石:0〜100kg、より好ましくは0〜50kg、更に好ましくは0〜20kg。
・粘土系廃棄物:220〜600kg、より好ましくは250〜500kg、更に好ましくは300〜450kg。
・鉄原料:0〜30kg、好ましくは0〜20kg、更に好ましくは0〜10kg、特に好ましくは0kg。
粘土系廃棄物(粘土系産業副産物も含む。)のAl量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは10〜70質量%であり、更に好ましくは15〜65質量%であり、特に好ましくは25〜60質量%である。粘土系廃棄物のSiO2/Al23 質量比は、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは1.0〜4.0であり、更に好ましくは2.0〜3.0である。かかる粘土系廃棄物の具体例としては、石炭灰(例えば、フライアッシュ、ボトムアッシュ)などが挙げられる。なお、粘土系廃棄物として、Feを3質量%以上(より好ましくは4〜6質量%)含む石炭灰等を選択して用いることが好ましく、これによって鉄原料を使用しなくても、セメントクリンカーの造粒を容易にし、セメントクリンカーの粉化を抑制することができる。これにより、クーラーでの熱交換効率やダストの集塵効率を高めることができるため、より省エネで且つ安定してセメントクリンカーを製造することができる。
鉄原料のFe量は、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは30〜90質量%であり、更に好ましくは40〜80質量%であり、特に好ましくは50〜70質量%である。かかる鉄原料の具体例としては、銅カラミ、鉄精鉱、転炉滓などが挙げられる。
原料調合工程ではセメントクリンカー中のSO含有量が0.3質量%を超えて1.6質量%以下となるように原料を選択し、その原単位を調整することが好ましい。SO含有量のより好ましい範囲は0.4〜1.2質量%、さらに好ましい範囲は0.5〜1.1質量%である。このようなSO含有量のセメントクリンカーを使用すれば、断熱温度上昇量を抑えながら優れた圧縮強さを発現するセメントを製造することができる。SO含有量の調整に使用できる原料としては汚泥、中和滓、コーススラグ、ファインスラグ、硫酸カルシウム水和物が挙げられるほか、焼成時の石炭使用量で調整することも出来る。
セメントクリンカー中のRO含有量が0.3質量%を超えて1.2質量%以下となるように原料を選択し、その原単位を調整することが好ましい。RO含有量のより好ましい範囲は0.4〜1.0質量%、さらに好ましい範囲は0.5〜0.8質量%である。このようなRO含有量であるセメントクリンカーを使用すれば、断熱温度上昇量を抑えながら優れた圧縮強さを発現するセメントを製造することができる。RO含有量の調整に使用できる原料としては粘土、建設発生土、都市ゴミ焼却灰のほか、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の各種アルカリ金属塩が挙げられる。
(焼成工程)
焼成工程は、原料調合工程を経て得られた原料を焼成することによってセメントクリンカー(環境負荷低減クリンカー)を得る工程である。この工程を実施するための設備としては、NSPキルン、SPキルンなどが挙げられる。これらの設備は、焼成温度を測定する焼点温度測定機と、f.CaO量測定機(もしくはf.CaO量分析装置)とを有していることが好ましい。
焼成温度は、好ましくは1200〜1550℃であり、より好ましくは1250〜1450℃であり、更に好ましい範囲としては1300〜1400℃であり、特に好ましくは1350〜1400℃である。焼成温度が1200℃未満であるとセメント組成物の強度発現性が不十分となりやすく、他方、1550℃を超えると焼成工程におけるCO排出量削減効果が不十分となりやすい。なお、焼成されたクリンカーを1〜12時間毎に採取し、そのf.CaO量を測定することが好ましい。f.CaO量をモニタリングし、その値が所定の条件(例えば8.0質量%未満)を満たすように、焼成条件(温度、時間、ロータリーキルンであれば回転速度など)を調整してもよい。f.CaO量は0.2〜8.0質量%、好ましくは0.3〜5.0質量%、更に好ましくは0.5〜3.0質量%、特に好ましくは1.0〜2.5質量%、最も好ましくは1.5〜2.0質量%である。
(粉砕工程)
粉砕工程は、セメントクリンカーと、少なくとも石膏とを含む混合物を粉砕することによってセメント組成物を得る工程である。この工程を実施するための設備としては、ボールミル、竪型ローラーミルなどが挙げられる。セメントクリンカーに石膏を添加する際に、高炉スラグや石灰石、フライアッシュを添加してもよい。
また、上記セメントクリンカーは、環境負荷低減型クリンカーと、CA含有量が11質量%未満のポルトランドクリンカーとを混合使用し、CA含有量およびCS含有量を調整しながら粉砕しても良い。CA量の異なるクリンカーを混合することにより、諸率ならびに鉱物組成の調整が容易になる。環境負荷低減クリンカーのCA含有量は、10質量%以上20質量%以下が好ましく、11質量%以上18質量%以下がより好ましく、12質量%以上16質量%以下が特に好ましく、13質量%以上15質量%以下が最も好ましい。CA含有量11質量%未満のポルトランドクリンカーのCA含有量は、11質量%未満が好ましく、9質量%以下がより好ましく、1質量%以上9質量%以下が特に好ましい。また、環境負荷低減クリンカーと、CA含有量11質量%未満のポルトランドクリンカーとの質量比は、2:8〜8:2が好ましく、3:7〜7:3がより好ましい。
ここで、セメント組成物中の石灰石の含有量は1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、更に好ましくは3〜5質量%である。また、セメント組成物における高炉スラグの含有量は、セメント組成物100質量部に対して好ましくは5〜80質量部であり、より好ましくは10〜70質量部であり、更に好ましくは20〜60質量部、特に好ましくは30〜50質量部である。さらに、フライアッシュは0.5〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、更に好ましくは2〜7質量部、特に好ましくは3〜5質量部であり、石灰石とともに添加することが好ましい。
粉砕工程を経て得られるセメント組成物のブレーン比表面積は、セメント組成物の適度な反応性の観点から、好ましくは2500〜5000cm/kgであり、より好ましくは3000〜4800cm/kgであり、更に好ましくは3500〜4600cm/kg、特に好ましくは4000〜4500cm/kgである。
セメント組成物を使用して調製されるスラリーの流動性を十分に確保する、あるいは水和発熱による悪影響を回避する観点から、セメント組成物の反応性を抑制する処理を粉砕工程において実施してもよい。例えば、粉砕工程においてセメントクリンカーに対して所定の粉砕助剤(有機系粉砕助剤及び/又は水)を添加して粉砕することにより、セメント組成物の表面を風化改質させればよい。有機系粉砕助剤として、ジエチレングリコール(DEG)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)などが挙げられる。粉砕助剤として、有機系粉砕助剤及び水をそれぞれ単独で使用してもよいし、これらを併用してもよい。粉砕工程において、粉砕助剤を使用することで粉砕時の温度を所定の温度以下(例えば120℃以下)に抑えることができるという効果も奏される。なお、粉砕工程における風化処理の代わりに、あるいは、これとともにサイロ内においてセメント組成物をエージングすることによってセメント組成物を風化させてもよい。
粉砕処理すべき混合物において、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグとの合計量100質量部に対する有機系粉砕助剤の含有量は好ましくは0〜1.0質量部であり、より好ましくは0.001〜0.1質量部であり、更に好ましくは0.02〜0.05質量部である。有機系粉砕助剤の含有量(添加量)が1.0質量部を超えるとセメント組成物の強度発現性が低下する恐れがある。
粉砕処理すべき混合物において、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグとの合計量100質量部に対する水の含有量は好ましくは0.5〜5.0質量部であり、より好ましくは0.3〜3.0質量部であり、更に好ましくは0.5〜2.0質量部である。水の含有量(添加量)が0.5質量部未満であるとセメント組成物のスラリー流動性及び強度発現性が改善されず、他方、5.0質量部を超えるとセメント組成物が固結し、スラリー流動性及び強度発現性が低下する恐れがある。
セメント組成物の風化の程度は、セメント組成物の水蒸気吸着量を測定することによって把握することができる。より具体的には、本実施形態のセメント組成物は、吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該セメント組成物100gに対して4.9g以下(より好ましくは0.1〜4.9g)であり且つ相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異(ヒステリシス)が当該セメント組成物100gに対して1.9g以下(より好ましくは0.1〜1.9g)であることが好ましい。ここで、相対圧0.9265での水蒸気吸着量はセメント組成物における水との反応性が高い成分の含有量(CA量及びf.CaO量)が反映される。一方、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異(ヒステリシス)は水蒸気吸着前のセメント組成物の水和活性が反映される。つまり、これらの二つの値が上記条件を満たすようにセメント組成物を意図的に風化させることで、セメント組成物を含むスラリーの流動性を十分に確保することができる。
セメント組成物の風化の程度は、セメント組成物の熱重量減少量を測定することによっても把握することができる。より具体的には、本実施形態のセメント組成物は、20℃から115℃までの重量減少が例えば0.2〜1.0%であり、好ましくは0.2〜0.7%であり、更に好ましくは0.2〜0.5%であり、特に好ましくは0.2〜0.3%である。また、本実施形態のセメント組成物は、200℃から350℃までの重量減少が例えば1.0%以下であり、好ましくは0.1〜0.7%であり、更に好ましくは0.2〜0.5%であり、特に好ましくは0.2〜0.4%である。ここで、20℃から115℃までの重量減少には付着水とセメント水和物(エトリンガイト)の量が反映される。一方、200℃から350℃までの重量減少にはセメント水和物(C−S−H)の量が反映される。つまり、これらの二つの値が上記条件を満たすようにセメント組成物を意図的に風化させることで、セメント組成物を含むスラリーやコンクリートの流動性を十分に確保することができ、且つ強度への影響を抑えることができる。また、水和発熱によるモルタルやコンクリートの温度上昇を抑制できる。
セメント組成物の風化の程度は、セメント組成物の水和発熱量を測定することによっても把握することができる。より具体的には、本実施形態のセメント組成物は、接水から15分間での水和発熱量が例えば−1.0〜3.8J/gであり、好ましくは−0.7〜3.5J/gであり、より好ましくは−0.6〜3.4J/gであり、更に好ましくは−0.5〜3.3J/gであり、最も好ましくは0〜3.2J/gである。ここで、接水から15分間での水和発熱量は水和の程度を反映している。つまり、この値が上記条件を満たすようにセメント組成物を意図的に風化させることで、セメント組成物を含むスラリーの流動性を十分に確保することができる。なお、意図的に風化したセメント組成物では、接水から15分間での水和発熱量がマイナスになる場合もある。これは、セメント組成物が水和する際の発熱よりも、含有する一部の化合物が水に溶解する際の吸熱が大きくなる為と考えられる。
本実施形態の製造方法は、粉砕工程後、セメント組成物の水蒸気吸着量、熱重量減少及び水和発熱量のいずれかを測定する工程を更に含むことが好ましい。この工程を実施することで、製造されたセメント組成物の風化の程度が反応性の観点から適度な範囲であるか否かを把握することができ、製品管理上、有用な情報を得ることができる。水蒸気吸着量の測定は高精度全自動ガス吸着装置(日本ベル社製、BELSORP18)、熱重量減少量は示唆熱熱重量分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG−DTA5200)、水和発熱量はコンダクションカロリーメーター(東京理工社製、TCG−26)を用いて実施することができる。
本実施形態の製造方法は、セメント組成物の製造に使用する石膏における半水石膏の割合(半水石膏化率)を測定する工程を更に含むことが好ましい。半水石膏化率が40質量%以下の石膏を使用することで、セメント組成物に水を加えてスラリーを調製する際、スラリーに強張りが生じることを抑制できる。
<モルタル・コンクリートでの使用方法>
上記セメント組成物はモルタルあるいはコンクリートとして使用できる。
上記セメント組成物100質量部に対して、砂あるいは骨材を200〜800質量部、水を25〜120質量部、好ましくは30〜100質量部、更に好ましくは40〜100質量部、コンクリート用減水剤を0(無添加)〜5質量%、好ましくは0〜2質量%加え、ミキサーにて十分練り混ぜて、モルタルあるいはコンクリートを作製する。
<地盤改良方法>
上記セメント組成物は地盤改良材として使用できる。当該セメント組成物を用いた地盤改良方法の実施形態について説明する。本実施形態の地盤改良方法は、上記のセメント組成物と、土壌とを混合する工程を備える。対象の土壌として、ローム、粘土、砂質土、有機質土などが挙げられる。土壌1mにする地盤改良材の混合量は、土壌の固化強度を十分に高める観点から、好ましくは30〜500kgであり、より好ましくは50〜450kgであり、更に好ましくは200〜400kgである。半水石膏化率の測定は、粉末エックス線回折測定による二水石膏ならびに半水石膏の定量、あるいは熱重量測定・示差熱分析(TG−DTA)装置により脱水温度、脱水量を測定することで実施することができる。
土壌と地盤改良材の混合方法は、従来の地盤改良材と同様に、粉体として土壌に添加して混合する、あるいは水を混ぜてスラリーとして土壌に混合することが可能である。水/セメント組成物の質量比は例えば0.2〜10.0であり、好ましくは0.4〜5.0であり、更に好ましくは0.6〜1.5である。この範囲を満たすことで地盤改良材を含むスラリーの流動性を十分に確保することができる。
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、表中の未記入の項目は未測定の項目である。
[1.セメントクリンカーの製造]
表1に示す化学組成の原料と、以下の試薬とを準備した。
(試薬)
・酸化アルミニウム:和光純薬株式会社製、試薬特級
表2に示す割合で各成分を調合して得られたクリンカー原料を以下のようにして電気炉で焼成することによってセメントクリンカー(K1〜K9)を得た。すなわち、1000℃の電気炉にクリンカー原料を投入し、最高焼成温度まで10℃/分で昇温した。最高焼成温度で30分間保持した後、電気炉から取り出した試料を空冷した。なお、表2に記載の「焼成温度」はここでいう最高焼成温度を意味する。
また、一部のクリンカー(K10〜14)は小型のキルン炉を用いて、最高焼成温度1350〜1500℃として焼成した。
また、一部の水準においては得られたクリンカー同士を混合することで化学組成を調整した。具体的には、K15はK12とK14とが質量比で39:61となるように、K16はK10とK14とが質量比で23:77となるようにそれぞれ混合して調製した。
得られたセメントクリンカーについて、JIS R5202:2010「セメントの化学分析方法」に準じて化学成分を測定し、クリンカーの諸率及び鉱物組成を以下の式により算出した。また、Cukα線により測定したクリンカーの粉末エックス線回折パターンをリートベルト解析することで鉱物組成(参考値)及びf.CaO量を算出し、f.CaO量から易焼成性を評価した。表3〜5にセメントクリンカーの化学成分、諸率及び鉱物組成を示す。
HM=CaO/(SiO+Al+Fe
SM=SiO/(Al+Fe
IM=Al/Fe
S=4.07×CaO−7.60×SiO−6.72×Al−1.43×
Fe
S=2.87×SiO−0.754×C
A=2.65×Al−1.69×Fe
AF=3.04×Fe
環境負荷低減クリンカー(K3、4、7,8,9、13、14)は、同じ温度で焼成したセメントクリンカー(K2、K6)と比較してf.CaO量が低減される、もしくはより高温で焼成したセメントクリンカー(K1)以下にまでf.CaO量が低減されており、易焼成性が向上している。
さらに、環境負荷低減セメントクリンカー(K3、4、7,8,9、13,14)は、クリンカー中のMo含有量は30mg/kg以下、全Cr含有量は100mg/kg以下、Pb含有量は100mg/kg以下となっており、K2,K6のセメントクリンカーよりも更に低減されている。
環境負荷低減セメントクリンカー(K3、4、7,8,9,13,14)は、水硬率(HM)を1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)を1.30以上2.50未満、鉄率(IM)を2.5〜10.0に設定することで、K1,2,5,6,10、11、12のセメントクリンカーと同等以上の量の石炭灰を原料の一部として使用することが可能となっている。
[2.セメント組成物の製造]
セメントクリンカー(K1,K2,K3,K4,K7,K8,K9)に石膏及び/又は高炉スラグを加え、表6に示す配合のセメント組成物を得た。石膏として、ふっ酸無水石膏(セントラル硝子製、SO量:58.1質量%、ブレーン比表面積:3700cm/g)を用いた。高炉スラグとして、高炉スラグ微粉末(千葉リバーメント株式会社製、SO量:0.1質量%、硫化物硫黄含有量:0.861質量%、ブレーン比表面積:3460cm/g)を用いた。粉砕処理にはボールミルを使用し、有機系粉砕助剤としてジエチレングリコール(DEG)及び/又は水を使用した。表6に示すとおり、有機系粉砕助剤の添加量は、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグの合計量を基準(外割質量)とした。セメント組成物の粉末度はいずれもブレーン比表面積で4500±50cm/gとした。また、参考例1,2、13はK1とK2を2:1で混合したものを使用した。
また、セメントクリンカー(K10、14〜16)と、石膏と、石灰石及び/またはフライアッシュ(ブレーン:8520cm/g)と、高炉スラグとを混合し、表7に示す配合のセメント組成物を得た。なお、フライアッシュは、一般的なコンクリート用フライアッシュのブレーン値(3500〜4000cm/g程度)よりも大きいものを試作して使用した。また、粉砕処理にはボールミルを使用し、粉砕助剤としてDEG及び/または水を使用した。DEG及び水の添加量は、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグの合計量を基準(外割質量)とした。セメント組成物の粉末度はいずれもブレーン比表面積で3600〜4200cm/gとした。なお、実施例1、2、5〜9は、CA量が11%以上の環境負荷低減クリンカー(K14)と、CA量が11%未満のポルトランドクリンカーK10あるいは12とを混合し、CA量を調整したセメント組成物である。
[3.(1)セメント組成物を用いた固化処理土の作製]
対象土はローム(自然含水比:132.6%、湿潤密度:1.361g/cm、礫分:0.1%、砂分:11.0%、細粒分:88.9%)とし、ローム1mあたりセメント組成物の配合量が300kgとなるようにロームとセメント組成物を配合し、ホバートミキサーで3分間よく混合した後、円柱形の型枠に詰めて固化処理土供試体を作製した。
[3.(2)セメント組成物を用いたモルタルの作製および圧縮強さの測定]
モルタルの作製および圧縮強さの試験方法は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠した。
[3.(3)セメント組成物の断熱温度上昇測定]
セメント組成物22質量部と砂49質量部と水12質量部とを混合してモルタルを作製し、その発熱を断熱温度上昇試験装置を用いて測定した。モルタル作製直後から材齢3日経過時点までの断熱温度上昇量(℃)を終局断熱温度上昇上昇量(℃)とした(図9)。
[4.セメント組成物のスラリー粘性測定]
セメント組成物60質量部と水100質量部とを混合してスラリーを作製し、その見かけ粘度を回転式粘度計(ThermoFisherScientific社製、HAAKE RheoStress 1、測定温度20℃又は35℃、パラレルプレート直径60mm、せん断速度200s−1)にて測定した。
[5.固化処理土の強度試験]
固化処理土について、20℃で7日間及び28日間の養生後、針貫入試験機(丸東製作所製、SH−70)にて針の貫入量が10mmとなるときの貫入力を測定し、貫入勾配を算出した。更に、貫入勾配から固化処理土の強度を算出した。
なお、固化処理土の強度算出には以下の式を用いた。
A=94.248X1.2567
A:固化強度(N/mm
X:針貫入勾配(N/mm)=貫入力(N)/貫入量(mm)
[6.水蒸気吸着量の測定]
水蒸気吸着量は高精度全自動ガス吸着装置(日本ベル社製、BELSORP18)にてセメント組成物を40℃(真空下)で12時間脱気し、25℃で水蒸気吸着試験を行った。相対圧0.9265における水蒸気吸着量と、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線の水蒸気吸着量のヒステリシス(差異)を求めた。なお、セメント組成物に吸着した水蒸気量の体積から質量への換算には、以下の式を用いた。
B=C/(22.7×1000)×18×100
B:セメント組成物100gあたりの水蒸気吸着量(g/100g)
C:セメント組成物1gあたりの水蒸気吸着量(cm(STP)/g)
[7.熱重量測定]
「TGの20〜115℃の減量(質量%)」及び「TGの200〜350℃の減量(質量%)」は、10℃/分で昇温した場合の20〜115℃及び200〜350℃の範囲での重量減少分(質量%)である。なお、測定方法は、示差熱熱重量分析測定装置としてTG−DTA5200(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、直径20μmの孔を有する容量30μLのセル(アルミ容器)に、試料約20mg入れ、昇温速度10℃/分で室温(20℃)から500℃まで昇温した。なお、リファレンスとしてアルミ板(20mg)を用いた。
[8.水和発熱測定]
水和発熱量の測定方法は、コンダクションカロリーメーター(東京理工製、TCG−26)にてセメント組成物と水とを、水:セメント組成物=60:100の質量比で混合して35℃で接水から1時間後までの発熱量を測定した。
[9.試験結果]
[(1)固化材スラリー粘性]
表6にスラリー粘性測定結果と固化処理土の固化強度試験結果を示す。
参考例6,7、9〜12、14〜17、に係るセメント組成物では、普通ポルトランドセメントクリンカーを使用した参考例1、2、8、13と同等以上の固化強度が28日材齢で得られている。更に、粉砕助剤と水を併用して粉砕した参考例4、5、7、10、12、15、17に係るセメント組成物は、粉砕助剤のみで粉砕した参考例3、6、9、11、14、16に係るセメント組成物よりも見掛け粘度が小さくなることで流動性が向上し、更に7日材齢でも比較例4〜7を上回る固化強度が得られている。更に、参考例3〜7、9〜12、14〜17のセメント組成物は、通常のクリンカーよりも多量の廃棄物を使用し低温で焼成されたセメントクリンカーを使用していることから、廃棄物利用の拡大とCO排出量の削減によって環境負荷を低減することができる。
表8に参考例14(風化処理にDEG使用)と参考例15(風化処理にDEGと水を併用)のセメント組成物の水蒸気吸脱着測定の結果を示す。図1及び図2に参考例14及び参考例15において測定した吸着等温線をそれぞれに示す。図1及び図2に示すグラフの横軸は相対圧であり、縦軸は水蒸気の吸着量である。表8から読み取った相対圧0.9265及び0.1000における水蒸気吸着量を表6に示す。なお、表6中の水蒸気吸着量は、相対圧0.9265の参考例15を除き、表8に示すデータから二点の測定データの線形近似により内挿あるいは外挿することにより算出した。その際、相対圧0.1000よりも相対圧が低いデータと相対圧0.1000よりも相対圧の高いデータから、それぞれ相対圧0.1000に最も近い各1点のデータを使用した線形近似により相対圧0.1000における水蒸気吸着量を内挿した。一方、相対圧0.9265における水蒸気吸着量の算出には、相対圧0.9265に最も近い二点のデータを使用した線形近似により水蒸気吸着量を外挿した。
その結果、粉砕時にDEGと水を併用した参考例15のセメント組成物は、相対圧0.9265での水蒸気吸着量がセメント組成物100gあたり4.9g以下、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量のヒステリシスがセメント組成物100gあたり1.9g以下であった。一方、粉砕時に水を使用せず、DEGのみを使用した参考例14のセメント組成物は、相対圧0.9265における水蒸気吸着量がセメント組成物100gあたり4.9g超、相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量のヒステリシスはセメント組成物100gあたり1.9g超であった。
参考例に係るセメント組成物の熱重量測定と水和発熱測定の結果を表6に示す。粉砕助剤と水を併用して粉砕した参考例4、5、7に係るセメント組成物は、20℃〜115℃の重量減少が0.2〜1.0%と、粉砕助剤のみで粉砕した参考例3、6に係るセメント組成物よりも大きくなり、200℃〜350℃の重量減少は1.0%以下となった。接水から15分間の発熱量についても、参考例4、5、7は参考例3、6よりも小さい3.8J/g以下となった。
[(2)セメント組成物のモルタル圧縮強さおよび断熱温度上昇]
表7及び図10に、セメント組成物のモルタル圧縮強さと断熱温度上昇試験の結果ならびに関係を示す。
実施例1〜9のセメント組成物の圧縮強さは、いずれもJIS R 5211「高炉セメント」に規定される高炉セメントB種の規格値を満足し、市場に出回っている高炉セメントB種に相当する比較例1と同等レベルであるとともに、断熱温度上昇も比較例1に比べて低く抑えられている。
また、ボーグ式で算定されるCS量が51質量%と少ない環境負荷低減クリンカー(K14及びK16)を用いたセメント組成物(実施例3〜9)は、圧縮強さが良好でありながら断熱温度上昇量が少なくなった。中でも、環境負荷低減クリンカーとポルトランドクリンカーとを併用して鉱物組成を調整したセメント組成物(実施例8)は圧縮強さが比較例1と同等であるにも関わらず、終局温度上昇量は比較例1よりも5℃程度低くなった。
さらに、フライアッシュを5%含むセメント組成物(実施例9)は、実施例8に比べて圧縮強さは同等であるが、終局断熱温度上昇量が実施例8に比べて更に3℃程度低くなった。
セメント組成物の熱重量測定と水和発熱測定の結果を表7に示す。
粉砕助剤と水を併用して粉砕した実施例1〜4に係るセメント組成物は、20℃〜115℃の重量減少が0.3〜1.0%と、粉砕助剤のみで粉砕した比較例1に係るセメント組成物よりも大きく、200℃〜350℃の重量減少は1.0%以下となった。接水から15分間の発熱量についても、粉砕助剤と水とを併用した実施例1〜4は比較例1よりも小さくなった。
また、フライアッシュを添加した実施例9は水を併用して粉砕しなくても15分間の発熱量は2.1J/gと非常に低くなった。
本願発明に係るセメント組成物(実施例1〜9)は、地盤改良材として使用しても、優れた強度発現性とCr(VI)溶出抑制効果が得られる。
SO含有量は硫酸カルシウム二水和物(和光純薬工業株式会社製、和光一級)の配合量により、RO含有量は炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)の配合量によりそれぞれ調整し、最高焼成温度を1450℃とした以外はクリンカー(K1〜K9)と同様の条件で表9に示すクリンカー(K17〜K24)を焼成した。なお、SO含有量およびRO含有量の測定はJIS R5202「セメントの化学分析方法」に準拠した。焼成したクリンカーに表10に示す材料を加えて実施例1〜9と同様の手順でセメント組成物を製造し、モルタル圧縮強さならびに断熱温度上昇量の測定を行った。
SO含有量が0.3質量%超1.6質量%以下、RO含有量が0.3質量%超1.2質量%以下であるクリンカー(K21〜K24)から製造したセメント組成物は、そうでないクリンカー(K18〜K20)から製造したセメント組成物と比較して同等以下の断熱温度上昇量であるにもかかわらず、材齢28日のモルタル圧縮強さが向上した(図11)。

Claims (23)

  1. 水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるCA量が11質量%を超え22質量%以下、Fe量が3.9質量%未満、CAF量が6〜11質量%、CS量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカー。
  2. ケイ酸率(SM)の下限値が1.50であり、
    鉄率(IM)の下限値が2.5であり、
    ボーグ式にて算定されるCAF量の上限値が10質量%である、請求項1に記載の環境負荷低減クリンカー。
  3. 請求項1又は2に記載の環境負荷低減クリンカーと、石膏と、
    石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含むセメント組成物であって、
    当該セメント組成物100質量部に対する前記高炉スラグの含有量が5〜80質量部、
    当該セメント組成物100質量部に対する前記石灰石の含有量が1〜10質量部、
    当該セメント組成物100質量部に対するSO量が1.2〜15.0質量部である、セメント組成物。
  4. フライアッシュを含み、当該セメント組成物100質量部に対する前記フライアッシュの含有量が0.5〜10質量部である、請求項3に記載のセメント組成物。
  5. ボーグ式で算定されるCA量が11質量%超18質量%以下のポルトランドセメントクリンカーを20質量%以上80質量%以下含み、
    S量が40〜55質量%、CAが11質量%を超え18質量%以下である、
    ことを特徴とする、請求項3又は4に記載のセメント組成物。
  6. フライアッシュを含み、前記フライアッシュがブレーン比表面積3000〜10000cm/gであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のセメント組成物。
  7. 前記セメントクリンカーの遊離石灰(f.CaO)含有量は8.0質量%未満である、請求項3〜6のいずれか1項に記載のセメント組成物。
  8. 前記セメントクリンカーのモリブデン含有量は30mg/kg以下、全クロム含有量は100mg/kg以下、鉛含有量は100mg/kg以下である、請求項3〜7のいずれか1項に記載の環境負荷低減クリンカー。
  9. 熱重量測定において、20℃から115℃までの重量減少が0.2%〜1.0%、200℃から350℃までの重量減少が1.0%以下であり、
    コンダクションカロリーメーターで測定した接水から15分間での水和発熱量が3.8J/g以下である、請求項3〜8のいずれか1項に記載のセメント組成物。
  10. 吸着過程における相対圧0.9265での水蒸気吸着量が当該セメント組成物100gに対して4.90g以下であり、
    相対圧0.1000における吸着等温線と脱着等温線との水蒸気吸着量の差異が当該セメント組成物100gに対して1.90g以下である、請求項3〜9のいずれか1項に記載のセメント組成物。
  11. 更に砂と、水とを含む請求項3〜10のいずれか1項に記載のセメント組成物。
  12. 水硬率(HM)が1.75〜2.20、ケイ酸率(SM)が1.30以上2.80未満、鉄率(IM)が2.1〜4.0であり且つボーグ式にて算定されるCA量が11質量%を超え22質量%以下、Fe量が3.9質量%未満、CAF量が6〜11質量%、CS量が40〜60質量%である環境負荷低減クリンカーが得られるように原料を調合する原料調合工程と、
    1200〜1550℃の焼成温度で前記原料を焼成することによって前記環境負荷低減クリンカーを得る焼成工程と、
    前記環境負荷低減クリンカーと、少なくとも石膏とを含む混合物を粉砕することによってセメント組成物を得る粉砕工程とを含む、セメント組成物の製造方法。
  13. 前記原料は、
    Al量が10質量%以上、SiO/Al質量比が5.0以下である廃棄物又は副産物を220〜600kg/t−cl’と、
    Fe量が30質量%以上である鉄原料を30kg/t−cl’以下と、
    石灰石を800〜1200kg/t−cl’と、
    を含む、請求項12に記載のセメント組成物の製造方法。
  14. 前記粉砕工程における前記混合物は、前記環境負荷低減クリンカーと、前記石膏と、高炉スラグと、粉砕助剤として有機系粉砕助剤及び/又は水とを含み、
    前記環境負荷低減クリンカーと前記石膏と前記高炉スラグとの合計量100質量部に対し、前記混合物の前記有機系粉砕助剤の含有量は1.0質量部以下であり、前記混合物の前記水の含有量は0.5〜5.0質量部である、請求項12又は13に記載のセメント組成物の製造方法。
  15. 前記粉砕工程が、
    前記環境負荷低減クリンカーと、CA量が11質量%以下のポルトランドセメントクリンカーとを、質量比で2:8〜8:2に調整して混合しながら、同時に粉砕する工程を含む
    請求項12〜14のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
  16. 前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水蒸気吸着量を測定する工程を更に含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
  17. 前記粉砕工程後、前記セメント組成物の熱重量減少量を測定する工程を更に含む、請求項12〜16のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
  18. 前記粉砕工程後、前記セメント組成物の水和発熱量を測定する工程を更に含む、請求項12〜17のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
  19. 請求項3〜10のいずれか一項に記載のセメント組成物を用いる地盤改良方法。
  20. 水/セメント組成物の質量比が0.2〜10.0のスラリーを用いて土壌を固化することを含む、請求項19に記載の地盤改良方法。
  21. SO含有量が0.3質量%を超えて1.6質量%以下である、請求項1に記載の環境負荷低減クリンカー。
  22. O含有量が0.3質量%を超えて1.2質量%以下である、請求項1又は請求項21に記載の環境負荷低減クリンカー。
  23. 請求項21又は請求項22に記載の環境負荷低減クリンカーと、石膏と、石灰石および/またはフライアッシュと、高炉スラグとを含むセメント組成物。
JP2017100134A 2016-12-22 2017-05-19 環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法 Active JP6953787B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016249873 2016-12-22
JP2016249873 2016-12-22

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018104264A true JP2018104264A (ja) 2018-07-05
JP6953787B2 JP6953787B2 (ja) 2021-10-27

Family

ID=62785493

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017100134A Active JP6953787B2 (ja) 2016-12-22 2017-05-19 環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6953787B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022154348A (ja) * 2021-03-30 2022-10-13 Ube三菱セメント株式会社 混合セメント組成物、及びその製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005105234A (ja) * 2003-10-02 2005-04-21 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 地盤改良材
JP2010228926A (ja) * 2009-03-25 2010-10-14 Ube Ind Ltd セメント組成物及びその製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005105234A (ja) * 2003-10-02 2005-04-21 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 地盤改良材
JP2010228926A (ja) * 2009-03-25 2010-10-14 Ube Ind Ltd セメント組成物及びその製造方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
安藝朋子: "「省エネルギー型汎用セメントの開発」", セメント・コンクリート論文集, vol. 第68号, JPN6021005881, 2012, JP, pages 103 - 109, ISSN: 0004450606 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022154348A (ja) * 2021-03-30 2022-10-13 Ube三菱セメント株式会社 混合セメント組成物、及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6953787B2 (ja) 2021-10-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5800387B2 (ja) 土質改良材
JP6021753B2 (ja) 混合セメント
JP6947501B2 (ja) セメント組成物
JP6547455B2 (ja) 地盤改良材および地盤改良方法
JP3894780B2 (ja) セメント系グラウト組成物
JP2011020890A (ja) セメント組成物の水和熱低減方法及びセメント組成物の製造方法
JP5029768B1 (ja) セメント組成物及びその製造方法
JP2012246190A (ja) セメント組成物の製造方法
JP6953787B2 (ja) 環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法
JP5995992B2 (ja) セメント系固化材の製造方法
JP6980552B2 (ja) セメント組成物
JP6316576B2 (ja) セメント組成物
JP6663816B2 (ja) 高ビーライト系セメント組成物
JP7061415B2 (ja) セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法
JP5515329B2 (ja) セメントクリンカー、セメント系固化材、土壌の固化処理方法及びセメントクリンカーの製造方法
JP6536215B2 (ja) 地盤改良材及び地盤改良方法
JP6780797B1 (ja) セメントクリンカ及びセメント組成物
JP6981481B2 (ja) セメント組成物およびその製造方法
JP4744678B2 (ja) セメント混和材及びセメント組成物
JP6756150B2 (ja) 環境負荷低減クリンカー、セメント組成物及びその製造方法、並びに地盤改良方法
JP2013107780A (ja) セメントクリンカおよびセメント組成物
JP6823487B2 (ja) セメント組成物の製造方法、及びセメント組成物の品質評価方法
JP6683025B2 (ja) セメント組成物およびその製造方法
JP2014185040A (ja) セメント組成物
JP2014162696A (ja) セメント系固化材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200324

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210204

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210302

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210414

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20210506

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210831

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210913

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6953787

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350