JP6948132B2 - クラスト改質材 - Google Patents

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Description

本発明は、クラストの亀裂や皮剥れ等の損壊を抑制することにより、ベーカリー製品の好ましい外観を得られるようにクラストを改質することのできるクラスト改質材に関する。
消費者から、風味や食感が優れていることは勿論、その外観が好ましいベーカリー製品が求められている。総じて表面に張りがあって、クラストの亀裂や剥がれ等の損壊がなく、好ましい褐色の焼き色がみられる状態が、好ましいベーカリー製品の外観として消費者に受容されている。
しかし、近年では、ベーカリー製品の袋包装販売や、フィリングや具材をはさみ込んだり包含して販売するためにカットや穿孔等の2次加工を加える等、ベーカリー製品のクラスト部分が損壊しやすい状態での販売が多くなってきている。
とりわけ、損壊し易い層状構造を有するデニッシュやクロワッサンのようなペストリーや、硬質な外皮をもつフランスパンのようなリーンな組成のベーカリー製品では、クラストの亀裂や剥がれといった損壊が起こりやすく、これらが商品価値の低下につながりやすいため、ベーカリー製品の皮剥れや亀裂といった損壊を防止する手法が従来から検討されてきた。
特許文献1〜3には、クラスト部分の水分含量を高めることにより、ベーカリー製品の皮剥れを防止する手法が開示されている。これらの手法は、加熱によって生じるベーカリー生地の表面と内部の水分差を少なくすることで、得られるベーカリー製品のクラストの亀裂や皮剥れを抑える手法である。
特許文献4には、アルギン酸エステル、粉末卵黄及び加工澱粉を有効成分とするパン品質改良剤が開示されており、特許文献5には、グリシン及び糖を有効成分とする品質改良剤が開示されている。これらはそれぞれ、ベーカリー生地を調製する際に品質改良剤を生地中に練り込む手法である。
特許文献6には、パイ生地の表面を水溶性多糖類の水溶液で被覆する手法が開示されており、特許文献7には、アルカリ水溶液をペストリー生地に塗布しペストリー食品の製品強度を強化する手法が開示されている。
しかし、これらの先行技術には次のような課題があった。
特許文献1〜3に記載されているクラスト部分の水分含量を高める手法では、クラストの亀裂や皮剥れを抑制することができるものの、得られるベーカリー製品のクラストが分厚くなりやすく、歯触りや食感が硬くなりやすかった。
また、特許文献4に記載の手法及び特許文献5に記載の手法では、クラストの亀裂や皮剥れ等への抑制効果を示す品質改良剤を、ベーカリー生地中に練り込んでしまうため、クラスト部分に有効成分が乏しくなりやすく、クラストの亀裂や皮剥れが十分に抑制されない場合があった。
また、特許文献6に記載の手法では、十分に損壊が防止できるだけの濃度の水溶性多糖類溶液を使用すると、食感がねちゃついたりヒキのある食感になるという問題があった。また、特許文献7に記載の手法では、ペストリー生地の表面の澱粉質をアルカリ水溶液で強制的にα化させるため、強固な表面を得られるが脆くなりやすく、カット等の二次加工を行う場合においてクラストの亀裂や皮剥れが生じることが多かった。
そのため、クラストの亀裂や皮剥れ等の損壊を、二次加工を行ってもなお、十分に抑制・防止することのできる手法が求められている。
特公昭55−034656号公報 特開平02−167022号公報 特開平02−182145号公報 国際公開第2013/154030号 国際公開第2014/157111号 特開平04−287635号公報 特公昭58−032947号公報
本発明の課題は、ベーカリー製品のクラスト部分の亀裂や皮剥れ等の損壊を十分に抑制・防止することができるクラスト改質材を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討した結果、蛋白質と油脂の質量比を特定の比率としたO/W乳化油脂組成物をベーカリー生地表面に塗布することで、ベーカリー生地を加熱して得られるベーカリー製品の表面に強固な蛋白質の膜が形成され、クラストの皮剥れや亀裂の発生が防止されること、さらには、カット等の二次加工を行っても、クラストの皮剥れや亀裂といった損壊が抑制・防止されることを知見した。
本発明は、これらの知見に基づきなされたものであり、含有される蛋白質と油脂の質量比が1:2.0〜7.5であり、含有される油脂の20℃でのSFCが25未満であるO/W乳化油脂組成物からなり、ベーカリー生地表面に塗布するためのクラスト改質材を提供するものである。
また、本発明は、含有される蛋白質と油脂の質量比が1:2.0〜7.5であり、含有される油脂の20℃でのSFCが25未満であるO/W乳化油脂組成物を、ベーカリー生地の表面に塗布する、クラスト損壊抑制方法を提供するものである。
本発明によれば、ベーカリー製品の皮剥れや亀裂といったクラストの損壊を防止するクラスト改質効果を、ベーカリー製品の食感を悪化させることなく得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳述する。
本発明において、「ベーカリー製品」とは、小麦粉或いはその他の穀粉にイースト・食塩・水等を加え、必要に応じて発酵工程をとってベーカリー生地を得て、得られたベーカリー生地に加熱処理を加えたものを指し、カットや穿孔等の二次加工を加えたものや、フィリング・具材を挟んだり注入したものや、パーベイク製品も含む。
また、本発明において、「ベーカリー生地表面にクラスト改質材を塗布する」とは、刷毛等での塗布や、スプレー塗布、ベーカリー生地をクラスト改質材にくぐらせたり浸漬する等の適当な手法によって、ベーカリー生地表面を一定量のクラスト改質材で被覆することを意味する。
本発明のクラスト改質材について詳細に述べる。
本発明のクラスト改質材は、含有される蛋白質と油脂の質量比(前者:後者)が1:2.0〜7.5であり、含有される油脂の20℃でのSFCが25未満であるO/W乳化油脂組成物からなり、ベーカリー生地表面に塗布して用いることを特徴とする。
先ず、O/W乳化油脂組成物に含有される蛋白質について述べる。
本発明に用いることのできる蛋白質としては、特に限定されないが、例えば、α−ラクトアルブミンやβ−ラクトグロブリン、血清アルブミン等のホエイ蛋白質、カゼイン、その他の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦蛋白質、大豆蛋白質や、その他動物性及び植物性蛋白質等の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて、一種の蛋白質単独で又は二種以上の蛋白質の混合物として、或いは一種ないし二種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で用いることができる。
これらの蛋白質の中でも、大豆蛋白質、とりわけ分離大豆蛋白質を用いると、クラスト部に強固な蛋白の膜が形成され、特にクラスト改質効果が高まるため好ましい。
分離大豆蛋白質を用いた場合に特に高い効果が奏される具体的な機序については不明だが、分離大豆蛋白質を用いたO/W乳化油脂組成物からなるクラスト改質材が、ベーカリー生地の加熱処理時に生地表面で解乳化し、それに伴って分離大豆蛋白質を主とするゲル形成が生じ、これにより得られるベーカリー製品のクラスト部に強固な蛋白質の膜が形成されるものと推測される。
蛋白質含量は、O/W乳化油脂組成物基準で、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが最も好ましい。また、蛋白質含量は、O/W乳化油脂組成物基準で、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることが最も好ましい。尚、蛋白質含量については、二酸化チタン−硫酸銅触媒によるマクロ改良ケルダール分解法を用いて測定する。
O/W乳化油脂組成物基準で、蛋白質含量が2質量%未満の場合、クラスト改質効果が十分に得られにくく、クラスト改質効果を得るためには本発明のクラスト改質材を多く使用する必要が生じる場合がある。また、蛋白質含量が10質量%超の場合、クラスト改質材の粘度が高くなり、クラスト表面に均一な厚さでクラスト改質材を広げにくいためハンドリング性が低下しやすい上、得られるベーカリー製品の歯触りが悪化しやすい。
次に、O/W乳化油脂組成物に用いられる油脂について述べる。
油脂としては、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明において、O/W乳化油脂組成物に用いられる油脂の20℃でのSFCが25未満である。20℃でのSFCが25未満であると、ベーカリー生地表面に本発明のクラスト改質材を塗布する際に伸びがよく、均一な厚さで広がりやすい上、本発明のクラスト改質材の効果が高まる。より好ましくは20℃でのSFCが21未満であり、最も好ましくは20℃でのSFCが19未満である。尚、SFCの下限は0である。
20℃でのSFCが25以上の油脂をクラスト改質材に用いて、ベーカリー生地表面に塗布した場合、加熱して得られるベーカリー製品のクラスト部分のベタつきや油性感が増してしまう場合があり、また、油脂結晶が析出しベーカリー製品の外観を損ねてしまう場合がある。
O/W乳化油脂組成物中の油脂分は、クラスト改質効果を損ねない範囲で適宜設定することができるが、O/W乳化油脂組成物基準で、油脂分が5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましく、15〜20質量%であることが特に好ましい。
油脂分が5質量%未満の場合、蛋白質をO/W乳化油脂組成物中に十分な量で含有させにくい上、O/W乳化油脂組成物の製造時に蛋白質のダマが生じやすくなる。また、油脂分が30質量%超の場合、本発明のクラスト改質材を使用して得られるベーカリー製品のクラスト部分のベタつきや油性感が増してしまいやすい。
尚、この油脂分には下述するその他の成分中の油脂分も含めることとする。
本発明のクラスト改質材では、含有される蛋白質と油脂の質量比を1:2.0〜7.5とすることで、ベーカリー生地を加熱した後のクラストの亀裂や皮剥れといった損壊現象を抑制することができる。好ましくは含有される蛋白質と油脂の質量比を1:2.5〜6.5とし、より好ましくは蛋白質と油脂の質量比を1:3.0〜5.5とする。
含有される蛋白質と油脂の質量比が1:2.0〜7.5の範囲外である場合、クラスト部での蛋白膜が形成されにくいため、クラスト改質効果を十分に得ることができない。
O/W乳化油脂組成物中の水分は、クラスト改質効果を損ねない範囲で適宜設定することができるが、O/W乳化油脂組成物基準で、水分が60〜95質量%であることが好ましく、65〜90質量%であることがより好ましく、70〜85質量%であることが特に好ましい。
水分が60質量%未満の場合、クラスト改質材の固形分含量が高くなり、粘度が高くなり易く、ベーカリー生地表面に塗布する際に均一に広げにくい。水分が95質量%超の場合、使用量によってはクラスト部分の火通りが悪化してしまいやすい他、クラストが分厚くなり食感が重くなりやすい。
尚、この水分には下述するその他の成分中の水分も含める。
本発明では必要に応じ、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、乳化剤や安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味材、酸味料、乳及び乳製品、糖類、糖アルコール類、ステビア等の甘味料、βカロチンやカラメル等の着色料、トコフェロールや茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、調味料、pH調整剤、アミノ酸、香辛料、果実、果汁、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。これらのその他の成分は、本発明の効果を阻害しない範囲で任意の使用量の範囲で使用することができる。
特にpH調整剤を含有させ、本発明のクラスト改質材を塩基性にすると、蛋白質の溶解性・分散性が向上し、O/W乳化油脂組成物の乳化安定性が向上する他、均一で強固な蛋白膜をクラスト表面に形成しやすくなるため好ましい。
選択されるpH調整剤としては、本発明のクラスト改質材のpHが塩基性となるものであれば特に限定されず、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、リン酸類のカリウム塩及びナトリウム塩、並びにこれらの無水塩等が挙げられる。
本発明のクラスト改質材のpHは7.5〜10.0であることが好ましく、8.0〜10.0であることがより好ましく、8.5〜9.5であることが最も好ましい。
次に、本発明のクラスト改質材の製造方法について説明する。
本発明のクラスト改質材は上述の条件を満たすO/W乳化油脂組成物からなり、このO/W乳化油脂組成物は上記油脂、蛋白質、水、及び必要に応じその他の成分を混合乳化し、水中油型に乳化することにより得られる。
好ましくは、先ず溶解した油脂に蛋白質を加えて撹拌し均一に分散させ、油相を調製した後、この油相に水相を加えて水中油型に乳化させる。水相に蛋白質を加えることもできるが、加える蛋白質が粉体の場合、特にダマになりやすく、O/W乳化油脂組成物中に十分に分散させることが難しい。
本発明のクラスト改質材にpH調整剤を含有させる場合は、水相にpH調整剤を溶解させてから水中油型に乳化させることが、含有させた蛋白質がO/W乳化油脂組成物中で十分溶解され、O/W乳化の安定性が高まるため好ましい。
必要により、得られたO/W乳化油脂組成物をバルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、圧力0〜100MPaの範囲で均質化することができる。
また、必要により、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、或いはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・低温殺菌、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌又は加熱殺菌処理を施すことができ、或いは直火等の加熱調理により加熱することもできる。
また、加熱後に必要に応じて再度均質化することもできる。また、必要により急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施すこともできる。
このようにして得られたO/W乳化油脂組成物は、クラストの皮剥れや亀裂といった損壊を抑制することのできるクラスト改質材としてベーカリー生地に塗布することができる。
次に、本発明のクラスト改質材の使用方法について説明する。
本発明のクラスト改質材は、ベーカリー製品の製造時に用いられるものであり、加熱処理前のベーカリー生地の表面に本発明のクラスト改質材が塗布される。本発明のクラスト改質材を塗布する手法としては、特に限定されず、ベーカリー生地に刷毛等で塗布したり、スプレー等で噴霧塗布する手法のほか、ベーカリー生地をクラスト改質材にくぐらせたり浸漬する等の手法も挙げられる。
尚、ホイロをとるベーカリー生地の場合は、ホイロの後に本発明のクラスト改質材を塗布することが好ましい。
ベーカリー生地の表面に、本発明のクラスト改質材が均一に塗布され広げられることが、ムラの無い外観を有するベーカリー製品が得られ、且つカット等の二次加工を行った場合であっても、クラストの皮剥れや亀裂といった損壊を一層防止しやすくなるため、好ましい。
上記加熱処理としては、例えば、ベーカリー生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。
本発明のクラスト改質材を使用することのできるベーカリー生地の種類としては、特に制限はないが、食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、ハードロール生地、フランスパン生地、スイートロール生地、デニッシュ生地やクロワッサン生地等のペストリー生地、饅頭生地等が挙げられる。ベーカリー生地としては通常の製法及び配合により製造されたものを特に制限なく用いることができ、加熱処理を行う前にこれらの生地表面に薄く広がるようにクラスト改質材が塗布される。
とりわけ、デニッシュ生地やクロワッサン生地のようなペストリー生地や、フランスパン生地やハードロール生地のようなリーンな組成のベーカリー生地では、加熱処理後にクラストの亀裂や剥がれといった損壊が起こりやすく、またカットや穿孔のような二次加工を行う際に本発明のクラスト改質材の塗布によるクラスト改質効果が得られ易いため、特に好ましく使用できる。
ペストリー生地の配合の一例を以下に挙げる。
(ペストリー生地の配合例)
小麦粉 100質量部
イースト 5〜10質量部
砂糖 1〜30質量部
食塩 1〜2質量部
脱脂粉乳 0〜10質量部
練り込み用油脂 1〜30質量部
卵 0〜40質量部
牛乳 0〜40質量部
水 0〜50質量部
ロールイン用油脂 0〜65質量部
ペストリー生地は、例えば以下の手順で製造することができる。
まず、ロールイン用油脂以外の原材料を全てボールに入れ、ミキシングし、ドウ生地を得る。このドウ生地を生地温度が10℃程度になるまでリタードした後、圧延してドウ生地をシート状に成形し、ロールイン用油脂を積載して任意の折数まで折り込むことで、ペストリー生地が得られる。
また、リーンな組成のベーカリー生地の配合の一例を以下に挙げる。尚、ここでいう「リーンな組成」とは、穀粉類、イースト、塩、水等の基本的な材料で調製され、砂糖、卵、牛乳、バター、油脂等の副材料を含まない又は少量のみ含量する、油脂分の少ないベーカリー生地の組成を指す。一般的に、リーンな組成のベーカリー生地には油脂等の副材料を含有させないが、含有させることにより容積の拡大、すだちの改良、クラムやクラストのソフト化、機械耐性の向上、老化の遅延等のメリットが得られることから、近年では副材料を含有させたものも散見される。特に限定されるものではないが、リーンな組成のベーカリー生地において、副材料と油脂の含有量は小麦粉100質量部に対し合計で20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
(リーンな組成のベーカリー生地の配合例)
小麦粉 100質量部
イースト 5〜10質量部
砂糖 0〜10質量部
食塩 1〜5質量部
脱脂粉乳 0〜10質量部
練り込み用油脂 0〜10質量部
卵液 0〜10質量部
牛乳 0〜5質量部
水 0〜70質量部
また、本発明のクラスト改質材は、パーベイク製品に対しても好ましく使用することができる。尚、パーベイク製品に使用する場合は、半焼成する前に本発明のクラスト改質材を生地表面に塗布する手法、又は半焼成した後冷凍に供する前に本発明のクラスト改質材を生地表面に塗布する手法のいずれも可能である。生地表面に本発明のクラスト改質材を加えることで、パーベイク製品に起こりやすいクラストの皮剥れや亀裂といった現象を抑制することが容易となる。
尚、本発明のクラスト改質材を塗布したベーカリー生地を冷凍し解凍した後に加熱処理したベーカリー製品であっても、本発明のクラスト改質材をベーカリー生地に塗布して冷凍及び解凍を経ずに加熱処理を施したベーカリー製品であっても、本発明のクラスト改質材のクラスト改質材によって、クラストの皮剥れや亀裂の抑制・防止効果は好ましく得られる。また、ベーカリー生地を冷凍する場合、本発明のクラスト改質材の塗布はベーカリー生地の冷凍前又は冷凍後解凍前に行うことができ、或いは解凍後に行うこともできる。
本発明のクラスト改質材は任意の量を使用することができるが、好ましくはベーカリー生地100質量部に対して本発明のクラスト改質材を5〜20質量部使用すると、クラストの皮剥れや亀裂等を確実に防止することができる。
次に、本発明のクラスト損壊抑制方法について説明する。
本発明のクラスト損壊抑制方法は、上記のようにして得られた本発明のクラスト改質材をベーカリー製品に使用することを特徴とするものである。
好ましく適用されるベーカリー製品の種類、使用方法、使用量等、ここで特に説明しない点については、上述の本発明のクラスト改質材についての説明を適宜適用することができる。
これより以下、具体的な実施例を基に本発明を詳述する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜3、比較例1及び比較例2〕クラスト改質材の製造1(蛋白質含量の検討)
表1に示す配合に従い、以下の手順で実施例1〜3、比較例1及び比較例2のクラスト改質材をそれぞれ作成した。
先ず、加温し十分に溶融させた液状油に分離大豆蛋白質を加え、スリーワンモーターを使用して撹拌して分離大豆蛋白質を十分に液状油中に分散させ、油相を調製した。尚、使用した分離大豆蛋白質100質量部中、無脂固形分の含量は94.3質量部であり、蛋白質含量は85.8質量部であった。次に、事前に無水炭酸ナトリウムを溶解させておいた水を水相として油相に加え、十分に撹拌し、予備乳化を行い予備乳化液を得た。次に、予備乳化液をVTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機ステリラボ)で143℃にて5秒間殺菌し、10MPaの圧力で均質化後、5℃まで冷却して、クラスト改質材を得た。
尚、得られた実施例1〜3、比較例1及び比較例2のクラスト改質材のpHは全てpH8.5〜9.5の範囲内であった。
〔試験例1〕ハードロール生地を用いた試験1
上記で調製した実施例1〜3、比較例1及び比較例2のクラスト改質材のクラスト改質効果を、下記の配合・製法で調製したハードロール生地を用いて試験した。具体的な試験方法は以下の通りである。
下記の配合・製法で調製したハードロール生地を、50gに分割・丸目を行ない、フロアタイム、ベンチタイムをとって、成形を行い、更にホイロをとった。ホイロ後の生地表面に、実施例1〜3、比較例1及び2のクラスト改質材のいずれかを10g刷毛で塗布し、生地上部に十字にクープを入れた後、220℃で20分間焼成してハードロールを得た。尚、クラスト改質材を塗布しないものをコントロールとした。
焼成から1日後に、半分にカットしたハードロールの外観を目視で確認し、皮剥れ・亀裂の程度を評価した。同時に食感についても評価を行った。尚、この際の評価は、下記評価基準に則って行った。
結果を表1に示す。
<ハードロール生地の配合・製法>
強力粉100質量部、上白糖3質量部、生イースト5質量部、食塩2質量部、イーストフード0.1質量部及び水60質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分混合し、ショートニング((株)ADEKA製プレミアムショートCF)5質量部を投入し、低速で3分、中速で8分ミキシングを行ない、ハードロール生地を得た。得られたハードロール生地の捏ね上げ温度は26℃であった。
<評価基準>
・外観
◎ : クラストの皮剥れや亀裂等の損傷はなかった。
○ : カットによりクラストに亀裂が生じるも、皮剥れは生じなかった。
× : カットと共にクラストに亀裂が生じ、多量に剥がれ落ちた。
・食感
◎ : 軽い歯触りの食感が得られた。
○ : やや重い食感であるが、歯触りのよい食感が得られた。
× : 噛みだしが重く、食感が重たくなっていた。
Figure 0006948132
コントロールでは、カットに伴ってクラスト部の損傷が確認されたが、実施例1〜3のクラスト改質材を塗布したハードロールでは外観に改善傾向が見られた。また、クラスト改質材中の蛋白質含量が増加するほど、クラスト部の損傷は抑制される傾向が確認されたが、過度に増加すると比較例1の結果に示すようにクラスト部の損壊を伴うため、外観や食感を損ねる結果となった。これは、クラスト上部に蛋白質の膜が分厚く生じるために、この膜に亀裂や剥がれが生じ、ハードロールの外観を損ねているものと推察され、また、厚い蛋白質の膜ができるため、結果としてクラスト部分が厚くなりやすく、食感が重たくなっているものと推察された。
また、比較例2のように蛋白質含量が乏しい場合、クラスト改質材の水分含量が高まるため、ハードロール生地の表皮部の水分が多くなり、結果として得られるハードロールのクラストが分厚くなってしまうことから、食感を損ねる傾向にあった。
〔実施例4、比較例3及び比較例4〕クラスト改質材の製造2(油脂種の検討)
液状油に代えて、パーム油(20℃でのSFCが20.3)を使用(実施例4)、パーム中部油(20℃でのSFCが79.5)を使用(比較例3)、又はパーム核硬部油(20℃でのSFCが73.9)を使用(比較例4)したこと以外は実施例2と同条件で、実施例4、比較例3及び比較例4のクラスト改質材をそれぞれ調製した(表2参照)。
〔試験例2〕ハードロール生地を用いた試験2
上記で調製した実施例4、比較例3及び比較例4のクラスト改質材のクラスト改質効果を、上述の試験例1と同じ試験方法により試験した。結果を表2に示す。尚、表2には、参考のため、上述の実施例2及びコントロールについても併記する。
Figure 0006948132

表2より、油脂の20℃でのSFCが大きい、すなわち、融点が比較的高い油脂を使用した場合、ハードロールのカットに伴って、クラストの亀裂や皮剥れといった損壊が起きやすいことが分かる。これは、20℃でのSFCが大きい油脂を使用した場合(比較例3及び比較例4)、焼成時にハードロール生地表皮にしみ込んだ油脂がクラスト部分に局在し、冷え固まったことにより、クラスト部分が硬くて脆いものになったことが原因であると推察される。
また、これらの油脂を用いた場合においては、焼成後、放置して冷却されたハードロールの表面に、油脂の結晶が白い斑点として析出してしまう場合があり、この点においても外観を損ねるものとなっていた。
〔試験例3〕デニッシュ生地を用いた試験
ハードロールと同様に、デニッシュについても本発明のクラスト改質材の効果を試験した。
デニッシュ生地は、下記の配合・製法に従って調製した。ホイロを終了した後のデニッシュ生地50gに対して、上記実施例1〜3、比較例1及び比較例2のクラスト改質材のいずれかを10g刷毛で塗布して210℃で12分間焼成してデニッシュを得た。
ハードロールと同様に、焼成から1日後に、対角線をとるように半分にカットしたデニッシュの外観を目視で確認し、皮剥れ・亀裂の程度を評価した。同時に食感についても評価を行った。尚、この際の評価は、試験例1と同じ上記評価基準に則って行った。その結果を表3に示す。
<デニッシュ生地の配合・製法>
強力粉100質量部、食塩1.3質量部、上白糖15質量部、脱脂粉乳3質量部、イースト8質量部、イーストフード0.2質量部、水50質量部、バター5質量部をタテ型ミキサーにて低速2分及び中速6分ミキシングし、ドウ生地を得た。このドウ生地を冷蔵庫内で1晩リタードした後、厚さ10mmに圧延してシート状とし、シート状ロールイン油脂組成物を85質量部積載し、常法によって折り込み(3つ折り3回)、これを成型し(縦10センチ×横10センチ×厚さ4mm)、展板に載せ、32℃、相対湿度85%、60分のホイロを取り、焼成前のデニッシュ生地を得た。
Figure 0006948132

コントロールでは、カットに伴いクラスト部に亀裂が生じるとともに皮剥れが生じた。一方、実施例1〜3のクラスト改質材を塗布したデニッシュでは、亀裂の発生は少なくなり、コントロールと比較して外観に改善が見られた。特に実施例1と実施例2では、カットに伴う亀裂も皮剥れも見られず、クラスト改質材の効果によって、良好な外観を得ることができた。
また、クラスト改質材中の蛋白質含量を過度に増加するとクラスト部の損壊、特に亀裂を伴い外観を損ねる結果となる点については、ハードロールと同様であった。また、蛋白質含量が高い比較例1と蛋白質含量が低い比較例2の双方で良好な食感が得られなかったことから、クラスト改質材として歯触りや食感を損ねずにクラスト改質効果を得るためには、蛋白質含量を特定範囲とする必要があることが分かった。

Claims (2)

  1. 含有される蛋白質と油脂の質量比が1:2.0〜7.5であり、含有される油脂の20℃でのSFCが25未満であり、分離大豆蛋白質含量が2〜10質量%、油脂含量が5〜30質量%であるO/W乳化油脂組成物からなり、ベーカリー生地表面に塗布するためのクラスト損壊抑制材。
  2. 含有される蛋白質と油脂の質量比が1:2.0〜7.5であり、含有される油脂の20℃でのSFCが25未満であり、分離大豆蛋白質含量が2〜10質量%、油脂含量が5〜30質量%であるO/W乳化油脂組成物を、ベーカリー生地の表面に塗布する、クラスト損壊抑制方法。
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