JP6941480B2 - 天井支持構造 - Google Patents
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また、吊ボルトのみで吊り下げ支持させた天井構造枠は、地震などの発生時に振り子のように揺れるため、隣り合う吊ボルト同士に渡ってブレース(斜め部材)が筋交い状に配設されている。
前記支持部と前記天井構造物との間に、鉛直荷重を防振ゴムを介して伝達する防振機構が設けられ、前記防振機構には、前記防振ゴムと水平方向から当接可能な状態で前記支持部側に設けられる水平変位ストッパーが備えられ、
前記防振機構は、前記支持部側の上受け材と前記天井構造物側の下受け材とが防振ゴムを介在した状態で貫通ボルトにて連結され、前記防振ゴムの天板と前記水平変位ストッパーとの間には、前記防振ゴムのボルト挿通孔の内面に前記貫通ボルトの外面が当接した状態で設定間隔の隙間が形成され、水平力の作用時に、前記防振ゴムの前記天板が前記水平変位ストッパーに当接するまでの前記隙間の範囲において、前記貫通ボルトが鉛直姿勢のままスライド移動して前記防振ゴムをせん断変形させる第1ゴム変形作動と、前記防振ゴムの前記天板が前記水平変位ストッパーに当接した以降において、前記貫通ボルトが傾動して前記防振ゴムを圧縮変形させる第2ゴム変形作動と、が実行可能に構成されている点にある。
したがって、防振ゴムと水平変位ストッパーとの合理的な配置構成により、防振機構の第1ゴム変形作動から第2ゴム変形作動への移行に伴って大きな水平剛性及び回転剛性を確保することができる。これにより、天井構造物の振動(音)を防振機構で抑制しながら、地震時における天井構造物の水平方向での変形量を減少することができ、音響環境の弱点となる天井構造物の周囲(壁側)のクリアランスをより小さくすることができる。
図1、図2は、音楽ホールや複合型映画館(シネコン)、劇場等に適した防振及び遮音性能を有する建物の天井支持構造を示す。この天井支持構造では、建物の躯体1に結合され、且つ、当該躯体1と共に挙動する非吊構造の支持部10で天井構造物30が支持されている。尚、便宜上、図2の柱スパンの広い方向をX方向とし、柱スパンの狭い方向をY方向として説明する。
建物の躯体1は、図1、図2に示すように、複数の柱2間に複数の大梁3が架設され、大梁3間に複数の小梁4が架設されているとともに、大梁3及び小梁4の上側部には上階床スラブ5が構築されている。複数の小梁4には、鉛直姿勢で下方に延設される複数の束材11がX方向及びY方向に所定ピッチで配設され、各束材11と小梁4との間には、束材11の水平方向耐力・剛性を強化するための各方向の方杖(補強材)12が斜め姿勢で架設されている。この複数の束材11と方杖12とをもって、躯体1と共に挙動する非吊構造の支持部10が構成されている。
各野縁受け支持梁31は、横向き開口の状態で水平に配置される溝形鋼から構成されている。各下受け材32は、束材11の両フランジ11Aの外面間のウエブ外寸法よりも幅広な水平姿勢の下受け板32Aと、野縁受け支持梁31のウエブ31Bの外面沿う鉛直姿勢で下受け板32Aの下面に溶接等で固着される第2連結板32Bと、第2連結板32Bの背面と下受け板32Aの下面とに溶接等で固着される補強板32Cから構成されている。各下受け材32の第2連結板32Bは、野縁受け支持梁31のウエブ31Bにボルト33A・ナット33B等の第2締結具33で固定連結されている。
図5に示すように、上受け材15のウエブ15Bの上面における束材11の両フランジ11Aよりも外方側で、且つ、束材11のウエブ11Bの幅方向中心位置から等距離だけ離れた対称位置の各々に、中心にボルト挿通孔21aが貫通形成されている円筒状の防振ゴム21が配設されている。この一対の防振ゴム21のボルト挿通孔21aに対応する上受け材15のウエブ15Bの二箇所には、防振ゴム21のボルト挿通孔21aと同芯状態で連通するボルト貫通孔15aが形成されている。同じく、一対の防振ゴム21のボルト挿通孔21aに対応する下受け材32の下受け板32Aの二箇所には、防振ゴム21のボルト挿通孔21aと同芯状態で連通するボルト貫通孔32aが形成されている。
上受け材15のウエブ15Bの下面と下受け材32の下受け板32Aの上面との間で、且つ、一対の防振ゴム21に対応する部位の各々には遮音用のゴム板22が配設されている。一対のゴム板22には、上受け材15のボルト貫通孔15a及び下受け材32のボルト貫通孔32aと同芯状態で連通するボルト貫通孔22aが形成されている。
上受け材15のウエブ15Bと下受け材32の下受け板32Aとの間に介在された一対の防振ゴム21が貫通ボルト24で締結された状態では、天井構造物30側の鉛直荷重は、下受け材32→貫通ボルト24→防振ゴム21→上受け材15→束材11の順で伝達される。防振ゴム21での防振機能により振動(音)の伝播を抑制することができる。
水平変位ストッパー27の水平変位規制孔27aの内周面と防振ゴム21の天板21Aの外周面との間には、図3、図4、図6に示すように、防振ゴム21のボルト挿通孔21aの内面に貫通ボルト24の外面が当接した状態で設定間隔の円環状の隙間C1が形成されている。
[防振ゴム21の概要]
防振ゴム21の基本的な物性値(メーカーカタログ値、製品名称:ヤクモ(株)社製YMDH-80)を以下に示す。
静的バネ定数=圧縮:750N/mm、せん断:100N/mm
常用荷重(積載荷重)=1,500N〜3,500N
許容荷重=圧縮:4,800N
防振ゴム21を介在した接合部の鉛直剛性は、防振ゴム製品のカタログ値とほぼ同等であるため、接合部の鉛直剛性Kvは製品のカタログ値を準用した弾性系とする。
Kv=Fv(鉛直力)/δv(鉛直変位)
=750N/mm(カタログ値)×2基=1,500N/mm
〔ステップ1〕
[水平方向の力学特性]
図6(a)に示すように、水平力F1が作用したとき、防振ゴム21のボルト挿通孔21aのクリアランスC2内で貫通ボルト24が鉛直姿勢のままスライド移動する。
このとき、貫通ボルト24の頭部24aと防振ゴム21の天板21Aとの間に摩擦抵抗が存在するが、この摩擦抵抗は微小で無視できる値である。
防振ゴム21のボルト挿通孔21aの孔径がφ=16mmであるのに対して貫通ボルト24の軸径が12mmであるため、貫通ボルト24のスライド変位量δ1は±2mmを標準値とする。
この場合、防振ゴム21の水平剛性は以下の通りとなる。
水平剛性:KH0=0[N/mm]
変形域:−2mm〜+2mm(標準)
[水平方向の力学特性]
図6(b)に示すように、ステップ1の水平力F1よりも大きな水平力F2が作用したとき、水平変位ストッパー27の水平変位規制孔27aの内周面と防振ゴム21の天板21Aの外周面との間に形成されている隙間C1により、防振ゴム21の天板21Aが水平変位ストッパー27の水平変位規制孔27aの内周面に当接するまでの範囲において、貫通ボルト24が鉛直姿勢のままスライド移動して防振ゴム21をせん断変形させる第1ゴム変形作動が実行される。
防振ゴム21と水平変位ストッパー27との間の隙間C1の3mmでの変形域で、防振ゴム21のせん断変形が卓越する復元力特性を示す。
防振ゴム21のせん断バネ定数(カタログ値)をベース値とし、補正係数α1(1,25)を乗じて試験値との対照を図るものとする。
この場合、防振ゴム21の水平剛性は以下の通りとなる。
水平剛性:KH1=α1×100N/mm(カタログ値)×2基=α1×200[N/mm]
図6(c)に示すように、ステップ2の水平力F2よりも大きな水平力F3が作用したとき、防振ゴム21の天板21Aが水平変位ストッパー27の水平変位規制孔27aの内周面に当接し、防振ゴム21のせん断変形が抑止される。これと同時に、貫通ボルト24がストッパー当接位置で防振ゴム21の曲げ剛性を回転拘束度とするキャンチレバーとなり、この状況下での貫通ボルト24の回転(傾動)と曲げ変形に応じた水平変位が生じる第2ゴム変形作動が実行される。
防振ゴム21の天板21Aが水平変位ストッパー27の水平変位規制孔27aの内周面に当接したときの水平方向の力学特性、及び、上述のキャンチレバー状況下での貫通ボルト24の回転と防振ゴム21の曲げ変形による回転方向の力学特性について説明する。
上述のキャンチレバー状況下での貫通ボルト24の回転と曲げ変形による水平変位に対して復元力特性を設定する。
防振ゴム21の諸元は下記の通り。
有効断面積:rAe=π(372―82)=4,050mm2
有効断面2次モーメント:rIe=π(744−164)/4=23,499,430mm4
ゴム厚:rH=34.5mm(図6(a)参照)
Kv:防振ゴム21の鉛直剛性。
鉛直剛性より見かけの弾性係数を略算すると、
rE=Kv・rH/rAe=750×34.5/4,050=5.96N/mm2
防振ゴム21(1個あたり)の曲げ剛性を下式で略算する。
rK=rE・rIe/rH=5.96×23,499,430/34.5=4.06×106N・mm/rad
尚、M:偏心曲げ、rK:防振ゴム21の曲げ剛性、H:水平力、h1:下受け板32Aの上面から水平変位ストッパー27までの偏心距離(50mm)、h2:野縁受け支持梁31の梁心位置から水平変位ストッパー27までの偏心距離(132.5mm)とする。
θ=M/rK=(H×h1)/(rK×2基)
δH=θ×h2=(H×h1×h2)/(rK×2)
=(1.0×50×132.5)/(4.06×106×2)=8.159×10-4
単位水平力(H=1.0N)に対する水平変位Δhに、試験値との対照を図るための補正係数α2(1.25)を考慮し、水平剛性として下式を得る。
水平剛性:KH2=α2×H/δH=α2×(1.0/8.159×10−4)≒α2×1,200[N/mm]
X方向(野縁受け支持梁31の長手方向)
X方向については、図8に示すように、水平力Hの荷重心を第1野縁受け35の図心と仮定し、この第1野縁受け35の図心から水平変位ストッパー27までの距離を偏心距離h3(217.5mm)とみなす。
偏心曲げMは束材11の両側に配された防振ゴム位置の偶力として処理され、防振ゴム21の変形に伴う回転が野縁受け支持梁31を含む下部架構に生じている。
水平力をH、偏心曲げによって下部架構に生じる回転角をθとしたときの各部の関係を以下に示す。
尚、rL:両防振ゴム21の芯間距離(288mm)、Kv:防振ゴム21の鉛直剛性。
支持部10に作用する偏心曲げ:M=H×h3
防振ゴム位置に作用する偶力:V=M/rL=H×h3/rL
防振ゴム21の鉛直変位量:δv=V/Kv=H×h3/(rL×Kv)
下部架構に生じる回転角:θ=2×δv/rL=2×H×h3/(rL2×Kv)
試験値との対照を図るための補正係数をα3(1.00)とし、接合部のX方向の回転剛性KRXを以下に求める。
X方向の回転剛性:KRX=α3×M/θ=α3×(H×h3)/{2×H×h3/(rL2×Kv)}
=α3×rL2×Kv/2=α3×2882×750/2
=α3×3.110×107→α3×3.10×107[N・mm/rad]
Y方向については、水平力の荷重心を野縁受け支持梁31の図心とみなすが偏心距離に関係なく、回転剛性としては前節で算定した防振ゴム21の曲げ剛性rKと同等と考える。
試験値との対照を図るための補正係数をα4(1.00)とし、接合部のY方向の回転剛性KRYを以下に求める。
Y方向の回転剛性:KRY=α4×rK×2基=α4×〔4.06×106〕×2
=α4×8.12×106→α4×8.10×106[N・mm/rad]
(1)上述の実施形態では、防振ゴム21を上受け材15のウエブ15Bの上面における束材11の両側に配設したが、防振ゴム21を束材11の片側にのみ配設してもよい。
さらに、防振ゴム21を、束材11周りの3箇所以上に配置してのよい。
10 支持部
15 上受け材
20 防振機構
21 防振ゴム
21A 天板
21a ボルト挿通孔
24 貫通ボルト
27 水平変位ストッパー
27a 水平変位規制孔
30 天井構造物
32 下受け材
C1 隙間
C2 クリアランス
Claims (3)
- 躯体に結合され、且つ、当該躯体と共に挙動する非吊構造の支持部で天井構造物を支持する天井支持構造において、
前記支持部と前記天井構造物との間に、鉛直荷重を防振ゴムを介して伝達する防振機構が設けられ、前記防振機構には、前記防振ゴムと水平方向から当接可能な状態で前記支持部側に設けられる水平変位ストッパーが備えられ、
前記防振機構は、前記支持部側の上受け材と前記天井構造物側の下受け材とが防振ゴムを介在した状態で貫通ボルトにて連結され、前記防振ゴムの天板と前記水平変位ストッパーとの間には、前記防振ゴムのボルト挿通孔の内面に前記貫通ボルトの外面が当接した状態で設定間隔の隙間が形成され、水平力の作用時に、前記防振ゴムの前記天板が前記水平変位ストッパーに当接するまでの前記隙間の範囲において、前記貫通ボルトが鉛直姿勢のままスライド移動して前記防振ゴムをせん断変形させる第1ゴム変形作動と、前記防振ゴムの前記天板が前記水平変位ストッパーに当接した以降において、前記貫通ボルトが傾動して前記防振ゴムを圧縮変形させる第2ゴム変形作動と、が実行可能に構成されている天井支持構造。 - 前記防振ゴムの前記ボルト挿通孔の内面と前記貫通ボルトの外面との間にクリアランスが形成され、前記防振機構は、前記水平力の作用時に、前記貫通ボルトが前記ボルト挿通孔のクリアランスの範囲で鉛直姿勢のままスライド移動したのち、前記第1ゴム変形作動に移行する請求項1記載の天井支持構造。
- 前記水平変位ストッパーには、前記防振ゴムの天板における円形輪郭形状と相似形の水平変位規制孔が形成されている請求項2記載の天井支持構造。
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