JP2001074089A - 建築構造物の制振装置 - Google Patents

建築構造物の制振装置

Info

Publication number
JP2001074089A
JP2001074089A JP25228299A JP25228299A JP2001074089A JP 2001074089 A JP2001074089 A JP 2001074089A JP 25228299 A JP25228299 A JP 25228299A JP 25228299 A JP25228299 A JP 25228299A JP 2001074089 A JP2001074089 A JP 2001074089A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vibration
divided
sub
building structure
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP25228299A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3807163B2 (ja
Inventor
Takashi Uchiyama
高 内山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Riko Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Riko Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Riko Co Ltd filed Critical Sumitomo Riko Co Ltd
Priority to JP25228299A priority Critical patent/JP3807163B2/ja
Publication of JP2001074089A publication Critical patent/JP2001074089A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3807163B2 publication Critical patent/JP3807163B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Buildings Adapted To Withstand Abnormal External Influences (AREA)
  • Vibration Prevention Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 建築構造物に対する副振動系を構成する制振
装置(TMD)において、副振動系の主振動系に対する
同調が不完全て状態下でも、有効な制振効果が発揮され
るようにすること。 【解決手段】 同一質量とされた複数の分割マス14を
用いて複数の分割副振動系17を構成し、それら各分割
副振動系17の固有振動数を相互に異なる値にチューニ
ングするに際して、かかる複数の分割副振動系17のう
ちの最小の固有振動数:f minと最大の固有振動数:f
maxを、建築構造物12の防振すべき固有振動数:f0
に対する比の値が相互に逆数となるように設定し、且つ
全ての分割副振動系17における固有振動数:f1 〜f
n が、互いに等比数列をなすように設定した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、住宅等の建築構造物に対する副
振動系を構成して、主振動系たる建築構造物に対して動
的吸振効果を発揮し得る制振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】一般住宅等の建築構造物では、交通振動や
風等の外力が加振力として作用することによって振動が
発生する場合がある。特に、近年では、一般住宅でも二
階建てや三階建てが多くなってきており、それらの住宅
では、構造上、二階や三階の水平方向振動が大きくなり
易いために、交通振動による微震動が、例えば就寝時に
おける不快音や不快振動等の原因として問題となってき
ている。
【0003】ところで、建築構造物の振動低減装置とし
ては、従来、高層ビルやタワー等の高層建築物の揺れを
軽減するためのダンパ装置が、幾つか提案されており、
例えば、特開平8−338467号公報には、付加質量
を建築構造物に対して多段積層ゴムで弾性支持せしめた
構造のダンパ装置が開示されている。これらのダンパ装
置は、水平方向で一つの副振動系を構成することによ
り、建築構造物に惹起される水平方向の振動に対して低
減効果を発揮するようになっている。
【0004】ところが、これら従来のダンパ装置では、
副振動系に設定された固有振動数と、主振動系としての
建築構造物において防振すべき振動との間にずれがある
と、有効な振動低減効果が発揮されなくなるという不具
合があった。特に、ダンパ装置のバネ部材をゴム弾性体
で形成すると、ばね定数が温度依存性を有するために、
有効な制振効果を安定して得ることが難しく、例えば、
一般住宅で屋根裏にダンパ装置を収容配置しようとする
と、屋根裏の温度は零下数十度から60〜70℃に亘る
略100℃もの範囲で変化するために、基準温度(例え
ば、20℃)でチューニングしても、目的とする制振効
果を安定して得ることは、到底、望めなかったのであ
る。加えて、建築構造物は、躯体構造だけでなく、基礎
の状態や、設備や備品等によっても振動特性が異なるこ
とから、予測的に設定した副振動系のチューニングがず
れてしまうおそれがあり、それによっても、目的とする
制振効果を得ることが難しいという問題があった。
【0005】なお、このような問題に対処するために、
例えば、実質的に独立した複数の副振動系を構成し、そ
れら各副振動系を、互いに異なる周波数域にチューニン
グすることにより、建築構造物において防振すべき振動
の周波数が変動した場合でも、何れかの副振動系による
制振効果が有効に発揮されるようにすることも、考えら
れる。ところが、複数の副振動系を設置する場合には、
各副振動系による制振効果が有効に発揮されるように、
全ての副振動系をチューニングすることが極めて面倒で
時間がかかるといった不具合があったのである。
【0006】また、前述の如き問題に対処し、ダンパ装
置による制振効果を有効に得るには、例えば、建築構造
物の振動特性を、その施行完了後に各個別に実測する事
も考えられるが、作業が極めて煩雑となり、特に一般住
宅等では、決して実用的ではなかったのである。
【0007】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、上述の如き事情
を背景として為されたものであって、その解決課題とす
るところは、建築構造物の振動特性の固有値のバラツキ
が有利に吸収され得て、温度変化等によってチューニン
グ周波数(同調)にずれがあった場合でも、建築構造物
毎の個別測定等を要することなく、良好な制振効果を安
定して得ることが可能とされる、新規な構造の制振装置
であって、しかも、副振動系におけるチューニングが容
易な制振装置を提供することにある。
【0008】
【解決手段】以下、このような課題を解決するために為
された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各
態様は、任意の組み合わせで採用可能である。また、本
発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限
定されることなく、明細書全体の記載および図面に記載
の発明思想に基づいて認識されるものである。
【0009】本発明の第一の態様は、建築構造物に対し
てマス部材をバネ部材で弾性支持せしめることにより、
該建築構造物に対する副振動系を構成する制振装置にお
いて、前記マス部材を、質量が同一の複数の分割マスに
よって構成すると共に、それら各分割マスを、前記バネ
部材によって前記建築構造物に対して互いに独立して弾
性支持せしめて、互いに異なる周波数域にチューニング
された複数の分割副振動系を構成する一方、かかる複数
の分割副振動系の中で固有振動数が最小のものと最大の
ものの各分割副振動系における固有振動数を、該建築構
造物の防振すべき固有振動数に対する比が相互に逆数と
なるように設定し、且つ全ての分割副振動系における固
有振動数が互いに等比数列をなすように設定したこと
を、特徴とする。
【0010】このような第一の態様に従う構造とされた
制振装置においては、複数の分割副振動系によって複数
の固有振動数が設定されることにより、建築構造物にお
ける防振すべき振動への副振動系の同調が正確でなかっ
た場合や、温度変化等に伴う同調のずれが発生した場合
等でも、建築構造物に対して全体として良好なる制振効
果が発揮され得る。それ故、例えば、建築構造物毎の振
動特性を個別に正確に測定することなく、有効な制振効
果を安定して得ることも可能となるのであり、それによ
って、設計や施行の容易化も実現可能となる。また、各
分割マスは、ゴムマウントによって弾性支持されること
から、独立して任意の場所に設置可能であり、建築構造
物に対する装着場所の設定に関して大きな自由度が確保
され得る。従って、かかる制振装置にあっては、例えば
一般住宅等にも、有利に採用され得て、大きな温度変化
に晒される場合でも、安定した防振効果を得ることが可
能となるのである。
【0011】しかも、かかる制振装置においては、各副
振動系をチューニングするに際して、建築構造物の防振
すべき固有振動数に基づいて、各副振動系の固有振動数
が一義的に決定され得、また、各副振動系のマス部材の
質量が同一に設定されることから、各副振動系のバネ部
材のバネ定数が一義的に決定される。そこにおいて、特
に、本態様のチューニング設定に従えば、副振動系のチ
ューニング周波数域に現れる建築構造物における振動加
速度の複数のピーク値を互いに略同じに設定することが
出来るのであり、それによって、広い周波数域に亘って
有効な制振効果が発揮され得るのである。
【0012】また、複数の分割副振動系の各固有振動数
が、建築構造物の防振すべき固有振動数よりも低周波側
と高周波側の両方に、それぞれ位置するように設定され
ることから、副振動系の主振動系に対するチューニング
特性の変化に対して、より有効な振動低減効果を得るこ
とが可能となる。なお、建築構造物の防振すべき固有振
動数は、一般に、基準となる条件(例えば、最も頻繁に
生ずる条件)下で求められた建築構造物の防振すべき振
動周波数として設定される。
【0013】なお、複数の副振動系における各分割マス
の質量は、それら複数の分割マスの合計質量が最適質量
となるように設定することが望ましく、それによって、
制振装置全体としての重量を抑えつつ、有効な制振効果
を得ることが可能となる。具体的には、複数の分割マス
の合計質量としてのマス部材の最適質量の好ましい値
は、例えば、主振動系たる建築構造物の運動方程式と副
振動系たる分割副振動系の運動方程式との連立方程式に
おいて、主振動系の振幅と副振動系を構成する分割マス
の振幅(主振動系と副振動系の相対変位の絶対値)を、
それぞれ、要求される値以下にするという条件を与える
ことによって、主振動系の等価質量に対する質量割合と
して、決定することが出来るが、その際、建築構造物の
耐荷重強度等も考慮されるべきである。
【0014】また、本態様に係る制振装置を一般住宅等
に設置する場合には、最上階の天井部分に支持せしめ
て、屋根裏に収容配置することが望ましい。このような
構成を採用すれば、一般住宅における制振装置の設置ス
ペースを有利に確保することが出来ると共に、振動モー
ド的にも優れた制振効果を得ることが出来る。更にま
た、本態様に係る制振装置を一般住宅等に設置する場合
には、複数の分割副振動系の少なくとも一つを、他の分
割副振動系とは異なる構造部材によって支持せしめるよ
うにしても良く、それによって、建築構造物の耐荷重強
度の制限内で、全体として大きな質量のマス部材を有利
に装着することが可能となるのである。なお、構造部材
としては、建築構造物の構造や種類等に応じて、建築構
造物における各種の構成部材(強度部材)が採用され
る。特に、最適質量を複数の分割マスに分割設定した場
合には、複数の構造部材によって、最適質量のマス部材
を有利に分担支持せしめることが可能となる。
【0015】また、本発明の第二の態様は、前記第一の
態様に係る制振装置において、前記分割副振動系を複数
個設けると共に、その中央の固有振動数を有する分割副
振動系の固有振動数を、前記建築構造物の防振すべき固
有振動数に設定したことを、特徴とする。このような本
態様に従えば、基準となる条件下での建築構造物の防振
すべき固有振動数に対して、中央の固有振動数を有する
分割副振動系による制振効果が極めて有効に発揮され得
るのであり、特に、建築構造物の防振すべき固有振動数
の変化が、小さい範囲の場合や、一時的な期間の場合等
に、特に有効である。
【0016】また、本発明の第三の態様は、前記第一又
は第二の態様に係る制振装置において、前記各分割副振
動系におけるバネ部材を、それぞれ、該分割マスに対す
る取付方向を変更することによって、該分割副振動系に
おける水平方向のばね定数を調節することの出来る可変
ゴムマウントを含んで構成したことを、特徴とする。
【0017】このような本態様に係る制振装置において
は、可変ゴムマウントの分割マスに対する取付方向を変
更することによって、分割副振動系における固有振動数
を調節することが出来る。それ故、例えば、複数の分割
副振動系において、同一のゴムマウントを採用しても、
各分割副振動系の固有振動数を異なる値に調節すること
が出来る。また、可変ゴムマウントの取付方向に応じ
て、分割副振動系のばね定数を設定可能であることか
ら、建築構造物の防振しようとする振動に応じて、各分
割副振動系の固有振動数を高精度にチューニングするこ
とが出来、それによって、優れた制振効果を容易に得る
ことが可能となるのである。なお、可変ゴムマウントの
取付方向を変更する場合には、分割副振動系の水平方向
における弾性主軸の方向が変化しないように、それら可
変ゴムマウントの取付方向を変更することが、チューニ
ング作業性および分割副振動系の動的安定性等の点か
ら、より望ましい。なお、分割副振動系における弾性主
軸とは、分割副振動系に対して、その軸に沿って荷重が
入力された際に、荷重の入力方向と、ゴムマウントの弾
性変形に伴うマス部材の変位方向とが一致し、且つ分割
マスに回転乃至は角変位が生じないような軸をいう。
【0018】なお、かかる第三の態様において採用され
る可変ゴムマウントの構造は、何等、限定されるもので
ない。具体的には、例えば、マス部材側に取り付けられ
る第一の取付部材と、建築構造物側に取り付けられる第
二の取付部材を、ゴム弾性体によって弾性的に連結した
構造のマウントであって、そのゴム弾性体に肉抜穴や貫
通スリット等を設けることによって軸直角方向のばね特
性に異方性を付与したり、ゴム弾性体で連結される第一
の取付部材と第二の取付部材の対向面を傾斜させること
によって軸直角方向の異方性を付与したり、特開平8−
338467号公報等に記載されているような傾斜板を
ゴム弾性体内に埋設固着することによって軸直角方向の
異方性を付与すること等によって、軸直角方向のばね特
性を中心軸回りにおいて異方性としたゴムマウントを、
その略中心軸方向に分割マスの重量が及ぼされる状態で
装着せしめて、分割マスに対する取付方向を中心軸回り
で変更することによって、分割マスにおける水平な弾性
主軸方向でのばね定数を調節可能とした構造のゴムマウ
ント等が採用可能である。或いはまた、特開平10−8
2449号公報等に記載されているように、軸直角方向
のばね特性が、中心軸回りの全方向で同一とされたゴム
マウントを用い、該ゴムマウントの分割マスへの取付角
度を鉛直方向乃至は水平方向で変更することにより、分
割マスにおける水平な弾性主軸方向でのばね定数を調節
可能として可変ゴムマウントを構成することも可能であ
る。
【0019】また、特に、第三の態様においては、建築
構造物とマス部材の何れか一方に取り付けられる第一の
取付部材と他方に取り付けられる第二の取付部材を本体
ゴム弾性体で連結した構造のゴムマウントであって、第
一の取付部材と第二の取付部材に対して、鉛直方向に延
びるマウント中心軸を挟んだ両側において該マウント中
心軸に対して略対称となる傾斜方向で対向する一対の傾
斜対向面を設けると共に、それら一対の傾斜対向面間に
本体ゴム弾性体を配設せしめて、各対向する傾斜対向面
間を該本体ゴム弾性体で連結したもの等が、好適に採用
され得る。このような構造のゴムマウントにおいては、
マウント中心軸に対して直角に延びる二つの直交する軸
直角方向のバネ比を十分に大きく設定することが出来る
のであり、マウント中心軸回りの回転によって、制振装
置のばね定数を一層有利にチューニングすることが可能
となる。
【0020】さらに、上述の如き可変ゴムマウントを採
用する場合には、各分割副振動系において、各分割マス
の重心を通って水平方向に延びる2本の直交する対称軸
を挟んで、それぞれ対称位置するように、可変ゴムマウ
ントの複数個を配設すると共に、それらの可変ゴムマウ
ントにおける取付方向を、かかる2本の対称軸を挟んで
対称となるように設定することが望ましい。このような
設定に従えば、各分割副振動系において、複数の可変ゴ
ムマウントの取付方向の変更によるバネ部材全体として
のばね定数の調節が容易となると共に、それら複数の可
変ゴムマウントの取付方向を変更,調節した場合でも、
分割マスの静的及び動的安定性が有利に維持されること
により、目的とする制振効果を安定して得ることが出来
る。なお、可変ゴムマウントのうち各対称軸を挟んで対
称位置するもの同志は、互いに同一構造とすることが望
ましい。一方、何れの対称軸に関しても対称関係を有し
ない可変ゴムマウント間では、ばね特性や構造が互いに
異なっていても良い。また、可変ゴムマウントにおける
取付方向を、2本の対称軸を挟んで対称とする設定は、
例えば、何れの対称軸に関しても、その両側で対称位置
に配された可変ゴムマウントを、該対称軸に対する傾斜
角度が対称的に同じになるように配設することによっ
て、有利に実現され得る。
【0021】さらに、そこにおいて、全ての分割副振動
系における可変ゴムマウントの配設位置の対称軸として
の上記2本の直交する対称軸は、好ましくはその少なく
とも1本、より好ましくはそれらの2本の何れもが、建
築構造物において防振すべき振動方向となるように設定
される。より好ましくは、全ての分割副振動系におい
て、可変ゴムマウントの配設位置の対称軸としての2本
の直交する対称軸が、何れも、分割副振動系全体として
の水平方向における弾性主軸として設定される。これに
より、分割副振動系の安定性が更に向上されて、目的と
する制振効果をより安定して得ることが可能になると共
に、分割副振動系のチューニングも容易となる。
【0022】なお、本態様においては、可変ゴムマウン
トのみで、副振動系のバネ部材を構成する必要はなく、
可変ゴムマウントと、副振動系のばね定数の調節に寄与
しないゴムマウントを組み合わせてバネ部材を構成する
ことも可能である。また、可変ゴムマウントを複数用い
る場合には、その全ての可変ゴムマウントの取付方向を
変更する必要はなく、一部の可変ゴムマウントだけの取
付方向を調節することによってチューニングすることも
可能である。
【0023】また、本発明の第四の態様は、前記第一乃
至第三の何れかの態様に従う構造とされた制振装置にお
いて、前記各分割副振動系における固有振動数を、該建
築構造物の防振すべき固有振動数に対する比の値が、
0.4〜2.0の範囲となるように設定したことを、特
徴とする。このようなチューニング範囲を設定すること
によって、副振動系のチューニング周波数域に現れる建
築構造物における振動加速度の複数のピーク値を、互い
に略同じに、一層有利に設定することが可能となる。な
お、より好ましくは、かかる比の値が、0.6〜1.7
の範囲となるように設定される。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に具体的に明ら
かにするために、本発明の実施形態について、図面を参
照しつつ、詳細に説明する。
【0025】先ず、図1には、本発明に従う構造とされ
た建築構造物用の制振装置10を、一般の3階建住宅1
2に装着した状態の概略が示されている。かかる制振装
置10は、それぞれ独立した複数個の分割マス14と、
それら各分割マス14を互いに独立して弾性支持するゴ
ムマウント16から構成されており、各分割マス14が
それぞれ複数個のゴムマウント16によって、住宅12
に対して弾性支持されることによって、互いに独立した
複数個の分割副振動系17が形成されている。なお、本
実施形態では、図示されているように、全ての分割副振
動系17が、3階建住宅12における3階の天井を構成
する構造部材18上に装着されている。
【0026】より詳細には、各分割副振動系17を構成
する分割マス14は、図10,11にも仮想線で示され
ているように、金属等の高比重材で形成されており、例
えば鉄系や鉛系の金属等で形成されたものが好適に採用
される。この分割マス14の形状は特に限定されるもの
でないが、一般に、板形状のものが好適に採用され、よ
り望ましくは、矩形平板形状や多角形平板形状,円形平
板形状等、幅寸法よりも高さ寸法が小さく且つ高さが一
定の板形状であって、平面的に複数の対称軸を有する形
状が望ましい。このような形状の分割マス14を採用す
ることにより、制振装置10を最上階の天井裏21等の
スペースに収容状態で有利に設置することが出来ると共
に、水平方向の変位に際して各ゴムマウント16に生ぜ
しめられる角変位を抑えて安定した吸振作用を得ること
が可能となる。特に、本実施形態では、高さ寸法が全体
に亘って一定とされた、平面矩形の板形状を有する分割
マス14が採用されている。また、かかる分割マス14
を、同一平面形状を有する複数枚の鋼板等を、厚さ方向
に重ね合わせて、ボルト等の締結具で相互に連結固定す
ることによって構成することも可能であり、そのような
マス分割構造を採用すれば、制振装置10の搬送や設置
等が一層容易となる。
【0027】また、この分割マス14の質量は、装着さ
れる主振動系たる住宅12の質量や振動状態、構造強度
等を考慮して適宜に設定されるが、全ての分割副振動系
を構成する分割マス14の合計質量が、防振すべき住宅
12の防振すべき振動に応じた最適質量を与えるように
設定されることが望ましい。具体的には、例えば、主振
動系たる住宅12と一つの副振動系からなる2自由度系
を考え、この系の運動方程式から主振動系の共振曲線を
求めることにより、一般の動的吸振器における最適設計
法に従って、最適質量を求めることが出来る。即ち、か
かる2自由度系の運動方程式に基づいて、主振動系の振
幅が要求される値以下になるように、且つ副振動系を構
成するゴムマウント16の振幅(主振動系と副振動系の
相対変位の絶対値)が許容値以下となるように、主振動
系と副振動系の質量比(μ)を求めることによって、副
振動系における分割マス14の最適質量を決定すること
が出来る。なお、その際、住宅12の耐荷重強度も考慮
する必要があり、住宅12の耐荷重強度による制限か
ら、分割マス14の最適質量が決定される場合もある。
また、その際、分割マス14の最適質量は、全ての分割
マス14の合計質量として与えられるものであることか
ら、各分割マス14の荷重を異なる構造部材に分担支持
させることによって、即ち、住宅12を構成する多数の
構造部材のうちの異なる構造部材にそれぞれの分割副振
動系17を装着して、各分割マス14を異なる構造部材
で支持せしめることによって、分割マス14の荷重の集
中的作用を回避して、住宅12の耐荷重強度上の理由に
よる分割マス12の荷重制限を緩和することも可能であ
る。因みに、一般的な軽量鉄骨や木造の軸組構造による
2〜3階建の住宅の場合では、全ての分割副振動系にお
ける分割マス14の合計質量として、100〜1000
kg程度、或いはそれ以上の質量が設定される。
【0028】そして、本実施形態では、このようにして
求められた最適質量を全体として与えるように、複数の
分割マス14の質量が設定されている。ここにおいて、
複数の分割マス14は、相互に同一の質量となるように
設定されている。具体的には、最適質量が800kgの場
合に、n個の分割マス14を採用する際には、各分割マ
ス14の質量が何れも800/nkgとされる。特に、同
一の材質と形状を有する複数の分割マス14によって最
適質量を等分割することが望ましく、それによって、分
割マス14の製造の容易性やコスト性が向上され得る。
【0029】また、これら各分割マス14は、それぞ
れ、複数個のゴムマウント16によって、住宅12の構
造部材18に対して弾性支持されており、それによっ
て、分割マス14の数だけ、互いに独立した分割副振動
系17が構成されている。ここにおいて、これら複数の
分割副振動系17においては、その固有振動数が互いに
同一とはされておらず、各別に異なる複数の固有振動数
が設定されている。
【0030】ここにおいて、かかる複数の分割副振動系
17の中の一つに設定された最小の固有振動数:fmin
の、主振動系(住宅12)において防振すべき振動周波
数:f0 に対する比の値が、それら複数の分割副振動系
17の中の一つに設定された最大の固有振動数:fmax
の、主振動系において防振すべき振動周波数:f0 に対
する比の値の逆数となるように設定されている。更に、
それら最小および最大の固有振動数を有する分割副振動
系17を含む全ての副振動系17の固有振動数f1 〜f
nは、主振動系において防振すべき振動周波数:f0 に
対する比の値:f1/f0 ,・・・,fn/f0 が、互
いに等比数列を構成するように設定されている。
【0031】なお、このような共振周波数比を各分割副
振動系17に設定するに際しては、各分割副振動系17
における分割マス14の値(質量)が互いに同一とされ
ていることから、それら各分割副振動系17において複
数個のゴムマウント16で構成するバネ部材の防振すべ
き振動方向でのばね定数の値によっても、設定すること
ができる。具体的には、分割副振動系17の固有振動数
を主振動系(住宅12)において防振すべき振動周波
数:f0 に一致させるに必要とされる該分割副振動系1
7におけるバネ定数の値をkd 0 とすると、複数の分割
副振動系17の中の一つに設定された最小のばね定数の
値:kd min のかかるkd 0 に対する比の値が、それら
複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最大の
ばね定数の値:kd max のかかるkd 0 に対する比の値
の逆数となるように設定される。更に、それら最小およ
び最大のばね定数を有する分割副振動系17を含む全て
の副振動系17のばね定数kd 1 〜kd nの前記kd 0
に対する比の値:kd 1 /kd 0 ,・・・,kd n/k
d 0 が、互いに等比数列を構成するように設定される。
【0032】さらに、これら複数の分割副振動系17に
おける固有振動数の設定範囲は、特に限定されるもので
なく、製造誤差や温度変化等に起因する考慮すべき主振
動系と分割副振動系のチューニング周波数の相対的なず
れ変動幅等に応じて適宜に決定され得るが、好ましく
は、住宅12において防振すべき振動周波数に対する適
当な周辺周波数の範囲内に、全ての分割副振動系17の
固有振動数が納まるように設定される。このような設定
によって、一般住宅における通常の環境下で予想される
主振動系(住宅12)と分割副振動系17とのチューニ
ングずれ幅を、有利にカバーすることが出来る。また、
複数の分割副振動系17において、複数の分割副振動系
17の中の一つに設定された最小の固有振動数:fmin
が、主振動系において防振すべき振動周波数:f0 に対
して、好ましくはfmin /f0 ≧0.4,更に好ましく
はfmin /f0 ≧0.6となるように設定されると共
に、複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最
大の固有振動数:fmax が、主振動系において防振すべ
き振動周波数:f0 に対して、好ましくはfmax /f0
≦2.0,より好ましくはfmax /f0 ≦1.7となる
ように設定される。
【0033】すなわち、このような設定条件に従って複
数の分割副振動系17を構成することにより、それらの
分割副振動系17を装着した建築構造物において、振動
加速度の周波数特性における複数のピーク値を略同一範
囲とすることが出来るのであり、それによって、複数の
分割副振動系17における固有振動数の設定領域とその
周辺の周波数範囲に亘って、有効な制振効果が発揮され
得ることとなる。なお、このような技術的効果が発揮さ
れる理論的根拠は、未だ明確でなく、それを明確にする
ことは、本発明の目的とするところでないことから、こ
こでは割愛するが、本発明の技術的効果は、後述する実
施例の結果からも明白なところである。
【0034】なお、分割副振動系17の数は、建築構造
物において制振効果が要求される周波数範囲や、要求さ
れる制振特性の他、分割副振動系17が装着される建築
構造物の構造部材の部材強度等を考慮して、適宜に決定
されるものであって何等限定されるものでないが、一般
の住宅等においては、好ましくは2〜6個、より好まし
くは3〜5個の分割振動系17が設定される。
【0035】因みに、本発明の実施例として、下記〔表
1〕に示される如く、躯体重量が30ton の建築構造物
Aと、躯体重量が30ton の建築構造物Bについて、そ
れぞれ、2個,3個又は4個の分割副振動系17からな
る制振装置10a〜eを装着した場合について、それぞ
れ、建築構造物における振動加速度の周波数特性をシミ
ュレーションで求めた結果を、図2〜6に示す。なお、
かかる実施例においては、何れも、躯体減衰比を1.5
%とすると共に、各分割副振動系17における損失係数
を1.0とした。
【0036】
【表1】
【0037】かかる図2〜6に示された実施例結果から
も明らかなように、本発明に従って構成された複数の分
割副振動系からなる制振装置においては、何れも、各分
割副振動系がチューニングされた広い領域の周波数範囲
(躯体の固有振動数:f0 に対する周波数倍率範囲)に
亘って、有効な制振効果が発揮され得ることが明らかで
あり、特に、かかる周波数範囲に発生する複数の振動加
速度のピーク値が、互いに略同一に抑えられ、その結
果、安定した制振効果が達成されることが認められる。
【0038】ところで、このように複数の分割副振動系
17に対してそれぞれ異なる固有振動数を設定するに
は、例えば、複数の分割副振動系17の相互間で、ゴム
マウント16における防振すべき振動方向のばね定数を
異ならせることによって、チューニングすることが可能
である。ここにおいて、特に、本実施形態では、何れの
分割副振動系17においても、それぞれ同一構造とされ
た複数のゴムマウント16によってバネ系が構成され
て、同一の質量が設定された分割マス14が弾性支持さ
れている。
【0039】かかるゴムマウント16は、何れも水平方
向のばね定数が異方性とされており、本実施形態では、
各分割副振動系17において、それぞれ同一構造のゴム
マウント16が4個採用されている。即ち、かかるゴム
マウント16は、図7〜9に示されているように、第一
の取付部材としての第一の取次金具22と、第二の取付
部材としての第二の取付金具24が、互いに離間して対
向配置されていると共に、それら第一の取付金具22と
第二の取付金具24が、両金具22,24の対向面間に
介装された本体ゴム弾性体26で弾性的に連結された構
造を有している。
【0040】そこにおいて、第一の取付金具22は、そ
れぞれ鋼鈑のプレス加工などによって形成された矩形平
板形状の上板28と、中央が谷折り状に曲げられV字状
の下板30から構成されており、上板28の下面に下板
30が重ね合わされて、下板30の両端縁部が上板28
に溶着されることによって、一体的に取り付けられてい
る。また、上板28の中央には、第一の取付ボルト18
が上方に向かって突設されている。なお、第一の取付ボ
ルト18は、上下板28、30の中央挿通孔33,35
に下側から挿通されて、軸方向中間部分に一体形成され
た環状突出部31が上板28の下面に溶着されている。
また、第一の取付ボルト18の下端部は、下板30を貫
通して下方に向かって突出せしめられていると共に、そ
の突出先端部に大径のストッパ頭部37が一体形成され
ている。
【0041】また、第二の取付金具24は、鋼鈑のプレ
ス加工等によって形成された一枚の矩形平板状を有して
おり、中央に位置する中央平板部32を挟んだ長手方向
両側が、第一の取付金具22側(図7中、上側)に向か
って斜め上方に立ち上げられた傾斜板部34,34とさ
れている。また、第二の取付金具24における中央平板
部32の中央には、下方に向かって突出する第二の取付
ボルト36が固設されている。更にまた、第一の取付金
具22における下板30の両側の傾斜板部38,38
と、第二の取付金具24における両側の傾斜板部34,
34は、それぞれ、マウント中心軸40を挟んだ両側に
おいて、該マウント中心軸40に対して略同一角度だけ
傾斜した方向で、全面に亘って略一定の間隙を隔てて対
向位置せしめられている。そして、これら両傾斜板部3
4,34と38,38の対向面間に、それぞれ、略矩形
ブロック形状を有する分割ゴムブロック42が介装され
ている。即ち、本実施形態では、これら一対の分割ゴム
ブロック42,42によって第一の取付金具22と第二
の取付金具24を弾性連結する本体ゴム弾性体26が構
成されている。
【0042】すなわち、本実施形態のゴムマウント16
は、二つの独立したゴムブロック42,42の単体での
弾性主軸44,44が、マウント中心軸40に対して、
該マウント中心軸40を含む一つの平面内で、該マウン
ト中心軸40に関して対称となるように、該マウント中
心軸40の両側にそれぞれ傾斜されているのであり、そ
れによって、かかるゴムマウント16は、全体として、
図7に示されているように、マウント中心軸40に沿っ
て延びる鉛直方向の弾性主軸と、図中で紙面に垂直な方
向に延びる水平方向の第一の弾性主軸と、図中の左右方
向に延びる水平方向の第二の弾性主軸を有している。こ
のような構造とされたゴムマウント16では、水平方向
の第一の弾性主軸の方向で、荷重入力時における本体ゴ
ム弾性体の主たる変形がせん断となって、水平方向にお
けるばね定数が最小となる一方、水平方向の第二の弾性
主軸の方向で、荷重入力時における本体ゴム弾性体26
に圧縮/引張の変形が生ぜしめられて、水平方向におけ
るばね定数が最大となる。これにより、かかるゴムマウ
ント16では、水平方向におけるばね定数の最小値と最
大値が、互いに直交する方向に設定されている。なお、
以下の説明では、ばね定数が最小値となる水平方向(図
7において、紙面に垂直な方向)を、ゴムマウント16
における水平基準方向という。
【0043】また、各ゴムブロック42には、弾性主軸
44方向の略中央部分において、ゴムブロック42の断
面よりも一回り大きな平板形状を有する拘束プレート5
1が、弾性主軸44に直交して広がる状態で配設されて
いる。なお、この拘束プレート51は、少なくともゴム
ブロック42よりも硬質の例えば鋼板等の金属材で形成
されており、ゴムブロック42に加硫接着されていると
共に、中央部分には、拘束プレート51を挟んだ両側に
分割状態で位置するゴムブロック42を相互に連結せし
める貫通孔が形成されている。
【0044】更にまた、本実施形態のゴムマウント16
においては、第一の取付金具22と第二の取付金具24
の対向面間の中央部分で、一対の分割ゴムブロック4
2,42間において、中央空所39が形成されており、
そこにストッパ機構が設けられている。かかるストッパ
機構は、第二の取付金具24の中央上面に略門形のスト
ッパ金具41が重ね合わされて溶着されていると共に、
このストッパ金具41の上底部に設けられたU字形の切
欠孔43に対して、第一の取付ボルト18の下端部分が
側方から差し込まれて挿通配置されることにより構成さ
れている。そして、第一の取付ボルト18やそれに突設
されたストッパ頭部37が、ストッパ金具41や第二の
取付金具24に当接することによって、第一の取付金具
22と第二の取付金具24の相対変位量を制限するスト
ッパ機構が構成されている。
【0045】このような構造とされたゴムマウント16
は、その第一の取付金具22が分割マス14に対して固
着されている。なお、特に本実施形態では、図10に示
されているように、高さ寸法が全体に亘って一定とされ
た一般圧延鋼板を平面矩形の平板状に切断加工した板状
分割マス20の複数枚を重ね合わせて分割マス14とさ
れている。そして、ゴムマウント16における第一の取
付ボルト36が上方に長く突出されており、この第一の
取付ボルト36が、重ね合わされた板状分割マス20の
全てに亘って貫設された取付孔45に挿通されて、先端
部に螺着されたナット47でそれらの板状分割マス20
の全てを束ねるようにして固定している。即ち、本実施
形態では、第一の取付ボルト36によって、複数の板状
分割マス20の締結手段が構成されている。
【0046】また、本実施形態では、図10,11に示
されているように、4個のゴムマウント16が、矩形平
板形状の分割マス14における四隅部分に対して、それ
ぞれ取り付けられており、それによって、一つの分割副
振動系17が構成されている。また一方、ゴムマウント
16の第二の取付金具24は、図10に示されているよ
うに、第二の取付ボルト36により、住宅の最上階の天
井の構造部材18等に取り付けるための取付部材として
の固定プレ−ト49に固着されている。これにより、建
築構造物12の構造部材18に対して、各分割副振動系
17における分割マス14が、4個のゴムマウント16
を介して、弾性的に取り付けられているのであり、以
て、分割マス14をマス部材とし、4個のゴムマウント
16をバネ部材とする一つの分割副振動系17が構成さ
れ、この分割副振動系17が複数設置されることによっ
て、建築構造物12からなる主振動系に対する副振動系
として機能する制振装置(TMD)10が構成されてい
る。
【0047】なお、各分割副振動系17の装着状態下で
は、分割マス14が、水平方向に広がる状態で支持され
ていると共に、各ゴムマウント16は、何れも、そのマ
ウント中心軸18が鉛直方向に延びる状態で配設されて
いる。
【0048】また、本実施形態の制振装置10における
各分割副振動系17においては、図11に示されている
ように、4個のゴムマウント16が、分割マス14にお
いて互いに直交して水平方向に延びる2本の対称軸X,
Yを挟んで、それぞれ対称位置するように配設されてい
る。なお、本実施形態では、分割マス14における2本
の対称軸X,Yが、何れも、分割マス14の水平方向に
延びる慣性主軸とされている。また、分割マス14と4
個のゴムマウント16からなる弾性支持系において、そ
の鉛直方向に延びる弾性主軸が、分割マス14の重心を
通るように設定されている。具体的には、図11におい
て、第一のゴムマウント16aと第二のゴムマウント1
6bおよび第三のゴムマウント16cと第四のゴムマウ
ント16dが、それぞれ、第一の対称軸Xに関して互い
に対象位置せしめられていると共に、第一のゴムマウン
ト16aと第三のゴムマウント16cおよび第二のゴム
マウント16bと第四のゴムマウント16dが、それぞ
れ、第二の対称軸Yに関して互いに対象位置せしめられ
ている。
【0049】また、これら4個のゴムマウント16a〜
dは、その取付方向も、分割マス14の二本の対象軸
X,Yを挟んで、それぞれ対称となるように設定されて
いる。具体的には、図11において、第一の対称軸:X
に関しては、第一のゴムマウント16aの水平基準方向
線48aの交角:θxaと第二のゴムマウント16bの水
平基準方向線48bの交角:θxbが同一となると共に、
第三のゴムマウント16cの水平基準方向線48aの交
角:θxcと第四のゴムマウント16dの水平基準方向線
48dの交角:θxdが同一となるように設定されてい
る。また、第二の対称軸:Yに関しては、第一のゴムマ
ウント16aの水平基準方向線48aの交角:θyaと第
三のゴムマウント16cの水平基準方向線48cの交
角:θycが同一となると共に、第二のゴムマウント16
bの水平基準方向線48bの交角:θybと第四のゴムマ
ウント16dの水平基準方向線48dの交角:θydが同
一となるように設定されている。
【0050】このように4個のゴムマウント16a〜d
の取付方向が設定されることにより、ゴムマウント16
a〜dの取付方向を変更した場合でも、分割マス14と
4個のゴムマウント16a〜dで構成された副振動系全
体としての水平方向における弾性主軸の方向が、分割マ
ス14における第一の対称軸:Xの方向と、第二の対称
軸:Yの方向とに維持されるようになっている。そし
て、これら第一の対称軸:Xの方向と、第二の対称軸:
Yの方向が、それぞれ、制振対象たる住宅などの建築構
造物において防振すべき主たる振動の方向、例えば、平
面矩形の枠体構造を有する住宅の場合には、各辺に平行
な方向となるように、分割副振動系17の住宅に対する
設置方向が決定される。これにより、副振動系を構成す
る分割副振動系17に対して、防振すべき2方向の振動
が、何れも、該分割副振動系17における弾性主軸方向
に入力されることとなり、それら2方向に入力される各
振動に対して、何れも、有効な制振効果が発揮され得る
のである。
【0051】また、かかる分割副振動系17において
は、上述の如く、マウント中心軸40の回りで水平方向
のばね定数が異方性とされたゴムマウント16a〜dを
ばね部材として採用したことにより、かかるゴムマウン
ト16a〜dの取付方向を変更することによって、防振
すべき振動の入力方向となる2つの弾性主軸方向(第一
の対称軸:Xの方向および第二の対称軸:Yの方向)で
のばね定数が、何れも、変更されるようになっている。
具体的には、本実施形態では、各ゴムマウント16a〜
dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値が小さく
なるに従って、分割副振動系17における第一の対称
軸:Xの方向でのばね定数が小さく、第二の対称軸:Y
の方向でのばね定数が大きくなる方向に変更される。そ
の結果、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:X
に対する交角:θx の値を小さくすることによって、分
割副振動系17における第一の対称軸:Xの方向での固
有振動数を低周波側に、且つ第二の対称軸:Yの方向で
の固有振動数を高周波側に、それぞれ移行させることが
出来、また、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称
軸:Xに対する交角:θx の値を大きくすることによっ
て、分割副振動系17における第一の対称軸:Xの方向
での固有振動数を高周波側に、且つ第二の対称軸:Yで
の方向の固有振動数を低周波側に、それぞれ移行させる
ことが出来るのである。
【0052】それ故、上述の如き構造とされた分割副振
動系17においては、バネ部材としてのゴムマウント1
6の何れも交換,変更することなく、防振すべき一つの
水平振動の入力方向において、その固有振動数を調節,
変更することが出来るのである。即ち、制振装置10を
構成する複数の分割副振動系17として、同一の分割マ
ス14と同一のゴムマウント16を採用することが可能
となり、それによっても、各分割副振動系17に対して
異なる固有振動数を設定することが出来ることから、目
的とする制振装置10が、低コストで提供されると共
に、極めて優れた設置作業性が実現されるのである。
【0053】しかも、上述の如き構造とされた分割副振
動系17の複数個によって制振装置10を構成した場合
には、各分割副振動系17における各ゴムマウント16
a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値を異
ならせて、それら分割副振動系17における第一の対称
軸:Xの方向での固有振動数を、相互に異なる周波数域
にチューニングすると、同時に、それら各分割副振動系
17における第二の対称軸:Yの方向での固有振動数
も、相互に異なる周波数域にチューニングされることか
ら、建築構造物において互いに直交する二つの水平方向
の振動に対して、何れも、広い周波数域に亘る有効な制
振効果を、容易に且つ有利に得ることが可能となるので
ある。
【0054】以上、本発明の実施形態について詳述して
きたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、か
かる実施形態における具体的な記載によって、何等、限
定されるものでない。
【0055】例えば、本発明の制振装置を構成する分割
副振動系において採用されるゴムマウントの構造や、そ
の配設数および配設形態手等は、前記実施形態における
具体的な記載によって何等限定的に解釈されるものでな
く、従来から公知の各種のゴムマウントが、何れも採用
可能であり、特に、マウント中心軸に対して直角な方向
のばね特性が全方向で一定とされたゴムマウント等も、
採用可能である。
【0056】さらに、各分割副振動系17において、分
割マス14の構造部材18に対する変位に際して減衰力
を及ぼし得る減衰器も、必要に応じて採用可能である。
【0057】また、制振装置10の配設位置も、例示の
如き最上階の天井部分の他、床下部分等、建築構造物の
構造や振動モード等を考慮して、適宜に変更可能であ
る。更にまた、制振装置10を構成する各分割副振動系
17を、それぞれ異なる箇所に設置することも可能であ
る。
【0058】加えて、本発明は、例示の如き3階建の住
宅の他、1階建や2階建、或いは4階建以上の住宅、或
いは倉庫やビル,タワー等、各種の建築構造物用の制振
装置に対して、何れも適用可能であることは、言うまで
もない。
【0059】その他、一々列挙はしないが、本発明は、
当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等
を加えた態様において実施され得るものであり、また、
そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限
り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであること
は、言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】上述の説明から明らかなように、本発明
に従う構造とされた制振装置においては、副振動系にお
けるチューニング周波数が、主振動系たる建築構造物の
防振すべき振動周波数からずれた場合でも、有効な振動
低減効果を、安定して得ることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての制振装置の建築構
造物(住宅)への装着状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第一の実施例としての制振装置におけ
る振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示
すグラフである。
【図3】本発明の第二の実施例としての制振装置におけ
る振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示
すグラフである。
【図4】本発明の第三の実施例としての制振装置におけ
る振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示
すグラフである。
【図5】本発明の第四の実施例としての制振装置におけ
る振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示
すグラフである。
【図6】本発明の第五の実施例としての制振装置におけ
る振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示
すグラフである。
【図7】図1に示された制振装置を構成する一つの分割
副振動系に採用されているゴムマウントを示す正面図で
ある。
【図8】図7に示されたゴムマウントの平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX断面図である。
【図10】図1に示された制振装置を構成する一つの分
割副振動系を示す横断面説明図である。
【図11】図10に示された一つの分割副振動系の構造
を説明するための平面図である。
【符号の説明】
10 制振装置 12 住宅 14 分割マス 16 ゴムマウント 17 分割副振動系

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 建築構造物に対してマス部材をバネ部材
    で弾性支持せしめることにより、該建築構造物に対する
    副振動系を構成する制振装置において、 前記マス部材を、質量が同一の複数の分割マスによって
    構成すると共に、それら各分割マスを、前記バネ部材に
    よって前記建築構造物に対して互いに独立して弾性支持
    せしめて、互いに異なる周波数域にチューニングされた
    複数の分割副振動系を構成する一方、かかる複数の分割
    副振動系の中で固有振動数が最小のものと最大のものの
    各分割副振動系における固有振動数を、該建築構造物の
    防振すべき固有振動数に対する比が相互に逆数となるよ
    うに設定し、且つ全ての分割副振動系における固有振動
    数が互いに等比数列をなすように設定したことを特徴と
    する制振装置。
  2. 【請求項2】 前記分割副振動系を奇数個設けると共
    に、その中央の固有振動数を有する分割副振動系の固有
    振動数を、前記建築構造物の防振すべき固有振動数に設
    定した請求項1に記載の制振装置。
  3. 【請求項3】 前記各分割副振動系におけるバネ部材
    を、それぞれ、該分割マスに対する取付方向を変更する
    ことによって、該分割副振動系における水平方向のばね
    定数を調節することの出来る可変ゴムマウントを含んで
    構成した請求項1又は2に記載の制振装置。
  4. 【請求項4】 前記各分割副振動系における固有振動数
    を、該建築構造物の防振すべき固有振動数に対する比の
    値が、0.4〜2.0の範囲となるように設定した請求
    項1乃至3の何れかに記載の制振装置。
JP25228299A 1999-09-06 1999-09-06 建築構造物の制振装置 Expired - Fee Related JP3807163B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25228299A JP3807163B2 (ja) 1999-09-06 1999-09-06 建築構造物の制振装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP25228299A JP3807163B2 (ja) 1999-09-06 1999-09-06 建築構造物の制振装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001074089A true JP2001074089A (ja) 2001-03-23
JP3807163B2 JP3807163B2 (ja) 2006-08-09

Family

ID=17235092

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP25228299A Expired - Fee Related JP3807163B2 (ja) 1999-09-06 1999-09-06 建築構造物の制振装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3807163B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003139191A (ja) * 2001-11-05 2003-05-14 East Japan Railway Co 振動防止装置
JP2017089307A (ja) * 2015-11-13 2017-05-25 積水ハウス株式会社 ダイナミックダンパー及び天井

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003139191A (ja) * 2001-11-05 2003-05-14 East Japan Railway Co 振動防止装置
JP2017089307A (ja) * 2015-11-13 2017-05-25 積水ハウス株式会社 ダイナミックダンパー及び天井

Also Published As

Publication number Publication date
JP3807163B2 (ja) 2006-08-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2002235454A (ja) 制振ダンパー装置
JPH0552237A (ja) 振動抑制装置
JP2009007901A (ja) 防振間柱
US6286782B1 (en) Apparatus and method for reducing vibrations of a structure particularly a helicopter
JP2001074089A (ja) 建築構造物の制振装置
JPH0593475A (ja) 弾塑性ダンパ
JP2001116082A (ja) 建築構造物の制振装置
JP2008286262A (ja) 制振床構造
JPH0526293A (ja) 振動抑制装置
JP3656476B2 (ja) 建築構造物の制振装置
JP4239903B2 (ja) 建築構造物用の振動低減装置
JP2001193312A (ja) 建築構造物の制振装置
JP2002030828A (ja) ブレースダンパー
JP2003247294A (ja) 遮音床構造
JP3838160B2 (ja) 制震装置
JP4232811B2 (ja) 建築構造物用の振動低減装置
JP2023064471A (ja) 床構造
JP6208782B2 (ja) 動吸振装置及び床
JP3501001B2 (ja) 建築構造物用の振動低減装置およびそのチューニング方法
JP6941480B2 (ja) 天井支持構造
JP2001082002A (ja) 建築構造物の制振装置
JP6148911B2 (ja) 減震ストッパ構造並びに当該減震ストッパ構造を備えた防振架台
JP4624266B2 (ja) 動吸振器
JPH03156044A (ja) 梁用制振装置
JP7122185B2 (ja) 床構造

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060105

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060131

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060329

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060425

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060508

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3807163

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090526

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100526

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110526

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110526

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120526

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120526

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130526

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140526

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees