近年、都市化の進展により、緑地の減少及び路面のコンクリート化、アスファルト化の拡大が進むことでヒートアイランド現象が発生し、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局所的な集中豪雨が都市部で頻発している。局所的な大量の降雨は、コンクリート化、アスファルト化した路面では、地中に吸収されることなくそのまま水路に導かれる。その結果、大量の雨水が、短時間のうちに排水機場に流入する。
頻発するこのような集中豪雨によってもたらされる大量の雨水の速やかな排水に備えるために排水機場に設置される排水ポンプでは、始動遅れによる浸水被害が生じないよう、雨水が排水機場に到達する前に予め始動させておく先行待機運転が行われている。
図1は、先行待機運転を行う立軸ポンプの部分概略図である。排水機場の水槽100には、立軸ポンプ3が配置される。立軸ポンプ3は、鉛直に配置された回転軸10と、回転軸10の先端に設けられたインペラ22とを備える。立軸ポンプ3は、インペラ22に水と共に空気を吸い込ませることにより、水槽100の水位が最低運転水位LWL以下であっても運転(先行待機運転)を継続することができる。この立軸ポンプ3には、インペラ22の入口側の吸い込みベル27の側面部に貫通孔5が設けられている。この貫通孔5には、外気に接する開口6aを備えた空気管6が取付けられている。これにより、この立軸ポンプ3では、貫通孔5を介して立軸ポンプ3内に供給する空気の供給量が水位に応じて変化され、最低運転水位LWL以下で立軸ポンプ3の排水量がコントロールされる。
図2は、先行待機運転の運転状態を説明する図である。前述したように、始動遅れによる浸水被害が生じないよう、例えば大都市の雨水排水用として、吸込水位に関係なく降雨情報等に基づいて予め立軸ポンプが始動される(A:気中運転)。雨水が排水機場に到達すると、低水位の状態から水位が上昇するに従って、インペラの位置まで水位が達し、立軸ポンプは空運転(気中運転)からインペラで水を撹拌する運転(B:気水撹拌運転)へ移行する。さらに、立軸ポンプは、貫通孔を経て供給される空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に増やす運転(C:気水混合運転)を経て、100%水の排出を行う全量運転(D:定常運転)へ移行する。また、高水位から水位が低下するときは、全量運転から貫通孔を経て供給する空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に減らす運転(C:気水混合運転)へ移行する。水位がLLWL近くに至ると、水を吸い込まず排水もしない運転(E:エアロック運転)へ移行する。これら5つの特徴ある運転を総称して先行待機運転という。なお、ポンプ始動は、ケーシング下端よりも低い水位LLLWLから開始する。尚、気水混合運転時にスラスト方向の上下荷重の変動が激しくなる。
図3は、図1に示した先行待機運転を行う従来の立軸ポンプ3の全体を示す断面図である。なお、図2に示した貫通孔5及び空気管6は図示省略されている。図3に示すように、立軸ポンプ3は、吐出エルボ30と、ケーシング29と、吐出ボウル28と、吸い込みベル27と、を備える。吐出エルボ30は、ポンプ設置床に設置固定される。ケーシング29は、この吐出エルボ30の下端に接続される。吐出ボウル28は、ケーシング29の下端に接続されるとともにインペラ22を内部に格納する。吸い込みベル27は、吐出ボウル28の下端に接続されるとともに水を吸い込む。
立軸ポンプ3のケーシング29、吐出ボウル28、及び吸い込みベル27の径方向略中心部には、上下二本の軸が軸継手26によって互いに接続されることにより形成された一本の回転軸10が配置されている。回転軸10は、支持部材を介してケーシング29に固定されている上部すべり軸受装置32と、支持部材を介して吐出ボウル28に固定されている下部すべり軸受装置33によって支持されている。回転軸10の一端側(吸い込みベル27側)には、水を立軸ポンプ3内に吸い込むためのインペラ22が接続されている。回転軸10の他端側は、吐出エルボ30に設けられた孔を通って立軸ポンプ3の外部へ延び、インペラ22を回転させるエンジンやモータ等の駆動機へ接続される。
回転軸10と吐出エルボ30に設けられた孔との間には、フローティングシール、グランドパッキンまたはメカニカルシール等の軸シール34が設けられており、軸シール34により立軸ポンプ3が扱う水が立軸ポンプ3の外部に流出することを防止する。
駆動機は、保守点検を容易に行うことができるように陸上に設けられる。駆動機の回転は回転軸10に伝達され、インペラ22を回転させることができる。インペラ22の回転によって水は吸込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28、ケーシング29を通過して吐出エルボ30から吐出される。
図4は、図3に示したすべり軸受装置32,33に用いられるすべり軸受装置の拡大図である。図5は、図4に示すすべり軸受装置に設置されたすべり軸受の斜視図である。図4に示すように、回転軸10は、その外周に、ステンレス鋼、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなるスリーブ11を有している。スリーブ11の外周側には、中空円筒の樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなるすべり軸受1が設けられている。スリーブ11の外周面は、すべり軸受1の内周面(すべり面)と非常に狭いクリアランスを介して対面し、すべり軸受1に対して摺動するように構成されている。すべり軸受1は、金属又は樹脂からなる軸受ケース12によりつば部12aを介してポンプのケーシング29(図3参照)等へ繋がる支持部材13に固定されている。図5に示すように、すべり軸受1は中空円筒状の形状を有しており、内周面1aがスリーブ11の外周面と対面し、外周面1bが軸受ケース12に嵌合される。
図6は、図3に示した立軸ポンプ3の上部における、立軸ポンプ3とモータ等の駆動機との接続状況を示した模式図である。立軸ポンプ3の上部における吐出エルボ30から、軸シール34により回転軸10と吐出エルボ30との間が軸封された状態で上部に延びた回転軸10は、その端部においてカップリング51により原動機50の回転軸56と接続する。原動機50は、原動機50を支持する原動機架台52の上に固定される。原動機架台52は、架台53に固定される。回転軸10にはラジアル力を受ける転がり軸受55および、スラスト力を受ける転がり軸受55´が設けられる。転がり軸受55、55´は軸受ハウジング54に収納されている。軸受ハウジング54は架台53に固定されている。軸受ハウジング54内には、転がり軸受55の潤滑に必要な潤滑油が満たされている。
ところで、近年、ポンプ機場はより深い地下に配置されるようになり、それに応じて先行待機ポンプも長軸化が進んでいる。回転軸を長くすればするほど、回転軸には軸の振れ回りが激しくなる部分が生じる。この軸の振れ回りを抑制するために、回転軸に沿ってすべり軸受を適切な位置により多く配置する必要が生まれてきた。
しかしながら、このことにより、新たな技術的課題が発生する虞がある。図7A及び図7Bは、軸の振れ回りが激しくなる部分にすべり軸受装置32,33を配置したポンプにおける回転軸10、スリーブ11、及びすべり軸受1の状態を示す模式的断面図である。ドライ運転においては、すべり軸受装置32,33のすべり軸受1と回転軸10に取り付
けたスリーブ11とが摺動する際に、接触部(斜線で示される部分)での摩擦力が大きくなり摩耗が促進し、同時に発生する摩擦熱が大きくなる。そのため、すべり軸受1やスリーブ11の損傷が懸念される。
これに対して、ドライ運転時であっても、すべり軸受の摺動面が水中に存在する状態でポンプを運転することができるように、従来から、回転軸及びすべり軸受を保護管で囲繞して、保護管内に清水を通水させたり、全てのすべり軸受装置を、すべり軸受装置内に水を溜めて摺動面が水中に存在する状態にしたものに置き換えたりすることが提案されている。しかしながら、保護管を用いる場合は、保護管に水を供給する付帯設備が必要になるし、すべり軸受装置のメインテナンスが困難である。また、先行待機ポンプも長軸化が進んでいるので、保護管に水を供給する送水ポンプの大型化や、保護管の耐圧強化のための管壁の厚みの増大などが必要になり、コストが割高になる。また、全てのすべり軸受装置を、すべり軸受装置に水を溜めて摺動面が水中に存在する状態にしたものに置き換える場合は、そもそも、このようなすべり軸受装置の構造が複雑であるのでコストが割高になることや、メインテナンスが困難であるといった問題がある。このうえ、長軸化が進んでいるので、すべり軸受装置の配置数も多くなり、コスト的な負担やメインテナンスの煩雑さが倍増する。また、このようなすべり軸受装置は、サイズが比較的大きくなるので、水流の抵抗となり、ポンプ性能を低下させるという課題がある。
そもそも、回転軸の振れ回り自体を、全体として適切に低減すれば良いのであるが、これまで、立軸ポンプにおける対策は、どちらかといえば負荷の大きい軸受に関する対策等、局部的な対策が多かった。
そこで、発明者等は、ドライ運転の摺動時に、互いに逆向きの摩擦力による偶力を生じさせて摩擦力を相殺し、回転軸の振れ回りを抑制する仕組みを有するすべり軸受装置を発明した(特許文献1参照)。
このすべり軸受装置では、相殺される力が、回転軸の軸方向に垂直な振れ幅(径方向の振れ幅)の大小に依存する。すなわち、回転軸の振れ回りの大きい場所(腹)にこのすべり軸受装置を配置した場合は、振れ回りを抑制する効果が大きいが、回転軸の振れ回りの小さい場所(節)にこのすべり軸受装置を配置した場合、この効果が得にくくなる。
しかしながら、上下に長く伸びた立軸ポンプの回転軸のどの部分の振れ幅が最大(腹)であるか、最小(節)であるかを予め正確に把握することは難しく、回転軸の軸方向に垂直な振れ幅が小さい節の位置に、このすべり軸受装置を誤って配置してしまう虞があった。このすべり軸受装置を節の位置に配置した場合には、回転軸の振れ回りを抑制することは困難となる。また、一度すべり軸受を立軸ポンプに取り付けた後は、その位置を修正変更できない。また、この発明のすべり軸受装置は、サイズが大きいので、ポンプ性能や流体の流れを阻害しないように配置する必要があり、その配置位置には制限がある。そのため、配置可能な位置によっては、十分な逆向きの偶力を発揮できない場合もあった。
そこで、発明者らは、大気雰囲気で使用されるすべり軸受装置の摺動面で発生する摩擦力に対して、常時液体雰囲気で使用されるすべり軸受装置の摺動面で発生する軸受内液膜効果による周方向流体力は、摩擦力とは逆向きの力であること、さらに液膜効果による周方向流体力の回転軸の軸方向に垂直な振れ幅の大きさへの依存性は、ドライ運転時の摩擦力に比べて小さく、液膜効果による周方向流体力は、回転軸の振れの発生位置が腹であるか節であるかでなく、むしろ回転数の大きさに影響されることに着目した。そして、回転軸のラジアル力を受ける軸受を転がり軸受ではなく、液膜効果を生じる真円のジャーナル軸受とし、液膜効果による周方向流体力と、摩擦力とを相殺することで、立軸ポンプの回転軸の振れ回りを全体的に抑制することを提案し、一定の成果を得ることができた(特許
文献3参照)。
図8は、大気(ドライ)運転時に、摺動面に液体の潤滑のない大気雰囲気で運転されるすべり軸受装置の摺動部分に働く力を模式的に示す断面図である。すなわち、図8に示すように、大気(ドライ)運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で回転軸10が回転すると、回転軸10に固定されたスリーブ11が回転する。大気雰囲気でこのすべり軸受装置が使用される場合、回転軸10の振れ回りによりスリーブ11の外周面がすべり軸受1に点Aにて接触したときに、回転軸10には軸受反力FANが発生する。この軸受反力FANによって、回転軸10の回転方向とは逆方向に摩擦力FAFが発生し、この摩擦力FAFが回転軸10に回転方向とは逆方向の振れ回り振動を引き起こす不安定化力となる。
ここの場合の不安定化力である摩擦力FAFの大きさの程度は、回転軸10の軸方向に垂直な振れ幅(即ち、回転軸10の径方向の振れ幅)の大きさに依存する。すなわち、摩擦力FAFの大きさは、この回転軸10の振れが腹であるか節であるかに比較的敏感である。
一方、図9は、軸受ハウジング内に収容されて、摺動面が潤滑油や水などの液体に浸された液中雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受61の摺動部分に働く力を模式的に示す図である。回転軸10が回転すると、回転軸10に固定され一体化された転動体65が回転する。摺動面が潤滑油や水などの液体雰囲気にあるので、転動体65とラジアルすべり軸受61の間に液膜が構成される。このとき、液膜には転動体65の回転による周方向の圧力不均一が生じ、その結果、転動体65に半径方向流体力FARと周方向流体力FATが発生する。この現象による効果を軸受内液膜効果といい、この周方向流体力FATは、図8に関連して説明したドライ運転で発生する摩擦力FAFとは逆回転方向(逆方向)の力である。
この場合、回転軸10の軸方向に垂直な振れ幅の大きさへの周方向流体力FATの依存性は、図8におけるドライ運転時の摩擦力FAFに比べて小さい。すなわち、周方向流体力FATは、回転軸10の振れの発生位置が腹であるか節であるかでなく、むしろ回転数の大きさに影響される。
以上の二つの原理に基づき、これらのすべり軸受装置を有する立軸ポンプでは、ドライ運転で発生する摩擦力FAFと、それを相殺する液膜効果による周方向流体力FATによって、立軸ポンプの振れ回り振動の抑制が行われるものである。
以下、本発明に係る立軸ポンプ、およびそれに用いるすべり軸受装置の実施形態を、図面を参照して説明する。同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。本明細書において、「上部」及び「下部」とは、立軸ポンプが移送する液体の下流側(図示において「吐出」側)及び上流側(図示において「吸込」側)をそれぞれ意味するものとして説明する。
図10は、本実施形態に係る立軸ポンプ3の縦断面図である。立軸ポンプ3はポンプケーシング内にポンプの揚水対象の水がない状態で回転軸を運転することがあるポンプである。立軸ポンプにはそのような状態で管理運転を行うものや、先行待機運転において、気
中運転を行うものもある。図10では先行待機運転を行う立軸ポンプを例示している。なお、管理運転とは、降水が稀な季節のためポンプの停止状態が継続している時期に、ポンプが正常に運転できるかどうかを点検するための運転であって、ポンプケーシング内がドライな状態で行う運転である。その運転時間は、十数分から数十分になる場合もある。
図10に示すように、立軸ポンプ3は、ポンプ設置床に設置固定される吐出エルボ30と、この吐出エルボ30の下端に接続されるケーシング29と、ケーシング29の下端に接続されるとともにインペラ22(羽根車の一例に相当する)を内部に格納する吐出ボウル28と、吐出ボウル28の下端に接続されるとともに水を吸い込むための吸い込みベル27とを備えている。吸い込みベル27の下端から吐出エルボ30の吐出端部までをポンプケーシングと呼ぶ。
インペラ22の入口側の吸い込みベル27の側面部には貫通孔が設けられており、この貫通孔には、外気に接する開口を備えた空気管6が取り付けられている。これにより、この立軸ポンプ3は、貫通孔を介して立軸ポンプ3内に供給する空気の供給量を水位に応じて変化させ、立軸ポンプ3の排水量がコントロールされる。
立軸ポンプ3のケーシング29、吐出ボウル28、及び吸い込みベル27の径方向略中心部、すなわちポンプケーシング内部には、回転軸10が配置されている。回転軸10の一端側(吸い込みベル27側)には、水をポンプ内に吸い込むためのインペラ22が接続されている。
回転軸10は、軸方向の適当な位置で、支持部材を介してケーシング29に固定されているすべり軸受装置32と、吐出ボウル28の内筒に支持部材を介して固定されているすべり軸受装置33、及び/又はインペラ22を貫通した回転軸10の場合において回転軸10の下端部で、支持部材を介してケーシング29に固定されているすべり軸受装置33によって支持されている。すべり軸受装置32,33は、大気運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受装置であってよい。大気運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受装置とは、図4および図5にて示したすべり軸受装置である。
すなわち、図4に示すように、このすべり軸受装置は、回転軸10の外周に、ステンレス鋼、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属等からなるスリーブ11を有している。スリーブ11の外周側には、中空円筒の樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなるすべり軸受1が設けられている。スリーブ11の外周面は、すべり軸受1の内周面(すべり面)と非常に狭いクリアランスを介して対面し、すべり軸受1に対して摺動するように構成されている。すべり軸受1は、金属又は樹脂からなる軸受ケース12によりつば部12aを介してポンプのケーシング29等へ繋がる支持部材13に固定されている。図5に示すように、すべり軸受1は中空円筒状の形状を有しており、内周面1aがスリーブ11の外周面と対面し、外周面1bが軸受ケース12に嵌合される。すべり軸受装置33とすべり軸受装置32はともに1か所以上配置され、両者合わせて複数のすべり軸受装置となる。
回転軸10の上端側は、吐出エルボ30に設けられた孔を通って立軸ポンプ3の外部へ延び、インペラ22を回転させるエンジンやモータ等の駆動機へ接続される。回転軸10と吐出エルボ30に設けられた孔との間には、フローティングシール、グランドパッキンまたはメカニカルシール等の軸シール34が設けられており、軸シール34により立軸ポンプ3が扱う水が立軸ポンプ3の外部に流出することを防止する。
駆動機は、保守点検を容易に行うことができるように陸上に設けられる。駆動機の回転
は回転軸10に伝達され、インペラ22を回転させることができる。インペラ22の回転によって水が吸込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28、ケーシング29を通過して吐出エルボ30から吐出される。
図11は、本実施形態に係る立軸ポンプ3の回転軸10と原動機50の回転軸56の接続状況を示した模式図である。立軸ポンプ3の上部における吐出エルボ30から、軸シール34により回転軸10と吐出エルボ30との間が軸封された状態で上部に延びた回転軸10は、その端部においてカップリング51により原動機50の回転軸56と接続する。原動機50は、原動機50を支持する原動機架台52の上に固定される。回転軸10にはラジアル力を受ける転がり軸受55および、スラスト力を受ける転がり軸受55´が設けられる。転がり軸受55、55´は軸受ハウジング63に収納されている。軸受ハウジング63は架台53に固定されている。軸受ハウジング63内には、転がり軸受55の潤滑に必要な分まで潤滑油が満たされている。
ところで、立軸ポンプの回転軸10の上部は、以上で説明した構造により、比較的しっかりと拘束されている。すなわち、回転軸10の転がり軸受55、55´とそれを支持する軸受ハウジング63が、それらを支える剛性の大きい架台53にしっかり固定されている。そのため、軸受ハウジング63近傍の回転軸10の振れはそれらに拘束されている。しかし、軸受ハウジング63より下方は、インペラ22までの距離が長いので、回転軸10をそのまま回転させると振れ回りが生じることがある。その振れ回りの程度は高さ方向の位置により異なる。この振れ回りを抑制するように、ポンプケーシング内にすべり軸受装置32,33を設けて回転軸10を支持している。
すべり軸受装置32の配置については、設計段階において、経験、あるいは便法的な計算により、回転軸10の太さ、長さ、回転数、インペラの重さや枚数等の条件から、回転軸10の振れ回りの大きい位置を割り出し、それに基づいて軸方向のどの辺りに、いくつ配置するかをある程度決めている。しかしながら、回転軸10の振れ回りの大きい位置として予測されたすべり軸受装置32の配置位置が、実際の振れ回りの大きい位置からずれてしまうことがある。また、このすべり軸受装置32の配置位置は、立軸ポンプ3を組み立てた後に修正することはできない。
特に、回転軸10が長くなるほど、回転軸10に振れ回りの大きい部分が複数の場所に生じやすくなる。それを抑制するために、回転軸10の軸方向に沿ってすべり軸受装置32をより多く配置する必要が生じる。しかしながら、これにより、すべり軸受装置32の配置位置が実際の回転軸10の振れ回りが大きい位置からずれるケースがますます多くなり、また、ずれの大きさも拡大し得る。すなわち、複数のすべり軸受装置の一部は、回転軸10の振れ回りの極端に小さい、いわゆる「節」の位置に配置されてしまうといったことが生じる。
ところで、ドライ運転においては、ポンプケーシング内のすべり軸受装置32,33におけるすべり軸受1と、回転軸10に取り付けたスリーブ11とが摺動する際に、接触部での摩擦力が大きくなり、発生する摩擦熱が大きくなる。そのため、すべり軸受1やスリーブ11の損傷が懸念される。
特に、回転軸10の振れ回りの大きい所に備えたすべり軸受装置32,33ほど軸受荷重が大きいので、摺動する相手方の回転軸10に取り付けたスリーブ11の局所的な摩耗や高温化が生じやすくなり、立軸ポンプ3の回転体(回転軸10及びスリーブ11)と固定体(すべり軸受1)との干渉による振動や軸受荷重が増加する。
そこで、本実施形態に係る立軸ポンプ3は、ポンプケーシング外部の原動機架台52部
分において、回転軸10のラジアル力とスラスト力を受ける軸受装置として転がり軸受55、55´を備えるとともに、回転軸10を囲繞したすべり軸受61を備える。軸受ハウジング63内に収容された転がり軸受55、55´およびすべり軸受61は、潤滑油や水等の液体に浸漬される。
図12は、本実施形態に係るポンプケーシング外部の原動機架台52部分に備えられた軸受装置60の縦断面図である。図12に示すように、軸受装置60は、軸受ハウジング63を有する。軸受ハウジング63は、回転軸10の径よりやや大きい径の略円筒壁である内筒63aと、内筒63aより大きい径の略円筒壁の外筒63bと、内筒63a及び外筒63bの壁面の下部同士を接続する底板63dと、転がり軸受55、55´および、回転軸10を囲繞するすべり軸受61aの上部に位置し、外筒63bの壁面の上部と接続する天板63cを有する。これらにより、軸受ハウジング63は、潤滑油や水などを受液できる槽を形成している。各部材は分解可能であるが、組み立てられた状態では互いに水密に接合しており、形成される軸受ハウジング63内に液体を注入しても外部に漏洩することはない。
内筒63aの内側には、回転軸10が延在する。回転軸10は、この内筒63aを外側から覆うように構成された転動体65を備えている。転動体65は回転軸10と一体となって回転するように構成されている。天板63cと転動体65及び回転軸10等を含む回転体との間は、わずかな隙間が形成されるか、リップシール等の摺動シール部材によりほぼ封止されている。内筒63aと転動体65及び回転軸10との間には、内筒63aの上端および側面と転動体65及び回転軸10とが干渉しないように、円環状に隙間通路71が形成されている。
本実施形態の軸受装置60によれば、軸受ハウジング63内の空間に水や油等の液体を、内筒63aの上端の高さFLまで注入して、立軸ポンプ3を運転することが可能となる。軸受ハウジング63の内筒63aの上端部は、転がり軸受55よりも、高い位置まで延びている。FLを越えて液体を注入すると、液体が内筒63aの上端を溢流してしまうので、レベル計70等により、溢流しないレベルに液面が維持されるように、液面が監視される。
回転軸10は、上方に配置され、ラジアル方向の摺動荷重を受けるように構成されたラジアル転がり軸受55と、下方に配置され、スラスト方向の摺動荷重を受けるように構成されたスラスト転がり軸受55´により支持される。ラジアル転がり軸受55の外輪は外輪の支持部材72に固定されている。外輪の支持部材72は軸受ハウジング63の天板63cに固定されている。スラスト転がり軸受55´の外輪は、軸受ハウジング63の底板63dに固定されている。尚、転がり軸受55、55´の内輪は回転軸10(転動体65)に固定されている。
転がり軸受55と転がり軸受55´との間には、回転軸10(転動体65)の摺動部分が位置しており、軸受装置60は、回転軸10(転動体65)を囲繞するすべり軸受61aを備えている。すべり軸受61aは、回転軸10(転動体65)の摺動部分に対応するように位置している。なお、回転軸10(転動体65)の少なくとも摺動面は、ステンレス鋼、セラミックス、焼結金属、又は表面改質された金属からなる。また、回転軸10(転動体65)の摺動面に相対するすべり軸受1、61aは、樹脂材料、セラミックス、焼結金属、又は表面改質された金属からなる。
図12において、すべり軸受61aは、回転軸10の軸方向に平行な分割面を有し、回転軸10の周囲で分割面同士が接続してすべり軸受を構成している。すべり軸受61aの内面形状は、真円または多円弧である。したがって、すべり軸受61aは、真円軸受また
は多円弧軸受である。すべり軸受61aは、すべり軸受の支持部材73により支持されている。すべり軸受の支持部材73は軸受ハウジング63の天板63cに固定されている。但し、天板63cには、外輪の支持部材72とすべり軸受61aの支持部材73を天板63cに締結するために、取付金具(ブラケット、アングル)やスタッドボルト等の図示しない締結要素及びボルト穴等の図示しない締結孔が設けられる。したがって、外輪の支持部材72および、すべり軸受の支持部材73は天板63cに対して脱着可能である。
ところで、軸受内液膜効果は、すべり軸受の径方向に切断した断面形状にも依存する。図13Aから図13Dは、すべり軸受1の径方向に切断した断面形状による典型的な軸受の種類を説明する図である。図13Aは真円軸受を示し、図13B及び図13Cは多円弧軸受を示し、図13Dはティルティングパッド軸受を示す。また、具体的には、図13Bは、2円弧軸受を示し、図13Cはオフセット軸受を示す。なお、図13Aから図13Dにおいて、斜線部は回転軸10を表している。
図13Aに示す真円軸受は、概ね軸方向に沿った溝41を摺動面に有し、溝41により水や潤滑油をすべり軸受1の軸方向に速やかに供給する。なお、図13Aに示す真円軸受は、溝41を備えない場合もある。図13Aの真円軸受の溝41が形成されていない部分の摺動面の半径はrで、中心はOである。真円軸受はこれら3種類の軸受中で最も軸受内液膜効果が生じやすく、したがってそれによる力も生じやすい。
図13Bに示す2円弧軸受も、図13Aの真円軸受と同様に軸方向に沿った溝41を摺動面に有する。図13B及び図13Cに示す多円弧軸受は、基本的に、回転軸10が摺動するすべり軸受面の半径はrであるが、このすべり軸受面は、中心が異なる複数の円弧が組み合わさって構成されている。図13Bに示す2円弧軸受と図13Cに示すオフセット軸受は、2つの円弧に対する中心O1とO2を有する。2以上の円弧を有する多円弧軸受も構成され得る。多円弧軸受は、これら3種類の中で真円軸受ほどではないが、それでも軸受内液膜効果が生じ得る。
図13Dに示すティルティングパッド軸受は、回転軸10の周りにピボット42を支点として傾斜運動ができるようなパッド43と呼ばれるすべり軸受面を複数有し、回転軸10の周囲を囲んでいる。ティルティングパッド軸受は、軸受内液膜効果が生じない。
従来は、すべり軸受1の摺動面に回転軸10が液中で摺動することで液膜効果が生じると、立軸ポンプ3の回転軸10に不安定力がかかるので、液膜効果の生じないようにティルティングパッド軸受を用いることも多かった。しかしながら、本実施形態においては、すべり軸受61aを摺動部が常時液中にある状態で使用することで液膜効果をあえて生じさせ、先行待機運転のドライ運転時に、ドライな摺動面のすべり軸受32、33によって回転軸10に生じる摩擦力に対向する力生じさせる必要がある。このため、すべり軸受61aは、多円弧軸受、より好ましくは真円軸受が用いられる。
さて、再び図12において、オイルレベルが転がり軸受55の潤滑ラインOLまで軸受ハウジング63内に液体が収容されている状態でポンプを運転すると、回転軸10(転動体65)とすべり軸受61aの摺動面の間で液膜効果が生じる。この液膜効果による周方向流体力が、ドライ運転時にポンプケーシング内のすべり軸受32、33で生じる摩擦力を相殺及び緩和できる程度にバランスしていれば、回転軸の振れ回り振動は抑制される。
ところが、液膜効果は、すべり軸受61aの摺動面が大きいほど生じやすく、摺動面が小さければ生じにくい。仮に図12に示す軸受装置60において、回転軸10(転動体65)の外周の摺動部分に対応するすべり軸受61aが有する摺動面では十分な周方向流体力が生じなかったとする。その場合、図10に示したポンプケーシング内のすべり軸受3
2、33でドライ運転時に生じる摩擦力を十分に相殺及び緩和することができないので、振れ回り振動を抑えることができない。
そこで、このような場合、液膜効果による周方向流体力をより大きく発生させるため、摺動面を大きくすることができる。図14は、すべり軸受装置60の他の例を示す縦断面図である。例えば図14に示すように、すべり軸受61aに比べて回転軸10(転動体65)との摺動部分が軸方向に長いすべり軸受61bを用意することができる。外輪の支持部材72とすべり軸受の支持部材73は天板63cに対して脱着可能であるので、天板63cから外輪の支持部材72とすべり軸受の支持部材73を取り外し、すべり軸受の支持部材73に固定されているすべり軸受61aをすべり軸受61bに容易に交換することができ、回転軸10(転動体65)との摺動面積を増やして、液膜効果による周方向流体力を増加させることができる。これとは逆に、液膜効果による周方向流体力が大きい場合にはすべり軸受の摺動面積が小さいすべり軸受を取り付ければよい。
以上のように、本実施形態の立軸ポンプ3によれば、軸方向に長さの異なるすべり軸受の交換を容易に行うことができ、摺動面積の調整が容易に行うことができる。したがって、液膜効果による周方向流体力と、大気雰囲気で使用されるすべり軸受装置の摺動面で発生する摩擦力のバランスを調整して振れ回り振動を低減することができる。
図15は、すべり軸受装置60の他の例を示す縦断面図である。図15に示すように、図12に示したすべり軸受装置60で使用されていたすべり軸受61aをそのまま利用し、すべり軸受61aの下端に、すべり軸受61cを接続することで、図14に示したすべり軸受60と同様に、軸方向の摺動面積を増やすことができる。これとは逆に、液膜効果による周方向流体力が大きい場合には、減少させたいすべり軸受61cを取り外すことで、軸方向の摺動面積を減らすことができる。
図14又は図15に示した例は、回転軸10(転動体65)の軸方向にすべり軸受を追加する余地がある例であった。しかし、軸方向にすべり軸受を追加する余地がない場合もありうる。そのような場合は、回転軸10(転動体65)の摺動部の外径を増加させ、それに対応するすべり軸受を用意することで対応することができる。
図16は、すべり軸受装置60の他の例を示す縦断面図である。図16に示すすべり軸受装置60では、回転軸10(転動体65)の摺動部分に一定の厚みを持ったスリーブ67が取り付けられる。また、このスリーブ67の外周面が新たな摺動部となり、この摺動面を支持するすべり軸受61dが用意される。すべり軸受61dは、支持部材73dを介して天板63cにより支持される。これにより、回転軸10(転動体65)に一体化して取り付けられたスリーブ67の外周の摺動面積は、スリーブ67を取り付けない状態の外周の摺動面積よりも大きくなるので、液膜効果による周方向流体力を増加させることができる。
ここで、スリーブ67は、回転軸10の軸方向に平行な分割面により複数の部分に分割され、それら複数の部分は回転軸10に固定して組立てることで一体の円筒状のスリーブとなる。回転軸10(転動体65)にスリーブ67を構成する部材を固定する際の締結部材は、スリーブ67の外周の摺動面と干渉しない位置に設けられる。組立てられたスリーブ67は、対応するすべり軸受61dとで、真円軸受または多円弧軸受を形成する。
このように、適当な外周径のスリーブと、その径に対応するすべり軸受とを用意することで、適切な液膜効果により、ドライ運転時にポンプケーシング内のすべり軸受32、33で生じる摩擦力を相殺及び緩和する適切な周方向流体力を生じさせることができる。
また、すべり軸受61を分解、組立可能とした場合、ジャーナル軸受を備えておらず、転がり軸受だけを用いている既設のポンプについても、別途、容易にすべり軸受61を設けることができる。したがって、液膜効果による周方向流体力を適切に生じさせて、摩擦力の相殺効果を発揮して、回転軸の振れ回りを抑制することのできる立軸ポンプを提供することができる。
尚、図12乃至図16では、説明の便宜のため、すべり軸受61a,61b,61c,61dおよびラジアル用転がり軸受55の外輪は、軸受ハウジング63の天板63cに締結された支持部材72,73により支持された状態を説明した。しかしながら、これに限らず、天板63c以外にも、天板63cに締結する態様と同様に、支持部材72及び支持部材73を締結するための取付金具(ブラケット、アングル)やスタッドボルト等の締結要素及びボルト穴等の締結孔を用いて、側板63bや底板63dに支持部材72,73を締結してもよい。この場合、すべり軸受61a,61b,61c,61dは、回転軸10の軸方向に平行な分割面により複数に分割可能な構造であり、それらを回転軸10の周りに組立てることにより、一体のすべり軸受け機能を備えたすべり軸受をなす。また、支持部材72,73は、すべり軸受61a,61b,61c,61dや軸受ハウジング63の天板63c、底板63d、側板63bとは脱着可能である。したがって、軸受ハウジング63内の限られたスペースであっても、すべり軸受61a,61b,61c,61dなどを分割した小さな部品の状態で軸受ハウジング63内に挿入して組み立てることが容易となり、組み立てられたすべり軸受は、軸受ハウジング63内に挿入された支持部材72,73を介して軸受ハウジング63に締結することができる。
図17A、17Bは、回転軸10の軸方向に平行な分割面により複数に分割可能な構造を有するすべり軸受の一例を示す図である。すべり軸受61cは、基本的な要素の全てを備えている。図17Aは図17Bに示したAA面における断面図であり、図17Bは図17Aに示したBB面における断面図である。
図17Aは、回転軸10と一体となって回転する転動体65の周囲に、すべり軸受61cが配置された状況を示している。内筒63aの外側および転動体65の周囲には潤滑油等液体が満ちている。すべり軸受61cは、回転軸10の軸方向に平行な分割面X,Y,Zにより3つの部分に分割される。すべり軸受61cを保持する軸受ホルダ74も、すべり軸受61cと共に分割されている。軸受ホルダ74の外周には、3つの分割された部分を締結して一体化するための締結要素77,75が設けられ、これらが互いに締結しあうことで、すべり軸受61cが一体のすべり軸受機能を発揮する。図示の例の場合、締結要素77,75は、外周から突き出した座にネジ止め孔を施しているが、これに限らない。
軸受ホルダ74の軸方向の端部にはフランジが設けられ、そのフランジには、更にすべり軸受を軸方向に増設したり、軸方向に増設したすべり軸受を取り外すための締結孔78,79が設けられている。また、軸受ホルダ74の外周には、支持部材73と締結するための締結要素76が設けられる。3つの分割された部分が締結されて構成されるすべり軸受61cは、支持部材73と締結要素76を締結して固定してもよいが、軸方向に隣接するすべり軸受が既に固定され、それに締結孔78、79により接続する場合には、必ずしも支持部材73と締結要素76を用いて固定する必要はない。
図17A、17Bに示したように、分割面X,Y,Z、支持部材73と締結される締結要素76、締結要素77,75、および締結孔78,79については、すべり軸受61cが組み上げられた状態でシンメトリーな関係で配置されることが望ましい。尚、締結要素76がシンメトリーな配置関係であるので、支持部材73と締結要素76とを締結するために、天板63、側板63b、底板63dに備えられるスタッドボルト等の締結要素及びボルト穴等の締結孔、あるいは、締結要素76などの締結要素が、シンメトリーな関係で
備えられる。
以上、3分割のすべり軸受61cを例示したが、分割数は3に限るものではない。また、すべり軸受61cの例示した内容は、他のすべり軸受61a,61b,61dにも適用され得る。
図18は、図16に示した回転軸10の軸方向に平行な分割面により複数に分割可能な構造を有するスリーブ67の詳細図である。図示の例は、2分割にしたスリーブ67を示す。図18に示すように、スリーブ67は円筒を縦に割った形状の側板80aを有する。側板80aの上端部と下端部には、スリーブ67を転動体65に固定するために内側に延びたフランジ部80b,80cが設けられる。フランジ部80b,80cには、スリーブ67を転動体65に固定するための孔81が設けられている。図示の部品を二つ転動体65の周囲に配置して固定すると、転動体65の外径に均等な厚みdを加えることができる。厚みdの異なるいくつかのスリーブを用意して転動体65の摺動部の径を大きくし、それに応じたすべり軸受を用意することで、摺動面積を調整することができる。以上、2分割のスリーブ67を例示したが、分割数は2に限る物ではない。
これまでは、ラジアル用、スラスト用に各々転がり軸受を備え、それらの間にすべり軸受61を配置し、回転軸10(転動体65)との摺動面積を調整する例を紹介したが、紹介した例は、ラジアル用、スラスト用に転がり軸受ではなく、すべり軸受を用いている場合でも同様に援用することが可能である。
図19Aは、ラジアル用すべり軸受61a、スラスト用すべり軸受62a,62bを用いている場合の軸受装置を示す。図示の例は、回転軸10(転動体65)の外周にすべり軸受61bを増設した例である。すべり軸受61bは支持部材73に支持され、支持部材73は天板63cに固定されている。勿論、ラジアル用すべり軸受61aの上端部にすべり軸受を増設して固定してもよい。潤滑油等液面は、OLまで充填しているので、すべり軸受61aだけでなくすべり軸受61bの摺動面にも液膜効果により、回転軸10(転動体65)に及ぼす周方向流体力が生じる。このように、摺動面積を増減することで、周方向流体力を調整することは可能である。
図19Bは、ラジアル用すべり軸受61a、スラスト用すべり軸受62a,62bを用いている場合の軸受装置を示す。図示の例では、回転軸10(転動体65)の外周にスリーブ67を増設して外周径を大きくし、それに対応したすべり軸受61cを増設している。これにより、スリーブ67の摺動面を増やしている。すべり軸受61cは、ラジアル用すべり軸受61aの上端部に接続して固定されている。潤滑油等液面はOLまで充填しているので、すべり軸受61aだけでなくすべり軸受61cの摺動面にも、液膜効果により、回転軸10(転動体65)に及ぼす周方向流体力が生じる。このように、摺動面積を増減することで、周方向流体力を調整することは可能である。
以上、本発明の実施形態について、主に先行待機運転を行う立軸ポンプを例として説明したが、立軸ポンプ3は、ポンプケーシング内に、ポンプが揚水する対象の水がない状態で回転軸を回転して運転することがあるポンプであって、そのような状態で管理運転を行うポンプも含まれる。上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。