近年、都市化の進展により、緑地の減少及び路面のコンクリート化、アスファルト化の拡大が進むことでヒートアイランド現象が発生し、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局所的な集中豪雨が都市部で頻発している。局所的な大量の降雨は、コンクリート化、アスファルト化した路面では、地中に吸収されることなくそのまま水路に導かれる。その結果、大量の雨水が、短時間のうちに排水機場に流入する。
頻発するこのような集中豪雨によってもたらされる大量の雨水の速やかな排水に備えるために排水機場に設置する排水ポンプでは、始動遅れによる浸水被害が生じないよう、雨水が排水機場に到達する前に予め始動させておく先行待機運転が行われている。
図1は、先行待機運転を行う立軸ポンプの部分概略図である。排水機場の水槽100には、鉛直に配置された回転軸10の先端にインペラ22を備え、インペラ22に水と共に空気を吸い込ませることにより、水槽100の水位が最低運転水位LWL以下であっても運転(先行待機運転)を継続することが可能な立軸ポンプ3が配置されている。この立軸ポンプ3には、インペラ22の入口側の吸い込みベル27の側面部に貫通孔5が設けられており、この貫通孔5には、外気に接する開口6aを備えた空気管6が取付けられている。これにより、この立軸ポンプ3では貫通孔5を介して立軸ポンプ3内に供給する空気の供給量を水位に応じて変化させ、最低運転水位LWL以下で立軸ポンプ3の排水量がコントロールされる。
図2は、先行待機運転の運転状態を説明する図である。前述したように始動遅れによる浸水被害が生じないよう、例えば大都市の雨水排水用として、吸込水位に関係なく降雨情報等により予め立軸ポンプを始動しておく(A:気中運転)。雨水が排水機場に到達すると、低水位の状態から水位が上昇するに従って、インペラの位置まで水位が達し、立軸ポンプは空運転(気中運転)からインペラで水を撹拌する運転(B:気水撹拌運転)、さらに貫通孔を経て供給される空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に増やす運転(C:気水混合運転)を経て100%水の排出を行う全量運転(D:定常運転)へ移行する。また、高水位から水位が低下するときは、全量運転から貫通孔を経て供給する空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に減らす運転(C:気水混合運転)へ移行する。水位がLLWL近くに至ると、水を吸い込まず排水もしない運転(E:エアロック運転)へ移行する。これら5つの特徴ある運転を総称して先行待機運転という。なお、ポンプ始動は、ケーシング下端よりも低い水位LLLWLから開始する。尚、気水混合運転時にスラスト方向の上下荷重の変動が激しくなる。
図3は、図1に示した先行待機運転を行う従来の立軸ポンプ3の全体を示す断面図である。なお、図2に示した貫通孔5及び空気管6は図示省略されている。図3に示すように、立軸ポンプ3は、ポンプ設置床に設置固定される吐出エルボ30と、この吐出エルボ30の下端に接続されるケーシング29と、ケーシング29の下端に接続されるとともにインペラ22を内部に格納する吐出ボウル28と、吐出ボウル28の下端に接続されるとともに水を吸い込むための吸い込みベル27とを備えている。
立軸ポンプ3のケーシング29、吐出ボウル28、及び吸い込みベル27の径方向略中心部には、上下二本の軸が軸継手26によって互いに接続されることにより形成された一本の回転軸10が配置されている。回転軸10は、支持部材を介してケーシング29に固定されている上部すべり軸受装置32と、支持部材を介して吐出ボウル28に固定されている下部すべり軸受装置33によって支持されている。回転軸10の一端側(吸い込みベル27側)には、水を立軸ポンプ3内に吸い込むためのインペラ22が接続されている。回転軸10の他端側は、吐出エルボ30に設けられた孔を通って立軸ポンプ3の外部へ延び、インペラ22を回転させるエンジンやモータ等の駆動機へ接続される。
回転軸10と吐出エルボ30に設けられた孔との間には、フローティングシール、グランドパッキンまたはメカニカルシール等の軸シール34が設けられており、軸シール34により立軸ポンプ3が扱う水が立軸ポンプ3の外部に流出することを防止する。
駆動機は、保守点検を容易に行うことができるように陸上に設けられる。駆動機の回転は回転軸10に伝達され、インペラ22を回転させることができる。インペラ22の回転によって水は吸込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28、ケーシング29を通過して吐出エルボ30から吐出される。
図4は、図3に示したすべり軸受装置32,33に用いられるすべり軸受装置の拡大図である。図5は、図4に示すすべり軸受装置に設置されたすべり軸受の斜視図である。図4に示すように、回転軸10は、その外周に、ステンレス鋼、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなるスリーブ11を有している。スリーブ11の外周側には、中空円筒の樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなるすべり軸受1が設けられている。スリーブ11の外周面は、すべり軸受1の内周面(すべり面)と非常に狭いクリアランスを介して対面し、すべり軸受1に対して摺動するように構成されている。すべり軸受1は、金属又は樹脂からなる軸受ケース12によりつば部12aを介してポンプのケーシング29(図3参照)等へ繋がる支持部材13に固定されている。図5に示すように、すべり軸受1は中空円筒状の形状を有しており、内周面1aがスリーブ11の外周面と対面し、外周面1bが軸受ケース12に嵌合される。
図6は、図3に示した立軸ポンプ3の上部における、モータ等の駆動機との接続状況を示した模式図である。立軸ポンプ3の上部における吐出エルボ30から、軸シール34により軸封されて上部に延びた回転軸10は、端部でカップリング51により原動機50の回転軸56と接続する。原動機50は、原動機50を支持する原動機架台52の上に固定される。原動機架台52は、架台53に固定される。回転軸10にはスラスト力を受ける転がり軸受55が設けられる。転がり軸受55は軸受ハウジング54に収納されている。軸受ハウジング54は架台53に固定されている。軸受ハウジング54内には、転がり軸受55の潤滑に必要な潤滑油が満たされている。
ところで、近年、ポンプ機場はより深い地下に配置されるようになり、それに応じて先行待機ポンプも長軸化が進んでいる。回転軸を長くすればするほど、回転軸には軸の振れ回りが激しくなる部分が生じる。この軸の振れ回りを抑制するために、回転軸に沿ってすべり軸受を適切な位置により多く配置する必要が生まれてきた。
しかしながら、このことにより、新たな技術的課題が発生する虞がある。図7は、軸の振れ回りが激しくなる部分にすべり軸受装置32,33を配置したポンプにおける回転軸10、スリーブ11、及びすべり軸受1の状態を示す模式的断面図である。ドライ運転においては、すべり軸受装置32,33のすべり軸受1と回転軸10に取り付けたスリーブ11とが摺動する際に、接触部(斜線で示される部分)での摩擦力が大きくなり摩耗が促進し、同時に発生する摩擦熱が大きくなる。そのため、すべり軸受1やスリーブ11の損傷が懸念される。
これに対して、ドライ運転時であっても、すべり軸受の摺動面が水中に存在する状態でポンプを運転することができるように、従来から、回転軸及びすべり軸受を保護管で囲繞して、保護管内に清水を通水させたり、全てのすべり軸受装置を、すべり軸受装置内に水を溜めて摺動面が水中に存在する状態にしたものに置き換えたりすることが提案されている。しかしながら、保護管を用いる場合は、保護管に水を供給する付帯設備が必要になるし、すべり軸受装置のメインテナンスが困難である。また、先行待機ポンプも長軸化が進んでいるので、保護管に水を供給する送水ポンプの大型化や、保護管の耐圧強化のための管壁の厚みの増大などが必要になり、コストが割高になる。また、全てのすべり軸受装置を、すべり軸受装置に水を溜めて摺動面が水中に存在する状態にしたものに置き換える場合は、そもそも、このようなすべり軸受装置の構造が複雑であるのでコストが割高になることや、メインテナンスが困難であるといった問題がある。このうえ、長軸化が進んでいるので、すべり軸受装置の配置数も多くなり、コスト的な負担やメインテナンスの煩雑さが倍増する。また、このようなすべり軸受装置は、サイズが比較的大きくなるので、水流の抵抗となり、ポンプ性能を低下させるという課題がある。
そもそも、回転軸の振れ回り自体を、全体として適切に低減すれば良いのであるが、これまで、立軸ポンプにおける対策は、どちらかといえば軸受負荷の大きい軸受に関する対策等、局部的な対策が多かった。
そこで、発明者等は、回転軸がドライ運転の摺動時に、互いに逆向きの摩擦力による偶力を生じさせて摩擦力を相殺し、回転軸の振れ回りを抑制する仕組みを有するすべり軸受装置を発明した(特許文献1参照)。
このすべり軸受装置は、相殺される力が、回転軸の軸方向に垂直な振れ幅(径方向の振れ幅)の大小に依存する。すなわち、回転軸の振れ回りの大きい場所(腹)にこのすべり軸受装置を配置した場合は、振れ回りを抑制する効果が大きいが、回転軸の振れ回りの小さい場所(節)にこのすべり軸受装置を配置した場合、この効果が得にくくなる。
しかしながら、上下に長く伸びた立軸ポンプの回転軸のどの部分の振れ幅が最大(腹)であるか、最小(節)であるかを予め正確に把握することは難しく、回転軸の軸方向に垂直な振れ幅が小さい節の位置に、このすべり軸受装置を誤って配置してしまう虞があった。このすべり軸受装置を節の位置に配置した場合には、回転軸の振れ回りを抑制することは困難となる。また、一度すべり軸受を立軸ポンプに取り付けた後は、その位置を修正変更できない。また、この発明のすべり軸受装置は、サイズが大きいので、ポンプ性能や流体の流れを阻害しないように配置する必要があり、その配置位置には制限がある。そのため、配置可能な位置によっては、十分な逆向きの偶力を発揮できない場合もあった。
以下、本発明に係る立軸ポンプおよび、それに用いるすべり軸受装置の実施形態を図8から図13を参照して説明する。図8から図13において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。本明細書において、「上部」及び「下部」とは、立軸ポンプが移送する液体の下流側(図示において「吐出」側)及び上流側(図示において「吸込」側)をそれぞれ意味するものとして説明する。
図8は、本実施形態に係る立軸ポンプ3の縦断面図である。立軸ポンプ3はポンプケーシング内にポンプの揚水対象の水がない状態で回転軸を運転することがあるポンプである。立軸ポンプにはそのような状態で管理運転を行うものや、先行待機運転において、気中運転を行うものもある。図8では先行待機運転を行う立軸ポンプを例示している。なお、管理運転とは、降水が稀な季節のためポンプの停止状態が継続している時期に、ポンプが正常に運転できるかどうかを点検するための運転であって、ポンプケーシング内がドライな状態で行う運転である。その運転時間は、十数分から数十分になる場合もある。
図8に示すように、立軸ポンプ3は、ポンプ設置床に設置固定される吐出エルボ30と、この吐出エルボ30の下端に接続されるケーシング29と、ケーシング29の下端に接続されるとともにインペラ22(羽根車の一例に相当する)を内部に格納する吐出ボウル28と、吐出ボウル28の下端に接続されるとともに水を吸い込むための吸い込みベル27とを備えている。吸い込みベル27の下端から吐出エルボ30の吐出端部までをポンプケーシングと呼ぶ。
インペラ22の入口側の吸い込みベル27の側面部には貫通孔が設けられており、この貫通孔には、外気に接する開口を備えた空気管6が取り付けられている。これにより、この立軸ポンプ3は、貫通孔を介して立軸ポンプ3内に供給する空気の供給量を水位に応じて変化させ、立軸ポンプ3の排水量がコントロールされる。
立軸ポンプ3のケーシング29、吐出ボウル28、及び吸い込みベル27の径方向略中心部には、回転軸10が配置されている。回転軸10の一端側(吸い込みベル27側)には、水をポンプ内に吸い込むためのインペラ22が接続されている。
回転軸10は、軸方向の適当な位置で、支持部材を介してケーシング29に固定されているすべり軸受装置32と、吐出ボウル28の内筒に支持部材を介して固定されているすべり軸受装置33、及び/又はインペラ22を貫通した回転軸10の場合において回転軸10の下端部で、支持部材を介してケーシング29に固定されているすべり軸受装置33によって支持されている。すべり軸受装置32,33は、大気運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受装置であってよい。大気運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受装置とは、図4および図5にて示したすべり軸受装置である。
すなわち、図4に示すように、このすべり軸受装置は、回転軸10の外周に、ステンレス鋼、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属等からなるスリーブ11を有している。スリーブ11の外周側には、中空円筒の樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなるすべり軸受1が設けられている。スリーブ11の外周面は、すべり軸受1の内周面(すべり面)と非常に狭いクリアランスを介して対面し、すべり軸受1に対して摺動するように構成されている。すべり軸受1は、金属又は樹脂からなる軸受ケース12によりつば部12aを介してポンプのケーシング29等へ繋がる支持部材13に固定されている。図5に示すように、すべり軸受1は中空円筒状の形状を有しており、内周面1aがスリーブ11の外周面と対面し、外周面1bが軸受ケース12に嵌合される。すべり軸受装置33とすべり軸受装置32はともに1か所以上配置され、両者合わせて複数のすべり軸受装置となる。
回転軸10の上端側は、吐出エルボ30に設けられた孔を通って立軸ポンプ3の外部へ延び、インペラ22を回転させるエンジンやモータ等の駆動機へ接続される。回転軸10と吐出エルボ30に設けられた孔との間には、フローティングシール、グランドパッキンまたはメカニカルシール等の軸シール34が設けられており、軸シール34により立軸ポンプ3が扱う水が立軸ポンプ3の外部に流出することを防止する。
駆動機は、保守点検を容易に行うことができるように陸上に設けられる。駆動機の回転は回転軸10に伝達され、インペラ22を回転させることができる。インペラ22の回転によって水が吸込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28、ケーシング29を通過して吐出エルボ30から吐出される。
図9は、本実施形態に係る立軸ポンプ3の回転軸10と原動機50の回転軸56の接続状況を示した模式図である。立軸ポンプ3の上部における吐出エルボ30から、軸シール34により軸封されて上部に延びた回転軸10は、端部でカップリング51により原動機50の回転軸56と接続する。原動機50は、原動機50を支持する原動機架台52の上に固定される。回転軸10のラジアル力を受けるラジアルすべり軸受61(図10参照)とスラスト力を受けるスラストすべり軸受62(図10参照)を有するすべり軸受装置60が、軸受ハウジング63内に収容されて支持され、軸受ハウジング63を介して架台53に固定されている。
ところで、立軸ポンプの回転軸10の上部は、以上で説明した構造により、比較的しっかりと拘束されている。すなわち、回転軸10のすべり軸受装置60とそれを支持する軸受ハウジング63が、それらを支える剛性の大きい架台53にしっかり固定されている。そのため、回転軸10の振れはそれらに拘束されている。しかし、回転軸10のすべり軸受装置60に支持された部分より下は、インペラ22までの距離が長いので、そのまま回転させると振れ回りが生じる。振れ回りの程度は高さ方向の位置により異なるが、この振れ回りを抑制するように、すべり軸受装置32,33を設けて回転軸10を支持している。
すべり軸受装置32の配置については、設計段階において、経験、あるいは便法的な計算により、回転軸10の太さ、長さ、回転数、インペラの重さや枚数等の条件から、回転軸10の振れ回りの大きい位置を割り出し、それに基づいて軸方向のどの辺りに、いくつ配置するかをある程度決めている。しかしながら、回転軸10の振れ回りの大きい位置として予測されたすべり軸受装置32の配置位置が、実際の振れ回りの大きい位置からずれてしまうことがある。また、このすべり軸受装置32の配置位置は、立軸ポンプ3を組み立てた後に修正することはできない。
特に、回転軸10が長くなるほど、回転軸10に振れ回りの大きい部分が複数の場所に生じやすくなる。それを抑制するために、回転軸10の軸方向に沿ってすべり軸受装置32をより多く配置する必要が生じる。しかしながら、これにより、すべり軸受装置32の配置位置が実際の回転軸10の振れ回りが大きい位置からずれるケースがますます多くなり、また、ずれの大きさも拡大している。すなわち、複数のすべり軸受装置の一部は、回転軸10の振れ回りの極端に小さい、いわゆる「節」の位置に配置されてしまうといったことが生じる。
ところで、ドライ運転においては、すべり軸受装置32,33におけるすべり軸受1と、回転軸10に取り付けたスリーブ11が摺動する際に、接触部での摩擦力が大きくなり、発生する摩擦熱が大きくなる。そのため、すべり軸受1やスリーブ11の損傷が懸念される。
特に、回転軸10の振れ回りの大きい所に備えたすべり軸受装置32,33ほど軸受荷重が大きいので、摺動する相手方の回転軸10に取り付けたスリーブ11の局所的な摩耗や高温化が生じやすくなり、立軸ポンプ3の回転体(回転軸10及びスリーブ11)と固定体(すべり軸受1)との干渉による振動や軸受荷重が増加する。
そこで、本実施形態に係る立軸ポンプ3は、ケーシング29外部の原動機架台52部分において、回転軸10のラジアル力を受ける軸受装置としてラジアルすべり軸受61を備える。また、このラジアルすべり軸受61の摺動面は、軸受ハウジング63内に収容して潤滑油や水等の液体に浸漬される。
図10は、本実施形態に係るケーシング29外部の原動機架台52部分に備えられたすべり軸受装置60の縦断面図である。図10に示すように、すべり軸受装置60は、軸受ハウジング63を有する。軸受ハウジング63は、回転軸10の径よりやや大きい径の略円筒壁である内筒63aと、内筒63aより大きい径の略円筒壁の外筒63bと、内筒63a及び外筒63bの壁面の下部同士を接続する底板63dと、内筒63a及び外筒63bの壁面の上部同士を接続する天板63cとを有する。これにより、軸受ハウジング63は、潤滑油や水などを受液できる槽を形成している。各部材は分解可能であるが、組み立てられた状態では互いに水密に接合しており、形成される軸受ハウジング63内に液体を注入しても外部に遺漏することはない。
回転軸10の外周には、ラジアル方向の摺動荷重をラジアルすべり軸受61に伝達する摺動面と、上下スラストの摺動荷重を上部スラストすべり軸受62a及び下部スラストすべり軸受62bに伝達する摺動面を有する転動体65が固定されている。回転軸10の回転に伴い転動体65は回転する。転動体65の少なくとも摺動面は、ステンレス鋼、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなる。
転動体65は、その外周面の一部に、ラジアル方向の摺動荷重を伝達する摺動面を有し、この摺動面に相対して、中空円筒の樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなるラジアルすべり軸受61が設けられる。このラジアルすべり軸受61は、転動体65の円筒外周面と摺動する。転動体65の摺動面と、ラジアルすべり軸受61の摺動面とは、非常に狭いクリアランスを介して対面して摺動するように配置される。ラジアルすべり軸受61は、金属又は樹脂からなる軸受支持部材66や底板63dにより軸受ハウジング63に支持固定されている。軸受支持部材66は、軸受ハウジング63内に固定されている。また、天板63cと転動体65及び回転軸10等の回転体との間は、わずかな隙間が形成されるか、リップシール等の摺動シール部材によりほぼ封止されている。
内筒63aの内側には、回転軸10が延在する。この内筒63aを外側から覆うように転動体65が配置される。また、転動体65は、その下端から外周方向に延びた円盤状部分65aを有する。円盤状部分65aには、その上面及び下面の一部に、上部スラストすべり軸受62a及び下部スラストすべり軸受62bと相対する摺動面を有する。
上部スラストすべり軸受62a及び下部スラストすべり軸受62bは、中空円盤状(ドーナツ状)の樹脂材料、セラミックス、焼結金属又は表面改質された金属からなり、転動体65と摺動する。転動体65の各々の摺動面と、上部スラストすべり軸受62a及び下部スラストすべり軸受62bの摺動面とは、非常に狭いクリアランスを介して対面して摺動するように配置される。これら上部スラストすべり軸受62a及び下部スラストすべり軸受62bは、金属又は樹脂からなる軸受支持部材66や底板63dにより軸受ハウジング63に支持固定されている。立軸ポンプ3が先行待機運転の気水混合運転を行っているときは、スラスト方向の荷重の変動が激しくなる。しかし、本実施形態では、上部スラストすべり軸受62a及び下部スラストすべり軸受62bを設けたので、回転軸10のスラスト上下方向の荷重変動が生じても、安定して回転運動を継続することができる。
軸受ハウジング63の内筒63aの上端部は、転動体65と、ラジアルすべり軸受61、上部スラストすべり軸受62a、及び下部スラストすべり軸受62bとの各摺動面よりも、高い位置まで延びている。内筒63aと転動体65及び回転軸10との間には、内筒63aの上端および側面と転動体65及び回転軸10とが干渉しないように、円環状に隙間通路71が形成されている。
本実施形態のすべり軸受装置60によれば、軸受ハウジング63内の空間に水や油等の液体の液面が、内筒63aの上端の高さFLまで注入して、立軸ポンプ3を運転することが可能となる。尚、FLを越えて液体を注入すると、液体が内筒63aの上端を溢流してしまうので、レベル計等により、溢流しないレベルに液面が維持されるように監視することが好ましい。内筒63aの上端は、転動体65、ラジアルすべり軸受61、上部スラストすべり軸受62a、及び下部スラストすべり軸受62bの各摺動部の上端部より高い位置まで延びているので、これらの摺動部を液中に位置させることができる。
なお、軸受ハウジング63を分解、組立可能とした場合、軸受ハウジング63内部の各すべり軸受を交換することができる。また、図10に示すように、軸受ハウジング63の上部に液供給用配管69と供給用バルブ69aを設け、下部に液排出用配管68と排出用バルブ68aを設けて、必要なときに液体の注入や排出をし易くしてもよい。これにより、軸受ハウジング63内を洗浄することができる。
本実施形態に係る立軸ポンプ3においては、軸受ハウジング63内に潤滑油や水等の液体を所定量注入した状態で、回転軸10及び転動体65を回転させると、その回転に伴って液体が回転し、遠心力を得る。しかしながら、軸受ハウジング63は、外筒63bと天板63cにより外周部分が水密に組み立てられているので、液体の遠心力による外部への飛散を防止することができる。遠心力の圧力により軸受ハウジング63の壁面で液面が上昇する。しかし、天板63cが回転軸10側に液体の向きを変える上、天板63cがわずかなクリアランスで回転体と相対しているか、天板63cと回転体との間がほぼ封止されているので、液体が天板63cを乗り越えて外部に飛散することが抑制される。したがって、ラジアルすべり軸受61、上部スラストすべり軸受62a、及び下部スラストすべり軸受62bの各摺動部は、回転軸10の回転時には液中に没した状態にある。
ここで、大気(ドライ)運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で使用されるポンプケーシング内のすべり軸受装置32,33と、摺動面が液中雰囲気にある状態で使用されるラジアルすべり軸受61とでどのような現象が生じているかを説明する。
図11は、大気(ドライ)運転時に、摺動面に液体の潤滑のない大気雰囲気で運転されるすべり軸受装置の摺動部分に働く力を模式的に示す断面図である。図11は、回転軸10の軸方向に垂直な断面を示す。ここで、回転側は、回転軸10及びそれに嵌合するスリーブ11である。それに対して、固定側は、すべり軸受1及びそれを支える軸受ケース12である。なお、図11においては、スリーブ11とすべり軸受1の間のクリアランスの寸法は、便宜上拡大されて示されている。
回転軸10が回転すると、回転軸10に固定されたスリーブ11が回転する。大気雰囲気でこのすべり軸受装置が使用される場合、回転軸10の振れ回りによりスリーブ11の外周面がすべり軸受1に点Aにて接触したときに、回転軸10には軸受反力FANが発生する。この軸受反力FANによって、回転軸10の回転方向とは逆方向に摩擦力FAFが発生し、この摩擦力FAFが回転軸10に回転方向とは逆方向の振れ回り振動を引き起こす不安定化力となる。
ここで注意すべきことは、不安定化力である摩擦力FAFの大きさの程度は、回転軸10の軸方向に垂直な振れ幅(即ち、回転軸10の径方向の振れ幅)の大きさに依存する。すなわち、摩擦力FAFの大きさは、この回転軸10の振れが腹であるか節であるかに比較的敏感である。
図12は、軸受ハウジング63内に収容されて、摺動面が潤滑油や水などの液体に浸された液中雰囲気にある状態で使用されるラジアルすべり軸受61の摺動部分に働く力を模式的に示す図である。図12は、回転軸10の軸方向に垂直な断面を示す。このラジアルすべり軸受61において、回転側は、回転軸10及びそれに接続される転動体65である。それに対して、固定側は、ラジアルすべり軸受61及びそれを支える軸受支持部材66である。
回転軸10が回転すると、回転軸10に固定された転動体65が回転する。摺動面が潤滑油や水などの液体雰囲気にあるので、転動体65とラジアルすべり軸受61の間に液膜が構成される。このとき、液膜には転動体65の回転による周方向の圧力不均一が生じ、その結果、転動体65に半径方向流体力FARと周方向流体力FATが発生する。この現象による効果を軸受内液膜効果といい、この周方向流体力FATは、図11に関連して説明したドライ運転で発生する摩擦力FAFとは逆回転方向(逆方向)の力である。
ここで注意すべきことは、回転軸10の軸方向に垂直な振れ幅の大きさへの周方向流体力FATの依存性は、図11におけるドライ運転時の摩擦力FAFに比べて小さいことである。すなわち、周方向流体力FATは、回転軸10の振れが腹であるか節であるかでなく、むしろ回転数の大きさに影響する。
ところで、軸受内液膜効果は、ラジアルすべり軸受61の径方向に切断した断面形状にも依存する。図13Aから図13Dは、ラジアルすべり軸受61の径方向に切断した断面形状による典型的な軸受の種類を説明する図である。図13Aは真円軸受を示し、図13B及び図13Cは多円弧軸受を示し、図13Dはティルティングパッド軸受を示す。また、具体的には、図13Bは、2円弧軸受を示し、図13Cはオフセット軸受を示す。なお、図13Aから図13Dにおいて、斜線部は回転軸10を表している。
図13Aに示す真円軸受は、概ね軸方向に沿った溝41を摺動面に有し、溝41により水や潤滑油をすべり軸受2の軸方向に速やかに供給する。なお、図13Aに示す真円軸受は、溝41を備えない場合もある。図13Aの真円軸受の溝41が形成されていない部分の摺動面の半径はrで、中心はOである。真円軸受はこれら3種類の軸受中で一番軸受内液膜効果が生じやすく、したがってそれによる力も生じやすい。
図13Bに示す2円弧軸受も、図13Aの真円軸受と同様に軸方向に沿った溝41を摺動面に有する。図13B及び図13Cに示す多円弧軸受は、基本的に、回転軸10が摺動するすべり軸受面の半径はrであるが、このすべり軸受面は、中心が異なる複数の円弧が組み合わさって構成されている。図13Bに示す2円弧軸受と図13Cに示すオフセット軸受は、2つの円弧に対する中心O1とO2を有する。2以上の円弧を有する多円弧軸受も構成され得る。多円弧軸受は、これら3種類の中で真円軸受ほどではないが、それでも軸受内液膜効果が生じ得る。
図13Dに示すティルティングパッド軸受は、回転軸10の周りにピボット42を支点として傾斜運動ができるようなパッド43と呼ばれるすべり軸受面を複数有し、回転軸10の周囲を囲んでいる。ティルティングパッド軸受は、軸受内液膜効果が生じない。
従来は、すべり軸受の摺動面に回転軸10が液中で摺動することで液膜効果が生じると、立軸ポンプ3の回転軸10に不安定力がかかるので、液膜効果の生じないようにティルティングパッド軸受を用いることも多かった。しかしながら、本実施形態においては、図10に示した液中で使用されるラジアルすべり軸受61を採用して、先行待機運転のドライ運転時に、ドライな摺動面のすべり軸受1によって回転軸10に生じる摩擦力FAFに対向する力を、摺動面が常時液中にあるラジアルすべり軸受61における液膜効果によって生じさせている。このため、本実施形態では、多円弧軸受、より好ましくは真円軸受が用いられる。
以上、説明した原理から理解できるように、本実施形態の立軸ポンプ3は、ケーシング29内の複数のすべり軸受装置32、33は、大気運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受装置とすることができる。他方、ケーシング29外部の原動機架台52部分において、回転軸10のラジアル方向の力を受けるすべり軸受装置60を、その摺動面が潤滑油や水などの液体に浸漬されている状態で使用されるすべり軸受装置とすることができる。これにより、立軸ポンプ3の大気運転時において、図11に示した摩擦力と、図12に示した周方向流体力が同時に発生する。そのため、回転軸10を不安定化する力(摩擦力FAF)と周方向流体力FATが、互いに逆向きに相殺するので回転軸10の振れ回りが抑制される。したがって、ポンプケーシング内の複数のすべり軸受装置32、33の最下部のすべり軸受の摺動部が揚水などの水に浸されていない状態の時でも、安定的に問題なく運転可能なポンプを提供することができる。
仮に、相殺する力が、回転軸10の軸方向に垂直な振れ幅の大小に依存する場合、すなわち、特許文献1等に開示された、互いに逆向きの摩擦力による偶力を生じさせて相殺し、回転軸10の振れ回りを抑制する仕組みのすべり軸受装置などを用いる場合には、軸方向に垂直な振れ幅が最大の部分に相殺力がかかるように、すべり軸受装置を配置するべきである。しかしながら、先に述べたように回転軸10のどの部分の振れ幅が最大(腹)であるか、最小(節)であるかを予め正確に把握して配置することは難しく、回転軸10の軸方向に垂直な振れ幅がない節の位置に配置する可能性がある。そして、一旦、節の位置にすべり軸受装置を配置した場合には、回転軸の振れ回りを止めることは困難となってしまい、また後から位置を変更できない。
しかし、本実施形態に係る立軸ポンプ3においては、摺動面が液体に浸漬された状態で使用されるすべり軸受装置60を備えることで、回転軸10に働く相殺偶力を周方向流体力としている。この相殺力は、摩擦力による相殺力の発生とは異なり、回転軸10の軸方向に垂直な振れ幅の大小にあまり依存せず、むしろ回転数の大小に依存するので、設置する位置が回転軸の腹か節かに関係なく、回転軸10のどの場所にこのすべり軸受装置60を配置してもそれなりの相殺力を生じさせることができる。そして、回転軸10の高回転数化や、高周速化に応じてその相殺効果は大きい。
したがって、本実施形態によれば、回転軸10の振れ回りが抑制されるので、回転軸10の腹部にすべり軸受を配置したとしても、その摺動部における局所的な摩耗や高温化による損傷といった虞はなくなった。
また、本実施形態の立軸ポンプ3は、立軸ポンプのケーシング内に従来から備えられている複数のすべり軸受装置を、摺動部が大気雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受装置32,33として利用することができるので、従来の立軸ポンプに比べて、ケーシング29内部の流体の抵抗や損失を増加させることがない。さらに、本実施形態の立軸ポンプ3は、ケーシング29外部の原動機架台52部分において、回転軸10のラジアル力を受けるすべり軸受装置60を備え、このすべり軸受装置60は、その摺動面が潤滑油や水などの液体に浸漬された状態で使用される。このため、このすべり軸受装置60は、従来の保護管を用いる場合に比べ、保護管に水を供給する設備のような付帯設備は不要であるし、メインテナンスもしやすくなる。また、本実施形態に係る立軸ポンプ3は、ドライ運転時に摺動面がドライな状態であるすべり軸受装置32,33も併用するので、全てのすべり軸受装置を、内部に水を溜めて摺動面が水中に存在する状態にしたすべり軸受装置に置き換える場合に比べ、コストを抑えられ、メインテナンスもしやすくなり、ポンプ性能に与える影響も低減させることができる。
以上、本発明の実施形態について、主に先行待機運転を行う立軸ポンプを例として説明したが、立軸ポンプ3は、ポンプケーシング内に、ポンプが揚水する対象の水がない状態で回転軸を回転して運転することがあるポンプであって、そのような状態で管理運転を行うポンプも含まれる。上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。